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過敏性腸症候群を有する中高生に対するアクセプタンス&コミットメント・セラピーの有効性の検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-16 328

-過敏性腸症候群を有する中高生に対する

アクセプタンス&コミットメント・セラピーの有効性の検討

○中谷 結花1)、武藤 崇2) 1 )医療法人財団医道会稲荷山武田病院、 2 )同志社大学心理学部 【目的】 青年期に有する過敏性腸症候群(以下,青年IBS) は,成人と同様に,腹痛や腹部不快感とともに下痢, 便秘などの便通異常があり,その原因として器質的疾 患や内分泌異常を認めない症候群である。その有病率 は18.6%で,成人の有病率を上回った。また一般的 に,青年IBSはさまざまな併存疾患が生じることや, 生活の質(以下,QOL)を著しく低下させることもわ かっている。 現在までに,青年IBSに対して,さまざまな治療法 が取り組まれているものの,その効果が認められてい るのは心理療法,特に認知・行動療法のみである。さ らに,これまで実施されてきた心理療法には共通した 問題があると考えられる。それは,症状の除去・緩和 のみに焦点を当てていることである。認知・行動療法 を用いた先行研究では,痛みの強度や頻度が改善して も,QOLは向上しなかった。つまり,青年IBSの介入に おいて,症状の除去・緩和のみに焦点を当てるだけで は不十分であると考えられる。さらに,症状の除去・ 緩和に焦点を当てること自体が問題とも考えられる。 Wenzlaff & Wegner(2000)によると,痛みに関する考 えや感情を抑制,除去しようとすることは,さらにそ の苦痛の強さや頻度を強めることがわかっている。 したがって,本研究では,青年IBSの新たな心理療 法として,症状の緩和ではなく,QOL向上を最重要目 的 と す る ア ク セ プ タ ン ス & コ ミ ッ ト メ ン ト・ セ ラ ピー(以下,ACT)を提案し,青年IBSを有する中高生 への有効性を検討することを目的とした。探索的な検 討であるため,非同時性参加者間多層ベースライン法 による一事例の実験デザインを用いた。さらに,併存 疾患として生じるとされる抑うつや不安の程度に及ぼ す影響も副次的に検討した。 【方法】 参加者 関西圏のフリーペーパーにて募集を掲載し,希望者 の う ち, 1 ) 中 学 1 年 生 〜 高 校 3 年 生, 2 )I B S severity indexの得点が175点(中等症)以上である 者を選定した。その際, 1 )現在,IBSに関して医療 機関に通院している者,かつ/または, 2 )精神病や 重度の精神症状を合併している者は除外した。条件を 満たした者には,保護者同伴のもと,書面を用いて研 究に関する説明を行い,保護者と本人の両方より,イ ンフォームド・コンセントを得た。参加に同意をした 6 名のうち最終的な参加者はクライエント A 〜 D の 4 名(男子生徒 2 名: C ・ D ,平均年齢13.8歳,SD = 0.43歳)であった。 実験デザイン 非同時性参加者間多層ベースライン法による一事例 の実験デザイン。 アウトカム評価(主要なもの,その他はFigure1に記 載。) 主評価  1 )QOL:日本語版PedsQL青年用(Kobayashi & Kamibeppu, 2010), 2 )IBS重篤度:日本語版IBS severity index(Shinozaki et al., 2006;以下, IBS-SI)。

副 次 的 評 価  1 ) 抑 う つ: 日 本 語 版Children’s Depression Inventory(真志田他, 2009), 2 )不安: 日本語版Spence Children’s Anxiety Scale(株式会社 三京房許可済;Ishikawa, Sato, & Sasagawa, 2009)。 プロセス評価

心理的柔軟性:日本語版Acceptance and Fusion Questionnaire for Youth-17(Ishizu, Shimoda, & Ohtsuki, 2014)。 手続き 手続きをFigure 1に示す。本研究は,BL期,介入期, FU期の 3 段階で構成されていた。セッションは60〜90 分,質問紙の回答とワークブックを用いた説明が実施 された。ワークブックは,先行研究(Ferrerira et al., 2017)と「子供と青少年のためのマインドフル ネス&アクセプタンス―新世代の認知/行動療法実践 ガイド―」,「セラピストが10代のあなたにすすめる ACTワークブック―悩める人がイキイキ生きるための 自分のトリセツ―」を参考に作成された。 セ ッ シ ョ ン 以 外 で は,Qualtrics(https://www. qualtrics.com/)を用いて,ウェブ調査が実施された。 最終的に, 3 ヶ月FUまで終了した者は 3 名であった。 倫理的配慮 関西圏にある大学の「人を対象とする医学系研究」 に関する倫理審査委員会の承認を得て(申請番号: 16094),かつ参加者に対して,書面によるインフォー ムド・コンセント等十分な倫理的配慮を行った上で実 施された。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-16

329 -【結果】

主な結果をTable 1に示す。得点の変動について は,信頼変化指標であるRCI(Reliable Change Index) の値を算出し,向上・悪化を分析した。結果より,参 加者 4 名中 1 名( B )において,FU期にQOLの得点向 上(80.43→100)がみられ,残りのうち 1 名( C )に おいて悪化(45.65→28.26)がみられた。また, 2 名 ( A ・ D )において,FU期に症状重篤度の得点向上 ( A :275→80, D :205→90)がみられ,残りのうち 1 名( C )において,FU1での悪化がみられるものの, 最終FU時点ではpre1と差がない得点まで戻っていた。 抑うつの程度は,参加者 4 名中 1 名( B )において, FU期に得点向上がみられた。不安の程度は,1 名( B ) において,FU期に得点向上がみられ,残りのうち 2 名 ( A ・ C )において,介入期以降,得点悪化がみられ たが,最終FU時点ではpre1と差がない得点まで戻って いた。そして,プロセス指標の得点は, 1 名( B )に おいて,FU期に得点向上(64→34)がみられた。 【考察】 本研究の目的は,青年IBSを有する中高生に対する ACTの効果を探索的に検討することであった。結果よ り,本研究では,ACTに基づくプログラムが,青年IBS 傾向のある中学生に対して及ぼす影響に関するまと まった知見は得られなかった。そのため,クライエン トごとの考察を以下に示す。 心理的柔軟性の向上がみられた B は,同時期に, QOL,抑うつ,不安の程度の向上がみられた。つまり, B においては,結果向上とACTの関連性が示唆される。 症状の程度に有意な変化はみられなかったものの,そ の得点は最終FU時点で 0 点を示しており,症状が最終 的には消失していることもわかる。 A ・ D に関しては,症状のみの向上がみられた。心 理的柔軟性の程度に関しては,BL時より健康的な範囲 にあり,もともと変化が反映しうる得点でなかった可 能性もある。QOLに関しても,同様のことが考えられ る。 C に関しては,すべての評価尺度について向上が見 られなかった。つまり,本プログラムが C にとって, うまく機能していなかった可能性がある。Drossman et al.(2006)は,一般的なIBSの治療では,明確な 治療目標設定が重要であると述べている。しかし本研 究では,メタファーを通して体験的に学習するといっ たACTの特徴を重視し,「マインドフル勇者になる」と いった目標を提示していた。このことで, C はIBSと どう付き合っていくかという重要な点に向き合うこと ができなかったのかもしれない。 以上より,本研究では,まとまった知見は得られな かったものの, 1 名を除き,QOL,症状ともに維持も しくは向上が認められており,最終的な悪化はみられ ていない。さらに,心理的柔軟性の向上と同時期に評 価尺度の向上が見られている者もおり,ACTの効果も 期待できる。これらにより,今後,プログラムの改善 などによるさらなる検討の必要性が示唆された。

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