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博 士 ( 工 学 ) 島 弘 幸 学位論 文題名 Correlation effects of interacting quantum rotors: Low temperature anomalies and orientation control

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 島

  

弘 幸

    

学位論 文題名

Correlation effects of interacting quantum rotors:

Low temperature anomalies and orientation control

( 相互作用 する量子回 転子の相 関効果: 低温異常 と配向制 御)

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  生体分子モーターの回転運動が直接観測されて以来、単一分子・原子の回転励起を技 術的に応用する試みが近年盛んに行われている。特に、固体内に含まれる極性分子の回 転運動を制御することが出来れば、電気分極の反転動作を利用した様々なナノスケー ル・デバイスの開発が期待できる。一方、量子レベルにおける回転素励起は、環状分子 内の電子状態や凝縮相の渦状態など、様々な物理階層で実現されるため、学術的な問題 としても非常に興味深い。例えば、光パルス変調を受けた量子回転子の動的状態に対し ては、量子化学や量子カオスの観点から精力的な研究努カが続けられている。また、多 数の量子回転子がお互いに相互作用を及ぼしあう系―相関量子回転子系一では、温 度降下に伴いダイポール・グラスや強誘電相が発現することが理論的に示唆されており、

実験的な検証が期待されている。

  一般に、ナノスケールで実現される量子回転子の回転スペクトルは、数ケルビン程度 のエネルギースケールで観測される。よって、複数の回転子の間に働く相互作用の効果 は、1ケルビン以下の低温領域で顕在化すると予想される。個々の物質についてこの相互 作用の効果を各論的に研究した例は過去に報告されているが、量子回転子で構成される 物理系一般に対して、その相関効果を総括的に議論した研究例は未だ報告されていない。

本論文の目的は、相関量子回転子系が示す特異な熱物性・誘電物性を統一的に記述する 新しい理論モデルを提唱するとともに、未だ観測にかかっていない新規な現象を予言す るこ と にあ る 。 本論 文 は全6章 で 構 成さ れ 、各 章 の 概要 は 以 下の 通 りであ る。

  1章では、単一分子・原子の量子回転に関する研究の歴史を短く総括する。一連の 研究の引き金となった分子結晶の回転スペクトルに関して、回転分子の微視構造を示す とと も に、 本 論 文の 主 題で あ る 相関 回 転子系 に対応する 物質の具 体例を示 す。

  2章では、孤立回転子・二体相関回転子のそれぞれについて、その量子状態の厳密 解を導出する。後者の定常状態は変数変換を通して解析的に求めることが可能であり、

そのエネルギー固有値は相互作用エネルギーの関数として複雑な挙動を示す。特に、双 極子相互作用によって新たに生じる特異な低エネルギー励起の発見は、次章以降に述べ る様々な特異物性への理解の助けとなる。

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(2)

  3章では、量子回転子間の相互作用が系の比熱に与える影響を定量的に考察する。

一般に物理系の比熱は、系内部に存在する様々な運動自由度や励起状態(格子振動、電荷 担体、磁気振動など)を反映する。そのため、本研究で得られる理論的帰結を実験事実と 比較するためには、量子回転子の回転自由度とその相関効果が主として物性に寄与する 物質を選ぶ必要がある。そこで本章では、考察の対象をある特定の量子回転子系ー酸 素不純物を含むゲルマニウム結晶―に絞った。ゲルマニウム内部に散在する格子間酸 素は、数ケルビン以下の温度領域において、電気双極子モーメントを有する量子回転子 として振る舞うことが実験的に確認されている。著者はこの格子間酸素不純物の量子状 態を記述する理論モデルを定義し、不純物間の双極子相互作用が系の比熱に与える影響 を定量的に明らかにした。その結果、系の比熱C(T)は0.1K以下の領域でべき的な温度 依存性C(T)ac To.5を示すことを初めて理論的に予想した。さらに本章では、この比熱の べき的な振る舞いが、極性不純物を含む様々な物質に共通した現象であることを指摘し、

それら一連の比熱異常が著者の提唱する理論モデルにより統一的に解釈できる点につい て詳述している。

  4章では、相関回転子系の誘電異常について述べる。前章と同じ理由から、考察対 象を酸素ドープされたゲルマニウム結晶に絞り、系の電気感受率Z¢)の温度依存性を理 論的に調べた。回転子が互いに独立な場合は、系の感受率Z¢)は温度に対して単調に減 少する。ー方、回転子間に働く相互作用を考慮した場合は、感受率Z¢)が1K付近で極 大を示すことがわかった。さらにこの極大値の大きさは、酸素不純物の濃度に対して非 線形的に応答することを理論的に予想した。同様の非線形応答は、微視的構造の全く異 なるアルカリハライド物質でも過去に観測されている。そこで本章では両物理系の類似 点と相違点を整理し、アルカリハライド物質の非線形感受率に新しい解釈を与える。

  5章では、衝撃回転子(Kicked rotor)の動力学と回転子間の相関効果について詳述 する。周期的な衝撃外場による振動系の回転励起は、古典カオス・量子カオス・非線形 力学等の分野で息長く研究されている系である。これらの学術的興味に加え近年では、

超短パルス光を用いて量子回転子の分極配向を制御する技術が、ナノ.マニピュレーシ ヨン技術の一環として盛んに開発されている。本章では光パルス照射下の量子回転子の ダイナミクスを解析し、回転子間の相互作用がパルス方向への誘電分極を著しく強める ことを示す。対応する古典回転子系ではこのような現象が起きないことから、上記の誘 電分極の増加は純粋な量子力学的現象であることがわかる。さらに本章では、連続パル ス列を利用して分極配向をより効率よく制御する技術を紹介し、その理論的背景と相関 回転子系への適用結果を示す。

  6章は結論である。相関量子回転子系が低温領域で示す特異物性について本研究で 得られた知見をまとめると共に、今後の課題について述べる。

182

(3)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

中山 明楽 山谷 矢久保

恒義 浩史 和彦 考介

    

学位 論文題 名

Correlation effeCtSOfinteraCtingquantumrotorS

LOWtemperatureanomalieSandorientationCOntrol

( 相 互 作 用 す る 量 子 回 転 子 の 相 関 効 果 : 低 温 異 常 と 配 向 制 御 )

    生体分子モーターの回転運動が直接観測 されて以来、単一分子・原子の回転励起を技   術的に応用する試みが近年盛んに行われて いる。特に、固体内に含まれる極性分子の分   極配向を制御する技術は、分極反転動作を 利用した様々なナノスケール・デバイスの開   発に繋がる可能性がある。一般に、ナノス ケールで実現される量子回転子の回転スベク   トルは、数ケルビン程度のエネルギースケ ールで観測される。よって、複数の回転子の   間に働く相互作用の効果は、1ケルビン以下の低温領域で顕在化すると予想される。個々 の物 質に つい てこ の相 互作 用の 効果を各論的に研究した例は過去に報告さ れているが、

量子 回転 子で 構成 され る物 理系 一般に対して、その相関効果を総括的に議 論した研究例 は未だ報告されていない。

  本 論文 の目 的は 、多 数の 量子 回 転子 がお 互い に相 互作 用を 及ぼ しあ う系 ―相 関量 子 回転 子系 ―が 示す 特異 な熱 物性 ・ 誘電 物性 を統 一的 に記 述す る新 しい 理論 モデ ルを 提   唱するとともに、未だ観測にかかっていな い新規な現象を予言することにある。本論文   は全6章で構成 され、各章の概要は以下の通りである。

    第1章では、単 一分子・原子の量子回転に関する研究の歴史を短く総括 する。一連の 研究 の引 き金 とな った 分子 結晶 の回転スペクトルに関して、回転分子の微 視構造を示す   と とも に、 本論 文の 主題 であ る相関回転子系に対応する物質の具体例を 示している。

    第2章では、孤 立回転子・ニ体相関回転子のそれぞれについて、その量 子状態の厳密 解を 導出 して いる 。後 者の 定常 状態は変数変換を通して解析的に求めるこ とが可能であ   り、そのエネルギー固有値は相互作用エネルギーの関数として複雑な挙動を示す。特に、

双極 子相 互作 用に よっ て新 たに 生じる特異な低エネルギー励起の発見は、 次章以降に述   べる様々な特異物性への理解の助けとなる 。

    第3章では、量 子回転子間の相互作用が系の比熱に与える影響を定量的 に考察してい     ―183―

(4)

る。 議論 を具 体的 に する 目的 から 、本 章では考察の対象をある特定の量子回転子系一 酸素 不純 物を 含む ゲ ルマ ニウ ム結 晶― に絞っている。ゲルマニウム内部に散在する格 子間酸素は、数ケルビン以下の温度領 域において、電気双極子モーメントを有する量子 回転子として振る舞うことが実験的に 確認されている。著者はこの格子間酸素不純物の 量子状態を記述する理論モデルを定義 し、不純物間の双極子相互作用が系の比熱に与え る影 響を 定量 的に明らかにした。その結果、系の比熱C(T)はO.1K以下の領域でべき的 な温度依存性C(T)ac To.5を示すこと を初めて理論的に予想した。さらに本章では、こ の比熱のべき的な振る舞いが、極性不 純物を含む様々な物質に共通した現象であること を指摘し、それら一連の比熱異常が著 者の提唱する理論モデルにより統一的に解釈でき る点について詳述している。

  4章で は、相関回転子系の 誘電異常について述べる。前章と同じ理由から、考察対 象を 酸素 ドー プされたゲルマニウム結晶に絞り、系の電気 感受率Z (T)の温度依存性を 理論 的に 調べ た。回転子間に働く相互作用を考慮した結果 、系の感受率Z¢)は1K付近 で極大を示し、この極大値の大きさが 酸素不純物の濃度に対して非線形的に応答するこ と明らかにした。同様の非線形応答は 、微視的構造の全く異なるアルカリハライド物質 でも過去に観測されている。そこで本 章では両物理系の類似点と相違点を整理し、アル カリハライド物質の非線形感受率に新 しい解釈を与える。

  5章で は、衝撃回転子(Kicked rotor)の動力学と回転子間の相関効果について詳述 する。周期的な衝撃外場による振動系 の回転励起は、古典カオス・量子カオス・非線形 力学等の分野で息長く研究されている 系である。これらの学術的興味に加え近年では、

超短パルス光を用いて量子回転子の分 極配向を制御する技術が、ナノ・マニピュレーシ ヨン技術の一環として盛んに開発され ている。本章では光パルス照射下の量子回転子の ダイナミクスを解析し、回転子間の相 互作用がパルス方向への誘電分極を著しく強める ことを示す。対応する古典回転子系で はこのような現象が起きないことから、上記の誘 電分極の増加は純粋な量子力学的現象 であることがわかる。さらに本章では、連続パル ス列を利用して分極配向をより効率よ く制御する技術を紹介し、その理論的背景と相関 回転子系ーの適用結果を示している。

  6章は 結論である。相関量 子回転子系が低温領域で示す特異物性にっいて本研究で 得 ら れ た 知 見 を ま と め る と 共 に 、 今 後 の 課 題 に つ い て 述 べ て い る 。   これを要するに著者は、相関量子回転子系の低温物性と配向制御技術に対する新知見を 得たものであり、応用物理学に対して貢献するところ大なるものがある。よって著者は、

北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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