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労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究

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Academic year: 2021

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(1)労働 能力 の侵 害 と損 害 賠 償 に関 する 比 較 法 的 研 究. はじめに. 圭目 みル. 雄. 労働能力が侵害された場合に、そこに発 生した損害を法的にど のように評価し算定 するかは、逸失 利益 の問 題や 、. 上. ような場合については、被害者がそのような侵害を受けなければ将 来得たであろう収益 から、侵害を受け たことによ. (1 ). り実 際に得または得ることができたであろう収益 を控除した差額を( 消極的) 財産損害II逸失 利益 の損害として賠 償. 請求を認めるのが、伝統的な判例・学 説のいう差額説ないしは所得喪失 説の見 解である。これに対して、労働 力は既. (2 ). に商 品化されているので、その基 本をなす稼働力を資本財として評価できるから、稼働 力の喪失 を財産損害とみる労. (3 ). 働 能力喪失 説、さらに死傷による損害を、財産的・精 神的損害全体 を―つの非財産的損害としてとらえ、損害の類 型. 化、賠 償額の定額化を提唱する説等がある。. 労働能力は人の属 性であり、人の労働 能力の使 用価値と物の使 用価値とを同等におくことは問 題である。物に損傷. -235-. 井. さらに損害概念それ自体 にも関わる重要な問 題である。従 来の損害概念は、損害を財産損害と非財産損害に分け、 か. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(2) を受け た場合には、物それ自体 の経済的価値を喪ったこ とによる損害と物の損傷の結果生ずる損害があるように、労. 働 能力が侵害された場合にも同様に、労働能力それ自体 の喪失・低 下したこ とについ ての損害とその侵害の結果生ず. る損害がある。後者については従 来の損害概念の中で解決できるが、前者については 果たし て財産損害なのか疑 問の. 残 るとこ ろである。. 損害算定 の問題については、被害者が、労働能力の侵害により、従 来どおりに就労できず、それによって具体 的に. (6 ). (. (. (4 ). (. 算出 可能な収益 損害を被った事例では、財産損害としての算定 に際し てはさほど困難はない。問題は具体 的な算定 の 5) 対 象 となる損害が現 実に発 生していない場合である。ドイ ツにおいては「化学 者事件」 「主婦 家事労働 能力侵害事件」、 7) 8) 「建築 家事件」 、「医療助手契約違 反事件」 、「自動 車教習 所事件」 等がこ れに 関する事件として取り上 げられてい る。. こ れらの事件に共通する特徴は、先ず、前の二件については、損害事件により、被害者が事故前と同じ 範囲で労働能. 力を一時的または継続的に使 用できないようになったこ と、次に、 後の二件については、労働能力の使 用を可能にす. る外的な事情が侵害されたこ と、たと えば被害者の作業道具が使 用できなくなり、そのために識場を奪われた り、労. 働 時間を無 駄にしてしまった。つま り、被害者が、いつもの仕事に使 用し ていた時間を余計な労務 の給付のために浪. 費し たこ とである。したがって、 後の二件は、被害者の労働能力自体 には何ら変化は生じ ておらず、 本稿には直接 関. 係がない事例といえる。. (9 ). とこ ろで、 損害事件が、部分的、間接 的であれ、労働 能力に関わっている場合には、その結果、 具体 的な収益 の減. 少を招 くものである。しかし、失業者が損傷を受けたり、あるいは被害者が損傷を受けたに拘らず、従 来どおりに労. 働 を継 続し又は既に給付された労働が無 用のものとされた場合には、同じ ような結果は生じ ない。つま り、労働 能力. -236-. 近畿大学法学 第41巻第1· 2号.

(3) 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究. が 侵害 さ れ た 場 合 に お い て は 、 被害 者 が 具体 的 に 立証 可 能 な 利益 を 全 く 逸失 し な か っ た か 又 は 事故 の 労 務 の 給付 で も. って 金 銭 的 に 査定 し 得 る 損失 を 全 く 被ら な か っ た 場 合 に は 、 収益 損害 II財 産 損害 は 全 く 存在 せず 、 被害 者 に は 非 財 産. 的 損害 と し て の 慰 藉 料 が 認 め ら れ る に す ぎ な い 。 損傷 を 受け た 被害 者 は 、失 業 者 で あ ろう と 有 職 者 で あ ろう と 、 人 と. し て そ の 属 性 で あ る 潜在 的 労 働 能 力 を 等 し く 有 す る も の で あ る 。 従 っ て 、 か よう な 労 働 能 力 自 体 の 侵害 を 、 そ の 結 果. 生 ず る 財 産 損害 と は 別個 の ( 非 財 産 ) 損害 と し て 概念 構 成 す る 必 要 が あ る 。. 本 稿 で は 、 特 に 、 ドイ ツ 法 、 フラ ン ス 法 、 英 米 法 に お い て 、 抽 象 的 な 労 働 能 力 が 侵害 さ れ た 場 合 の 損害 を ど の よう. に 法 的 に 評価 し 算定 し て い る か を 判例 •学 説 を 通 し て 概観 し 、 序 論 的 で は あ る が こ の 問 題 に 関 す る 比 較 研究 を す る こ. とにしたい。. ( 注) ( 1)加 藤一郎 「不法行為法 」 ニニ七頁 (有斐閣)、 篠 原弘志 r注釈民法⑲ 」五八頁 等 。大判昭 和一0年―二月二六日判決 全集三 巻一号ニ ―頁 、大判大正一五年一月二六日民集五巻七一頁 。最 判昭 和四二年―一月一0日民集ニ―巻九号二三五二頁 。. ( 2)楠本 安雄 「逸失利 益の算 定」実 務民事訴 訟法講座 3 一五三頁 、加 藤和夫 「後遺 症に よる逸失利 益の算 定」現 代損害賠償法 講座 」七一九0頁 。東 京地判昭 和四六年一0月七日交民四巻五号 、 東 京地判昭 和四七年四月二六日交民集五巻―二号五九五頁 、 大阪 高判昭 和四0年一0月二六日下民集一六巻一0号一六三六頁 。 ( 3)西 原道雄 「損害賠償額の法理」ジ ュリ スト_ ― 八一号一五0頁 。. ( 4)本 件は 、自営 業者であ る化学者が 身体 損傷のために労 働能力を 喪失し、事故 後も取引や利 益に 全く変化が 生じて いな いに か ,BGHZ 54, 45.)。 かわ らず 、 収 益を 失ったと主 張して 損害賠償を 請求した事件 で ある( BGH 5.5,1 9 70 ( 5)本 件は 、主婦が 家事労 働能力を 侵害された事件で、一九六二年判決 (本 文 中に 引用)と 並んで家事労 働の法的評価に 関して . ,BGHZ 50 ,304 重要な 意味を 有する連邦裁判所の基 本 判例であ る( BGH( GrS )。 7.19 ))9 6 8 ( 6)本 件は 、建築家が 休暇中に 第三者 の勧めで建築設計図を 作成したが 、 後に それが 全く無用のものとな ったために 、労 働能力. -237-.

(4) .1 . ,NJ ,1 9 7 7 4 4 6 )。 9 7 7 W1 4 9 の無駄な使用を損害として賠償請求した事 件である(B GH 2 ( 7)本 件は、医療助手が契約違反により、その負担すべき労働を暫らくの間しなかったため、雇主である医師が、その間自ら代 .1 . . 7 6 9 8 AG 2 4 わってなした余分の労働により労働能 力を消費したとして、それを損害として賠償請求した事 件である (B .2 NJ W1 9 2 6 1 8 )。 (8)本 件は自動車教習所の教官が、自己の業務用自動車が追突され破損したため、自己の労働能 力を予定の労働時間中に使用で .. . きず、それを損害として賠償請求した事 件である(B GH 1 1 9 7 1. 5 5 B G H Z 3 3 9 ) 。 6 2 h uc pr s rAn e (9)連 邦裁判所は、この場合の賠償されるべき収益損害には、勿論、労働能力の投入に因る失業者救済請求権 (d .19 . .8 .Ve r s R1 6 2 )。 8 4 9 8 4 0 b e i t s l o s e n h il fe )の喪失も含まれる、と説示している(B GH 2 3 a ufAr. ). -238-. ドイ ツ法 にお け る 判例 •学 説の概 要. (1. ドイツの民事裁 判所 は、一九七0 年五月 五日 の連邦裁 判所 (BGH)第六民事部判決 以降、労働 能 力自体に全く財. ずるものではない。 これらの法益侵害から財産上の損失を生じた場合 に初めて、それが問題となるのである。従って 、. 体的な無損傷や 健康という法益と結 びついた人の属性で、 これらの法益侵害は、それだけで財産法上の賠償義 務を生. BG Hは、「労働 能 力 (d i eA r be i t s kr aft ) 及び 生業能 力(d i e E rwe r bs fa hi g ke i t ) は 、責任法上、先ず第一に、肉. rE r we r bs s chad e n)として賠値請求した事件である。 損害を見 積もり 、 これを収益損害(d e. 益を失ったと主張して、自己に代わって労働 力を補 充するために雁った同レベル の化学 者に支払った俸給 にてらして. 本件は、交 通事故で負 傷した原 告II企業主が、事故後も取引や 利益に何ら変化が生じていない にもかかわらず、収. 産的価値を認めていない。. 近畿大学法学 第41巻第1 · 2号.

(5) rmog e ns we rt ) を全く有しないのである。」と、労働 能 力の非 財産性を 生 業能 力はそれ自体としては財産価値(d e rV e. 説示し、それはむしろ主観的なものであって、 「その金銭的価値は、 取引通念 にてらし、 労働 能 力の程度に従って客. 観的に確定する ことはできない」ものであると判示している。従って、労働 能 力の侵害による収益損害は、対価に対. (2. ). 応して査定すべきであり、労働 の価値に対応して査定すべきではないという ことになる。学 説の多勢もBGHの この. 見 解を支持 している。. ( 3. ). これに対して 、 ドイツ連邦労働 裁 判所 ( BAG)は 、 ドイツ連邦裁 判所 の規 範的損害概念 (d ernormati v eSeb a ,. de ns be g ri ff )にてらし、 既に 、 労働 能 力自体の欠損について財産損害を認めていた。 本件は、 雇主が、 支店長を契. -239-. 約違反 を理由に即時解雇し、その支店長の空席を補 充するまで主任を支店に出 向させなければならなくなり、それに. ). その後の BGH の判決 には、相手方の契約違反 により、労働 能 力の使用が単 なる浪費におわってしまった事件にお. 存する 。」と説示している。学 説においては 、特 に、G runs kyが 、労働 能 力を財産価値と認める見 解を支持 している。. (4. にそのままにされていたかどうかに関わりなく損害を こうむるのである。労働 能 力の価値はその地位 に応じた俸給 に. 労働 が他の者によって引継がれたかどうか、その労働 が主任自身によって引継がれたかどうか、あるいは引継がれず. ねばならない。」と判示し、 更に規 範的損害概念 に関する連邦裁 判所 の判決 を引用して、「雇主は、出向させた 主任の. を 利益になるように直接または間接に使用するものである。従って、労働 能 力には財産的価値があるとの前提に立 た. う状 態で使用できなかった点にも存するのである。 この損害は財産上の損害である。雇主は、その被用者の労働 能 力. 賃 等の雑費のみではなく、むしろ雇主が、 支店に出 向させた主任の労働 能 力をその出 向がなければ使用できたであろ. よって生ずる損害を被解雇者に請求した事件である。BAG は、「労働 関係 の期限 前の解消によって生じた損害は、運. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(6) いて、 「むしろ損害認定にとって 決 定的な ことは、労働 能 力の無用な投入によって、利益をもたらすその他での労働. 能 力の投入が行なわれなかっ た ことである。従って、 実 際に収入や 利益の損失が存在しなければならない。」 と、B. (5 ). AG と同 様に労働 能 力に財産損害を認めるものもあるが、 これは、あくまでBAG の判決 に示された事実関係に厳し. く限 定して 認めるものであり、 基本的には、 一九七0 年のBG Hの見解に 立 つものである。 このBG H判決 の見解. は、自 営業者が労働 能 力を侵害された場合 について、家事労働 能 力の侵害に関する基本判例 を引用してそれに解釈に. 家事労働 能 力が侵害された場合. (. よる修正を加えたものであるから、その内容を概観し、併せてそれに対する学 説の見解をみてみる必要があろう。. 山. (6 ). ① 妻が人身損傷を受けたために家事を遂行できなくなった場合 について、 判例 は、一九六二年九月 二五日 のBG H 7) 第六民事法廷判決 および一九六八年七月 九日 のBGH民事大法廷決 定により、たとえば家政婦等の代替労働 者に報酬. を 支払 う必要のない場合 でも、 被害者に労働 能 力の欠損を理由とする財産損害としての賠償請求を認めている。. 妻が人身損傷を受けた ことによって家事の遂行を妨げ られた場合 に、 賠 償請 一九六二年の第六民事法廷判決 は、 「. 求し 得る損害を全く被っていないというのは適切ではない 。かような見解は妻の質的変 化を無視するものである。妻. は、 婚姻によって自己の労働 力をもはや 無償労働 という形で提供するものではない。むしろ、 妻は、 通常 、 法律上の. 権 利義 務の範囲内で家事を行なう場合 でも、またそれ以外の場合 でも報酬をともなう職務としてではなく、自ら引き. (8. ). 受け た婚姻共同生活における経済的負 担である家族扶養 への継続的寄 与として自己の労働 力を使用するものである。」. e A rbe i t s l e i s t ung) の財産性を労務給 付に対応する扶養 請求権をもって理由付けている。 とし て、労務給 付(d i. -240-. 近畿大学法学 第41巻第1·2号.

(7) ( 9. ). これに反 して、一九六八年の大法廷決 定は、 妻の家事労働 能 力の侵害を理由として、BG B八四五条 に基づ く夫か. らの損害賠 償事件で、規 範的損害概念を適用し、夫が、たとえば代替労働 者への報酬の 支払いによって財産の消費を. 生ぜ しめたか否か、 あるいは他の 家族構成員の無償労働 によって その埋合 わせが なされたか否 かを全く考慮せずに. 「 今日 では、 妻は、家事行為を夫にのみではなく、むしろ全家族のーー 扶養 給 付としてーー 行なわなければならない。. この点で、夫の生業と並んで同等の権利関係に立 つものである。. 給 付受領者に焦点を合 わせるならば、妻自身を含 む全家族構成員が被害者として問題となる。ーー ' むしろ損害賠 償. 請求権は、 不法行為によって自己の法益に直接に侵害を受けた者、つまり、妻の労務給 付の欠損によってもたらされ. ( 10 ). -241-. た全損害に関しては、妻自身においてのみ意義 を有するものである 。」と、 かような損害を労働 能 力そのものの喪失. とによって初めて理由付けられる者であると述べている。. ( 12 ). 廷決 定の理由付は、法律関係によって具象化された労働 能 力の使用価値を、損害賠 償法上、財産損害として認める こ. 概念 については、内容の伴った評価を与えるべきであり、損害は労働 能 力そのものの喪失によって生ずると説く大法. Hage n は 、規 範的損害概念 は、「内容のない方 式 」以外のなにものでもなく、全く説得力を有しない 。従って、この. 結 局誰に責任を負 わせるかという問題について、 全く異 なる評価が損害概念 に加えられると批判している。. ( 11 ). 握 」がなされてのみ可能 であると説き、規 範的損害概念 の見解については、損益相殺の観点から、また損害について. ch )のものであって 、 これを 支持 し主張 することは 「自然的な損害の把 s i E sserは 、損害概念 は 、事実上( fakt. しかし学 説は この大法廷決 定に対しては、むしろ批判的である。. によって生じた妻自身の財産損害と解し、夫からの請求を排除している。. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(8) ( 13 ). K eukは 、BGB八四五条 に基づ く失われた労務給 付についての賠償は 、損害賠償ではなく 、むしろ労務の価値の. 賠 償であるから 、民事大法廷で論議された事例 は、全く一般 的な損害賠 償法の範疇外にあると批判している。. ② なお一九七0 年の前掲BGH第六民事法廷判決 は、家事労働 能 力が侵害された事例 ではないが、先ず、規 範的損. 害概念 の適 用を否定して、 「 被害者に対して、BGB八四二条 、八四三条 及 抽 象的な生業能 力の喪失」については 「. びStvG十一条 の定期金請求が、 これを認めていない ことに留意すべきである」と、具体的な損害算 定をすべき こ. とを説示し、 更にその判決 理由のなかで この大法廷決 定を解釈によって修正し、 この決 定は、実際に労働 能 力を喪失. した妻について補 償しようとするもので、 凡そ(現実になされた仕事に関係なく存する)抽 象的な労働 能 力の減少に. ついての補 償を認めたものではなく、生業能 力の喪失あるいは侵害が具体的かつ明らかに生じている場合に、その生. 業能 力を侵害された者に財産的な損害が生ずるのであるから、損害賠償請求権は、 人身事故の被害者が事実上家事を. ( 15 ). ( 14 ). 遂行していた場合にのみ認められるものである旨、判示している。 これ以来、その後のBGHは、 この修正された見. 解を維持 している。. と ころでBGB八四三条 は、本質的には損害賠償の範囲に関する規 定 ( BGB八四二条 、二四九条 )を前提として 、. ( 16 ). 定期金化にむいている損害、つまり生業能 力の喪失または減少あるいは被害者の需要度の増加 を定期金賠償の対象と. して規 定しているに過ぎず、固有の請求権の法的根拠と解されていないので、家事労働 能 力を侵害された被害者は、. 伝統 的な損害概念 に従い、財産損害を被った場合にのみ賠償請求できる ことになる。もっとも この場合 、妻が扶養 給. 付として家族のためにした家事労働 は、生業行為に対比し得るものであり、従って、金銭的価値を有するので、家事. 労働 能 力は財産的価値を有し 、その侵害について財産損害を認めるものである。もちろん このようなBGHの立 論 は 、. -242-. 近畿大学法学 第41巻第1 · 2号.

(9) 無償行為で金銭的価値を有する活動 、たとえば慈善団体の活動には適合 するはずである。被害者が損傷を受けたがゆ. えに本来の活動をできない場合 には‘その活動 は金銭で補 償されるべきであろう。しかし、 BGHの立論は、家事行. 為は金銭に評価して賠償し得るが、その他の類似の活動 はそうではないとする 、納 得し得る区別の理由に欠けてい る。. 上述のように、家事活動 が家族のための扶養 給 付としてなされていることを、生 業行為に対比し得る金銭的価値評価. のポイント として強調しているが、これは家事活動それ自体に関するものではなく、またその客競的価値にも関係 が ないから、 区別する基準 としては余り意味がないといえよう。. なかったことを理由に、補 償を認めなかった。. することがでせず、 むしろ販売のみしかできなかった企業家である化学 者について、事故の前後で収入 に全く変 化が. 九 七0年の化学 者事件において、BGH第六民事法廷は、損傷を受けたために自己の会社 で研究を る ぺ き であ る 。 一. 労働 能 力が侵害された場合 において財産損害が生じていなくても、労働 能 力の侵害についての補 償が認められてしか. 生している場合 に 、労働 能 力侵害II 財産損害という表現方式 をとっている 。しかし、事情 によっては、自営業者にも、. 前述のBGHの見解によれば、労働 能 力については原 則として財産価値を認めず、その侵害によって財産損害が発. (2). -243-. また、第六民事法廷の見解によるならば、財産損害は、現実に行なわれている家事活動 が侵害された場合 にのみ認め. 自営業者が労働 能 力を侵害された場合. けは、妥当 性を欠き、さらにBGHが従来固持 してきた伝統 的な損害概念 を空虚なものにするとの批判を免れない。. られ、 将 来の予定された家事活動 については認められないことになり、従って、当 法廷が示した損害賠 償請求の範囲付. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(10) ①本件においては、 BGHは 、 一般的な事 の成行に従 えば ‘被害者が事故にあわ なければ より高額 の収 入を得たで. あろうという 蓋然性がなかった、と の理由で財産損害を認 めることができなかった のである。蓋然性 のない利益 取得. の見込みをも財産として、またそ の喪失 を財産損害として位置付 けることを、また他方では、被害者が、利益 喪失 の. 有無 に関係なく、従前と同様に仕事をする事ができなかったという点において、規範的な損害概 念を用いることを、. 当法廷は 拒否し 、更に、そ の結論を、実 際には労働能力は個人 的に 余 りに 異なっている ので 、そ の金銭的価値 を 取引 ( 17 ). 通 念にてらし、客観的に 査定 することはできない、と 理由付 けている。. こ の理由付 けに対して 、Knobbe,Keuk は 、労働能力を侵害 された者に ついて 、常に填補できる自営業者 の客観的. な 最低収益 損害を 不可欠 の条件として要求し、そ の算定上 の仕事 の報酬、 つま り自営業者 の仮定 報酬額 を基 準として. そ れを算定 している。彼にとっては、労働能力 の侵 害が財産関係に影響を与え たかどうかは全く関係がなく、労働 能. 力が 一般的には 投 入されるも ので あ るか ぎり、 これに 財 産損害を認め、 これを 収益 の対象 にしようとするも のであ ( 18 ). る。. St ollは 、こ れに対 して別 の方法を提案している 。彼は 、労働能力を 、財産損害と非財産損害 の境界線上にあ る 主観. ( 19 ). t ) の範疇に 位置 づけて 、 つまり 、人 格権とそ の保護範囲を拡 ubj ekt i v 的な経済 的価値 ( ders ,wi rt s c haf tli c he Wer. ( 20 ). することに よって 正当な 補償を認め ようとしている。. ②ところが、 BGHは‘ 一九七三年 の女医事件において、原告に現 実 に具体 的な財産損害が発 生していないに拘ら. ず損害を認めるという、一 九七0年 の化学 者事件とは 異なる結論に 到達している。. 本件は、地方医を代行することになっていた女医が、人身損傷を受 けたために そ の代行が 不可能となったが 、自分. - 244 -. 第41 巻第 1 · 2 号 近畿大学法学.

(11) の 医院を 開設し、 開設後に、地方 医を代行すべき可能 性を失った ことに ついての損害賠 償を認められた事 件である。. ( 20 ). 当 該事 件は、損益相殺に専ら関係するもので、前審では、損害を代 行が不可能になった ことによって生じた 逸失利益. と認定し、その時に、BGB二五四条 によって要求された 公平を期するために、損益相殺を適用したのである。原 告. 女医は 、診療によって生ずる自己の現収入は、損益相殺(di eV o rt eils a usgle i ch ung) の方法で算 定すべきではない。. 何故なら、原 告には診療所 を開設する義 務はなかったのであり、むしろ、それによって、負 担を 軽減する必要のない. 加害 者のために、義 務範囲をこえる損害軽減の努力をした ことになる、と申立てた 。. BGHは、 診療によって生ずる利益を、 「従 来の意味における損益相殺の財産的利益と看 倣す ことができるかどう. あらゆる事情 を評価する際に収益を算入する ことは、加害者を 不当に責 任 軽減する ことになるから、その収益を損害. 算 定に際して掛酌すべきか或いは除外すべき かどうかを検討する ことが必要である 」と説示している。実際の事 件の. 経過を見た場合 、原 告は、診療所 開設後は地方 医を 最早代行できない状 態にあり、診療所 開設の時点から、原 告には. 損傷を受けた ことによる具体的な財産損害は、発生 して おらず、また 診療所 開設の義 務もなかった。それに対して、. BGHは、事 故に関係なく原 告が自 ら進んで決 定した診療所 開設をしなかったならば、原 告は、引続き地方 医を代行. す る ことができたはずである。との理由で、原 告の賠償請求を認めている。 この判決 に おいては、二 つの 点 が注目さ. れる。先ず、当 裁判所は、労働 能 力の侵害が具体的な財産の減少を生ぜ しめた かどうかに拘らず、被害者が事 故の労. 働 能 力の侵害を受けた ことに ついて賠 償を認められるということ、 つまり、 労働 能 力自体の喪失は、 全く金銭請求権. を生ぜ しめないという従来のBGHの原 則を大きく緩和した こと、 次に、被害者の諸事情を掛酌する ことなく、加 害. - 245-. 後者に ついて考える場合 にも、 あるいはその利益は損害を軽減する要素となるのか どうか」を問い、 さらに、「 • …• か•. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(12) `. ( 注) , , , , ,1 ,5 ,BGHZ 54 . ( 1) BGH 5 B G 2 1 H 9 9 7 7 4 1 5 4 4 ; 5 5 1 9 7 7 D B 9 70 ,Le ,Bd.I.4 ,Mogli (2) Ka rlLa re nz drech t 01;Knobbe-, s hrbuch desSchul Keuk, Bri gi t t e c hkei t en und Grenzen ab , ,Ers ,4 . ,Vers 0 6 ; Er s t rakt e rS 76 9 76 ) R 19 s c h Haf t e r Band(1 t ungs rec ht chadens be re c hnung wi n Deut ,1 ,N .4 . AG 24 81 ) B ) 0(3 9 70 J 1 9 71.38 (3. `. ,19 ,Akt ,73ff . (4) Wol f gang,Gruns um B ky uell ePro bl em z eg ri ffdesVe rmogens s c hadens 68 ,4 ,1 , (5) BGH,29 9 77 14 55 9 77,DB1 . .5 ( 6) BGHZ 38 5 本 件 は 、妻が交 通事故 で大腿部 の切断を 余儀な くされ、そ のた め 家事労働ができな くな り、家事手伝人を 必 要と した場合において 、被害者 の夫は 、家事手伝 人の仕事 に対する報酬 の支払いを 事故 の損害と して請求す る こと が 認め られ るか、また 家事手伝人が実 際 に雇い入れられて いた かだうか、更 に夫 婦 のどちらが その費用を 支払って いた か によ って 結果が 異な るかどうかが 、特 に論 究された事件 である。. ,30 . ( 7) BGHZ 50 4 ,Wus ( 8) この判 決 に対して は、学説 ( By dli ns ki s ow,Wilt s )は 、妻 の家事 労 働 の侵害 に ついて 損害賠償を 認め るそ の結論 に対 して は 異論 はな く、そ の理由づけ に対して 批判的で ある。学 説 の概要 に ついては 、拙稿 西 「 ドイ ツ法 における負傷 した 妻 の損 害賠償請求 に ついて I妻 の家事労 働 の法的評価ー」比較法政第一九 ・ニ0号一― 四頁参照。. ( 9) BGB八 四五条は 、失われた労 働を 理由と する賠 償請求 について次 のよ う に規 定して いる。. BGB八 四三条は 定期金または一時金賠 償 に ついて次 のごと く規定して いる。. 「 殺害、 身体もしくは 健康 の侵害な らび に 自由剥奪 の場合 において 、被害者が法律上第三者 に対 しそ の家事または生 業におい て労 務を 給付 する義 務を 負って いると きは、賠 償義 務者は、第三者 に対して 、失われた労 務に つき金銭定期金 の方法 に よって 賠償を 支払わな けれぢな らな い。 この場合、八 四三条二項な いし 四項を 準用 す る。 」. 「 ①身体 または 健康 の侵害 により、 被害者 の生業能力を 喪失もしくは 減少 せしめ または 需要 の増加 を 生ぜしめた 場合 には 、 被害者 に対して 、金銭定期金 の制度 によって 損害賠償を 支払わな ければな らな い。 ®定期金 には 七六0 条 の規定を 適用する。賠償義 務者 が いかな る種類及び額 の補償を 支払うかは 、諸般 の事 情 にて らして決. - 246 -. 者 に対 す る 制 裁 を 重 視 し て い る こ と で あ る 。. 近畿大学法学 第41巻第 1· 2 号.

(13) 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究. 定する。 ③被害者 は、重大な事情あ るときは、定期金に 代えて 、 一時金賠償 の請求を す ることができ る。 ④ この請求権は、他 の者が被害者に扶養料を 提供して いた ことに よって 、排除されな い。 」 ( 10 ) この判 決 は、そ の根拠を 家族法 の発展に おくも ので ある。一 九 五八年まで は、夫 は妻 の協力を 求め る法律上 の請求権を 有し て いた ので、妻が損傷を 受けた場合、夫 は、 BGB八四 五条による固 有 の賠償請求権を 行使す る ことが できたが 、一 九 五八年. i gungs ges et z ) の制定により 、そ の権利は排除 された。 ei c hber echt の男女同権法 ( das Gl ,Bd.1.4Aufl ,Sc ,S.2 .1 . 70 70 9 ght ) Es 11 ( dr er s hul ,61ff . s ? JuS 19 ff i begr 9 6 ungdesSchadens kl wic ) Hage 12 ent ( n,For -oderFehl t. ,4 0 6 0 2 ( 13 ) Keuk,aaO.S.4 • Keuk は 、そ の論拠を 支配的な 見解に よって 損害賠 償請求権とし理解されて いる BGB八四 五条 に おいて いる。 ,4 5( 51 )· ( 14 ) BGHZ 54 ,1 .NJW 1 . ,NJW 1 ,41;BGH 7.5.1 15 9 74 9 74 9 73 6 51 9 74 ( ) BGHZ 25.9.1 .2 ,Bi.i . §84 . rn 5Aufl 3 Be et z buc h,4 r ger li c hesGes 'Tho mas ) andt( ( 16 ) Pal ,50 . ) BGHZ 54 17 ( . 8 ) Keuk,aaO.S.40 18 ( ,aaO.S.24 . ff oll ) St 19 ( ( 20 ) BG B二 五四 条 は、過失相殺に ついて 次 のように 規定して いる。. 「損 害 の発生に つき、 被害者 の過失が共働したときは、 賠償義 務および賠償範 囲 は、諸事情、特に 、損害がいかな る範 囲に おいて主 として 当事者 の何れに よって 引き起 こされ たかに よって 定まる。 被害者 の過失が 、債 務者が知らず若 しくは知る ことが できなか った異常に 高い損 害 の危険を 債 務者に 注意す ることを 怠り、 または損害を 防止若しくは軽減する ことを 怠りたる ことに 存する場合にも これを 適用する。 この場合に おいて は二 八七条を 準. 用する。. - 247 -.

(14) 学 説 の概 要 英 米法 にお け る 判例 •. イギリ ス法. 収益損害については、被 害者が身体又は健康に損傷を受けたために通常 予定されている収益を得る ことができ. なかっ た場合において、イギ リ スでは、 特に、将来の収益 減少の証明を 軽減する非常に 詳細な規 定を設けている。そ. r loss f ngs ) o o(earn i pen sat i o nfor して、 これらの損害は、「収益(又は労働 能 力)の喪失についての補 償 (G)m. y」 とい うことで、被った金銭的損失の範囲内で補 償される。 ng cap acit earni. 損傷によって労働能力や収入が減少し た場合 については、裁判所 は 、次のような方法で損害を決 定 している。先ず、. ents)が行 な われる 。 m st (被乗数)を算 出 し、 その調整 ( adju 原 則として 、被害者が最後に取得 した 年 間の 総収入、. (1 ). 他方では予測 つ ま り、 一方では被害者が いずれ実 際に取得 し且つ取得する ことが予測されるものについては控除さ れ、. さ れる 昇 進、イ ンフレによる損失、場合 によっては税金負 担分につ いては追加される 。次に 、収益の減少を生じた期 間. i ngencies) 等については被 ( 乗数)が決 定される 。ここでも 、特に生 命の一般 的な危険につながる偶発的な事故(cont. 害者が一定の控除を受けうるように調整がなさ れる 。 このような調整によって確定さ れた 「年間総収入 」x 「収益の. 減少を 生 じた期 間 」11 損害という ことになる。なお この損害も事情 によっては、再度の調整がなされる。 この際、特. (2 ). (3 ). に ドイ ツ法において 損益相殺で掛酌さ れて いるやり方で、 保険給 付、 疾 病手当さらに年金等のいわゆ る付随的給 付. 饂旧 によっては考慮さ れる 。もちろん、最終的な金 額は、一時払いかあるいは定期金の方 (collateralbenefits)が、車ず. - 248 -. H (1). 第41巻第 1 · 2 号 近畿大学法学.

(15) 法で支払 われる 。. この損害算定の範囲内では、原 則として、正 当に立 証された経済的損失のみが考慮される。. 労働 能 力が侵害された場合 において、被害者に経済的損失を全く生 じなかったときは、 イギ リ ス法は、原 則と. して、 ドイツ法と違って、今日 被害者に賠償請求権を認めていないようである。だ がしか し、それについて は 顕著な. 変 化が見 られる。. ( 4. ). たとえば、主婦が人身事故で家事労働 能 力を侵害された場合 において、被害者である主婦 に対 して、従来は、その. 労働 能 力の喪失を理由とする固有の損害賠償請求権を認めていなかった。しかし、夫には、妻の家事労働 能 力の喪失. s) について損害賠償請求が認められた。 この場合 の損害賠 償請求金額は、 家事手伝人等を雇 って osso (l f service ( 5. ). (6. ). ( 7. ). 年 の初め頃まで、 ドイツ法と同一の法律状 態が存在してい たと言う ことができる 。しかし、その後 間もなくして 、高. ( 8. ). t)は 、かような主婦に固有の損害賠償請求を一度認めた ことがあり、さらになお、一九七八年の 等法院(Hi ghC ou r. ( 9. ). nR ep o tも 、 夫や 被扶養 者である親族に無償の労務を提供 している者が、 人身損傷の為にかよう o r い わゆる P ears. な労務の提供 ができなくなった場合 において、その者に固有の損害賠償請求権を認めるよう 勧告している。. 失業者等が労働 能 力を侵害された場合 については、その者も、原 則的には、 労働 能 力の喪失についての損害賠償請. 労働 をせず ego r が、「 求をする ことはできないと思われる。当該事件に関する裁 判所 の判決 はなく 、学 説上は、M cG r. ( 10 ). に 現存財産で生 活できる者( gen e)」が 労働 能 力を侵害された場合 を ―つの例 としてかかげ 、 その侵 su r i manofle tl e. 害によって喪失した労働 期間の市場価値を賠償すべきであると しな がらも 、全体的にはその決 定を留 保している。 こ. -24 9-. (2). いたならば‘ それに支払ったであろう費用を基準 と して決 定されていた。 この点、 イギ リ ス法においては、一九六 〇. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(16) ( 11 ). れに対 して 、Ogusは、使 用されて いな い稼働能力 ( apaci t y)が侵害された場合 につ いて、金 unexpl oi t edearni ngc. 銭賠 償 に反対 の意を 表している。. 失業者 が損害を受け た場合に、労働 能力の喪失 を金銭で評価 して賠 償す ぺきであるという裁判例がな いこと 叙上の. ( 12). とおりで あ るが、学 説上は、さらに、失 業者 が就職 口を見 つけ て いた場合には、それを確認 し、さらに、 一般 原則に. てらして収益 の損失を決定す べきで あ るとの見 解 が提示されている。. ( 13 ). なお、 人身損害で労働 能力を喪失 し た自 営業者も、収益 減少 がなかった場合には、労働能力 の喪失に ついての賠 償. 請求権を全く有 せず、経済的な収益減 少 が証明さ れ た場合にのみ賠 償請求が認められることになる。. nand 健康 や身体 に損傷を受け た場合には、 非財産的損害 の賠 償 が問題となる が、この場合 、精 神的 苦痛 ( pai. ). アメリカ法. 方法 により、金銭で補償 せんとする可能性は、実務 上重要な役割を演 じていないようであ る。. 銭は、人を幸福にするものではないと しても、 不幸を軽減す ることに役立つものである が、労働 能力の喪失を、 この. ( 15 ). ngのことばを 借りるなら ば 、金 rd Denni 労働 能力の喪失 につ いて、非財産的損害賠償で補償すること がで きる 。L). ( U. が補償される 。一定 の範囲にお いては 、裁判官は、労働 能力の喪失 によっ て 金銭的損失 を全く被らなか った場合でも、. at i onofl i fe ) fe )さらに期待余 命の喪失 ( l os sofexpect s uff eri ng)、人生 の楽しさの喪失 ( l os sofameni t i esofli. (3). ). 決 定 的な要素をなしておら ず、むしろ労働 能力自体 の喪失 ある いは減少 が重視されて いる。した が って、 人身損傷に. (1. 労働 能力が侵害された場合の損害賠 償に関しては、 アメリカ法は、イギ リ ス法とは異なり、現 実の収益 損害は. (=l. (1). - 250 -. 第41巻第 1 · 2 号 近畿大学法学.

(17) (2. ). よって生じた現実の収益 損害は本 来の損害であ る侵害された労働能力に関す る ―つの間接 証拠とし て取扱われて いる. の要素とし て取. にす ぎな い。収 入損害、特に、将 来の収益 損害は、 イ ギリ スに 比 べて大規模 に 算定 され て いるよう であ る。なお、 生. (3 ). 業能力あ るいは収益 能力の喪失 につ いては、幾つかの裁判官轄では 、通 常損害 ( gener alda s m )ag e. 扱わ れて いるので、個 々の事実 の立 証の必要な く、 かかる能力の喪失 をもって 損害の存在が推定 され る。. アメリ カ法 によれば、現実 の収益 損害は決定的 要 素をなして いな いので、無 収益者、つまり主婦 、失業者、老齢年. 金者、職業 訓練中の者 、子供、 更に自営業者等につ いては、抽象 的な労働能力の減少につ いて、相 当な る範囲にお い て金銭に よ る補 償を請求 す ることが認められて いる。. (4. ). - 251 -. 家事労働 能力 を侵害された主婦 につ いては 、殆ど の裁判管轄にお いては、 固有 の損害賠 償請求権 を認 め ることにつ. さらに、 生業能力 を第 三者によって侵害された失 業者は、 ドイ ツやイギ リ スに 比 べて容易に金銭賠 償の請求が認め. (6 ). とが必要で あ る。. 前提条件としては、専ら生業能力が人身損傷 を被 る前に存在して いたこと、あ るいは生業能力が現在減少し て いるこ. ることがで きない場合であ、金銭に よ る補償が認め られ ることに なる。つ ま り、損害賠 償請求権が認めら れ るため の. 老齢 年金者も 、自 己の生業 能 力を侵害された場合には、たとえ収益 を全く得 ていなくとも或 いは将 来にお いても得. る。. 裁判 管轄に お いては、 主婦 の労働能力の喪失 を、夫が妻からの労務 給付 を失 ったと いうかたちで、 これを賠 償し て い. 重の賠 償 を認 め ることにな る、との 理由から認め られて いな い。し かし、 主婦 に対 して固有の賠 償請求 権を認 め な い. (5 ). いて 異論はな いようであ る。この場合 に、夫には、妻の労務 の喪失 を 理由とす る賠償請求は 、同一の損害につ いて ニ. 労働能力 の侵害 と 損害賠償に関す る 比較法的研究.

(18) (7 ). られるが、 全く 雇用 不可能な場合に 限 ってその請求 権は 消滅すると解さ れて いる。しかしこの点につ いては、失業者. (8 ). は、既に労働 の場が予定 されて いた 旨 の 証明は必要ではなく、労働 生活 への 復帰を 意欲して いたこと 及び事故がなけ. れば労働 生活を行なうことはできたはずである、と いうことを 証明するのみで十分とされて いるので、 比較的 容易に ( 9. ). .Fr eemon事件につ いては 、被害者が初めから仕事を 続け る意思 金銭賠 償が認められることになる 。な お 、Bri tt i sv. があ ったかど うかは全く 関係が な い、と更に 立証を容易にする判決を 下して いる。. 識業 訓練中の者も、労働 能力の侵害に つ いて賠 償を請求することができる。この場合にお いては、通 常は、被害者. が 損傷を受け たことによ って、将 来に お いて収益 をすることができなくなるかど うかが問 題にな っており、 就 職の見. ( 10 ). 込み は、被害者にと って非常に有利に掛酌され、 更に将 来取得するであろう単なる推定 による収益 の可 能 性が金銭で. 評 価さ れている。 しかし、 このよう な緩和された損害の具体 的算定 の方式の他に、さらに、現 在における抽象 的な労 g s v. ora o ee事釈にお いては 、大 Col d g ll 働 能力の減少が、損害の要素とし て掛酌される べきである。因み に Well. 学 の柔道 コー スの学 生である被害者たる原告に対 して、全く 金銭的 収 入がな いのに、労働能力の現在におけ る減少に. つ いて、金銭的賠 償を認めて いる。. 子供 は、人身損傷を受けた場合には、自 己の抽象 的な労働 能力を侵害されたことにつ いて、同様に 金銭的 補償を受. り が。 この場合には、将 来における収益 の見込評価と現在におけ る減少した抽象 的な労働能力 た G とえ ば、学 業遂行. ( 13 ). 償は 、実 際には殆ど 一体 化しており、したが って、二つの要素に )に つ いての雄# k) odos hoolwor c yt t i capac 能力 (. 分 離することはできな いものである。. 自 営業者も同様に、具体 的な財産損害 が証明されたか否かは関係なく、 原則として、抽象 的な労働能力の侵害が発. - 252 -. 近畿大学法学 第41巻第 1 · 2 号.

(19) (U ). 生し た こと につ いて賠償請求権が認められる。 この場合に実際に問題となるのは、自営業者が有する労働 能 力の実際 の価値を確定して損害を査定する ことである。. ア メリ カ法は 、ドイツ法やイギ リ ス法 と大きく異なり、現実 に経済的に算 定し得る損失が発 生していなくても、. ( 15 ). 労働 能 力の侵害についての賠償を認める方法を採 用している。つまり、 ア メリ カ法は、労働 能 力の侵害は、一身上 の. 人的財産の侵害であり、それは金銭的に確定された損害ではな い、との観点 に た って補 償を しようとするものである。. した が って、抽 象的な労働 能 力の侵害が確定されれば、 それのみで損害賠償請求が認められる ことになる。しかし、. 滅多にない ことであろうが、初めから この能 力が存在しなか った場合 には、賠 償請求権は認められない。なお、基 本. 的な権限 や 資格が確定されている場合 には、それを 証明することによ って、さらに被害者の労働 能 力の真実の価値が. とを 分離せずに、幼 児には全く不確定な将来 の就職の見 込みについて賠償請求を認め、老人にはその労働 能 力の侵害. について賠償を認めないという見解に立 ってい ない こと、つまり、両者を同 一に取扱っている ことである。 ただ、損. 害賠 償の額を確定するに際 しては、個 々の事実が掛酌される。. 〕. ( 注) 〔 イギリス法〕 ,1 ,OnDa ,no .11 . ( 1) Har v e yMc 9 8 0 Gr e g o 6 r 8 ma 11 9 g 7 e s , . . ( 2) Mc Gr e g n o o r 11 8 4 11 9 7 ( 3) 一 時払い金額の利息やインフレによる調整の可能性に ついては、C8ks o nv 1 9 7 9 〕A. 5 6( H. o we L. l e )を参照。 s( C.5 •Kn . . . ( 4) Cut t sv L.R.7 C h u m l e y ( 1 9 6 7 D. Q.B 4 2( ) 1W. .ci . .Chuml ( 5) Cut t sv e yo p t. - 253 -. (2). 査定される。更に実務上、特 徴的であるのは、 将来における推定上の収益損害と現 在における抽 象的労働 能 力の侵害. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(20) 血 8 .I探fJ I vg 甜坦拙Y嘔臼. ’ BGH 25. 9. 1962, BGHZ 38. 55 � も BGH (GruB) 9 . 7. 1968, BGHZ 50, 304 Q I l 0 !請註逗 柑暇 Q �樽釈緬禅-R Q 0 配剖n!d超+,,t-0 ユ � 0 Q t:梨弄志や�,;;,' � Q廿や, IJ Q室盟足竪+,, t-0 :.... � 0 Q 坦無ギ製苓痣1恰初 兵 \--J :a. t-0 (r-) Daly v. General Steam Navigation Co. Ltd. The Dragon, 〔197釘 1 Lloyd's Rep. 257. 265 (Q. B. D.). Court of. (<0). '. Appeal ( (198゜〕 3 All. E. R. 696) -1'> り 兵如据醤....) , 狐�....) �柑暇茶ビ邸釈冠押如 誕 門J :; _;j全 (' � 足企画・吋怜 悪�-1(<!揺 0 0 :G \--J ::. t-0 �薔器-RG I 垢眠-ll<!::!竪+,,t-0葬米Q盟翠器!d 0 :; や ざ 函共' 000円ヽ ユ 叫心ヤ茶揺:G•SI菜 \--J ,'.; t-0 (co) Royal Commission on Civil Liability and Compensation for Personal Injury, 3 (Comnd. 7054, 1978).. ( ;:::: ) (�). McGrfgor, op. cit., no. 1212 ; Ogus, op. cit., P. 196.. m. Lord Denning ざ Watson v. Powles 筐� ( 〔19祁〕 1 Q. B. 596, 603 (C. A.)) Q 弄彩足 袢 二 杯 「葬*Q答埠悪剖止 ゜ #l;掟 足滝器 Q 41:i磁活枢#兵 兵 t-0 _;-j ・釘巳, �� 竺 � Q1jq! Q 葬* Q *祖鯉如柴ヤ曲盆お心_;j t-0 や玲心" 径埠惑剖峠澤-v_;j :; ’ 0 0 咽4_rr !d 竺 淀苺孟中祖蝶 !::! 0 :; V lm<!::!�-v Q 掟把-1(<!�おt-0 IJ 刈 裕 や 如 -4 ,0 」 ..JJ痣I伶..) \--J ,'.; t-0. :; V. "' -R. ←). ( ト =-- 甜) Louis R. Frumer /Melvin I. Friedmann/Roy L. Benott, Personal Injury.. ( "" ). Remedies. Damages-Equity-Restitution (1973) P. 540. Conolly v. Pre-mixed Concrete Co., 49 Cal. 2d 482, 319 P. 2d 343 (1957).. Actions. Defences. Damages (1965, Cum. Suppl. 1980), P. 188. Harms v. Ridgeway, 245 Iowa 810. 64 N. W. 2d. 286 (1954). ( csi) Ridley v. Grifall Truck Co., 131 Cal. App. 2d. 682, 289 P. 2d 31 (1955) ; Dan B. Dobbs, Handbook on the Law of. Davis v. Renton 柵辻 (113 Cal. App. 561. 298 P. 834 (1931) や 竺 , � Q 冥透ざ 柑暇G -<淀据 Q �剖nゃ�t-0刈慮�....) \--J :; t-0 0 � Q 華 Florida Greyhound Lines Inc. v. Jones, 50 So. 2d 396 (Fla. 1952) ; Willson v. Sorge, 256 Minn. 125, 97 N. W. 2d 477 (1959). ( ""' ) Robbins v. Rognes, 128 Cal. App. 1. 16 P. 2d 695 (1932).. ( 'SI' ). ー. Pearson Report B. 1. no. 352-358.. McGregor, op. cit., no. 1171. ( ::: ) Anthony I. Ogus, The Law of Damages, 1973, P. 185. ( ;::! ) McGregor, op. cit. (日) Ashcroft v. Curtin (1971) 1 W. L. R. 1731 (C. A.).. | KSi. ( a, ) ( �).

(21) (6 ). A rando v• Higgi ns 事 件. (220 S.W . 2d 291 (T ex, C i v. A pp. 1949). (10). (9 ). (8 ). (7 ). F rum er, P. 279.. 478 F . 2d 158 (C ol o. 1973).. , P. 283. F rum er, op. cit.. 34 C ol o. A pp. 348. 527 P .2d. 1175 (1974)・. , 191 M ich, 536, 158N.W . 162 (1916)· Paw licki v• D etroitU. R y.. D onoghue v. R i O' ggs, 440 P. 2d 823 (W ash. 1968)·. では、全く金銭の収入がなかった老主婦に、労働能. (11). カの喪失に ついて損害賠値を認めて いる。. (12). C ollow ay v. M iller 事 件 (118 G a. A pp. 309, 163 S.E. 2d 336 (1968)) では、人身損傷をうけた学生が首尾よく学校を 卒業し、自分の選択した大学に 入学したに拘らず、学業遂行能力の減少に ついて、金銭的補償を認めて いる 。. M em bers M ut. Ins. C o. v. M artin, 504 S. W . 2d 603, 605 (T ex. C i v. A pp. 1974)·. or, 190 S .W . 2d 755 (Tex. C iv. A p p .1946,aff'd .144 Tex. 568,192 S. W . 2d 143). Tri angl e C ab C o.v. Tayl. (1 ). 経 済的 損害の算 定ではなく 、む しろ能力の喪失 合incapacite)についての補 償の考えである。つまり 、能力. (capacite). を 、特 に、肉体的 ・精神的見 地において、広い意味にお ける個人 の財産と解釈 し、その能力の侵害を補 償し、金銭に. 査定 する ことが、 フラン ス損害賠償法の出 発 点である。. - 255 -. ( 13 ). (15). フ ラ ン ス法 にお け る判例 • 学 説の概 要. フラン ス法においては、 ドイツ法と同様に、全額賠償の原 則から、人 身損傷によって生じた損害については何. 四. (14). (1). 人 も賠償を認められる。 この場合 における損害賠償規 定の本質をなしているのは、正確に算 出 し得る収益損害 である. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(22) 従って、 フラン スの 判例 は、人 身損傷のあらゆる場合 において、他の財産的 ・非財産的損害と並 んで 、被害者の労. 働 能 力の喪失を査定し、補 償している。 その際、労働 能 力の侵害に ついては、能 力の 一時的な全部 令 又は一部喪失). (2. ). f. 的3 fJ 一四叩▽〈 けiムニ 如叩 申 衣 牛〈( i nc ap aci te . ,P. � 1. 1 )...IJ� -R の 氷珪加 em poa i r et T.1>( p art i elle)=I.T. ( i nc ap acit et o t a l e (o u r )とを区別 し 、具体的な事例 においては別 々に算 定して い ut o t al )e" "I.P.P.又は I.P.T. t i ell e(o pe rma ne nt ep ar. る。. (3. ). 労働 能 力の一 時的な全部喪失 ( 一時的労働 能 力11 I. T. T. ) は 、 それが生 じた期間に ついて算定され 、 補 償される。. ( 4. ). 裁 判所 は、僅かな日 数の労働 能 力喪失に ついても考慮 し、労働 能 力の一部 減少に ついてと全 く同様に、全労働 能 力の. 一 時的喪失に ついて補 償している。. ) は 、それを生じた期 間に ついて認められるのではなく、 ド これに反 して、労働 能 力の永続的な一部 喪失 ( I.P.P.. イツにおける と全 く同様に 、社 会法上 の生 業能 力の減少を。 ハー セン テージに した がって、算定している。一般 に、. (5. ). 時的 又は 永続的な能 力喪失に ついての賠 償は、被害者のすぺての収益損失を補償するものであるが 、財産的な損害も 、. 具体的に立 証できれば、別 個に算 定され る。. s)、醜 悪になった ことに ついての i r umdolo i t e pr なお 、労働 能 力の侵害に関 しては 、そ の 外、精 神的苦痛の代 償 (. s thet iq ue)、更に快適で意義 深い人生形成の 可能性を喪失した と して請求される人 損害である美的損失(p re ju di c ee (6. ). nt)が補 償される。 また 、極めて重大な人身損傷の場合 には、 判決 は 、 通常 、 me dic ed' re ju ag 生の喜びの損失(p re (7 ). ag reme nt の発生を推定 しているようである。 d' p reju dic e. 'at これ以外に、時た ま、一般 的な健康状 態および寿命 の侵害(l t e i nt ed e e ne r alet long e v ite) ed e las ant eg la. -256 -. 近畿大学法学 第41 巻第 1 · 2 号.

(23) ( 8. ). s i t ed' あるいは全廃疾の場合 における第 三者の必要性( l a n r cep e un e t ie r nne en casd' t e tot inal i di al )e so eces v について賠償が認められている。 以上の損害 項目に ついては、 ドイツでは 慰藉料によって填補されるものであるが、. フラン ス法においては、 ドイ ツよりも広範囲にわたる 包括的 な補 填規 定 を個人の非 財産的損害に適用してい ない こと が理解される。. フラン スの裁 判実務では、侵害された労働 能 力の賠償については、ドイ ツと異 なる 取り扱い をしている こと前. 述のとおりである。能 力の喪失についての賠償は、一時的 又は 永続的 な全 部又は 一部の労働 能 力喪失のために収益減. 少 を来したかどうか、 あるいは自己の労働 能 力 を財産上効 果的に使用したか否かに関 係なく 、労働 能 力を侵害された者. ). は、何人であろうとも金銭的賠償を請求する ことができる。たとえば、人 身損傷を受けた七 オの女生 徒について、治. ( 9. ( 11 ). 生 活者等のような現実に収益損害を被ってい ない 者に当 然のごとく認められている。しかし、その後、損害算 定につ. いては、 「 一括賠償の原 則」の制度により、 特 別に困難な問題 をもたらす ことは なく なっている。. 労働 能 力の永続的 な一部喪失(I.P.P. )については 、専ら受けた損傷の 重さにてらして判定する一定の抽 象的 な基. 準 が確立 されている。 一九 七六年 以降‘労働 能 力の永続的 な喪失が 8%と認定された被害者について、約 ―二、00. ( 12 ). ( 13 ). 0 フラン が、四五 党と認定された被害者について は、 一九0、000 フラン、七0 %の喪失については、四 二、00. 0 フランの 賠 償が認められており、一九八四年には、 この金額は更に引き上げ られ、今 日にいたっている。. 以上の ことから明らかなように、 フラン ス法においては、労働 能 力の喪失について補 償を認める範囲が ドイ ツ法や. - 257 -. (2). ) t h etique の賠 償請求の外 に 、一五日 間の労働 能 力の一時的な全部喪失 ( I.T.T. 療費及び 慰藉料並び に prudicee s j e についての賠償請求が認められており、従っ て、同様の請求は、人身損傷 を受 けた主婦 、学 生、失業者、さらに年金. 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究.

(24) 英米法に比べて広い ことが理解される。抽 象的な補 償率による損害算 定の傾 向 は ―つの特 徴であり、 これ はまさに被. 害者にとって公平な解決 を期すものである。従って、労働 能 力の喪失についての賠 償は、特 に受けた損傷の客観的な. 重さ にて らして算 定され、被害者側の個別的な一 切の事情や、特 に収入状 態 は、単 に、二次的な役割を演じているに. すぎない。勿論、 この制度の背景にある哲学 を理解せず して 語る こと はできないが、受けた損傷によって生じた労働. 能 力喪失の 重み は、何人であろうとも同等に評価されて然るべきである。従って、基本的に は、被害者が現在、 幼 児. であろうと、成 功した実業家であろうと、 或い は老齢の年金生活者であろうと、同 等に補償を受けるのが当然であろ. ゜. {、 ク. ( 14 ). このような フラン ス法における解決 方法によれば、人身損傷の被害者 は、それによって生じた労働 能 力の喪失につ. ( 15). いて、抽 象 的に査定される補償を当然に請求できるので、 ドイツにおける化学 者事件は、容易に解決 できる 。しかし、. 自 動 車教習所事件のような、 運転教習所 教官が、その教習用車が追突により破損した為に、所 定の時間帯に 授業でき. なかったという事 情は、 フラン ス法の見解 で は、その対象としている損害の部類に は属 しない。 フラン ス法が本来 補. 償の対象としている被害法益 は、本件につ いて言えば、教官自身の能 力の総体であって、 ここで問題とされた自動 車. の破損により時間帯に授業ができなかった という事情ではない。 フラン ス法で は、自動車の損傷という物的損害の間. 接的結 果として生じるかような損害 は、財産損害として取扱われている、本件のような場合 に、労務給 付の時期が延. 期される ことについて、教官に補 償が認められるかどうか はあ き らかで はない。. - 258 -. 近畿大学法学 第41巻第 1 · 2 号.

(25) 労働能力の侵害と損害賠償に関する比較法的研究. ( 注). . 89.� (1969).p. 、 � 、Cognard :!!. フ ラ ソ ス法 の こ の問 題 に関 す る特 徴 を 、 比 較 法 的 に 「ド イ ツ、 オ ー スト リ ア、 イ タ リ ー 、 ス イ ス の最 近 の立 法 は 、 経 済 的 な 面. ,Et (1) Al hodes d' eval uat i on du prej ude cri t i que des met udi bertLadret ce corporel. ,op.ci . ,p. 88)。 を 重 視 し て い る が 、 フ ラ ン ス普 通 法 は 人 そ の者 を 重 視 す る も の であ る 。」 と 説 明 し て い る ( Ladret t .Pal. 1971. に そ の概 要 が 掲 載 さ れ て い る ( Gaz 1.. .Pal. の Tabl Somm. 22)。 Gaz eanal yt i que に 、毎 年 そ の判 決 が 集 録 さ れ. (2 ) こ れ ら の具 体 的 な 事 例 に つ い て は 、 一九 七 一年 以 来 、 〔 Fi xat i on de demmages-i nt eret s〕 の タ イ ト ルで Gazet t eduPal ai s て いる。. .Pal. 1977.1.Somm. 62 ;Pari s 18. 6. 1976 z 17.3. 1976,Ga. `Gaz.Pal.. 1977.. 17.. 1.. 1. S omm. 80 に集 録. 1. Somm. 63 ;Pari s. .Pal. 1984.1. .Pal. 1977. 1. Somm. 63) の判g決は 、 一五 日 問口 に つ い て 、Pari s 4. 2. 19 83 ( Gaz Gaz (3 ) Bordeaux 5. 4. 1976 ( g mm.80) の判 決 は 、労 働 能 力 の 一五 日 間 の 一時 的 な 全 部 喪 失 (I.T.T.) と ニ ―日間 の 一時 的 な 一部 喪 失 に つ い て認 め て い る。 on (4) 阿 sanr; . .Pal. 1984. 2.Somm. 316. z 1984 Ga. さ れ て いる。. .Pal. 1984. .Pal. 1978. 1.Somm. 5 1 ;Gaz Gaz .Pal. 1977. 1. Somm. 62 ;Gaz (5 ) これ に関 す る 判 例 は 、. `. , Tr ai t et heori que etprat i que de l a responsabil vil deli i t e ci ct uell e et cont r act uell e, (6 ) Jean M azeaud/Andre Tunc t. 92. Tom. 1. n. 292 ;Ladret op.ci. `. .C.P. 19168 not 1978.J e Brousseau: Chambery. . 1. 1984, 26. Gaz. Pal.. . 1984 2.. .Pal. 1983. 1.Somm. 63 ;Pari .Pal. 1976.1. Somm. 60;M et z 24. 2. 1976.Gaz 3. 7 1975.Gaz s 6. 7. 1976.Gaz.. . 3. 4. Pal. 1977. 1. Somm. 64 ;Cass. s (7) Pari. g mm. 471.. し かし 、 若 千 の 景 刑 加 重 事 件 に お い て は 、Prej udic e dagrement に つ い て の賠 償 が 認 め ら れ て い る 。 た と え ば 、 スキ ー を .Pal. 1977. 1. Somm. 63 ;Bordeaux z 12. 5. 1976.Ga. .Pal. 1977, 1.Somm. 64 ;Pari z 7,5. 1976.Ga s 28.5.. つ い て 、百 に 0 王牛 J{ の器 用 さ の 喪 失 ヽ言 語 障 害 よ り 生 ず る制 約 あ る いは 右 目 の喪. Pari s し た り 、 ダ ン スを し た り スポ ー ツを し た り す る 可 能 性 の喪 失 (. . . .Pal. 1976. 2.Somm. 267.) に z 16 3 1976.Ga. .Pal. 1977. 1.Somm. 64 ;Pari 失 等 の事 件 ( Pari s 10. 5. 1976.Gaz s .Pal. 1977, 1,Somm. 64 ) � 't'つ 3 。 · で太 る z 1976.Ga. (8 ) こ の事 例 は 、 ド イ ツ民法 八 四 三 条 一項 の増 加 し た 需 要 ( di e vermehrt en Bedii rfni sse) の損 害 に相 当 す る 。. - 259 -.

(26) 近畿大学法学 第 41 巻第 1 • 2 号 (9 ). いる。. 2い 働比胆jJ の一五日間の一時的な 全部喪失 に ついて 、一 、 の判沖 で は 、 学土. P aris 2 . 10. 1976 (G az. P al. 1977. 1. Som m . 140). 0. P aris 8. 7. 1976, G az. P al. 1977. 1. Som m . 140 ; Bordeaux 8. 11. 1976. G az. Pal. 1977. 1. Som m . 218 ;B ordeaux 26.4.. 0 0 フラ ンの補償が 認め られて (10). 1976, G az. P al. 1977. 1. Som m . 62 ; B ordeaux 11. 7. 1977. G az. P al. 1978. 1. Som m . 58.. 労 働能力の 一時的な 全部喪失 (I.T .T .)について は 、一九八 0年 に 一、 0 0 0な いし二、 0 0 0 フランの月 払 いの 原則が 確 立され、一九八四年 にも判例は 、それを 適用して いる (G az. P al. 1984. T abl. an. 317)。この場合、能力を 喪失した者が 、六. (11). オの少年であれ、 一六オの失業した未成年者 であれ、四七オの教師で あれ、六 0オの実 業家であれ、或 いは八七オの年金生活 者 で あれ、能 力の全部 喪失期間中に ついて この 原則の適用を 受ける (P aris 17. 6. 1977, G az. Pal. 1978.1. Som m . 57 ; B or,. `. 。. deaux 26. 4. 1976, G az. P al. 1977. 1. Som m . 62 ; B ordeaux 14. 2. 1977 G az. P al. 1977. 2. Som m . 403 ;P aris 10. 7.1976.. on 17. 4. 1976 判 決 は 、 三五オの農 婦の八%の永続的な 一 部 喪 失に G az. P al. 1977. 1. Som m . 62集録されて いる 、 B esac;. s 8. 7. 1977, G az. Pal. 1977. 2. Som m . 401.) G az. Pal. 1977. 1. Som m . 140 ; P ari. (12). ついて 、 B ordeaux 26. 4. 1976の判決 は 、 一六オの未成年の失業者 に ついて 、 N im es 23. 4. 1976の判決は 、 一九オの女性 に ついて 、 一、二 0 0 フラ ンの補償を 認めて いる。 の小ツ廿メに ついて 四五%の労 働能力喪失 、一九 O、 唇 rdeaux 15. 7. 1976 (G az. P al. 1977. 1. Som m . 66)の判吐52i‘ -O ャ4. 七オの女性 について 四 三%の労 働能力 0 0 0 フラ ンの補償を 、 P aris 7. 7. 1976 (G az. P al. 1977. 1. Som m .64)の判 決 は 、 一. (13). BGH. 5. 5. 1970, B G H Z 54,4 5.. G az. P al. 1984.Tab!. an. 317.. の喪 失 、 一八二、 0 0 0 フランの補償を 、 P aris 6. 7. 1976 (G az. P al. 1977. 1. Som m . 64)の判決は 、三五オの自動車運転者 に ついて 七 0%の労 働能力の喪 失、四 二 O、 0 0 0 フランの補償を 、 M elun 24. 2 .1976 (G az.Pal. 1977. 1. Som m . 63) の 判決は、一六オの見習 いに ついて 七五先の労 働能力喪失、四五 0、 0 0 0 フラ ンの補償を 認めて いる。 (14). `. 16. 2. 1971 B G H Z 55. 339.. ). BG H. (15. - 260 -.

(27) [五. ]. ヽ. フラ ンス、英米法において、 これをどのように損害として評価しているか. お わ り にー 総 括 的 比 較 ー. 労働 能 力が侵害された場合 に、 ドイツ. を概観してみた。そ れぞれの法制度において理論的評価に差異 はあるが、失われた抽 象的な労働 能 力の侵害あるいは. 喪失に ついて何らかの金銭的補償を認めようとしている点では大体において一致している。しかし、事情 の如何を問. わず、常 に これを補償する ことを 一致して認めるまでには至 っていない。. - 261 -. イギ リ スにおいては、判例 は、 このような抽 象的な労働 能 力の喪失を 慰藉料の査定に当 た って考 慮し、な お 、その. ). このような様 々な理論 的評価は、そ れ ぞれ問題の特 別の面を とらえ たものであって 、結論 的には、労働 能 力の喪失. 人身損傷を受けた結 果生ずる損害、即 ち結 果問題と解している。. 体の喪失を 、損害として賠償すぺき価値と看 倣しているのに対して、 ドイツ法と イギ リ ス法は、労働 能 力の喪失を、. ア メリカ法においては、労働 能 力の財産的な面が強調されている。また、 フラ ンス法と アメリカ法は労働 能 力それ自. イギ リ ス法および フラ ンス法は、労働 能 力の喪失を、むしろ非 財産的損害と解しているのに反 し、 ドイツ法および. 能 力の喪失を非財産的損害として 、判例 •学 説 とも広く認める見解に立 っている。. 合 でも、 これを通常 の賠償すべき損害として認めてお り、更に、 フラ ンスにおいては、あ らゆる 態様の抽 象的な労働. 値を認めないのが連邦民事裁 判所の判決 の見 解である。 これに対して ア メリ カでは、労働 能 力が僅かに侵害された場. (1. 額に ついては、制度化されたものではない が 、増加されてきている。 ドイツにおいては、かような労働能 力に財産価. 労働能力の侵害と損害 賠償に関する比較法的研究.

(28) ( 2. ). を財産的に 損害構成する見解と、 非財産的に 損害構成する見 解とが 密接に絡んでいることを示すものであるといえ. る。. 労働 能 力の侵害は、それによ って具体的な収益損害を生 じていなくても、 無形の財産として評価できる損害を生ず. るものである。それは、勿論、金銭で補 償されるものではあるが、従来の財産損害に組み入れることには 疑問を 感じ. る。被害者は、加害者による人身損傷で、 一時的 又は継続的な形で、本来、個人 的に到達し得る通常 の労働 能 力の水. 準 を喪失することになり、それ自体まさに財産損害と本質的に異 なるものであり、従 って、 労働 能 力の侵害は、むし. ろ、 非 財産的な損害の範疇に含 めて考 え るの が妥当であると考える。 ドイツ連邦裁 判所 の民事判例 では、主婦 の家事. ( 3. ). 労働 能 力の侵害を、その労働 能 力や 労務の給付に ついて報酬が支払われていない場合 でも、金銭賠償を請求し得る 価 値 の侵害と看 倣している。. ところで、 ドイツ法におけるように、実 際に提供 され又は期待されている労務の給 付に ついて考えた場合 、労働 能. カの喪失を財産損害として評価しないことは 、純粋な経済学 的思考に基づ く見 解を提唱する者にと っては、矛盾を 生. むことになろう。潜在的な労務給 付の非 財産的な価値は、その労務給 付に ついて報酬などの金銭的対価が実際に 支払. わ れ るぺき か否 かによ って、決 定されるべき性質のものでは ない からである。無償で提供される労務に ついても、当. (4. ). 然にその価値は認められるものであり、従 って 、それが侵害された場合 には、その労務を受領する立場にある者もそ. の価値を 奪われることになる。特 に、主婦の家事労働 は、本人自身の為のみではなく、 むしろ主として、他の家族構. 成員の生 活扶養 や 団槃の為に奉仕される 有用 か つ有益な行為であること から、その労働 能 力の侵害に ついて賠 償請求. を認めることは、家族構成員のかような生 活利益を確保し、 家族の生 活基盤の安定をはかることになる。. -262 -. 近畿大学法学 第41巻第 1 · 2 号.

(29) 労働 能 力が侵害された場合 の損害賠 償問題に ついては、 アメリカ法や フラン ス法は、主婦 が家事労働 能 力を侵害さ. れた場合 以外 の事例 においても、広い範囲において、特 に、収益損害 の有無 に関係なく その請求を 認めてい る。イ ギ. リ ス法及 び ドイツ法も、 この問題を同 様に広く その他 の事例 において取扱 っているが、前者においては、労働 能 力の. 侵害によ って被害者に具体的な経済的損失(たとえば収益 損害 )が発生してい る ことを、損害賠 償請求を認 めるため. の決 定的要 素としており、後者では、経 済的損失を決 定的要素とするか否 かに ついては、判例 •学 説上 、見解 の一 致. をみていない。結 局は、労働 能 力 の侵害を非 財産的なも のと解するか、あるいは財産的なも のと把握する か の違い で. あるが、能 力 の喪失及び それと結 び ついた人格 の制限 を重大な損害と認める者は、 これを非財産的損害と解 し、 フラ. - 263 -. ン ス法におけると同 様に、人身損傷 のあ らゆる 場合 において被害者 の賠 償請求を 認められる ことになる。これに反 し 、. ら、広い範囲にわたり 、損傷(労働 能 力 の侵害) の程度にてらして定 められた抽 象的規 準 による補 償金 額 の範囲内で、. 生 じているか否 かに関係なく、 これを非 財産損害として賠 償請求を認めている。 これは、一 括賠 償 の原 則と の関係 か. フラン ス法においては、労働 能 力を侵害されたあ らゆる被害者に対 して 、 そ の労働 能 力 の喪失自体を、収益損害が. 求 の認 められる範囲は狭くなる。. いては、 むしろ、財産的な面が評価される ので、経 済的損失 の有無が損害賠 償請 求 の決 定的要 素となり、 それだけ請. う。 ドイ ツ法においては、主婦 の家事労働 能力侵害事例 においては非財産的な 面が、 そ の他 の労働 能 力喪失事例 にお. めようと す るならば 、 財産的な観点 から のみ 賠償請求権を と らえよ うとする見 解には 自ら限 界が生ずる ことになろ. の賠 償請求を 認められる ことになる。従 って、労働 能 力 の喪失に ついて の賠 償請求を広い範囲 の事例 にまで及 んで認. 財産 上 の損失を 重視す る者 は 、予定もしくは予測された金銭的給 付 の喪失を生じた場合 に限 定 して 、財産損害として. 労働能力の侵害と損害賠償に関する 比較法的研究.

(30) 被害者に賠 償請求を認めるものである。 しかも、 この請求権は、本来の財産損害の 領 域から離れて 、慰藉料の 近辺に. 強く引き寄 せられ、不可分的に慰藉料請求権と融合 したものと解されている フラン ス法独自 の 制度であ って、 ドイ ツ. 及び その他の法制度には類を見ない。なお、 この規準 による賠償請求においては、被害者に労働 能 力が存 在 していた. ことが必要であり、従 って 、労働 能 力が存在 していなか った場合 には、 この請求権も認め られない ことになる。し か. し、損害の補 償額が損傷の程度によ って 広く統 一されているので、被害者にと っては 、 ドイツ法や英米法に見 られる. ような、 労働 能 力の使用可能 性や 具体的な労働 能 力投入の意 図、更に収益損害等の証明の必要 はなく、その分、立 証. 責 任 が軽減されるという メリ ット がある。. 労働 能 力の喪失を非 財産損害として概念 構成し、損害賠 償請求の内容とするにあた っては、適 正な損害賠 償額を算. 出 するために具体的な算 定方法が講じられる べきであるが、 これは一般的 に凡そ 不可能 な ことであり、結局は 、一 般. 「過乗補 償の危険」 が付きまとう。被害者の立 証責任の負担や過剰補 償の 危険を払拭するためには 、労働 能 力喪. 的抽 象的な資料や統 計上 の平均値などによる抽 象的な算 定方法に依らざるをえない。しかし、抽 象的な算 定には、常 にヽ. 失の程 度にした が って定めた抽 象的な補 償率による損害算 定をする フラン ス法の方式 は、 わが法にと っても ―つの参. 考となろう。労働 能 力は人の属 性であり 、本来は経済的に評価の対象とす べき性質のものではないと考える。従来の. 損害概念 による限 り、被害者の地位 、年 齢 、職 業、収益 の多寡、更に識業の有無等によ って、大きな違いが損害額に. 表れてくる ことになる。 これは、労働 能 力の喪失を財産損害として 概念 構成する ことの結果である。労働 能 力の喪失. は、何人 も同 等に評価されて然る べき人の属 性たる本質的価値の侵害であると考えるな らば‘その賠 償額に差を もう. ける ことは、人の尊厳を損なう事にもなりはしないか、疑問の残ると ころである。 フラン ス法のように、労働 能 力の. - 264 -. 近畿大学法学 第41巻第 1 · 2 号.

(31) シ ス テ ム の確 立 こ そ 、 こ の疑 問 を 解 く 技 術 では な い か と 考 え る。 な お 、 収 益 損 害 等 の財 産 損 害 や慰 藉 料 は 、 労 働 能 力 の侵 害 の結 果 発 生 し た 損 害 、 即 ち 、 結 果 問 題 と し て処 理 す べき であ ろ う 。. 注 , 9 70 4.1 しかし、す でに紹介したように、 ドイ ツ連邦労働裁判所 ( BAG)は 、労働能力に財産的価値を認め ており ( BAG2. , JN 1 971.3 8 0)、さら に、Gruns ky.,6J これ に同調し ている ( Akt uell ePro 8 bl em z 1 96 um Begr i f fsdesVer mogens s chaden, . 7 3ff )。. 特 に、ドイ ツでは 、この点 に関 して、主観的 ・経済的損害 概念 ( ders !wi r t s chaftl i che Sc ubj ekt i v hade n)によ って注 意が喚 .S.1 ,1 . )。 9 73 9ff enz en desVer mogens s c haden i ffundGr 起 されている ( St oll •Begr この点 に ついては、 ドイ ツでは、既 に完全 に見解 の 一致を見 ており、従 って、家 事を実際 に行な ってき た配偶者 のみが、賠償. (1) (2). .5.1 ,NJW 1 ,1 9 74 請求権を有す ると解されている ( BGH 7 974 65 1) 。 ドイ ツ法 にお いては、 こ の場合 に、労務給付を受領す る立場 にあ る者 が、労務給付者労働能力 の喪失 に ついて、 給付者と同等 に保護される べき価値を奪 われた こと による損害賠償請求を認められるかどうか、 に ついては明らかではな い。Baurは 、 被. (3). 害 者に 「 労働能力に財産価値を認める者 は、労働能力の喪失が財産的に全く影唇 を生 じなか った場合 でも、損害賠償を認 める ,i こと」を未 だ承認する に至 っていな い、と述 べている ( Ei ni geBemer um St kungenz hadens aus gl ei chs anddesSc r echs n;. (4). ,1 ,S.1 ,Fes 9 74 27)。 gRai t s chr i f tfurLudwi s er i v at r echt s i ns t i t ut i onen Funkt i onwandelderPr. - 265 -. 喪 失 を 非 財 産 損 害 と 解 し 、被 害 者 側 の個 別 的 な 一切 の事 情 に関 わ り な く 、 一定 の補 償 率 に し た が って公 平 に補 償 す る. 労働能力の侵害 と損害賠償に関する比較法的研究.

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参照

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