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博 士 ( 農 学 ) 佐 藤 義 和 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 佐 藤 義 和

学 位 論 文 題 名

乳 牛 の 行 動 動 作 の 運 動 力 学 的 分 析 に よ る    牛 舎 の 床 条 件 改 善 の た め の 基 礎 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 論 文 は , 総 ぺ ー ジ 数211ぺ ー ジ で ,6章 か ら な る 和 文 で 構 成 さ れ て い る 。   本研 究は, 乳牛の 飼養環 境に 関する 研究に っいて ,乳牛 の行 動動作 を運動 力学的 に分析して,

飼養環 境の 改善に 役立て ようと する, 新し い研究 アプ口 ーチで ある 。すな わち, 乳牛の横臥,起 立,歩 行に っいて ,その 特徴を 運動力 学的に分析し,家畜側からの床条件への要求を明らかにし,

床条件 の改 善を提 案した 研究で ある。

  緒論 では本 研究の 背景や 目的 ,およ び解析 方法の 意義, さら に既往 の関連 研究に っいて概説し ている 。

  第I章は, 乳牛 の行動 動作に 関する 運動 力学的 分析で ,「横 臥・起立に関する運動力学的分析」

と「歩 行に 関する 運動力 学的分 析」の 研究 結果に っいて 記述し てい る。す なわち ,乳牛をストー ルに係 留し 横臥・ 起立動 作を乳 牛が床 に与 える荷 重を中 心に運 動力 学的に 分析し た結果,横臥・

起立動 作時 に前膝 による 接地時 間が長 く, また体 重の40% を負 担して いるこ と,前 肢は後方に最 もすべ りや すいこ とが判 明した 。さら に, 後肢の 左右分 カは横 臥・ 起立動 作時に 共通して,おも に体の 外側 に向か って作 用する ことを 明ら かにし た。こ れらの 解析 結果を 基に, ストールの一般 的な形 状で ある前 部から 後部へ 向かう 一様 な勾配 は,両 動作時 の前 膝のす べりを 助長するため,

ストー ルの 前部を 逆勾配 にすべ きであ ると 提案し ている 。さら に, 後肢の 左右分 カは横臥・起立 動作時 に体 の外側 に向か って作 用する こと から, ストー ルの一 般的 な形状 である 外側に向かった 勾配よ り, 内側に 向かっ た勾配 にすべ きで あると 提案し ている 。

  また ,乳牛 の歩行 実験を 行い ,運動 力学的 な分析 によっ て, 歩行時 に乳牛 が床に 与える歩行荷 重や最 大蹄 圧の特 徴を明 らかに した。 すな わち, 歩行時 の鉛直 分カ は,前 肢で体 重の最大60%程 度,後 肢で 体重の 最大50% 程度 であっ た。こ れは前 肢が重 心に 近いた めであ る。前 後分カにっい ては, 前肢 分カに っいて は,前 肢と後 肢間 の差は 小さく ,制動 力・ 駆動カ は前後 肢が同等に担つ ていた 。左 右分カ は前後 肢とも 常に体 の外 側に向 かって 作用し ,前 肢では 前後分 カと近似の大き

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さで あ った 。歩 行 動作 時の 最 大蹄 圧は , 蹄負 面に お いて10kgf/面を 越える数値だった。 また,

大 き な 圧 カ は 蹄 負 面 に 集 中 し , 蹄 底 に は ほ と ん ど 圧 カ が 発 生 し な か っ た 。   こ れ らの 研究 か ら, 乳牛 は 左右 に大きな重心の移 動を行いながら歩 行していることが特 徴とし て明らかにな り,この結果から 次章で床条件の改善 法を検討した。

  第H章は , 異な る床 条 件に おけ る 乳牛 の歩 行 の研 究結 果にっいて記 述している。すなわ ち,床 条件 が 乳牛 の歩 行 動作 にど の よう な影響をおよぼす かを知るために, コンクリート床とそ の上に モミ ガ ラを 敷い た 床と の,2っの 異 なる 条件 に おけ る歩 様の観察,お よび歩行荷重の測定 を行つ てい る 。モ ミガ ラ を敷 くこ と によ って,コンクリー 卜床で発生する蹄 接地時の衝撃的荷重 がなく なり , さら に, 左 右方 向の 水 平分 カがコンクリート 床に比べ小さくな った。乳牛の歩行動 作中の 左右 方 向の 重心の変位を 推定した結果,コ ンクリート床で11〜14 cmで あるのに対し,モミ ガラを 敷い た 場合 には6〜  10cmに減少し た。モミガラを敷 いた床条件の方が 左右への重心移動の 少なぃ 歩き方をして いることが明らか になった。

  し た がっ て, モ ミガ ラを 敖 いた 床では,歩行時の 衝撃的な荷重がな くなり,左右への重 心移動 の少ない歩き 方するため,床条 件として望ましいと している。

  第m章は , 床の 硬さ お よび すべ り やす さを 測 定し ,こ れらの数値と 乳牛のストール利用 率につ いて 記 述し てい る 。す なわ ち ,重 錐を自由落下させ て衝撃荷重を測定 するタイプの床硬度 計を製 作し 床 硬度 を測 定 した 。そ の 結果 ,コンクリート, 木材,硬質ゴムマ ットが同程度で最も 硬度が 大き く ,軟 質ゴ ム マッ トは コ ンク リー ト など の数 値 の約1/2程 度で あり , 厚さ80mmのモ ミガラ は 約1/4程 度 で 最 も 小 さ か っ た 。 す べ り や す さ に 関 し て はJISA1407に 規 定 さ れた 「床 の す べり 試 験方 法( 振 子型 )」 に 基づ き,床すべり抵抗 係数を求めた。乾 いた状態の床すべり 抵抗係 数を比較する と,軟質ゴムマッ トが最も大きく,硬質ゴムマットとコンクリートが同程度であり,―

木材 の カン ナ面 が 最も 小さ い 値と なった。乳牛のス トール利用率と, この測定した床硬度 ,床す べり 抵 抗係 数と の 関連 を検 討 した ところ,床硬度が 小さく,床すべり 抵抗係数の大きい材 料の利 用率が大きい という結果であっ た。

  第IV章は ,パ ド ック の泥 ね い化 の発生原因と防止 対策に関する研究 結果にいて記述して いる。

パド ッ クの 泥ね い 化の 発生 原 因は ,蹄のこね返しに よる土の細粒化や ふん尿の土への混合 ,それ らに よ る透 水性 の 低下 ,牛 の 踏圧 による高密度化, 踏圧による土から の脱水,滞水状態で こね返 しを 受 ける こと に よる 土の 細 粒化 と軟化の進行,こ れらが繰り返し行 われることによって 泥ねい 化が発生する ものと推察した。

  ま た ,パ ドッ ク の泥 ねい 化 の防 止対策にっいては ,パドックの地表 面に展張したジオテ キス夕

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イルの泥ねい化防止効果にっいて検討した。地表面に展張したジオテキスタイルには,蹄のこね 返しの抑制による泥ねい化防止効果が認められた。しかし,ジオテキスタイルを展張した場合も ジオテキスタイルを展張しない場合の1/2程度の深さが泥ねい化した。面剛性の大きい材料を,

表面展張資材として用いることによって,さらに大きい泥ねい化防止効果が得られものと推察さ れた。

  第V章は総合論議で,I章および矼章で述べた乳牛の行動動作の運動力学的特徴を総合的的に 論議している。また,m章およびI章における検討結果を踏まえ,牛舎床条件の改善方策は,牛 の要求による評価および床自体の保全による評価の両者に適合するべきであると論述している。

  第V章は総括および結論である。I章からV章までの内容を総括するとともに,結論として,

行動動作の運動力学的分析結果から明らかになった床条件に対する牛の要求と,床条件の改善方 策を挙げるとともに,畜産施設研究における運動力学的分析手法の有効性にっいて述べている。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    堀 口 郁 夫 副 査    教 授    前 田    隆 副査   教授    朝日田康司 副査   教授    寺尾日出男

  本 論 文 は , 総 ペ ー ジ 数211ぺ ー ジ で ,6章 か ら な る 和 文 で 構 成 さ れ て い る 。   本研究は,乳牛の飼養環境に関する研究にっいて,乳牛の行動動作を運動力学的に分析して,

飼養環境の改善に役立てようとする,新しい研究アプ口一チである。すなわち,乳牛の横臥,起 立,歩行にっいて,その特徴を運動力学的に分析し,家畜側からの床条件への要求を明らかにす るとともに,床条件の改善を提案した研究である。

  緒論では本研究の背景や目的,および解析方法の意義,さらに既往の関連研究にっいて概説し ている。

  第I章は,乳牛の行動動作に関する運動力学的分析で,「横臥・起立に関する運動力学的分析」

と「歩行に関する運動力学的分析」の研究結果にっいて記述している。すなわち,乳牛をストー ルに係留し横臥・起立動作を乳牛が床に与える荷重を中心に運動力学的に分析した結果,横臥・

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起立 動作時 に前膝 による 接地時 間が 長く, また体 重の40%を負 担して いるこ と, 前肢は後方に最 もす べりや すいこ とが判 明した 。さ らに, 後肢の 左右分 カは 横臥・ 起立動 作に共 通して,おもに 体の 外側に 向かっ て作用 するこ とを 明らか にした 。これ らの 解析結 果を基 に,ス トールの改善案 を提 案して いる。

  また ,乳牛 の歩行 実験 を行い ,運動 力学的 な分析 によ って, 歩行時 に乳牛 が床 に与える歩行荷 重や 最大蹄 圧の特 徴を明 らかに した 。すな わち, 鉛直分 カは ,前肢 の方が 大きく ,前後分カにつ いて は,前 肢と後 肢間の 差は小 さく ,制動 力・駆 動カは 前後 肢が同 等に担 ってい た。左右分カは 前後 肢とも に常に 体の外 側に向 かっ て作用 し,前 肢では 前後 分カと 近似の 大きさ であった。これ らの 研究か ら,乳 牛は左 右に大 きな 重心の 移動を 行いな がら 歩行し ている ことが 特徴として明ら かに なった 。

  第H章 は , 異なる 床条件 におけ る乳 牛の歩 行の研 究結果 にっい て記 述して いる。 すなわ ち, コ ン クリ ー ト 床 と,そ の上に モミガ ラを 敷いた 床との ,2っの異 なる条 件に おける 歩様の 観察, お よび 歩行荷 重の測 定を行 ってい る。 モミガ ラを敷 くこと によ って, コンク リート 床で発生する蹄 接地 時の衝 撃的な 荷重が なくな り, さらに ,左右 方向の 水平 分カが コンク ルート 床に比べ小さく なっ た。し たがっ て,モ ミガラ を敷 いた床 は,歩 行時の 衝撃 的な荷 重がな くなり ,左右への重心 移動 の少な い歩き 方する ため, 床条 件とし て望ま しいと して いる。

  第m章tま,床 の硬 さおよ びすべ りやす さを 測定し ,これ らの数 値と乳 牛の スト― ル利用率につ いて 記述し ている 。すな わち, 重錘 を自由 落下さ せて衝 撃荷 重を測 定する タイプ の床硬度計を製 作し 床硬度 を測定 した。 その結 果, コンク リート ,木材 ,硬 質ゴム マット が同程 度で最も硬度が 大 きく , 軟 質 ゴ ム マッ ト は コ ン クリ ートな どの 数値の 約1/2程 度で あり, 厚さ80mmのモミ ガラ は 約1/4程 度 で 最も 小 さ か っ た。 す べ り や す さに 関 し て はJISの 「 床の す べ り 試 験 方法 ( 振 子型 )」に 基づき ,床す べり抵 抗係 数を求 めた。 乾いた 状態 の床す べり抵 抗係数 を比較すると,

軟質 ゴムマ ットが 最も大 きく, 硬質 ゴムマ ットと コンク リー トが同 程度で あり, 木材のカンナ面 が最 も小さ い値と なった 。牛の スト ール利 用率と ,この 測定 した床 硬度, 床すべ り抵抗係数との 関連 を検討 したと ころ, 床硬度 が小 さく, 床すべ り抵抗 係数 の大き い材料 の利用 率が大きいとい う結 果であ った。

  第IV章 は,パ ドッ クの泥 ねい化 の発生 原因と防止対策に関する研究結果にっいて記述している。

パド ックの 泥ねい 化の発 生原因 絃, 蹄のこ ね返し による 土の 細粒化 やふん 尿の土 への混合と,そ れら による 透水性 の低下 ,牛の 踏圧 による 高密度 化,踏 圧に よる土 からの 脱水, 滞水状態でこね 返し を受け ること による 土の細 粒化 と軟化 の進行 ,これ らが 繰り返 し行わ れるこ とによって泥ね

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い化が発生するものと推察した。また,パドックの泥ねい化の防止対策にっいては,パドックの 地表面に展張したジオテキスタイルの泥ねい化防止効果にっいて検討した。地表面に展張したジ オテ キ スタ イル には ,蹄 に よる ねり 返し 抑制 に よる 泥ね い化 防 止効 果が 認められた。

  第V章は総合論議で,第IV章は総括および結論である。

  これらの研究結果は,乳牛が接する床条件を乳牛の行動動作の運動力学的分析によって検討す る新しい研究アプロ―チであり,この結果や方法は,実用的にも学問的にも高く評価される。

  よって審査員一同は,別に行った学力確認試験の結果と合わせて,本論文の提出者佐藤義和 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

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