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ネットワーク拡大の取り組み

ドキュメント内 イタリアの有機農業(要旨) (ページ 86-97)

有機の町協会は、AIABと共同で「有機賞(I Premi del Bio)」を実施している。これは、

すぐれた有機製品のコンクールで、対象となる品目は、ワイン、ハム類、蜂蜜、チーズ(ヤ ギを除く)などがある。

また「有機の町」協会は、他の有機関連団体と協力して2005年7月に「パスタの町」(在 来種の古代麦や古い石臼を復活・再利用し、地域の伝統・文化の振興を目的とする)を独 自に承認するとともに、同 9 月にはピエモンテ州でチーズ製造を主要産業にしているコム ーネによる「チーズの町と地区」プロジェクトの立ち上げに合意した。参加コムーネは、

各地域の伝統的なチーズの有機生産を促進し、昔ながらの地産地消の消費形態の回復を促 進することが定められた。

このように、「有機の町」協会は自らのネットワークにこれらプロジェクトを取り込むこ とで、活動の可能性拡大に努めている。

4.山岳共同体(Comunita’Montana)

山岳共同体は、山岳地帯または部分的に山岳地帯を含むコムーネなど(複数のコムーネ や県にまたがる場合もある)が、共有する問題を解決するための交流や活性化を目的とす る組織であり、イタリアが EU の地域格差是正政策に先立って、条件不利地区の活性化策 として実施するものと捉えられている。山岳共同体は、農林業や公共事業、環境保全等の 地域開発計画を立案し、助成金を得て実施している。その中で、一般農業と差別化するこ とで地域農業の活性化を図るために有機農業が注目されている。

「有機の渓谷」協会(Associazione ValBio)

山岳共同体のひとつ、ピエモンテ州のヴァッレ・グラーナは、2002年にAIABピエモン テ支部の協力を得て、この地区で営まれる農業と畜産を有機に転換し、生産物の付加価値 化と観光の活性化を進めることを決めた。ヴァッレ・グラーナに属する全 9 コムーネが協 力して、有機生産と有機畜産の研究、有機生産の促進やマーケット調査等を行うことを定 めた。山岳共同体に属する渓谷全体が一つのまとまりとなって有機を促進する初めての例 となった。

現在「有機の渓谷」協会に参加しているのは、ヴァッレ・グラーナ(Valle Grana)、ヴ ァッレ・ストゥーラ(Valle Stura)、ヴァッレ・マイーラ(Valle Maira)、ヴァッレ・ヴァ

ライタ(Valle Varaita)、ヴァッリ・ポー(Valli Po)、ヴァッレ・ランガ・アスティジャー ナ(Valle Langa Astigiana)の6山岳共同体とAIABである。

また「有機の渓谷」協会は、「有機の町」協会と協力して有機生産の促進に努めている。

Ⅴ.課題と展望

1.課題

(1)有機農業促進活動

イタリア国内の有機農業作付け面積は 2001年まで急激に伸びたが、2002年には減少に 転じ、2005年にようやく回復した。2008年もわずかながら増加する見通しであるが、2006

~2008年は足踏み状態といってよい。

一方、2006年以降の有機製品の国内消費は伸び続けており、現在では需要に対する供給 不足を懸念する声もあるほどの状況である。AIAB の会長アンドレア・フェッランテ氏は、

「需要の伸びに見合うだけの生産を実現するためにも、有機農業のメリットをアピールす る活動が必要である」と強調する。

(2)認証手続きの問題

認証手続きが複雑で時間と費用がかかることは、特に小規模生産者にとって大きな問題 となっている。実質的には有機だが、認証を受けていないために慣行農業による生産物と 同様に流通する例は多い。また、農業従事者の中には、特に年配者で読み書きに精通して いない例も少なくない。

有機農業促進のためには、認証手続きの簡素化と同時に、「顔の見える関係」を作り出し て、認証は受けていなくとも消費者が納得して買えるようなファーマーズ・マーケットや 直売などの環境の拡大が望まれる。

(3)流通

スオーロ・エ・サルーテのアントニオ・スピネッリ氏によると、「特に中山間部の有機農 家には、有機生産をしているが助成金を受け取るだけで満足し、その生産物が慣行農業に よる製品と区別されずに流通することに対して疑問も不満も抱かない例が少なくない」と いう。それは、歴史的に流通システムが整っていない状況におかれ、それが当然のように 受け入れ続けてきた農家側の自発的に変化を求めない傾向による問題でもある。したがっ て、そのような農家に対して、消費者側の要望を理解させるとともに、有機生産物の流通 経路を確立していくことが課題の一つとなっている。

(4)有機生産物中のGMO含有率の問題

スローフード協会のスカッファーディ氏が述べたように、2009 年から施行される EEC

規則2007年第834号により、有機生産物中のGMO含有率が慣行農法の規定と同じ0.9% の製品まで有機認証ラベルを貼付して流通させることが可能となったことへの疑問の声は 大きい。多くの有機農業団体が反対声明を出しており、一部にはこの規則に対して、イタ リアではGMO生産が禁じられているため、「予測不可能な偶発的事故」を除いて「絶対に」

GMO混入は認められないとする団体もある。

Coldirettiが行ったアンケート調査(2007年8月実施)で、0.9%までのGMO含有を表

示しないことが認められた場合の消費行動について聞いた結果は表28の通りである。調査 対象の人数、性別および年齢等は不明であるが、少なくともイタリア人の GMO に対する 拒絶反応または「有機製品は GMO とは無関係であるべき」という判断が多いことが読み 取れる。

AIABの代表のフェッランテ氏は、「イタリアではGMOが認められることはないだろう。

それは、文化と伝統の問題でもある」と言う。また、現政権が GMO に好意的な立場を示 している現状においても、「イタリアでGMOが認められることはあり得ない」と主張する。

表28 Coldirettiのアンケート調査結果(2007年8月実施)

質問:「もし、有機生産物が0.9%の GMO を含んでいても、それが表示されないことが認 められた場合、あなたはどうしますか?」

今後は有機製品を買わない 60.1%

買う量を減らす 13.2%

習慣は変わらないのでこれまでどおり買う 14.0%

これまでよりも買う 12.7%

(出所)Coldirettiウェブサイト

2.将来の展望

前出のフェッランテ氏およびスピネッリ氏、農林政策省のフランチェスコ・ジャルディ ーナ氏は、イタリア有機農業の見通しについて、現在の課題が解決されればとの条件付き ではあるが、今後も伸び続けるとの見解である。その根拠となっているのは、現在、食品 全体の消費が落ち込んでいるにもかかわらず、有機食品の需要が伸びていること(すなわ ち、消費者による有機食品の価値に関する理解が高まっている)、また生産面においても、

かつて有機農業は粗放農業しかできない山間部が主流だったものから現在では集約農業で

利益を上げていた平野部にも広がっていること等を挙げている。

さらには、スローフードをはじめとする活動が食の安全性や多様性に対する啓発に成功 していること、チッタスローや ANCI 関連の活動、山岳共同体の取り組み、コムーネや県 または州レベルで有機に対する関心が高まっていることなどによって、有機給食やアグリ トゥーリズモ・ビオロジコの需要が拡大し、直売の機会も増加する等、明るい材料は多い。

さらに、有機生産が食物にとどまらず、環境や景観の保持に役立っているという認識が深 まったことから、建築から繊維、化粧品や観光形態にまで広がりをみせ、環境保護団体と の協力関係も進んでいる。消費者側においても、有機生産物を買うという行動は、自分や 家族の健康を守るだけでなく、維持可能な農業や環境保全等の支持に繋がるという認識が、

高学歴層を中心に広がってきているという。

また、スローフード協会を始め、有機認証を推進する活動、直売などで「顔の見える関 係」を形成することによって、特に有機認証の取得が困難な中小農家の実質的な有機生産 または減農薬による生産活動を支援する活動が並行的に進んでいるのが現状である。

イタリアの多様な有機生産促進活動の最大の特徴としては、「ネットワーク化」が挙げら れる。農業に限らず様々な団体がネットワークを組織し、各種活動の局面で絡み合いなが ら、時には離れたりもしながら、ダイナミックな動きをみせている。

Ⅵ.関連機関リスト

省庁関連機関

農林政策省(Ministero delle politiche agricole alimentari e forestali) Via XX Settembre, 20 - 00187 Roma

Tel. 06 46651 Telfax. 06 4742314 www.politicheagricole.it

Sinab (Sistema d’Iinformazione Nazionale sull’Agricoltura Biologica) C/O MiPAAF (Ministero delle Politiche Agricole Alimentari e Forestali)

Tel. 06 47882805 Fax. 06 47826437 www.sinab.it

農業食品市場サービス振興会(ISMEAIstituto di Servizi per il Mercato Agricolo Alimentare)

Via Comelio Celso, 6 - 00161 Roma Tel. 06 855681

www.ismea.it

農業連合

Coldiretti

Via XXIV Maggio, 43 - 00187 Roma Tel. 06 46821 Fax. 06 4682305 www.coldiretti.it

CIA (Confederazione Italiana Agricoltori) Via Mariano Fortuny, 20 - 00196 Roma Tel. 06 32687

www.cia.it

Confagricoltura

Corso Vittorio EmanueleⅡ, 101 - 00186 Roma Tel. 06 68521 Fax. 06 6861726

www.confagricoltura.it

認証機関(アルファベット順)

ABC – Fratelli Bartolomeo S.s.

Via Roma, 45 - 70025 Brumo Appula (Bari) Tel. 080 3839578 Fax. 080 3839578

www. Abcitalia.org

ANCCP S.r.l.

Via Rombon, 11 - 20134 Milano Tel. 02 2104071 Fax. 02 210407218 www.anccp.it

bioagricert S.r.l.

Via dei Macabraccia, 8 - 40033 Casalecchio di Reno (Bologna) Tel. 051 562158 Fax. 051 564294

www.bioagricert.org

BIOS S.r.l.

Via Monte Grappa, 37/C - 36063 Marostica (Vicenza) Tel. 0424 471125 Fax. 0424 476947

www.certbios.it

BIOZOO S.r.l.

Via Chironi, 9 - 07100 Sassari Tel. 079 276537 Fax. 079 2853527 www.biozoo.org

CCPB S.r.l.

Via Jacopo Barozzi, 8 - 40126 Bologna Tel. 051 6089811 Fax. 051 254842

www.ccpb.it

Certiquality S.r.l.

Via Gaetano Giardino, 4 - 20123 Milano Tel. 02 8069171 Fax. 02 86465295

www.certiquality.it

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