博 士 ( 農 学 ) 小 林 創 平
学位論文題 名
Physio‑genetic study on rlCe (〇イソZ ロ S ロテZ ぴロL .)
planttypeanditSinteraCtion
WithenVironmentSuSlngQTLanalySiS
(QTL 解 析 を 用 い た イ ネ の 草 型 と その環境反応に関する生理遺伝学的研究)
学位論文内容の要旨
イネ(Oryza sativaL) の草型は 、収量を 決定す る基本的 な要因である。育種による草型改良 を容易に するた めにはご その関 連形質を 支配する 遺伝的 要因を理 解する ことが重 要であ る。し かし、草 型関連 形質(以 後、草 型形質と略)は、量的形質であり、相互に関連し合い、さらに環 境に 反 応 して 変 化 する た め 、従 来 の 方 法で 遺 伝 的要 因を解析 するの は難しか った。 近年、分 子マーカ ー技術の発達により、量的形質の遺伝子座(quantitative trait locus: QTL)を解析でき るよ う に なっ た 。 そこ で 本研究 は、QTL解析を 異なる気 候条件下 で複数 の草型形 質に対 して網 羅的 に 行 い、 草 型 に関 わ る 遺伝 子 が 座 上す る 染 色体 領域を同 定する と共に、 環境と の相互作 用も含め 各領域 の特徴づ けを行 った。
密陽23号(M23、インド 型、穂 重型)と アキヒ カリ(AK、日本型、穂数型)を親とする組換え近 交系191系統(F,) を、1995、96、97年に北陸農業試験場(現北陸研究センター)で、2000年と 2001年の乾期(1−4月)と雨季(6ー10月)に国際イネ研究所(IRRI、フィリピン)で栽培して、各系 統5個 体 以 上 を 用 い て 、14の 草 型 形 質 を 調 査 し た 。 各 形 質 のQTLは 、 遺 伝 解 析 用 ソ フ ト QGENFのinterval mappingに よ り 、LOD値2を 閾 値とし て検出し た。さら に,QTL解析の 結果か ら 、 特 に 作 用 カ の 強 い 染 色 体 領 域3っ を 選 び 、 そ れ ら の 領 域 がM23/M23、M23/AK、AK/AK 型に 分 離 した 系 統 群( 分離集 団)を分 子マー カーによ り作出し 、各領 域のQTLやその 効果を詳 しく同定・評価した。得られた結果は以下の通りである。
(1)稈 長 、 穂長 、 穂 数、 分 げ つ 数お よ び 有効分げ つ割合 っいてQTL解析を 行い、 イネ体の 基 本 的 な 発 達 に 関 わ る 合 計 22の 染 色 体 領 域 を 同 定 し た 。 こ れ ら 22領 域 中 、 第2 (XNpb298‑XNpb317B)、6(G2140‑XNpb12)お よ び11(C477‑XNpb257)染 色 体 上 に あ る3つ の領域は 、稈長 と穂長を 増加さ せるが、穂数と分げつ数を減少させ、重要な領域であることを示 した。こ れらの 領域は作 用カが 大きく、 それがIRRIで顕著に 増加し たため、 環境と相 互作用し ながら草 型を決 定する主 要な遺 伝子が座 乗すると 思われ た。この ようた 環境との 相互作用は、
稈 長 に 関 連 す る10領 域 中7っ で 認め ら れ た。 し か し 、穂 長 で は12領 域中2っ であ っ た ため 、 QTLと環 境との 相互作用 は形質 によって 異なるこ とが示 された。
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(2)止 葉の 形態 (長 、幅 、角 度) と 第3葉の 窒素 濃度 (出 穂期 、収穫期および登熟期間中)に つ いてQTL解 析を 行い 、葉 の発 達に 関 わる 合計15の 染色 体領 域を 同定 した 。こ れら の領 域中、
第1(ヌ 弛め .359‑ 0955)、4(XNpb235)お よび6(XNpb12)染 色体 上 の3領域 は、 止葉 の長 さと幅 の 両 方 に 作 用 し た 。 こ れ らを 含め た止 葉形 態に 関わ る8領 域は 、窒 素濃 度に 関わ る6領 域と 重 な っ て お ら ず 、 葉 の 形 態 形 成 と 窒 素 生 理 は 異 な る 遺 伝 的 要 因 で 支 配 さ れ る と 考 え た 。 (3)総 穎 花 数 、 一 穂 穎 花 数 お よ び 登 熟 歩 合 に っ い てQTL解 析 を 行 い 、 イ ネ の 穂 形質 に関 わ る 合 計12の 染 色 体 領 域 を 同 定 し た 。 こ れ ら の な か で 、 第1(R210B‑XNpb90)、6(0235)、7 (XNpb152)お よ び9(XNpb160)染 色 体 上 の4領 域 は 、 総 穎花 数を 増加 させ た。 結果 (1) もふ ま え る と 、 第1(R210B‑XNpb90)、2(XNpb227‑XNpb132)、4(XNpb271‑排6乃 の お よ び6
( ¢翻 染 色体 上の 領域 は、 一穂 穎花 数を 増加 させ 、か つ穂 数を 減少させた。このことから、こ れ ら4領 域 に 、M23とAKを 穂 重 型 と 穂 数 型 イ ネ に 分 化 さ せ る 主 要 な 遺 伝 子 が 座 乗 する と思 わ れ た。
(4) 以 上 の 結 果 か ら 、 複 数 の 草 型 形 質 に 強 く 作 用 す るQTLが 、 第1(/幗7鮒 伽69・ み、4
( 勵め コ 甜イ 己ゆ 地ワ のお よび6(GZワチ焔めJ間染色体上の3つ の領域にあると考えた。そこで 分 離 集 団 を 用 い て 、 こ れ ら3領 域 に 含 ま れ るQTLの 位 置や 効果 をよ り詳 細に 解析 した 。 第1染 色 体 の 領 域 は 、M23の 遺 伝 子 型 で 、 穂 重 を 増 加 し 、 一 穂 穎 花 数 を 減 少 さ せ た 。 第4染 色体 の 領 域 は 、 駲 勿 伊 ーXM6コ ぞ ぢ にQTLが1つ 検 出 さ れ 、 そ れ がM23の 遺 伝 子 型 で 、 穂 数と 分げ つ 数 を増 加 し( 分げ つの 発達 を促 進) 、止 葉長 、止 葉幅 およ び一 穂穎花数を減少させた(止葉と 穂 の 発 達 を 抑 制 ) 。 第6染 色 体 の 領 域 は 、GJ甜4― 同Mワ 勿 に3つQTLが 検 出 さ れ 、 そ れ ら が AKの遺 伝 子型 で、 分げ つの 発達 を促 進し 、シ ュー ト( 稈長 と穂 長)の伸長および止葉と穂の発 達 を抑 制 した 。こ れら のQTLは 、出 穂 前の 分げ つ数 に影 響し てお り、 生育 初期 から 発現 すると 推 測さ れ た。
上 述 の 結 果 を 統 合 し て 考 察 す る と 、 合 計33の 染 色 体 領 域 がM23とAKの 草 型 に 関 連 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ ら33の 領域 は、 形質 に対 する 効果 に基 づき 、 以下 の8グル ー プに分類できた。グループIに属する3っの領域は 、分げっの発達を促進する.が、シュートの伸 長お よび 止葉 と穂 の発 達を 抑制 した 。グ ル ープIIの4領 域は 、穂 数を 増 加させ、一穂穎花数を 減 少 さ せ た 。 グ ル ー プIIIの2領 域 は、 出穂 日のQTLと 一致 して おり 、一 見無 関係 な複 数の 形 質 に 作 用 し て い た 。 グ ル ー プIVの2領 域は シュ ー トの 伸長 、グ ルー プVの4領 域は 稈の 伸長 、 グ ル ー プVIの7領 域 は 葉 の 形 質 、 グ ル ー プVIIの9領 域 は 穂 形 質 、 お よ び グ ル ー プVIIIの2 領 域 は 分げ つ性 のみ にそ れぞ れ作 用し た。 これ ら 計33領域 のう ち18領域 は、 北陸 とIRRIの ど ち ら か 一 方 で 発 現 す る か 、 も し く は 栽 培 地 間 で そ の 作 用 カ が 異 な っ た 。 これらをまとめると、1)草型の遺伝は機能の異なる30以上の領域により構成され、2)そのうち 3つ の 領域 が縦 と横 方 向の 生長 バラ ンス を変 化さ せ、3)4つ の領 域が イネ を穂 重型 と穂 数型 に 分化 させ 、4) 半数 近くの領域が、環境との相互作用を通じ 、温帯と熱帯の間で草型の遺伝様式 を変化させる、ことが明らかとなった。
こ れら の研 究成 果は 、1) 育種 現場 にお いて 草型形質の分離を理解・予想する際や2)分子マ ー カ ー 育 種 で 草 型 を 改 良 す る 際 に 有 用 で あ ろ う 。 ま た 、3) 環 境 と の 相 互 作 用 や 多 面 効 果 (pleiotropic effect)があるユニークな遺伝子をfine mapping.単離・機能解析する際に一次情報 と し て 利 用 で き 、 今 後 の 育 種 ・ 生 理 遺 伝 研 究 に と っ て 重 要 な 知 見 が 得 ら れ た 。
学位論文審査の要旨
主査 教 授 大崎 満 副査 教 授 中嶋 博 副査 教 授 佐野芳雄 副査 教 授 喜多村啓介 国際流
副査 ^贄 福田善通(国際イネ研究所、フィリピン)
研究
学位 論 文題 名
Physio‑genetic study on rlCe ( 〇イ y2 ロS ロfZ びロL .)
planttypeanditSinteraCtion
WithenVironmentSuSlngQTLanalySiS
(QTL 解 析 を 用 い た イ ネ の 草 型 と その環境反応に関する生理遺伝学的研究)
本研究は 、表13、 図12を含 む115ペ ージの英 文論文 で、引用 文献108を含み、6章から構成され ている。他に、参考論文が2編添えられている。
イネ(OryzロsativaL.)の草型は、収量を決定する基本的な要因である。育種によって草型を容易 かつ敏速に改良するためには、関連形質を支配する遺伝的要因について理解することが重要である。
しかし、草型関連形質は、量的形質で、相互に関連し合い、さらに環境に反応して変化するため、
従来の手法では遺伝解析が難しかった。近年、分子マーカー技術の発達により、そのような量的形 質 の 遺 伝 子 座(QTL)を 連 鎖 地 図 上 に 同 定 し て 、 そ の 効 果 を 推 定 で き る よ う に な っ た 。 本研究の 目的は 、QTL解析を利用して、草型に関わる染色体領域を同定すると共に、多面効果や 環境との相互作用に注目しながら各領域の特徴を明らかにすることである。密陽23号とアキヒカり を親とす る組換 え近交系191系統を、1995〜 97年に旧北陸農業試験場で、2000年と2001年の乾期 と雨季に フィリ ピンの国 際イネ 研究所(IRRI)で 栽培し て、14の草 型関連 形質に対してQTL解析を 行った。さらに、特定の染色体領域が分離したへテロ性自殖集団を分子マーカーにより作出し、各 領域に座上するQTLの位置や効果を詳しく同定・評価した。
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稈 長、穂長 、穂数、 分げっ数および有効分げつ割合に関するQTL解析により、イネ体の基本的な 発達 に関わ る合計22の 染色体 領域を同 定した 。第2、6およびll染色体上にある領域は、稈長と穂 長を増加させるが、穂数と分げつ数を減少させており、重要な領域であった。これらの領域は、作 用カが大きく、それがIRRIで顕著に増加したため、環境と相互作用しなカミら草型を決定する遺伝子 が座乗すると思われる。
止 葉の長さ 、幅、角 度およ び第3葉の窒 素濃度に関するQTL解析から、葉の発達に関わる合計15 の染 色体領 域を同定 した。第1、4および6染色体上の領域は、止葉の長さと幅の両方に作用してお り、止葉のサイズを遺伝的に改良する上で有用な遺伝子が座上すると思われる。これらを含めた止 葉形 態に関 わる8領域は 、窒素濃 度に関わ る5領域と重ならず、葉の形態形成と窒素生理が異なる 遺伝的要因によって支配されていることが示唆された。
総 穎花数、 一穂穎花 数およ び登熟歩 合に関 するQTL解析か ら、イネ の穂形質に関わる合計12の 染色 体領域 を同定し た。な かでも、 第1、6、7およ び9染 色体上 の4領 域は、総穎花数を増加させ ており、収量を遺伝的に改良する上で有用な遺伝子が座上すると思われた。穂数の結果と統合する と、第1、2、4および6染色体上に、穂数を増加させ、一穂穎花数を減少させる領域が見っかった。
これらの領域には、密陽23号とアキヒカりを穂重型と穂数型イネに分化させる遺伝子が座乗すると 考えた。
第1、4および6染色 体の一 部が分離 するへ テロ性自殖集団の解析から、これら3領域が、穂数を 増加 させる と共に、 穂重を 減少させ ること が確認された。また、第4および6染色体の領域には、
それ ぞれQTLが1っと3つ検出 され、そ れらが 穂数、穂 長、止 葉長など 複数の草型形質に作用した ことから、多面効果を持つ遺伝子の存在が示唆された。
上 述の結果 を統合し て考察 すると、 合計33の 染色体領域が密陽23号とアキヒカりの草型に関与 し、 それら は8つ のグル ープに分 類できる ことが 明らかと なった 。グルー プIに属する3領域は、
穂数 を増加 させるが 、草丈およぴ止葉と穂の形質を減少させた。グループIIの4領域は、穂数を増 加さ せ、一 穂穎花数 を減少 させた。 グルー プIIIの2領域 は、出 穂日のQTLと一致しており、一見 無 関 係な 複 数 の 形質 に 作 用し た 。グ ループIVの2領 域は草丈 、グル ープVの4領 域は稈 長、グル ー プVIの7領 域は 葉 の 形質 、 グ ルー プvnの9領域は 穂形質、 およぴ グループVIIIの2領域は分 げ つ数 のみに それぞれ 作用し た。これ ら33領域 中18領域は、北陸とIRRIのどちらか一方で発現する か 、 も し く は 栽 培 地 間 で そ の 作 用 カ が 異 な り 、 環 境 と の 相 互 作 用 を 示 し た 。 ‑ J13―
本研究は、異なる気象条件下で多数の草型形質を網羅的に調査して、草型に関わる染色体領域を 徹底的に同 定・特徴づけした点で特に優れている。得られた結果は、育種現場において草型形質の 分離を理解 ・予想する際や分子マーカー育種で草型を改良する際に有用である。また、環境との相 互作用や多 面効果があるユニークな遺伝子をファインマッピング・単離・機能解析する際に一次情 報としでも利用でき、今後の育種・生理遺伝研究にとって重要な知見が得られている。よって審査 員一同は,小林創平が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。
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