1.はじめに 日本では2002 年 5 月に面速式流量計メインストリームを導入し、弊社流量計に組み込む方式で商 品化し現在までに4 年半が経過している。また韓国でも 2003 年 9 月から導入し、2 年以上経過してい る。この間に行ったランニングテストや、経験した実用上のトラブルに関して、現場サイドから一定 の見解を得たので、これを整理して評価資料としてとりまとめる。 2.面速式流量計メインストリームの精度について 2-1. カタログ精度と実用精度 (1) 精度検査と試験成績:日本および韓国では精度試験に基づく成績書を必要とする。日本では面速 式流量計に関する精度基準はないものの試験成績書が社会通念として必要であり、韓国では政令 で±2%R.S の基準が設けられている。ペンタフでは社内検査により試験成績書を作成し製品に 添付している。また韓国向けには検定を受けて公的な試験成績書を添付している (2) 上水道メータの許容精度:上水道メータの検定公差は±2%R.S (30℃以上±3%R.S。定格最小 流量の1.6倍までは±5%R.S)である。この公差が開水路流量計の実用精度の上限と考えてよい。 なぜなら流積が一定な満管清水を計測する上水道メータのよりも、水深によって流積が変化し、 付着堆積により断面も変化しやすい汚水の開水路流量計の方が精度が悪くなることは容易に想 像できるからだ。 (3) 開水路流量計の精度:セキ式、パーシャルフリューム式、パーマーボウラスフリューム式いずれ も3∼5%R.S 程度である。これらの方式は計測水位から流量を計算する方式であり、再現性を 根拠に実験値と水位計測精度から流量計測精度を確保している。これに対し面速式流量計は計測 用水路施設ではなく既設水路の形状を使用し、水位と測点流速や断面流速から平均流速を計算し て流量を算出する方式である。このため、計測ファクターが水位だけのせき・フリューム式より、 計測ファクターが水位と流速の2 つになる面速式流量計の方が精度が悪くなることが多い。実際、 これまでの面速式流量計の実用精度は5∼10%R.S 程度であるといわれてきた(カタログ表記 とは別) (4) メインストリームの試験精度:社内検査や韓国の検定結果として、確認されているメインストリ ームの試験精度(特定形状水路と設定流量範囲における精度:カタログ精度)は±2%R.S であ る。また大学の長期モニタリング実験により確かめられた実用精度は±5%R.S 未満で、1%未満 の高精度なケースもあった。 (5) 実用精度の確保:面速式流量計は基本的に堆積がある水路には適さない。とくに堆積深が変化す るばあい計測は困難である。面速式ではまた低水位の流量計測精度が良くないことが多い。小口 径管ではセンサ自体の大きさが低水位で計測の邪魔をすることが多く、微量な流量計測には適さ ない。逆にセキ・フリューム式流量計は適当な水位計測範囲に収まるようにサイズや形状を決定 することが精度確保上欠かせない。大口径管で流量が少ないのに管径に合わせてフリュームを設 置したため計量目的を果たせないことは度々経験している。四角・全幅セキの越流不良(不完全 ナップや浮遊物障害)による精度不良も時折経験することがありオールマイティの流量計はない。 (6) 圧力式水位センサの問題:アナログ出力タイプの圧力式水位センサのゲイン低下が比較的短時間 で生じ、メインストリームの実用精度低下を招いていることを度々経験している。ペンタフでは 定置型流量計の水位センサとしては超音波式水位センサを標準装備にしており、満管以上の水位 計測を併せて行いたいときに限って、圧力式水位センサを併用することを推奨している。 (7) 流量計のパフォーマンス:頻繁なメンテナンス回数は実用上深刻な問題であり、定置型流量計で は致命的なことがある。したがって頻繁なメンテナンスを想定した流量計は実用的ではない。洗 浄装置を標準装備して定期的に自動清掃する方法をとるメーカーもあるが、精度の安定性と信頼 性に問題を生じ、ランニングコストが嵩むことが多い
2-2. 社内精度検査 (1) 試験設備:模式図と装置写真を図 21・22 に示す 図 21 試験設備模式図 図 22 装置写真 (2) 試験手順 ・3/1000 勾配を設定した試験用の循環水路上に流速-水位 センサを仮設し、バルブ操作により流量を変化させ、通 過する基準流量指示値に対するメインストリームの指 示値(流量:水位×平均流速)を読む ・ 勾配計測はレベル測量、基準流量計測は電磁流量計、水 位計測はポイントゲージを用いる ・ 基準流速は、基準流量を流積(水路断面と計測水位から 計算)で除して計算する (3) 試験結果:±2%R.S 未満になるように調整している。試 験報告書を図23 に示す (4) この試験装置には当初、基準流量計として三角せきが設 置されていたが、基準流量計としての精度(試験流量計 の10倍以上が望ましい)を持たないので、電磁流量計 を新たに設置して用いた (5) メインストリームの当初バージョンでは基準流量計によ る補正操作を想定していなかったため、必要精度を確保 するためにさまざまな試行錯誤をおこなった(1 台で半日 以上掛かることもあった)。新しいバージョンではこの辺 が改良されている 基準流量計 貯水槽 W0.4×H0.4×L10m 揚水ポンプ 樋頭水槽 整流板 試験水路 勾配調節機 調整バルブ 図 23 試験報告書
3.韓国におけるコンテストと精度検定 3-1. 比較試験の概要 (1) 2002 年に不明水監視を含む下水の監視システムを標準化するために、計測方式の異なる流量計 4 種類の比較試験が行われた。(FLOTO-TO、DATAGATA、TOUGHFLOW、MAIN-STREAM(後 半は政治的な理由でNIVUS) (2) 比較試験の結果 TOUGHFLOW と MAIN-STREAM の成績が良いことが認められた。この比較 試験の経緯から、流量精度から精度基準が±2%R.S に決められた 3-2. 韓国精度検定機関における精度検定
(1) 検定機関:K.T.L(Korea Testing Laboratory)韓国産業技術試験所 (2) 韓国の下水用流量計の精度基準は±2%R.S (3) 検定装置:模式図と装置写真を図 31・32 に示す 図 31 検定装置模式図 図 32 装置写真 P P M φ13“sus 整流板 基準流量計 電磁式 クッションタンク 試験流量計 面速式メインストリーム 流量調節弁
(4) 試験手順 ・ ポンプ場貯水槽から水を汲み上げてクッションタンクに入れ、試験部に流して基準流量計で確 認しながら設定基準流量付近になるように流量調節弁を調節する ・ 基準流量は5、10、15、20m3/h 付近の 4 点、1分毎に10回計測して平均する→基 準流量Qo ・ メインストリームのセンサを試験水路に取り付け、設定した基準流量ごとに10回計測して平 均する→試験流量Qr ・ 4つの基準流量すべてで、1−(Qr−Qo)/Qo<±2%を満たせば合格 (5) 試験成績:メインストリームは社内再調整、社内検査の後、この検定に合格している(図 33) 図 33 検査成績書例 (6) この試験における要求精度は、水道メータの精度と同等かそれ以上であり、開水路流量計用とし ては実用的な意味を持つとは考えにくい。いずれ実態に即して変更されるものと考えられる
4.大学の合流改善研究で実証された面速式流量計メインストリームの性能 4-1. CSO モニタリングで確認された実用精度と信頼性 4-1-1. 研究の概要 (1) 水環境汚染源として CSO が国レベルの問題となって、改善基準と対策計画が策定された (2) 国の計画に沿って、新潟県にある長岡技術科学大学 環境・建設系 廃棄物・有害物管理工学研 究室(藤田昌一教授)において、5年間にわたってCSOの実態をモニタリングし、流出解析モ デル検証と改善提案に関わる研究を行っている (3) 研究内容:雨水吐きの流入管と遮集管に流量計を設け、差分流量から放流量を定量し、越流時に 自動採水を行って負荷量を調べ、同時に計測している雨量データと併せて、正確な長期モニタリ ングに基づくCSO の流出解析から、改善研究を行うものである 流入管流量計と採水口 流量監視盤 自動採水装置 遮集管流量計 表示データ 図41
4-1-2. 実用精度の確認試験 (1) モニタリングに先立ち、モニタリングそのものの流量計測精度を確認するために、流量計の実用 精度試験が大学によって実施された。この試験そのものは流量計供給者には告知されず、試験後、 結果のみ通知された (2) 試験手順 ・ 深夜の比較的流量変動が少ない時間帯を見計らって、8t給水車2台を使って、上流人孔(A) へ16.0t/約 10 分間、放水する ・ 放水期間を含む流量変化の記録から放水増加分を計算し、基準流量16.0tとの差分から実用精 度を計算する 図42 (3) 試験結果 ・ 流量計の記録データから計算されたこの間の増加流量は、15.27 ㎥であった。 ・ 基準流量16.0 ㎥に対する流量計測誤差は、 (15.27-16)/16=−4.56%であった。 放水側の計 測誤差やベース流量の僅かな変動を考えると厳密なものではないが、±5%R.S 未満であると 判断される ・ 藤田昌一教授から、研究に必要な実用精度としては画期的で、信頼性も高く研究目的を遂行す るための機材にふさわしい、との評価を得た 図43 流入管 遮集管 A B 放水 16t 放流管 流量計測箇所 上流側流量 0.0000 0.0200 0.0400 0.0600 0.0800 0.1000 0.1200 3 4
流
量
(m
3/s
)
時刻(時)
増加分(15.27m
3)
4-1-3. 長期連続観測と信頼性 (1) 2004 年 6 月 1 日から 2006 年 11 月 1 日のまでの 2 年 5 ヶ月約880日間、上下流流量計とも無 故障で稼動。付着堆積の影響により上下流流量指示値に若干の差が見られる期間もあったが、降 雨フラッシング後には解消され、致命的な故障は皆無であった (2) この間のメンテナンス機会 ・ 5 月末日までの試験運転:5 月初めから約 1 ヶ月間、試験運転をおこなった。この間に堆積物 による計測不能が見られたため、堆積物より高い位置へセンサを移動し、再度調整をおこなっ た。この間、合計5回の再調整を実施 ・ 圧力水位センサ:付着堆積の影響を受け易く、清掃とゲイン低下に対する再調整を、年4 回計 10 回行った ・ 流速センサ:上下流速値の僅かな差は降雨フラッシング後ほとんどが自動解消されていた。定 期清掃は年2 回の計 5 回だけで、再調整はデジタル方式のため不要 ・ 補助超音波水位センサ:清掃・再調整とも不要。洪水時に冠水汚損と固定金具ズレがあり、こ の維持管理が1回だけあった。 (3) 圧力式水位センサ(アナログ出力)の信頼性:付着堆積物の影響を受け易く、水位センサの清掃や 付近堆積物の除去など、頻繁なメンテナンスを必要とするケースがある。長期連続観測には超音 波水位センサのほうが信頼性に優れている (4) 流速センサ(デジタル出力)の信頼性:付着堆積物の影響を受けるが、清掃だけで再調整は不要。 付着には比較的強く頻繁なメンテナンスは必要ない。取り付け位置さえ考慮すれば、半年毎程度 の定期清掃で事足りる。4.1.2 の実用精度試験では、予想堆積深よりもセンサ位置を横上方向に ずらしたが、誤差5%未満の実用精度が確保されており、若干堆積があっても計測は可能である。 (5) 超音波水位センサ(デジタル出力)の信頼性:洪水時の冠水汚損の清掃と固定金具の位置ズレ修正 を除いて、2年半の間1回も清掃や調整を必要とせず、信頼性はきわめて高い 4-1-4. 定置型流量計としての適用検討 (1) 求められる性能:ペンタフの目標として、実用精度(±5%R.S)、信頼性(故障率 1%未満)・合理 的なランニングコスト(定期メンテナンス年 2 回以内と災害時の不定期対応が原則) (2) 付着堆積問題:堆積を生じる恐れのあるところでは、圧力式水位・流速センサとも影響を受ける ので、設置場所や位置変更が必要であり、原理的にメインストリームを含め水中センサ方式の面 速式流量計は設置に適していない。やむを得ず設置する場合には、あらかじめポータブル面速式 流量計による試験調査で付着堆積の影響を調べることが望ましい (3) 堆積への対処:堆積位置よりもセンサ位置をあらかじめ上方位置へずらす方法で、実用精度を保 持して長期連続計測が可能なことが多い。逆にセンサ位置はずらさず、コンプレッサを現場に置 き、短い日間隔で空気洗浄するような方法で対処することは、精度と信頼性の確保およびランニ ングコストの合理性から推奨できない (4) 推奨する水位・流速センサの組み合わせ:超音波流速センサと空中型超音波水位センサの組み合 わせによる計測の信頼性が最も高く、定置型流量計には最適である。ただし超音波センサの不感 域(センサより下方 15cm)以上は計測できないので、溢水時など満管水位以上の計測が必要なと きは、補助的に堆積物の影響を受けない高さに圧力式水位センサを併用するのが実用的である (5) 定置型面速式流量計の推奨仕様:堆積が予想される水路では超音波流速センサと超音波水位セン サの組み合わせを推奨。一部満管以上になるケースでは圧力式水位センサを併用。維持管理は定 期年1 回と洪水冠水時など不定期の組み合わせ。遠隔監視システムの場合はセンサ感度や水位・ 流速トレンド、上下流流量計の整合性を監視して任意に保守点検を行うことが経済合理的。
4-2. CSO 越流負荷軽減装置研究で実証された面速式流量計メインストリームの高精度 4-2-1. 研究の概要 (1) 国が指導する合流式下水道改善研究の一環として、長岡技術科学大学 環境・建設系 廃棄物・ 有害物管理工学研究室(藤田昌一教授)において、長岡市、日本上下水道設計、青木あすなろ建 設などの協力により、スワール分水装置によるCSO 負荷軽減研究が行われている。 (2) このスワール分水装置は独 UFT 社製で、CSO のファーストフラッシュ負荷量を軽減するため に開発された汚濁固形物分離装置である。原理は汚水が流入管より筒状の分離室に一定方向で流 れ込むと、渦流が発生して固形物を分離しながら中心部に巻き込み、中心部の下方にある流出管 から分離された固形物を含む汚水を排出し、上澄水を越流管より放出するもの (3) 研究では流量計測と採水・水質分析による負荷量の差分計算から、装置の性能を評価する (4) 流量計は流入管と越流管に設置し、負荷量差(装置の能力)を定量するために用いられる 4-2-2. 実用精度試験 (1) 研究に先立ち、流量計の実用精度試験が大学によりおこなわれた (2) 処理場の貯水施設を利用して平面積と水位から基準積算流量を計算し、すべての流量を流入管か ら越流管へ流下させ、設置流量計の指示値から、実用精度を計算する (3) 試験結果:基準流量 4764 ㎥に対し、流入渠流量計 4727 ㎥(誤差-0.8%)、越流渠流量計 4747 ㎥(誤差-0.4%)で、非常に高精度であることが確認された。 基準積算流量 4764 ㎥に対する流入管と越流管に設置した流量計の指示値 時間(分) 表示流量値(m3/h) 水量(m3/min) 時間(分) 表示流量値(m3/h) 水量(m3/min) 1 28.2 0.470 1 28.5 0.475 2 27.7 0.462 2 28.8 0.480 3 28.2 0.470 3 29.0 0.483 4 28.8 0.480 4 28.5 0.475 5 29.0 0.483 5 29.5 0.492 6 28.2 0.470 6 29.6 0.493 7 28.0 0.467 7 29.4 0.490 8 27.7 0.462 8 26.8 0.447 9 28.8 0.480 9 25.1 0.418 10 29.0 0.483 10 29.6 0.493 4.727 4.747 99.2% 99.6% 流入管 越流管 流量値(m3/s) 流量値(m3/s) 0.00783 0.00792 0.00769 0.00800 0.00783 0.00806 0.00800 0.00792 0.00806 0.00819 0.00783 0.00822 0.00778 0.00817 0.00769 0.00744 0.00800 0.00697 0.00806 0.00822 精度 精度 10分間の総量(m3/10min) 10分間の総量(m3/10min) 流入管流量計 越流管流量計 越流管流量計 図44
5.国の研究で実証された面速式流量計メインストリームの性能 5-1. 研究の概要 (1) 4章の、長岡技術科学大学における CSO 研究成果により、国土交通省 国土技術政策総合研究 所(以下国総研)から、国の研究に必要なポータブル面速式流量計の比較精度試験への協力依頼が あった。 (2) 国総研の研究は、雨水流出係数の実態把握に関する研究(期間10年を予定)で、下水管渠の正確 な流量モニタリングを必要とし、対応流量計の実用精度が調査結果に影響を与えうるため、計測 方式の違う流量計の比較検討が求められた (3) メインストリーム(マルチドプラ式面流速センサを有する面速式流量計)と、比較流量計(点流 速を測るタイプの電磁誘導型流速センサと圧力式水位センサを一体化したプローブを持つ面速 式流量計)との対照試験 (4) 対照試験は、大学内の基準流量計による精度比較試験と、現場の下水管渠における実用精度比較 試験で構成される 5-2. 大学における精度比較試験 (1) 大学の水理実験施設を利用して精度比較試験を行った (2) 40cm 四方の断面を持つ矩形水路における比較試験では、プローブの大きさにより計測可能な最 低水位には差があったが、計測可能範囲では流量計測精度にほとんど差はなく、実験水路規模で は同様の精度であることが確かめられた 5-3. 現場実用精度比較試験 (1) 比較試験は 2006 年3月∼4月にかけて実施。管径 1,100mm の既設管渠に2台の流量計が設置 され、降雨量総量3mm(降雨強度 1.9mm/h)と 48mm(同 60mm/h)時の2回、基準流量計 がないので水位・流速・流量指示値の比率で比較した (2) 3mm 降雨時の試験結果:メインストリームに対する比較流量計の指示比率は、水位 68%、流 速はほぼ同等、演算流量50%で、水位値の違いによる流量差が認められた (3) 48mm 降雨時の試験結果:メインストリームに対する比較流量計の指示比率は、水位 66% (3mm 降雨時とほぼ同様)、流速はメインストリームの 20→100cm/s変化に対して 30→40sm/s 変化。30cm/s まではばらつきはあるがほぼ同じ傾向で、これを越える流速域で比較流量計の流 速変化が極端に少なくなる。演算流量は 25%程度で、水位と流速両方の指示値の違いによる相 乗的な流量差が認められた (4) 流量計の優劣比較試験ではないので、どちらが良いとはいえないが、ペンタフの見解としては今 回の結果をつぎのように考えている ・ 比較流量計の圧力式水位センサに、ゲイン低下か調整不十分がみられる ・ 高流速域における明らかな差は、比較流量計流速センサの油分皮膜による感度低下もしくは、 平均流速演算方式の差によるものと考えている ・ 点流速から平均流速へ演算する方式は「垂直方向流速分布の対数則」と実験水路による補正 に基づくことが多い。もし比較流量計がこの方式で演算しているのであれば、実験水路より もはるかに規模の大きい現場水路における高水位時に平均流速誤差が生じることは十分に 考え得る
6. CSO モニタリングで高い評価を得た面速式流量計メインストリーム(ポータブル型) (1) (社)日本下水道協会より「合流式下水道改善対策指針と解説」が刊行され、2002 年からの 10 年 間、合流改善モニタリングが義務付けられるようになり、関連して(財)下水道新技術推進機構よ り「合流式下水道改善のためのモニタリング手引き」により負荷量計測の手法が示された。負荷 量調査の概要とレポートの一例を図61 に示す (2) ペンタフでは、このモニタリング手引きに沿って、すでに100箇所以上の負荷量調査実績があ る。以下の理由から使用流量計としてメインストリーム(ポータブル型)が高い評価を得ている ・ 大口径管への設置が容易で、晴天時流量から雨天時流量まで計測範囲が広く、実用精度が高 い(大学実験では±5%R.S 未満) ・ 設置と電源管理が容易(乾電池電源) ・ CSV テキストデータなので市販表計算ソフトで簡単に加工できる ・ 欠測が少なく信頼性が高い(弊社実績では部分欠測がある測点の全測点比率約8%、部分欠 測がある測点だけの欠測期間の平均比率[欠測期間/全調査期間]約 10%、全測点の計測期間に 占める欠測期間比率は0.8%[0.1×0.08]である) (1) 精度、信頼性、操作性に関する評価から、調査先の自治体がメインストリーム(ポータブル型)を 購入するケースがあった 総降雨量10∼30mm の 降雨を対象に水質・流量 を同時系列で計測を行い 汚濁負荷量を算出する。 図 61 DO・PH測定 流量データ回収 センサ設置状況 レポート出力
7.不明水調査に威力を発揮する面速式流量計メインストリーム(ポータブル型) (1) 調査実績:弊社は前身の会社も含めて、30 年以上不明水対策に関連する流量調査を手掛けてきて いる。調査箇所は1000 箇所を超える (2) 使用流量計:弊社ではこれまで不明水調査用として空中超音波水位計測型フリューム式流量計 (タフフロー)を使用してきたが、現在はフリューム式流量計と面速式流量計(メインストリー ム)を併用している。理由はフリューム式流量計が急勾配や滞留箇所、満管になる箇所では使用 できないためで、面速式流量計メインストリームを併用することにより、経済合理的なロケーシ ョン選定が可能になった。フリューム式流量計を主体にしている理由はメンテナンス機会が圧倒 的に少なく、小口径管用として最も信頼性[欠測測点率約2%、欠測測点欠測期間率約 10%、全 欠測期間率0.2%]と、精度[実用精度±3%]が高いため (3) ワンタッチマウントを使用して、小口径管なら 2 分で仮設でき、不明水調査で最も効果的な同時 多測点調査(改善規模の単位で20∼30 箇所同時に調査して改善順位を評価する方法)が可能に なった (4) バッファマウント(patent)により低流量時の計測精度が格段に向上して、深夜最小流量の計測精 度を必要とする地下水浸入水調査に活用できるようになった レポート出力 流量計設置作業 バッファマウント ワンタッチマウントと設置作業 図-71 Project : pentough-city Site Name : tokyo Flowmeter : Mainstream OCFM7955
Date Time Level Area VelocityFlow Rate Hour QuantityTotal Quantity dd/mm/yy hh:mm:ss mm m^2 m/S m^3/hr m^3 m^3 2004/10/31 8:42:00 150 0.11 0.939 372 0 2004/10/31 8:43:00 147 0.108 0.926 359 6 2004/10/31 8:44:00 146 0.107 0.9 346 12 2004/10/31 8:45:00 146 0.107 0.904 348 18 2004/10/31 8:46:00 148 0.108 0.896 350 24 2004/10/31 8:47:00 142 0.104 0.896 334 30 2004/10/31 8:48:00 141 0.103 0.896 331 35 2004/10/31 8:49:00 140 0.102 0.875 321 41 2004/10/31 8:50:00 140 0.102 0.875 321 46 2004/10/31 8:51:00 140 0.102 0.88 323 51 2004/10/31 8:52:00 138 0.1 0.872 315 57 2004/10/31 8:53:00 136 0.099 0.877 311 62 2004/10/31 8:54:00 137 0.099 0.882 316 67 2004/10/31 8:55:00 136 0.099 0.859 305 72 2004/10/31 8:56:00 136 0.099 0.851 302 78 2004/10/31 8:57:00 131 0.095 0.851 290 83 2004/10/31 8:58:00 129 0.093 0.872 292 87 2004/10/31 8:59:00 125 0.09 0.872 282 92 2004/10/31 9:00:00 129 0.093 0.845 283 97 97 2004/10/31 9:01:00 128 0.092 0.832 276 5 2004/10/31 9:02:00 128 0.092 0.85 282 9 2004/10/31 9:03:00 127 0.091 0.817 269 14 2004/10/31 9:04:00 127 0.091 0.838 276 19 2004/10/31 9:05:00 130 0.094 0.809 273 23 2004/10/31 9:06:00 125 0.09 0.808 261 28 2004/10/31 9:07:00 128 0.092 0.828 275 32 2004/10/31 9:08:00 126 0.091 0.805 263 37 2004/10/31 9:09:00 119 0.085 0.806 247 41 2004/10/31 9:10:00 120 0.086 0.828 256 45 2004/10/31 9:11:00 121 0.087 0.809 252 49 2004/10/31 9:12:00 123 0.088 0.801 254 54 2004/10/31 9:13:00 117 0.083 0.772 232 58 2004/10/31 9:14:00 119 0.085 0.772 236 62 2004/10/31 9:15:00 121 0.087 0.78 243 66 2004/10/31 9:16:00 120 0.086 0.767 237 70 2004/10/31 9:17:00 119 0.085 0.79 242 74 2004/10/31 9:18:00 116 0.083 0.789 235 78 2004/10/31 9:19:00 116 0.083 0.767 228 82 2004/10/31 9:20:00 116 0.083 0.758 226 85 2004/10/31 9:21:00 115 0.082 0.784 231 89 2004/10/31 9:22:00 116 0.083 0.734 218 93 2004/10/31 9:23:00 112 0.08 0.777 222 97 2004/10/31 9:24:00 116 0.083 0.764 227 100 2004/10/31 9:25:00 115 0.082 0.772 228 104 2004/10/31 9:26:00 109 0.077 0.775 215 108 2004/10/31 9:27:00 116 0.083 0.791 235 111 2004/10/31 9:28:00 110 0.078 0.769 216 115 2004/10/31 9:29:00 106 0.075 0.756 204 119 2004/10/31 9:30:00 110 0.078 0.756 212 122
8.おわりに これまでの試験と実用実績から面速式流量計メインストリームは以下のように評価される。 (1) 特定条件下での試験成績として±2%R.S の検査基準を有する (2) 堆積や急激な水位増加や滞留・逆流がなければ、実用精度として±5%R.S 未満を事例で確認。設 置条件が良いと±1%R.S 未満であるケースも確認された (3) 合流改善モニタリングに最適。ただし付着堆積の多い管渠の計測には原理上、メンテナンスが必 要。この場合でも堆積深の変化が少ないばあい。堆積よりも上にセンサをずらして設置すること により実用精度を確保できるばあいが多く、大幅にメンテナンス機会を減少させることができる (4) 不明水調査用の流量計測に最適。フリューム式流量計と組み合わせることにより最高のパフォー マンスを実現できる (5) このほか工場排水調査や管路施設の定期点検調査に最適。自治体からこの用途による照会が増加 している。 (6) これまでに経験した面速式流量計メインストリーム(ポータブル型)のトラブルでは、設置上の問題 や、冠水状態のなかに流量計を長期放置するなど不適切な維持管理に起因するものが多く、最低 限度の測定・維持管理技術習得が必要 (7) メインストリームを始めとする面速式流量計は既存の水路形状を利用する特殊な流量計で、最大 計測流量は水路形状と計測最大水位、計測最大流速で規定されるため、フルスケール誤差で定格 を定めることが困難である (8) 設置箇所の水理的影響を受け易く(付着堆積が多い、断面形状が不安定、処理場・ポンプ場に近く デート操作で急に逆流・滞留になるなど)、カタログ精度と実用精度は必ずしも一致しない (9) 以上の実用条件を十分吟味さえすれば、面速式流量計メインストリームは最高のパフォーマンス を発揮するだろう