生 殖 腺 に対 す る モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 の 作 製 とその 性 状 解 析
横 山
智哉子*
Generationandcharacterizationofantibodiesagainstgonad
ChikakoYOKOYAMA*
ABSTRACT:Inamouse,thegenitalridgedevelopsaroundembryonicday(E)9.50ntheventralsurface ofthemesonephros.ThegenitalridgeisidentifiedmorphologicallyaroundE10.5.AtE11.5toE12.5,the adrenogonadalprimordiumonthegenitalridgeseparatesintotheadrenalcortexandthegonadcell populations.However,theprecisemechanismofthedevelopmentislargelyunknown.Inthisstudy,we reportontheproductionandcharacterizationofaseriesofmonoclonalantibodies(MAbs)aga血stgonad. Theantibody,designatedasMAbSBS,yieldedthestrongsignalongermcellsinimmunofluorescence stainingusingthemouseembryogonadsection.Moreover,immunofluorescenceanalysisusingE12.5 mousevarioustissuesectionsrevealed廿1atMAb5B5alsorecognizes廿1ecells血neuraltube,ventricular zoneofcerebralcortex,apartoftheepithelialcells,血whichtissue-specificstemcellsarepresent abundantly.Furthermore,MAbSBSrecognizedthemouseandhumanESandiPScells.Fromthesefindings, itwasconcludedthatMAbSBSrecognizesstemcells-associatedantigen.Ontheotherhand,wefoundthat thisantigenexpressescancercelllinesandhumantumortissue.TheseresultssuggestthatMAbSBSmay recognizecancerstemcells. Keywords:monoclonalantibody,stemcells,cancer(ReceivedSeptember2Q2013)
1.は じ め に将来,精 子や 卵 子になる生殖細胞や 阻織 のも とにな る幹細胞
に関す る研 究 は,生 命現 象を理解す る上で重 要であ るばか りで
な く,再 生 医療 や が ん な ど様 々 な研 究 分 野 で幹 細 胞 に 関
す る研 究 が活 発 に行 われ て お り,様 々な疾 患の原 因解 明や
治療法の 開発にっなが ると期待 され る。 しか し,分 化 能 維 持
機 構 な ど,幹 細 胞 の機 能 に っ い て は 不 明 な 点 が 数 多 く残
され て い る。
複 雑 な細 胞 機 能 メ カ ニ ズ ム を解 き 明 か す た め に は,
個 々 の 細 胞 特 異 的 に 発 現 す る分 子 の 探 索 が 重 要 な 鍵 を握
る。 これ らの 解 析 の た め,各 生 体 分 子 に 特 異 的 に 結 合 す
るモ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 の利 用 は,そ の 生 体 分 子 の 時 空 間
的 な 発 現 を追 跡 で き るな ど,多 くの利 点 が あ る。 さ らに
モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 は 細 胞 性 疾 患 の 臨 床 検 査 や 抗 体 医 療
*:物 質 生 命 理 工 学 科 助 教(4koyama@st .seikei.ac.jp) へ の 応 用 が 可 能 で あ る。 マ ウ ス に お い て,生 殖 隆 起 は 胎 生9 .5日 目(E9.5)頃 に 腹 腔 に 面 した 一 層 の 体 腔 上 皮 細 胞 が 増 殖 の 後 に 生 殖 隆 起 内 部 へ の 陥 入 に よ り発 生 す る 。 形 態 的 に はElO.5頃 に は じ め て 確 認 され る。Ell.5か らEl2.5に か け て,生 殖 隆 起 内 の 副 腎 一生 殖 腺 原 基 は2っ の 細 胞 集 団 に 分 か れ る 。1っ の 集 団 は 副 腎 皮 質 に な り,も う一 方 は 生 殖 腺 に な る。 こ れ 以 降,生 殖 腺 で は 雌 雄 で 異 な っ た 構 造 的 な 性 分 化 が 起 こ る。ほ と ん ど の 哺 乳 類 の 雌 雄 の 性 はSryに よ り決 定 され る 1.3)。Sry遺 伝 子 はY染 色 体 上 に 存 在 し,雄 の み に 発 現 す る 。 こ の 時 期,雄 で はSryの 働 き に よ り,精 巣 化 が 開 始 され る 。 精 巣 化 で は セ ル ト リ細 胞 が 生 殖 細 胞 の 周 りに 局 在 し,生 殖 細 胞 を そ の 中 に 集 め る 。 ラ イ デ ィ ッ ヒ 細 胞 はEl2.5か ら精 巣 に 現 れ る。セ ル ト リ細 胞 ラ イ デ ィ ッ ヒ 細 胞 と も, 機 能 的 に 生 殖 細 胞 を 支 え る 細 胞 で あ る 。El2.5の 生 殖 腺 に お い てAd4BP/SF-1は 雄 で は セ ル ト リ細 胞 と ラ イ デ ィ ッ ヒ細 胞 に,雌 で は 濾 胞 細 胞,卵 胞 膜 細 胞,黄 体 ホ ル モ成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
Vo1.50No.2(2013.12)
ン産 生 細 胞 や 間 質 細 胞 刺 激 ホ ル モ ン産 生 細 胞 に発 現 して
い る4,5)。
本 研 究 で は,生 殖 腺 の 発 生 ・成 熟機 構 の解 明 や,生 殖
細 胞 や 多 能性 幹 細 胞 な どの 幹 細 胞 研 究 に貢 献 し将 来 的 に
は 細 胞性 疾 患 の 治 療 に 役 立 っ ツー ル の 開 発 を 目的 と して,
生 殖 細 胞 が 成 熟 す る場 で あ る生 殖 腺 を ター ゲ ッ トにモ ノ
ク ロー ナ ル 抗 体 を作 製 した 。そ して,生 殖 腺,生 殖 細 胞,
神 経 幹 細 胞,多 能性 幹 細 胞,が ん 細 胞 な ど各 種 細 胞 を用
い て 抗 体 の性 状解 析 を行 った 。
2.ラ
ッ ト腸 骨 リ ン パ 節 法 に よ る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗
体 の 作 製
Ad4BP/SF-1(Ad4bindingprotein/steroidogenicfactor-1)は 生 殖 や 内 分 泌 制 御 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 核 内 受 容 体 で あ り,内 分 泌 組 織 の 発 生 に 必 須 の 因 子 で あ る4'6)。生 殖 は 生 物 の 根 幹 を な す 機 能 で あ り,そ の 生 殖 組 織 の 発 生 メ カ ニ ズ ム の 解 明 は 生 物 の し く み を 理 解 す る 上 で 非 常 に 重 要 で あ る 。 ま た そ の メ カ ニ ズ ム の 解 明 に よ り不 妊 症 な ど 生 殖 関 連 疾 患 の 病 因 解 明 や 治 療 法 の 開 発 が 期 待 で き る 。 生 殖 腺 の 発 生 で はAd4BP/SF-1が 運 命 決 定 因 子 で あ る が,こ の 分 子 が ど の よ うに 発 現 誘 導 さ れ,各 細 胞 の 分 化 を 導 く か は 不 明 な 点 が 多 い 。Ad4BP/SF-1作 用 機 構 を 分 子 レベ ル で 明 ら か に す る た め に は,Ad4BP/SF-1を 特 異 的 に 認 識 す る ツ ー ル が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 Ad4BP/SF-1の 機 能 解 析 の た め の ツ ー ル と し て, Ad4BP/SF-1に 対 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を ラ ッ ト腸 骨 リ ン パ 節 法 を 用 い て 作 製 した7'9)。 作 製 し た 抗Ad4BP/SF-1モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 の 性 状 解 析 の た め,El2.5マ ウ ス 胎 仔 生 殖 腺 切 片 を 用 い た 免 疫 組 織 染 色 を 試 み た 。 切 片 に 一 次 抗 体 と し て 抗Ad4BP/SF-1ラ ッ トモ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 (MAbIBl)と 抗Ad4BP/SF-1ラ ビ ッ トポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 反 応 さ せ た 。 蛍 光 色 素 を 結 合 さ せ た 二 次 抗 体 を 用 い て 可 視 化 し た と こ ろ,MAbIBIは ラ ビ ッ トポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体6,10)と 同 様 に,生 殖 腺 内 の セ ル ト リ細 胞 と ラ イ デ ィ ッ ヒ細 胞 の 細 胞 核 を 認 識 し た(Figure1)。 免 疫 組 織 染 色 は 通 常 難 し い と 考 え られ て お り,市 販 の 抗 体 で も免 疫 組 織 染 色 に 適 し た 抗 体 は 多 く な い が,MAbIBIは 組 織 切 片 に お い て も 内 在 性Ad4BP/SF-1を 検 出 で き る こ と が わ か っ た 。 本 研 究 で は,生 殖 腺 運 命 決 定 因 子Ad4BP/SF-1に 特 異 的 に 結 合 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 樹 立 し,そ の 性 状 解 析 を 行 っ た 。 樹 立 した 抗 体 はELISA,ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ,免 疫 細 胞 染 色,免 疫 組 織 染 色 な ど様 々 な 実 験 に 用 い る こ と が で き る 優 れ た 特 性 を 示 し た 。 こ の よ うに 新 し く 樹 立 し た 抗 体 はAd4BP/SF-1を 発 現 す る 組 織 の 発 生 や 機 能 の 分 子 メ カ ニ ズ ム 研 究 の 進 展 に 大 き く 貢 献 す る で あ ろ う。3.モ ノク ロー ナ ル 抗 体 シ ョッ トガ ンア プ ロー チ を
用 い た マ ウ ス 生殖 細 胞 を 認 識 す る抗 体 の 作 製 と
性 状解 析
モ ノク ロー ナ ル抗 体 は リンパ 球 と ミエ ロー マ 細 胞 間 の
細 胞 融 合 に よ り樹 立 され,生 化 学 ・分 子 生 物 学 的 実 験 手
法 に欠 かせ な い 有用 な ツ ール で あ る。 これ ま で 多 くの 生
物 学者 が"モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 シ ョ ッ トガ ン ア プ ロー チ"
と呼 ばれ る,組 織抽 出液 な どの 無 作 為 な 抗 原 に 対 す るモ
ノク ロー ナル 抗 体 作製 法 を用 い て,新 規 分 子 の 同定 に 成
功 して い る。 この方 法 で は,事 前 に 抗 原 に 関 す る分 子 情
報 が な く と も抗 体 の樹 立 が 可能 で あ る。 例 えば,本 ア プ
ロー チ 法 で カ ドヘ リンや イ ム ノ グ ロブ リンス ー パ ー フ ァ
ミ リー な どの重 要 な 因子 が 同 定 され た11,12)。
生殖 細 胞 特 有 の機 能 維 持 に働 く分 子 は,生 殖 細 胞 特 異
的 に発 現 して い る はず で あ る。そ の分 子 が 同定 で きれ ば,
多分 化 能 な ど生 殖細 胞 機 能 の解 明 に 貢 献 で き る。 そ こで
RatMAblB1
RabbitpAb
HST
Figure1.IndirectimmunofluorescenceofE12.5mousegonadsectionusingMAblB1.Thesectionwasdoublestained
withMAbIBIandrabbitanti-Ad4BP/SF-1polyclonalantibody(pAb)andstainedwithHoechstdye(HST).
MAblBIandrabbitanti-Ad4BP/SF-1pAbweredetectedwithgoatAlexa546-conjugatedanti-ratIgGand
goatAlexa488-conjugatedanti-rabbitIgG,respectively.Gd,gonad;Ms,mesonephros.
本 研 究 で は,生 殖細 胞 に 発 現 す る分 子 を探 索 す るた め,
マ ウス 生殖 腺組 織 を 抗原 と して,モ
ノ ク ロー ナ ル 抗 体 シ
ョ ッ トガ ンア プ ロー チ を 行 った 。 そ して,マ
ウス 始 原 生
殖 細胞 を認 識す る複 数 の モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 の 樹 立 に成
功 した 。 さ らに この 中の1っ が,始 原 生 殖 細 胞 の み な ら
ず,神 経 幹 細 胞 を認 識 す る こ とを 明 らか に した13)。この
抗 体 は 分化 能 を 持 つ 細胞,す
な わ ち幹 細 胞 で機 能 す る分
子 を認 識す る と考 え られ た。
3.1モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 シ ョ ッ トガ ン ア プ ロ ー チ マ ウ ス 胎 仔 生 殖 腺 に 対 す る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を ラ ッ ト腸 骨 リ ン パ 節 法 を 用 い て 作 製 し た 。生 殖 腺 組 織 をE12,5 マ ウ ス 胎 仔 か ら 取 り 出 し,そ の 懸 濁 液 を 抗 原 と して ラ ッ トの 両 後 足 肉 球 に 一 回 免 疫 した 。2週 間 後,ラ ッ トよ り 肥 大 し た リ ンパ 節 を 取 り 出 し,リ ン パ 球 を 回 収 した 。 リ ン パ 球 と マ ウ ス ミエ ロ ー マSP2細 胞 を 融 合 させ,約4000 ク ロ ー ン の 融 合 細 胞(ハ イ ブ リ ドー マ)を 得 た 。 これ ら ハ イ ブ リ ドー マ の 培 養 上 清 に つ い て,E12.5マ ウ ス 胎 停 生 殖 腺 切 片 を 用 い た 免 疫 組 織 染 色 に よ り,ス ク リー ニ ン グ を 行 っ た 。 こ の 中 で,5ク ロ ー ン が 生 殖 細 胞 と 思 わ れ る 細 胞 群 を認 識 し た が,そ れ ぞ れ の 染 色 パ タ ー ン の 違 い が 明 ら か と な っ た 。 そ の 中 で,MAb5B5と 名 付 け た ク ロ ー ン は 免 疫 組 織 染 色 で 最 も 強 い シ グ ナ ル が 観 察 さ れ た (Figure2)。 よ っ て,こ の 後 の 解 析 に はMAb5B5を 用 い た 。 抗 体 の ク ラ ス 決 定 を ラ ッ トisotypingkitを 用 い て 行 っ た と こ ろ,MAbSBSはlgM(K)で あ っ た 。Figure2.IndirectimmunofluorescenceofE12.5mouse
gonadsectionusingMAb5B5.MAbwas
detectedwithAlexa488-conjugatedanti-ratIgG(A)andstainedwithDAPI(B).
3.2マ ウ ス 生 殖 細 胞 を 認 識 す る 抗 体 の 性 状 解 析 始 原 生 殖 細 胞 は 強 い ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 を 有 す る と知 られ て い る。MAbSBSが 認 識 す る 細 胞 群 が 始 原 生 殖 細 胞 で あ る と確 認 す る た め,E10,5マ ウ ス 胎 仔 生 殖 隆 起 切 片 に つ い て,MAbSBSを 用 い た 免 疫 染 色 を す る と 同 時 に ア ル カ リフ ォ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 染 色 を 試 み た と こ ろ,MAb5B5の 染 色 シ グ ナ ル は ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ 活 性 染 色 の シ グ ナ ル と 一 致 し た13)。 よ っ てMAb5B5 が 生 殖 腺 で 認 識 す る 細 胞 群 が 始 原 生 殖 細 胞 で あ る と 確 認 で き た 。 次 に,MAb5B5を 用 い た 免 疫 組 織 染 色 に よ っ てEl2.5 マ ウ ス 胎 停 の 様 々 な 組 織 でMAb5B5が ど の よ う な 細 胞 を 認 識 す る か を 解 析 し た と こ ろ,神 経 管 や 一 部 の 上 皮 で 陽 性 細 胞 が 存 在 し た 。 そ こ で マ ウ ス 胎 仔 神 経 系 組 織 で の 免 疫 染 色 の 詳 細 な 解 析 を 行 っ た 。 大 脳 皮 質 切 片 をMAb 5B5とPan-cadに 対 す る ラ ビ ッ トポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 で 二 重 染 色 し た 。抗Pan-cad抗 体 は 神 経 上 皮 細 胞 の 側 部 お よ び 基 底 部(basolateral面)を 可 視 化 す る た め に 用 い た 。Figure3 に 示 す よ う に,MAb5B5は 大 脳 皮 質 脳 室 帯 の 頂 端 部 (apical面)側 を 非 常 に 強 く 染 色 した 。 大 脳 皮 質 の 神 経 幹 細 胞 は こ の 部 分 に 豊 富 に 存 在 し て い る と 知 ら れ て い る 。 よ っ て,MAbSBSは 神 経 幹 細 胞 に発 現 す る 分 子 を 認 識 す る と推 測 され た 。 ま た,組 織 染 色 パ タ ー ン よ り,MAbSBS 抗 原 は 細 胞 膜 に 局 在 し て い る と 考 え られ た 。 Figure3.ExpressionandlocalizationofMAb565 antigeninE14.5mousecerebralcortex. CoronalsectionofE14.5mousecerebral cortexincludingthecorticalplatewas stainedwithMAb5B5(A)andtheantibody forPancadherin(Pan-cad)(B).Pan-cad wasusedtovisualizethebasolateral cellmembranesofneuroepithelialcells. MAb565andtheanti‐Pan‐cadantibody weredetectedwithgoatAlexa488-conjugatedanti-ratIgGandgoatAlexa 546‐conjugatedanti‐rabbitIgG, respectively.CP,corticalplate:VZ, ventricularzone.4.幹
細 胞 特 異 的 モ ノ ク ロー ナ ル 抗 体 の 性 状 解 析
4.1MAb5B5は マ ウ ス ま た は ヒ トES細 胞 お よ びiPS細 胞 を 認 識 す る 前 項 に お い て,生 殖 腺 組 織 を抗 原 と して 作 製 したMAb 5B5は,生 殖 細 胞 や 神 経 系 な ど の 組 織 幹 細 胞 を 認 識 す る 抗 体 で あ る と示 し た 。 そ こ でMAb5B5が 他 の 幹 細 胞 も認 識 す る か 調 べ る た め,多 能 性 幹 細 胞 で あ る マ ウ ス 胚 性 幹 細 胞(ES:EmbryonicStemcells)と 人 工 多 能 性 幹 細 胞(iPS: inducedPluripotentStemcells)を 用 い た 免 疫 染 色 を 試 み た 。 ips細 胞 は 人 為 的 に 樹 立 で き る 多 能 性 幹 細 胞 で,ES細 胞 と 同 等 の 性 質 を 持 つ こ と か ら 大 変 注 目 を集 め,世 界 中 で 活 発 に 研 究 され て い る14)。
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
Vo1.50No.2(201312)
LIFを 含 ん だ 培 地 で 培 養 した マ ウ スES細 胞 と,培 地 か らLIFを 抜 き4日 間 培 養 し分 化 誘 導 し たES細 胞 を 免 疫 染 色 に 用 い た 。LIFは マ ウ スES細 胞 の 未 分 化 状 態 を 維 持 す る サ イ トカ イ ン で あ る。ES細 胞 の 未 分 化 状 態 は 未 分 化 マ ー カ ーOct -4の 発 現 で 評 価 した 。 そ の 結 果,MAb5B5は 未 分 化 状 態 のES細 胞 を 強 く 認 識 した(横 山 ら,未 発 表 デ ー タ)。 マ ウ スips細 胞 はMEF(マ ウ ス 胎 仔 線 維 芽 細 胞)に Oct3/4,Sox2,c-Myc,Klf4の4因 子 を 強 制 発 現 さ せ て 樹 立 し,MEFを フ ィ ー ダ ー 細 胞 と して 用 い て 継 代 維 持 し た 。 ips細 胞 が 増 殖 す る と コ ン パ ク トに ま と ま っ てES細 胞 に 似 た コ ロ ニ ー を 形 成 す る が,MAb5B5は こ の コ ロ ニ ー に 存 在 す る細 胞 だ け を 染 色 し,ま わ りのMEF細 胞 は 全 く 染 色 され な か っ た(Figure4)。 ま た,ピ ン ト面 を 変 化 さ せ て 観 察 す る と,MAb5B5はips細 胞 の 細 胞 膜 表 面 を ドッ ト 状 に 強 く染 色 す る こ と が わ か っ た 。 さ ら に,多 能 性 幹 細 胞 マ ー カ ー で あ るNanogお よ びOct-4に 対 す る 抗 体 と 二 重 染 色 を行 っ た と こ ろ,MAb5B5は 確 か に こ れ らマ ー カ ー が 発 現 して い る細 胞,つ ま りips細 胞 だ け を 認 識 す る と 確 認 さ れ た 。 以 上 よ り,MAb5B5は,ES細 胞 と 同 様 に 人 工 多 能 性 幹 細 胞 で あ るips細 胞 も 認 識 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 MAb5B5は マ ウ ス 生 殖 腺 を 抗 原 と して 作 製 した 抗 体 で あ り,こ れ ま で 抗 体 の 性 状 解 析 は す べ て マ ウ ス 組 織 お よ び マ ウ ス 由 来 細 胞 を用 い て 行 っ た 。 こ の 抗 体 が ヒ ト細 胞 の 解 析 に も利 用 可 能 で あ る か 調 べ る た め,ヒ ト神 経 幹 細 胞 を 用 い た 免 疫 染 色 を 行 っ た 。 ヒ ト神 経 幹 細 胞 は ヒ ト ES細 胞 か ら分 化 誘 導 し て 作 製 し た 。ES細 胞 か ら神 経 分 化 誘 導 して 形 成 さ せ た 細 胞 塊 の 内 部 に は,脳 に 似 た 構 造 を 取 る部 分 が 生 じ,多 様 な 神 経 細 胞 と と も に神 経 幹 細 胞 の 存 在 が 知 ら れ て い る 。 こ の 細 胞 塊 を 固 定 後,包 埋 し,凍 結 切 片 を 作 製 し た 。 こ の 切 片 を 免 疫 染 色 し た と こ ろ, MAb5B5は 内 部 の 空 洞 に 接 す る 一 層 の 細 胞 群 の み を 認 識 した 。 こ の 細 胞 群 の 染 色 パ タ ー ン は,MAb5B5が 示 し た マ ウ ス 大 脳 皮 質 脳 室 帯 に お け る神 経 幹 細 胞 の 局 在 に 酷 似 して い た 。 そ こ で 神 経 幹 細 胞 マ ー カ ーCDI33の 染 色 像 MAbsB5 Bright-fieldFigure4.MAb5B5recognizesmouseiPScells.iPS
cellsweregeneratedfromMEFandwere
stainedwithMAb5B5detectedwithAlexa
488-conjugatedanti-ratIgG
と 比 較 し た と こ ろ,MAb5B5とCDI33の 局 在 は 完 全 に 一 致 し た(横 山 ら,未 発 表 デ ー タ)。 よ っ て,MAb5B5は ヒ ト神 経 幹 細 胞 を 認 識 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 今 回ES 細 胞 か ら形 成 させ た 細 胞 塊 に は 多 数 の 神 経 細 胞 が 存 在 す る が,そ れ ら は 全 く認 識 し な か っ た こ と か ら も,MAb5B5 が 分 化 能 の 高 い 幹 細 胞 だ け を 認 識 す る と 強 く示 唆 さ れ た 。 ま た,MAb5B5は マ ウ ス 細 胞 の み な らず,ヒ ト細 胞 の 解 析 に も利 用 で き る こ と が わ か っ た 。 4.2MAb5B5は ヒ トが ん 細 胞 株 と 乳 が ん 組 織 に お い て 特 定 の 細 胞 の み を 認 識 す る これ ま で の 免 疫 染 色 の 結 果 よ り,マ ウ ス 組 織 に加 え, Es細 胞 やiPs細 胞 に お い て もMAb5B5の 染 色 シ グ ナ ル が 確 認 され た 。 次 に 他 の 動 物 種 や 様 々 な 組 織 由 来 の 株 化 培 養 細 胞 を 用 い た 免 疫 染 色 を 行 っ た 。MAb5B5に よ っ て 染 色 され る細 胞 株 の 染 色 像 を 詳 し く観 察 す る と,そ の 染 色 は 均 一 で は な く,ほ と ん ど の 細 胞 株 でMAb5B5染 色 シ グ ナ ル の 陽 性 細 胞 と 陰 性 細 胞 が 混 在 す る と い う結 果 が 得 ら れ た 。 例 え ば,HepG2細 胞 で は す べ て の 細 胞 が 陽 性 細 胞 で あ っ た が,MCF-7細 胞 で は 約50%が 陽 性 で あ っ た (Figure5)。 ま た,陽 性 細 胞 で も シ グ ナ ル の 強 い も の と 弱 い も の が 存 在 した 。 ま た 各 細 胞 のMAb5B5染 色 パ タ ー ン は2種 類 に 大 別 され,HepG2細 胞,MCF-7細 胞 の よ うに 主 に 細 胞 膜 が 染 色 され る も の と,HARA-B細 胞,MDA-MB231細 胞 の よ う に 細 胞 質 の 小 器 官 膜 が 染 色 され る も の が あ っ た 。 これ ま で の 解 析 か ら,MCF-7細 胞 を は じ め複 数 の ヒ ト 乳 が ん 株 化 細 胞 に お い て,MAb5B5陽 性 細 胞 が 存 在 す る と わ か っ た 。 そ こ で,実 際 の 乳 が ん に お い て もMAb5B5 陽 性 細 胞 が 存 在 す る か ど う か を調 べ る た め,ヒ ト乳 が ん 組 織 を 用 い た 免 疫 組 織 染 色 を 行 っ た 。そ の 結 果,MAb5B5 に よ り乳 が ん 組 織 内 の 一 部 の 細 胞 が 強 く 染 色 さ れ た(横 山 ら,未 発 表 デ ー タ)。 染 色 した 組 織 切 片 は す べ て が ん 組 MAbsB5 Figure5. Bright-fieldMAb5B5recognizeshumancancercells.
Breastcancercellline,MCF-7cell,was
stainedwithMAb5B5detectedwithAlexa
488-conjugatedanti-ratIgG.MAb5B5
recognizedaparticularpopulationofMCF-7ceIIs.
織 領 域 で あ る に も か か わ らず,MAb5B5抗 原 は そ の 中 の 一 部 の 細 胞 だ け に 発 現 して い る と示 さ れ た 。本 研 究 で は, MAb5B5が 未 分 化 度 の 高 い 細 胞 を 特 異 的 に 認 識 す る と い う性 質 か ら,MAb5B5陽 性 細 胞 は が ん 幹 細 胞 の 性 質 を 持 っ と示 唆 さ れ た 。 5.ま と め