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ミツバチアメリカ腐蛆病の試験管内感染実験

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Academic year: 2021

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ミツバチ科学19(4):145-148 HoneybeeScience(1998)

ミツバ チアメ リカ腐姐病 の試験管 内感染実験

迫川 朋子 ・片岡 重明 ・片岡 敦子

中島 千絵 ・吐山 豊秋

セイヨウミツバチApismelliferaL.を用い

る養蜂家にとって,Paenibacillus larvae (旧 名 :Bacilluslarvae)と名付 けられた芽胞形成 菌によって引き起 こされるアメ リカ腐岨病 は, 従来多大な経済的損失を もた らしてきた.その ため, この病気の詳細を調べ るために行 った野 外での巣箱を用いた感染実験 に関 して,多 くの 報告がなされている, しか しなが ら,それ らの 報告では,一部矛盾 した結果を示 している.そ の原因は,それ らの研究者達が指摘 しているよ うに,働 き蜂 による巣房か らの死んだ幼虫のす ばやい除去 (共食 いによるといわれている, Woodrow,1942) や, 蜂群の生理的状態の季 節的変動や,実験中の人工的作業による蜂間の 分 業 の- - モ ニ ー の破 壊 (Kitaoka eta1., 1959)等であろうと推察 され る.言 い換えれ ば,その様な環境下の実験で,再現性のある結 果を得 ることは難 しいと考え られる. 一方,現在 までに,一部の養蜂学者達が, ミ ツバチ幼虫の女王蜂への試験管内での育成方法 の研究を進めてきた (Smith,1959;Shuelet a1.,1978;Rembold,1981;吉田 ら,1984).こ の研究 の第一段階は,試験管内での幼虫の育成 であるが,生殖能力を もつ女王蜂の羽化を目的 とするために,手技 は複雑な ものとなっている 今回の実験では,P.larvae を ミツ/ヾチの1 日令幼虫に感染 させ る,試験管内でのアメ リカ 腐姐病感染実験系の確立 を試みた.そのため, 今までの女王蜂への試験管内での育成方法をで きるだけ簡素化す ることにより,感染実験の結 果 に再現性をもたせ,高 い幼虫生存率を得 るよ うに した.また,1日令の幼虫 と,2日令や3日 令の幼虫のアメ リカ腐姐病 に対する感染率を比 べ,従来の知見 と比較検討 してみた.

方法

供試 ミツパ テ とその育 成方 法 今回の実験の ミツパテ幼虫は,当研究所内の 養蜂場で飼育 している蜂群の働 き蜂の幼虫を使 用 した.幼虫 は,1回に 40-100匹を使用前 に 巣箱か ら採取 し,野外へのアメ リカ腐姐病の汚 染を防 ぐため,一次的に滅菌 シャー レ内に入れ た生 ローヤルゼ リー上 に移 した. 幼虫用の餌 は,21% (wt/γol)凍結乾燥 ロー ヤルゼ リーを混ぜた9% (wt/vol)ショ糖液 と した. これは,生 ローヤルゼ リーを等張のショ 糖液でおよそ

1

.

5

倍 に希釈 したことになる. 幼虫 は5匹ずつ,幼虫用の餌0.6mlを入れた 直径3cmの滅菌 した ミニシャー レ内に浮か し た. シャー レはイ ンキュベー ターに入 れ温度 34℃,湿度 98%に維持 した.生存幼虫 は,6日 目まで24時間 ごとに新 しい餌 に交換 した.6 日令以上の幼虫 は,嫡化の始 まりである脱糞を 個体 ごとに確認す るため,個々に試験管に移 し 育成 した. これ らの作業 は,無菌的に行 った. 供試 菌 株 と感 染方 法 今回使用 したP.larvaeの株 は, Bg内でアメ リカ腐姐病を発症 した巣箱内の腐姐か ら分離 し たものである. この分離株を,∫-寒天培地を用 いて, 5%CO 2, 37℃下で 14日間培養 し, 約 80%の芽胞形成率を得て,芽胞を集め,約 3× 107spore/mlの濃度 にな るよ う生理食塩水で 浮遊液を作 り,-80℃で使用時 まで保存 した. 感染のために,1日令の幼虫を4グループに

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146 表1 ミツバ チ 1日令幼虫のアメリカ腐姐病試験管内感染 感染芽胞数 /餌1m 0 102 103 104 供試幼虫数 106 82 110 95 摂取芽胞数推定値 /幼虫1匹 0 0.13 1.3 13 4日令時生存数 (%) 86(81) 36(44)*** 35(32)*** 17(18)*** 7日令時生存数 (%) 71(67) 35(43)*** 18(16)*** 2(2)*** 脱糞数 (%) 51(48) 23(28)** 11(10)*** 1(1)*** P.larvae検出数 (%) 0

(

0) 14 (17)*** 62(56)*** 74(78)*** P.larvae以外の菌の検出数 (%) 0

(

0) 1(1) 0

(

0) 1(1) P.larvae生菌数の幾何平均/匹

-

7.7Ⅹ102 1.1Ⅹ104 1.7xlO3 P.Larvae生菌数の範Bfl/匹 2.OxlO2-6.0Ⅹ103 1.0Ⅹ102-6.4xlO6 1.8xlO2-4.7Ⅹ106 0(対照)グループと有意差有り (**:P<0.01;*** 分 け,P.larvaeの芽胞を混ぜた餌上 に移 し,24 時間だけ感染 させた.餌 中の最終的な芽胞濃度 は,それぞれ 0(対照),102,103,104spores/ mlとな るよ うに調製 した.育成期間中 に死 ん だ幼虫 と,脱糞後殺処分 した幼虫 は,滅菌生理 食塩水 でホモ ジナイズ し,段階10倍希釈 を行 った.各希釈液を

J

-

寒天培地で,5%CO 2,37℃ 下で48時間以上培養 し,P.larvaeであること を同定 し,幼虫1匹当 た りの生 菌数 を算 出 し た.また,P.larvae以外 の菌の汚染状況 も調べ た . 2日令の幼虫 は5グループに分 け,0(対照), 102,103,104,105spores/mlの芽胞濃度 の餌 で24時間感染 させた.また,3日令 の幼虫 は2 グループに分 け,0(対照),106spores/mlの芽 胞濃度 の餌で感染 させ, 1日令 と同様 に観察 を 行 った. 統計解析 今回の実験 の目的が感染実験系の確立である ことか ら,結果 に客観性 を もたせ るために,統 計解析 を行 った. 1日令幼虫の感染実験の各 デ ー タは x2検定 を用 いて,対照 グループと比較 した.2日令幼虫 の感染 実験 の各 デー タは x2 検定を用 いて, 1日令 の同 じ芽胞濃度 の餌で感 染 させたグループのデータと比較 した.

結果

1日令 幼 虫 の感 染 実 験

1

日令幼虫 の感 染実験 の結果 を表 1に示 し た.感染 させた全ての グループで,幼虫の 4日 令時 と7日令時の生存率 と脱糞率が,対照 グル ープと比 べて低下 し,P.larvaeの検 出率 が増 P<0.001) 加 した (P<0.01). これ らの変化の程度 は,感 染 させた芽胞 の数 に依存 した.育成期間中に死 んだ幼虫内のP.larvaeの生菌数 は, 同 じグル ープ内で もバ ラツキが大 きか ったので, グルー プごとの生菌数の幾何平均 は,感染 させた芽胞 数 に依存す る傾向を示 さなか った. また,幼虫 の死亡時期 も,感染 させた芽胞数 に依存 してい なか った.ただ し,試験管内で育成 した幼虫 は, 野外 で飼 われて い る幼虫 の ほとん どが6日令 で脱糞す る(Crane,1990;Morse,1990)のに 比べて遅 く,多 くは7日令 に行われ,時折 8日 令 に,希 には11日令で観察 された. P.larvae以外 の細菌 は,実験 に使 った393 匹の幼虫の うち2匹か ら検 出された. 2日令 お よ び3日令 幼 虫 の感 染 実 験 2日令幼虫の感染実験 の結果 は,表 2にまと めた.感染 させた全ての グループで,幼虫の7 日令時の生存率 と脱糞率 が,対照 グループと比 べて低下 し,P.larvaeの検出率が増加 した.感 染 させた幼虫 の多 くが5日令時 に死んだため, 4日令時の生存率 は, 感染 グループと対照 グル ープで有意 な差 は認 め られなか った. 1日令幼虫への感染実験での感染 させた芽胞 数が同 じグループ同志で データを比較 したとこ ろ, 103および104spores/ml感染 させたグル ー プ に お け る7日 令 時 の 生 存 率 と, 104 spores/mi 感染 させた グループのP.larvaeの 検 出率 は統 計 的 に有 意 な差 を示 した (P< 0.05).つま り,1日令の幼虫 は2日令の幼虫 よ りP.larvaeに対 す る感 染 の感受 性 が高 か っ た.また,P.larvae以外 の細菌 は,実験 に使用 した314匹の幼虫の うち8匹か ら検出された.

(3)

ilFii 表2 ミツバ チ2日令幼虫のアメリカ腐姐病試験管内感染 感染芽胞数 /餌1m1 0 102 103 104 105 供試幼虫数 60 62 61 63 95 摂取芽胞数推定値 /幼虫 1匹 0 0.36 3.6 36 360 4日令時生存数 (%) 52 (87) 48 (77) 52 (85) 38 (60) 57 (84) 7日令時生存数 (%) 48 (80) 32 (52) 19 (31)

*

8 (13)

*

7 (10) 脱糞数 (%) 19 (32) 15 (24) 11(18)

*

6 (10)

*

4 (6) P.larvae検出数 (%) 0

(

0) 5 (8) 30 (49) 34 (54)

*

44 (65) P.larvae以外の菌の検出数 (%) 2 (3) 3 (5) 2 (3) 1(2) 0

(

0)

P larvae生菌数の幾何平均 /匹 3.6xlO3 2.4x103 1.2x104 3.4xlO3

P_Larvae生菌数の範囲 /匹 1.2Ⅹ102 1.2Ⅹ102 2.OxlO2 2.OxlO2

-4.6Ⅹ105 -1.5xlO5 -4.8Ⅹ105 -6.8xlOJ 1日令幼虫への感染実験で,感染させた芽胞数が同じグル-プと有意差有り (*:P<0.05) 3日令幼虫の感染実験 の結果 は表3にまとめ た様 に,対照 グループよ り感染 させたグループ の方が7日令時の生存率 は低か ったが,感染 さ せた幼虫か らも全 くP.larvaeは検 出されなか った.また,P.larvae以外の細菌が,対照 グル ー プの幼 虫 の10%,感 染 させ た グル ー プの 15%で検 出された.

まとめ

表1, 2に示 したよ うに, 試験管内での感染 実験 によるアメ リカ腐姐病の発症 は明 らかであ る.育成条件 において,野外 と試験管内 とでは い くらか差 はあ るが, この疾病 の研究 のため に,試験管内の感染実験 は可能で ると考え られ た . 1日令 の幼虫 は2日令 の幼虫 よ りP.larvae に対す る感染 に対す る感受性が高 く, 3日令 の 幼虫 はP.larvaeに対す る感受性 がなか った. これは,Bailey and Lee(1962)が,野外の巣 箱 の個 々の巣房内のゼ リー中に芽胞 を注入 させ た方法で行 った感染試験 と,同様 の結果 とな っ た. さらに,今回の感染実験では,感染率 は餌 中の芽胞数 に依存 していた. しか し,野外の感 染 実 験 に お い て は, W oodrow (1942)や

Hoageand Rothenbuhler(1966)は,死亡率 や細菌の検 出率 は摂取 させた芽胞数 に依存 した 結果 を報告 しているが,Kitaokaetal.(1959) の報告では一部 その傾向のない ものだ った. 今回の実験で は,野外 の巣牌か ら幼虫を採取 したので,P.larvae以外 の細菌 による汚染 も み られた.表 1に示 した様 に,1日令の幼虫を 使用 した実験では, 使用 した幼虫の1%以下の 汚染であ り,巣牌か ら採取 した幼虫の 日令が進 むに連れ, 汚染率 も増加 した. したが って, 1 日令の幼虫を使 えば,簡易的な無菌操作で,充 分 に汚染を最少限に抑 え ることがで き,試験結 果 に影響 を及 ぼさないもの と考え られた. これまでの,個 々の巣房内のゼ リー中に芽胞 を注入 させ る感染実験で は,注入 させた芽胞数 が報告 されている.今回の実験で も, 1幼虫当 た りが摂取 した芽胞数を,それぞれの感染 させ たグループの餌中の芽胞 の濃度 と,育成開始後 24時 間 の体重 増加 量 の平 均 とか ら算 出 した (表1,2).その結果, 102spores/ml感染 させ た グルー プの1幼虫 当た りの摂取 した芽胞数 は,0.026個 と非常 に低か った.しか し,このグ ループの死んだ幼虫か らのP.larvaeの検 出率 は17%もあった.この原因は,庶糖液を使 って 衰 3 ミツパテ3日令幼虫の腐姐病試験管内感染 感染芽胞数 /餌1m1 0 106 供試幼虫数 40 40 摂取芽胞数推定値 /幼虫1匹

0

15000 4EI令時生存数 (%) 39 (98) 39 (98) 7日令時生存数 (%) 38 (95) 26 (65) 脱糞数 (%) 28 (70) 18 (45) P.Larvae検出数 (%) 0 (0) 0 (0) P.Larvae以外の菌の検出数 (%)4 (10) 6 (15)

(4)

148 行 った浮遊法によると,幼虫 (1.00)および芽 脂 (1.022)の両方の比重 は餌 (1.1)の比重 よ り低 いため,餌中で幼虫および芽胞の両方が表 面に浮 いて,接触 しやすい状態にあったためで はないかと考え られた. したが って,今回のデータは,試験管内での ミツパテ幼虫に対す るアメ リカ腐姐病の感染実 験 は,今後,その病気の機序や予防および治療 薬の効果等を調べたりす る上で有用であること が示唆 された. また,別 の試験では, 1日令の 幼虫が成蜂に羽化するまで育成 させる過程を含 んだ実験 も行 っており,アメ リカ腐姐病に関す る研究を進めていきたいと考えている. 謝辞 本研究 は日本畜産振興事業団の助成 によるも である. また,技術的な指導を して下 さった玉 川大学吉田忠晴先生 に深 く感謝 いた します. (〒229-1132 相模原市橋本台3-7111 財団法人 畜産生物科学安全研究所) 引用文献 東 畳三 .1992.ミツバチ科学 13:97-110.

Bailey,L.andD.C.Lee.1962.J.GeneralMicr o-biol.29:711-717

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Hoage,T.a and Rothenbuhler WC.1966.J. Econ.Entomol.59:42-45.

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Day-Old larvaeofApismelliferla in thefield hivesweretransferred ontodiluted royaljelly contalning spores ofPaenibacillus larvae,the causative agentofAmerican foulbrood (AFB),

in asmallculturedish,keptin an incubator and fed for24 h.Thelarvaeweretransferred everydayontothefreshjellywithoutsporein a new dish untilthe beginning ofthe pupal stage.Mortalitiesoflarvaeby4-day-olda nd7-day101dandisolation ratesofP.larvaeindead larvae increased in relation to thenumberof sporesinthefood.A lowersusceptibilit yof2-day-oldthanday-oldlarvaeandnosusceptibili -ty of 3-day-old larvae to the infectlOn Were observed.The possibility ofcontamination by otherbacteriathanP.larvaeseemedtoincrease withagewhenlarvaewereplCkedupfrom the combs.Using day-old larvaeand the conve n-tionalasepticprocedures,invilroexperimental infectionofAFB ispossible.

参照

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