あまんきみこ作品教材の研究
ー フ ァ ン タ ジ ー 論 の 視 点 か ら ‑
教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース
田 村 ふ み
研究の目的
本研究の目的は、次の3つで、ある。
① ファンタジーの定義を押さえながら、あ まんきみこの世界観を探り、あまんきみこ作品 の特徴を明らかにする。
② ①においてとらえたあまんきみこの世界 観を基に仮説を立て、「おにたのぼうし J の先 行実践研究の分類・考察を行う。
③ 仮説をふまえ、絵本『おにたのぼうし』
の分析を行い、その特徴を明らかにする。
論文の構成
本論文の構成は、次のとおりである。
はじめに 序 章
1 . 研究の目的 2. 研究の方法
第 1章 あまんきみこの世界観 1 .ファンタジー
2.わたしにとっての「ほんとう」
3.心象の表出
4.宮沢賢治とあまんきみこ 5.まとめ
第2章 「おにたのぼうし」の先行実践研究 1 .仮説
2.先行実践研究の分類 3.先行実践研究の考察 4.まとめ
指導教官 余 郷 裕 次
第3章 絵 本 『 お に た の ぼ う し 』 の 分 析 1 .書誌
2.絵本『おにたのぼうし』の分析 3.題名「おにたのぼうし」について 4. まとめ
結 章
1. 研究のまとめ 2. 今後の課題
引用・参考文献 おわりに 論文の内容
第 1章では、西郷竹彦氏と本学大学院修了生 の池西郁広氏、両氏のファンタジーの定義を見 ながら、あまんきみこの世界観を明らかにした。
あまんきみこ作品には、西郷氏の「現実と非現 実のあわしリや池西氏の「暖味な状態や共存す る状態」という二元論ではとらえきれない世界 があるO 彼女が言う「わたしにとっての「ほん とう JJ が、現実と非現実の区別のない一元論 の世界であるからだ。あまんきみこが「わたし にとっての「ほんとうJJという「真実」の世 界は、宮沢賢治の心象スケッチに近いのかもし れない。
第2章では、第1章においてとらえたあまん きみこの世界観を基に、仮説を立てた。
読者は、あまんきみこが「ほんとう J とい う「真実Jの世界を読むことによって、読者自
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身の中から一元論的な(現実と非現実の区別の ない)世界を引き出す。それは二元論(現実と 非現実の区別のある)の世界を否定することに なるけれども、否定の根拠が、読者自身の中か ら引き出された一元論的な思考認識であるため に、読者自身の真の欲求を満たすものになり得 るのではないか。また、子どもたちは、二元論 の世界を生きながらも、一元論的な世界も同時 に持っている。一元論的な世界を同時に持って いる子どもであるからこそ、例えば「おにたの ぼうし」において節分の夜に人と鬼が遭遇する 過程を了承し、物語世界を楽しむことができる
と考える。
この仮説を基に、「おにたのぼうし」の先行 実践研究を4つに分類し、考察を行った。
1 1 一般物語としての扱い」は、脇坂琉美 子氏と中井義夫氏を取り上げた。両氏は、登場 人物の気持ちを読み取るような指導目標を立て ている。 III ファンタジーとしての扱しリは、
神山和江氏と林志保氏を取り上げた。神山氏は
「おにたのぼうし」を「ファンタジー童話」と してジャンル分けし、指導目標の中に取り入れ ている。林志保氏は、あまんきみこ作品全体を 11現実にはあり得るはずのないJ非常に不思 議な世界」という枠組みからとらえていた。「皿 二元論としての扱い」では、西郷文芸研を取 り上げた。文芸研の理論が「弁証法的な構造J を基礎においているため、「おにたのぼうし」
の授業もその基礎をふまえた提案がなされてい る。 IN 一元論としての扱いJは、山元隆春 氏の論を取り上げた。先行実践研究の中で唯一、
あまんきみこ作品を一元論的な世界観に基づい てとらえている。山元氏の論は、文芸研の二元 論的な物語解釈によっている部分はあるが、あ まんきみこ作品を一元論的な世界観に基づいて
解釈することに示唆を与えるものであった。
第3章では、第2章の仮説を基に、絵本『お にたのぼうし』を一元論的な世界観から、見開 きごとに分析し、その特徴を明らかにしたD
あまんきみこの現実と非現実が一体となった 語りによって、引き出されてし、く読者自身の一 元論的な世界観は、非現実の住人「おにた」の 存在を認めることでおにたに寄り添い、おにた と共に疎外された状態になる。おにたに寄り添 うことで、鬼への固定観念を否定してし、く過程 をたどった読者は、節分の夜に世間から疎外さ れた女の子に出会う。おにたは、女の子に疎外 された者同士の共感を覚える。しかし、女の子 が持つ鬼に対する固定観念によって、おにたの 存在は疎外される。おにたに寄り添っている読 者も、おにたと共に疎外される。おにたの存在 を肯定する立場に立っている読者は、おにたが 女の子の固定観念によって疎外されたとき、改 めて自分自身が持っていた固定観念に気づく。
女の子が持つ固定観念は、元々読者自身も持っ ていたものであるからだ。読者は、おにたと共 に二重の疎外の過程をたどり、自分を振り返る
ことによって、おにたの存在を認め、おにたと 共に生きようとする思考認識を引き出す。それ は、疎外される者の悲しみを自分の悲しみとし て引き受けることであるO引き受けた悲しみは、
読者自身の中から引き出された、現実と非現実 の区別がない一元論の世界であるために、自己 否定とならず自己肯定観となり、読者自身の真 の欲求、人聞が背負っている深い孤独感や悲し みを満たすものとして了承される。
今後の課題
① 一元論の視点から、他のあまんきみこ作 品教材をとらえ直す。
② 一元論による指導法を構想する。
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