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博 士 ( 工 学 ) 堺 井 亮 介

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 堺 井 亮 介

    

学 位 論文 題 名

    Macromolecular Helicity Induction and Chiral DiscriminationofPOlymerSBearingCrOWnEther     

( クラウ ンエーテ ルを有 するポ リマー のらせ ん誘起 と

    

不 斉 認識 に 関 す る研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ら せん 構造 は、 天然 ポリ マー の みな らず 合成 ポリ マー にも存在する重要 な高分子主鎖構造であ る。 特に 、一 方向 巻き らせ ん構 造 を有 する ポリ マー は光 学活性となるため 、その構造自体が分子 認識 や触 媒活 性な どの 特徴 的な 機 能性 を示 す。 従っ て、 一方向巻きらせん 構造を有するポリマー の分 子設 計、 精密 合成 、お よび 機 能評 価は 高分 子化 学に おける近年の重要 な課題である。ところ が、 らせ ん構 造が 一方 向に 制御 さ れた ポリ マー を合 成す ることは容易では ない。いくつかのらせ んポ リマ ー合 成法 が知 られ てい る が、 最近 らせ ん誘 起と 呼ばれる手法が開 発された。らせん誘起 は、 らせ ん構 造の 方向 が制 御さ れ てい ない ポリ マー を合 成した後、光学活 性ゲスト分子との相互 作用 を利 用し て、 一方 向巻 きら せ んを ポリ マー 主鎖 に誘 起するものである 。ここで最も重要なこ とは ゲス ト分 子と 相互 作用 する た めの 結合 部位 の設 計で あり、高感度、高 選択的ならせん誘起を 実現 する こと が期 待さ れる 結合 部 位の 設計 が昨 今求 めら れている。クラウ ンエーテルは様々な分 子設 計が 可能 な結 合部 位で あり な がら 、ク ラウ ンエ ーテ ルの相互作用を利 用したらせん誘起の報 告例 は極 めて 少な い。 そこ で本 論 文で は、 クラ ウン エー テルを有するポリ マーのホスト・ゲスト 相互 作用 に基 づく らせ ん誘 起を 達 成す るこ とを 目的 とし た。一方、特定の 結合部位をらせんポリ マー に導 入し 、こ こで の相 互作 用 を利 用し てら せん 構造 の機能性を発現さ せることは、らせんポ リマ ーの応用を図る 上で非常に重要である。そこで、らせんポ.リマーの実 用化の基盤的研究とし て、 クラウンエーテ ルがらせん状に配列されたポリマーの不斉認識を実現す ることも目的とした。

本論文は7章から構成されている。

第1章は序論であり、本研究の背景および目的について述べた。

  2章 で は、 側鎖 にク ラウ ンェ ーテ ルを 有す るポ リイ ソシ アネ ー ト(1)を 合成 し、 らせ ん誘 起 の 検 討 を 行 っ た 。 光 学 活 性 ゲ ス ト の 存在 下、1の円 二色 性(CD)ス ベク トル にお いて 、ポ リマ ー 主 鎖に 由来 する 波長 領域で 明瞭なコットン効果が観察された。一方、1の一量体に相当するモデル 化 合物 の場 合は 全く コッ トン 効 果が 観察 され なかった 。従って、ポリマー側鎖のクラウンェーテ ル と光 学活 性ゲ スト が相 互作 用 する こと で、 ポリマー 主鎖に一方向巻きのらせん構造が誘起され     ‑ 1005

(2)

たことが明らかとなった。1 のコットン効果の符号は用いる光学活性ゲストの絶対配置に依存して おり、また、その強度はゲストの添加量に依存していた。従って、1 のらせん構造は光学活性ゲス ト の 種 類 や 、 温 度 、 溶 媒 な ど に よ り 、 精 密 に 制 御 で き る こ と を 見 出 し た 。

  

3

章では、ポリマー主鎖上にクラウンェーテルを有するポリイソシアネート(2 )のらせん誘 起について述べた。オリゴオキシエチレン鎖を有する

a

,m ‑ ジイソシアネートモノマーがゲル化す ることなく環化重合し、溶媒に可溶な直鎖ポリマーが得られることを見出した。IH ,13C ,15N‑NMR 測定より、2 はクラウンエーテル環の一部が主鎖を兼ねるポリイソシアネートであることが明らか となった。また、光学活性ゲストの存在下2 の

CD

スベクトルにおいて、非常に大きなコットン 効果が観察された。従って、光学活性ゲストとの相互作用により、2 もまた一方向巻きらせん構造 を形成することが明らかとなった。また、一般にらせん構造の安定性は温度に著しく依存してい るが、2 のらせん構造は温度変化に対してほとんど影響されなかった。このことは、2 がゲストを 包摂しているとき、ポリマー主鎖のコンホヌーション変化が極めて制限されていることに起因し ている。

  

4

章では、側鎖にクラウンエーテルを有するポリアセチレン(3) のらせん誘起を検討した。

―30 ℃のような低温のとき、3 は光学活性ゲストの添加により一方向巻きのらせん構造を形成し、

明瞭なコットン効果を示した。このコットン効果の強度は温度に強く依存しており、温度が上昇 するにっれて強度は著しく減少した。特に、30 ℃以上でコットン効果は完全に消失した。このCD 強度の高い温度依存性は、3 のゲスト包摂能が温度に強く依存しているためであることが示唆され た。また、温度調節に基づく

3

のコットン効果の

on‑o

ぱスイッチは何度でも繰り返し可能である ことを見出した。

  

5

章では、異なる大きさのクラウンエーテルを主鎖上に有するポリアセチレン(4a および

4b)

を二種類合成し、得られたポリマーのらせん誘起について述べた。4a は

6

つの酸素原子からなる クラウンエーテルを有しており、4b では7 つである。オキシエチレン鎖を有するa .m‑ ジアセチレ ンの環化重合により、溶媒に可溶なポリマーを合成することに成功した。1H ,13C̲NMR 測定および ラマンスベクトル測定に基づく構造解析より、4a および

4b

の両者とも主鎖上にクラウンエーテ ルを有するポリアセチレンであり、その主鎖構造は立体規則的なシスートランソイダル構造であ ることがわかった。また、

4a

および4b 、さらに第3 章で記述した主鎖上にクラウンエーテルを有 するポリイソシアネート

(2)

のらせん誘起を比較検討することで、クラウンエーテルの大きさお よ び 主 鎖 構 造 が ゲ ス ト 包 摂 能 お よ び ら せ ん 誘 起 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に し た 。

  

6

章では、らせん状に配列されたクラウンエーテルの不斉認識について述べた。クラウンエ ーテルを有するイソシアネートモノマーを不斉開始剤により重合することで、一方向巻きらせん ポリマー(5) が得られた。5 の一量体のCD 測定などから、

5

の一方向巻きらせん構造はポリマー 末端に存在する開始剤残基のキラリテイーにより保持されていることが明らかとなった。また、

側鎖のクラウンエーテルはポリマー主鎖のらせん構造に並んでらせん状に配列されていることが

1006

(3)

わかった。そこで、5 の不斉認識能をラセミ体ゲストの液々抽出実験により評価したところ、5 は 明らかに不斉認識能を有していることがわかった。さらに、5 の不斉認識能は、クラウンエーテル が 一 方 向 巻 き の ら せ ん 状 に 配 列 さ れ て い る こ と に 基 づ く こ と を 明 ら か に し た 。

  

第7 章は総括であり、ホスト・ゲスト相互作用を利用したらせん誘起、およびらせん状に配列 されたクラウンエーテルの不斉認識についてまとめた。

1007

(4)

学位論 文審査の要旨

     学位論文題名

    Macromolecular Helicity Induction and Chiral Discrimination of Polymers Bearing Crown Ether

(クラウンエーテルを有するポリマーのらせん誘起と

    

不斉認識に関する研究)

近年の高分子合成の焦点として、主鎖に一方向巻きのらせん構造を有するポリマーの精密合成 および機能評価が挙げられる。しかし、高分子主鎖構造を精密に制御することは一般に困難で あり、一方向巻きらせんポリマーを合成するためには光学活性なモノマーや重合触媒の精密合 成が必要となる。最近になり、簡便ならせんポリマーの合成法のーつとして、らせん誘起が開 発された。これは、光学活性ゲスト化合物との相互作用を利用することで、ポリマー主鎖に一 方向巻きらせん構造を誘起する方法であり、様々なポリマーにおいて可能であることが明らか にされつっある。しかし、そのほとんどの検討において光学活性ゲスト化合物との相互作用に は酸・塩基相互作用が用いられており、新規な相互作用を利用したらせん誘起が今日強く求め られている。また、らせんポリマーは精密制御の観点からばかりでなく、この特徴的な構造に 由来する高度な機能発現の点からも興味深い。すなわち、近年のさらなる関心は、らせんポリ マーの構造を利用した、任意の官能基や機能性分子等をらせん状に配列制御することである。

しかし、このような検討はまだ極わずかであり、官能基のらせん状配列およびその機能評価は 今後の研究課題のーつである。

このような.背景のもと、本論文は、クラウンェーテルのホスト・ゲスト相互作用を利用したら せん誘起の確立、およびクラウンェーテルの一方向巻きらせん状配列に基づく不斉認識を達成 することを目的としている。

本 論 文 の 概 要 お よ び 評 価 で き る 成 果 な ど に つ い て は 以 下 に 要 約 さ れ る 。 筆者は、クラウンェーテルを有するポリイソシアネートおよびポリアセチレンを精密合成し、

1008

樹 夫

恒 憲

  

川 浦

覚 市

宮 大

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

光学活性ゲストとのホスト・ゲスト相互作用に基づくらせん誘起について検討した。それぞれ サイズや位置の異なるクラウンェーテルを導入した4種類のポリマーを、アニオン重合法、配 位重合法、および環化重合法を用いて精密に合成することに成功している。ポリマー中のクラ ウンエーテルと光学活性ゲスト間のホスト・ゲスト相互作用により、全てのポリマーが一方向 巻きのらせん構造を形成したことを明らかにした。また、誘起されたらせん構造の巻き方向は 光学活性ゲストの絶対配置によって精密に制御できることを見出した。著者は異なる分子設計 を施したクラウンェーテルをホストとして利用し、ホスト・ゲスト相互作用に基づくらせん誘 起を達成した。これら一連の検討において、新規なポリマーでのらせん誘起の検討にとどまら ず、クラウンエーテルの分子設計に特徴的な成果を導き出した点は評価に値する。例えば、オ リゴオキシエチレン鎖を有するa,(0‑ ‑官能性モノマーの環化重合により合成された、主鎖上に クラウンエーテルを有するポリマーのらせん誘起では、光学活性ゲストの直接的ならせん構造 の制御が達成された。また、クラウン・カチオン2:1錯体を形成するホスト、すなわち15― クラウン−5を側鎖に有するポリアセチレンでは、誘起されたらせん構造の構築と崩壊を温度の 調節により容易に制御できることを明らかにした。従って、本研究成果は、ホスト・ゲスト相 互作用に基づくらせん誘起の方法論を確立したとともに、新たな興味深い現象を見出し、関連 分野の研究領域の拡大に繋がるものである。

筆者はまた、らせん状に配列されたクラウンエーテルの不斉認識について検討した。不斉開始 剤を用いた、クラウンエーテルを有するフェニルイソシアネートモノマーの不斉アニオン重合 により、主鎖らせん構造と平行に側鎖のクラウンェーテルが一方向巻きのらせん状に配列して いるポ1jイソシアネートを合成することに成功した。また、液々抽出実験から生成ポリマーが ゲスト分子に対して不斉認識能を有していることを見出した。この不斉認識能はクラウンエー テルの一方向巻きのらせん状配列に起因することを明らかにした。本研究成果は、クラウンェ ーテルのような結合部位の一方向巻きらせん状配列、およびそれに基づく不斉認識を達成した 点で大変価値がある。また、この成果は近年盛んに合成されているらせんポリマーの高度利用 法の具体例を提示した。

これを要するに、筆者はクラウンェーテルを有するポリマーにおけるらせん誘起の方法論を確 立し、さらにはクラウンェーテルの一方向巻きらせん状配列に基づく不斉認識を達成した。す なわち、クラウンェーテルのホスト・ゲスト相互作用が一方向巻きらせん構造の構築および応 用の両面において有用であることを明らかにした。この成果は、光学活性ポリマーやホスト・

ゲストケミストリーのみならず、刺激応答性材料、センサー素子、分離・分割材料などの関連 分野の今後の発展に貢献するところ大なるものがある。

よ って筆 者は、 北海道大 学博士 (工学) の学位を 授与さ れる資格 あるも のと認め る。

1009

参照

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