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ド ッ プ ラ ー 流 向 流 速計

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Academic year: 2021

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博士(水産科学) 李    ±同勲

学 位 論 文 題 名

ド ッ プ ラ ー 流 向 流 速計 (ADCP) を用い た 音響散乱層の生物密度推定と種判別に関する研究

学位論文内容の要旨

    目 的

  ADCPは , 遊 泳 カ を 持 た な い 海 中 浮 遊 物 か ら の 音 響 散 乱 波 の ド ッ プ ラ ー 周 波 数 変 移 を 測 定 し て , 海 流 の 流 速 場 を 測 定 す る こ と を 目 的 と し て い る た め ,通 常は 音響 散 乱 波 の 強 度 情 報 が 利 用 さ れ る こ と は な い 。 し か し な が ら , 散 乱 波 強 度は 生物 密度 に 比 例 す る た め , こ れ を 積 極 的 に 利 用 し て , 生 物 密 度 を 推 定 で き る 可 能性 があ る。 そ の た め に はADCPで 測 定 さ れ る 散 乱 波 強 度 を 体 積 後 方 散 乱 強 度(MVBS)と し て 定 量 化 す る 必 要 が あ る が ,ADCPは 空 間 分 解 能 が 低 く , ま た 斜 交 さ せ た 特 殊 な 音 響 ビ ー ム を 使 用 し て い る の で , そ の 較 正 方 法 に も 工 夫 が 必 要 で あ る 。   一 方 , 散 乱 体 が 遊 泳 カ を 持 つ 生 物 の 場 合 ,ADCPの ド ッ プ ラ ー 変 移 に は 海 流 の 流 速 場 と 共 に , 生 物 の 移 動 速 度 成 分 が 含 ま れ る 。 し た が っ て , こ れ ら を分 離す るこ と が で き れ ぱ 生 物 の 移 動 速 度 を 推 定 す る こ と が 可 能 で あ る 。

  そ こ で , 本 研 究 で は 現 在 多 く の 船 舶 に 搭 載 さ れ て い るADCPを 用 い て , 海 流 の 流 速 場 を 知 る と 共 に , 音 響 散 乱 層 の 生 物 密 度 を 推 定 し , さ ら に 生 物 の移 動速 度や 遊 泳 速 度 を 知 っ て 生 物 種 を 判 別 す る 方 法 に つ い て 検 討 し た 。

    方 法

  実 験 は , 北 海 道 噴 火 湾 周 辺 海 域 に 分 布 す る 音 響 散 乱 層 を 対 象 と し , 船 底 装 備型 船 よ び 海 底 設 置 型ADCPを 用 い て , 音 響 デ ー タ を 取 得 し た 。

船 底 装 備 型ADCPは , 北 海 道 大 学 水 産 学 部 練 習 船 う し お 丸 に 設 置 さ れ た4ビ ー ム タ イ プ のRDI社 製Ocean Surveyorで , 周 波 数 は153.6kHz, 音 響 ビ ー ム は 鉛 直 線 か ら     1384

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30°傾けて送波される。ピングレートは毎秒1回とし,30秒から2分間の平均エコ ー 強 度 を , 流 向 流 速 デ ー タ やGPS, ジ ャ イ ロ 情 報 と と も に 収 録 し た 。   一方,海底設置型ADCPは,周波数307.2 kHzであり,4本の音響ビームが鉛直 線から20°傾けて上向に送波される。これを噴火湾湾央部の水深84mの地点に設置 し,2003年4月19日から5月6日まで連続的にデータを収録した。データの平均 時間は10分間隔で1秒毎のデータを50ピング分平均したデータを内蔵メモリーに 保存した。

  これらのデータをもとに,ADCPの製造会社から提供された変換式を用いて,エ コ ー 強 度 をMVBSに 変 換 し , 計 量 魚 探 機 を 用い て こ の 値 の 評 価 を 行 っ た。

  その後,ADCPで測定されたMVBSを用いて音響散乱層の主要構成生物であるオ キアミの密度推定を行ない,計量魚探機(EK60)やフレームトロールによる生物採集 により推定した密度との比較を行った。

  次に,船底装備型ADCPと海底設置型ADCPを用いて,周波数ドップラー検出に よる音響散乱層の動特性を調べた。

  最後に,ADCPで測定した3次元速度ベクトルとエコー強度を用いて,音響散乱 層に混在する魚群とプランクトンの移動速度を測定し,周辺海域の流速場と比較し て魚群の遊泳速度を推定した。また,移動する魚群の遊泳速度から種判別の可能性 を検討した。

    結果

  ドップラー流向流速計(ADCP)を用いて,噴火湾湾外部における音響散乱層の生物 密度を推定し,さらにドップラー情報から音響散乱層の移動速度および混在する魚 群の遊泳速度を推定して,生物種を識別する方法を検討した。本研究で得られた知 見をまとめると以下のようになる。

1. ADCPの流向流速測定の精度を評価するためのエコー強度出カを用いて,距離減   衰を補正したうえ,ビーム間較正と計量魚探機出カとの比較較正を行なうこと   に よ り , 平 均 体 積 後 方 散 乱 強 度(MVBS)を 定 量 化 す る こ と が で き た 。 2.音 響散 乱層 を対 象にし てADCPによるMVBS(153.6 kHz)と計量魚探機による   MVBS(38,120,200 kHz)を比較したところ,両者の間には高い相関が得られた

(3)

    が,両者間には最大10 dBの偏差が認められた。これは対象生物の周波数特性に     よるものと判断された。

3.フレームトロールを用いて音響散乱層の生物採集をおこなったところ,主構成     生物はオキアミであった。DWBA理論モデルを用いてオキアミのターグットス     トレングスを推定し,その周波数特性を調べたところ,200 kHzのMVBSは38     kHzのそれより10〜25 dB大きく,153.6 kHzよりも0〜3 dB大きしヽことがわか     った。

4.そこで,これらの周波数特性を利用して,オキアミのエコーを抽出し,そのMVBS     とネットサンプリングで推定した生物密度との関係を調べたところ,両者には     高い相関が認められ,ADCPのエコー強度出カを用いた生物密度推定が可能であ     ることがわかった。

5.音響散乱層は,昼間は中層に分布し,夜間は表層に移動するという日周鉛直移     動を行なうことが,船底装備のADCPのエコーグラムにも明確に記録された。

    また,日出没前後の音響散乱層の鉛直移動が,ADCPのドップラー周波数の鉛直   速 度 成分 と して 検 出 され , 他の 散 乱体 と 区別 す るこ と が可 能 であった。

6.音響散乱層の鉛直移動は,海底設置型ADCPのエコーグラムにおいても明確に   記録された。さらに鉛直移動速度がドップラー鉛直速度成分として直接計測さ   れたが,その最大値と平均値には大きな偏差が認められた。フレームトロール     を用いた生物採集の結果,鉛直速度のばらっきは構成生物種の違いに起因する   と考えられた。

7.船底装備のADCPを用いて,音響散乱層の水平移動速度成分が検出された。海     流の流速場と比較したところ,音響散乱層が海流と異なる方向に移動していた。

    フレームトロールによる生物採集の結果,主要生物がオキアミ類であったこと     か ら , こ れ は オ キ ア ミ 群 の 移 動 に よ る も の と 考 え ら れ た 。 8.音響散乱層の近傍には,時おり,強い散乱エコーが観測され,それらから海流     の流速場とは明らかに異なる大きな速度成分が検出された。フレームトロール     による生物採集の結果,これらがサンマ魚群であることがわかった。ADCPに   よる水平速度成分から,サンマの平均遊泳速度は88.6 cm/sと推定され,体長基   準速度は4.19 BL/sであった。また,ハダカイワシが採集された音響散乱層の水   平速度成分から,ハダカイワシの平均遊泳速度は28.0 cm/sと推定され,その体     ―1386―

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    長基準速度は4.26 BL/sであり,自然遊泳中の魚類の遊泳速度として妥当なもの     であると考えられた。

9.ADCPで観測された魚群の移動速度や方向は,対象生物の行動パターンを表し,

    それらの違いから,海流とオキアミ,サンマとハダカイワシの判別が可能であ     り,生物種の識別に有効であることが示された。

1387

(5)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授   飯 教 授   三 教 授   齊 教 授   三 助 教 授  向

田 浩 二 浦 汀 介 藤 誠 一 宅 秀 男 井    徹

学 位 論 文 題 名

ド ッ プ ラ ー 流 向 流 速 計 (ADCP) を 用 い た 音 響散乱層 の生物 密度推定 と種判別に関する研究

  ADCPは,遊 泳カを持 たない海 中浮遊物 からの音 響散乱波の ドップラー周波数変移 を測定 して,海 流の流速 場を測定 すること を目的とし ているた め,通常は音響散乱 波の強 度情報が 利用され ることは ない。し かしながら ,散乱波 強度は生物密度に比 例する ため,こ れを積極 的に利用 して,生 物密度を推 定できる 可能性がある。その た め に はADCPで 測 定 さ れ る 散 乱 波強 度 を体 積 後 方散 乱 強 度(MVBS)とし て 定 量化 する必 要がある 。

  一方, 散乱体が 遊泳カを 持つ生物 の場合,ADCPのドップラ ー変移には海流の流速 場と共 に,生物 の移動速 度成分が 含まれる 。したがっ て,これ らを分離することが できれ ば生物の 移動速度 を推定す ることが 可能である 。

  本研究 は現在多 くの船舶 に搭載さ れているADCPを用いて, 海流の流速場を知ると 共に, 音響散乱 層の生物 密度を推 定し,さ らに生物の 移動速度 や遊泳速度を知って 生 物 種 を 判 別 す る 方 法 に つ い て 実 験 と 解 析 を お こ な っ た も の で あ る 。 実験は2003年および2004年,北海 道噴火湾 周辺海域 において, 北海道大学練習船う し お 丸 に 装 備 さ れ たADCPお よ び 噴火 湾 中央 部 の 海底 に 設 置さ れ た固 定 式ADCPを 用いて ,同海域における音響散乱層を対象に音響データの収集と生物採集を行ない,

以下の 結果を得 た。

1. ADCPのエ コ ー 強度出 カを用い て,ビー ム間較正 と計量魚 探機出カ との比較較 正を   行 な う こ と に よ り , 平 均 体 積 後 方 散 乱 強 度(MVBS)を 定 量 化 する こ と がで き た。

2. 音 響 散 乱 層 のADCPに よ るMVBS(153.6 kHz)と 計 量 魚 探 機 によ るMVBS(38,120,   200 kHz)を 比較した ところ,両者には高い相関が認められたが,両者間には最大10 dB   の 偏 差 が あ っ た 。 こ れ は 対 象 生 物 の 周 波 数 特 性 に よ る も の と 判 断 さ れ た 。 3. フレーム トロール を用いて 音響散乱 層の生物 採集をおこ なったと ころ,主 構成生物     は オキアミ であった 。理論モ デルを用 いてオキアミのターゲットストレングスを推

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    定し ,そ の周 波数 特性を 調べ たと ころ ,200 kHzのMVBSは38 kHzのそれより10〜25     dB大 きく ,153.6 kHzよ りもO〜3dB大 きか った 。

4. そ こ で , こ れ らの 周波 数特 性を 利用し て, オキ アミ のエ コー を抽 出し ,そ のMVBS     とネ ット サンプリングで推定した生物密度との関係を調べたところ,両者には高い     相関 が認 めら れ,ADCPの エコ ー強 度出 カを 用い た生 物密 度推 定が 可能であること   が わか った 。

5. 音 響 散 乱 層 の 日周 鉛直 移動 が船 底装備 のADCPの エコ ーグ ラム にも 明確 に記 録さ れ     た。 さら に, 日出 没前後 の音 響散 乱層 の鉛 直移 動が ,ADCPの ドッ プラー周波数の   鉛 直 速 度 成 分 と し て 検 出 さ れ , 他 の 散 乱 体 と 区 別 す る こ と が で き た 。 6. 船 底 装 備 のADCPを 用い て, 音響 散乱層 の水 平移 動速 度成 分が 検出 され た。 海流 の   流 速場 と比 較し たと ころ, 音響 散乱 層が 海流 と異 なる 方向 に移 動し ていた。フレー     ムト ロー ルによる生物採集の結果,主要生物がオキアミ類であったことから.これ     はオ キア ミ群 の移 動によ るも のと 考え られ た。

7.音 響散 乱層 の近 傍に は, 時お り, 強い 散乱エコーが観測され,それらから海流の流   速 場と は明 らか に異 なる大 きな 速度 成分 が検 出さ れた 。フ レー ムト 口ールによる生   物 採 集 の 結果 , こ れ ら が サ ン マ 魚 群 で あ る こと がわ かっ た。ADCPによ る水 平速 度   成 分か らサ ンマの平均遊泳速度は88.6 cm/sであり,体長基準速度は4.19 BL/sと推定   さ れた 。ま た, ハダ カイワ シが 採集 され た音 響散 乱層 の水 平速 度成 分からハダカイ   ワ シの 平均 遊泳 速度 は28.0 cm/sで あり ,体 長基 準速度 は4.26 BL/sと推定された。

8. ADCPで観 測さ れた 魚群の 移動 速度 や方 向の 違い から ,海 流と オキ アミ,サンマと   ハ ダ カ イ ワシ の 判 別 が 可 能 で あ り , 生 物 種 の識 別に 有効 であ るこ とが 示さ れた 。

審査員が特に評価した点は次の通りである。

1. 音 響 散 乱 層を 用 い てADCPか ら 得 ら れ る4ビ ー ム の 平 均 体 積 後 方 散 乱 強 度(MVBS)   を較正する方法を考案したこと。

2.理論モデルで推定した生物のターゲットストレングスの周波数特性を利用して,オキ   ア ミの エコー を抽 出し ,ADCPの エコ ー強 度出 カを 用い た生物密度推定が可能である   ことを示したこと。

3.音 響散 乱層 の日 周鉛 直移 動が,船底装備や海底設置のADCPのドップラー変移として   検出され,他の散乱体と区別することができたこと。

4.海流の流速場とは明らかに異なる魚群の速度成分が検出されたこと。これから,サン   マの平均遊泳速度は88.6 cm/s,4.19 BL/s,ハダカイワシの平均遊泳速度は28.0 cm/s, 4.26 BL/sと推定されたこと。

5.魚群の移動速度や方向から,海流とオキアミ,サンマとハダカイワシの判別が可能で   あり,生物種の識別に有効であることを示したこと。

本 研究 は,ADCPを用 いた 海洋 調査 に生 物情報 を加 える ための重要な知見を与えるもの と評価し、よって審査員一同は本論文が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあ る もの と判 定し た。

参照

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