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販売状況

ドキュメント内 イタリアの有機農業(要旨) (ページ 52-61)

多くのスーパーマーケットにおいて、有機食品は総売上の中で 2 次的な役割を果たして いるに過ぎない。対象の70店舗のうち、有機食品の売り上げが全体の20%を超えると回答 しているのは4%のみで、17%の店舗が6%~20%、79%の店舗が5%以下またはごくわず かと回答している。

調査対象店舗における品目別の売り上げ(複数回答)上位は、セモリナ粉のパスタ(25.7%)、 レタス (24.3%)、バナ ナ (20%)、ビスケット (15.7%)、トマト (14.3%)、オレンジ (12.9%)、

牛乳 (11.4%)の順となっている。

3)有機食品専門店

調査対象となった食品専門店は60店舗で、平均従業員は3名で個人経営が多い。

① 仕入れ先

有機専門および一般を合わせた卸業者からの仕入れが 6 割を占めるが(図 25)、生鮮野 菜・果物に関しては農家から仕入れる場合が多い。

輸入品の割合は全体の 13.6%で、スーパーマーケット(1.7%)に比べて高い。ドイツか

らの輸入が54%を占め、フランスとオランダがそれぞれ約10%で、日本やスペインなどか らの輸入もある。

調査対象60店の平均的な仕入れ先業者数は24である。

図25 有機食品専門店の仕入れ先

(出所)ISMEA

② 販売状況

有機食品専門店の売上げで高い割合を占めるのは、セモリナ粉のパスタとビスケット(各 15%)、焼きたてのパン(8%)、米(7%)、人参(7%)などである。全ての有機専門店で 扱っている訳ではないが、一般的にスーパーマーケットでは扱わない焼きたてのパン、豆 腐、グルテンを含まない商品、食品以外のエコ商品なども売れている。

2006年の売上げに関して、調査対象店舗の48.3%が「上昇した」、30.0%は「変化無し」、

21.7%が「減少した」と答えている。平均して、有機専門店の売上げもスーパーマーケット

と同様に上昇していると考えられる。

4)農家直売

2008年9月に開催された有機食品見本市「SANA」(ボローニャ)で、有機生産に関する 民間データ・バンクのBio Bankが発表した最新の資料によると、現在の厳しい経済状況に あっても、消費者の有機食品への指向は高まっており、節約も兼ねて農家の直売を利用す るケースが急増しているという。

また、農家の直売店と直売店を持つアグリトゥーリズモ(Ⅳ章参照)の数を合計すると、

2003~2008年の間では、実に90%の伸びを見せている。

表22 有機食品直売店の推移 (単位:店)

年 農家直売 有機アグリトゥー

リズモ直売 合計

2003 375 630 1,005

2004 523 661 1,184

2005 540 659 1,199

2006 608 716 1,324

2007 763 882 1,645

2008(注) 915 1,013 1,928

(注)推計値

(出所)Bio Bank

5)宅配

イタリアにおける宅配システムの歴史は浅く、毎週など定期的かつその地域の有機また は減農薬の商品を中心とした幅広い品目を家庭に配達することは、日本の宅配システムを 学んだカッシーナ・コルナーレ(Ⅲ−5−③参照 )が2003年に始めたのが最初の例と考えら れている。農家や有機アグリトゥーリズモの直売が伸びを見せるにつれて、組合・協同組 合やその下部組織としての有限会社、または大手スーパーマーケットなどが宅配便を行っ ている。スーパーマーケットによる宅配は、店舗の商品を消費者がインターネットを通し て注文するため、有機や減農薬製品を中心とする宅配とはやや異なる。宅配は比較的新し い動きであり、具体的な統計はまだ無いが、今後も増加すると考えられる。

6)インターネット販売

ここ数年急激に伸びている販売形態だが、組合・協同組合や宅配業者だけでなく、直売 農家もインターネットで顧客数をのばしている事例が多い。スーパーマーケットの宅配便 もほとんどがインターネットに頼っている。

また、先述のAIABやBio Bankをはじめ、多くの有機生産関係組織のウェブサイトで有 機生産者や有機生産物マーケット、有機アグリトゥーリズモが検索できるようになってい る。

今後も実店舗の展開など従来の販売形態に加えて、インターネット販売を行う個人や組 織の増加が見込まれている。

7)ファーマーズ・マーケット

イタリアでは、どの町にも毎週決まった日、決まった場所で青空市が立ち賑わっている が、この定期的な青空市で有機食品が差別化されて販売されることはなかった。

AIABは2002年から多くの町で「Biodomenica」という有機食品の直売マーケットを組 織し始め、2008 年には開催都市は60を越えたという。この催しは原則的に年1回秋に行 われるが、都市によっては月に1回程度開かれるところもある。

このほか2008年には、Coldirettiを中心とするファーマーズ・マーケット、チッタスロ

ー協会(Ⅳ章参照)とスローフード協会が協同で組織している「メルカーティ・デッラ・

テッラ(Mercati della Terra:毎週開かれる青空マーケットにその町の近くで生産を行う農

家の参加を促す活動)」なども活発になっている。これらは有機食品に限定しているわけで はないが、地元の生産者による「高品質」の食品の直売を目指しており、定期開催化して いく傾向にある。

8)有機学校給食

表 23 は、有機の学校給食を一部または全て導入したコムーネ(市町村等の地方自治体)

の公立保育所、幼稚園、小学校および私立各種学校の食堂数と給食数(人数分)の合計で ある。

有機学校給食を取り入れる施設は、家庭用有機食品消費が減少した 2005 年も伸び続け、

2008年の予想値は前年比16%増で、2003~2008年にかけては41%増加している。給食数 の伸びは、この5年間で同25%となっている。

表23 有機学校給食の推移

年 有機学校食堂数 有機給食数/日

2003 561 785,000

2004 608 806,000

2005 647 839,000

2006 658 896,000

2007 683 924,000

2008(注) 791 983,000

(注)推計値

(出所)Bio Bank

給食用の食材供給では、有機卸売業者が多くを占めている。卸売業者の卸先内訳(表21) にあるように、学校給食向けは売上げの26%を占めており、重要な販売先の一つとなって いる。

また、コムーネとの契約上、まとまった量の供給が要求されるため、農家が単独で対応 することは不可能に近い。そのため、複数の有機農家が組合等を組織することで、学校給 食に生産物を納入する動きもある。このような取り組みは、Coldirettiなどの組織的な支援 もあり、今後増加することが予想される。

学校給食への取り組みは州によって大きな違いがあり、導入が最も盛んなエミリア・ロ マーニャ州は、州法によって2歳までの保育園児の給食は100%有機にすると規定している。

(4)地域別有機生産物消費チャネル

表24は有機学校給食、有機マーケット、有機アグリトゥーリズモ、有機専門店および有 機レストランの数を州および地域別にまとめたものである。この資料と有機の生産状況(Ⅱ -2.)を概観すれば、主に南部を中心に生産され、北・中部で消費されるという関係性が読 み取れる。

表24 地域別有機生産物消費チャネル(2005年)

州・県 有機

学校給食

有機 マーケット

有機アグリ トゥーリズモ

有機 専門店

有機 レストラン

北部

ヴァッレ・ダオスタ 1 1 2 6 0 ピエモンテ 37 23 35 128 21 ロンバルディア 105 39 41 156 35 トレント/ボルツァーノ自治県 25 9 24 52 3

ヴェネト 71 31 30 127 19

フリウリ・ヴェネツィア G. 67 8 21 49 5 リグーリア 20 12 24 40 11

小計 326 123 177 558 94

中部

エミーリア・ロマーニャ 133 21 75 110 46 トスカーナ 77 22 188 77 31 ウンブリア 7 4 61 8 12

マルケ 28 4 54 44 29

ラツィオ 23 3 40 86 17

アブルッツォ 11 0 34 7 7

モリーゼ 1 0 2 2 0

小計 280 54 454 334 142

南部

プーリア 8 0 32 47 5

カンパーニア 7 3 23 30 9 バジリカータ 14 0 13 1 4 カラブリア 1 0 42 6 9

シチリア 5 3 38 27 7

サルデーニャ 6 2 25 11 5

小計 41 8 173 122 39

合計 647 185 804 1,014 275

(出所)ミラノ商工会議所資料から作成

(5)有機製品の価格

1)小売価格の変化

2006年の有機食品の小売価格は、前年比で平均1.9%増加している。品目によって差があ り、オイル(10.5%増)、調味料(10.2%増)およびアルコール飲料(8.4%増)の値上がり が目立つ一方、牛乳・乳製品 (2.2%減) や乳幼児用食品 (4.5%減)、サラミ・肉加工品 (5.0%

減)は値下がりしている。

表25 有機製品の小売価格伸び率(2006年)

品目 価格伸び率

(前年比)

生鮮野菜・果物と加工品 1.6%

米、パスタ 2.8%

パン・パンの代替品 4.6%

オイル 10.5%

牛乳・乳製品 2.2%

ビスケット、菓子・スナック 3.6%

アルコール飲料 8.4%

アルコールを含まない飲料 2.9%

0.4%

調味料 10.2%

ダイエット食品 1.0%

乳幼児用食品 4.5%

砂糖、コーヒ、茶 3.2%

ジェラート、冷凍食品 0.7%

蜂蜜 0.8%

サラミ、肉加工品 5.0%

その他有機食品 0.8%

平均 1.9%

(注)有機専門店における消費を除く

(出所)ISMEA/ACNielsen

2)有機製品と一般製品の価格差

2005~2006年における有機生産物と一般食品の小売価格における差(一般食品の価格を 1とした場合の有機生産物価格との差を%で表示)は表26のとおり。

品目により差があるが、原材料から製品になるまでに多くの過程を経るビスケット、菓 子・スナック類や調味料で価格差が目立ち、乳幼児用食品は一般食品より価格が低めとな っている。

有機製品と一般製品の価格差は平均して前年より1%広がっている。

表26 有機製品と一般食品の小売価格差

品目 2005年 2006年 生鮮野菜・果物と加工品 67.8% 62.2%

米、パスタ 39.1% 33.4%

パン・パンの代替品 84.6% 98.0%

オイル 93.8% 90.6%

牛乳・乳製品 40.9% 40.2%

ビスケット、菓子・スナック 85.7% 100.3%

アルコール飲料 64.5% 59.2%

アルコールを含まない飲料 66.8% 73.6%

卵 92.4% 87.9%

調味料 98.6% 113.8%

ダイエット食品 16.7% 16.9%

乳幼児用食品 △12.1% △15.1%

砂糖、コーヒ、茶 87.6% 91.3%

ジェラート、冷凍食品 28.5% 29.6%

蜂蜜 57.7% 60.3%

サラミ、肉加工品 67.4% 79.8%

その他有機食品 124.0% 114.0%

合計 64.9% 65.9%

(注)有機専門店における消費を除く

(出所)ISMEA/ACNielsen

3.輸出状況

有機生産物の輸入に関しては、監督官庁の許可を得る必要があることから、近年わずか ではあるが統計を入手することができるようになったのに対して、輸出に関するイタリア の統計は皆無と言ってよい。

そのため、ここでは参考までに、ISMEAが実施したインタビュー調査から、輸出に関す る記述を品目別にまとめる(輸出量等に関するデータはなし)。

① パスタ

ISMEAの調査対象となった有機パスタの製造業者、卸売業者および輸出業者等 29社

のうち12社が海外との取引を行っている。輸出先はEU域内が中心で、フランス(6社)、

ドイツおよびオランダ(各5社)、スペインおよび米国(各3社)などが多い。このほか 日本やスイスにも輸出している。

② 焼き菓子、グリッシーニ等穀類の粉を原材料とする製品

調査対象29社中6社が海外市場に販売している。取引先はフランスおよびドイツが各 3社で、それ以外ではオランダ、スペイン、スイスおよび米国などがある。

③ オイル(オリーブオイルその他)

有機オリーブの栽培農家および卸売業者20社に話を聞いたところ、このうち8社が輸 出しており、そのうち4社は売上げ額の40%以上が輸出向けである。輸出先は圧倒的に ドイツが多い。

④ 野菜・果物と加工品

調査対象となった卸売業者 3社のうち2 社が海外に取引先を持っており、ドイツ、英 国、オーストリアおよびデンマークなどへ販売している。

⑤ チーズ等の乳製品

チーズをはじめとする乳製品の輸出先は主にドイツとオランダである。

⑥ 有機ぶどうワイン

有機ワイン製造業者16社のうち、海外との取引があると回答したのは6社で、取引先 国の内訳は図26の通り(複数回答)。

ドキュメント内 イタリアの有機農業(要旨) (ページ 52-61)

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