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博 士 ( 医 学 ) 花 田 亜 希 子 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 花 田 亜 希 子

学 位 論 文 題 名

慢 性 心 不 全 患 者 の 局 所 骨 格 筋 代 謝 , 酸 素 動 態 と 運 動 耐 容 能 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

慢性心不全患者(以下CHF)の運動能低下は必ずしも心血行動態のみで決まるのではなく、

末 梢骨格筋機能に関連する といわれている。以前より31P磁気共鳴スペクトロスコピー (31P̲MRS)を用 いてCHFの 末梢 筋代 謝異 常が 証明 さ れ近 年で は近 赤外 線分 光法(NIRS) を 用い たCHFの 骨格 筋 酸素 化異 常が報告されている。我々はCHFの骨格筋代謝と酸素動 態の関係を明らかにする ため、最大下定常運動後の筋内酸化ヘモグロビン(oxy‑Hb)とク レ アチン燐酸(PCr)動態を健常者と比較し、これらの末 梢の指標と全身運動耐容能との 関係を調べた。

    方法

[ 対 象 ] 対 象 はCHF15名 ( 年 齢58土8歳 )と 健常 者16名( 年齢49土11歳 )。CHFの 心 駆 出分 画は29土13%で全員 拡張型心筋症であり、8名がNYHA ClassII、7名がclass III であった。

[ 全身 運動]座位自転車エ ルゴメーター(Lode社、Corvial 400)を用いた0watt3分間の ウ ォー ミン グア ッ プ後 、毎 分15wattずつ漸増するramp負荷運動中の呼気ガス分析(ミ ナ ト医 科学 社Aeromonitor AE‑280)を行い、運動中の最高酸素摂取量(peak V02)、及 びV‑slope法で嫌気性代謝閥値(AT)を計算した。

[局所運動]対象は臥位にて右下腿筋を用いた足関節底屈運動を行った。予め同じ装置で測 定した各 被検者の1 repetition maximum(1RM;一回だけ持ち上げられる最大重量)の50% を 負 荷 量 と し 毎 分40回 、6分 間 の 底屈 後、 回復 期6分 間に つい て31P̲MRSとNIRSの 測 定を行った。またMRIで下腿の最大筋断面積を計測した。

【 磁気 共鳴スペクトロスコ ピー: 31P̲MRS]測定にはBore径55cm、表面コイル径80cm、 1.5TeslaのMR装 置(Magnetom H15,Siemens社) を用 いた 。筋 内代 謝の 指標PCrは 無 機 燐Piとの 和で 除しPCr/ (PCr+Pi)と標 準化 した 。PCrの低 下度 は( 安静 時PCr‑運 動 終 了 時PCr)/ 安 静 時PCrで 表 し 、 筋 内pHはPCrに 対 す る 相 対 値 で示 したPiか らの 化 学シフト で計算した。PCr回復速度は 、回復期PCrに一次指数回帰 を行い回復時定数rPCr で評価した。

[ 近赤 外分光法: NIRS] NIRSはオムロン社製HE0100を 用い、被検者の腓腹筋内側頭に プローブ を固定して運動を施行させた。oxy‑Hbレベルは運動開始 とともに基線から低下 し、組織 の酸素需要と供給のバランス部分でプラトーに達する。 運動終了後のoxy‑Hb回 復 速度 はPCr同様、時定数てoxy‑Hbとして計算した。一 週間以内に同じプロ卜コールで 31P.MRSとNIRSの測定をそれぞれ行った。

[統計学 的分析]各測定項目は統計ソフトで処理し(Stat View‑J 4.21)それぞれの平均値 と標準偏差を求めた。平均値の差の有意性.は対応のないォ検定で行われ、pく0.05を有意と した。

‑ 411

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    結果

[ 全 身運 動] 最大心拍数、peak V02、AT、最大運動負荷量はCHF群 で有意に低かった。

[ 局 所運 動] CHF群で2名、健常群で1名が運動を6分間継続できな かったため、統計解 析 か ら 除 外 し た 。 、 筋 断 面 積 あ た り の 1RMは 両 群 で 差 は な か っ た 。 31P̲MRS]安 静 時 の 筋 内PCrとpHは 両 群 で 有 意差 はな かっ たが 、運 動終 了 時は いず れ の 指 標 もCHF群 で 有 意 に 低 か っ た 。 でPCrはCHF群で 有意 に延 長し 、ま た 両群 を含 ん だ 場 合 r PCrは ATと 有 意 に 相 関 し て い た ( R‑0.54, pく 0.01)。 [NIRS]roxy‑HbはCHF群 で 有 意 に 大 き く 、 両 群 を 含 む と でoxy‑HbはATと 有 意 に 相 関 し てい た(R ‑0.70,pく0.01)。

[31P̲MRSとNIRSの 比 較 ] てPCrとroxy‑Hbは 健 常 群 で は 近 似 し て い た が 、CHF群 で は てPCrがでoxy‑Hbよ りも 有意 に 延長 して いた 。さ らに 、CHF群と 健常群の間のでPCr の 差 はてoxy‑Hbの それ より も有 意に 大き かっ た。

    討議

以前我々はmetabolic freeze法と31P̲MRSを用いて全身運動の終点と骨格筋代謝の限界が ほば一致し、骨格筋代謝能が運動耐容能を規定する重要な因子であることを報告した。今 回 の実 験 では 、CHF群 のPCr再合 成お よび 筋内 ヘモ グロ ビン(Hb)再 飽和 速度 は健 常群 より有意に遅延していた。PCr回復速度は骨格筋の有酸素代謝能カをあらわしているとい われ 、こ れがCHFの全身運動耐容能 低下に関与していることが示唆される。また健常群 で はc PCrと でoxy‑Hbが近 似し 、Hb再 飽和 速度 がPCr再 合成 速度 に 合致 して いる こと が 推 測 さ れ た 。 一 方CHF群 の でPCrはroxy‑Hbより も有 意に 遅延 し てお りHb再飽 和速 度はPCr再 合成 から みた 筋内 代謝 回復速度の主要な決定要因で はない、っまりCHF群の 骨格筋の代謝回復遅延は酸素の運搬能カよりもむしろ、酸素利用能低下によるところが大 きい可能性がある。Hb再飽和速度は骨格筋内 の酸素化血流と骨格筋の酸素取り込みで決 まるといわれる。CHF群では骨格筋の運動後の酸素取り込み(酸素負債)が加速され、そ のためHb再飽和速度が遅延すると考えられる 。また、oxy‑Hb回復遅延のもうひとっの理 由として、運動後の筋内酸素化血流の低下があげられる。小筋群の運動中の骨格筋血流は CHF群であっても 正常に保たれるといわれているが、過去の報告での血流測定は静脈閉塞 型プレチスモグラフイーや静脈内カテーテルを用いており、非運動筋の血流も含めている かも しれ ない 。そ れに 対しNIRSは 運動に関わる局所筋血流のみを評価できると思われ CHF群 で は 運 動 筋 血 流 が 選 択 的 に 不 足 し て い た 可 能 性 も 示 唆 さ れ る 。     臨 床適応

今回の 実験結果から、CHFの骨格筋 代謝と酸素運搬能は末梢機能における2つの重要な因 子 であ ることが示唆され、31P̲MRSとNIRSの双方を個別に評価する ことにより各患者の 運動耐 容能低下が主に骨格筋代謝の異常によるのか、運動筋の酸素供給能低下によるのか を区別 可能かもしれなぃ。我々は以前、CHFでも心負荷が軽く安全な局所トレーニング実 験を施 行し、トレーニング後に骨格筋の運動時有酸素代謝能カや自覚的疲労度の改善を認 め た。 今後31P.MRSとNIRSの組 み合 わせ に より 、個 々の 患者の病 態に則して骨格筋代 謝能力 、また酸素運搬能を改善するような治療を効率良く選択し、運動耐容能改善に役立 てるこ とができるかもしれない。

    まと め

我々は慢 性心不全患者の運動耐容能低下の原因を検討するため局所骨格筋機能について検 討した。 まずmetabolic freeze法と31P̲MRSを用いて骨格筋代謝能カが運動耐容能を規定 する重要 な因子であることを示し、また、慢性心不全患者の局所トレーニング実験では骨 格筋の有 酸素代謝能力、自覚的疲労度の改善を認めた。今回の実験では、心不全群の運動 後PCr再 合 成 とHb再 飽 和 の 遅 延 が 証 明 さ れ 、 さ ら にoxy‑Hb回 復はPCr再合 成 の唯 一 の律速因 子ではないことが示唆された。っまり慢性心不全患者の骨格筋代謝回復は骨格筋 への酸素 運搬能よりもむしろ酸素利用能に依存しているのかもしれない。今後は慢性心不 全 患者 の運 動耐 容 能改 善の ため に31P̲MRSとNIRSを 用い た局所骨格 筋の評価によルト レーニン グ、内科的治療などの選択と評価が効率よくできる可能性があると考えられる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

慢性心不全患者の局所骨格筋代謝,

酸素動態と運動耐容能に関する研究

慢性心不全患者(以下CHF)の運動能低下は必ずしも心血行動態のみではなく、末梢骨格筋機 能にも規定されるといわれている‥我々はCHFの骨格筋代謝と酸素動態の関係を明らかにする ため 、最大下定常運動後のクレアチン燐酸(PCr)動態と筋内酸化ヘモグロビン(oxy‑Hb)を 測定し、全身運動耐容能との関係を調べたュ対象はCHF15名(NYHA ClassII―Inの拡張型心 筋症、58土8歳)と健常者16名(49土11歳)。座位自転車エルゴメーターを用いた毎分15watt の漸増負荷運動中の最高酸素摂取量(peak V02)、及び嫌気性代謝閾値(AT)を計算し、全身運 動耐容能の指標としたl、被検者は臥位にて右下腿筋を用いた足関節底屈運動を行った。各被検 者における最大随意筋カの50%を負荷量とし、毎分40回6分問の運動後、回復期6分間につい て、磁気共鳴スペクトロスコピー(31P.MRS)と近赤外分光計(NIRS)での評価を行ったュ3ip̲

MRSに はBore径55cm、表 面 コイ ル径80cm、1.5TeslaのMR装置を 用い、 骨格筋代 謝を測 定した。筋内代謝の指標PCrは無機燐Piとの和で除しPCr/ (PCr+Pi)と標準化した。筋内pH はPCrに対する相対値で示したPiからの化学シフトで計算した。PCr回復速度は、回復期PCr に一次指数回帰を行い回復時定数てPCrで評価した。NIRSは二波長の近赤外線を用いたポー タブル酸素モニターを使用し、被検者の腓腹筋内側頭にプローブを固定して運動を施行させた。

oxy‑Hbレベルは組織の酸素需要と供給のバランスで決定され、運動開始とともに基線から低下 する。運動後は酸素供給の相対的増加に伴いoxyHbが回復し、その速度をPCr同様、時定数 てoxy‑Hbとして計算し評価した,各測定項目は統計ソフトで処理し(Stat View‑J 4.21)それ ぞれの平均値と標準偏差を求めた.平均値の差の有意性は対応のないt検定で行われ、pく0.05 を有意とした。自転車運動中の最大´L剖C、peak V02、AT、最大運動負荷量はCHF群で有意 に低 かった。 また、 局所運動 ではCHF群で2名、健常群で1名が運動を6分問継続できず、

統計解析から除外した 筋断面積あたりの最大随意筋カは両群で差はなかった‥運動終了時の

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顕生 男

   

   

行和 畠野 坂 北 眞 宮 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

筋 内PCrpHCHF群 で 有 意 に 低 く 、 てPCrCHF群 で 有 意 に 延 長 し 、 ま た 而 群 を 含 ん だ 場 合r PCrATと 有 意 に 相 関 し て い た(r=‑0.54p0.01)。coxy‑HbCHF群で 有意 に 大 きく、而群を含むとr oxy‑HbはATと有意に相関していた(r二ニ,0.70,pく0.01)。てPCrとてoxy‑Hb は 健 常 群 で は 近 似 し て い た が 、CHF群 で はcPCrが てoxy‑Hbよ りも 有 意に 延長 して いた ‥ さ ら に 、CHF群 と 健 常 群 と の 間 の てPCrの差 はてoxy‑Hbのそ れよ りも 有 意に 大き かっ た, 以 前 我々 はmetabolic freeze法と31P.MRSを用 いて 全 身運動 の終点と骨格筋代謝の限界が ほば一致 し、骨格筋代謝能が運動耐容 能を規定する重要な因子で あることを報告した、今回の実験では、

骨 格 筋 の 有酸 素代 謝能 カ を表 すPCr再 合成 、お よび 酸 素供 給能 を表 す 筋内 ヘモ グロ ビン(Hb) 再飽 和はCHF群で 有意 に遅 延 して おり 、い ずれ も 全身運 動耐容能低下に関与している ことが示 唆 さ れ た っ 健 常 群 で はHb再 飽 和 速 度 がPCr再 合成 速度 に合 致 して いる と推 測さ れ たが 、CHF 群のc PCrは てoxy‑Hbより も さら に遅 延し てお り 、酸素 運搬能のみが骨格筋代謝回復 を遅らせ る唯 一の 律速 要素 で はな いこ とが推定された。また、我 々は以前、慢性心不全患者で 局所トレ ーニ ング 後に 骨格 筋 の運 動時 有酸素代謝能カや自覚的疲 労度が改善することを報告し た。今回 の結 果か ら、 てPCrroxy‑Hbを個 別に 評 価す るこ とに よ り各 患者 の運 動耐 容能低下 が主に骨 格筋 代謝 の異 常に よ るの か、 運動筋の供給能低下による のかを区別し、個々の患者の 病態に則 して 局所 トレ ーニ ン グ、 内科 的治療などの治療を効率良 く選択し、運動耐容能改善に 役立てる ことができる可能性がある

この 論文 は、 慢性 心 不全 患者 の局所骨格筋機能を詳細に 検討した研究として評価され 、審査員 一同 はこ れら の成 果 を高 く評 価し、大学院課程における 研鑽や取得単位なども併せ申 請者が博 士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

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参照

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