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特例年金制度研究会の意見書(項目案)

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Academic year: 2021

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平成 20 年財政再計算と特例年金制度の見直しについて

-特例年金制度研究会意見-

当研究会は、農林年金の平成 20 年財政再計算と特例年金制度の見直しについて平成 19 年 3 月から 7 回にわたり研究を行い、以下のとおり意見を取りまとめた。 はじめに 農林年金が支給する特例年金は、平成 18 年に行われた財政試算では約 2,900 億円の 財源が不足し平成 26 年度にも現行制度の維持が困難になると見通されていた。 このため、農林年金では当面の財政対策として、平成 20 年 10 月から特例業務負担 金の負担率引上げと保有不動産の売却を行った。当研究会は、収支均衡を図るための 特例年金制度の見直しが平成 20 年の財政再計算時の取り組み課題とされたことを受 け、特例年金制度の見直しについて意見を求められた。 平成 15 年 6 月の前回研究会意見で指摘したとおり、厚生年金との統合は、そもそ も旧農林年金制度にあった厚生年金相当部分(公的年金部分)を厚生年金に移管し、 職域年金部分を経過的な仕組みとして清算していくことを意味していた。 この旧制度の清算という視点からすれば、年金制度改革をめぐる情勢が不透明であ り、未曾有の社会経済情勢の中ではあるが、財政均衡を図るために不断の努力を傾け、 組織関係者の合意をとりつつ、漸進的な制度完了に向けて取り組むことが望まれる。 その意味からも、将来の制度完了を見据えて新たに一時金払い制度を導入すること を農林年金関係組織が決定したことは、評価されるところである。 1.現行制度における 20 年財政再計算(平成 20 年 9 月実施) (1)計算の前提 ① 農林漁業団体の役職員数が、将来どのように変化していくのかは、現時点で的 確に見通すことは難しいものの、役職員数の変化は特例年金制度を支える特例業 務負担金収入に直接影響を及ぼすこととなることから、役職員数の見通しについ ては、保険者として保守的に見ておく必要がある。 そこで、今回の再計算の前提は、各系統組織における今後の要員数見込みを踏 まえ、計算初年度から負担金収入が終了する平成 43 年度に向けて、現時点よりも 約 10 万人減少する前提となっており、妥当なものと考えられる。なお、この見通 しは平成 15 年の前回再計算の前提よりもさらに厳しいものとなっている。

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② 次に経済前提条件については、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りのいずれ についても、平成 20 年度から 24 年度の足下と、25 年度以降の長期の設定に分け ている。足下の設定は、現下の経済情勢や農林年金の実態をとらえて設定され、 長期の設定は、物価上昇率を厚生年金制度の設定を参考に 1%とおいた点、賃金 上昇率は実質賃金上昇がないものとして物価上昇率と同率の 1.0%と見込んだ点、 運用利回りは積立金を崩しながら運営していく状況を踏まえ 2.0%とした点、い ずれも再計算時点において妥当なものと考えられる。 (2)財政再計算結果 ① これらを前提とした現行制度での財政再計算結果を見ると、収入現価と支出現 価を比べて不足する収入現価は 680 億円と計算された。収支見通しでは、現行の 負担率で据え置いた場合、平成 52 年度には積立金が枯渇する結果となっている。 また、均衡負担率は平成 21 年 10 月から 2.331%(0.291%引上げ)と計算された。 ② これは、農林年金が当面の財政対策として実施した負担率引上げ及び保有不動 産売却前には約 2,900 億円の財源が不足し、平成 26 年度に積立金が枯渇するとの 見通しであったことに比べれば、当面の財政危機は回避されたと見ることもでき る。 しかし、大きく改善されたとはいえ、特例年金財政の収入現価が支出現価を下 回る構造自体が基本的に改善されたわけではなく、財政収支の均衡に至っていな い状況には変わりはないことから、危機感を緩めることなく特例年金制度の給付 と負担の見直しに取り組むべきである。 2.財政再計算結果を踏まえた特例年金制度の見直し (1)特例年金給付と負担の見直し ① 既裁定年金の給付減額については、憲法で保障された財産権の侵害にあたる可 能性など法制上の制約があることから、現在の特例年金制度の置かれた状況から すれば困難が伴うと考えられる。 ② また、農林漁業団体の現役及び待期者にかかる未裁定年金の給付減額について は、既裁定年金の場合に比べれば法制上の制約は少ないと考えられるものの、世 代間の不公平を拡大することになるため、未裁定年金のみの給付減額は避けるべ きである。 なお、特例年金制度は、厚生年金との統合に伴い、旧農林年金制度にあった職

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域年金部分を清算するため、経過的な仕組みとして統合法に規定されたものと考 えられ、既裁定年金と未裁定年金とに他の公的年金ほど明確な区分はできない。 ③ 一方、特例年金制度の基本的な枠組みからすれば、まずは農林漁業団体の負担 の見直しが検討されるべきである。しかし、農林漁業をめぐる厳しい環境の下、 農林漁業団体の経営が総じて厳しいものとなっており、かつ、地域間、系統間、 団体間で収益格差が拡がっている現状では、当面負担の増加は難しいということ は理解できる。 なお、特例業務負担金の賦課対象としては、賞与も対象とした総報酬制の方が 団体の経営基盤をより反映したものとなること、団体の負担能力を測る基準とし て合理的であること、団体間の負担の公平性を確保することができることから、 優れていると考えるが、賦課対象の見直しは団体間での負担増減を伴うので、さ らに検討し議論を深められたい。 ④ 特例年金制度の給付と負担の見直しが当面難しいことは理解できるところで あるが、引き続き、社会保障や公的年金制度をめぐる改革の動向を注視し、機会 を逸することなく特例年金制度の見直しに取り組む必要がある。 (2)特例年金制度の将来的な清算 ① 繰り返しになるが、特例年金制度が厚生年金との統合に伴い、もはや清算的な 役割を担うにとどまるものであることにかんがみれば、やはり早期に制度清算し 完了させるのが本来的な方向性であろう。 その意味で、農林年金関係組織が負担金の徴収期限である平成 43 年度末を目途 に財政の均衡を図りつつ漸進的に制度完了する方向を目指すとしたことは首肯で きる。 ② 制度完了の枠組みとしては、企業年金解散の例にならい残余積立金を分配する 方法、特例年金給付総額に見合う資産を確保した段階で一時金払いする方法等、 現行統合法の枠組みにとらわれることなく、様々な仕組みを検討し、将来のグラ ンドデザインを示す必要があろう。様々な仕組み、選択肢を現時点で考えられる 範囲内で示した上で、それぞれのメリット、デメリット、解決すべき課題につい て検討し議論を深めることが望まれる。 (3)新たな一時金払い制度の検討 ① 農林年金関係組織は、将来的な制度完了に向けて新たな一時金払い制度の導入 を組織合意した。将来的な制度完了に向けてという以上、制度完了の枠組みを具

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体的に描き、そこに到達するまでの一つの手法として一時金払い制度があるとい う整理が望ましい。 ② しかし、制度完了のためには法律改正が必要であり、直ちにはできないという 現実問題があることも事実であり、そのバリエーションとして選択性の一時金払 い制度を位置づけることができよう。そうすることによって、組合員だった者の 選択肢が拡大され、この選択肢へのニーズが存在する限り年金受給者の増加を抑 え、役職員数の変動や社会経済情勢の変動によるリスク、不確定要素の抑制が可 能となり、将来的に年金額も少額のものが大半となる状況となれば、制度完了は 抵抗感なく進めることもできると考えられる。 3.一時金払い制度の導入について (1)一時金払い制度の位置づけと導入理由 ① 一時金払い制度は、厚生年金との統合法附則第 48 条の規定に基づき、受給権者 の請求選択により特例年金給付の支給に代えて一時金を受給できるとするもので あり、請求時点において一括前倒しで受給するという特例措置である。 ② 公的年金制度は終身年金であり、こうした一時金払い制度はなく、特例年金制 度としての特例であるが、このことは、正に厚生年金との統合に伴い生活保障的 な役割は厚生年金に移管し特例年金制度がもはや統合前期間の清算的役割を担う ものであることの裏づけであるといえる。 ③ 特例年金は、統合前の職域年金部分に相当するものであり、かつ、算定基礎期 間が統合前期間に限定されているため、給付は比較的少額であるし、少額年金者 の割合が今後ますます高まっていくと見通されている。 ④ このことにかんがみれば、少額年金を年金払いとして受給するよりは一括前倒 しで支給するほうが受給者の多様なニーズに応えられるほか、農林年金における 事務コストの軽減も図ることが期待できるため、一時金払いは特例年金給付の性 格、役割に適した制度であるといえよう。厚生年金との統合法が一時金払い制度 導入の可能性を定めている以上、受給権者の期待に応えるべく一刻も早い制度導 入が望まれるところである。 なお、事務コストの軽減の観点からは、一時金払い制度に加え、法律改正事項 ではあるが送金回数の見直しについても検討されるべきである。 (2)一時金払いを請求できる者の範囲

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① 厚生年金との統合法附則第 48 条の規定では、一部障害給付等を除外しているの みで、一時金払いが請求できる者の範囲を特に制限していない。 ② ただし、統合時既裁定年金には、従前額保障の措置がとられており、将来の物 価上昇等に応じた年金額改定により年金額が変動するものであることから、一時 金計算の基礎となるべき将来の年金給付を合理的に計算することが困難である。 また、統合時既裁定年金に対象を拡げた場合、一時金払い制度実施直後から財 源不足が生じ、その後の年金支給に支障をきたしかねないというリスクが考えら れる。 このため、当面、これを対象者から除外することはやむを得ない。 ③ このような点から考えると、従前額保障のない統合後に裁定された特例老齢農 林年金の受給権者とこれから支給開始年齢に到達し特例老齢農林年金の受給権 を取得する者に限って一時金払い制度の対象とすることは、現時点では妥当な措 置だといえる。 (3)一時金額算定方法 一時金額の算定にあたっては、厚生年金との統合法附則第 48 条に「年金である給 付に代えて一時金を支給することができる」と規定する趣旨を尊重するものでなけ ればならない。 したがって、一時金の額は、年金である給付を終身で支給する場合と実質的に同 等の額として定めることになり、これは請求時点における生命年金現価そのものを 一時金の額とすることに他ならない。 (4)一時金額計算に用いる割引率 ① この生命年金現価を計算する場合の年金現価率の算定に用いる割引率について は、公的年金における一時金計算の際の一般的な指標である厚生年金の予定運用 利回りを参考とすることが妥当であろう。厚生年金の予定運用利回りは、長期的 な市場金利の動向や主要金融資産の期待収益率等を踏まえて「長期の運用利回り」 が推計設定されていること、直近の経済情勢を踏まえて「足下の運用利回り」が 設定されること、さらには設定にあたって、政府の審議会である社会保障審議会 年金部会(経済前提専門委員会)での客観的な審議を経ていることから指標とし て合理的であり、客観的であると考えられるためである。 ② 一方、農林年金の財政再計算上の予定運用利回りを用いることも考えられるが、 特例年金の財政運営は、基本的に負担金収入と積立金の取り崩しにより給付支出

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等を賄う仕組みであり、中長期的な運用に相当の制約を伴うものであることから、 指標として適当ではない。 ③ また、対象となる受給権者一人一人に対しては、的確な選択ができるよう事前 に年金額及び一時金額等を通知する責任がある。この場合、一時金計算に用いた 割引率についても明確な説明が必要である。 (5)一時金額計算に用いる予定死亡率 ① 生命年金現価を計算する場合の年金現価率の算定に用いる予定死亡率について は、男女の余命の違いを反映させるため、完全生命表における男女別の死亡率を 用いることが適当である。 ② 特例年金給付の金額については、一時金給付も含めて、算定基礎条件が同じで あれば男女差はない。しかし一時金払いは、年金払いに代えて行われるものであ ることから、受給期間の長さと受給総額に着目する必要がある。男女別の予定死 亡率を用いて計算することで、男女それぞれにおいて、将来受け取る年金受給総 額と一時金額との間に過不足が生じなくなる。 ③ なお、一時金額の計算にあたって男女別の死亡率を用いることは、社会通念上 不合理であるとはいえないと考える。 (6)一時金払い制度を導入した場合の財政運営 ① 一時金払い制度を導入すると、制度実施年度から多額の給付支出が見込まれる ため、割引率や選択率にもよるが、現行制度に比べて積立金減少度合いが大きく、 中途年度において一時的に積立金が枯渇するリスクもある。 ② そのため、一時金払い制度が導入された場合は、制度内容を織り込んだ財政見 通しをあらためて作成する必要がある。特に、導入初年度の実績を踏まえた財政 見通しは、今後の財政対策にとっても重要な位置づけとなろう。一時金払い制度 を導入したために財政運営が困難となるという事態はあってはならないのであり、 これまで以上に慎重かつ適切な財政運営が望まれる。 おわりに 一時金払い制度は、将来の制度完了を視野に入れて導入するとされており、年金受 給者、これから受給することとなる者、そして農林漁業団体にとって重要な利害関係 を生じさせる事項である。十分な情報公開に努め、これら組織関係者の信頼を維持し

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ていくことが重要である。 また、一時金払い制度は、受給者個人にとっては、将来のことが予測できない中で の選択となるほか、いったん請求すると年金払いへの選択替えができない。受給者個 人からみればその選択に際しては慎重な判断が要求される。 後々受給をめぐるトラブルが起きることがないよう、対象となる受給権者個人に対 し丁寧で分かりやすい説明を行うとともに、相談照会等に万全を期すよう要望する。 平成 21 年 4 月 9 日 特例年金制度研究会 委 員 伊 藤 健 一 (独立行政法人農業者年金基金 理事長) 坂 本 純 一 (株式会社 野村総合研究所 主席研究員) 高 山 憲 之 (座 長 一橋大学経済研究所 教授) 中 川 坦 (独立行政法人農業者年金基金 前理事長) 峯 村 栄 司 (社団法人 共済組合連盟 常務理事) 森 戸 英 幸 (上智大学法学部 教授) (特記)委員の交代のため在任期間は、中川委員平成 20 年 12 月まで、伊藤委員 21 年 1 月からである。

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