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1.はじめに わが国の経済を考えるとき、地方あるいは地域

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Academic year: 2022

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(1)部分空間同定法を用いた動的地域経済成長モデルとパラメータ推定* 宮城俊彦**. 1.はじめに わが国の経済を考えるとき、地方あるいは地域. ためにはやむをえない仮定といえる。これらのモ デルは単純ゆえに SCGE モデルの実用化に適し. の活性化は益々重要な課題となりつつある。こう. ているが、構造パラメータを外生的に与えており、. した背景にあって、社会基盤整備や各種の政策の. モデルが実体経済をどれほど再現できるのかに. 地域経済効果が評価できる地域CGEモデルや. ついては疑問を残している。動的モデルは一時点. SCGEモデルが脚光を浴びるようになり、多く. での経済ショックの影響の時間的範囲を観察す. の研究者が携わるようになってきた。しかし、こ. る意義はあるにしても、ある程度、経済の将来予. れらの研究のほとんどが静的なSCGEモデル. 測可能性を前提にしなければ実用上の意義は薄. を扱っている。社会基盤整備の経済成長への影響、. れるともいえる。. 長期的な波及の状況を把握し、評価するためには、 多地域 CGE モデルの動学化が必要である。. これらの動的モデルに対し、本研究では実際の 時系列データを下に状態空間モデルを構築し、パ. こうした要請に対し、最近になって多地域. ラメータを決定し、予測を行なう、いわゆる. CGE モデルや SCGE モデルの動学化の研究が始. model-free のアプローチを提案する。特に、部分. め ら れ る よ う に な っ て き た 。 Shibusawa et al.. 空間法の1つである特異点分解(SVD)に基づく. (2007) は forward-looking dynamics で地域間交易. 手法の実用性を示すことを主眼にしている。こう. を取り扱える動的多地域 CGE モデルを提案して. した状態空間アプローチは Kalman filter に代表さ. いる.ただし,Shibusawa らのモデルではいくつ. れるように、特に目新しいものではない。しかし、. かの構造パラメータは外生的に与えている.また,. 状態空間アプローチは DSGE モデルと並び動的. 時間不変のパラメータを仮定している.一方,. 経済成長モデルの1つとして位置づけられてき. (Nordhaus and Boyer,2000)あるいは 伴. た 経 緯 が あ り (Sims,1980) 、 ま た 、 Canova and. (2007)は、地域間交易を取り扱わない多地域 CGE. Ciccarelli (2004,2009)が示すように多地域 VAR モ. モデルを提案している。すなわち、各地域は独立. デルが動的に変化する多地域経済の相互連関の. した存在と見なされ、個別の安定成長経路を辿る. 構造同定としては有効であることが分かってき. が終端時点では全体が均衡するように調整が行. た。また、Island(2004)は状態空間モデルに基づく. なわれている。たとえば、伴のモデルは Ramsey. Hybrid モデルを提案している。すなわち、DSGE. 型最適成長モデルを用いて一国の経済成長を記. あるいは RBC モデルの構造パラメータを時系. 述し、Lau, Phalke and Rutherford(2002)らのアイデ. 列データから推定すると同時に、DSGE モデルに. アを採用し、終端時点で金融資産総量を地域に分. 組み込まれた経済構造で予測を行なえるように. 配する形で均衡させている。このため、各地域の. 経済モデルの機能化させアプローチである。. RICE. 実質成長率は同じと仮定するなど、非現実的な側. 本研究で提案する特異点分解法を用いた部分. 面もあるが、しかし、動学的安定成長経路を辿る. 空 間 法 (Subspace Method with Singular Value. *キーワーズ:多地域CGEモデル、経済成長、社会基盤整備. Decomposition: SMAVD)も VAR モデルと同様、そ. **正員 工博 東北大学教授 大学院情報科学研究科. れ自身で経済変化の予測に利用できるが、Hybrid. (〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-06. モデルとしても位置づけることができる。これは. Tel: 022-795-7495 mail:[email protected].. システム次数を分析者が指定するという SMAVD. ac.jp). の持つ特性による。これらの点を確認するため、.

(2) 本研究では Island の結果と比較できるよう、. 変換された定常過程変数を { yt , ct , it , ht , kt , at }. Island が用いた米国のマクロ経済量の 1948 年第. とおく。また、確率的技術ショックがない場合、. 1期から 2002 年第2期までの四半期データを用. 経 済 は 時 間 不 変 な 定 留 点 (steady-state). いている。そして、全データのうち一部を教師デ. { y, c, i, h, k , a} に収束する。. ータとして用い、それを用いて将来を予測し、そ の適合度を残りのデータセットで予測精度をチ. 2.2 線形化 システムにショックが与えられた場合、システ. ェックするという方法をとる。. ムは定常状態の周辺で変動する。この挙動を表現 するため、(7) を定留点の周辺において線形近似. 2.Hansen の RBC モデル 2.1 基本モデル. する。線形近似にはテイラー近似あるいは. Hansen の RBC モデルは以下の問題に整理. log-linear 近似が使われる。log-linear 近似したも のを以下に示す。前の変数と区別するためハット. できる。. をつけている。. Choose sequences {Yt , Ct , I t , H t , K t 1}t0. For all t  0,1, 2,, yˆ  aˆ   kˆ  (1   )hˆ. to maximize . t. E0   t [lnCt   H t ],. t. t. t. (1). aˆt   aˆt 1   t. Yt  At Kt ( t H t )1 ,. (2). ln At  (1   ) ln A   ln At 1   t ,. (3).          1    yˆ t     1        1     cˆt      ˆ     1    it. Yt  Ct  I t. (4). K t 1  (1   ) K t  I t ,.  kˆt 1  (1   )kˆt    1    iˆt. (5). cˆt  hˆt  yˆ t. t 0. subject to. where.       cˆ  E cˆ   1    Et yˆ t 1    1    kˆt 1  t  t t 1      . 1    0,   0,  1.  2  A  0, 1    1,  t ~ N (0,  )   1  0 . Y:生産、C:消費. (6). (8) 2.3 状態空間表現. 、 I:投資、. 上の式を行列表現すると、. H:労働、K:資本、A:技術ショック. Af t 0  Bst0  Caˆt (9). where この問題の均衡条件は次式で与えられる。. f t 0   yˆ t. For all t  0,1, 2, ,. st0   kˆt. cˆt . T. メータ行列でシステム行列と呼ばれる。以上を整. ln At  (1   ) ln A   ln At 1   t ,. 理して、最終的に以下のような状態空間モデルを. A  0, 1    1,  t ~ N (0,  2 ) Yt  Ct  I t. 得る。. st 1  st  W  t 1. (7). K t 1  (1   ) K t  I t. (11). ft  Ust.  Ct H t  (1   )Yt Ct. T. hˆt  ,. 行列 A,B,C は構造パラメータで表現されるパラ. Yt  At K t ( t H t )1. 1. iˆt.  1   Yt 1     1        Ct 1   K t 1 .  E . 2.4 モデルの推定 T. 有限期間 T までのデータ系列 {dt }t 1 が与えられ. (7) は  を含むため非定常過程である。定常. ているものとする。制約条件のため投資 it は冗長. (stationary)過程に変換するために、  で除する。. である。. t. t.

(3) ることができる。すなわち、. d t  [ yˆ t cˆt hˆt ]T for t  1, 2,, T このとき、経験的な状態空間モデルは次式で与. Aˆ  arg min AX 0: 1  X 1: A. 2 F.  X 1: ( X 0: 1 )†. えられる。. (17). st 1  Ast  B t 1 dt  Cst  vt.  F は Frobenius ノルムを表し、また、 † は (12). Moore-Penrose 逆行列を表す。ノイズの共分散 行列 Q,R は残差より求めることができる。. 係数行列は構造パラメータの関数として表され る。したがって、最尤法を用いてパラメータを推 計できる。また、Kalman filter を用いて状態空間. 3.3 データ行列 部分空間同定法ではデータ行列が以下のよう なブロック Hankel 行列で与えられると仮定して. の時間的変化を追跡することができる。. いる(Overschee and Moor,1993)。このとき、 d は. 3. 特異点分解を用いた部分空間法. 1時点(あるいはサイクル)で得られるデータを. 3.1 状態空間モデル. 表す。得られたデータセットをどのように区分す. (13)で与えられる状態空間モデルを考える。. るかは、いくつかの方法が考えられるが、基本的. xt 1  Axt  wt. には分析者に依存する。. yt  Cxt  vt where xt   n , yt   m , A   nn , C   mn (13) n はシステムの次数であり、分析者が指定する。 また、状態ノイズと観測ノイズは白色雑音である。. wt ~ N (0, Q ), vt ~ N (0, R) 。に従えば、この状 態空間モデルは制御変数をもたない確率状態空.  y1 y D 2    yd. y2 y3  yd 1. y   y 1      yd  1  md  . (18). 4. 適用例. 間モデルであり、Akaike(1974)によって導入され. Island のモデルと比較するため、彼が用いた. た。状態変数は観測されることを前提にしていな. 1948 年 1 期から 2002 年 2 期までの米国の GDP、. い点で Kalman filter と同様の隠れ状態変数である。. 消費、投資、労働時間に関する4半期データを用 いる。1948.1~1985.1 までのデータを用いて、そ の後の経済の成長の軌跡をシミュレートする。. 3.2 システム行列の推定 Y1:  [ y1 y2  y ]   m X 1:  [ x1 x2  x ]   n. Islannd モデルでは、Kalman filter の係数行列をそ. (14). の後のサンプルで逐次修正している。図1に示し た結果は 4 期先を予測するモデルである。1 期先. とおき、また、SVD への観測値行列を D  Y1:. の予測では、実際のデータをほぼ完全に再現でき. とおく。このとき、SVD によって D は、特異. る。. 値 含 む 対 角 行 列   diag{ 1 ,,  n } お よ び. 図2は、部分空間同定法の結果を示した。. U   m n,V    nによって次のように分解. Islannd モデルとは異なり、教師データを使用す. できる。. るだけで、その後のサンプルデータは利用してい. D  U V. (15) また、観測行列、状態空間の推定値は次式で与. ない。この方法では、システム次数と景気変動の. えられる。. ム次数を Hansen から得られる状態空間モデルに. T. Cˆ  U , Xˆ  V T. サイクル長の設定で結果が変わってくる。システ 一致させ、短いサイクルで予測すると、短期的な. (16). ダイナミクス行列は、最小二乗法によって求め. 再現性は高いが、中長期の予測は完全に外れる。 システム次数に比較し、サイ クル長を長く取る.

(4) と平滑化された予測値になる。図ではシステム次. 均衡モデルの開発:Forward Looking の視点に基. 数を5、サイクル長を30としたケースであるが、. づく地域経済分析, RIETI Discussion Paper Series. システム次数を30、サイクル長を70と設定す. 07-J-043.. ると再現性は非常に高くなる。しかし、システム. Canova, F., and M. Ciccarelli (2004): Forecasting and. の次数がどのような経済変数に対応しているか. turning point prediction in a Bayesian panel VAR. は、状態空間モデルだけでは峻別できない。. model, Journal of Econometrics, 120, 327-359.. 解釈には経済モデルが必要になる。また、別の. Canova, F., and M. Ciccarelli (2009): Estimating. 見方をすれば、Hansen モデルだけでは実態経済. multicountry VAR models, International Economic. の長期予測はほとんど不可能であり、隠れ状態変. Review, 50(3), 929-959.. 数に潜む、潜在的経済変数が必要であることを示. Lau, M.I., A. Pahlke and T.F. Rutherford, 2002,. 唆している。. Approximating. infinite-horizon. models. in. a. complementarity format: A primer in dynamic general equilibrium analysis, Journal of Economic. Forecasts from diagonal BC mode. 9.2 actual predicts. Dynamics & Control 26, 577-609.. 9.15. Nordhaus, W.D. and J. Boyer (2000): Warming the 9.1. World: Economic Models of Global Warming, The. forecasts. 9.05. MIT Press.. 9. Shibusawa, H., Y. Higano and Y. Miyata (2007): A. 8.95. dynamic. 8.9. CGE. model. with. transportation networks: Equilibrium and optimality,. 8.85. Studies in Regional Science, 37(2), 375-388.. 8.8. 8.75. multi-regional. Sims,C.A. 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 図1. (1980):Macroeconomics. and. reality,. 70. time. Econometrica, 48,1-48. Van Overschee, P., and B. De Moor (1993):Subspace. Island の方法による再現性. algorithms for the stochastic identification problem, Automatica, 29(3):649-660.. Forecasts from the Subspace Based Model. 10000. output consumption. 9000. 8000. Compariosn between model and obsevation.. OBSERVATION/FORCASTS. 7000. 6000. 5000. 4000. 3000. 2000. 1000. 0. 0. 20. 40. 60. 80. 100 PERIOD. 120. 140. 160. 180. 200. 図2 SMAVD による再現性(n=5,d=30). 参考文献 Akaike, H. (1974): Stochastic theory of minimal realization,IEEE Transactions on Automatic Control, 19(6),667-673. 伴 金美(2007):日本経済の多地域動学的応用一般.

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