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1型糖尿病を持つ学童前児童の病気の理解と療養行動及び病気をもつ自分への思い

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Academic year: 2021

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1型糖尿病を持つ学童前児童の病気の理解と療養行

動及び病気をもつ自分への思い

著者

清水 香織

学位授与機関

Tohoku University

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1 修士論文

1型糖尿病をもつ学童前期児童の

病気の理解と療養行動及び病気をもつ自分への思い

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 家族支援看護学講座 小児看護学分野 清水香織

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目次

1. 研究背景 ... 5 1.1 小児慢性特定疾病対策について ... 5 1.2 小児慢性特定疾病について ... 5 1.3 1型糖尿病について ... 5 1.4 1型糖尿病をもつ子供の病気・療養行動のとらえ方、研究の意義 ... 6 2. 用語の操作的定義 ... 7 2.1 療養行動 ... 8 2.2 病気の理解 ... 8 2.3 学童前期 ... 8 3. 研究目的 ... 8 4. 研究方法 ... 8 4.1 調査対象 ... 9 4.2 調査方法 ... 9 4.3 調査手順 ... 9 4.4 分析方法 ...10 4.5 倫理的配慮 ...10 5. 結果...11 5.1 対象の属性(表1)...11 5.2 病気の理解(表 2,3,4,5) ...12 5.3 療養行動の実施(表 6,7,8,9,10,11) ...12 5.4 病気・療養行動への思い、病気をもつ・療養行動を行う自分についての思い ...13 5.4.1【療養行動に対する思い】(表 12)...13 5.4.2【療養行動を自立することへの思い】(表 13) ...14 5.4.3【他者に知られることに対する思い】(表 14)...15 5.4.4【知られることに対する他者の反応に対する思い】(表 15) ...15 5.4.5【友達と一緒の生活をすることへの思い】(表 16) ...16 5.4.6【病気をもち療養行動を行う自分に対する思い】(表 17) ...16 5.5 副次的評価項目での分析(表 18,19,20,21,22,23,24,25,26,27) ...17

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3 6. 考察...17 6.1 病気の理解 ...17 6.2 療養行動の実施 ...19 6.3 病気・療養行動への思い、病気をもつ・療養行動を行う自分についての思い ...20 6.3.1【療養行動に対する思い】 ...20 6.3.2【療養行動を自立することへの思い】 ...21 6.3.3【他者に知られることに対する思い】 ...22 6.3.4【知られることに対する他者の反応に対する思い】 ...23 6.3.5 【友達と一緒の生活をすることへの思い】 ...24 6.3.6【病気をもち療養行動を行う自分に対する思い】 ...25 6.4 副次的評価項目での分析の考察 ...26 6.5 総合的考察 ...27 7. 結論...27 8. 研究の限界 ...28 9. 謝辞...28 10. 引用文献 ...29 11. 表 ...32 表 1 対象者の属性...………...32 表 2 自分の病気について聞いていること...…...33 表 3 療養行動をしている理由...…33 表 4 療養行動をしない場合の身体への影響...…..…34 表 5 通院理由...………….34 表 6 低血糖時の自覚症状...………..35 表 7 学校での低血糖時の対処...………35 表 8 血糖測定、インスリン注射の実施状況...…..35 表 9 学校での療養行動の実施者と実施場所...……….36 表 10 学校でのインスリンの単位数の設定方法...36 表 11 学校で療養行動に困ったときの行動...36 表 12 【療養行動に対する思い】...…37

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4 表 13 【療養行動を自立することへの思い】...39 表 14 【他者に知られることに対する思い】...40 表 15 【知られることに対する他者の反応に対する思い】...41 表 16 【友達と一緒の生活をすることへの思い】...…...41 表 17 【病気をもち療養行動を行う自分に対する思い】...42 表 18 HbA1c と病気の理解、療養行動の実施...43 表 19 HbA1c と病気をもつ自分への思い...…...44 表 20 家族の既往歴と病気の理解、療養行動の実施. ...46 表 21 家族の既往歴と病気をもつ自分への思い...…...47 表 22 罹病期間とと病気の理解、療養行動の実施...49 表 23 罹病期間と病気をもつ自分への思い...…50 表 24 発症年齢と病気の理解、療養行動の実施...52 表 25 発症年齢と病気をもつ自分への思い...………...53 表 26 副次的評価項目と病気の理解、療養行動の実施の分析結果...………...55 表 27 副次的評価項目と病気をもつ自分への思いの分析結果...56

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1. 研究背景

1.1 小児慢性特定疾病対策について 小児慢性特定疾病対策は、児童福祉法に基づき医療費助成や調査研究など様々な形で事業 展開されてきた。平成 27 年 1 月に児童福祉法の一部を改正する法律が施行され、小児慢性特定 疾病対策は 10 年ぶりに見直された。児童福祉法の改正に伴い、「小児慢性特定疾患」から「小児 慢性特定疾病」と改められ、「児童又は児童以外の満 20 歳に満たない者が当該疾病にかかって いることにより、長期にわたり療養を必要とし、及びその生命に危険が及ぶおそれがあるものであっ て、療養のために多額の費用を要するもの(法第 6 条の 2)」として法律に明文化された1) 小児慢性特定疾病対策の目的は、小児慢性特定疾病児童等の健全な育成である。従来は、医 療費助成、調査研究の推進、日常生活用具給付事業の 3 つであったが、児童福祉法改正後は新 たに、自立支援が加わっている。厚生労働省では、自立支援事業を「慢性的な疾病を抱える児童 及びその家族の負担軽減及び長期療養をしている児童の自立や成長支援について、地域の社会 資源を活用するとともに、利用者の環境等に応じた支援を行う事業」としている2)。これは、自立支 援事業などの福祉施策の充実のほか、慢性疾患を抱える子供の成人移行に対する支援事業など の新たな取り組みがスタートしたといえる。 1.2 小児慢性特定疾病について 小児慢性特定疾病は、子供の慢性疾病のうち、小児がんなど特定の疾病をさしており、現在 14 疾患群(722 疾病)がその対象として国に認定されている1) 小児慢性疾病患者は、治療・ケアや研究の進歩により、予後が改善している。そのため、医療ケ アを行いながら疾病をコントロールして生活している子供が増えている3)。慢性疾病をもつ子供が、 自ら発達過程に見合った療養行動を獲得することは、子供の自立や社会生活の拡大のために重 要である。なかでも 1 型糖尿病は、生涯を通して療養行動を伴う慢性疾病であり、各年齢で発症が 見られる代表的な小児慢性特定疾病の一つであるといえる。 1.3 1型糖尿病について 糖尿病は、インスリンの分泌不全、インスリン抵抗性、あるいはその両者による慢性的な高血糖 によって特徴づけられる代謝異常と定義されている。1型糖尿病は、膵β細胞の破壊による内因性 インスリン不足により発症し、インスリン欠乏に陥るものである。したがって、1型糖尿病の治療の基 本は、インスリン補充療法である4)。現在、超速効型や持効型のインスリン注射、インスリンポンプな

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6 どが使用されるようになり、患者の生活に合わせたコントロールがしやすくなってきている。 また、小児慢性特定疾病に登録されている1型糖尿病患者(2006~2010年)は、4646人~4803 人(うち女児が55~60%を占めている)いる5)といわれている。我が国の0~14歳発症の1型糖尿病 の平均年間発症率は、1.4~2.2/年間100,000人と白人に比し、非常に低い。白人、特にヨーロッパ (フィンランド、サルディニア、スウェーデン、英国)とカナダ (20/年間100,000人)では高い。小児慢 性特定疾患治療研究事業に2001年~2011年に新規登録された1型糖尿病症例数の年次推移を みると、年間500~600例あり、年による登録数に大きな変化は見られない。発症時年齢の分布を みると、1型糖尿病では幼児期と10~13歳にピークがある6) 現在、小児慢性特定疾病事業に登録されている全患者のうち3分の1がHbA1c 9.0%以上の不 良群といわれている6)。つまり、1型糖尿病の患者は良好な血糖コントロールが出来ておらず、適切 な療養行動がとれていないと考えられる。HbA1c不良群では、細小血管症(網膜症、神経障害、腎 症)と大血管症(心疾患、脳卒中、など)という慢性合併症のリスクが高くなる。そのため、良好な血 糖コントロールを行うことは、合併症を起こりにくくし、健康な他の子供と同様の生活が送るために 重要である。 1.4 1型糖尿病をもつ子供の病気・療養行動のとらえ方、研究の意義 1型糖尿病は患者数こそ多くはない。しかし、乳幼児期、学童期に発症した患者はいずれ、思春 期、青年期へと成長していく。思春期に発症した患者と異なる点として、乳幼児期で病気を発症し た患者は、病気の療養行動を行いながら、それぞれの年齢に合わせた発達課題を達成し、成長発 達していくことがあげられる。発達課題の成功や失敗は、次の発達段階に大きく影響を与える。つ まり、乳幼児期や学童期での体験は、思春期、青年期とその先の生活へと大きく影響を与えるとい える。中村が、年少(9歳以下)発症の患者と10代で発症した患者では、病気に対するとらえ方が異 なるという報告7)をしている。その中で、年少発症の患者は、糖尿病をパーソナリティの一部として 取り込んできた体験など糖尿病をもち生活してきた体験がある。そのため、糖尿病や療養行動をふ つうととらえているものが多いとしていた。幼い時に発症した場合、病気や療養行動に関する情報 源は家族となり、医療者から直接説明を受ける機会は少なくなる8)。そして、発達段階を考えると、 発症時から患者自身で療養行動を行うことが難しく、親が代わりに療養行動を行うことになる9)。そ のため、患者が自分の病気として認識していない、しにくい状況下にあるという特徴をもっている1 0)。つまり、幼いときに発症した患者は、患者自身が病気に対する知識が十分ではない可能性があ る。

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7 また、1型糖尿病をもつ子供は、年齢に応じた生活行動の獲得の他に、血糖測定、インスリン注 射、低血糖への対処、適切な食事と運動など療養行動の獲得が必要となってくる。1型糖尿病は小 児慢性疾病の中でも療養行動を生涯に渡り継続していく必要がある疾病である。慢性疾病患者 は、病気の理解が不十分であると、本人の望む生活とのギャップも大きくなり、病気の受容が困難と なり、適切な療養行動が行えない11)とされている。つまり、自分の病気や病気をもつ自分をどのよう にとらえているかという認識が病気の受容を推し進め、その病気の受容が適切な療養行動の獲得 につながると考えられる。 以上より、物事を具体的にとらえ始めるようになり、興味を持ち始める学童前期への早い段階か らのケアが重要であることが推測できる。また先行研究14)から、入学を機に療養行動を移行し始め たというものがあり、療養行動が子供へ移行し始める段階から親や医療者が関わっていくことが望 ましいと考える。しかし、実際学童前期の子供自身がどのようなとらえ方をし、療養行動をどの程度 習得しているかという研究は少ない。兼松は、幼児期から思春期までの発達段階に合わせた1型 糖尿病の療養行動の目安12,13)を作成している。その目安では、学童前期は血糖測定や注射の準 備など出来ることを行うとある。井上は、血糖測定、インスリン注射の移行開始年齢について調査1 4)しているが、対象者は1型糖尿病をもつ子供の親であり、子供自身に聞いたものではない。また、 幼児期や学童前期の子供がもつ病気への思いや療養行動への思いの研究は、思春期・青年期に なってから幼児期や学童期を振り返ったもの7)や、親からの代理評価10)によるものである。学童前期 は、まだ幼児期の自己中心性を残しており、言葉や認識の力が徐々に発達する。そして、学童後 期になると、物事をある程度抽象化して認識することが可能となり、自分のことを客観的に捉えられ るようになる。そのため、未熟な部分が残る学童前期には、自分の思いなどを客観的に捉えられて おらず、振り返り研究や親の代理評価の研究が多い。しかし、思春期の子供とその親を対象とした 研究において、子供と親では療養行動への認識が異なっていた15)、という報告がある。そして、自 分の過去の思いを正確に覚えていることは難しく、曖昧である可能性がある。そのため、本研究で は学童前期の子供自身を対象に調査を行い、この年代がもつ思いを明らかにしようと考えた。

2. 用語の操作的定義

本研究のなかで使う用語について以下のように定義づける。

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8 2.1 療養行動 糖尿病患者が治療処方を家庭や学校で実施し、支障なく生活していくための行動37)と定義す る。本研究では、学童前期において必要とされる、血糖測定の手技、インスリン注射の手技、低血 糖時の対処13)を確認する。 2.2 病気の理解 本研究の対象者は、ピアジェの前操作期から具体的操作期に移行する段階である16)。そのた め、自己中心的な思考が特徴であり、まだ言葉としての思考が十分ではない。そのため本研究で は子供が病気、そして病気にともなう療養行動をどのように思っているか、捉えているかということを 病気の理解と定義する。 2.3 学童前期 子どもの徳育の充実に向けた在り方について(報告)には、子どもの発達段階ごとの特徴と重視 すべき課題17)が記載されている。その報告の基準に沿って、本研究では、学童期を小学校低学 年と小学校高学年に分け、小学校 1 年生から 3 年生を学童前期と定義する。

3. 研究目的

1 型糖尿病をもつ学童前期の患者自身が自分の病気についてどのように理解しているか、療養 行動をどのように実施しているか、さらに病気をもつ自分についてどのように思っているかをインタ ビューで明らかにする。 その上で、病気の理解、療養行動の実施及び病気をもつ自分への思いと、背景要因(HbA1c、 家族の既往歴、罹病期間、発症年齢)との関連を明らかにする。

4. 研究方法

学童前期の 1 型糖尿病の子供の病気の理解と療養行動をもつ自分に対しどのような思いをもっ ているのか明らかにするために、本研究では、質的研究方法を選択した。質的研究方法は、個別 性のある事例に対して行うという特徴があり、子供の思いは個別性の高い事象であり、十分に本質 的な要因を捉えることが出来ると考えたので選択した。 そして、副次的評価項目(発症年齢、罹病期間、HbA1c、家族の既往歴)と病気の理解、療養行

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9 動の実施及び病気をもつ自分への思いの関連を分析するために、2 行 2 列の分割表 (クロス集計 表) におけるふたつの要因が互いに独立であるかどうかを推定するフィッシャーの直接確率検定 を用い、分析した。 4.1 調査対象 東北地方の医療機関に外来通院する 1 型糖尿病をもつ学童前期の子供を対象者とした。主治 医が調査対象者として条件に合い、かつ対象者がインタビューへの回答が可能であると判断し、 2017 年 7 月から 10 月に外来受診し、対象者かつ保護者から同意を得られた場合にのみ対象者 とした。対象者の選出は、各調査施設の主治医に依頼した。 4.2 調査方法 調査は 2017 年 7 月から 10 月に行った。調査はインタビューガイドに基づいて半構造化インタ ビューを実施することとした。あらかじめ質問項目を決めておき、その質問項目にまつわる情報を 採集する方法であり、1 型糖尿病をもつ対象者の思いを自由に調査ができる方法であると判断し 選択した。質問項目は、病気の理解と病気や療養行動への思い、病気をもつ・療養行動を行う自 分に対する思いはインタビューで行った。病気の理解は、自分の病気について何か聞いている か、どうして療養行動をしているか、療養行動をしないとどうなるか、通院理由を知っているかを質 問の基としてインタビューを行った。病気や療養行動への思い、病気をもつ・療養行動を行う自分 に対する思いは、毎日療養行動をしている自分をどう思うか、療養行動していて何か思うことがある か、病気や療養行動のために日常生活で困っている事や大変なことはあるかという質問を基に語 ってもらった。療養行動の実施については、 血糖測定、インスリン注射の手技は、対象者が普段 使用している物品を使って、必要な物品やどのような順番で実施しているか説明してもらった。低 血糖の対処については、実際にどのような対処行動をしているか口頭で答えてもらった。 インタビューは、個室で対象者と研究者で行い、30 分程度で実施した。インタビューガイドは、 対象者の思いが引き出せるように言葉の使い方や質問を検討し作成した。作成後に、他の慢性疾 病をもつ 2 人の学童前期の子供にプレテストを行った上で、言葉の使い方や質問を検討し実施し た。 4.3 調査手順 ①研究者が各調査施設の主治医に基準に合致する対象候補者の抽出を依頼した。調査にあたり 各施設長の調査同意を得た。 ②調査について、主治医からの口頭説明で調査への同意が得られた対象者に主治医、もしくは研

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10 究者から書面にて対象者と保護者に説明を行い、調査への同意を得た。その上で、インタビュ ーの日程調整を行った。 ③インタビュー調査時、インタビュー開始前に改めて対象者と保護者に調査概要の書面を用いて 説明を行った。そして、調査の実施、診療録からの情報収集、およびインタビュー時の録音の可 否について書面にて、対象者およびその保護者に同意をえた。 ④インタビュー時の録音については対象者と保護者に同意をえて行った。インタビューはプライバ シーの確保された個室で行った。 ⑤研究者は、主治医に同意がえられたことを伝えた上で、診療録からの情報(1 型糖尿病を発症し た年齢、現在の年齢、性別、使用しているインスリンの単位数とそのインスリンの種類、過去 1 年 間の HbA1c の値、家族の既往歴)を主治医に診療録転記書に記載してもらう、もしくは研究者 が主治医に許可をえて診療録転記書に記載した。記載された診療録転記書は、インタビュー終 了時に研究者が直接主治医からその場で受け取った。主治医から試料・情報の提供を受けるに あたっては、「試料・情報の授受に関する記録」を取得して保管した。 4.4 分析方法 本研究は、インタビュー調査により得られた内容を逐語録にし、病気の理解と実際に行っている 療養行動に関係する語りの部分を抜き出した。そして、病気と療養行動についての思いにあたる 語りを抜き出し、コード化した。 コード化したデータは、類似点相違点に着目し、サブカテゴリを見出した。さらに、サブカテゴリ 同士、共通性のあるものをまとめ、カテゴリー化を行った。 分類・分析は、小児看護研究者 8 人で内容を比較検討、再編を繰り返し、信頼性、妥当性の確 保に努めた。 その上で副次的評価項目(発症年齢、罹病期間、HbA1c、家族の既往歴)を使用し、病気の理 解、療養行動の実施状況、および抽出されたサブカテゴリの出現頻度をフィッシャーの直接確率 検定を用いて統計的に分析した。有意水準は0.05 とした。 4.5 倫理的配慮 本研究は、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の倫理審査、対象施設の倫理委員会、 もしくは施設長の承認を得たうえで実施した。対象者、およびその保護者には研究の趣旨や方法 を説明した依頼文を用いて説明した。対象者が調査に参加することへの同意は、保護者が対象者

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11 の参加を同意し、かつ対象者本人が同意した場合に同意とすることを説明し、同意書を提出するこ とによって同意を確認した。同時に、インタビュー内容の録音について説明し、対象者と保護者の 同意が得られた場合に限り録音し、両者の録音の同意が得られなかった時にはインタビュー内容 は了承を得てメモにとった。対象者への説明文はその学年でもしっかり理解できる内容にし、研究 者が音読しながら意味を確認しインフォームドアセントを実施した。対象者、保護者への説明文書 には以下の点を明記した。 ①調査の目的と意義 ②インタビュー後は ID を付け、個人が特定されないようにする ③個人情報の保護 ④調査への参加は自由意志によるものであり強制ではない ⑤調査への参加・不参加による不利益はない ⑥調査した内容は、研究以外には使用しない ⑦調査の結果を学会に発表する可能性がある ⑧インタビュー内容は5年間、小児看護学分野で厳重に保管する ⑨研究によって生じる不利益と、それが生じた場合の対応 ⑩連絡先を明記し、対象者からの質問に応じる ⑪インタビュー内容の録音、録音の同意が得られない場合にはメモをとる 調査への協力が得られた病院には、結果を報告することとした。

5. 結果

5.1 対象の属性(表1) 主治医の同意が得られた 22 名の対象者とその保護者に説明し、21 名の対象者とその保護者 から同意が得られた。 対象者は、1 年生が 4 名、2 年生が 8 名、3 年生が 9 名、男子 6 名、女子 15 名であった。発症 年齢は、10 か月から 8 歳 4 か月であり、罹病期間は 4 か月から 7 年であった。血糖コントロールの 指標である HbA1c は、7%未満のコントロール良好な適切群が 7 名、7 から 9%未満が 12 名、9% 以上のコントロール不良なハイリスク群が 2 名であった。HbA1c は過去 1 から 2 か月の値を反映 する5),28)と文献にあったため、発症してから 2 か月以内の値は外した上で、過去 1 年間のコントロ

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12 ールをみるため、HbA1c の値を平均した。同居している家族に糖尿病の既往歴がある対象者は一 人であった(表 1)。 5.2 病気の理解(表 2,3,4,5) 自分の病気について何か聞いているかという質問に対して、聞いていると答えた対象者は 11 人、聞いていないと答えた対象者は 10 人だった(表 2)。聞いていると答えた対象者の回答内容は 「1 型糖尿病と言われた」、「注射を打たないといけない病気」など病名やインスリン注射が出てきた (表 2)。「インスリンが出ていないから注射をしている」、「膵臓に関係あると聞いた」と身体のどの部 分が自分の病気と関係あるか、どうして注射をしているか具体的に答えた対象者は 2 人であり、い ずれも 3 年生だった。 療養行動をしている理由は、18 人の対象者が答えた(表 3)。「1 型糖尿病だから注射をしてい る」と病気だから療養行動をしているもの、「親に言われるからしている」など親に療養行動をやるよ うに言われるからするもの、「血糖を下げるために注射している」などインスリン注射をするとどのよう な効果があるか、またインスリン注射をしないことにより身体にどのような変化が起こるかということだ った。 療養行動をしない場合にはどうなるかでは、答えた対象者は 17 人、分からないもしくは考えたこ とないと答えた対象者が 4 人であった(表 4)。内容は、「注射を打たないと死ぬ」などインスリン注射 を打たないことで身体にどのようなことが起こるか、「血糖値が高くなる」など血糖値がどうなるか、 「ご飯が食べられない」、「高血糖になり入院になる」など生活へ支障が出るというものだった。 通院理由について知っている対象者が 5 人、分からないと答えた対象者が 16 人だった(表 5)。 知っていると答えた対象者は、「病気(だから)」、「血の検査をする(ため)」、「物品がなくなるから」 と通院理由を答えた。 5.3 療養行動の実施(表 6,7,8,9,10,11) 低血糖になると具体的な自覚症状があると答えた対象者は 20 人、「なんとなく感じる」と具体的 な症状は分からないがなんとなく分かると答えた対象者は一人だった(表 6)。そして、学校での低 血糖時の対処は全員が、具体的にどのように行動するか答えた(表 7)。低血糖時の対処として は、「先生に言って保健室に行く」、「先生に言って親に電話する」だった。 血糖測定の手技、インスリン注射の手技の実施状況は表 8 に、学校での血糖測定、インスリン 注射の実施場所と対象者自身での実施の有無は表 9 に示した。血糖測定は 20 人が一人で実施 していた。血糖測定を自分一人で出来ない対象者は一人おり、現在血糖測定の手技を「親と練習

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13 している」と答えた。一人で実施している対象者の学校での血糖測定の実施場所は、教室で 6 人、 別室で 13 人であり、学校では血糖測定をしないと答えた対象者は一人であった。インスリン注射 は、17 人の対象者が一人で実施している、4 人の子供が一人で実施していなかった。インスリン注 射を一人で実施していない 4 人のうち 3 人の対象者は、現在親に見てもらいながら注射を行って いた。残りの一人は、まだ自分でインスリン注射を実施した経験がなく、注射をするときに使用する 物品が分からなかった。また、一人で実施している対象者の学校でのインスリン注射の実地場所 は、教室で 4 人、別室で 13 人だった。別室でインスリン注射を実施するという対象者の中には、ト イレで実施していると答えた対象者がいた。 一人でインスリン注射を実施している対象者が、学校でどのようにインスリンの単位数を調整して いるか確認した(表 10)。結果は、「親に事前に聞く」と答えた対象者は 10 人、「先生から教えてもら う」と答えた対象者が 6 人、「親に電話する」と答えた対象者が一人だった。 そして、学校生活において療養行動で困ったことがある時には、「先生に言う」と答えた対象者が 3 人、「先生に言って親に電話してもらう」と答えた対象者が 16 人、「親に直接自分で電話する」と 答えた対象者が 2 人だった(表 11)。 5.4 病気・療養行動への思い、病気をもつ・療養行動を行う自分についての思い 1 型糖尿病をもつ学童前期の対象者の語りから、105 個のコード、26 個のサブカテゴリ、6つの カテゴリーから構成されていた。カテゴリー毎に結果を示す。カテゴリーは【 】、サブカテゴリは 《 》、コードは< >で示す。患者の言葉は「 」で示し、研究者が文脈や質問で補った言葉は( ) で示す。 5.4.1【療養行動に対する思い】(表 12) このカテゴリーは、《療養行動の実施は面倒くさい》、《療養行動の手技は難しい》、《療養行動は 痛い》、《療養行動は怖い》、《療養行動はなんとなく嫌》という 6 つのサブカテゴリから生成されてい た。そして、子供全員から【療養行動に対する思い】が抽出された。 《療養行動の実施は面倒くさい》には、<急いでいる時血糖測定は面倒くさい>という面倒くさい という思い、<注射は準備が嫌だ>、<注射を追加打ちするのは嫌だ>、<注射を 1 回に 2 個打 つのは嫌だ>などのコードから生成されていた。嫌だという言葉が含まれているコードには、対象 者の語りの前後の文脈から、「面倒くさい」という意味合いが含まれていた。このサブカテゴリは、19 のコードから成り立っていた。 《療養行動の手技は難しい》は、<血糖測定時に服が汚れて大変である>、<カーボカウントは

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14 難しい>、<初めて自分で注射を打った時は外れないかって緊張した>などそれぞれの療養行 動の手技が難しいという思いの 4 つのコードで成り立っていた。 《療養行動は痛い》は<注射は痛い>という療養行動を痛いとするもの、<注射は痛くない>と いう療養行動は痛くないとする痛みに関する思いの 8 つのコードから成り立っていた。 《療養行動は怖い》は、<初めて注射を打つときは怖かった>、<注射は今は怖くない>と療養 行動の怖さに関する思いの 3 つのコードで成り立っていた。 《療養行動はなんとなく嫌だ》は、具体的にどこが嫌であるか分からないが嫌だという思い、なん となく嫌ではないという思いの 5 つのコードから成り立っていた。コードには、<注射は嫌な気持ち もあるが頑張ろう>と具体的にどこが嫌かは分からない思いをもちながら頑張るというもの、<注射 は嫌になったことはない>、<血糖測定は嫌じゃないかな>となんとなく嫌なものではないとする 思い、<昔も注射は嫌だった>と具体的にどこが嫌か分からないが嫌であるという思いがあった。 5.4.2【療養行動を自立することへの思い】(表 13) このカテゴリーは《注射はなるべく親にやってほしい》、《療養行動は親に言われてからやる》、 《療養行動は自分でやる》、《注射はしょうがない》、《注射はしないといけない》、《理由があるから療 養行動をしている》と療養行動は親に実施してもらうものから、療養行動は自分で理由を持って行 っているという、親から子供へ療養行動の実施の主体が変化していく 6 つのサブカテゴリにより構 成されていた。 《注射はなるべく親にやってほしい》は、<親がやってくれるなら今のままでいい>、<自分でで きない腕に痛くないからなるべくなら打ってほしい>という 2 つのコードから成り立っていた。 《療養行動は親に言われてからやる》と、<注射は親に言われるからやる>など周りから促され 実施しているという 2 つのコードで生成されていた。 《療養行動は自分でやる》は<自分で注射を打ってみたい>と療養行動に対して自主性のある 思いの1コードと、<注射は自分で出来るからやる>、<注射は面倒くさくてもやる>という療養行 動をすることに自主性がある 2 つのコードで成り立っていた。 《療養行動はしょうがない》は、<注射は仕方ない>など療養行動をすることは仕方ない、しょう がないという 5 つのコードから成り立っていた。 《注射はしないといけない》は、<1型糖尿病だから注射をしないといけない>や<CSII (Continuous Subcutaneous Insulin Infusion:持続皮下インスリン注入療法)はやらなきゃいけない

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15 >と注射はやるしかないという思いの 3 つのコードから成り立っていた。 《理由があるから療養行動をしている》は、<注射や血糖測定は自分のためにやっている>、< 血糖測定は体調をみるためにやっている>など自分なりに理由を持って療養行動を行っていると いう 3 つのコードから成立していた。 5.4.3【他者に知られることに対する思い】(表 14) このカテゴリーは、《何か言われるのが嫌だ》、《人に見られたくない》、《同じ病気の人には病気 を話せる》、《人に知られることは嫌だ》、《病気、療養行動について知らなくていい》、《人に見られ てもいい》、《病気について知ってほしい》という、知られたくない思いと知ってほしい思い、そしてど ちらにも含まれない思いの 7 つのサブカテゴリから成り立っていた。 《人に知られることは嫌》には、<友達に自分の病気をばらされて嫌だった>と今までの経験か ら嫌だったという思いのコードや<友達に色々聞かれそうだから注射は知られたくない>と友達の 反応を予測し出てきた思いのコードなど 6 つのコードから成り立っていた。 《何か言われるのが嫌だ》は、<馬鹿にされたりとかするから言いたくない>など療養行動をして いることに何か言われたくないという思いの 2 つのコードから成り立っていた。 《人に見られたくない》は、<補食しているところをみられたくない>、<みんな集まってくると恥 ずかしくて見られたくない>と療養行動を見られたくないという 4 つのコードからから成り立ってい た。 《病気、療養行動について知らなくていい》は、<周りが知っていてもいなくてもいい>と知って いても知らなくてもどちらでもいいという思いのコードと、<1 年生は知らなくていい>と学校にいる 人の一部である 1 年生は知らなくていいという 2 つのコードから出来ていた。 《人に見られてもいい》は、<注射をみんなの前で打つことは恥ずかしいことではない>と他者に 注射を見られることは恥ずかしいことではないという思い、<注射は見られても気にしない>と見ら れることを気にしないという思いの 2 つのコードから出来ていた。 《病気について知ってほしい》は、<みんなに病気について知ってほしい>という 1 つのコード から成り立っていた。 5.4.4【知られることに対する他者の反応に対する思い】(表 15) このカテゴリーは、《病気と療養行動を知ってもらえて良かった》と<病気のことを知ってもらえて いると心強い>など周りの反応に良かったと思ったものと、《病気に対する周りの反応が嫌だった》 と周りの反応に嫌だと思った経験から出てきた思いという 2 つのサブカテゴリからで形成されてい

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16 た。 《病気と療養行動を知ってもらえて良かった》は、<友達の親が自分の病気について勉強してく れて良かった>と友達の親が自分のためにしてくれた行為に対して良かったという思いや、<注射 を友達に見られたとき、何も言われなくて嬉しかった>など友達が自分の療養行動へ特に反応せ ず、その反応が嬉しかったという思いなど、5 つのコードからから成り立っていた。 《病気に対する周りの反応が嫌だった》は、<病気なの?と友達にびっくりされてショックだった >と病気であることを友達が知り、その友達の反応で嫌な思いをしたというもの、<病気がうつらな いと言ったら疑われ、イライラした>と自分の説明内容に納得してもらえないものという 2 つのコー ドから成り立っていた。 5.4.5【友達と一緒の生活をすることへの思い】(表 16) 《友達と一緒の行動が出来なくて嫌だ》は、<血糖測定、注射で遊ぶ時間がなくなるから嫌だ> と療養行動のために友達と一緒に行動できないこと、<授業中に低血糖になって具合悪くなっても 言えない>と授業中に自分が低血糖であることを伝えて周りに迷惑をかけたくないという思いの 7 つのコードから成り立っていた。 《学校生活で大変なことはない》は、<学校で困っていることはない>、<学校で大変なことはな い>という学校生活で大変なことは特に思い当たるものはなかったという 2 つのコードからから成り 立っていた 5.4.6【病気をもち療養行動を行う自分に対する思い】(表 17) このカテゴリーでは、《どうして自分だけなのか》、《療養行動している自分は普通である》、《療養 行動している自分は特別である》、《療養行動を行うことに対して何も思わない》と 4 つのサブカテ ゴリから成り立っていた。 《どうして自分だけなのか》と、<なんで自分だけ病気になっちゃったんだろう>と自分だけ病気 であることに疑問を持っている 2 つのコードから成り立っていた。 《療養行動している自分は普通である》は、<療養行動をすることは普通である>と療養行動を 実施するは自分にとって普通であるとしているコード、<注射をしていてもみんなと一緒である>と 注射をしていることは他者と異なるがみんなと一緒でいたいというような 6 つのコードから成り立っ ていた。 《療養行動している自分は特別である》は、<私しか注射はしていないしすごい>と自分は友達 よりもインスリン注射というすごいことをしているという思い、<自分は注射を頑張っている>という自

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17 分はインスリン注射を頑張っているという思い、<注射をすることは偉いことではない>とインスリン 注射をすることは偉いことか考え、その上で偉くないという思いになったという 3 つのコードから出 来ていた。 《療養行動を行うことに対して何も思わない》は、<療養行動を行うことに対して何も思わない> という 1 つのコードから成り立っていた。 5.5 副次的評価項目での分析(表 18 から 27) 副次的評価項目(HbA1c、家族の既往歴、罹病期間、発症年齢)を使用し、病気の理解、療養 行動の実施状況、および抽出されたサブカテゴリの出現頻度を統計的に分析した。 HbA1cは、国際小児思春期糖尿病学会が推奨する血糖コントロールの目標値に基づいて適切 (<7.5%)、不適切(7.5~9.0%)、ハイリスク(>9.0%)5)に分け、適切群と不適切/ハイリスク群の 2 群に 分けた。同居している家族の既往歴は家族の既往歴の有無で分けた。罹病期間は、4 か月から 7 年であった。全体の平均値が 39.1 か月だったので、3 年 3 か月を中央値として 2 群に分けた。発 症年齢は、10 か月から 8 歳 4 か月であった。乳幼児期発症の対象者と学童前期発症の対象者の 2 群に分けた。 HbA1c、同居している家族の既往歴、発症年齢に有意差はみられなかった。罹病期間が 3 年 3 か月以上の群の方が 3 年 3 か月未満の群よりも《療養行動はしょうがない》の出現頻度が有意に 多かった。

6. 考察

6.1 病気の理解 本研究の対象者が、親や医療者から自分の病気について聞いていることは、1 型糖尿病という 自分の病名やインスリン注射のことだった。1、2 年生からは、病気について具体的な言葉は語られ なかったが、3 年生の一部が「膵臓が関係ある」、「インスリンが出ていない」など具体的に自分の病 気について答えた。学童前期は、ピアジェの前操作期から具体的操作期にあたる。1 型糖尿病で あると言葉で知っているが、1 型糖尿病がどんな病気であるかという具体的なことまで結びつかな いということが、前操作期の特徴と一致する。しかし、3 年生になると具体的に答え始める対象者が 出てきており、具体的操作期の物事を部分から全体としてみることが出来るようになり始めている段 階16)であると考えた。つまり、3 年生になると、表面的な理解から、具体的な理解へと変化し始めて

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18 おり、自分の病気の理解がより具体的なものへとすすんでくる段階であると考えられる。 療養行動の実施についてどのように理解しているか確認するために、療養行動を実施している 理由と、療養行動を実施しないと仮定した場合の 2 方向から対象者に質問した。ある対象者は、 「血糖を下げるために注射している」と療養行動をしている理由を話し、療養行動をしないと「高血 糖になり入院になる」と療養行動をするとどうなるか、しなかった場合どうなるかということを関連づけ て答えていた。別な対象者は「親に言われるから」と療養行動をしている理由を話し、療養行動をし ないと「目が悪くなる、見えなくなる」と療養行動をするとどうなるか、しなかった場合どうなるかという ことを関連づけられていなかった。このように、まだ理解していることが関連づけられない対象者か ら、関連づけられている対象者までみられた。 通院理由については、「物品をもらいに来ている」、「病気だから来ている」と理由を答えた対象 者は5人で、他の対象者は「分からない」や「教えてくれないから(分からない)」と答えていた。つま り、「病気だから(病院に)来ている」と病気と通院することは関係がある、「(病院には)物品をもらい に来ている」と療養行動をすることと通院することは関係あると理解している対象者は、少ないこと が分かった。今回の調査対象者は多くが乳幼児期発症であり、発症時には医療者から親へ子供 の病気について説明される8)。通院理由について、「分からない」と答えた中には、「(どうして病院 に来るか疑問に)思ったりします。でもどうしてか分からないです」と答えている対象者もおり、親や 医療者から適切な言葉や方法で病気や療養行動について説明されていない可能性が考えられ る。また、基本的生活習慣や社会的生活習慣は、幼児期で形成される16)ことから、親や医療者か ら通院理由を説明されていたとしても、通院することがすでに対象者の生活習慣の一部となってい る可能性があると推察される。しかし、子供であってもその年齢、発達段階に応じた方法と内容で、 病気や検査や治療に関することを子供本人が納得できるように説明することは重要である11) 病気の理解において、本研究の対象者の多くは、自分の病気について聞いていること、毎日行 われている療養行動の理由、療養行動をしない場合に起こる身体の症状、通院理由が子供の中 で繋がっていなかった。つまり、病名やインスリン注射を言葉として知っていても、その意味や毎日 行っている理由を理解しているとは言えないということである。1 型糖尿病は自分の病気であるとい う言葉のみの理解でとどまっている可能性があり、インスリン注射、血糖測定など、子供なりの理解 はあると推察される。子供なりの理解とは、正しい理解とは限らず、根拠のない、子供がとらえたそ のままの理解である。これはピアジェが幼児の精神構造を表した自己中心性の特徴と一致する。 今回の調査の対象者は、前操作期から具体的操作期に移行する時期である。前操作期は、自己

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19 中心性を特徴としており、自分の知覚情報ですべてを判断している16)。そして、具体的操作期は、 具体的な事物に対しての論理的思考できるようになる16)。つまり学童前期は、病気や療養行動に ついて、通院していることについて子供なりの理解が少しずつ結びついてくる時期であると考える。 6.2 療養行動の実施 血糖測定の実施は、20 名が一人で実施しており、自分の普段使っている道具を使用し、説明で きた。また、インスリン注射は 17 名が一人で実施しており、血糖測定と同様の方法で説明できた。 学童では、インスリン注射、血糖測定、低血糖への対処が少しずつ自分で出来るようになる10)と言 われている。そして、子供にとって小学校入学は良い動機付けとなり、糖尿病自己管理に移行する 絶好の機会になる18)。つまり、小学校入学は、幼児期では親がすべて行っていた療養行動を、子 供主体へと療養行動を移行し始める良い機会になるということである。ガイドラインでも小学校入学 時には、インスリン注射や血糖測定の自己での手技は可能5)とされている。井上は、血糖測定は移 行開始年齢が 3 から 7 歳、インスリン注射は移行開始年齢が 4 から 9 歳であった14)と報告してい る。本研究では、血糖測定は全員が親から対象者へ移行を開始しており、インスリン注射は移行を 開始していない子供は 7 歳であることから、井上の研究と同様の結果だった。このことから、本研究 の対象者の血糖測定、インスリン注射の手技は適切に移行しているといえる。 低血糖の対処は、21 名全員の対象者が「先生に言って保健室(職員室)に行く」など適切な行 動を答えていた。低血糖は、1 型糖尿病の最も多い急性合併症である5)。低血糖は、学校関係者 が特に過敏になる部分である19)と言われており、医療者から学校へ渡される“糖尿病児の治療・緊 急連絡法等の連絡表20)”には軽度から高度までの低血糖が起こったときの対応が記載されてい る。低血糖への対処は、「先生に言って保健室(職員室)に行く。お母さんに言われているから。」 など対象者は具体的に行動を述べており、対象者は自分が出来る低血糖の対処の方法を親に指 示されていることが分かった。竹鼻は、乳幼児期発症の高校生とその保護者を対象とした研究で、 子供も親も低血糖の予防と対処に学校生活を送る上で苦心している21)としている。そのため、発 達認知の段階からまだ具体的に考えられない対象者に、学校という親がいない場所で対象者が苦 心しないよう親が具体的に行動を指示していると考えられる。 学童期になると、食事量も安定し、学校中心の生活となり規則的な生活を送るようになり血糖値 も安定してくる5)。親から離れて、学校生活をしている子供が安全に過ごすためには、インスリン注 射、血糖測定、低血糖時の対処といった療養行動が出来ることは重要であると考える。前操作期に

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20 ある子供は、病気の理解からも分かるとおり、色々な情報が繋がっていない。しかし、学校生活を 送るにあたっては、低血糖のように親を待たずにすぐに対処することが必要な場面も出てくる。その ため、どうして療養行動を行うかという理由の理解よりも、子供が必要な療養行動を行い、必要時に 適切な対処ができるということが重要になってくると考えられる。 6.3 病気・療養行動への思い、病気をもつ・療養行動を行う自分についての思い 6.3.1【療養行動に対する思い】 【療養行動に対する思い】は他のカテゴリーと異なり、全員がなんらかの思いを答えていた。具体 的操作期の子どもは、具体的経験があると、情報を分類・関連づけるなどの論理的思考が可能に なる。そのため、子供にとって毎日行っているインスリン注射や、血糖測定などの思いを全員がもっ ており、なんらかの思いを答えられたのではないかと考える。 今回の調査では、《療養行動の実施は面倒くさい》という思いが多く、子供にとって日々の療養 行動は少なからず負担になっていると考える。駒井らの報告でも、年少であればある程、血糖測定 の必要性を理解するよりも面倒なことは嫌であるという素直な気持ちが出ていた22)とあり、今回の研 究でも同様に療養行動は面倒くさい、嫌だなどの思いが素直に出てきていたのだと考えられる。 《療養行動は怖い》は、<初めての血糖測定は怖かった>、<初めて注射を打つときは怖かっ た>と初めて療養行動を行うことで出てくる思いであった。そして、何度か実施している子供にとっ て<注射は今は怖くない>へと思いが変化していると考える。未経験である処置は、誰でも何をさ れるのだろうという恐怖がある。そして、注射と聞くと子供は予防接種や採血のような、痛みを伴い 嫌なイメージがある。そのため、未経験であること、自分の中の注射のイメージから怖いという思い が生まれ、経験を重ねることによって怖くないという思いへ変化していったと推察できる。 《療養行動は痛い》は、<血糖測定は痛いときがある>、<血糖測定は痛くない>と子供によっ て痛みの感じ方が違っていた。鍵小野は血糖測定に関する調査で「痛みは発症時には大きな問 題であっても、時間の経過で軽減したと受け止められている」と報告していた23)が、今回の調査で は、1 型糖尿病を発症して 5 年以上の対象者で痛いという思いが出てきた一方、発症して 4 か月 の対象者が痛くないと答えており、調査結果は一致しなかった。また、インスリン注射の痛みは小児 で最も多い訴えである5)とされており、今回の調査では痛い(痛いときがある)と答えた対象者と、痛 くないと答えた対象者は同じ人数であった。中には<初めての注射は痛かった>と今は<注射は 痛くない>と時間の経過で、痛みが軽減したと答えていた対象者もいた。1 型糖尿病の患者にとっ

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21 て、血糖測定、インスリン注射は生涯にわたって必要な療養行動である。どちらも針を刺す、という 行為があり、痛みはともなう思いであると推察される。 《療養行動の手技は難しい》は、<カーボカウントは難しい>と方法を理解し実施することへの難 しさを感じている子供がいた。カーボカウントとは、食事中の炭水化物量に応じて追加インスリン量 を決める方法である5)。カーボカウントの習得は 11 歳前後であった24)と報告されており、学童前期 の子供にはまだ理解するには難しいと考える。<血糖測定時に血を出すのが難しい>は、発症期 間が 4 か月であるため手技が確立していない可能性があること、<血糖測定時に服が汚れて大変 だ>という思いは、親から子供へ手技が移行し始めているがまだ自分のものに出来ていないことか らくる思いであると考える。ガイドブックによると、小学校低学年では血糖自己測定とインスリン自己 注射能になる25)とされており、難しさはあるが、練習していくことによって手技の取得は可能であ る。今回の調査では、発症直後や療養行動の手技が対象者へ移行しているときに出てきた思いで あった。つまり、親から子供へ移行する時に出てくる、手技取得中だからこそ出てくる思いであると 考えられる。 《療養行動はなんとなく嫌》は、<血糖測定はなんか時々嫌になる>、<注射は嫌になったこと はない>と嫌(嫌じゃない)という思いに、どうして嫌であるかという明らかな理由は見られなかった。 この思いは、療養行動と、療養行動に対する思い、その思いの理由が結びついおらず、前操作期 の特徴と一致する。つまり、論理的な思考はまだ出来ず、知覚的な情報をもとにそのままとらえて おり、まだ理由が分からず、なんとなく嫌(嫌じゃない)という曖昧な思いになっていると考えられる。 6.3.2【療養行動を自立することへの思い】 このカテゴリーでは、親に療養行動をしてほしいという思いが、自分で療養行動をしたいに変化 し、それが自分で理由をもって行うに至る自立への思いの過程が抽出された。 「親がやってくれるなら今のままでいい」と親に療養行動を依存している自立の思いがまだ芽生 えていない対象者と,「より痛くない腕には自分では打てないので親になるべくなら打ってほしい」と 自立の思いはあるものの自分で手技として打つことが難しいため,《注射はなるべく親にやってほし い》という対象者がいた。出野の調査では、「学童期の子どもであっても、母親が子どもに療養行動 を促すことが困難な状況である場合、高学年になっても発達段階に見合った療養行動の実施に至 っていなかったり、療養行動を自分のこととして意識しにくい状況であった」10)と報告している。「親 がやってくれるなら今のままでいい」と対象者の思いにそのまま応じていると,自分で療養行動を出 来るように促す機会を逃してしまう可能性がある。一方で,自立への思いがあるが,手技的に未熟

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22 なために親に依存せざるを得ない場合も存在し,《注射はなるべく親にやってほしい》という子供の 自立への思いに応じたきめ細かな対応が必要だと考えられる。 また、「注射は言われるからやる」と、注射は親に促されて行う対象者がいた。《療養行動は言わ れるからやる》という思いは、手技は自立しているが、行動に対する自立の思いが芽生えていない 状況であると推察される。 <自分で注射を打ってみたい>という主体的な思いをもっている対象者と、<注射は自分で出 来るからやる>、<注射は面倒くさくてもやる>と行動内容に主体性がある対象者が、《療養行動 は自分でやる》という思いをもっていた。思いや行動内容に主体性が出てきており、自立への思い が芽生え始めていることが考えられる。 《療養行動はしょうがない》、《注射はしないといけない》、《理由があるから療養行動をしている》 という思いは、療養行動の必要性を対象者なりに理解している思いであると考える。学童前期の子 供は、具体的な体験について理解することが出来る。そのため、毎日療養行動を行っていることか ら必要性を考え、行っていることの理由を自分なりに考え始めていることが示唆された。 谷は、患児の主体性が現れていても、必ずしも療養行動が適切になるとは限らない、患者自身 の判断・意味づけがあることが療養行動を適切に行うことには重要と示唆している26)。つまり、<自 分で注射を打ってみたい>という主体性の気持ちだけではなく、<療養行動はやるものである>と いう療養行動の必要性の意味づけは、適切な療養行動を自立して実施していくにあたり重要であ ることがうかがえる。 また、《療養行動は言われるからやる》という思いをもつ対象者は、合わせて《療養行動は自分で やる》もしくは《理由があるから療養行動している》という思いを持っていた。これは、親に言われる からやるという思いが、自分で療養行動をしたいに変化し、それが自分で理由をもって行うに至る 自立への思いの過程途中であり、思いが移行している途中で重なっていたと考えられる。 6.3.3【他者に知られることに対する思い】 《病気について知ってほしい》など自分の病気について知られることを肯定的に思っている対象 者と、《人に知られることは嫌》など他者に知られることに対して否定的な思いをもっている対象者 がいた。 《病気について知ってほしい》という思いをもっている対象者は、「(知ってほしい理由は)具合悪 くなっても誰か助けてくれる」と知ってもらうことによる良いことを語っていた。そして、「K のクラスの みんなが K のふらふらするところを見て、大丈夫とか言ってくれるの」と実際に、低血糖になったと

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23 きに周りから声をかけてもらったという経験をしており、その経験を良いものとしてとらえていた。ま た、「注射をみんなの前で打つのは恥ずかしいことではない」と療養行動を《人に見られてもいい》 と思っている対象者もいた。 一方で、《人に知られることは嫌》、《人に見られたくない》、《何か言われるのが嫌だ》という思い を持っている対象者は、これまでの<友達に自分の病気をばらされて嫌だった>という経験や、< 馬鹿にされたりとかするから言いたくない>という知られた場合の周りからの反応を予測していた。 つまり、知られることによって起こるだろう良くないことを対象者なりに考えていた。 知ってほしい、知ってほしくないという明らかな思いをもつ対象者がいる一方で、《病気、療養行 動について知らなくていい》と<周りが知っていても知らなくてもいい>と話していた対象者がい た。この対象者からは、学校で困っている具体的なことは語られなかった。幼児期に 1 型糖尿病を 発症した青年の体験において、年少時には困難が生じても家族や学校の教員等が自分の気づか ないところで協力し対応してくれた27)という報告もある。知っていても知らなくてもいいと話している 対象者はこの報告と同様に、すでに自分の周りのサポートが整っており、対象者にとって必要なサ ポートが自然に受けられている可能性があると考えられる。そのため、困っていること、大変なことを 感じることなく学校で生活しており、知られる、知られないことに対してまだ考えたことがないのでは ないかと考えられる。学童前期の発達は、前操作期から具体的操作期へ移行している途中であ る。そのため、まだ考えたことがなく、思いを持っていない子供がいることは想定される。そして、具 体的操作期へ移行していくと、具体的な事物に対しての論理的思考ができるようになる。そのた め、知ってほしい,知ってほしくないという明らかな思いと、知っていても知らなくてもどちらでもいい という思いが出てきたのではないかと推察される。 また,《同じ病気の人には自分の病気を話せる》という対象者は,同時に友達に病気についてば らされたことから《人に知られることは嫌》と話していた。明確な理由は語られなかったが,これは同 じ病気の人は自分のことをわかってくれるという思いからきていると推察される。同じ病気をもつ人 は,同じように療養行動を行っている。そのため、話しやすいという状況になったのではないかと考 える。 6.3.4【知られることに対する他者の反応に対する思い】 このカテゴリーでは、《病気と療養行動を知ってもらえて良かった》と他者の反応に肯定的な思い を持つ対象者と、《病気に対する周りの反応が嫌だった》と他者の反応に否定的な思いをもつ対象 者がいた。

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24 知ってもらえて相手の反応が良かったとしている思いは、<友達の親が自分の病気について勉 強してくれて嬉しかった>と他者が自分のために自分の病気について勉強してくれたこと、<自分 の身体を心配してもらえて嫌じゃなかった>と自分が病気であることを受け入れてもらい気遣っても らえたこと、<注射を友達に見られたとき、何も言われなくて嬉しかった>と周りが行なっていないイ ンスリン注射をしていても注目されなかったことと、周りが自分の病気、それにともなう療養行動につ いて理解してくれており、他者が自分を過度に特別視しなかったことからきていたと考える。 知られて他者の反応が嫌だったとしている思いは、<病気なの?と友達にびっくりされてショック だった>、<病気がうつらないと言ったら疑われイライラした>と友達の反応が嫌である思いだっ た。知られて他者の反応が嫌だったと答えた対象者は、いずれも何らかの療養行動を教室という友 達がいる場所で行っており、療養行動をしていることを隠しているわけではなかった。そのため、自 分の病気について知られることが嫌だということではない。そのため、今回の調査で嫌だったとして いる思いは、病気という言葉の誤解からきている思いであると考えられる。武田は、中学生より小学 生の方が、「自分が患ったことがある」「家族や親戚が患ったことがある」病気を思い浮かべる比率 が有意に高かった28)、としており、友達は風邪やインフルエンザなどを思い浮かべた可能性があ る。しかし、対象者は自分の病気である 1 型糖尿病としているので、友達の思い浮かべる病気と一 致しない。そのため、誤解が生じ知られて他者の反応が嫌だったとしている思いにつながったと考 えられる。学童前期の生活の中心は学校であり、子供にとっての他者は、多くが同年代の友達であ ると考えられる。そのため、学童前期においてこのような誤解は起こりやすい可能性が高いことが推 測される。また、発達段階から誤解が生じても対象者が病気のことを友達が理解できるように説明 できない可能性がある。 そして、《病気に対する周りの反応が嫌だった》と他者の反応に否定的な思いをもつ対象者は、 【他者に知られることの思い】にある《人に知られることは嫌》などの知られたくないという思いは持っ ていなかった。同様に、《病気と療養行動を知ってもらえて良かった》という肯定的な思いをもつ対 象者も《病気について知ってほしい》のような知ってほしい、みられてもいいという思いには繋がっ ていなかった。これは、病気の理解と同様に、前操作期にある子供は色々な情報が繋がっていな い。そのため、良かった、嫌だったという経験が、他者に知られることへの思いに繋がっていなかっ たのだと推察される。 6.3.5 【友達と一緒の生活をすることへの思い】 《友達と一緒の行動が出来なくて嫌だ》と友達と一緒の行動が出来なくて嫌という思いをもつ対

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25 象者と、《学校生活で大変なことはない》と大変ではないという思いをもつ対象者がいた。 友達と一緒の行動が出来なくて嫌という思いをもつ対象者は、<血糖測定、注射で遊ぶ時間が なくなるから嫌だ>、<血糖測定、注射で給食当番に遅れて面倒くさい>などと療養行動のため に遊ぶ時、給食の時に友達と一緒に行動できないことへの思い、<友達がやっていないから注射 や血糖測定は嫌だ>と自分が友達と違うことをしているので嫌だと感じている思い、<授業中に低 血糖になって具合悪くなっても言えない>と授業中に自分が低血糖であることを先生に伝え授業 を中断して友達や先生に迷惑をかけたくないというものがあった。これらの思いは、友達と一緒に 行動したい、友達と一緒の行動がいい、授業中に和を乱したくないというものだった。 慢性疾患をもつ子供の親は、健康な子供と同じように生活できるように努力していた、という報告 29)があり、その親がもつ気持ちは子供に影響していると考える。子供は、小学校入学を機に、親と 一緒の生活から、友達との生活の場である学校という場所が加わってくる。今までは、親が子供の 生活に合わせて行っていたが、学校に行くようになると周りの友達と同じように行動する機会が多く なる。そのため、療養行動によって友達と一緒に出来ないことが経験として実際に起こり、友達と一 緒に行動したい、友達と違うことをしているので嫌だという思いが生じてきたのだと考えられる。 一方で《学校生活で大変なことはない》と答えた対象者は、《病気、療養行動について知らなくて いい》と同様に、すでに自分の周りのサポートが整っており、対象者にとって必要なサポートが自然 に受けられている可能性があり、大変なことを感じることなく学校で生活できているからではないか と考えられる。 6.3.6【病気をもち療養行動を行う自分に対する思い】 このカテゴリーでは、《療養行動を行うことに対して何も思わない》と療養行動を行う自分につい て思いをもってない思いから、《療養行動している自分は普通である》、《療養行動をしている自分 は特別である》と療養行動をしている自分への思い、病気であることや療養行動を実施することを 《どうして自分だけなのか》と疑問に思っていた。 《療養行動を行う自分に対して何も思わない》と答えている対象者は、療養行動を行う自分につ いて考えたことがない可能性があること、療養行動をしている自分と病気の自分などの情報をうまく つなげて考えられない可能性があると考えられる。病気を持つ自分について、肯定的な思いや否 定的な思いは先行研究7,31,32,33,34)からも見いだせたが、何も思わないという思いは先行研究からは 見いだせなかった。本研究の調査で、何も思わないと語った対象者は 1 年生であり、発達の段階 から一つ一つの行動や思いやが結びつけられないと考えられる。そのため、《療養行動を行う自分

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26 に対して何も思わない》という思いは、前操作期の子供特有の思いであると推察される。 《療養行動している自分は普通である》という思いを持っている対象者は、療養行動をすることを 習慣として受け入れており、病気のある自分、療養行動を行う自分を当たり前と思っていると考えら れる。これは、中村の「年少発症の小児/青年は、糖尿病や療養行動をふつうととらえている者が多 い」という報告7)と一致する。幼児期発症の子供は、発症時の幼いときから病気と共に成長してい る。そのため、幼いときから毎日療養行動を行っている。そのことから、療養行動が日常生活の一 部となっており、普通という思いになっていると考えられる。 また、《療養行動をしている自分は特別である》という思いをもっている対象者は、自分を否定的 にはとらえず、肯定的に捉えていた。これは、前操作期の自己中心性や幼児的万能感に近いもの であると考えられる。幼児的万能感とは、幼児期にみられるもので自分は万能だという感覚のことで ある。そして、自己中心性は、自分以外の視点に立って物事を客観的に考えることが出来ない。つ まり、他者認識における自己知覚が未発達であるといえる。学童前期は、幼児期の次の段階であ る。そのため、幼児万能感のような自分は頑張っているやすごいという思いが出てきたと考えられ る。 一方で、中村は「年少発症の小児/青年病気のためにうまくいかないという否定的なとらえ方を する者がいた」と報告7)している。今回の調査で、<なんで自分だけ病気になっちゃったんだろう >、療養行動を<みんなやっていないのにどうして自分だけやるんだろう>と語っている対象者が おり、《どうして自分だけなのか》という否定的な思いがみられた。これは、具体的操作期における、 自分を他者として外側から捉えることができるようになってきているため、生じていると考える。 学童前期の子供は、自分中心の視点から、徐々に周りを見ることができるようになり他者と自分 を比較できるようになってくる。そして、成長していくにつれ自分の立ち位置を確立していく。そのた め、何も思いをもっていない子供から、他者と自分を比較し、自分は普通である思い、自分は特別 である思い、自分の病気をどうして自分だけなのかという思いへと移行していく様子がみられたの だと推察される。 6.4 副次的評価項目での分析の考察 副次的評価項目での分析で有意差が認められたのは、罹病期間と《療養行動はしょうがない》で あった。《療養行動はしょうがない》は罹病期間が 3 年 3 か月未満の対象者にはみられない思いだ った。つまり、罹病期間の長い対象者がもつ思いであった。1 型糖尿病は、生涯に渡って療養行動

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