• 検索結果がありません。

強毒インフルエンザウイルス感染による 脳炎/脳症の実験病理学研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "強毒インフルエンザウイルス感染による 脳炎/脳症の実験病理学研究"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博 士 ( 獣 医 学 ) 朴    天 鎬 学 位 論 文 題 名

強毒インフルエンザウイルス感染による 脳炎/脳症の実験病理学研究

学位論文内容の要旨

  1918年に世界中で大流行したインフルェンザウイルス(スベイン風邪)は世界各地で猛威を 振るい、2000万人以上の命を奪った。また、1997年香港ではニワ卜りの間でインフルエン ザウイルスが大流行し、その後、同じ亜型(H5Nl)のウイルスがヒトからも分離され、トりか らヒトへの直接伝播が凝われるようになった。これらの強毒インフルエンザウイルスは何れも 病原性が高いが、トりと哺乳動物の間では全く異なる病態を示す。っまり、トりでは全身感染 を起こすのに対して、ヒトを含む哺乳動物では肺炎と脳炎が主な病理所見である。何れの感染 例においても甚急性の経過を示し、死亡率が高いため予防および治療は難しい。また、その病 変発生機序については十分に研究されていない。本研究では、まず、強毒インフルエンザウイ ルスをニワトル胚およびマウスに感染させ、ウイルスのターゲッ卜細胞並びに脳炎の発生機序 の違いを比較した。また、神経病原性インフルエンザウイルスがCNSで持続感染能カを獲得 できるかどうかについて検討した。

  第I章 では 、病原性の異なる強毒ウイルスA/tern/South Africa/61 (H5N3),A/whis‑

tling swan/Shimane/499/83 (H5N3; 24a5b),A/Hong Kong/ 483/97 (H5Nl),A/Hong Kong/156/97 (H5Nl)と 弱 毒 ウ イ ル スA/duck/Pennsylvania/10128/84 (H5N2)を ニワ トリ胚の尿膜腔内に接種し、感染初期のターゲット細胞並びにニワ卜リ胚の死因について調べ た。その結果、強毒ウイルスは最初に血管内皮細胞で増殖し、その後、全身の実質細胞に感染 していた。これに対して、弱毒ウイルスは尿膜上皮細胞には感染したが、血管内皮細胞および 実質細胞には増殖しなかった。また、強毒ウイルスに感染したニワトリ胚に尿膜の破綻や播種 性血管内凝固を示唆する病理所見がみられなかったことから、強毒ウイルスに感染したニワト リ胚の直接的な死因は、血管内皮細胞への初期感染後急速に拡大した全身性ウイルス感染が原 因であると考えられた。

  第H章 では 、 神 経 病 原 性 イ ン フ ル エ ン ザ ウ イ ル スA/Hong Kong/ 483/97 (H5Nl; HK483)を用 いてBALB/cマウスのCNSへの侵入経路について検索した。ウイルス感染マウ スの主な病理組織学的所見は、気管支炎、気管支問質性肺炎、神経節炎および脳幹部と胸髄に 主座する非化膿性脳炎および非化膿性脊髄炎であった。ウイルス抗原は中枢神経組織より先 に、あるいは同時期に翼口蓋神経節、三叉神経節および迷走神経近位神経節に検出された。

この結果から、HK483が呼吸器粘膜で増殖した後、遠隔に存在する三叉神経、迷走神経の両 者またはいずれか一方の求心性神経を上行して脳に侵入することが示唆された。さらに、脊 髄ではウイルス抗原が胸髄前部に最も早く検出されたほか、近隣の交感神経幹神経節および

1253

(2)

脊髄背根神経節にもウイルス抗原が検出されたことから、肺で増殖したウイルスが心肺内臓 神経を上行し、交感神経幹神経節および脊髄背根神経節を経由して胸髄前部に到達すると推 察された。また、感染初期の嗅粘膜並びに嗅球においてウイルス抗原が検出されたことから、

嗅神経を経由した脳内侵入経路も存在した。この実験によって、これまで報告された迷走・

舌咽神経を経由して脳幹に侵入する経路に加えて、新たに嗅神経、心肺内臓神経または交感 神経を上行して胸髄に侵入する経路が存在することがわかった。

  第 m章 で は 、 神 経 病 原 性 イ ン フ ル ェ ン ザ ウ イ ル スA/whistling swan/

Shimane/499/83 (H5N3; 24a5b)がマウス のCNSで持続 感染する か否かにつ いて検討し た。ウイ ルス接種20日後の感 染耐過マウ スをデキ サメタゾン(DEX)投与群とDEX非投与 群に分け、ウイルス接種後48日目まで経時的に病理組織学的検索を実施した結果、軽度の 問質性肺炎および非化膿性脳脊髄炎が認められたほか、脳幹と脊髄においてウイルス抗原が ウイルス 接種48日ま で少数例 から検出さ れた。ま た、RT‑PCR法で はDEX投与群 におい て、ウイルス遺伝子(HA,M,NP,NS,PA)が脳脊髄から持続的に検出された。一方、DEX 非投与群 ではウイ ルス接種20日後の脳脊 髄からMお よびNS遺伝子が各1例で検出された のみであった。以上の結果から、強毒インフルエンザウイルス感染マウスでは感染耐過後も 中枢神経系にウイルス抗原、遺伝子および病変が残存し、免疫抑制状態ではウイルス遺伝子 が高率に残存することが示唆された。

  本研究の結果、強毒インフルエンザウイルスはニワトル胚では最初に血管内皮細胞に増殖 し、血行性にCNSに侵入するのに対し、マウスでは血管内皮細胞での増殖はみられず、神 経向性にCNSヘ侵入することが明らかになった。前者は、インフルエンザウイルスの関連 が示唆されている小児型脳炎/脳症の病理発生に部分的に類似していた。また、後者では呼 吸器粘膜で増殖したウイルスが嗅神経および末梢神経(三叉神経、迷走神経、舌咽神経、心肺 内臓神経)を経由して嗅球炎、脳幹脳炎並びに脊髄炎を起こしており、特に、病変の分布が脳 幹領域に 局在して いたことからヒ卜の嗜眠性脳炎またはvon Economo脳炎および脳炎後 バーキンソン病にみられる脳幹部主座型の非化膿性脳炎に似ていることが推察された。また、

神経病原性インフルエンザウイルスの抗原、ウイルス遺伝子の一部、および病変が感染耐過 後免疫抑制したマウスのCNSで持続的に検出されたことから、インフルエンザウイルス感 染と関連が疑われている脳炎後脳症の病理発生を検討するうえで貴重な実験モデルになりう ると思われた。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   梅村孝司 副査   教授   喜田   宏 副査   教授   岩永敏彦

副査   助教授   中山裕之(東京大学)

学 位 論 文 題 名

強 毒 イ ン フ ル エ ン ザ ウ イ ル ス 感 染 に よ る 脳 炎 / 脳 症 の 実 験 病 理 学 研 究

  強毒イ ンフル エンザウ イルスは ニワト りとマウ スに異 なった中 枢神経(CNS)病変 を惹起 す るが、 それらの 病変発 生機序は 十分に 研究され ていな い。本研 究では、強毒インフルエンザ ウイル スをニワ トリ胚 およぴマ ウスに 感染させ 、ウイ ルスのタ ーゲット細胞並びに脳炎の発 生機序 の違いを 比較し た。また 、強毒 インフル エンザ ウイルス が持続感染するか否か検討し た。

  まず、 ニワト リ胚では 強毒ウイ ルスは 血管内皮 細胞で 最初に増殖し、その後、全身の実質 細胞に 感染した 。強毒 ウイルス に感染 したニワ トリ胚 の直接的 な死因は、血管内皮細胞への 感染後 急速に拡 大した 全身性ウ イルス 感染であ った。 これらの 所見は、血行性に脳へ到達し た強毒 インフル エンザ ウイルス が血管 内皮細胞 で増殖 して脳血 管関門を破壊し、その後、脳 実質を 冒すとぃ うニワ トりでの 成績と ほぽ一致 してい た。

  っ ぎ に 、強 毒 イ ンフ ル エ ンザ ウ イ ルス を 用 い てBALB/cマウ スのCNSへの侵 入経路に つい て検索 した。ウ イルス 抗原は中 枢神経 組織より 先に、 あるいは 同時期に翼口蓋神経節、三叉 神経節 および迷 走神経 近位神経 節で検 出された 。脊髄 ではウイ ルス抗原が前部胸髄に最も早 く検出 されたほ か、近 隣の交感 神経幹 神経節お よび脊 髄背根神 経節にもウイルス抗原が検出 された 。また、 感染初 期の嗅粘 膜並び に嗅球に おいて ウイルス 抗原が検出された。この実験 によっ て、これ まで報 告された 迷走・ 舌咽神経 を経由 して脳幹 に侵入する経路に加えて、嗅 神経、 心肺内臓 神経お よび交感 神経を 上行して 胸髄に 侵入する 経路が存在することが新たに わかっ た。

  最後に 、強毒 インフル エンザウ イルス がマウス のCNSにおいて 持続感 染するか 、また、 持 続感染 はマウス への免 疫抑制に 影響さ れるか否 かを検 討した。 その結果、免疫抑制群と非抑 制群に おいて、 脳幹と 脊髄に軽 度の非 化膿性脳 脊髄炎 およびウ イルス抗原が接種後48日まで 認めら れ、また 、RT―PCR法ではHA,M,NP,NS,PAおよぴPB1遺伝 子が脳脊 髄から検 出され た。以 上の結果 、免疫 抑制処置 をしな くても、 強毒イ ンフルエ ンザウイ ルスが マウスのCNS に持続 感染する ことが 明らかに なった 。

(4)

  本研究により、強毒インフルェンザウイルスのニワトリ胚およびマウスに対する病原性発 現機序の一端が明らかにされた。また、強毒インフルエンザウイルスがマウスのCNSで持続 感染することが示された。本研究は、強毒インフルエンザウイルスの病原性に関する新しい 知見を含んでおり、インフルエンザ脳炎/脳症の研究の進歩に貢献した。よって、審査員一 同は朴天鎬氏が博士(獣医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認める。

参照

関連したドキュメント

に澱(おり)が出るといっ た問題が出ました。その 後、泡 状の消 毒 剤が 販 売された際に、同様の実 験を行ったところ、同等

  けいれん重積型(二相性)脳症(AESD)は、二 相性のけいれん発作と遅発性拡散能低下を特徴と

 インフルエンザウイルスに関するサーベイラン スは、2010/2011シーズンから継続してきている。ほ ぼ A 型/H3N2 ウイルスのみであった2014/2015 シーズンから、2015/2016シーズンは

対照マウス及びクプリゾン短期曝露マウスの Iba1 遺伝子の発現量を示した.値は平均値±SEM で表示した

IgA 抗体によるインフルエンザウイルス感染防御 鈴 木 忠 樹,長谷川 秀 樹 国立感染症研究所 感染病理部 連絡先 〒

ち,脳幹部に主病変が存在する脳炎(以降,脳幹 主坐の脳炎, とする〉と L 、う共通点を持つのみで あった.

処理することにより、生活環境中 からウイルスを排除することを意 味する。4-1 で述べたように、ノ

今回の実験で は,野外 の巣牌か ら幼虫を採取 したので , P.l ar v ae以外 の細菌 による汚染 も み られた.表 1に示 した様 に ,1 日令の幼虫を