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ヒ ト

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 薬 学 ) 千 田 道 洋

学 位 論 文 題 名

ヒ ト CYP2D6 の新 規遺伝子多型の発見と      遺伝 子診 断法 の確 立

学位論文内容の要旨

CYP2D6は 臨 床 上 重 要 な 多 く の 薬 物 の 代 謝 に か か わ る 酵 素 で あ る が 、 日 本 人 で はpoor metabolizer (PM)のフェノタイプを示す ヒトの頻度が低いために、 遺伝子レベルでの多型に 関す る研 究 はほ とん ど行 われ て いな かっ た。 本 研究 は遺 伝子 診断 により日本人におけるPM の予 測率 を 上昇 させ るこ とを 目 的と し、 以下 の 知見 を得 た。

(1) PMの 原因 とな るCYI)2D6遺伝 子変 異の 頻 度解 析

欧 米 白 人 でPMの90%以 上 を 説 明 で き る と さ れ るCYP2D6*3、CYP2D6*4お 」 : び CYP2D6*5と 、 当 研 究 室 のYokoiら が 日 本 人PMよ り 見 い だ し たCYP2D6 *18、 中 国 人l'Mよ り見 いだ さ れた く; YP2D6*14、CYP2D6*14と 同じ位置 に塩基置換が存在するCYP2D6*8のr) 種 類 の 遺 伝 子 変 異 の 日 本 人 で の 頻 度 を 解 析 し た 。CYP2D6*3は282名 の 内、 この 変異 を 有 し て い る 被 験 者 を1名 も 見 い だ すこ とは 出 来な かっ た。CYP2D6*4は270名中 ヘテ 口接 合 体 で 変 異 を 有 す る4名 を 見 い だ し た 。CYP2D6*5は256名 を 判 定 し た 結 果 、19名 が へ テ 口 接 合 体 で 、1名 が ホ モ 接 合 体 で 変 異 を 有 し て い た 。CYP2D6*8とCYP2D6*14は 同 じ 判 定 法 で 226名半IJ定 した が 、1名 も変 異 を有 して いる 被 験者 は見 いだ せな か った。CYP2D6*18は297 名 判 定 し 、 ヘ テ ロ 接 合 体 で 有 す る3名 を 見 い だ し た 。 変 異 の中 でCYP2D6*5の頻 度が 最 も 高 く 、 欧 米 白 人 でPMの 原 因 と な る 最も 頻度 の高 い 変異 であ るCYP2D6*4の頻 度は 低く 、 日 本人 でPMの 頻度 が低 いー因 となることが明らかとなった 。これらの変異の頻度から 算出され たPMの 頻 度 は0.29%で あ り 、in vivo代 謝 試 験 か ら 求 め ら れ たPM頻 度 で あ る0.84%0)約 340/0を 占め るの み であ った 。

(2) PMの 原 因 と な る 未 知 の CYf) 2D6遺 伝 子 変 異 の 探 索 と 診 断 法 の 確 立 前 章 で 検 討 し た6種 類 の 遺 伝 子 変 異 で はf′l vrvo代 謝 試 験 か ら求 めら れるPMの約3分の 1し か 説 明で き ない こと から 、こ れ らの 遺伝 子変 異 以外 にPMの原 因と な る未 知の 遺伝 子変 異が存在すると考えた。そこで、未知の多型を探索する目的で、デブリソキンを用いてf川 fゾD 代 謝 試 験 を 行 い 、 見 い だ さ れ た2名 のPM (PM1お よ びPM2) のCYP2D6遺 伝 子 を 角 畢 析 し た 。 最 初 に 、 前 章 で 検 討 し た6種 類 の遺 伝 子変 異を 有し てい る か否 かを 判定 し た。PMlは CYP2D6 *18をヘ テロ 接 合体 で有 して いた が 、PM2は 何れ の変 異も 有し て いな かっ た。 した が っ て 、PMlの 残 り 片 方 の 対 立 遺 伝 子 と 、PM2の 而 方 の 対 立 遺 伝 子 に 、 新 し い 遺 伝 子変 異 が存 在す る と考 えら れた。 そこで、さらに塩基配列を 解析した結果、PMの原因と予 想され る 新し い遺 伝 子変 異を2種 類見 いだ した 。1っは 、 エク ソン5で の1塩 基 のシ卜シン(Cuini)

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(2)

の挿入であり、こ の変異によルフレームシフトが起こり、挿入箇所の11塩基下流でストップコド ンが生じて、正常 なタンパク質が発現されな いことが明らかとなった。こ の新しい変異は国際 P450命 名 委 員 会 に よ り 、CYP2D6*21と 命 名 さ れ た 。 こ の変 異は 、2名のPMの ど ちら にも 見 い だ さ れ た 。 も う1つ の 変 異 はCYP2D6*10Bを 有 し て お ら ず 、CYP2D6*10Cを ク ンデ ムに 有 す る 新 し い 遺 伝 子 変 異 、CYP2D6*10C‑10Cで あ っ た 。CYP2D6 *10C‑10Bで 活 性 を有 する の はCYI 2D6*10Bの遺 伝 子産 物で あるCYP2D6 10Aで あることが報告されている 。したがって、

こ の 新 規 遺 伝 子 変 異CYP2D6 *10C‑10Cで は 、CYP2D6*I OBが 存 在 し な い た め 、 活 性 が 消 失 し た も の と 推 測 さ れ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、2名 のPMの う ち1名 はCYP2D6*18と CYP2D6*21を そ れ ぞ れ ヘ テ 口 接 合 体 で 、 も う1名 はCYP2D6*21とCYP2D6 *10C‑10Cを そ れ ぞ れ ー テ 口 接 合 体 で 有 し て い る こ と が 原 因 でPMと な っ た こ と を 明 ら か に し た 。 次 に 、 新 た に 見 い だ し た こ れら2種 類の 遺 伝子 変異 を簡 便に 判 定で きる 方法 を 確立 した 。 CYP2D6*21は2段 階 のPCRで 判 定 可 能 に し た 。CYP2D6*21は 、 健 常 日 本 人318名 に お ける 頻 度を 検討 したと ころ、ヘテロ接合体が5名見 いだされ、アリル頻度は0.81%であった。

C YP2D6 *10C‑10CはLA‑PCRで 判 定 し た 。CYP2D6*IOC‑IOCは 上 述 し たPM以 外 の2名 のPMで は見 いだ された が、ランダムに選択した149名には見いだすことはでき なかったため、

頻度 が 低い こと が予 想 され た。 これ らの 頻 度と 、前 章で 明ら か にした6種類 の変異のあわせ て8種類 の変 異 の頻 度よ り、 日本 人 にお けるPMの 頻 度は 約0.390/0と計算され 、この値はむl VLVO代 謝 試 験 よ り 求 め ら れ るPM頻 度 の 約46%と な っ た 。 新 規 の2種 類 の 遺 伝 子 変 異 を 見 い だ し 、 判 定 法 を 確 立 す る こ と で PMを 12%多 く 判 定 で き る よ う に な っ た 。

(3) CYP2D6遺伝子変異の表現型への影 響

  CYP2D6で 代 謝 さ れ る 抗 ヒ ス タ ミ ン 薬 でPMと 推 定 さ れ た 被 験 者 で はCYP2D6*10を 有し て い る 頻 度 が 高 い こ と に 注 目 し 、 こ の 遺 伝 子 変 異 の薬 物反 応性 に及 ば す影 響を 検討 した 。 C YP2D6 *10お よび 、前 章 で見 いだ した2種類の遺伝子変異を含めて、 デキスト口外ルファン でf′lvfレ 〇 代 謝 試 験 し た 日 本 人 健 常 者 のCYP2D6遺 伝 子 を 解 析 し 、10種 類 の 変 異 (CYP2D6*2、CYP2D6*3、 CYP2D6*4、CYP2D6*5、 CYP2D6*8、 CYP2D6 *10、 CYf 2D6 *10C‑10C、CYI 2D6*14、CYI)2D6 *18お よ びCYP2D6*21)の 有無 と活 性の 強さの 関連を検討 した。98名の遺伝子を解析 した結果、の′P2D6゛|pのアリル頻度は約40%であり、

野 生型 のCW 2D6゛ |と ほ ぼ同 程度 であ っ た。 また 、PMの原 因となる 遺伝子変異の頻度は全 欠 損 型 で あ るCW 2D6゛5以外 は著 しく 低 く、CH 2D6゛5を ホ モ接 合体 で有 す る1名 のPMを 見 いだ した の みで あっ た。CW 2D6*|Dホ モ接 合体 で は、PMの 原因 と なる 遺伝 子変 異をへ テ ロ 接 合 体 で 有 す る 場 合 よ り 活 性 が 低 下 し た 。 特 に 日 本 人 で は 頻 度 が 高 い た め 、 CW 2D6*JOを 判定 する こ とは 重要 であ る と考 えら れた 。従 来CW 2D6*JDはPMの原 因遺伝 子 とは 考え ら れていなかったが、前章で見 いだしたCW 2D6゛J〇C‐|DCの存在や、本章での 検 討結 果か ら 、薬 物に よっ てはPMの予 測率 向上 のた め にC野 2D6゛J〇の考慮が必要となる 可能性があ ると考えられた。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ヒト CYP2D6 の新 規遺伝子多型の発見と      伝 子診 断法 の確 立

巾請者は通常量 の薬物を投与したときに、代 謝の遅いヒト(poor metabolizer;以下PM)で認 められる効き過 ぎや扇I|作用の危険性を未 然に防ぐために、薬物治療前に患者がPMか否かを 遺伝予診断で判 定可能にすることを目的とし、世界的な研究成果を得た。すなわち、本研究で は 、チ トク 口ー ムP450(以 下CYP) 2D6の日本人におけるPMの頻度を算出するために、PMの 原因となる遺伝 子変異の頻度を検討した。さ らに、PMの遺伝子を解析し 、PMの原囚となる遺 伝 子変 異を2種類見いだし、それ らを含め遺伝子変異の表現 型への影響を検討した。本研 究 は薬物代謝酵素 、ことにその巾心的な酵素で あるCYPの遺伝的多型に関連して、ヒトにおける 副作用の回避に 有用な概念を提供するもので あり、以下に詳述するよう に極めて優れた研究 成果であると評 価される。

(1)PMの 原 因 と な るCYP2D6遺 伝 子 変 異 の 頻 度 解 析

欧 米 白 人 でPMの90%以 上 を 説 明 で き ると さ れるCYP2D6*3、CYP2D6*4およ びCYP2D6*5と、

当 研 究室 のYokoiらが 日本 人PMよ り見 いだ したC} ′P2D6* |8、さ ら にCW 2D6*8および C} ′P2D6*|4の6種類の遺伝 子変異の日本人での頻度を解 析した。Cけ2D6*jは282名の内、

この変異を有している被験者を1名も見いだすことは出来なかった。CH 2D6゛4は270名|I・lヘ テ ロ 接合 休で 変異 を有 す る4名 を 見い だし た。CW)2D6゛5は256名を判定した結果、19名が ヘ テ ロ接 合体 で、1名 がホモ接合休で 変異を有していた。CW 2D6*8とCW 2D6゛J4は226名 判 定したが、この変異を有して いる被験者は1名も見いだせ なかった。Cけ2D6゛|8は297名判 定 し、ニの変異をへテ口接合休 で有する3名を見いだした。 これらの変異の頻度から算Hjされ たPMの頻度は0.29ワDであり、f′lWレD代謝試験から求められたPM頻度である0.84%の約34% を 占めるのみであった。

(2) PMの 原囚 と なる 未知のC} ′P2D6遺伝子変異の探索と診 断法の確立

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也 幸

修 高

哲 靖

康 範

滝 村

熊 吉

授 授

授 授

   

   

(4)

(1)に述べた結果より、上記の6種類の遺伝子変異以外にPMの原因となる未知1の遺伝・r変 異が 存在すると予想された。そこで、未知の多型を探索する目的で、デブリソキンをJHいてむl WレD代謝 試験 を行 い、 見 いだ され た2名のPMのCyP2D6遺伝子を解析 した。塩基配爿|を解 析し た結果、PMの原囚と予想さ れる新しい遺伝子変異を2種 類見いだした。1っは、直後にス トッ プコドンを生じさせるエクソン5での1塩基の挿入であり、これは国際P450命名委員会によ りCW 2D6*2|と命名された。もう1つの変異は、C抑)2D6*朋Bを有しておらず、C}ア2D6*|DC をタンデムに有する新しい遺伝子変異C即2D6*J〇Cーヱ〇Cであった。次に、これら2種類の遺伝 予 変 異を簡便 に判定できる方法を確立し た。CyP2D6゛2Jは健常日本人318名中、ヘテ口接合 f本 が5名見いだされた。CW 2D6*|DC‐|〇Cはさらに2名のPMで見いだされたが、ランダムに 選択 した149名には見いだすことはできなかったため、頻度が低いことが予想された。これらの 頻度 と、(1)で明らかにした6種類の変異の頻度より、日本人におけるPMの頻度は約0.39%と 言II算 さ れ 、 こ の 値 はmWリ 〇 代 謝 試 験 よ り 求 め ら れ るPM頻 度 の 約46ワ 。 と な っ た 。

(3) CYP2D6遺 伝 子 変 異 の 表 現 型 への 影 響

CYP2D6で代 謝される抗ヒスタミン薬でPMと推定された被験者ではCY1)2D6 *10を有している 頻 度が 高いことに注目し、この遺 伝子変異の薬物反応性に及ば す影響を検討した。(2)で見 いだした2種 類の遺伝予変異を含めて、 デキス卜ロメトルファンでin vivo代謝試験したH本人 健 常者 のCYP2D6遺 伝子 を解 析し、10種類の変異の有無と活性 の強さの関連を検討した。98 名の遺伝子 を解析した結果、CYI 2D6*10のアリル頻度は約40%であ り、野生型CYP2D6゛´と 同程度であ った。CYf 2D6 *10ホモ接合 体では、PMの原因となる遺伝子変異をへテ口接合f木 で有する場 合より活性が低下した。

以上 、 木研 究はPMの 原囚 と なるCYP2D6遺 伝子 変 異を2種類見いだし、簡便に ヤIJ定できる 方法を確立した。さらに、口本人で頻度の高いCW 2D6*J〇の活性への影響をf卵らかにした。

木研 究は分子生物学 から薬物代謝学さらには臨床 薬理学に至る広範な分野で 極めて高<i甲 価される。本論文『 ヒトCW)2D6の新規遺伝子多 型の発見と遺伝子診断法の確立』に含まれる 研究成果は薬学にお ける基礎および応用のいず れにおいても優れており、博士(薬学)の学 位を受けるに充分値 するものと認めた。

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