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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 学 ) 和 田   

    学位論文題名

  Sexual size dimorphism in the hermit     carb Pag鰍s 7nZぬ〃あ功噺

(テナガホンヤドカりの体サイズの性的二型に関する研究)

学位論文内容の要旨

  オ ス と ヌ ス の 違 い は 、 有 性 生 殖に お け る 配 偶 子 の 役 割 の 違い を 反 映 し た も の に と ど ま ら ず 、 多 く の生 物 が 外 部 形 態 や 体 サ イ ズな ど に 性 的 二 型 を 持 っ て い る 。 な か で も体 サ イ ズ の 性 的 二 型 は 多 くの 動 物 群 で 知 ら れ て い る 一 般 的 な 現 象 であ り 、 そ の 進 化 的 要 因 に つい て は 哺 乳 類 や 鳥 類 、 爬 虫 類 と い う 脊 椎動 物 を 中 心 に 、 種 間 比 較 アプ ロ ー チ を 用 い て 、 古 く か ら 研 究 が お こな わ れ て き た 。 甲 殻 類 に おい て も 分 類 群 ご と に オ ス > ヌ ス 、 あ る いは メ ス > オ ス の 体 サ イ ズ の性 的 二 型 が 知 ら れ て い る 。

  ヤ ド カ り で は 多 く の 種 で オ ス >ヌ ス の 体 サ イ ズ の 性 的 二 型が 認 め ら れ る が 、 そ の 進 化 的 要 因 に 焦 点を 当 て た 研 究 は な い 。 一 方、 ヤ ド カ り は 巻 貝 の 貝 殻 を 生 息 場 所 と して 利 用 す る と い う 特 異 な 性質 を 持 ち 、 背 負 っ て い る 貝 殻 の 種 類 や サイ ズ に よ っ て 、 個 体 の 成 長速 度 が 影 響 を 受 け る こ と が 幾 っ か の 種 で 確 か め ら れ て い る 。 こ の こ と か ら 、 ヤ ド カ リ 個 体 群 の サ イ ズ 組 成は 、 そ の 個 体 群 に と っ て 利用 可 能 な 貝 殻 の サ イ ズ 組 成 に よ っ て 強 く規 制 さ れ る と 予 想 さ れ 、 体サ イ ズ の 性 的 二 型 も ま た 、 脊 椎 動 物 と は大 き く 異 な っ た 発 現 バ タ ーン を 持 っ と 考 え ら れ る 。 環 境 要 因 が 性 的二 型 に 与 え る 影 響 の 解 明 は、 近 年 研 究 が 始 め ら れ た ば か り で あ り 、単 一 種 に 関 す る 詳 細 な 生 態学 的 知 見 が 必 要 で あ る 。 本 研 究 は 、 函 館湾 に 生 息 す る テ ナ ガ ホ ン ヤド カ り を 対 象 に 、 体 サ イ ズ の 性 的 二 型 の進 化 的 及 び 至 近 的 プ ロ セ スを 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。

  ま ず 本 種 の 基 本 的 な 生 活 史 に つい て 調 査 を お こ な い 、 本 種に 見 ら れ る オ ス > ヌ ス の 体 サ イ ズ の 性 的二 型 の 進 化 的 要 因 に つ い て推 察 し た 。 そ の 結 果 、 交 尾 前 ガ ー ド ペ アの 出 現 時 期 か ら 、 本 種 の 産卵 期 が

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月下旬から12月上旬であると考えられ、また、抱卵ヌスは10月下 旬から

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月上旬まで採集された。抱卵ヌスの出現バターンと卵の発 達段階の時期的変化から、本種のヌスが1年に1回産卵していること が明らかになった。抱卵期間中の

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月から2月にかけての平均抱卵 率は

91.3

%であり、また、最小サイズクラスのヌスの50%以上が 抱卵していることから、多くのヌスが着底後の最初の繁殖期です でに成熟し、産卵に参加していることが示唆された。ヌスの体サ イズと抱卵数の間には正の相関が認められ、また、両変数の対数 値についての回帰式の傾きはほぼ

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乗だった。このことから、本 種のメスの体サイズに働く自然選択は他の生物に比べて弱いとは いえず、性的二型の進化的要因とはならないことが示唆された。

一方、交尾期間中の野外の交尾前ガードペアの平均サイズは、両 性とも、時間経過に伴って小さくなっていたが、全体として、交 尾前ガードペアのオスの体サイズの平均値は、個体群全体のオス の平均値に比べてはるかに大きかった。したがって、本種のオス の体サイズに働く性選択が性的二型の進化的要因として重要であ ることが示唆された。

  

次に、本種のオスに働く性選択が生じるヌカこズムを室内実験 の結果から考察した。本種に該当することが予想される

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つの性 選択 ヌカ ニズム 、す なわち

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オス間 のスク ラン ブル型 競争、

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オ ス 間 の コ ン テ ス ト 型 競 争 、

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ヌ ス の 直 接 的 配 偶 者 選 択、

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ヌス の間 接的配 偶者選 択にお ける大 型オ スの有 利性を 検証したところ、オス間のコンテスト型競争とメスの間接的配偶 者選択が有効だと考えられた。これまでの幾っかの研究では、交 尾前ガード中のオスと単独のオスが出会ったときに、ヌスを巡っ て起こるニユンテスト型競争において、より大きなオスが有利であ ることが、ヤドカりの性的二型を生み出す性選択ヌカこズムだと 考えられてきた。今回の結果は、これに加えて、オスが自分より も大きなメスをガードすることが困難であることによって、ヌス にとっての配偶者が、メス自身よりも大きなオスに制限されてし まうという、ヌスの間接的配偶者選択もまた、性的二型の進化的 メ カ ニ ズ ム と し て 重 要 で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。

  

最後に本種の性的二型の至近的なプ口セスを、成長の性差と貝 殻が成 長に与 える影 響に ついて室内実験によって検証し、さら に、野外の貝殻のサイズ組成が性的二型の程度に与える影響につ いて個体群間比較から推察した。本種個体の成長速度は、背負っ

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ている貝殻のサイズに大きな影響を受けていたが、同一の貝殻条 件のもとで、オスはメスよりも成長が速かった。脱皮あたりの成 長率の性差は、野外個体の短期間飼育によっても得られた。野外 における貝殻利用バターンについては、貝殻の種類について性差 が認められたが、ヤドカりのサイズに対する相対的な貝殻のサイ ズに性差は認められなかった。

  

野外の貝殻利用可能性は、同所的に生息する巻貝の現存量、種 組成、そして他所から流入してくる貝殻によって決定されると考 えられる。貝殻のサイズ組成は近隣個体群で異なっており、本種 の性的二型の程度と利用可能な貝殻のサイズの間には有意な正の 相関が認められた。着底時のサイズに性差は認められないため、

本種の性的二型は至近的には着底後の成長の性差によって生じる と考えられるが、空間特異的な貝殻の利用可能性が、成長速度と 到達サイズに影響を与え、結果として性的二型の程度にも影響を 与えていると考えられる。また、同所的に出現したホンヤドカ リ、イクピホンヤドカリ、ケアシホンヤドカリ、ケプカヒヌヨコ バサミのうち、ケアシホンヤドカりが大型の貝殻を多く利用する ことによって、テナガホンヤドカりにとって利用可能な貝殻のサ イズが小さくなっていることが示唆された。対象種の性的二型が 他種によって影響を受ける程度は、同所性のヤドカリ種群の空間 分布の違いや貝殻を巡る競争における優位性によって説明できる かもしれない。

  

本研究の結果、ヤドカりの体サイズの性的二型の程度は、巻貝 群集やヤドカリ群集という環境要因によって大きな影響を受けて いることが示唆された。今回調査することはできなかったが、巻 貝の死亡要因は貝殻のサイズ組成を決定づけると考えられるの で、巻貝の捕食者の種類、現存量なども間接的にヤドカりの性的 二型に影響を及ぼしているのかもしれない。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    中尾    繁 副査    教授    池田    勉 副査   助教授   五嶋聖治

    学 位 論 文 題 名

Sexual size dimorphismlnthehermit     CarbR璢 協 鰍S絖 耐 ピ 刀 あ ガ 所

( テ ナ ガ ホン ヤド カり の体 サイズ の性 的二 型に 関す る研 究)

  ホン ヤド カりに見られる体サイズの性的ニ型に関し、その発現の進化的要因と至 近 的要 因に ついて飼育実験や室内実験および野外調査から明らかにしている。得ら れた主な結果tま以下の通りである。

  進化的要凶:

  1) オ ス に 働 く 性 選 択が 重 要 で あ り 、 そ れ が生 ずる メカ ニズ ムと してtよ、

    (1)オス問のコンテスト型競争(メスを巡って起こるコンテスト型競争で、よ   り大 きな オスが有利である)、(2)メスの間接的配偶者選択(オスが自分より大   きなメスをガードできなぃことから、メスにとっての配偶者オスtよ自分より大き   なオスに制限される)の2つである。

  至近的要因:

  成長 の性 差が背負っている貝殻サイズや種類によってもたらされ、同一条件では   オスの成長がメスのそれより速い。したがって、野外での性的二型の程度tよ、利   用可 能な 貝殻サイズ組成が強く働く。そこで|野外個体群問の性的二型の程度の   差に は、 貝散資源を生じる巻貝群集の構造や機能に関する知見を基に考察する必   要がある。

  本研究は、ホンヤドカリ個体群に発尠・ける性的ニ型の進化的要因として、従来ヤ t:カりで指摘されていたコンテスト型競却に加えて、メスの間接的配佃者選択にJ る 性選 択メ カニズムを加えた点、また、至近的要因として貝殻サイズと種類、野外     ー1063 ‑

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における貝殻組成の重要性を指摘した点で生態学的な興味ある知見を提出している。

貝殻群集の構造や機能かつ本極の個体群闇の性的ニ型の程度をいかに左右するかの 解明は今後に残されているが、審査員一同は本研究が学位(水産学博士)に充分該 当する内容であると判定した。

参照

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