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ハムスターを用いて行つた日本脳炎の病毒実験

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23 (東京女医大恥 第25巻 第8号頁315−318昭和30年8月)

ハムスター一be用いて行つアこ日本脳炎の病毒実験

東京女子医科大学細菌学教室 (主任 平野憲正教授)

助教授 中

ナカ 福 フク 小 オ 西 9シ 永 ナが 野 ノ 清 キヨ 慶 ケイ

シコーウ (受付

昭和30年3月29目)

コ ン Schabelは脳炎に罹患して発病したマウスの 脳をハムスターに飼食させる事により,容易に脳 炎に感染させる事が出来たと癸表している。ハム スターは諸種の病原菌やビールスに対して,他の 小動物に比較すると感受性が大であると云われて いるので,私共は日本脳炎病毒の研究をハムスタ ー・ 用いて行ってみたQ嘗て当教室に於て小山が 日本脳炎病毒の普遍性を研究し,病毒は不潔な塵 埃と往k’共存する事を証明したので,私共は小山 の実験と同様な方法でハムスターに就ての実験の 継続を志したが,ハムスd7 一一の親は出産後,寝わ らを取替える事により興奮して仔を噛み殺すの で,無菌的飼育は不成功であった。そこで普通の 方法で飼育したハムスターに就て腸管及び腸内容 に於ける日本脳炎病毒の検索と血清に於ける補体 結合反応とを行い,またハムスターに於て日本脳 炎病毒の塵埃伝染及び飛沫伝染が実験的に成立す るや否やを試みた。実験に用いた日本脳炎病毒は 総て中山株である。 実 験 1{ 普通の方法で飼育したハムスタymの腸管及び 腸内容に於ける日本脳炎病毒の検索 生後半年から1年の体電10⑪∼1209の雄のハ ムスター10匹をエーテルで殺し,腸管を細切,腸 内容と共に109を乳鉢で磨回し,普通ブイヨv30 ccを加えて乳剤を作り,300rpm 30分間,遠心沈 澱し,その上清をベルケフエルドNで濾過し,そ の濾液0.025ccを89前後の10匹宛のマウスの脳 内に接種したが,発症マウスは全然認められなか った。それ故にハムスターの腸管及び腸内容には マウスと異り,脳炎病毒は自然には存在しないの ではないのだろうかと考えられる。 実 験 童 普通の方法で飼育したハムスタ・・血清に於け る補体結合反応 生後3ヵ月のハムス、ター一 28匹の1血清を56。Cで 20分聞加温して非働性とし,これを1:2より 1:16まで稀釈して使用した。抗原としては日本 脳炎病毒中山株より作ったもの,溶.疽係としては 山羊.血球及びそれで免疫した家兎免疫一血清を使用 し,Casalsの術式によって補体結合反応を行っ た。その成績はハムスター28匹の晦れに於ても陰 性であった。 実 験 ]Ji 発症マウス脳の乾燥粉未をハムスターに吸入 せしめた実験 発症マウス脳を無水燐酸入りのデシケーターで 16∼20日間乾燥させ,それを乳鉢に入れて磨砕 し,粉未:にしたものを生後13∼23日のハムスター の鼻腔に入れ更に撒粉器で鼻腔内に充分吸人され る様に言式みた。

A,第1群の実験成績

第1群のハムスターは生後23日のものであって 10匹使用し,.L記の方法で実験したが,その成績 は表1に示す様に:No. 1, No.2及びNo.4が 9日から12日の間に発症して死亡した。No.3は 11日後に,No.5は14日後に発症した。これらの 動物はエーテル温語で殺して脳を摘出し,一部を 普通ブ■ヨンで10倍乳剤とし,0.025ccを8鍔前 後の5匹のマウスの脳内に接種し,他の一部は病 理標本とし,その変化を観察した。 それによるとハムスター:No.2, No.4及び 一 31b’ 一L

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24 No.5に於ては1血管周囲の細胞浸潤及びダリア 細胞の増殖等が認められたがNo.1の変化は不 鮮明であり,No、3に於ては全く変化を認める事 が出来なかった。

ハムスターNo.1からNo.5迄の脳乳剤を接

種:したマウスは,直れ,も4日から5日にかけて定 型的に発症した。:No・1, No.2及びNo.4のハ ムスターの脳乳剤を接種して発症したマウスに於 ては’病理組織学的に定型的の日本脳炎の病変が認 められ,No.5のそれに於ては不鮮明,:No。3の それに於ては全然認められなかった。 猶:No,6からNo.10迄のハムスターは発症 しなかったので実験30日後に補体結合反応を試み た。その結果No.7のハムスタ ・一 ta於ては1血清稀 釈1:2に於て陽性成績がみられ疫。

B,第2群の実験成績

第2群のハムスfi 一一は生後13日のものを5匹使 用し,第1群と同様な方法で実験したがその成績 は乾燥病毒を吸入せしめてから7日より22日後に 表 3匹のハムスターが発症して死亡し,2匹は生存 した。死亡ハムスターに就ては第1群に於けると 同様に,脳の…部は病理標本とし一部をマウスに 接種した。 ハムスfi ・一の脳の病理標本ではNo.1に於て日 本脳炎の定型的病変がみられたが,No. 2に於て は不鮮明,No.3に於ては全く認められなかっ た。ハムスターの脳乳剤をマウスへ接種した成績 は接種後4日から5日にマウスが溌症して死亡し た。これらのマウスの脳の病理標本.に干て,No. 1の脳乳剤を接種:したマウスには,定型的の病変 がみられ,No.3の脳乳剤を接種したマウスに於 ては不鮮明,No.2の脳乳剤を接種したマウスに 於ては全く病変が認められなかった。 No.4, No.5のハムスターは何等の症状も呈 する事なく発育したので,実験30・日後に採血し, その一血清に捨て補体結合反応を行った。をの成績 はNo.5の一血清稀釈1:2に於て陽性を示し, No.4に於ては陰性であったo 1 日半脳炎発症マウス脳の乾燥粉末をハムスターに吸入せしめた実験 ノ、 ム ス タ 1 番 号 第 1 群 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 死 亡 日 夢 9 日 後 10 日 後 11 日 後 (エーテル) 12 目 後 14 日 後 (エーテル) 生 生 生 生 生 存 存 存 存 存 1 第 2 2 3 4

1群 5

Lr

7 日 後 10 日 後 22 日 後

生 存

生 存 ハ 病 ム 理 ス タ 的 1 変

脳化

土 十 十 十 士 マ ウ ス 発 症 数 5/5 5f5 3f3 5f5 6/6 6/6 5/5 4/4

ハ 接病

斐蓮理

・奪的

彪宴変

を 脳 化 十 十 十 土 十 ± 補 体 結 合 反 応 十 (1 : 2) 十 (1 ; 2) 感 染 判 定 十 十 ? 十 十 十・ (不二三) 十 ? ? 十 (不顕性) 以上の実験によって脳炎マウスの乾燥脳の粉末 をハムスターに吸入せしめると,これらの動物が re o”P6 pm

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25 脳炎に罹患する事が明かとなった。且,発症しな かったハムスターのうちにも補体結合反応が陽性 に現れ,るものがあったので不顕性感染の存在が疑 われ.る。 .案 験 IV 発症マウス脳乳剤を寝わらに噴霧しそれにハ ムスターを飼育した実験 発症マウスの脳を生理的食塩水で10倍の乳剤と し,それの20ccを寝わら1509に噴霧:し,その 中に生後20日前後のハムスターを3匹入れ,対照 としては同期のハムスター3匹を普通の方法で飼 育した。その結果は表2に示す如ぐNo.1が4日 後に,No.2が10日後に, No.3は14日後に発 症して死亡し,対照は3匹執れも生存した。発症 後死亡したハムスターの脳の一部はマウスの脳内 に接種し,他の一一部を病理標本に使用した。 皇 ・¥ 奪 表 2 日本脳炎発症マウス脳乳剤を噴霧した 寝わらにハムスターを飼育しtこ笑験 死 亡 実 1 験 2 群 3 対 1 照 2 群 3 日

4H後

10日後 14日後 生 存 生 存

生存

ハ病1一“

・副・

ス ス

・的

i

1変i症

脳化陣

十 十 4f4 5/5 5/5

ハ接病

ム種

スせ理

噂的

、曜変

を丁丁

十 十 省 略 感 染 判 「走 十 十 十 病理組織学的に及びNo.2No.3に於ては日本 脳炎の病変が認められ,No・ 1に於ては証明され なかった。 No.1,:No.2及びNo.3のハムスク・一・・の脳 乳剤を接種したマウスは由れも4日から7日の聞 に発症した。これらのマウスの脳の病理標本に於 て,ハムスターNo.1及びNo・2より接種したマ ウスには病変が認められた。No. 3脳乳剤を接種 したマウスに於ては病理組織学的変化の観察を省 略した。 実 験 V 発症マウス脳乳剤を噴霧し乾燥させた寝わら にハムスターを飼育した実験 実験Wの方法で作った血症Vウス脳乳剤を寝わ らに噴霧し,室温で5.日間,自然に乾燥せしめ, その中に生後2週のハムスターを飼育して,脳炎 に感染するや否やを実験した。ハムスターは7群 28匹を使用し,普通の方法で飼育した4匹を対照 群とした。その結果湿れのハムスターも罹患しな かったので,30日後に採血し,補体結合反応を試 みたが総て陰性に終ったQ 実 験 vr 発症マウス脳乳剤乏噴霧し低岨面乾燥せしめ た寝おらにハムスターk飼育した実験 実験IV, Vの材料と同様な方法で作った発症マ ウス脳乳剤を寝わらに噴霧/.t,此を無水燐酸入り のデシ・e・ ・一ターに納め,4℃の電気冷蔵庫に4 日間おいて乾燥させた寝わらの中に生後2週越ハ ムスターを飼育し,此等のハムスターが脳炎に罹 患するや否やを実験した。ハムスターは9群54匹 を使用し,猶普通の方法で飼育した5匹を対照と した。その成績は実験Vの成績と同様,敦れのハ ムスターも罹患しなかったので,30日後に採」血 し,補休結合反応を試みたが,総て陰性であっ た。 総括及び老按 小山は不潔な:方法でマウスを飼育して,その腸 内容に日本脳炎病毒を認めたが,私共は普通の方 法で飼育したハムスターの腸管及び腸内容に日本 脳炎病毒を認める事が出来なかった。そこで普通 の:方法で飼育したハムスター・’の血紅に就て,補体 結合反応を試みたが,総て陰性であった。以上の 実験がらハムスターの間には,マウスの場合と異 り日本脳炎の自然感染はないものの様に推察され る。 次に日本脳炎の感染経路の究明の一一一一助として, ハムスターを用いて日本脳炎病毒の塵埃感染及び 飛沫感染の実験を試みた。即ち日本脳炎発症マウ ス脳の粉末をハムスターの鼻腔に吸入せしめる事 により,日本脳炎の感染がみられ,また日本脳炎 罹患マウス脳乳剤を噴霧:し,湿潤した寝わらに, ハムスターを飼育する事により,脳炎:に罹患せし める事が出来た。然し脳乳剤を噴霧後,室温或は 4QCの電気冷蔵庫の中で乾燥させた寝わらに飼 育しfcハムスターに於ては感染をみなかった。依 って日本脳炎病毒は,寝わらに噴霧後,乾燥させ 一 317 一.

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26 る事によって,如何なる機転によってか不活化さ れるものと考えられる。 結 論 1)普通の方法で飼育したハムス、タ・一一の腸管及 び腸内容には日本脳炎病毒を認める事が出来なか った。 2)普通の方法で飼育したハムスタ 一一 tc就て日 本脳炎病毒との補体結合反応を行ったが陰性であ った。 3) 日本脳炎遜症マウス脳を乾燥後,乳鉢で粉 末にして,ハムスターの鼻腔内に吸入せしめる事 により感染可能であった。 4) 日本脳炎発症マウス脳乳剤を噴霧した寝わ ら中に飼育したハムスターに於ては:感染がみられ た。 5) 日本脳炎発症vウス脳乳剤を噴霧した寝わ らを室温で乾燥させ,その中でハムスターを飼育 しブヒ際には感染がみられなかった6 6) 日本脳炎発症マウス脳乳剤を噴霧した寝わ らを4QCの氷室内で無水燐酸を入れて乾燥し, その中でハムスタP一を飼育した際にも室温乾燥の 場合と同じく感染がみられなかった。. 本研究1こ際し御懇篤なる御指導と御校閲を賜った恩 師平野教授に衷心より感謝の意を表,し併せて病理組 織学的研究に於て御教示をうけた今井教授に対し深甚 の謝意を捧げる1 筒本研究は文部省科学研究費に負うところ大であ る。ここに厚く謝意を表する。 (本稿の前半は昭和27年4月,後半は28年5月,日本 細菌学会に於て報告したものである。) 女 献

1) Casals, J. and Palacius, R.:J. Exp. Med.

74 409−426 (1941)

2)小山千代:日本細菌学雑誌23(昭和22)

3) Schabel, F, M. Jr:J. lnf. Dis. 88 32−49

(1951)

参照

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