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ヒ ト 胎 児に 発 現す る

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 斎 藤 鉄 也

学 位 論 文 題 名

ヒ ト 胎 児に 発 現す る CYP3A7 遺伝子の      転 写 制 御 機 構 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

1,はじ めに

  チ ト クロ ームP450 (CYP)は内 在性ホル モンの代謝 ・生合成 に加え, 薬物や毒 物などの 代謝お よぴ代謝 的活性化 にも関与 している .CYPはスーパ ーファミ リーを形成しており、

ヒ トに お い ては17フ ァ ミ リー ,42サ ブフ ァミリー が存在す る.この 中でも,CYP3Aサブ フ ァミ リ ーが外来 性異物の 代謝に関わ る主要臓 器である 肝臓と消 化管に最 も豊富に 発現 し てお り , 様々 な 構造 を 持 つ物 質 の代 謝に関 与してい る.ヒトCYP3Aサブファ ミリーに は ,CYP3A4,CYP3A5,CYP3A7お よ びCYP3A43の4つ の 分 子 種 が 存 在 し , こ れ ら は 第 7染 色 体長 腕21に ク ラス タ ー を形 成 して い る .こ れ ら4つの 分 子 種は 類似した 基質選択 性を有 するが, その発現 臓器およ び発現時 期は大きく 異なる.

  CYP3A7は ヒ ト胎 児 肝 にお け る主 要 なCYP分 子 種 であ り .デ ヒ ド ロエ ピ アン ド ロ ステ ロン3. 硫酸抱合 体やレチ ノイン酸 などの代謝に関与している. CYP3A7はこれら生理的に 重 要な 内 在性ホル モンの代 謝に加え, 様々な薬 物や毒物 の代謝お よび代謝 的活性化 にも 関 与 し て い る . マ イ コ ト キ シ ン で あ る ア フラ ト キシ ンBiや ス テ リグ マ トシ ス チ ンは CYP3A7に よ り 代謝 的 に活 性 化 され 遺 伝子 損 傷 を誘 発 す るた め ,CYP3A7は胎児 期に生じ た 遺伝 子 変異が原 因でがん が発生する 経胎盤発 がんにも 関与する 可能性が 推測され る.

興 味深 い ことに,CYP3A7の発現は 出生後徐々 に減少し ,成人肝 ではほと んど認め られな く なる . また,CYP3A7の 発現が肝 がん組織に おいて再 活性化さ れること も報告さ れてい る ,こ れ らの知見 から,CYP3A7の 発現を制御 する分子 機構は肝 細胞の増 殖,分化 および が ん化 と 密接に関 連してい る可能性が 推測され た.しか しながら ,CYP3A7の発現 制御機 構 にっ い て はこ れ まで 不 明 であ っ た. そ こ で本 研 究 では , ヒト 胎 児に発 現するCYP3A7 遺伝子 の転写制 御機構を 解明する ことを目 的とした.

2. CYP3A7遺伝 子の新規 転写制御 領域の同 定

  胎児 肝 細 胞に 似 た特 徴を有 するヒト 肝がん由 来HepG2細胞を 用い,また ,相同性 の高 いCYP3A4遺 伝 子 と 比 較 す るこ と に より ,CYP3A7遺 伝 子に 特 異的 な 転 写活 性 化 領域 を 同定 した, HepG2細 胞におけ るCYP3A7遺伝子 の転写活性化には、5 ‐上流約―2.3 kbに

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存在するKB様モチーフ(3A7KBエンハンサー)と5 .上流ー140bから‑35bまでの領域 に 存在するHNF‑38,USF1お よびSpl/Sp3の結合配列がそれぞれ重要であった,3A7KB エンハンサーおよび近接プロモーターのHNF‑3p結合配列においては,CYP3A4遺伝子の 対応する領域とは1塩基のみ異なり,これら1塩基置換が両遺伝子間におけるプロモータ ー活性の違いに重要であった.HepG2細胞より調製した核抽出液を用いたゲルシフトア ッセイの結果,この3A7KBエンハンサーに結合する核内因子はSplおよびSp3であった.

3A7KBエンハンサーはこれまで同定されたいずれのエンハンサーとも異なったことから,

CYP3A7遺 伝 子 に 特 異 的 な 発 現 制 御 に 関 与 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .

3. 転 写 因 子LSF/CP2/LBP‑ lc複 合 体 を 介 し たCYP3A7遺 伝 子 の転 写 活性 化 機構   新規に同定した3A7KBエンハンサーによる転写活性化機構についてさらに詳細に検討 した.SplおよびSp3の典型的な結合配列では3A7KBエンハンサーの機能を代替できな いこと,および,SplおよびSp3が結合できない変異型3A7KB配列でもエンハンサーが認 めら れることな どから,Sp1およびSp3以外の因子が3A7Kエンハンサーに関与するこ とが示唆された.ゲルシフトアッセイの結果,3A7KBエンハンサーの転写活性に重要な配 列には非特異的競合DNAとして加えるpoly(dI.dC)感受性の因子Xが結合することがわ かった.因子Xは転写因子LSF/CP2几BP・1c(以下,LSF)と配列特異性の低い,ゲル移動 度の速い因子の複合体であることが明らかとなった.HepG2細胞における3A7KBエンハ ンサー活性はドミナントネガティブ己SFにより約50%まで抑制された.以上の結果か ら。ビ珊碯7遺伝子はLSFを含む転写因子複合体により3A7KBエンハンサーを介して転 写活性化されることが示唆された.

4. C/EBPcxによるCYP3A7遺伝子の転写抑制機構

  GFPトランスジェニックマウスを用いた血ガVO解析により,3A7KBエンハンサーが胎 児期の肝で働くエンハンサーであることを見出した,興味深いことに,3A7KBエンハンサ ー活性は成獣肝では抑制された.成獣マウス肝より調製した核抽出液を用いたゲルシフト アッ セイの結果 ,成獣マウ ス肝におい て3A7KBエン ハンサーに 主に結合する因子は C/EBPaである ことがわか った.Hep G2細胞において,C/EBPaはCYP3A7遺伝子のプロ モーター活性を3A7KB工ンハンサー依存的に約20%のレベルまで抑制した.以上の結果 から ,成熟肝細 胞に高発現 するC/EBPaがCYP3A7遺伝子の時期依存的な転写抑制因子 である可能性が示唆された.

5.まとめ

  ヒト胎 児に発現するCYP3A7遺伝子の転写制御機構を検討し,以下の知見を得た,

1) CYP3A7遺伝子の転写活性化には新規な転写制御領域,3A7KB工ンハンサー,が重要     であった.

2) 3AhcBエンハンサ ーの活性化 には転写因 子LSFを含 む複合体が 重要であっ た,

3) 3A7KBエ ン ハ ン サ ー は 転 写 因 子 C凪 BPぱ に よ り 抑 制 さ れ た .

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(3)

  以上,ヒトCYP3A7遺伝子の時期依存的な発現は,転写活性化因子LSFと転写抑制因 子 C/EBPaの バ ラ ン ス に よ り 制 御 さ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ た .

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学位論文審査の要旨 主査    教授    鎌 滝哲也 副査    教授    有 賀寛芳 副査    助教授   平   敬宏 副査    助教授   山崎浩史

学 位 論 文 題 名

ヒ ト 胎児 に 発 現す る CYP3A7 遺伝 子の 転写制御機構に関する研究

  チ ト ク ロ ー ムP450 (CYP)は 内 在 性 ホ ル モ ン の 代 謝 ・ 生 合 成 に 加 え 。 薬 物 や 毒 物 な ど の 代 謝 お よ び 代 謝 的 活 性 化 に も 関 与 し て い る .CYPは ス ー パ ー フ ァ ミ リ ー を 形 成 し て お り , ヒ ト に お い て はCYP3Aサ ブ フ ァ ミ リ ー が 外 来 性 異 物 の 代 謝 に 関 わ る 主 要 臓 器 で あ る 肝 臓 と 消 化 管 に 最 も 豊 富 に 発 現 し て い る . ヒ トCYP3Aサ ブ フ ァ ミ リ ー に は ,CYP3A4 CYP3A5CYP3A7お よ びCYP3A434つ の 分 子 種 が 存 在 す る . こ れ ら4つ の 分 子 種 は 類 似 し た 基 質 選 択 性 を 有 す る が , そ の 発 現 臓 器 お よ び 発 現 時 期 は 大 き く 異 な る .CYP3A7 は ヒ ト 胎 児 肝 に お け る 主 要 なCYP分 子 種 で あ り , デ ヒ ド ロ エ ピ ア ン ド ロ ス テ ロ ン3. 硫 酸 抱 合 体 や レ チ ノ イ ン 酸 な ど の 生 理 的 に 重 要 な 内 在 性 ホ ル モ ン の 代 謝 に 関 与 し て い る . CYP3A7は ま た , 様 々 な 薬 物 や 毒 物 の 代 謝 お よ び 代 謝 的 活 性 化 に も 関 与 し て い る . マ イ コ ト キ シ ン で あ る ア フ ラ ト キ シ ンBiCYP3A7に よ り 代 謝 的 に 活 性 化 さ れ 遺 伝 子 損 傷 を 誘 発 す る た め ,CYP3A7は 胎 児 期 に 生 じ た 遺 伝 子 変 異 が 原 因 で が ん が 発 生 す る 経 胎 盤 発 が ん に も 関 与 す る 可 能 性 が 推 測 さ れ る , . 興 味 深 い こ と に ,CYP3A7の 発 現 は 出 生 後徐 々に 減少 し , 成 人 肝 で は ほ と ん ど 認 め ら れ な く な る . ま た ,CYP3A7の 発 現 が 肝 が ん 発 症 時 に 再 活 性 化 さ れ る こ と も 報 告 さ れ て い る , こ れ ら の 知 見 か ら ,CYP3A7の 発 現 を 制 御 す る 分 子 機 構 は 肝 細 胞 の 増 殖 , 分 化 お よ び が ん 化 と 密 接 に 関 連 し て い る 可 能 性 が 推 測 さ れた .し かし な が ら ,CYP3A7の 発 現 制 御 機 構 に つ い て は こ れ ま で 不 明 で あ っ た . 本 研 究 で は 、 ヒ ト CYP3A7遺 伝 子 の 時 期 特 異 的 な 発 現 制 御 に 関 す る 新 規 な 機 構 を 提 案 す る こ と に 成 功 し た . 本 研 究 の 成 果 は 以 下 に 詳 述 す る よ う に 極 め て 優 れ た も の で あ る と 評 価 さ れ る .

1CYP3A7遺 伝 子 の 新 規 転 写 制 御 領 域 の 同 定

  胎 児 肝 細 胞 に 似 た 特 徴 を 有 す る ヒ ト 肝 が ん 由 来HepG2細 胞 を 用 い , ま た , 相 同 性 の 高 CYP3A4遺 伝 子 と 比 較 す る こ と に よ り ,CYP3A7遺 伝 子 に 特 異 的 な 転 写 活 性 化 領 域 を 同 定 し た . HepG2細 胞 に お け るCYP3A7遺 伝 平 の 転 写 活 性 化 に は ,5 ・ 上 流 約‑2.3 kb

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(5)

存在するKB様モチーフ(3A7KBエンハンサー)と5 ・上流―140bから―35bまでの領域 に存在するHNF‑3{3,USF1およびSpl/Sp3の結合配列がそれぞれ重要であった.3A7KB エンハンサーおよび近接プロモーターのHNF‑3p結合配列においては,CYP3A4遺伝子の 対応する領域とは1塩基のみ異なり,これら1塩基置換が両遺伝子間におけるプロモータ ー活性の違いに重要であった.HepG2細胞より調製した核抽出液を用いたゲルシフトア ッセイの結果,この3A7KBエンハンサーに結合する核内因子はSplおよびSp3であった.

3A7KBエンハンサーはこれまで同定されたいずれのエンハンサーとも異なったことから、

ビ ぬ ぇ 鮒7遺 伝 子 に 特 異 的 な 発 現 制 御 に 関 与 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .

(2) 転 写 因 子LSF/CP2fLBP‑lc複 合 体 を 介 したCYP3A7遺 伝 子の 転 写活 性 化機 構   新規に同定した3A7KBエンハンサーによる転写活性化機構についてさらに詳細に検討 した .Sp1およびSp3の典型的な結合配列では3A7KBエンハンサーの機能を代替できな いこと,および,Sp1とSp3が結合できない変異型3A7KB配列でもエンハンサー活性が認 めら れることなどから,Sp1およびSp3以外の因子が3A7KBエンハンサーに関与するこ とが示唆された.ゲルシフトアッセイの結果,3A7KBエンハンサーの転写活性に重要な配 列には非特異的競合DNAとして加えるpoly(dI・dC)感受性の因子Xが結合することがわ かった.因子Xは転写因子LSF/CP2几BP.1c(以下,LSF)と配列特異性の低い,ゲル移動 度の速い因子の複合体であることが明らかとなった.HepG2細胞における3A7KBエンハ ンサ ー活性はドミナントネガティブLSFにより約50%まで抑制された.以上の結果か ら,ビぬ瑠A7遺伝子はLSFを含む転写因子複合体により3A71毋エンハンサーを介して転 写活性化されることが示唆された.

(3)C/EBPaによるCYP3A7遺伝子の転写抑制機構

  GFPトランスジェニックマウスを用いた血ガVO解析により,3A7KBエンハンサーが胎 児期の肝で働くエンハンサーであることを見出した.興味深いことに,3A7KBエンハンサ ー活性は成獣肝では抑制された.成獣マウス肝より調製した核抽出液を用いたグルシフト アッ セイの結果 ,成獣マウ ス肝におい て3A7KBエン ハンサーに 主に結合する因子は C凪BPaであることがわかった.HepG2細胞において,C厄BP説はビM昭47遺伝子のプロ モーター活性を3A7Kエンハンサー依存的に約20%のレベルまで抑制した.以上の結果 から,成熟肝細胞に高発現する(】凪BPQがビ班泓7遺伝子の時期依存的な転写抑制因子 である可能性が示唆された.

  以上,CY13A7遺伝子の新規な転写制御領域(3A7KBエンハンサー)とこれに関与する 転写活性化 因子LSFおよび転写 抑制因子C/EBPa,を同定し,ヒトCYP3A7遺伝子の時期 特異的な発現制御機構に関する新しい重要な概念を提案することに成功した.本論文『ヒ ト胎児に発現するCYP3A7遺伝子の転写制御機構に関する研究』に含まれる研究成果は 薬学研究における基礎および応用のいずれにおいても優れており,博士(薬学)の学位を 受けるに充分値するものと認めた.

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