西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 四 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ︵ 二 〇 一 二 年 三 月 ︶
住
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目 次 ︵ 本 巻 本 号 ま で ︶ Ⅰ 序 説 一 本 稿 の 問 題 意 識 と 課 題 二 本 稿 の 具 体 的 な 素 材 に 関 す る 確 認 三 憲 法 上 の 法 規 範 ・ 法 命 題 と の 関 係 四 問 題 と な る 法 領 域 の 転 換 ︵ 以 上 、 三 八 巻 三 ・ 四 合 併 号 ︶ Ⅱ 賃 貸 人 の ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と す る 住 居 使 用 賃 貸 借 関 係 の 解 約 告 知 に 関 す る 裁 判 例 の 判 断 枠 組 み 一 判 断 枠 組 み の 基 本 に つ い て 一住 居 を め ぐ る 所 有 権 と 不 動 産 利 用 権 と の 法 的 関 係 の 一 断 面 ︵ 八 ︶ 二 1 は じ め に 2 賃 貸 人 の 所 有 権 の 保 障 (1) 法 規 範 そ れ 自 体 の 合 憲 性 に つ い て (2) ﹁ 住 居 と し て 必 要 と す る ﹂ と い う 文 言 の 解 釈 に つ い て (3) 当 該 住 居 を 自 ら 使 用 す る と い う 自 由 に つ い て ︵ 以 上 、 四 〇 巻 二 号 ︶ (4) 所 有 権 者 の 自 己 決 定 権 の 尊 重 に つ い て 3 賃 貸 人 が 受 け 入 れ な け れ ば な ら な い 所 有 権 に 対 す る 制 限 (1) 基 本 法 一 四 条 二 項 に も と づ い て 正 当 化 さ れ る 場 合 ︵ 以 上 、 四 〇 巻 三 ・ 四 合 併 号 ︶ (2) 基 本 法 一 四 条 一 項 一 文 に も と づ い て 正 当 化 さ れ る 場 合 4 均 衡 を 保 つ た め の 定 式 二 均 衡 を 保 つ た め の 定 式 に つ い て 1 前 提 と な る こ と が ら (1) 賃 借 人 の 利 益 の 取 扱 い ︵ 以 上 、 四 一 巻 一 ・ 二 合 併 号 ︶ (2) B G B 五 七 三 条 三 項 と の 関 係 (3) ﹁ 自 己 必 要 ﹂ に 関 す る 説 明 ︵ 主 張 ︶ 責 任 ・ 立 証 責 任 (4) ﹁ 自 己 必 要 ﹂ に 関 す る 裁 判 所 の 審 理 の 一 般 的 な 原 則 ︵ 以 上 、 四 三 巻 一 ・ 二 合 併 号 ︶
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 四 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ︵ 二 〇 一 二 年 三 月 ︶ 2 賃 貸 人 の ﹁ 自 己 必 要 ﹂ が そ も そ も 認 め ら れ な い と 判 断 さ れ た 事 案 (1) 賃 貸 人 が 当 該 住 居 を 自 ら 必 要 と す る の で は な い 場 合 (2) 構 成 員 に 使 用 の 意 思 が 欠 け て い る 場 合 (3) 当 該 住 居 が 客 観 的 な 適 性 を 備 え て い な い 場 合 (4) 単 に 一 時 的 な 使 用 が 意 図 さ れ て い る 場 合 ︵ 以 上 、 四 三 巻 三 ・ 四 合 併 号 ︶ 3 ﹁ 筋 の 通 り 、 あ と づ け る こ と が で き る 理 由 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 (1) 量 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 (2) 質 的 な 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ︵ 以 上 、 四 四 巻 一 号 ︶ (3) 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 (4) 健 康 上 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 ︵ 以 上 、 本 巻 本 号 ︶ 三
住 居 を め ぐ る 所 有 権 と 不 動 産 利 用 権 と の 法 的 関 係 の 一 断 面 ︵ 八 ︶ 四
Ⅱ
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二 均 衡 を 保 つ た め の 定 式 に つ い て 3 ﹁ 筋 の 通 り 、 あ と づ け る こ と が で き る 理 由 ﹂ を め ぐ る 具 体 的 な 事 案 (3) 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら 必 要 性 が あ る 場 合 第 三 の 類 型 は 、 賃 貸 人 の 側 に 、 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら み て 、 適 切 で は な い 居 住 の 状 態 が 埋 め 合 わ さ れ る 必 要 性 が 実 際 に 存 在 す る 場 合 で あ る 。 ① ま ず 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 に よ っ て 、 第 三 の 類 型 に 該 当 し 、 ﹁ 筋 の 通 り 、 あ と づ け る こ と が で き る 理 由 ﹂ に あ た る と 判 断 さ れ た こ と を 窺 い 知 る こ と が で き る 裁 判 例 と し て 、 た と え ば 、 次 の 三 つ の 裁 判 例 が 存 在 す る 。 第 一 に 、 す で に Ⅱ の 一 の 2 の (1) に お い て 考 察 し た と こ ろ の 連 邦 憲 法 裁 判 所 一 九 八 五 年 一 月 八 日 決 定 ︵ 裁 判 例 ︻ 1 ︼ ︶ が 対 象 と し た 二 件 の 憲 法 訴 願 手 続 き の う ち 、 結 論 と し て 、 地 方 裁 判 所 の 判 決 が 基 本 法 一 四 条 一 項 一 文 に も と づ く 異 議 申 立 人 の 基 本 権西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 四 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ︵ 二 〇 一 二 年 三 月 ︶ を 侵 害 し た こ と を 認 め た と こ ろ の 、 事 案 Ⅱ に つ い て の 憲 法 訴 願 手 続 き が 、 そ の よ う な 裁 判 例 の ひ と つ で あ る 。 裁 判 例 ︻ 1 ︼ ︵ 事 案 Ⅱ ︶ の 事 案 の 概 要 と 経 緯 は 、 改 め て 確 認 し て お く と 、 次 の よ う で あ っ た 。 異 議 申 立 人 は 、 現 在 八 九 歳 で あ り 、 所 有 す る 本 件 建 物 の 一 階 に 所 在 す る 、 三 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 、 お よ そ 一 六 〇 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 本 件 住 居 を 被 告 に 賃 貸 し て い た が 、 次 の よ う な ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と し て 、 被 告 と の 使 用 賃 貸 借 関 係 を 解 約 告 知 し 、 本 件 住 居 の 明 渡 し を 求 め て 訴 え を 提 起 し た 。 す な わ ち 、 異 議 申 立 人 は 、 高 齢 と 病 気 に 起 因 し て 階 段 を 上 る こ と が で き な い の で 、 一 階 に 所 在 す る 本 件 住 居 を 必 要 と す る 。 さ ら に 、 異 議 申 立 人 は 、 自 ら の 看 護 の た め に 本 件 住 居 に 看 護 人 を 受 け 入 れ 、 そ の 看 護 人 、 お よ び 、 本 件 建 物 の 上 階 に 居 住 し て い る 異 議 申 立 人 の 娘 に よ る 看 護 や 世 話 を 受 け た い 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 区 裁 判 所 と 地 方 裁 判 所 は 、 異 議 申 立 人 の 明 渡 し の 訴 え を 棄 却 し た 。 憲 法 訴 願 の 対 象 と さ れ た 地 方 裁 判 所 の 判 決 は 、 次 の よ う に 、 そ の 理 由 を 述 べ た 。 す な わ ち 、 異 議 申 立 人 は 、 ﹁ 適 切 か つ 品 位 を も っ て ﹂ 老 人 ホ ー ム に 収 容 さ れ る の で あ る か ら 、 本 件 住 居 を も は や 必 要 と し な い 。 自 己 の 娘 に よ っ て 看 護 さ れ た ほ う が よ い と い う 異 議 申 立 人 の 願 望 は 、 ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 基 礎 づ け な い 。 異 議 申 立 人 は 、 わ が 家 と い う 場 所 の 喪 失 を 危 惧 す る 必 要 も な い 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 こ れ に 対 し て 、 異 議 申 立 人 は 、 憲 法 訴 願 を 申 し 立 て 、 次 の よ う に 主 張 し た 。 す な わ ち 、 異 議 申 立 人 の ﹁ 自 己 必 要 ﹂ は 、 老 人 ホ ー ム に 入 所 す る こ と で な く な る わ け で は な い 。 と い う の は 、 こ の 場 合 、 は じ め か ら 、 解 約 告 知 さ れ た 本 件 住 居 が 空 く ま で の 時 間 を 切 り 抜 け る た め の 一 時 的 な 解 決 策 が 問 題 で あ っ た か ら で あ る 。 ま た 、 高 齢 の 賃 貸 人 が 老 人 ホ ー ム に 入 所 し 、 そ の 晩 年 を そ こ で 過 ご す よ う に 強 制 さ れ る こ と は で き な い し 、 老 人 ホ ー ム に お い て 、 適 切 か つ 品 位 の あ る 収 容 、 な ら び に 、 世 話 や 看 護 が 高 齢 の 賃 貸 人 に 与 え ら れ る か ど う か と い う こ と に 注 意 が 払 わ れ る 必 要 も 全 く な い 。 決 定 的 な こ と は 、 異 議 申 立 人 に は 、 異 議 申 五
住 居 を め ぐ る 所 有 権 と 不 動 産 利 用 権 と の 法 的 関 係 の 一 断 面 ︵ 八 ︶ 六 立 人 の 人 生 の 形 成 に 関 し て 自 由 に 決 定 し 、 老 人 ホ ー ム に は 長 い 間 と ど ま ら な い と 決 め る こ と が 許 さ れ て い る こ と で あ る 。 老 人 ホ ー ム で の 世 話 が 家 族 に よ る 援 助 と 同 等 に 置 か れ る こ と は で き な い の で あ る か ら 、 異 議 申 立 人 の 娘 ︵ お よ び 看 護 人 ︶ に よ る 世 話 や 看 護 が 異 議 申 立 人 に 妨 げ ら れ る こ と は で き な い 、 と い う 主 張 で あ っ た 。 連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 本 決 定 に お い て 、 次 の よ う に 論 じ る こ と に よ り 、 右 の 地 方 裁 判 所 の 判 決 は 、 B G B 旧 五 六 四 b 条 の 解 釈 と 適 用 に 関 し て 、 基 本 法 一 四 条 一 項 一 文 に よ る 所 有 権 の 保 障 の 意 義 と 射 程 範 囲 を 誤 解 し た 、 と い う 理 由 に も と づ い て 、 当 該 判 決 を 破 棄 し 、 差 し 戻 し た 。 ﹁ 異 議 申 立 人 は 、 す で に 、 ﹃ 適 切 か つ 品 位 を も っ て ﹄ 老 人 ホ ー ム に 収 容 さ れ る が ゆ え に 、 お よ び 、 自 己 の 建 物 に お い て 自 己 の 娘 と 看 護 人 に よ っ て 世 話 さ れ る こ と に 対 す る 願 望 は 取 る に 足 り な い が ゆ え に 、 異 議 申 立 人 は 住 居 に つ い て の 必 要 性 を 有 し な い と い う 理 由 づ け は 、 賃 貸 人 の 利 益 を 一 方 的 に 不 利 に 取 り 扱 う こ と を 意 味 す る 。 こ の よ う な 理 由 づ け は 、 社 会 的 に 拘 束 さ れ た 私 的 な 所 有 権 と い う 憲 法 上 の 考 え 方 と 一 致 し な い し 、 異 議 申 立 人 に 過 度 に 負 担 を か け る こ と へ と 至 る 。 基 本 法 一 四 条 一 項 一 文 に よ る 所 有 権 の 保 障 に は 、 基 本 権 全 体 の 構 造 に お い て 、 基 本 権 の 担 い 手 に 、 財 産 法 の 領 域 に お け る 自 由 の 余 地 を 確 保 し 、 そ れ と と も に 、 自 己 責 任 に も と づ く 人 生 の 形 成 を 可 能 に す る と い う 課 題 が 、 当 然 与 え ら れ る 。 地 方 裁 判 所 の 判 決 に よ っ て 、 異 議 申 立 人 は 、 自 己 の 所 有 権 を 行 使 し て 自 己 が そ の こ と を 正 し い と 考 え る よ う に 自 己 の 生 き 方 を 形 成 す る と い う 自 由 の 点 で 、 著 し く 制 限 さ れ る の で あ る ﹂ ︵ 218 ︶ 。 右 の よ う な 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 論 述 か ら す る と 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 本 件 の 事 実 関 係 を 踏 ま え て 、 異 議 申 立 人 の 側 に 、 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら み て 、 適 切 で は な い 居 住 の 状 態 が 埋 め 合 わ さ れ る 必 要 性 が 実 際 に 存 在 す る と 判 断 し た 、 と 考 え ら
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 四 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ︵ 二 〇 一 二 年 三 月 ︶ れ る 。 第 二 に 、 す で に Ⅱ の 一 の 2 の (4) に お い て 取 り 上 げ た と こ ろ の 連 邦 憲 法 裁 判 所 一 九 九 三 年 三 月 一 九 日 決 定 ︵ 裁 判 例 ︻ 8 ︼ ︶ が 、 そ の よ う な 裁 判 例 の ひ と つ と し て 挙 げ ら れ る 。 裁 判 例 ︻ 8 ︼ の 事 案 の 概 要 と 経 緯 は 、 改 め て 確 認 し て お く と 、 次 の よ う で あ っ た 。 異 議 申 立 人 は 、 全 部 で 四 つ の 住 居 か ら 構 成 さ れ て い た 多 世 帯 用 住 宅 に 所 在 す る 、 二 つ の 住 居 の 所 有 権 者 で あ っ た が 、 そ れ ら 二 つ の 住 居 の ひ と つ 、 す な わ ち 、 一 階 に 所 在 す る 、 お よ そ 七 二 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 本 件 住 居 を 被 告 ら に 賃 貸 し て い た 。 他 方 、 異 議 申 立 人 は 、 本 件 住 居 の 上 の 屋 階 に 所 在 す る 住 居 に 居 住 し て い た が 、 そ の 住 居 は 、 お よ そ 六 五 平 方 メ ー ト ル の 広 さ で 、 三 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 。 異 議 申 立 人 は 、 予 備 的 に 、 次 の よ う な ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と し て 、 被 告 ら と の 使 用 賃 貸 借 関 係 を 解 約 告 知 し 、 本 件 住 居 の 明 渡 し を 求 め て 訴 え を 提 起 し た 。 す な わ ち 、 異 議 申 立 人 は 、 所 有 す る 両 方 の 住 居 を 改 修 に よ っ て ひ と つ に 統 一 し 、 そ の よ う に し て 作 り 出 さ れ た 時 代 に 合 っ た 新 た な 住 居 に 、 知 人 と と も に 居 住 し 、 彼 女 と 生 活 共 同 体 を 形 成 し た い 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 異 議 申 立 人 の 明 渡 し の 訴 え は 、 区 裁 判 所 と 地 方 裁 判 所 に よ っ て 棄 却 さ れ た 。 憲 法 訴 願 の 対 象 と さ れ た 地 方 裁 判 所 の 判 決 は 、 次 の よ う に 、 そ の 理 由 を 述 べ た 。 す な わ ち 、 異 議 申 立 人 は 、 一 階 の 住 居 と 屋 階 の 住 居 を 改 修 し 、 そ れ ら を 統 一 す る こ と に よ っ て 、 全 体 で お よ そ 一 三 〇 平 方 メ ー ト ル の 広 い 住 居 を 作 り 出 す こ と を 意 図 し 、 さ ら に 、 異 議 申 立 人 の 知 人 は 、 証 人 と し て 、 異 議 申 立 人 の も と に 居 住 し 、 異 議 申 立 人 と 婚 姻 し た い 、 と も 証 言 し た 。 し か し 、 そ の よ う な 広 い 住 居 の 取 得 に は 、 ﹁ 筋 の 通 り 、 あ と づ け る こ と が で き る 理 由 ﹂ は 存 在 し な い 。 異 議 申 立 人 の 居 住 の 必 要 性 は 、 三 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 屋 階 に 所 在 す る 住 七
住 居 を め ぐ る 所 有 権 と 不 動 産 利 用 権 と の 法 的 関 係 の 一 断 面 ︵ 八 ︶ 八 居 に よ っ て も 満 た さ れ る 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 こ れ に 対 し て 、 異 議 申 立 人 は 、 憲 法 訴 願 を 申 し 立 て た の で あ る 。 連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 本 決 定 に お い て 、 次 の よ う に 論 じ る こ と に よ り 、 右 の 地 方 裁 判 所 の 判 決 は 、 基 本 法 一 四 条 一 項 一 文 に 違 反 す る 、 と 結 論 づ け 、 異 議 申 立 人 の 憲 法 訴 願 を 認 容 し た 。 ﹁ ・ ・ ・ ・ 地 方 裁 判 所 は 、 異 議 申 立 人 に よ っ て 確 定 さ れ た 居 住 の 必 要 性 を 尊 重 し た の で は な く 、 む し ろ 、 裁 判 所 自 ら の 考 え 方 に し た が っ て 、 異 議 申 立 人 に よ っ て あ と づ け る こ と が で き る よ う に 確 定 さ れ た 居 住 の 必 要 性 に 手 を 加 え た 。 異 議 申 立 人 の 決 定 は 、 彼 の 知 人 と 生 活 共 同 体 を 形 成 し 、 そ の た め に 、 個 々 の 空 間 の 広 さ と 間 取 り の 点 で も 改 善 さ れ た 、 全 体 で よ り 多 く の 住 居 を 使 用 で き る こ と で あ っ た 。 地 方 裁 判 所 は 、 も っ ぱ ら 、 屋 階 に 所 在 す る 当 該 住 居 は 彼 が 伴 侶 と と も に 居 住 す る こ と が で き る ほ ど 十 分 に 広 い と い う 理 由 で 、 こ の よ う な 異 議 申 立 人 の 願 望 を 、 筋 の 通 ら な い 、 あ と づ け る こ と が で き な い も の で あ る 、 と 考 え た 。 そ れ と と も に 、 地 方 裁 判 所 は 、 異 議 申 立 人 に 代 わ っ て 、 計 画 を 立 て た 。 地 方 裁 判 所 は 、 異 議 申 立 人 に 、 適 切 な 居 住 に 関 す る 裁 判 所 の 考 え 方 を 押 し つ け た 。 ・ ・ ・ ・ 確 か に 、 二 人 の 人 は 、 三 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 六 五 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 住 居 を う ま く 使 い こ な す こ と が で き る か も し れ な い 。 し か し 、 不 十 分 に 居 住 さ せ ら れ て い る こ と へ の 対 策 が 講 じ ら れ る べ き こ と が 、 ま さ し く 、 B G B 五 六 四 b 条 二 項 二 号 に よ る 解 約 告 知 の 要 件 と し て 要 求 さ れ て は な ら な い の で あ る 。 ・ ・ ・ ・ 異 議 申 立 人 が 、 屋 根 の 傾 斜 の な か に あ る 、 三 つ の 部 屋 、 通 路 、 台 所 お よ び 浴 室 か ら 構 成 さ れ て い た 、 全 体 で た っ た 六 五 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 住 居 を 、 個 々 の 住 居 の 間 取 り と 広 さ の 点 で 、 ほ と ん ど 快 適 で は な い と み な し 、 そ の 住 居 を 別 の 住 居 と 統 一 す る こ と に よ っ て 、 そ の 居 住 関 係 を 明 確 に 改 善 し た い 場 合 、 そ の こ と は 、 完 全 に あ と づ け る こ と が で き 、 し た が っ て 、 受 け 入 れ ら れ う る の で
西 南 学 院 大 学 法 学 論 集 第 四 四 巻 第 三 ・ 四 合 併 号 ︵ 二 〇 一 二 年 三 月 ︶ あ る ﹂ ︵ 219 ︶ 。 右 の よ う な 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 論 述 か ら す る と 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 は 、 異 議 申 立 人 が 、 知 人 と 生 活 共 同 体 を 形 成 し 、 そ の た め に 、 六 五 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 住 居 を 、 間 取 り と 広 さ の 点 で 、 快 適 で は な い と み な し 、 そ の 住 居 を 別 の 住 居 と 統 一 す る こ と に よ っ て 、 そ の 居 住 関 係 を 改 善 し た い と い う 場 合 、 そ の こ と は 、 異 議 申 立 人 の 側 に 、 純 粋 に 個 人 的 な 人 生 形 成 の 観 点 か ら み て 、 適 切 で は な い 居 住 の 状 態 が 埋 め 合 わ さ れ る 必 要 性 が 実 際 に 存 在 す る 場 合 で あ り 、 ﹁ 筋 の 通 り 、 あ と づ け る こ と が で き る 理 由 ﹂ に あ た る と 判 断 し た こ と を 窺 い 知 る こ と が で き る 。 第 三 に 、 す で に Ⅱ の 一 の 2 の (3) に お い て 考 察 し た と こ ろ の 連 邦 憲 法 裁 判 所 一 九 九 三 年 一 一 月 一 一 日 決 定 ︵ 裁 判 例 ︻ 4 ︼ ︶ も ま た 、 そ の よ う な 裁 判 例 の ひ と つ で あ る 。 裁 判 例 ︻ 4 ︼ の 事 案 の 概 要 と 経 緯 は 、 改 め て 確 認 し て お く と 、 次 の よ う で あ っ た 。 異 議 申 立 人 は 、 一 九 八 六 年 八 月 か ら 、 四 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 、 お よ そ 八 二 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 住 居 を 賃 借 し て い た 。 異 議 申 立 人 の 賃 貸 人 は 、 賃 料 増 額 の 請 求 に 失 敗 し た 後 、 数 回 に わ た っ て 、 ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と す る 解 約 告 知 、 さ ら に 、 異 議 申 立 人 が 彼 女 の 恋 人 と 彼 女 の 姉 妹 を ︵ 少 な く と も 一 時 的 に ︶ 異 議 申 立 人 の 住 居 に 受 け 入 れ た こ と を 理 由 と す る 即 時 解 約 告 知 を 行 っ た 後 、 一 九 九 一 年 一 二 月 、 異 議 申 立 人 の 住 居 の 明 渡 し を 求 め て 訴 え を 提 起 し た 。 他 方 、 異 議 申 立 人 は 、 自 ら に 向 け ら れ た 明 渡 し の 訴 訟 手 続 の 間 に 、 被 告 ら に 賃 貸 さ れ て い た と こ ろ の 、 四 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た 、 お よ そ 一 〇 〇 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の 本 件 住 居 の 所 有 権 を 取 得 し 、 本 件 住 居 に 関 す る 使 用 賃 貸 借 関 係 の 新 た な 賃 貸 人 と な っ た う え で 、 一 九 九 二 年 一 月 三 〇 日 付 け の 書 面 を も っ て 、 次 の よ う な ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と し て 、 被 告 ら と の 使 用 賃 貸 九
住 居 を め ぐ る 所 有 権 と 不 動 産 利 用 権 と の 法 的 関 係 の 一 断 面 ︵ 八 ︶ 十 借 関 係 を 解 約 告 知 し た 。 す な わ ち 、 異 議 申 立 人 は 、 生 活 共 同 体 を 形 成 し よ う と 欲 す る と こ ろ の 彼 女 の 恋 人 、 お よ び 、 彼 女 の 姉 妹 と と も に 、 本 件 住 居 に 居 住 し た い 。 異 議 申 立 人 が 現 在 居 住 し て い る と こ ろ の 住 居 の 使 用 賃 貸 借 関 係 は 、 ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と し て 、 解 約 告 知 さ れ た 。 異 議 申 立 人 の 恋 人 は 、 二 六 平 方 メ ー ト ル の 広 さ の ア パ ー ト に 居 住 し て お り 、 異 議 申 立 人 ら は 、 そ の ア パ ー ト に お い て 共 同 に 生 活 す る こ と は で き な い 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 そ の 後 、 異 議 申 立 人 に 対 す る 明 渡 し の 訴 え は 、 一 九 九 二 年 六 月 一 六 日 付 け の 判 決 を も っ て 棄 却 さ れ 、 こ の 判 決 は 既 判 力 を 生 じ た 。 こ れ に 対 し て 、 異 議 申 立 人 の 明 渡 し の 訴 え は 、 区 裁 判 所 と 地 方 裁 判 所 に よ っ て 、 次 の よ う な 三 つ の 理 由 に も と づ い て 、 棄 却 さ れ た 。 す な わ ち 、 ① 異 議 申 立 人 の 賃 貸 人 に よ っ て 異 議 申 立 人 に 対 し て 別 の 明 渡 し の 訴 え が 提 起 さ れ た こ と を 理 由 と す る と こ ろ の 、 異 議 申 立 人 に よ っ て 主 張 さ れ た ﹁ 自 己 必 要 ﹂ は 、 こ の 別 訴 に お け る 異 議 申 立 人 の 勝 訴 、 当 該 判 決 に 既 判 力 が 生 じ た こ と か ら 、 事 後 的 に 脱 落 し た 。 ② 異 議 申 立 人 は も は や 賃 借 人 と し て 依 存 し な い た め に 本 件 住 居 の 所 有 権 を 取 得 し た と い う 主 張 は 、 原 則 と し て 、 ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と す る 解 約 告 知 に と っ て 十 分 で は な い 。 異 議 申 立 人 の 賃 貸 人 と の 緊 張 関 係 が あ る と 称 さ れ て い る こ と 、 お よ び 、 賃 貸 人 と の さ ら な る 争 い が 懸 念 さ れ る こ と は 、 ﹁ 自 己 必 要 ﹂ を 理 由 と す る 解 約 告 知 に と っ て 十 分 で は な い 。 ③ 異 議 申 立 人 が 彼 女 の 恋 人 と 彼 女 の 姉 妹 を 現 在 の 住 居 に 受 け 入 れ る こ と は 、 法 的 に も 妨 げ ら れ て い な い し 、 異 議 申 立 人 の 現 在 の 住 居 は 、 本 件 住 居 と 同 じ よ う に 、 四 つ の 部 屋 か ら 構 成 さ れ て い た の で あ る か ら 、 異 議 申 立 人 の 願 望 を 実 現 す る た め に は 十 分 で あ る 、 と い う 理 由 で あ っ た 。 異 議 申 立 人 は 、 こ れ ら の 民 事 裁 判 所 の 判 決 に 対 し て 、 憲 法 訴 願 を 申 し 立 て た の で あ る 。