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栽培方法を異にした丹波大納言小豆の収量・品質に及ぼす播種時期の影響

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Academic year: 2021

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Copyright 近畿作物・育種研究会(The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan) 33

緒  言

 丹波大納言小豆は大粒で,種皮色の赤みが強く,煮崩れ しにくいため高級和菓子などの素材として需要が高く,兵 庫県丹波市では 2011 年で 321ha が作付けされている(丹 波農業改良普及センター調べ).現地慣行栽培では,播種 適期が 7 月中∼下旬(丹波ひかみ農業協同組合 2011)で あるが近年,長雨や突発的豪雨などの異常気象で適期播種 ができず生産量が不安定化する傾向にあり,実需者からは 供給の安定化を求められている.一般的には播種時期が適 期から遅れるほど減収し,2009 年には長雨で播種時期が 8 月 10 日以降となり,収量が過去 10 ヶ年比で 40%減となっ た(同センター調べ).そこで,慣行栽培体系および近年 作付けが拡大しつつあるコンバイン収穫に対応した狭条密 播栽培体系において,播種期を慣行よりも早めた場合の収 量,品質について検討した.  一方,早播すると茎葉部の過繁茂や倒伏,蔓化を招くこ とが知られている.これに対し,開花前に地上部を剪葉する と受光態勢が良好に保たれ,一株莢数と千粒重が増加して 子実収量が増加することが報告されている(小森ら 2010). そこで,早播栽培における剪葉処理が収量,品質に及ぼす 影響も検討した.

材料および方法

試験 1 慣行栽培における播種時期 , 栽植密度の検討  2010 年に丹波市山南町北和田で栽培を行った.品種は 「兵庫大納言」とし,栽培方法は第 1 図のⅠに示した現地 慣行法とした.播種時期は① 6 月 17 日,② 7 月 1 日,③ 7月 30 日,栽植密度は①株間 30cm(4.4 株/ m2),②同 50cm(2.7 株/ m2)とした.試験規模は 100m2,1 区制と した.調査項目は播種後 21 日目の苗立,8 月 19 日の主茎 長 ・ 主茎節数 ・ 分枝数(連続 10 株),9 月 17 日の主茎長(同 上),収穫期の倒伏・蔓化(達観),地上部重 ・ 粗子実重 ・ 精子実重 ・ 収穫指数 ・ 精子実率 ・ 百粒重 ・ 外観品質(4m2 円形坪刈り)とした. 試験 2 狭条密播栽培における播種時期,耕起方法の検討  2010 年に丹波市氷上町下新庄で栽培を行った.品種は 「兵庫大納言」とし,栽培方法は様式は第 1 図のⅡに示し た不耕起部分耕および全面浅耕とした.不耕起部分耕はト ラクターにM社 6 条不耕起部分耕播種機を装着し,播種す る部分のみを幅 5cm,深さ 5cm 程度耕起し,播種,覆土 した.全面浅耕はトラクターにロータリー,小麦用播種機 を装着しほ場全面を 3 ∼ 5cm 程度に浅く耕起し,播種, 覆 土 し た. 播 種 密 度 は 16.7 株/ m2( 条 間 30cm・ 株 間 20cm)とした.播種時期は① 7 月 4 日,② 7 月 20 日,③ 8月 4 日,耕起方法は①部分耕,②全面浅耕とした.試験 規模は 300m2,1 区制とした.調査項目は 8 月 19 日の主 茎長・主茎節数・分枝数(連続 10 株),収穫期の地上部重・ 粗子実重・精子実重・収穫指数・精子実率・百粒重(4m2 円形坪刈り)とした. 試験 3 早播栽培における剪葉処理の検討  2011 年に実施し,試験場所 , 品種 , 栽培様式は試験Ⅰに 準じた.播種時期は 6 月 21 日,栽植密度は株間 40cm(3.3 株/ m2)とした.試験区は①剪葉処理有,②剪葉処理無と した.試験規模は 100m2,1 区制とした.剪葉方法は 8 月 10日に刈払機で地上部 30cm を刈払った.調査項目は 8 月 19日(剪葉 9 日後)の主茎長 ・ 主茎節数 ・ 分枝数(連続 10株),10 月 20 日(剪葉 71 日後)の着莢数(同上),収 穫期の倒伏・蔓化(達観),精子実重 ・ 百粒重 ・ 外観品質(4m2

栽培方法を異にした丹波大納言小豆の収量・品質に及ぼす

播種時期の影響

來田康男

1)

・牛尾昭浩

1)

・芦田龍太郎

2)

・片岡茂里

3)

・藤本周作

4)

・竹村雅彦

4) 1)兵庫県立農林水産技術総合センター(〒 679 − 0198 兵庫県加西市別府町南ノ岡甲 1533) 2)兵庫県加西農業改良普及センター(〒 679 − 0103 加西市別府町西大谷甲 2662) 3)兵庫県阪神農業改良普及センター(〒 669 − 1531 三田市天神 1 − 10 − 14) 4)丹波ひかみ農業協同組合(〒 669 − 3461 兵庫県丹波市氷上町市辺 440) 要旨:丹波大納言小豆における慣行栽培体系及び狭条密播栽培体系で,播種期を慣行よりも早めた場合の収 量および品質について検討した.慣行栽培では,6 月 17 日播種が多収となったが倒伏や蔓化の影響で品質 が低下した.7 月 1 日播種では,播種時期が梅雨時期と重なり苗立が不安定となり減収した.狭条密播栽培 では,部分耕が浅耕よりも早播での減収程度が小さく,湿害による収量の変動も少なかった.6 月中旬播種 において繁茂軽減のための剪葉処理を試みたところ,倒伏や蔓化の軽減が認められ,また着莢数が増加した. キーワード:丹波大納言小豆,播種時期,収量,不耕起部分耕,剪葉 2013年 5 月 23 日受理 連絡責任者:來田康男(Yasuo_Koroda@pref.hyogo.lg.jp)

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円形坪刈り)とした.  なお,試験 1 ∼ 3 の栽培管理法は現地慣行に依った.

結果および考察

試験 1 慣行栽培における播種時期,栽植密度の検討  6 月 17 日播種区は 9 月 17 日には草丈が 81 ∼ 98cm に達 し,7 月 1 日播種区より 25 ∼ 26cm,7 月 30 日播種区より 39∼ 49cm 長かった(第 1 表).この結果,倒伏,蔓化に より莢が地面に長期間接触し,粒の外観もカビ粒,腐敗粒 が増加し,粒大がばらつき,種皮の赤みも薄くなり他区よ り悪くなった(第 1 表).従って,早播(6 月中旬)は倒 伏や蔓化で品質低下の危険性を伴うことが明らかとなっ た.  6 月 17 日播種区の精子実重は株間 30cm 区で 354kg/ 10aと最も高く,株間 50cm 区は 7 月 30 日播種区に近かっ た(第 1 表).6 月 17 日播種区は播種直後の降雨が少なく, 苗立も良好で(第 1 表),2010 年 7 ∼ 8 月の気象庁観測値(丹 第 1 図 本試験での栽培様式. 第 1 表 大納言小豆の生育・収量・品質(2010 慣行栽培)

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35 波市柏原町)は平年に比べて平均気温は 1.3 ∼ 2.6℃高く, 日照時間は 13 ∼ 32%多かった.初期生育が順調な上に 7 ∼ 8 月の高温,多照条件が重なり,栄養生長が盛んとなり 増収したと考えられる.一方,株間 50cm 区では 9 月 17 日の草丈が 98cm と,株間 30cm 区の 81cm より徒長し, 倒伏が一層助長されて減収したと考えられる(第 1 表).  7 月 1 日播種区は,精子実重は株間 30cm 区,50cm 区 ともに他の播種時期に比べて,低くなった(第 1 表).気 象庁観測値(柏原)より,播種後 7 日間の合計降雨量を見 る と 7 月 1 日 播 種 区 は 80mm で,6 月 17 日 播 種 区 の 24mm,7 月 30 日播種区の 5mm に比べて多く,達観でも 苗立の低下(第 1 表)や初期生育の停滞が観察された.梅 雨期間の湿害が大きいと減収する報告があり(新潟県 2005),本試験でも初期の湿害による生育不良が収量に影 響したと考えられる.  7 月 30 日播種区は苗立が良く,株間 30cm 区,50cm 区 とも精子実重,精子実率が高くて安定しており,外観品質 が最も良好であった(第 1 表).それより早い播種時期で は減収や品質低下のリスクがあるため,リスクを承知で栽 培するか,栽培上の手立てをとる必要があると考えられる.  精子実重に及ぼす栽植密度(株間)の影響は,6 月 17 日播種区では株間 30cm 区が 50cm 区を上回ったが,その 他の播種時期では区間差が少なく,全体的には株間の影響 は判然としなかった(第 1 表).  播種時期が収量に及ぼす影響については,山下ら(1989) により早播ほど多収になるとの報告があり,本研究では 6 月 17 日播種区・株間 30cm 区が多収であった点と一致す るが,7 月 1 日播種区で減収する点で異なっている.一方, 澤田ら(未発表)によると台風被害を受けた区を除けば大 差がないとする調査結果もあり,早播での収量については さらに詳細な比較が必要と考えられる.要因としては播種 直後の降雨の多寡,栄養生長期の気温・日照,台風害など の諸条件が複合的に作用して収量が変動すると考えられ る.  百粒重は,6 月 17 日播種区では株間 30cm 区が株間 50 cm区より優る傾向にあったが,晩播になるほど差が小さ くなり,株間の影響は判然としなかった(第 1 表). 試験 2 狭条密播栽培における播種時期 , 耕起方法の検討  部分耕区は浅耕区に比べて精子実重および収穫指数の播 種時期間の差が小さかった(第 2 表).また,播種時期ご との精子実率が高かった(第 2 表).このことから,部分 耕では播種時期が異なっても比較的安定した収量が得られ ると考えられる.気象観測値(柏原)より播種後 7 日間の 合計降雨量を見ると 7 月 4 日播種区は 54mm で,7 月 20 日播種区の 3mm,8 月 4 日播種区の 0mm に比べて播種直 後の降雨が目立つが,8 月 19 日の生育は部分耕区が浅耕 区を上回る傾向にあり,地上部重,精子実重も部分耕区が 浅耕区を上回った(第 2 表).ほ場全面を耕耘する浅耕と 異なり,部分耕では小豆の播種部分のみ耕耘するため雨が ほ場に溜まりにくく,播種直後が悪条件であった 7 月 4 日 播種区でも湿害が少なく初期生育が優っていることから, 減収が起こりにくかったと考えられる.  8 月以降の播種は 9 月以降に低温,寡照となるため減収 しやすく,2010 年はさらに 8 月以降に記録的な干ばつが 加わり,本試験でも 8 月 4 日播種区の精子実重は 7 月 20 日播種区に比べて,浅耕区で 60%であった.しかし部分 耕区では 85%に抑えられた(第 2 表).不耕起では耕さな いことで根穴構造が保たれ,排水性と同時に保水性が良く なるとされ(農文協 2013),耕耘範囲の少ない部分耕では 毛管現象で土壌水分が保たれ,干ばつ害が緩和され減収防 止に寄与したと考えれる.  百粒重の区間差は小さかった(第 2 表).  部分耕での土壌水分と小豆の生育・収量・品質との関係 については,今後さらに詳細な検討が必要である.  なお,部分耕では,梅雨期間は除草剤の効果が持続せず, 雑草の繁茂を招き易く減収する恐れがあるため,現状の除 草剤使用体系では梅雨明け∼ 8 月 5 日の播種期で安定した 除草効果と収量が確保できる(牛尾 2011,牛尾ら 2013) とされており,部分耕を実施する際はこの点に準拠すべき と考える. 試験 3 早播栽培における剪葉処理の検討  剪葉処理により,主茎長は短くなり,主茎節数や分枝数 は減少した(第 3 表).剪葉処理で増収効果の見られた小 森ら(2010)の研究でも,地上部 30cm の刈り取り,刈り 取り後の主茎節数 18 節を目安としており,本試験でもほ 第 2 表 大納言小豆の生育・収量・品質(2010 狭条密播栽培)

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ぼ同じ繁茂軽減効果が得られ,倒伏,蔓化も見られなかっ た(第 3 表).また,小森ら(2010)と同様,剪葉による 着莢数増加と登熟向上による百粒重の増加効果が見られた (第 3 表).ただし処理後の精子実重は無処理比 97%で,剪 葉による増収効果は見られなかった(第 3 表).外観品質 については剪葉による差は見られなかった(第 3 表).夏 季が高温,多照で生育旺盛となって著しく倒伏,蔓化した 2010年と異なり,無処理区の倒伏,蔓化の程度が少なく 地面への接触が抑えられたため差が出にくかったと考えら れる(第 3 表).  小森ら(2010)の翌年に行われた大橋ら(2011)の研究 でも増収効果が得られず,この理由として試験年次の夏季 が高温で開花期間が長くなり,倒伏,蔓化した無処理区で も着莢数が増したことが挙げられており,小豆の生育状態 によって増収効果に差が出ることが考えられる.また,小 森ら(2010)は開花 10 日前,大橋ら(2011)は開花直前 が効果が高いとしているが,本試験ではほ場管理の都合で 処理時期が開花 20 日前とやや早くなり,効果が十分でな かった可能性がある.しかし先行研究と同様,繁茂状態の 軽減,着莢数や千粒重増加の効果は得られており,処理時 期などを改善することで,増収させることは可能と考えら れる.  試験 1 ∼ 3 を通じて,丹波大納言小豆における播種時期 は梅雨明け∼ 7 月末が望ましく,早播すると減収や品質低 下のリスクがある.梅雨時期の湿害や干ばつ年の気象変動 に対応する技術として不耕起部分耕が望ましく,倒伏,蔓 化による品質低下を防止するためには剪葉処理を組み合わ せるなどの栽培技術対策が必要である.

引用文献

小森二葉・大橋善之・大門弘幸(2010)剪葉処理が水田転 換畑で栽培したアズキの生育と収量に及ぼす影響.日本 作物学会記事 79:122 − 123. 大橋善之・小森二葉・大門弘幸(2011)剪葉時期が水田転 換畑で栽培したアズキの生育と収量に及ぼす影響.日本 作物学会記事 80:106 − 107. 新潟県(2005)佐渡在来小豆の加工特性と佐渡における適 性播種期.新潟県農業総合研究所研究情報. 農文教(2013)“不耕起・半不耕起”「現代農業」用語集.ルー ラル電子図書館(lib.ruralnet.or.jp/genno/yougo/068.html). 丹波ひかみ農業協同組合(2011)“平成 23 年度丹波大納言 小豆栽培こよみ”. 牛尾昭浩(2011)丹波大納言小豆の狭条栽培における収量 性とコンバイン収穫適性.ひょうごの農林水産技術 173:8. 牛尾昭浩・來田康男・礒野幸浩・藤田賢次・松本 功(2013) 丹波大納言小豆の狭条密播栽培における生育特性.兵庫 農技総セ研報(農業編)61:33 − 35. 山下道弘・江本吾勝(1989)小豆の安定・多収に関する研 究.京都農研報 14:1 − 14. 第 3 表 剪葉処理の効果(2011)

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Influence of seeding time on yield and quality of the adzuki bean ‘Tanba-dainagon’ with

different cultivation methods

Yasuo Koroda1), Akihiro Ushio1), Ryutaro Ashida2), Shigeri Kataoka3), Syusaku Hujimoto4) and Masahiko Takemura4) 1)Hyogo Prefectural Technology Center for Agriculture,Forestory and Fisheries

 (1533 Minamino-oka, Befu, Kasai, Hyogo, 679 − 0198, Japan)

2)Hyogo Prefectural Kasai Agriculural Extensive Center(2662 Nishiotani, Behu, Kasai, Hyogo, 679 − 0103, Japan) 3)Hyogo Prefectural Hanshin Agriculural Extensive Center(1 − 10 − 4 Tenjin, Sanda, Hyogo, 669 − 1531, Japan) 4)Tanba Hikami Agriculural Cooperative Association(440 Ichibe, Hikami, Tanba, Hyogo, 669 − 3461, Japan)

Summary: In both the conventional cultivation system and the narrow-row seeding system for the cultivation of azuki bean (Tanba-dainagon), we investigated the effects on yield and bean quality of early sowing compared with the conventional method. In the conventional cultivation system, seed quality declined because of lodging and/or vining in the plot sown on June 17, although the yield increased compared with that upon cultivation with a conventional sowing time. At the plot sown on July 1, in the rainy season, early growth became unstable and yield decreased. On the other hand, the decrease in the effect on yield of early sowing upon partial plowing cultivation was smaller than that upon shallow plowing cultivation in the narrow-row seeding system. At the plot sown in the middle of June, pruning leaf treatment for reduction of luxuriant growth was effective at avoiding lodging and/or vining, and the number of legumes increased as a consequence.

Key words: adzuki bean,‘Tanba-dainagon’, Seeding period, yield, partial plowing cultivation, pruning leaf treatment

Journal of Crop Research 58 : 33− 37(2013) Correspondence : Yasuo Koroda(Yasuo_Koroda@pref.hyogo.lg.jp)

参照

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1 昭和初期の商家を利用した飲食業 飲食業 アメニティコンダクツ㈱ 37 2 休耕地を利用したジネンジョの栽培 農業 ㈱上田組 38.