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イタリアの有機農業(要旨)

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2008-AFC コンサルタント調査 7

平成

20 年度 コンサルタント調査

イタリアの有機農産物の現状調査

2009 年 3 月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

農林水産部

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はじめに イタリアは欧州で最大、世界でも第4 位(2006 年)の有機農地面積を有しており、有 機農家も多数存在し、「有機農業先進国」ともいえる。しかし、これまで米国やドイツ等 の事例が紹介されることがあっても、イタリアのこうした現状が日本ではほとんど認識 されておらず、市場に関する詳しい情報も不足しているのが実状である。 このような視点を基に本書は、ジェトロ・ミラノセンターがイタリアにおける有機農 業および生産物の市場について調査し、有機認証基準と認証機関、有機農業の歴史、市 場概況や流通構造などについて取りまとめたものである。本稿ではさらに、有機関連団 体の取り組み、スローフードやアグリトゥーリズモの状況など、イタリアの特徴的な動 きについても紹介している。 本報告書が、今後の日本における有機農業や有機生産物のあり方を展望するうえでの 参考となれば幸いである。最後に、本調査にご協力いただいたイタリア・日本両国の関 係各位にお礼を申し上げたい。 2009 年 3 月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 農林水産部

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【免責事項】 ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随 的、あるいは懲罰的損害及び利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、 あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これ は、たとえ、ジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。 本報告書は信頼できると思われる各種情報に基づいて作成しておりますが、その正確性、 完全性を保証するものではありません。ジェトロは、本報告書の論旨と一致しない他の資料 を発行している、または今後発行する可能性があります。

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目 次

要 約 ... 1 Ⅰ.有機基準・認証制度、政策 ... 2 1.有機生産の主要な定義と原則 ... 2 (1)EUによる定義 ... 2 (2)IFOAMによる定義 ... 3 (3)イタリアの定義 ... 3 (4)流通上の「有機生産」の定義 ... 3 2.認証機関、有機農業のための基準 ... 4 (1)認証機関 ... 4 1)国際的認証機関 ... 4 2)イタリアの認証機関 ... 5 ① スオーロ・エ・サルーテ (Suolo e Salute) ... 6

② ICEA (Istituto per la Certificazione Etica ed Ambientale)... 7

③ IMC (Istituto Mediterraneo di Certificazione) ... 8

④ デメター(Demeter) ... 8

(2)認証機関以外の有機農業促進機関 ... 9

① AIAB (Associazione Italiana per l’Agricoltura Biologica) ... 9

② AMAB (Associazione Mediterranea Agricoltura Biologica) ... 10

③ FederBio (Federazione Italiana di Agricoltura Biologica)... 10

(3)認証基準 ... 11 1)EU ... 11 2)イタリア ... 16 (4)認証のプロセス ... 18 3.政策 ... 19 (1)EU ... 19 (2)イタリア ... 20 Ⅱ.有機農産物の生産状況 ... 23 1.イタリア有機農業の特徴 ... 23 (1)イタリア有機農業の歴史 ... 23 (2)世界の有機農業の中のイタリア ... 23 2.イタリアの有機生産の概要 ... 29 (1)有機農地面積、有機農家数と規模の推移 ... 29 (2)州、地域ごとの有機生産状況 ... 32 3.国内品目別生産状況 ... 35 (1)個別品目 ... 35 4.輸入状況 ... 36 (1)大陸別輸入の推移 ... 37 (2)個別品目 ... 38

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Ⅲ.有機農産物の販売状況 ... 39 1.流通構造 ... 39 (1)有機生産物の流通経路(生産者、卸売業者、加工業者、小売業等) ... 39 2.国内小売市場の状況 ... 43 (1)市場規模推移 ... 43 (2)品目別の有機食品消費動向 ... 44 (3)販売チャネル別 ... 44 1)卸売業者 ... 44 ① 仕入れ先... 45 ② 卸先 ... 45 2)スーパーマーケット ... 46 ① 仕入れ先... 46 ② 販売状況... 46 3)有機食品専門店 ... 46 ① 仕入れ先... 46 ② 販売状況... 47 4)農家直売 ... 47 5)宅配 ... 48 6)インターネット販売 ... 48 7)ファーマーズ・マーケット ... 49 8)有機学校給食 ... 49 (4)地域別有機生産物消費チャネル ... 50 (5)有機製品の価格 ... 51 1)小売価格の変化 ... 51 2)有機製品と一般製品の価格差 ... 52 3.輸出状況 ... 53 4.有機食品に対する消費者の傾向 ... 54 (1)有機食品消費の流れ ... 54 (2)有機食品消費者の家族構成別/年齢別購入傾向 ... 55 5.生産者団体・個別農家の取り組み ... 55 (1)有機生産への取り組み ... 55

① 農業協同組合アルチェ・ネーロ(Alce Nero Cooperativa) ... 55

② コナピ(CONAPI) ... 56

③ 農業協同組合カッシーナ・コルナーレ(Cascina Cornale) ... 58

④ リーベラ・テッラ(Libera Terra) ... 59

⑤ 「有機の里」ヴァレーゼ・リーグレ(Varese Ligure) ... 60

⑥ テヌータ・ヴァンヌーロ(Tenuta Vannulo) ... 62

⑦ マリオ・トレッリ(Az. Agricola Mario Torelli) ... 63

⑧ チーズ製造工房サンタ・リータ(Caseificio Sociale S. Rita) ... 63

(2)あえて有機認証を受けない事例 ... 64

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② カッシーナ・サヴォイアルダ(Azienda Agricola Cascina Savoiarda) .... 64 ③ サン・デズィデリオ(San Desiderio) ... 65 Ⅳ.イタリアの特徴的な動き ... 66 1.スローフード協会 ... 66 (1)歴史と会員の推移 ... 66 (2)「サローネ・デル・グスト」と「テッラ・マードレ」 ... 70 (3)スローフードとは何か ... 71 2.アグリトゥーリズモ・ビオロジコ(有機のアグリトゥーリズモ) ... 74 (1)アグリトゥーリズモの歴史と定義 ... 74 (2)アグリトゥーリズモの推移 ... 75 (3)アグリトゥーリズモ・ビオロジコの例 ... 77

3.「有機の町」協会(Associazione “Citta’ del Bio”) ... 77

(1)アイデンティティーの町全国協会 ... 77

(2)「有機の町」協会(Associazione “Citta’ del Bio”) ... 78

① 「有機の町」憲章 ... 78 ② ネットワーク拡大の取り組み ... 80 4.山岳共同体(Comunita’Montana) ... 80 Ⅴ.課題と展望 ... 82 1.課題 ... 82 (1)有機農業促進活動 ... 82 (2)認証手続きの問題 ... 82 (3)流通 ... 82 (4)有機生産物中のGMO含有率の問題 ... 82 2.将来の展望 ... 83 Ⅵ.関連機関リスト ... 85

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要 約

イタリアの有機生産は、現在世界で 4 位程度の規模といわれている。オーストラリア、 中国およびアルゼンチンなど国土面積の大きな国が上位を占める中で、日本の5 分の 4 ほ どの面積のイタリアが上位に位置することは特筆に値する。 現在は有機農業先進国として知られるイタリアだが、その歴史は英国、ドイツやフラン スに遅れをとっていたと言わざるを得ない。1960 年代後半になって「スオーロ・エ・サル ーテ協会」が結成され、イーヴォ・トッティ等の個人的活動が活発になり、ジーノ・ジロ ロモーニが先達の教えを受けながら協同組合を結成し、組合内部の有機農業規則を作り上 げたのは1970 年代に入ってからだった。1982 年には消費者運動と生産者団体が結びつい て、全国レベルの有機農業推進組織「有機とは何かに関する全国委員会 (Commissione Nazionale Cos’e’ Biologico)」が誕生し、これを前身として 1988 年に組織された AIAB(イ タリア有機農業協会)が、初めて「イタリアの有機農業規則」を発表した。しかし、イタ リア全土での有機農業の本格的な成長は、1991 年の理事会規則(ECC)第 2092/91 号以降と なる。 イタリアの有機生産規則は、EEC 規則第 2092/91 号および第 1804/99 号に従って制定さ れた有機認証システムに関する国内法令第220/95 号と農林政策省令第 91436/2000 号であ る。しかし、これは認証システムに関する法律であり、各州はこれに従ってそれぞれの認 証システムに関する州法を定め、理事会規則に従った有機生産の管理を行うことになって いるため、州の事情によって運営上の「厳しさ」に差があると言われている。 1990 年代後半に大きく成長したイタリアの有機農業生産は、2001 年を境に減少に転じ、 現在は頭打ち状態にある。一方、一般消費の落ち込みにもかかわらず、有機生産物の国内 消費は大きく伸びている。イタリアの有機生産物はかなりの割合が輸出されているとみら れており、生産が消費に追いつかない事態も一部で懸念されている。 また、有機生産物が一般の食品と同じ扱いで流通することも多く、有機生産物流通の組 織化の必要性が叫ばれており、何よりも、2009 年 1 月 1 日より施行される理事会規則第 834/2007 号の運営システムを早急に築くことが緊急の課題となっている。

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Ⅰ.有機基準・認証制度、政策

1.有機生産の主要な定義と原則 (1)EU による定義 「有機生産」に関する定義は、欧州委員会(EU)の規定や報告の中で以下のように説明 されている。 理事会規則 (EEC 規則)第 2092/91 号の中で、有機生産に関する明確な定義は見当たらな いが、第2 部付則Ⅰの 4 で有機農業について以下のような記述がある。 「自然の中、林の中または農地の中で育つ食用植物とその収穫物は、以下の条件満たせ ば有機生産の方法と考えられる: −収穫から 3 年前にさかのぼって、付則Ⅱ(注:2.(3)-1)参照)に示したもの以外の製品 を使用していない土地であること −収穫が自然の生物生息の均衡や収穫地の中の種(しゅ)を損なわないこと」 また、2004 年のアクション・プラン制定に先立つ報告書(2002 年)では、有機農業を次 のように定義した。 「有機農業とは、再生可能な資源、リサイクルおよび廃棄物の中に含まれる栄養分の土 壌への変換に重点を置く生産管理システムである。畜産においては、特に動物福祉と天然 の飼料使用に力点が置かれる。有機農業は、自然の持つ仕組みを利用して、農作物や家畜 への病虫害を予防し、化学殺虫剤、除草剤、化学肥料、成長促進剤等の使用や遺伝子操作、 病気予防のための抗生物質やホルモン剤の使用を避ける。EU においては、成長促進のため のホルモン剤の使用は、生産物の種類を問わず全面的に禁止されている。有機農家は生態 系の維持に貢献し、環境汚染を軽減するための技術を使用する。」 さらに、2009 年 1 月から EEC 規則第 2092/91 号に代わって施行される同第 834/2007 号の冒頭では、次のように定義している。 「有機生産とは、農場経営と農産物加工生産の包括的システムであり、環境に最も優し い生産方法や生物の多様性の豊かさ、天然資源の保全、動物福祉に関する基準を厳格に守 ること、そして自然の栄養物や製法に対する消費者の好みにあった生産という複数の要素 の相互関係に基づくものである。それによって、有機生産は社会的に二重の機能を発揮す る:ひとつは有機製品を求める消費者ニーズに応えるための特別な市場に供給すること、 もう一つは環境保護、動物福祉や農村の発展に寄与し、公共財産を提供することである。」

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(2)IFOAM による定義 国際的な有機農業促進組織であるIFOAM(2.(1)-1)」参照)は、有機農業を次のよう に定義している。 「(有機農業は)社会的、経済的そして環境の面からも健康な方法で食物や繊維を生産す る全ての農業システムを指す。これらのシステムは生産能力の基盤として土壌に養分を有 し、植物、動物そして景観の自然な性格を尊重して、相互依存する全ての要素を最も良い 状態にする。有機農業は化学合成肥料、殺虫剤および薬品などの投入作業を徹底的に排除 する。反対に、自然の法則が持つ力を利用することによって、収穫と病気に対する抵抗力 を増進させる。」 (3)イタリアの定義 イタリアの有機農業に関する規定は、 法令第 220/95 号に定められているが、これは有 機産物の検査と認証システムに関する法律であり、具体的な運営は全て各州に一任されて いる。各州政府が有機生産に関する規則を州法として定めて実施しているため、イタリア において国の法律として明文化された「有機生産」の定義は存在しない。 (4)流通上の「有機生産」の定義 「有機生産」については、EU や有機生産にかかわる団体等が定義しているが、流通の段 階においては、「有機認証を受けた製品」が有機生産物とみなされる。実際にはEU や IFOAM の定義を満たした方法によって有機生産を行っていても、認証を受けていないものは「有 機生産物」として広く流通させることはできない。 以下、本レポートにおいて「有機生産物」は、有機認証を受けたものを指すこととする。

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2.認証機関、有機農業のための基準

(1)認証機関

1)国際的認証機関

国際有機農業推進連盟(IFOAM)

IFOAM(International Federation of Organic Agriculture Movement)は、有機農業に 関する世界最大の国際NGO で、フランス、英国およびドイツで盛んになった国際有機基準 を求める運動により、1972 年に設立された(本部:ドイツ・ボン)。フランスのナテュール・ エ・プログレ(Nature et Progres)、英国のソイル・アソシエーション(Soil Association) やイタリアのスオーロ・エ・サルーテ(Suolo e Salute)などの有機認証団体を中心に創設 され、現在では世界で 110 カ国以上、770 を越える小規模農家、有機農業団体、有機認証 機関、コンサルタント、研究者、消費者および企業が加盟している。

IFOAM は国連経済社会理事会 (ECOSOC)の認定 NGO であり、国連食料農業機関(FAO) や国連貿易開発会議 (UNCTAD)とともに、有機農業を通じてアフリカ、アジア、中南米等 の開発支援を行っている。

認定に関しては、1997 年に米国ノースダコタ州を本部として「国際有機認定サービス (IOAS:International Organic Accreditation Service)」を設立し、IFOAM 認定プログ ラムの管理運営を行っている。 IFOAM の主な活動目的は、以下の通り: ・ 有機農業やバイオダイナミック2.(1).2)-④参照) に関する知識・技術の交流 ・ 有機農業やバイオダイナミックに関する研究、教育活動および情報提供 ・ FAO 等の国際機関、行政機関への対応 ・ 「有機農業と加工のIFOAM 基礎基準」の制定 ・ IFOAM 認定プログラムを通じた国際的な有機認証の質的保証

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2)イタリアの認証機関 イタリアの有機農業認証機関は、EEC規則第 2092/91 号に基づく法令第 220/95 号により、 農林政策省から認可を受ける。各認証機関はEEC規則により、UNI CEI EN 45011[注1 機関名 ]の規 格に適合していることが求められており(EEC規則第 834/2007 号により 2009 年から義務 化)、UNI CEI EN 45011 への適合認可は、SINCERT(イタリア認証機関認定機構)によ って行われる。

2008 年 10 月時点の認証機関名、UNI ISO 45011 への適合および IFOAM による認可の 状況は表1のとおり。 表1 イタリアの有機農業認証機関 UNI CEI EN 45011 適合認定 IFOAM 認定 ABC – Fratelli Bartolomeo S.s.

ANCCP S.r.l. ○ BIOAGRICERT S.r.l. ○ ○ BIOS S.r.l. ○ ○ BIOZOO S.r.l. CCPB S.r.l. ○ ○ Certiquality S.r.l. CODEX S.r.l. Ecocert Italia S.r.l.

Ecosystem International Certificazione S.r.l.

ICEA (Istituto per la Certificazione Etica e Ambientale) ○ ○ IMC (Istituto Mediterraneo di Certificazione S.r.l.) ○ ○ QC&I International Service S.a.s.

Sidel S.p.A. Suolo e Salute S.r.l. ○ ○ (出所)有機農業情報システム(Sinab)および各機関の公式サイトをもとに作成 上記以外に、オーストリアとの国境に近いトレンティーノ-アルト・アディジェ特別自治 州に属するボルツァーノ自治県およびトレント自治県内のみで独自に認証活動を行う 5 つ の機関が存在する(ただし、同地域の認証機関に関する情報はほとんどなく、監督官庁で も把握しきれていない。)

1食品関係の認証組織が満たすべき基準。UNI(Ente Nazionale Italiano di Unificazione)は国内の統一規格

化を行うイタリア規格協会、CEI (Comitato Elettrotecnico Italiano)は電気・電子技術委員会、EN は EU の規格委員会CEN(Comite’ Europe’en de Normalisation)によるそれぞれの規格。UNI CEI EN45011 は ISO 065 に対応し、UNI EN ISO 45011 と表記する場合もある。

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表1 のうち、代表的な認証機関であるスオーロ・エ・サルーテ(Suolo e Salute)、ICEA、 IMC および demeter の歴史と活動内容を紹介する。 ① スオーロ・エ・サルーテ (Suolo e Salute) スオーロ・エ・サルーテは1969 年 3 月に、トリノ で医者、農業従事者および市民活動家によって協会と して結成された。農業で多用された化学製品が引き起 こした環境破壊と健康被害を警告するとともに、化学 合成物質を使わずに自然界の物質を利用することで土 を豊かにする研究成果(土地を肥沃にするには堆肥、 コンポスト、海藻からの抽出成分等の有機物を使用し、 栽培植物を病気や害虫から守るには自然界の銅、硫黄、 プロポリス等を利用する等)の普及活動を開始した。農薬を多用する慣行農業に代わるも のとして、イタリアにおいて最初の有機農業の推進活動となった。1972 年には IFOAM の 設立に積極的に関与し、1992 年には EEC 規則第 2092/91 号の規定に適合した検査・認証 機関として、当時の農林省(現・農業食料林業政策省)の認可を受けた。2000 年には組織 改編により有限会社となっている。 スオーロ・エ・サルーテによれば、現在イタリア国内には約5 万 5,000 戸の有機農家(有 機表面積100 万 ha)があるが、同団体はそのうち 26%にあたる 1 万 1,000 戸(26 万 ha) を検査・認証しており、有機生産におけるリーダー的な企業といえる。 有機農業の認証に関してはUNI CEI EN 45011 に適合しており、一連のトレーサビリテ ィにおいてはUNI 10939–CE178/2002(トレーサビリティの認証機関に求められる基準で、 EU 規則 CE 178/2002 による法的裏付けを持つ)への適合を SINCERT から認可されてい る。

2003 年には米国農務省(USDA)から米国の有機認証プログラムである NOP (National Organic Program)に適合する認証機関として認可を受け、国内外の 250 以上の有機農家、 畜産業者および加工業者の認証を行っている。日本の JAS、スイスの BioSuisse、英国の Soil Association およびカナダの CAAQ に対する認証も認可されている。

本部(マルケ州・ファーノ)のほか、11 の州にオフィスを構えており、海外ではドミニ カ共和国、カザフスタン、ルーマニア、ブラジル、トルコおよびインドに本部を置いて活 動している。

スオーロ・エ・サルーテは有機生産の検査・認証機関として生まれたが、近年は下記の

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分野でも認証活動を行っている: ・ユーレップ・ギャップ(欧州小売業組合適正農業規範):野菜・果実部門 ・減農薬農業とAgriqualita’(トスカーナ州法に基づく減農薬認証) ・GMOフリー[注2 ・原産地保証 (DOP、IGP、STG[注 ]認証 ・UNI 10939 に基づくトレーサビリティ認証 ・システムの品質保証 (ISO 9001:2000) ・環境管理保証(ISO 14001) 3

ICEA (Istituto per la Certificazione Etica ed Ambientale)

]) ・森林認証 (PEFC スキーム) ・Bio-Habitat マーク(農地ではない緑地の管理・経営) ICEA は、2000 年に AIAB(2.(2)-①参照)が有機農業促 進や環境問題解決に向けた活動と有機農業認証活動を分離させ ることを決議したことにより、認証部門を担う機関としてAIAB、 倫 理 銀 行 (Banca Etica) 、 消 費 者 協 会 (ACU:Associazione Consumatori e Utenti )、エコ建築協会(ANAB:Associazione Nazionale Bioarchitettura)およびデメター(Demeter:バイ オダイナミック協会、④参照)により設立された機関である。 2002 年に農林政策省から有機農業の認証機関として認可を受 けた。国内に約300 名の専門家を擁しており、1 万 1,600 戸(2008 年)の有機農家の検査・認証活動を行っている。また欧州全土 に23 の活動拠点(国内 16、国外 7)を持つなど、欧州でも重要な認証機関の一つとなって いる。

IFOAM 認定および SINCERT から UNI CEI EN 45011 への適合認可を受けており、米 国NOP、日本の JAS、カナダの CAAQ に関する認証も認可されている。

国外ではトルコ、ルーマニアおよびアルバニアにオフィスを設置しているほか、クロア チアでは現地組織と共同でAgriBioCert を設立して認証活動を行っている。

そのほか、産地保証(DOP、IGP、STG)、エコ建築の認証(ANAB から委託)、個人経 営のレストランや学校給食等への自主的認証スキームなども実施している。

2 GMO(Genetically Modified Organism:遺伝子組み換え作物)を含まないという認証。

3 それぞれ原産地呼称保護(Denominazione di Origine Protetta)、地理的表示保護(Indicazione

Geografica Protetta)、伝統産品保証(Specialità Tradizionale Garantita)などと訳される。

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IMC (Istituto Mediterraneo di Certificazione) IMC は 1995 年に設立され、翌 96 年に認証機関として 農林省の認可を受けた。現在、5,500 戸の有機農家の検 査・認証を請け負っている。また国内だけでなく、特に 地中海沿岸諸国(エジプト、チュニジア、レバノン、ト ルコ)を中心に活動を広げており、有機農業のほかに環 境、倫理、品質システムや教育活動の認証も行っている。 IMC も IFOAM および SINCERT の認可を得ている。

国外では米国NOP、JAS および CAAQ に加えて、エジプト(SINCERT による認可) やチュニジア(現地の有機農業全国委員会による認可)での有機農業認証活動を展開して いる。

このほかにSINCERT のトレーサビリティ認証“Conosci il Tuo Pasto”規則によるレスト ランの経営品質システムの認証活動を行っている。 IMC は、イタリア有機農業の先駆者的存在であるジーノ・ジロロモーニ氏(Ⅲ-5-(1)-①参照)の有機・環境に関する活動に深く関わっており、IMC は専ら認証機関として活動 し、コンサルティングや有機農業の普及活動はAMAB が展開するといった関係になってい る(2.(2)-②参照)。 ④ デメター(Demeter) デメター(イタリア語では「デメテル」と発音)は教 育研究家としても有名なドイツのルドルフ・シュタイナ ーが提唱した、自然の力と宇宙の摂理に従った農法「バ イオダイナミック」の実施・認証機関で、1930 年に設立 された。バイオダイナミックは、自然が持つ力を最大限 に引き出す農法であるため、有機農法が守られていることを前提条件に、独自の基準(例 えば、銅の使用は全面的に禁止など)や種まき・収穫カレンダーを設定して認証を行う。 1997 年に設立された国際組織 Demeter International(本部:ドイツ・ダルムシュタット) には78 カ国で活動する認証機関が参加しており、イタリアでのバイオダイナミック農法の 認証は、Demeter Associazione Italia(本部:パルマ)が行っている。

別組織としてバイオダイナミック農法の普及・促進を目的とするバイオダイナミック農 業協会 (Associazione per l’Agricoltura) があり、養成講座を開催している。バイオダイナ ミックの認証を受けるためには、同農業協会の講習を受講し、デメターの生産基準、加工 基準または養蜂基準を完全かつ継続的に実行していることが条件となっている。

図3 IMC のロゴ

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(2)認証機関以外の有機農業促進機関

AIAB (Associazione Italiana per l’Agricoltura Biologica)

AIAB は 1982 年に消費者運動と生産者団体が結びついて生ま れ た 「 有 機 と は 何 か に 関 す る 全 国 委 員 会 (Commissione Nazionale Cos’e’ Biologico)」を前身とし、1988 年に AIAB と して「イタリアの有機農業規則」を発表した。 2002 年にICEAに認証活動を分離させてからは、政治・文化 的協会として、自主的規則である「AIAB保証(Garanzia AIAB)[注4 農林政策省と様々な共同企画を行っているほか、有機製品のファーマーズ・マーケット の組織と宣伝にも力を入れており、Coldiretti[注 ]」を新たに開発し、 認証の対象を養殖、給食、有機生産物販売店に広げている。現在1 万 4,000 以上の会員を 擁している。 5 1990 年 農業専門誌 “Bioagricoltura” 発行開始 地中海沿岸国では初めてIFOAM の世界大会開催 エキストラヴァージンオリーブオイルと植物加工食品の有機生産基準を発表 ]および環境保護組織のレーガンビエンテ と共催しているBiodomenica(各地で毎年 10 月第1日曜開催)は多くの協賛を得ている。 AIAB のサイトでは、AIAB の活動や有機生産物に関する情報、Garanzia AIAB の商品を 取り扱う店や有機のアグリトゥーリズモの紹介など、有機食品以外の品目の紹介も数多く 掲載されている。 AIAB の主な活動歴は以下のとおり: 4 AIAB 会員にのみ適用される認証で、通常の有機認証より厳しい条件のクリアが求められるといわれてい る。検査の実施はAIAB が指定した認証機関に委託されている。 5 Coldiretti はイタリアの農業関連組合の一つで、ほかに CIA、Confagricoltura がある。 (1)Coldiretti 1944 年にファシスト政権下の農業団体 Confederazione dell’Agricoltura から独立した農業部門の労働 組合で、最大組織である。現在56 万 8,000 農家が登録している(商工会議所登録の農業従事者数の 52% にあたる)。小規模農家が多い有機生産者を組織して、学校給食への対応やファーマーズ・マーケットの 開催など、他の組織と協力して様々な活動を展開している。1973 年には Terranostra というアグリトゥ ーリズモの協会を組織している。

(2)CIA (Confederazione Italiana Agricoltori)

1977 年結成、1992 年に現在の組織名に改称した。農業従事者の組織率は約 28%。有機農業の促進や在 来種および生物の多様性の保護に力を入れている。アグリトゥーリズモ関連では、Turismo Verde とい う協会を組織している。 (3)Confagricoltura 会員はかつての大地主や大規模農業経営者が多いとされている。全農業従事者の約 20%だが、会員の農 地所有率は全農地の約38.5%で、農業・林業関連の国内総売上げの 45%を占めるといわれる。有機農業 促進やファーマーズ・マーケット等には積極的ではないが、イタリアで最初のアグリトゥーリズモの組 織Agriturist を設立しており、アグリトゥーリズモの法制化を促進する活動を展開している。 図5 GaranziaAIAB のロゴ

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1992 年 理事会規則第 2092/91 号による有機生産物認証機関として農林省の認可を受ける 植物、茸類の改正有機生産規則、畜産と養蜂に関する規則等を発表

1993 年 牛乳と乳製品の有機規則を発表 1995 年 IFOAM の認可を受ける

1998 年 UNI CEI EN 45011 に基づき SINCERT から認可を受ける(イタリア初) DOP 認証に関して認可される 1999 年 「自然に優しいアグリトゥーリズモ」の規則、Centrocot(綿布と衣類のためのセ ンター)と共同で有機繊維の規則を発表 2000 年 有機生産農家と消費者の交流と直売の場として、”Biodomenica”を全国で開催 2001 年 検査・認証のための機関(ICEA)を独立 (本部:ボローニャ、16 州に拠点) AIAB としてはローマを本部に 13 州に拠点を置く 2002 年 農林政策省から ICEA への認証活動の移行を認められる

AMAB (Associazione Mediterranea Agricoltura Biologica)

AMAB(地中海有機農業協会)は、1996 年にアルチェ・ネーロ協同組合(Ⅲ-5-(1) 参照)の活動拠点の一つであるモンテベッロを本部として設立された。1970 年代半ばにア ルチェ・ネーロが発足して以降、各地で有機農業が盛んになり、地中海地域で共有されて いる農業文化を軸とした有機農業者同士の交流が求められるようになったのがきっかけと されている。現在イタリアの全 20 州にオフィスを構え、季刊紙 “MEDITERRANEO Dossier” の発行、消費者に対する化学的合成物や GMO を使用しない食品の品質保証など の活動を行っている。

FederBio (Federazione Italiana di Agricoltura Biologica)

Federbio は IFOAM の規則に従い、有機およびバイオダイナミック農業による食品を質 的かつ量的に改善・拡大することを目的として、1992 年に複数の有機農業やバイオダイナ ミック関連の組織により設立された。有機農業の発展のためには、イタリア国内の有機農 業、バイオダイナミック農業関連の組織や環境保全団体等が協力し、意見交換と新技術の 交流を進めていく必要性があるという認識によっている。 内部規則の整備や加盟団体による有機規則の厳守を指導するとともに、実験・研究の促 進、有機生産物に対する消費者理解を深める活動を展開している。 現在はAIAB、認証機関や環境保護団体など 32 組織が加盟している。

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(3)認証基準 1)EU EU の認証基準は、1991 年発効の EEC 規則第 2092/91 号、同規則を補完する形で 1999 年に導入された畜産に関する規定第1804/99 号およびその改正規則に基づいている。 しかし、条項の廃止、変更および追加など改正規則の数は約70 にのぼり、規則自体が煩 雑で理解が難しいこと、表現が曖昧で多様な解釈ができる条項がある等の批判が以前から あったため、これら規則および補完条項は2008 年をもって廃止され、2009 年 1 月から新 しい規則が適用されることになっている(理事会規則第834/07 号)。 ただし、新規則は基本的にこれまでの規則を踏襲したものであり、現在のところ、使用 が許される物質や畜産の条件のリスト等に変更はない。 主な変更要件は以下の通り: ・ 新たに有機ワイン(有機のぶどうを原材料としたワインの規定はあった)および有機 による養殖、海藻、酵母の規定が可能になる(加盟国ごとの規則整備または私的機関 の規定を適用) ・ 地域ごとの条件の違いや発展段階の差異に鑑み、規則の適用に柔軟性を持たせる ・ 遺伝子組み換え作物は絶対的に禁止されるが、「予測できない理由で混入した場合」 は、それが全体の0.9%までであれば有機製品と表示できる[注6 ・ 有機でない加工品の一部に有機製品が使用されている場合、それを表示できる ] ・ 95%以上の有機製品を材料として加工された製品のみ有機と表示することができる ・ 私的認証機関によるEU 基準以上の厳しい独自基準の適用を認める ・ 製品の産地(最終加工地)を表示する ・ EU の有機認証ロゴ(現在変更を検討中、新ロゴは 2010 年から義務化)表示を義務 化する。各国または私的機関のロゴを同時に表示することは可能。 上記変更点を除けば大きな変更点はないため、以下、スオーロ・エ・サルーテによる解 説資料を参考に、旧規則(EEC 規則第 2092/91 号)の概要を簡単にみていく。 6 2009 年 1 月から施行される新規則によって明記された。パーセンテージは、慣行農業で認められる遺伝 子組み換え作物の混入割合と同じ0.9%以下で、厳しく批判する団体もある。

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<第1部> 次章「生産規則」を満たす生産物または95%以上が「生産規定」を満たす材料で作られた 製品のみ「有機」と表示できる[注 基本的規則 第1-3 章(適用分野) 本規則は、有機食品として販売される第一次農産物およびその加工品に適用される 第4 章(定義) 規則の中で使用される言葉の定義(「有機」に関する定義を除く) 第5 章(ラベル) 有機の表示や宣伝に関する規定 7 7 2009 年 1 月から義務化。それ以前は 70%以上であれば有機製品と認められていた。 ] 第6-7 章(生産規則) 有機生産物と表示できるための条件(詳細は第2 部付則に規定) 第8-9 章(検査システム) 届け出義務(生産者、加工業者、倉庫での貯蔵業者および第三国からの輸入業者は当局に 届け出なければならない) 加盟国は、規則を実施・管理監督するための機関を設ける義務を負う 第10 章(検査基準への適合マークの表示) 第2 部付則Ⅴで「有機農作物」を意味する国別単語とマークのモデルを表示 第10 章その 2(適用の全体的対策) 他の EU 加盟国由来の商品に表示規則違反があった場合の処置および違反防止のための対 策義務 第11 章(第三国からの輸入) 第三国からの有機製品輸入に関する規則 第12 章(EU 内の自由流通) 動物の飼育に関して加盟国はより厳しい規定を設けることができるが、流通を規制しては ならない 第13-16 章(行政規定と適用) 本規則の決定、変更等に関する規定

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<第2 部> A. 植物と植物製品 付則 I 農場での有機生産規則 ・ 転換期は、種まきまたは放牧する前の少なくとも2 年、永年作物は収穫前の少なくとも 3 年とする ・ 転換期間は、既に有機農業を実施していた土地、環境保護政策等に関連した農業を行っ ていた土地または検査機関の調査結果として本規則に適合する条件を備えていれば、短 縮することができる ・ 検査機関は当局の同意を得て、土地の使用状況によっては本規則に定められた転換期間 を延長することができる ・ 種子や苗も有機生産されたものであること ・ 慣行栽培の農場とは明確に区分されること ・ 転換中に収穫した作物またはその加工品は有機製品として流通させてはならない ・ 土地の肥沃さは、長期の輪作計画に適合したマメ科等の栽培および有機畜産由来の堆肥 により維持・向上させること ・ 植物または微生物をコンポストに活用する場合、GMO を使用してはならない ・ 病虫害に対しては、適切な品種選定および輪作計画、機械による耕作、害虫の天敵保護 などの対策を立てること ・ 自然、林または農地の中で育つ食用植物とその一部の収穫は、以下の条件を満たせば有 機生産の方法と考えられる: -収穫から 3 年前にさかのぼって、付則Ⅱに示したもの以外の製品を使用していない土 地 -収穫が自然の生物生息の均衡や収穫地の中の景観を損なわないこと ・ 茸類生産の基層として使用できるのは、有機畜産由来の動物の堆肥と排泄物、有機農業 起源の製品、科学処理されていない泥炭、伐採後化学物質で処理されていない木材およ び付則ⅡA に記されたミネラルのみとする B. 牛(その他ウシ科の動物含む)、豚、羊、ヤギ、馬、家禽類およびその製品 ・ 土地と動物との関係は、使用農業表面積と飼育頭数の関係、植物栽培面積との関係から 算定されなければならない ・ 乾燥飼料の少なくとも35%は自給によるものでなければならない。ただし災害によって 被害を被った場合はこの割合を減ずることができる(州政府が決定) ・ (絶滅危惧種等の)特別に認められた場合を除き、動物は放牧されなければならない

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・ 動物の飼料の栽培地は本規則に沿った転換期を守る ・ 放牧地、畜舎に隣接する土地は転換期1年とすることができ、その土地で数年にわたり 本規則の規定以外の製品が使用されていない場合は検査機関の承認を得て 6 ヶ月に短縮 できる ・ 動物、放牧地および飼料栽培地を同時に有機転換する場合は転換期を2 年に減じる ・ 動物は有機飼料で飼育され、季節移動中の草食動物を除いて飼料の50%以上は動物が属 する農園で栽培されたものを与える(不可能な場合は他の有機農家の協力を得ることも 可能) ・ ほ乳動物は自然の乳で育てる(最低授乳期管:牛・馬は3 ヶ月、羊とヤギは 45 日、豚 は40 日) ・ 動物に与える飼料はGMO または GMO に由来するものであってはならない ・ 動物に与える薬は薬草を中心とし、どうしても必要な場合のみ抗生物質の使用が認めら れる(予防のための抗生物質使用は不可) ・ ホルモン剤や成長剤は繁殖検査その他認められた目的以外に使用してはならない(認め られた目的で使用する場合は当局または検査機関に詳細を届ける) ・ 生殖は原則として自然な方法とするが人工授精も認められる(胚の移植等、人工的繁殖 は認められない) ・ 去勢は伝統的な生産物の品質維持のため、本規則に沿った条件で認められるが、動物が 性的に成熟した後は認められない ・ 動物の排泄物は、使用農地1年あたり170 kg N/ha を超えてはならない(超える場合は 動物の数を減らす) ・ ほ乳動物の厩舎は動物の動きを十分に保証する広さであり、自然光、風通し、敷きわら 等の動物福祉を保証するものであること ・ 家禽類は放し飼いにされ、特に認められた場合以外は籠に閉じ込めて飼うことはできな い C. 養蜂と養蜂の製品 ・ 同じ養蜂家が、慣行養蜂と有機養蜂を並行して行わないこと ・ 有機への転換期間は最低1年とし、この期間に蜂の巣内の蝋は有機の蝋と交換する(そ の後の交換は3 年を越えない間隔で行う) ・ 蜂箱設置場所から半径 3km 以内は有機農業が行われている場所または野生の植物で形 成された汚染の無い場所であること ・ 住宅密集地、高速道路、工業地帯、ゴミ処分・焼却場など汚染源と考えられる場所から

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十分距離を置くこと ・ 養蜂での薬の使用は薬草またはホメオパシーが望ましい(薬品を使用した場合は商品を 有機商品として流通させる前に詳細を検査機関に通知する) ・ 女王蜂の羽は切ってはならない ・ 蜂箱の移動は該当期間と定めた期日内に検査機関に通知する ・ 巣箱内へのプラスチックまたは塗料の使用を禁止する(蜂箱の外側の保護には無害の塗 料を使用するなど、蜂箱は基本的に環境や蜂蜜汚染に原因となる恐れが無い材料で作る) B. 寄生虫駆除剤 ・使用が認められる駆除剤の成分と条件 ・罠や自動供給装置で使用が認められる成分と条件 ・他有機農業で伝統的に使用される成分と条件 付則Ⅱ(※図表等は省略) A. 肥料と土地改良 ・使用が認められる肥料の成分と条件(全ての成分に関して検査機関の許可を得る) C. 飼料の原料 ・植物由来の飼料、動物由来の飼料、鉱物由来の飼料 D. 食品添加物、動物の飼料に使われる成分等 ・食品に添加してよい成分 ・動物の飼料に使用してよい成分 ・サイロ貯蔵用飼料製造の補助的成分 E. 畜舎や設備の清掃及び消毒のために認められている製品 ・ 本規則に違反した場合は生産は中止され、文書で消費者にそれを知らせる 付則Ⅲ 第1部8 章および 9 章に規定された検査規則における予防策と最低限必要な検査 ・ 作業責任者はいかなる変更点も漏らさず検査当局または検査組織に報告する ・ 検査当局または検査機関は少なくとも1年に1回全作業員に対し全面的検査を実施する ・ 製品が他の場所に輸送される場合、製品の破損やすり替えがないよう梱包し、荷台を閉 じ、定められた書類を添付する。受取り側は届いた製品を添付書類と付き合わせてチェッ

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クする ・ 倉庫での保管に関しては他の製品との混同または有機ではない製品との接触を避ける ・ 最初の検査において、植物および植物製品は収穫地と製品の保管場所を、加工品に関し ては加工場所と梱包場所を明記する。毎年製造計画を当局または検査機関に提出する ・ 最初の検査において、動物および動物製品は畜舎、放牧地、畜舎に隣接する解放スペー ス等の位置を明記する。加工場や倉庫がある場合はその場所を、排泄物収集所についても 明記する ・ 第三国からの銅・食物およびその加工品、飼料、飼料の材料等の輸入業者は本規則の規 定が要求する書類を整え、輸入したものは当局または検査機関の検査を受ける 付則Ⅳ 生産者、加工業者、倉庫保管業者、輸入業者による提出書類の記入項目について 付則Ⅴ ラベルの表示(国別)とロゴに関する規定 A. 添加剤を含む食品添加物の食品項目別リスト、 香料、水、塩、微生物、鉱物製栄養物、ビタミン、 アミノ酸、窒素化合物、製品のスタンプ用着色剤に ついての規定 付則Ⅵ B. 有機農産物を材料とする加工品への使用が認め られる補助材料 C. 第 5 章の有機表示が可能な加工品について(有 機でない5%以下の材料に関する規定) 付則Ⅶ 170kg相当の動物を年間1haあたりに飼育できる最大頭数 2)イタリア 付則Ⅷ 畜舎と放飼場(放牧地を除く)の動物の種類と体重別最低面積 イタリアの有機生産規則は、EEC 規則第 2092/91 号および第 1804/99 号に従い、各州が 州法で定めることになっている。国の有機生産物に関する法律は、第 2092/91 号の規定に より制定された有機認証システムに関する法令第220/95 号と、EEC 規則第 1804/99 号に 図6 イタリアのロゴ

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基づき発効された 農林政策省令第 91436/2000 号である。各州はこれらの法律に従って認 証制度の基準を設けるが、有機生産管理上の規則は基本的にEEC 規則に則ったものでなけ ればならない。 しかし、規則の厳密度に関しては、各州が法律上で具体的な数値等を定めているわけで はないことから、州によって差があるといわれている(例:有機農地への転換期間、永年 作物への銅の使用規制に対する例外など[注8] トスカーナ州の例 トスカーナ州は、1999 年の EEC 規則第 1804/99 号に先立つ 1995 年に、畜産に関する規 定を州法54 に規定するなど、維持可能な農業に対する取り組みが活発なことで知られてい る。 EEC 規則第 2092/91 号に基づいて 1994 年 4 月に制定された州法第 31 号では、消費者 の健康を守るための有機農法の促進とともに、EEC 規則では言及されていないバイオダイ ナミック農法の促進も謳っている。 また州法の第7 章では、州政府内に設置された内部委員会のひとつである ARSIA (農林 業発展と刷新のための州委員会)を通じて、州内の登録有機生産者の 10%以上について、州 の基準に適合しているかについて毎年検査を実施することを定めている。 さらに、EU レベルでは標準化されていない減農薬農業(Agricoltura Integrata または ecocompatibile)の基準を州法(1999 年第 25 号)で定め、独自のロゴマークを採用してい る。 8理事会規則第2092/91 号の追加規則により、単年作物に対する銅の使用量は 2005 年 12 月 31 日までは 8kg/ha、2006 年 1 月 1 日からは 6kg/ha であった。 それに対して、ぶどうのような永年作物の使用量は、 −2002 年 3 月から 2006 年 12 月 31 日までは 38kg/ha/年未満

−2007 年 1 月 1 日以降に関しては、36kg/ha/年(2007 年)、34kg/ha/年(2008 年)、32/kg/ha 年(2009 年)、30kg/ha/年(2010 年以降)未満 ただし、2007 年~2010 年の 4 年間の使用量に関しては、特別は事情がある場合は 4 年間の合計使用量 を超えない範囲で、各加盟国が例外を定めることができる(例:2009 年に病虫害が原因で使用を 35kg/ha/ 年使用した場合、2010 年は 27kg/ha/年未満とする) なお、銅の使用を全面的に禁止しているのはバイオダイナミック協会のみ。 図7 Agriqualita’のロゴ

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EU には減農薬農法に関する認証基準はないため、州法で保護政策が取られたとしても慣 行農業による生産物と同じ取り扱いになるのが一般的だが、このロゴマークは EU 域内で 効力を有する(ただし使用にあたってはトスカーナ州が承認した認証機関の検査に合格す る必要がある)。 トスカーナ州がEU に提出した 2007 年の農業企画書によると、同州の有機農業に対する 助成金と減農薬農法に対する助成金は表2 の通りである。 表2 トスカーナ州の有機・減農薬農業に対する助成金 (単位:ユーロ/年/ha) 作付け品目 有機農業 減農薬農法 導入年 維持年 ぶどう 720 650 400 オリーブ 600 500 200 果樹および観賞用植物 840 700 420 穀類 160 150 100 とうもろこし 250 230 130 オイル加工用作物 150 140 80 食用豆類 115 100 70 飼料 125 125 60 加工用トマト 480 390 220 野菜及び薬用植物 480 390 280 (出所)2007 年トスカーナ州農業企画書をもとに作成 (4)認証のプロセス 認証機関により異なるが、スオーロ・エ・サルーテへのインタビューによると、同団体に よる有機認証のプロセスは以下のとおり: 1.有機生産開始を希望する農家から認証機関(スオーロ・エ・サルーテ)と州に関係書 類を提出 2.認証機関と生産者の間で立入検査の日を決定 3.認証機関の検査員は土壌や水質等を検査し、生産者とともに改善案を検討 ただし、以下の場合は状況を調査のうえ緩衝地帯を設ける ・ 近くに交通量の多い高速道路や国道がある ・ 近くに工場がある ・ 慣行農業の農地と隣接している等 4.認証担当者が検査員の報告を点検し、認証のための改善事項等を記した書類を農家に 送付

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5.農家は野菜類は2 年、果樹等は 3 年の転換期間に改善項目を実施(その間認証機関は 毎年検査と助言を実施する) 6.農家は転換期を経て条件が整った段階で有機認証を受ける(はじめて「有機製品」と して流通することが可能となる) 7.有機農家は有機生産物の売上量、加工品製造のために有機生産物を購入した場合はそ の購入品目と量を州および認証機関に毎年報告する 8.認証後も有機農家は毎年検査を受ける 3.政策 [注9] (1)EU

イタリアを含む EU 加盟国の農業政策は、EU 共通農業政策(CAP:Comon Agriculture Policy、イタリア語では PAC:Politica Agricola Comune)を基本に展開される。

1957 年に締結されたローマ条約に基づき翌年に設立された欧州経済共同体(EEC)にお いて、農産物共通市場の設立とそのためのCAP 導入等が決定され、CAP が順次導入された。 その時点でのCAP の目的は以下の通りであった: ・農業生産物の生産性増強 ・農業生産者の収入改善 ・生産物の安定化 ・供給の安定保証 ・良識のある消費者価格の保証 ・第三国からの製品に対する保護主義 その後、「緑の革命」による農産物の生産過剰や財政負担の増大、農薬や殺虫剤、化学肥 料等の多投与による土壌および水質汚染の問題が拡大したことから、1982 年以降は生産調 整の強化をはじめ各種改革が実施されてきた(1985 年の農業環境政策の制定、1988 年の環 境支払いの開始、1991 年の硝酸対窒素指令の採択など)。 一方、難航を続けていたガット・ウルグアイ・ラウンド交渉は、1992 年の CAP 改革に より、交渉の決着をはかった。その結果、CAP の目的は、次のように変化した: ・EU 内の大規模農家と農業生産物輸出業者の位置の保全 9 EU およびイタリアの農政に関しては「オーガニックなイタリア 農村見聞録」(家の光協会出版、蔦谷 栄一著)を参考

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・生産量を需要レベルに下げる ・経済的に困難な農業生産者に対する援助 ・農業生産者が農村にとどまるように援助する ・農村地区の自然の発展と環境保護 この改革により、農業生産物に対する政府の買い取り価格を引き下げると同時に、その 減少分を補填する直接支払いが導入されることになった。直接支払いは、GAP (Good Agriculture Practice : 適正農業規範)を支払い条件とする単一支払い(価格引き下げ保証金、 条件不利対策保証金)と、GAP を上回る水準の取り組みに対して支払われる環境支払いと に分けられる。有機農業に対する助成金は、この環境支払いの対象として位置づけられる。 さらに1997 年に委員会が CAP に提案した「アジェンダ 2000」は 1999 年にまとめられ たが、以下の5 点を目標として定めている: ①農産物価格の更なる引き下げによる国際競争力の向上 ②食品の安全性、品質の保証 ③農業社会維持のための安定的所得と適正生活水準の確保 ④環境保全、動物福祉 ⑤環境目標の取り込み さらに2003 年にも CAP の改革が行われた。これは、基本的には直接支払いの大部分を 各作物の生産要素と切り離して段階的に削減しながら、削減部分を農村開発政策に振り向 けることを意図したものであった。 このようなCAP の動きの中で、EU の有機農業基準として、1991 年に農産物の有機生産 と有機生産物及び有機食品の表示規則が定められた(理事会規則第2092/91 号)。畜産につ いては同規則を補う形で、1999 年に理事会規則第 1804/99 号が定められた。 続いて 2004 年 6 月に「有機農業および有機食品のための欧州行動計画」が承認された。 これは有機農業と食品に関する現状を分析した上で問題点を洗い出し、今まで規定が無か った部分あるいは曖昧だった部分を明確にしていくこと、情報収集や研究を効果的に利用 して有機製品の発展を目指すこと、さらにそのために公的に支援することを規定している。 (2)イタリア イタリアの有機農業に関する法令は法令第220/95 号であるが、これは有機農産物の検査 と認証に関するものであり、それ以外の規則に関しては、各州がそれぞれの実情に応じ、

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理事会規則第 2092/91 号を中心とした有機産物の規則に従って定めることになっている。 そのため、有機農家が受け取る直接払いに関しても、同じ条件で生産したとしても、州に よって金額が異なってくる。 各州は毎年、有機と減農薬を含む農業政策に関する計画を EU に提出し、その計画に従 った予算を国を通さずに EU から直接受け取り、そのうち所定の助成金を有機農業者(ま たは減農薬農業者)に支払う。EU は助成金の上限額の基準(単年性作物:600 ユ—ロ/ha、 永年性作物:900 ユ—ロ/ha)を定めるのみであり、有機生産者(または減農薬生産者)の受 け取り額は州の政策によって異なる。 一方、農林政策省の主な役割は対外関係業務と各州間の調整にあり、有機農業にかかわ る各種組織と共同して、有機農業発展のためのプログラムを組んでいる。同省は、EU 理事 会が作成した「有機農業および有機食品のための欧州行動計画(2004 年)」に基づいて、次 のようなイタリア国内における行動計画を立案し、2005~2007 年における実行予算(一部 2008 年分も含む)を計上した。この行動プログラムは戦略的に 4 つの軸に分けられる: 1)世界市場への進出 ・ イタリアの教育機関や有機農業・食品関連団体の世界的に権威あるネットワークへの参 加を支援し、有機分野におけるイタリアの重要性を世界的に発展させる ・ 国際シンポジウムやイベントへの参加を通じて、世界市場に向けたイタリア製品のプロ モーション活動を進める ・ 有機認証の取得を簡易化して、有機農家のサポートにつなげる 2)生産・販売の組織化 ・ 国産有機の種に関する計画: -在来作物の種を使用する農家の生産活動を保証する新規則の準備 -種の保存、種の原産地の特定化等の改善プログラムに対する財政的支援 ・ 有機の畜産、土の管理と栽培の保護に関する研究プロジェクト ・ 有機生産にかかわる部門間の調整、販売促進の組織化のためのプロジェクト 3)国内需要の拡大と政府PR ・ 政府の支援による宣伝・販売キャンペーン ・ 有機による「メイド・イン・イタリー」製品を識別するためのロゴ制定 ・ 有機生産関係者が直接プロモーションを行うイベント(「有機の広場(Le piazze del bio)」)開 催

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・ IFOAM 世界有機農業会議の開催(2008 年 6 月 16~20 日、於モデナ) 4)公的システム、事業の強化と改善 ・ 行政機関による支援を総合的に実行する ・ 規則を正確に適用するための管理体制の改善およびGMO 汚染を避けるためのシステム 保証に焦点を置く ・ 有機農業に関するデータ運営の改善 など これらのプログラムは22 の細かい行動計画に分かれ、AIAB や Coldiretti などと協力し て進められており、一部は現在進行中である。情報収集に関しては、農林政策省内の有機 農業情報システム(Sinab :Sistema d’Informazione Nazionale sull’Agricoltura Biologica) などが中心的に実施し、農業・食品部門の市場調査は農業食品市場サービス振興会 (ISMEA:Istituto di Servizi per il Mercato Agricolo Alimentare)が主体的に行っている。

2009 年に施行となる予定の新しい理事会規則第 834/2007 号に対応する国内法(州法) は、2008 年 11 月現在、準備中である。

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Ⅱ.有機農産物の生産状況

1.イタリア有機農業の特徴 (1)イタリア有機農業の歴史[注10 欧州における有機農業の歴史は、ドイツ、英国およびフランス主導で展開されたといえ る。イタリア国内での組織的な動きは1960 年代に入ってようやくみられるようになり、イ ーヴォ・トッティを始めとする先駆者たちやスオーロ・エ・サルーテ協会の結成などに代 表される。しかし、行政レベルでの動きは1970年代までは有機農業に敵対的でさえあった。 多くの農業従事者は、当時の欧州共同体(EC)や政府指導のもとで、田畑に農薬や化学肥 料を過剰に投与し、動物にはホルモン剤を与え、環境汚染の問題は無視されて、生産物の 質よりも量を競う風潮の中にあり、農薬や化学肥料は農業従事者を過酷な労働から解放す ると信じられていた。 1980 年代に入り、過剰投与による土地の疲弊や水質汚染が問題視されるようになってか らも、有機農業を試みる少数派の農業従事者たちは奇異の眼で見られることが多かったと いう。1991 年の有機農業と有機製品に関する EEC 規則は、有機農業推進派が社会的に認 知され、イタリア有機農業に大きな前進をもたらした画期的な出来事だったといえる。1970 ~80 年代から有機農業を推進していた団体や個人の活動は、法的根拠と助成金を得て、大 きく飛躍することになった。 ] (2)世界の有機農業の中のイタリア 今やイタリアが世界で最も重要な有機生産国のひとつに成長したことは、有機農地面積 の比較(表3)および有機農家数(表 4)からも容易に理解できる。世界の有機農地面積に 占める割合では4 位にあるが、上位 3 国の国土面積の大きさを考慮すると、日本のおよそ 5 分の4 程度の広さにあたるイタリアの存在意義は大きい。有機農家数では世界で 3 位であ る。 10 「イタリア有機農業の魂は叫ぶ」(家の光協会出版、ジーノ・ジロロモーニ著)を参考

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表3 世界の有機農地面積上位 20 カ国(2006 年) (単位:ha、%) 順位 国名 有機農地面積 全体に占める割合 1 オーストラリア 12,126,633 38.5 2 中国 3,466,570 11.0 3 アルゼンチン 2,800,000 8.9 4 イタリア 954,361 3.0 5 米国 889,048 2.8 6 ブラジル 887,637 2.8 7 ドイツ 767,891 2.4 8 ウルグアイ 759,000 2.4 9 スペイン 733,182 2.3 10 英国 690,270 2.2 11 チリ 639,200 2.0 12 フランス 534,037 1.7 13 カナダ 488,752 1.6 14 ボリビア 364,100 1.2 15 オーストリア 344,916 1.1 16 メキシコ 295,046 0.9 17 チェコ 260,120 0.8 18 ペルー 260.000 0.8 19 ギリシャ 249,488 0.8 20 ウクライナ 241,980 0.8 世界合計 31,502,786 100.0 (出所)ミラノ商工会議所ウェブサイト 表4 世界の有機農家数上位 20 カ国(2006 年) (単位:戸、%) 順位 国名 有機農家数 全体に占める割合 1 メキシコ 120,000 19.3 2 インドネシア 45,000 7.2 3 イタリア 36,639 5.9 4 フィリピン 34,990 5.6 5 ウガンダ 33,900 5.4 6 タンザニア 30,000 4.8 7 ケニア 30,000 4.8 8 韓国 28,951 4.6 9 ペルー 23,400 3.8 10 オーストリア 19,826 3.2 11 ドイツ 16,603 2.7 12 スペイン 16,013 2.6 13 ブラジル 14,003 2.2 14 トルコ 12,806 2.1 15 モロッコ 12,051 1.9 16 フランス 11,059 1.8 17 ギリシャ 8,269 1.3 18 米国 8,035 1.3 19 ボリビア 6,500 1.0 20 スイス 6,373 1.0 世界合計 622,782 100.0 (出所)ミラノ商工会議所ウェブサイト

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一方、上記とデータの出典および年度は異なるが、EU 諸国の有機農業に関する資料によ ると、イタリアの有機農地面積はEU 内でも群を抜いているが(表 5)、国内の農地面積全 体に占める有機農地面積の割合では、オーストリアの 14.16%に続く 2 位の 8.40%となっ ている(なおEU 以外の欧州諸国を含めた場合、1 位リヒテンシュタイン 27%、2 位オー ストリア、3 位スイス 11.5%)。国内の全農業従事者数に占める有機農業従事者の割合(表 6)では、8 位の 2.59%となっているが、オーストリアの有機農地面積がイタリアの約 3 分 の 1 であり、有機農業従事者数もイタリアの半分以下であることを考慮すると、有機農業 が盛んな欧州の中でもイタリアの存在は際立っているといえる。 表5 EU 諸国の有機農地面積および国内農地面積に占める有機の割合(2005 年) (単位:ha、%) 順位 国名 有機農地面積 国内全農地面積に 占める割合 1 オーストリア 360,972 14.16 2 イタリア 1,067,102 8.40 3 エストニア 59,862 7.22 4 フィンランド 147,587 6.52 5 ポルトガル 233,458 6.34 6 スウェーデン 200,010 6.27 7 チェコ 254,982 5.97 8 デンマーク 145,636 5.62

(出所)ISMEA “Il mercato dei Prodotti biologici:tendenze generali e nelle principali filiere”

表6 EU 加盟国の有機農家数と全農家数に対する割合(2005 年) (単位:戸、%) 順位 国名 有機農家数 国内全農家数に 占める割合 1 オーストリア 20,310 11.49 2 フィンランド 4,296 6.12 3 デンマーク 2,892 6.04 4 ドイツ 17,020 4.38 5 スウェーデン 2,951 3.93 6 エストニア 1,013 3.66 7 ルクセンブルグ 72 2.95 8 イタリア 44,733 2.59

(出所)ISMEA “Il mercato dei Prodotti biologici:tendenze generali e nelle principali filiere”

大陸別の有機農地面積シェア(図8)を見ると、オセアニア 39%、欧州 23%、南米 19%、 アジア9%、北米 7%、アフリカ 3%となっており、欧州は比較的面積の小さい国が多いが、 全体的に有機農業が盛んなことがわかる。

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図8 大陸別有機農地面積の割合(2005 年)

(出所)Sinab

EU における品目別の有機生産状況(2006 年、作付面積ベース)は表 7 から表 12 の通り である。このほかイタリアは、じゃがいもではドイツ(6,500ha、36.1%)、オーストリア(2,162 ha、12.0%)、英国(2,050 ha、11.4%)に続く 4 位(1,203 ha、6.7%)、薬草・香草ではス ペイン(5,767 ha、50.1%)、フランス(2,017 ha、17.5%)に続く 3 位(1,689 ha、14.7%) となっている。 表7 小麦の有機生産(上位 10 カ国) (単位:ha、%) 順位 国名 作付面積 割合 1 イタリア 135,695 46.7 2 ドイツ 47,000 16.2 3 フランス 34,590 11.9 4 英国 21,425 7.4 5 デンマーク 13,345 4.6 6 ハンガリー 12,538 4.3 7 フィンランド 9,021 3.1 8 ギリシャ 6,190 2.1 9 スロバキア 3,917 1.3 10 チェコ 3,470 1.2 EU 合計 290,346 100.0

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表8 穀類の有機生産(上位 10 カ国) (単位:ha、%) 順位 国名 作付面積 割合 1 イタリア 191,312 22.4 2 ドイツ 174,500 20.4 3 フランス 89,027 10.4 4 オーストリア 64,699 7.6 5 スウェーデン 59,597 7.0 6 フィンランド 53,247 6.2 7 デンマーク 50,561 5.9 8 英国 11,200 5.2 9 ポルトガル 36,570 4.3 10 ハンガリー 25,985 3.0 EU 合計 855,412 100.0 表9 野菜の有機生産(上位 10 カ国) (単位:ha、%) 順位 国名 作付面積 割合 1 イタリア 13,751 26.8 2 ドイツ 8,400 16.4 3 フランス 7,711 15.0 4 英国 5,089 9.9 5 イランダ 4,776 9.3 6 スペイン 3,956 7.7 7 ハンガリー 1,187 2.3 8 オーストリア 1,016 2.0 9 デンマーク 963 1.9 10 ポーランド 829 1.6 EU 合計 51,302 100.0 表10 ぶどうの有機生産(上位 10 カ国) (単位:ha、%) 順位 国名 作付面積 割合 1 イタリア 31,170 43.4 2 フランス 16,428 22.9 3 スペイン 14,928 20.8 4 ギリシャ 3,303 4.6 5 ドイツ 2,500 3.5 6 オーストリア 1,657 2.3 7 ポルトガル 909 1.3 8 ハンガリー 579 0.8 9 英国 114 0.2 10 キプロス 75 0.1 EU 合計 71,845 100.0

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表11 果物・堅果の有機生産(上位 10 カ国) (単位:ha、%) 順位 国名 作付面積 割合 1 スペイン 42,893 34.6 2 イタリア 38,614 31.2 3 ドイツ 15,000 12.1 4 フランス 8,626 7.0 5 ポルトガル 6,537 5.3 6 ハンガリー 1,909 1.5 7 オーストリア 1,744 1.4 8 ギリシャ 1,758 1.4 9 英国 1,554 1.3 10 ラトビア 1,158 0.9 EU 合計 123,898 100.0 表12 オリーブの有機生産 (単位:ha、%) 順位 国名 作付面積 割合 1 スペイン 90,042 40.2 2 イタリア 88,963 39.7 3 ギリシャ 25,811 11.5 4 ポルトガル 19,019 8.5 5 キプロス 414 0.2 6 スロベニア 4 0.0 EU 合計 224,252 100.0 (出所)ミラノ商工会議所ウェブサイト

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2.イタリアの有機生産の概要 (1)有機農地面積、有機農家数と規模の推移 有機農業に関するEUの理事会規則が採択される以前の1990~2007年までのイタリアに おける有機農地面積および有機生産者数(有機農業、有機製品加工業および有機製品輸入 業の合計)の推移は下図の通り。 図9 有機農地面積と有機生産者数(加工業、輸入業を含む)の推移(1990~2007 年)

(出所)Sinab “ Il bio in Italia : numeri e statistiche (2008 年 6 月)”

農地面積と生産者数(農業、加工、輸入業を含む)はともに2001 年まで急激な上昇を続 けた後、2004 年まで下降し、2005 年に再び上昇に転じている。これは、シチリアやサルデ ーニャ等の島部に手厚く給付されていた助成金が打ち切られたことが原因で大きく減少し、 その後2005 年から助成金が復活したこと、有機食品の市場が定着して需要が伸びたことに 起因すると考えられる。2007 年は有機農地面積、農業従事者数ともに微増している。 平均有機農地面積は2004 年まで上昇を続け、2005 年は減少したが、2006 年から再び上 昇に転じており、有機農家規模の緩やかな拡大が見込まれる。

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図10 平均所有農地面積 (単位:ha) (出所)Sinab 有機生産者のうち、有機農業従事者(有機加工兼業を含む)の農家数の推移は、有機農 地面積、有機農業従事者全体の動きと同じ変化をたどっている。 図11 有機農業従事者(加工兼業含む)の推移 (単位:戸) (出所)Sinab 一方、有機食品加工業者と有機食品輸入業者(食品加工、有機農業との兼業を含む)は 助成金の対象ではないことから、緩やかに減少した年もあったが、おおむね増加傾向にあ る。

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図12 有機食品加工業者の推移 (単位:社)

(出所)Sinab

図13 有機食品輸入業者(加工・農業兼業含む)の推移 (単位:社)

表 1 のうち、代表的な認証機関であるスオーロ・エ・サルーテ( Suolo e Salute ) 、 ICEA 、 IMC および demeter の歴史と活動内容を紹介する。 ①  スオーロ・エ・サルーテ  ( Suolo e Salute ) スオーロ・エ・サルーテは 1969 年 3 月に、トリノ で医者、農業従事者および市民活動家によって協会と して結成された。農業で多用された化学製品が引き起 こした環境破壊と健康被害を警告するとともに、化学 合成物質を使わずに自然界の物質を利用することで土 を豊か
表 3 世界の有機農地面積上位 20 カ国( 2006 年)  (単位: ha 、%) 順位 国名 有機農地面積 全体に占める割合 1  オーストラリア 12,126,633  38.5  2  中国 3,466,570  11.0  3  アルゼンチン 2,800,000  8.9  4  イタリア 954,361  3.0  5  米国 889,048  2.8  6  ブラジル 887,637  2.8  7  ドイツ 767,891  2.4  8  ウルグアイ 759,000  2.4  9  ス
表 6 EU 加盟国の有機農家数と全農家数に対する割合( 2005 年) (単位:戸、%) 順位 国名 有機農家数 国内全農家数に 占める割合 1  オーストリア 20,310  11.49  2  フィンランド 4,296  6.12  3  デンマーク 2,892  6.04  4  ドイツ 17,020  4.38  5  スウェーデン 2,951  3.93  6  エストニア 1,013  3.66  7  ルクセンブルグ 72  2.95  8  イタリア 44,733  2.59
図 8 大陸別有機農地面積の割合( 2005 年)    (出所) Sinab    EU における品目別の有機生産状況( 2006 年、作付面積ベース)は表 7 から表 12 の通り である。 このほかイタリアは、 じゃがいもではドイツ (6,500ha、 36.1%) 、オーストリア (2,162  ha 、 12.0% ) 、英国( 2,050 ha 、 11.4% )に続く 4 位( 1,203 ha 、 6.7% ) 、薬草・香草ではス ペイン( 5,767 ha 、 50.1% ) 、フランス(
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