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(1) コウノメソッド 河野和彦医師が公開している認知症の治療法 九州ではカワノと読むことが多いのでカタカナでコウノと表記する 1 介護者保護主義 2 家庭天秤法 3 処方量プリメントの活用 を 3 本柱としている 患者に人権があるように 介護者にも人権がある 抗認知症薬でよけい患者が興奮して介護し

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認知症薬物療法マニュアル

コウノメソッド

2019

【KONO METHOD

2019

公開日:平成 30 年 10 月 26日

名古屋フォレストクリニック 院長

認知症治療研究会副代表世話人

河 野 和 彦

【KAZUHIKO KONO M.D.Ph.D】

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(1)コウノメソッド

河野和彦医師が公開している認知症の治療法。九州ではカワノと読むことが多いのでカタ カナでコウノと表記する。 ① 介護者保護主義、②家庭天秤法、③処方量プリメントの活用、を 3 本柱としている。 患者に人権があるように、介護者にも人権がある。抗認知症薬でよけい患者が興奮し て介護しにくくなることを避けるために、介護が楽になる処方の在り方を提案してい る。介護しやすいとは、患者が穏やかで介護者に感謝してくれるように変えることで あり、記憶向上は、この次の目標になる。 近年コウノメソッドは、認知症の診断、変性疾患の治療、発達障害・うつ病圏への対応に ついても発展しており、薬の副作用情報や難治例の治療のヒントにもなるようにと考えてい る。 河野医師は、内科医であり神経内科や精神科の専門医ではない。コウノメソッドは東洋医 学的に病態を分類して、患者個々の体質や現在の病勢に合う処方をするため、未知の疾患や 複合病態、高齢者特有の問題点にも的確に判断・対応できるようになっている。 患者やご家族が、ネットでコウノメソッドを見て、このやり方で治療してほしいと主治医 にお願いするのは、状況をわきまえていただきたい。コウノメソッドは、河野医師個人の考 え方であって、主治医の治療方針に土足で踏み込むものではない。 コウノメソッドで診療してほしい患者さんは、コウノメソッド実践医に受診するのが原則 である。コウノメソッドは国内の医療の王道ではなく、ほとんどの医師は知らないし、支持 しているとは限らない。 薬剤名の表記 医療費削減のため、後発品が推奨されているが国民は一般名には慣れていないため、わか りやすいように先発品の商品名を使うが、アリセプトに関しては後発品(一般名)表記でド ネペジルと記載する。 病名の略号 認知症 アルツハイマー型認知症(ATD) レビー小体型認知症(DLB) 脳血管性認知症(VD) 前頭側頭 型認知症(FTD, ほぼピック病のこと)意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語(PNFA)、前頭側頭型 認知症(FTD)、神経原線維変化型老年認知症(SD-NFT)、嗜銀顆粒性認知症(AGD)、レビー・ピック複 合(LPC)、びまん性神経原線維変化病(DNTC)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、 多系統萎縮症(MSA)、皮質性小脳萎縮症(CCA)、正常圧水頭症(NPH)、パーキンソン病(PD)、アルコ ール関連認知症(ARD)。 発達障害 注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム(ASD)、アスペルガー症候群(AS)、学 習障害(LD)

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(2)ケトジェニックな身体が、すべての基本

薬物療法、環境整備以前の根本的問題として、現代の食事の見直しを考えたい。基本的に 炭水化物は食べないほうが良い。炭水化物を食べると眠くなり、脳機能が落ち、生活習慣病 やがんになるリスクは上がる。 著者が白澤式ケトンダイエット(糖質制限+ココナッツオイル)を実行して9kg減量し て(図1)内臓脂肪の顕著な減少(腹部 CT で確認)(図2)、脂肪肝の改善、あらゆる血液 データの正常化、12 年間の降圧剤内服の中止を実現した。 減量した医師の話を患者さんは真剣に聞いてくれる。外来で月に 50 人ペースで減量に成 功した経験から、中枢神経系疾患(認知症、発達障害、変性疾患)には、ケトン食がなによ り大事であると考えられた。発達障害や難聴性てんかんには、すでにグルテンフリー食が行 われており、それと同類の食事である。 白澤式ケトンダイエット:(肥満の場合)朝絶食。紅茶かコーヒーのココナッツオイルを 大匙一杯(13ml)入れて飲む。昼は、卵料理 2 個分か蒸し鶏+生野菜。夕は全くの自由で 炭水化物を食べてよい。運動は不要である。(健康のために歩いたほうがよいが、体重を落 とすだけの目的ならしなくてもよい) (肥満でない場合)朝も卵料理と生野菜。卵料理と言っても単なるゆで卵、生卵でかまわ ない。 (調理)できるだけオリーブオイルで料理する。ω6の油は使わない。バターは OK、マ ーガリンは禁止。 (嗜好)日本酒とビールは禁止。糖質ゼロビール、焼酎、ウイスキー、ブランデーは飲ん でよい。タバコは禁止。 (生野菜)トマト、レタス、キュウリなど手に入りやすいものを主体に。初期は市販のド レッシングを避けて、アマニオイル、オリーブオイル、岩塩で味付け。5kg 減量できたら 市販のドレッシングを使ってよい。マヨネーズは比較的よい。ケチャップは禁止。 (空腹対策)ココナッツオイルを飲むことで空腹感が起きにくくなるが、どうしても何か 食べたいときは、ミックスナッツやミニトマト(冷凍にするとシャーベットにかわりになる) を食べる。ナッツは 25 個まで食べてよい。初期のことは塩や油の加えていないものが望ま しいが、5kg 減量したあとは規制を緩めてよい。 (睡眠)睡眠時間は、7 時間半以上を確保。寝られない方は睡眠薬を使用してよい。 (ココナッツオイル)血圧を低下させる直接作用がある。下痢になる人、便秘になる人が 稀に見られる。ココナッツオイルが合わない方は、MCT オイルで再挑戦してみる。 解説:細胞を糖で運営するのでなく、ケトン体で運営することで健康長寿が実現できる。 (図3) ATD は第三の糖尿病であって、神経細胞が糖を利用できなくなって死滅するのであるか ら、ケトン体で細胞を運営すればよい。ケトン体を増やす方法は 15 時間絶食かココナッツ オイルである。ココナッツオイルの有効成分は中鎖脂肪酸(MCT)なので、MCT オイル

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を飲んでもよい。 品質は白澤先生が著書で提示している商品が無難である。ココナッツオイルは酸化しない が、冬の個体、春夏秋の液体を 2 回目がおきると分子が壊れて一部水を発生しカビを生じ うるので、1シーズンで使い切れないならボトルでなくステイクタイプをネット購入する。 糖尿病専門医には、糖質制限に反対意見の先生もおられるので、よく話し合ってゆくこと。 子供が行うと身長が伸びにくい可能性がある。肝硬変、重症腎障害の方など糖質制限しては いけない方もいる。 (糖尿病)糖尿病で肥満の場合。経口糖尿病薬やインスリン注射を打つ時刻に絶食はして はならない。主治医から糖質制限食をおこなってよいか許可を得ること。自分が糖尿病を担 当していない医師なら食事療法について患者に指導してはならない。 (勘違い)糖質制限食は、総カロリー制限とは異なり、タンパク質・脂質をいままで以上 に引き上げる手法である。脂質を増やしても心筋梗塞は増えない。ケトアチドーシスは、結 果としてケトン体が増えるが、ケトン体が悪いのではない。ケトン体が体内に多くあること が健康の秘訣である。糖質制限(3 食の炭水化物を減らす方法)より、やや厳しいのがケト ンダイエットである。朝は絶食だがココナッツオイルで空腹感はおきないので、苦痛ではな い。 (メリット)自分で実行してみて、薄味で味気ないと思ったことはない。なぜなら夕食は 全くの自由で、薄味にする必要はない。朝は絶食なので 1 日の総塩分は自動的に少なくな りココナッツオイルの相乗効果で高血圧症は消える。体重を落とす目的で運動する必要はま ったくない。ATD 予防に運動したり昼寝したりすべきだが、ケトン食にすると眠気はおき ない。深夜に勉強したい受験生は、昼と夜の食事を逆にすれば容易に徹夜できるであろう。 (名古屋フォレストクリニックでの指導状況)肥満の認知症、発達障害の方には、もれな く白澤式を提案している。肥満でない認知症には、絶食をせずにココナッツオイルだけを推 奨している。 参考文献:白澤卓二:Dr 白澤のアルツハイマー革命。ボケた脳がよみがえる。主婦の友社、2018。 http://blog.livedoor.jp/forest_diet/

情報化社会は、賢人にしかメリットがない

●インターネット普及の時代、一般の人もあふれるほどの知識を持っている。親が DLB と 診断されたら、子供たちは一晩で主治医より豊富な知識を得てしまうかもしれない。こうい う世の中では、臨床医は常に謙虚に対応し、患者・家族の非科学的な判断や間違った認識を 冷静に判断し、いきなりは否定せずに、患者からの情報も受け止めておき、ともに考えてゆ くとよい。 ●「白い巨塔」以来、医療過誤をテーマにしたドラマが多く、マスコミが医師への不信感を あおる。週刊誌は、副作用の話を大げさに書き、その薬でうまくいっている患者と医師の信 頼関係を崩しかねない。弁護士がテレビに登場することも多くなった。訴える権利ばかり広

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報されるが、権利が発生する前に義務を果たす必要がある。それは患者のマナー、医師のマ ナーである。たまたま、自分が治らなかったといって、匿名で医師を批判するのは行き過ぎ ではなかろうか。その医師はほかの患者にとっては名医かもしれない。 ●認知症への処方が不慣れな医師は、薬の副作用を熟知し、ときは用法用量よりも少ない量 で開始して様子を見ることも大事である。ドネペジルと他の薬では作用が異なる。ちゃんと 患者の身体と対話しながら丁寧に用量調整することが求められる。 ●薬の臨床試験は、高齢者では行われていない。しかし来院するのは高齢者である。集団統 計によって決められた用法用量であるが、そのとおり処方して全員うまくいくわけではない。 有意差があるものは科学であるが、それが安全という保障ではない。患者の安全を守るのは 担当医の機転、観察力であって用法用量ではない。

新しい薬が最良とは盲信しない

●新薬には夢がある。医師も患者も期待する。しかし未知の副作用をかかえている。総合点 で昔の薬とさほど変わりがないと気づかれるのには 10 年以上かかる。会社側は、統計的有 意に昔の薬よりよい成績だと主張するが、現場ではそれは違うと感じることが多い。正解は 常に患者さんの体の中にある。 ●コウノメソッドは、無駄な検査を批判し、古い薬価の安い薬でも推奨する。真空管でもよ いものなら使い続けるゾユーズ宇宙船と同じである。スペースシャトルは、常に最新の機器 を更新した結果デリケートで危険なロケットになってしまった。2 件の事故で 14 人が亡く なっている。先日もソユーズの事故があったが、やはり 2 人のパイロットは生還できた。 ●コウノメソッドは、プライマリケア医が認知症医療に挑戦するためのものであり、専門医 に何か意見するものではないから読まないでいただきたい。ただ、世の中は薬の種類が多す ぎる。鎮静剤(抑制系)、抗うつ薬、パーキンソン病治療薬は長年の経験から使ってよいも のを限定し、まずそれらに習熟することを勧めている。もし、それらでも改善できない場合 は、おそらく他の推奨外の薬を追加するよりもサプリメント等を使ったほうが改善できる。 よい薬は、いつまでも使われるので結局昔からある薬になる。

中核薬処方量は患者の体と対話しながら決める

●認知症は中核症状だけの疾患ではない。ATD に適応症をもつ4成分(ドネペジル、リバ スタッチ、レミニール、メマリー)だけを処方することが治療ではない。中核薬 3 者はい ずれも興奮性を秘めていて介護をよけい困難にする可能性を持つ。周辺症状が、病状進行に よるのか薬の副作用なのか鑑別できないようでは臨床感覚に欠ける。

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●漢方薬、サプリメント、点滴療法がなぜ効果を示すのかわからない点が多い。そのことを エビデンスがないといって手を付けないとするならば、4000 年の間なぜ漢方薬は使われ 続けてきたのか。医師はなるべく科学者であるべきだが、わからないものはわからない。逆 立ちしても治したいなら、なんでも挑戦する。それは、患者に対して無責任だとは考えてい ない。治療を放棄するほうが無責任ではないだろうか。 ●認知症の薬剤反応について経験が少ない医師は、まずは、コウノメソッドどおりにやって みればよい。コウノメソッドは数万の患者が教えてきたものを改善率の高い順で紹介してい る。自分の方法にメソッドを加えるのではなく、完璧にメソッドどおりに処方するとよい。 やがて、コウノメソッドの限界も知り、自分でアイデアを出すようになる。よいアイデアが 出たら、コウノメソッド実践医として名乗りをあげていただき、コウノメソッド改訂版に組 み入れられることもある。コウノメソッドの進歩は、患者のためになる。 ●コウノメソッド実践医は、シチコリン注射を常備していること、必要に応じて中核薬の少 量投与をおこなう考えに賛同する医師に参加権利がある。公表の可否は各自にまかせるが、 公表したほうが社会貢献できる。実践医になると河野医師にメール相談できる。義務は定期 的に配信される、またはネット公開される河野医師の臨床報告を一読して、常にコウノメソ ッドの最新手法を頭に入れておくことである。

診断は正確でなくてもよい場合があり、治すことだけを考える

●認知症のほとんどは死後の病理組織で確定されるわけだから、臨床診断の多くは疑いであ る。高齢化社会では認知症責任疾患が重複することも多く、脳血流シンチでも鑑別できない ことがある。アミロイド PET 陽性だから ATD と確定できるわけではない。DLB も正常老 化でもアミロイドはある程度陽性になる。高額な検査をする以上は、病状の改善という結果 を出すべきである。 ●このように、認知症病型を精密に鑑別する必要はない。大事なことは、必ず家族に患者が 怒りっぽいかおとなしいかを聞きだし、かなり怒りっぽいならグラマリール(25)2錠(朝、 夕)だけを処方すべきで、初回は抗認知症薬を処方してはならない。ただし、メマリーは静 穏作用を出してくれることがある。20mg は多すぎることがある。 ●少し怒りっぽいなら、グラマリール(25)1 錠(朝)+レミニール 2mg×2を処方し 28 日後に様子をみる。怒りっぽくないならレミニールだけを処方すればよい。ドネペジルはよ い薬だが、患者を選ぶ(易怒や歩行障害には、処方しにくい)。1,67mg とか 2.5mg で 処 方されると、実力を発揮する。

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●前頭葉機能低下群(ピック病、ATD フロンタルバリアント、PSP、大人の発達障害など) の陽性症状には、ウインタミン、セルシン、セロクエル、ニューレプチルという抑制系の選 択順位がある。陽証を抑え込み、医療保護入院を防ぐことが臨床医の最も大事な仕事である。

認知症は保険薬だけでは劇的改善はおきない

●難病を治せないのは、薬がないからではない。サアミオンを4倍使えば効果があるにして も、保険診療ではそれはできない。化合物(薬のこと)では既定の最大量を超えてはならな いが、漢方の古典ではアトピー性皮膚炎に補中益気湯を 4 倍使うなどという手法がある。 しかも正しい製薬法を守っている会社のものが効く。それは大手とは限らない。 ●患者の超高齢時代は、臨床医が日頃どれだけ創意工夫をし、未知の疾病と格闘しているか を知るためにつきつけられた課題である。とくに DLB はその象徴的疾患である。なおかつ、 DLB の 47%には ADHD が合併しているという(Golimstock)。つまり記憶障害や幻視は 認知症の病理が引き起こし、介護抵抗やうつ状態は生まれながらの脳構造によっておきてい る。いずれにしてもウインタミンで対応できる。 ●基礎研究者が一生に1個の新薬を発見するのが精いっぱいであるほど、薬は貴重である。 研究者の努力を患者に伝えるために臨床医がいる。臨床医は、たいせつに薬を扱い、その薬 を絶対に効かせる、絶対に副作用を出さないという気迫をもって日々診療にあたるべきであ る。 ●患者が悪化するのは、薬のせいではなく95%医師のせいである。工夫のない処方で認知 症が改善する確率は、プラセボ(30%)と同等である。それなら医師にかかる必要はない。 フランスでは 2018 年秋から抗認知症薬を認めなくなった。日本がそうなったとき、あな たは何を選ぶか。いまからサプリメントを勉強しておいたほうがいい。すでに保険薬よりサ プリメントのほうが中核症状を改善することはわかっている。 ●図4のように、認知症の中でもっとも悪化が速いのは DLB ですが、図5のようにサプリ メントを併用すれば、DLB はほとんど進行しません。もともと ATD より海馬萎縮が少な いので当たり前です。DLB は薬剤感受性が高いのですこしでも薬の用量が合わないと劇的 に悪化します。

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ご家族へのお願い

●コウノメソッドは、個人的な意見であり医療の王道ではありません。コウノメソッドが合 わない患者さんもいます。あなたの主治医に、いきなりコウノメソッドどおりにやってくだ さいとお願いするのは行き過ぎです。コウノメソッドは、認知症がよくわからない医師に参 考になればと思って作ったものであり、専門医に対して何か意見するものではありません。 基本的に、プライマリケア医に読んでほしいものです。患者さんやご家族がこれを読んで盲 信されると、現在の治療に支障が生じる可能性がありますので、まず主治医と信頼関係を結 んでください。 ●薬が合わないと思ったら 減らしたりやめたりしないといけないことがあります。 但し、抗うつ薬・パーキンソン病治療薬などは急にやめると高熱が出て致死的な副作用をお こすことがあるので、それだけは覚えておいてください。 ●私やコウノメソッド実践医でも改善できないことはありますが、過ちの確率は少ないと思 います。100%期待に応えられるわけではありませんが、頑張って治そうとする思いで登 録していると思います。実践医が私に相談すれば、病状が好転するチャンスが与えられてい ます。つまり、実践医は孤立していません。そして、私も難治例によって新たな知識を得ら れます。 ●コウノメソッド実践医に対して、受診もせずに手紙やメールなどで質問することはマナー 違反です。実践医は救助隊ではあるが、ボランテイアではありません。 ●医師を育てるのは、患者や家族です。謙虚な医師を選べば、道は開けるでしょう。コウノ メソッド実践医は、治せる能力が秀でているから登録されたのではなく、集まってくる患者 さんから学び取る希望を強く持つ医師集団です。力量の差はあるでしょうが、患者さんは実 践医を選んだり変えたりする権利があります。 ●ケアマネジャーのレベルに差があります。認知症を治療できる医師は個々に選ぶ必要があ り、大きな病院だからいいだろうと紹介するのは、さしたる根拠がないでしょう。とくにD LB、ピック病、PSP はコウノメソッドが最良の方法かもしれません。ATD はどこにかか ってもあまり差が出ないです。最近、幻視イコール DLB という風潮がありますが、超高齢 になると誰でもおきる現象です。

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コウノメソッドにおける診断の考え方

●認知症の責任疾患は、病理学からの報告では重複することも多く、また NPH、甲状腺機 能低下といった機能的障害は病理学ではマーカーが残らないので、ある程度臨床医に鑑別診 断の責任がある。 ●DLB、PSP の鑑別には MIBG 心筋シンチが有用である。鑑別能力は 80%。しかし臨床 医は、パーキンソニズムが出てきた患者にドパコールチェレンジテストをすること、ドネペ ジルをやめること、で共通している。 (ドパコール:メネシットの後発品で、低用量錠剤があるから使いやすい) ●またマンチェスターグループのFTLD分類における診断は臨床診断であり、病理組織は 関係ない。近年、原発性進行性失語(PPA)に LPA(日本語訳はない)が加わり、この病理 背景は ATD が多いことから、FTLD から LPA がはみ出してしまったため、FTLD は消え、 FTD(前頭側頭型認知症)と PPA が分離された。PPA を理解する方法は、脳梗塞によっ て起きた失語症と対比して覚えることである。すなわち感覚失語→SD、運動失語→PNFA、 伝導失語→LPA。病理基盤で一番可能性が高いのは、SD=FTD, PNFA=CBD, LPA=ATD と覚えておくと鑑別診断に時間がかからない。医学書の記載は少ないが、著者は SD-ATD はかなり多いと感じている。 ●CBD のように専門医でも正診率5割しかない疾患は今日、CBS(-syndrome)と仮診 断しておき、最終的な病理診断名をハイフンでつなげる表現法が普及しつつある。すなわち、 CBS-CBD、CBS-PSP、PNFA-CBD というように。 ●SDはピック化、ATDはレビー化、DLB は LPC 化してゆくことが多いので初期に診断 に時間や労力を費やすことはあまり得策ではない。開業医は医療機器を持たないので常に患 者の体と対話しながら走りながら考える。コウノメソッドでは、診断学的治療を推奨する。 診断学的治療が誤治(ごち)につながることはない。ドネペジル低用量で元気になる人は認 知症、抗うつ薬で元気になる人はうつ病である。健常者なら副作用で飲めないはずである。 近年、LPC の多くは ADHD を合併した DLB であることがわかった。 ●医療費削減、現状に合った処方のためには、精密な鑑別診断は不要である。顧客満足度の ために処方のための分類を行うことを勧める。つまり西洋医学は診断先にありき、コウノメ ソッドでは治療先にありきである。陽証に抑制系を処方することは診断より優先される。た だ、ピックらしさのある患者にはぜひウインタミンを選ぶべきである(肝障害には禁止)。 ●画像機器を持たない開業医にも 85%の診断率を達成するのが改訂長谷川式スケール (HDS-R)(図6)、ピックスコア 2015(図7)、レビースコア(図8,9)、発達障害スコ ア(図10)である。問診とこの4項目をまじめに行えば専門医より正診率は高くなるかも しれない。そして側頭葉てんかんを見落とさないこと。脳波でてんかん所見がでなくても自 動症(くちもぐもぐ)を家族が目撃したらデパケンを開始する。

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●グルタチオン点滴について、パーキンソニズム、小脳失調などの歩行障害に劇的な効果が あるため、原因不明の歩行障害には、タンデムゲイトの検査も行っていただきたい。排尿障 害もあれば MSA の可能性が大きい。

告知

●初診時、海馬萎縮が 0-0.5 の患者は認知症でない可能性もあるため、今後進行するなど と断言しないほうが良い。発達障害やうつ病圏かもしれない。改訂長谷川式がいいのに記憶 障害を強く訴えるのは ADHD かもしれない。ADHD は改訂長谷川式 18 まで落ちること がある。17歳~95 歳まで、大人の発達障害(ADHD)単独を考慮する。 ●80歳以上で改訂長谷川式の遅延再生が比較的できる方は、海馬萎縮が結構強くても SDNFT なら神経毒が出ていないため 5-10 年ほとんど進行しないこともある。図 11 ●高齢でピック症状が強く、海馬萎縮が比較的軽い場合は、①AGD、②ADHD(AS)+ATD かもしれない。いずれにしても処方すべきものは、ウインタミンである。 ●アルコール多飲による認知症は、近年 ARD と呼ばれる。必ず血漿ビタミン B1測定を行 っておく。シアナマイドを 1 回 2.5ml—3.7ml 程度処方すると飲酒できなくなってゆく。 断酒に成功すると改訂長谷川式は上昇してゆき、満点に近づく。アルコール依存者のほとん どは発達障害である。 ●糖尿病性認知症は、海馬萎縮が軽く、遅延再生はできる。猛烈な高血糖を管理すると改訂 長谷川式は上昇してくる。患者によっては treatable dementia の一種であるが、初診時に ATD と鑑別するのは難しい。 ●側頭葉てんかんは、抗てんかん薬で認知症症状が治ってしまうので、海馬石灰化に注意し、 動きが止まって口をもぐもぐしている(自動症)ことはないか家族に聞き出す。脳波検査で てんかん脳波が出なくても治療を開始する。図 12,13 ●高齢者の継続的な強烈でリアルな被害妄想は、遅発性パラフレニーかもしれない。海馬萎 縮はなく、改訂長谷川式は上がってゆく。 http://blog.livedoor.jp/forest_sd/

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コウノメソッド分類

●病理基盤にとらわれず、治療方針と直結した患者分類を行う。日本医事新報の「コウノメ ソッド流 臨床認知症学」(2015)で初めて成文化された。この医学書は福岡市医師会など の斡旋図書に指定された。 ●最初に分類すべきは、バイタリテイー分類(覚醒系、意識障害系、歩行障害系)である。 (図 14)これによってグルタチオン+シチコリン点滴の適応者が抽出される。覚醒系には ATD、FTLD が該当、意識障害系+歩行障害系には DLB、歩行障害系には VD,NPH がお おかた該当する。 ●次に分類すべきは、エネルギー分類(陽証、中間証、陰証)である。ATDは中間証の患 者が多い。ピック病は陽証、DLBは陰証が多い。LPCは陽陰証混合、つまり ADHD の 陽証に DLB の陰証が合併した患者が多い。 ●最後の分類が一般の病名に近い。神経伝達物質(NTM)分類である。 アセチルコリン欠乏病=ATD アセチルコリン・ドパミン欠乏病=DLB ドパミン過剰病=統合失調症、ピック病 アセチルコリン欠乏・ドパミン動揺病=LPC(症候群) ドパミン・ノルアドレナリン機能的低下病=ADHD 神経連絡不全病=VD

ベッドサイド診断に有用なスコア

改訂長谷川式スケール(HDS-R)

家族は初診前に患者に予習させてはならない。できないところを見せないと加齢と誤診され る。高度難聴の場合は、かわりに時計描画テスト(CDT)をおこなう。HDS-R スコアが 高い、あるいは上昇してきているのに記憶ができないと訴える比較的若い患者は ADHD か もしれない。ADHD 単独例は海馬萎縮が絶対にない。

スコア(総得点)

30 点満点のうち 7 点以下の場合は語義失語がないか確かめる(ピックスコアの中にある FTLD 検出セット)。語義失語があれば SD である。SD の病理診断は多くは FTLD(ドネ ペジルが効かない患者)であり、半数が ATD(ドネペジルが効く患者)である。4.三単語 復唱のみできてあとは全くできない患者(スコア3)は SD である。

失点パターン

4,5,6,7 の設問を行うだけで鑑別ができる。数字関係(5,6)が不得意で、遅延再生(7) が得意な患者は DLB である。総得点が高い割に遅延再生(7)がまったくできない患者は ATD である。数字関係も遅延再生もまだら状に間違える患者は VD など他の認知症である。 85 歳以上では ATD はぐっと減り、病理学的には SD-NFT か AGD が多いが臨床ではわ からない。あまりピックの萎縮がないのに、ピックらしさのある高齢者は AGD である。少

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量のウインタミンがよい。

バランス8

(図 15) 若い患者でうつ病圏との鑑別が難しい時は、うつ病圏、認知症各8項目の問診、検査を行 うことによって先入観なく鑑別できる。家族がチェックしてもよい(バランス8のチェック により、素人でも精神科医よりは鑑別能力が高くなる) 判定 うつ病スコアと認知症スコアで該当するものが多い方が患者の診断名となる。ただ し、認知症のうつ状態(どちらもスコアが高くなる)はありうる。この場合、処方選択は① 興奮系か覚醒系、②ドネペジル、③ジェイゾロフトの順である。 大うつ病は精神科に丸投げして、非定型うつ病と老人性うつ病は自分で治すこと。 大うつ病と非定型うつ病の違い:前者は、朝調子が悪く、何も楽しみがない。食欲がなく不 眠である。頭痛、便秘が強い。後者は、夕方調子が悪く、少しは楽しみがあり、食欲はよく 夜も寝られる。非定型うつ病の場合、はたから見て自分勝手な病気でありいじめの対象にな りやすい。必ず ADHD でないか確認する。 後者はジェイゾロフト25mg夕だけで80%が2か月以内に再来しなくなるほどすぐに 完治する。非定型うつ病は、それほど感冒のようなものである。 うつ病圏での病名の取り扱い うつ、うつ病という言葉は使わないほうがよい。大うつ病、 非定型うつ病、老人性うつ病という病名は使ってよい。これらの総称は、うつ状態、うつ病 圏と言うべきである。認知症のうつ状態という言い方が正しく、認知症と大うつ病の合併と いう患者が存在するかどうかは、科学的根拠が必要である。

レビースコア

( )は満点、迷ったら半分を加点。 1 市販の風邪薬などが効きすぎたということはないですか(抗生剤薬疹を除く)(2) 2 幻覚が過去に1度でもありましたか(2) 妄想が続いていますか(1) 3 意識を失ったことはありませんか(てんかんを除く)(1) 4 夜中の寝言はありますか。過去にも。ぼそぼそ(1) 叫ぶほど(2) 5 食事中むせますか。嚥下性肺炎(1)、ときどきむせる(0.5) 6 趣味もないほどすごく真面目でしたか(1)かなり真面目(0.5) 7 昼間かなりうとうとしますか(1)、寝てばかりですか(2) 8 安静時に手が震えていませんか(1) 9 (診察)肘の歯車様筋固縮(2)、鉛管様筋固縮(1)、最初だけ抵抗(1) 10 体が傾きますか? かなり(2)けっこう(1) 判定 16 点満点中 3 点以上で90%DLB。

ピックスコア 2015

1 意味もなく不機嫌になることが多いですか?(1) 2 最近子供っぽくなっていませんか。イスを回すとか指をなめるとか。(1) 3 家でウロウロしませんか。落ち着かない様子で。(1)

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4 (診察)FTLD 検出セット(2) 5 家族の言葉に対して「それはどういう意味?」と聞くことはないですか?(2) 6 鼻歌とか口笛をふくようになったということはないですか? 人が多く集まるところへ連れてゆくと興奮しませんか?(2) 7 (診察)改訂長谷川式スケール 7 点以下(1) 8 家族のおかずを間違って食べることはないですか? 商店で支払わずに盗ることは?(1) 9 最近甘いものばかり食べるようになっていませんか(1) 10 スイッチが入ったように急におこることはないですか(1) 11 家族の後ろを影のようについてきませんか(1) 12 (CT)萎縮の左右差がある(1) 13 (CT)ナイフの刃様萎縮がある(1) 判定 16 点満点中4点以上なら90%FTLD。

LPC パターン

レビースコア、ピックスコアともにおおかた5点以上の患者を LPC と診 断しておくと便利である。病理基盤が DLB か FTLD が確実なら真性 LPC と呼ぶ。いずれ も確実でないなら LPC 症候群としておき、経過を観ながら PSP,CBD,CCA,MSA と気づい てゆけばよい。LPC 症候群の陽性症状にはウインタミン、中核薬にはリバスタッチをつか うのが正攻法である。近年 LPC の多くが ADHD+DLB であることがわかってきた。

時計描画テスト(CDT)

コウノメソッドの CDT は3書式方式である。(図 16) 国立循環器病センターのホームページでもこの方式が紹介されている。今回、認知症、精神 病、発達障害が描いた異常な時計の出現頻度を紹介する。有意差検定はしていないが ATD に比べて何倍多く描いた、と言う言い方は許されると思う。図 17-22

コウノ式CDTの歴史と普及状況

著者は、CDTの普及のためには、①医学的・科学的であること、②採点しやすいこと、 を重視して採点方式を考案しました。 DLB、側頭葉てんかんのような意識障害系患者がみせるCDの動揺性を的確にとらえるに は3段階方式が有用です。3回描くうちに患者の能力の最高値と最低値が出る期待が持て、 書式AとBで差が大きい時はその平均得点とすることで患者の実力から大きく外れた評価 をしないようにしました。非常に簡単な検査である中で最大限医学的にしたのです。 いままでの他の採点方式は、概念的な評価法のため、「こんな絵の場合は、どう考えれば いいのか」という疑問が多くのサンプルで生じたはずです。そのためには、実際に異常なパ ターンをすべて把握して43パターンに分類したという作業がもっとも大事だったと思い ます。その作業をした研究は1つもありません。 このパターンを認識したことで、誰が採点しても同じ得点になるようになったと思います。 また、症例数が増えたことで各病型による特異な絵も把握できました。 著者の採点方式は、1994年の原著に始まり,2001年から国内で2件、アメリカで学会発 表し、2002年出版の成書で詳細な説明を行っています。その後異常コードを若干変更しつ つ、今回の掲載となりました。

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コウノ式CDTの初期の発表と著書

河野和彦ら:痴呆患者に対するThe Clock Drawing Test の新しい採点法とその有用性について。老化と疾患 1994; 7(12): 1875-1885.

河野和彦ら:時計の絵を用いた痴呆症の早期発見。

第43回日本老年医学会学術集会、2001.6.13-15、大阪。

河野和彦ら:痴呆症のスクリーニング検査としての『時計の絵』の評価法の検討と有用性。第44回日本老年医学会学術集 会、2002.6.12-14、東京。

Kono K: “Alzheimerization” and the clock drawing test. 2nd Annual Dementia Congress. 2003.9.12-14, Washington DC.

河野和彦:プライマリケアのための痴呆診療技術。フジメデイカル出版、2002。 河野和彦:痴呆症臨床における時計描画検査(The Clock Drawing Test, CDT) 昭和病院雑誌 2004;1(1): 76-89.

河野和彦:痴呆症臨床における時計描画検査(The Clock Drawing Test, CDT)の有用性。バイオメデイカル・ファジ イ・システム学会誌 2004; 6(1):69-79. コウノ式CDTを紹介、利用したもの 現在までにインターネット、医学書などで採用されていますが著者が誰であるか書いていただけないケースも多いため、 ここで紹介しておきます。 「描画検査」「時計描画テスト」「CDT 河野」「時計描画 書式C」で検索し、おおかた最初の6ページまでに検索 されたコウノ方式のCDTについての紹介、論文は次の通りです。 【紹介記事】 国立循環器病研究センターHP:http://www.ncvc.go,jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph68.html 認知症の窓:https://認知症症状. Com/sign/cdt

SEESAA BLOG: http://nagisan.seesaa.net/article/285680507.html St-media (運営者:大原 修)など 【実践】 北海道留萌市: 小海康夫(札幌医大医学部フロンテイア医学研究所): 留萌市独居高齢者栄養実態調査 平成24年度実施分経過報告 書。平成25年11月22日。 広島県尾道市(医師会) 片山 壽ら:検証 4年目を迎えた尾道市医師会認知症早期診断プロジェクト(最終回)中核・周辺症状を考慮した“尾 道方式治療マニュアルづくりへ新たな挑戦—CDT(時計描画テスト)で500症例を集積して検討。クリニックマガジン 2007; 3: 39-42. 広島県尾道市因島(医師会) 巻幡榮一ら:在宅医療拠点事業成果報告~因島医師会の在宅医療・介護への取り組みについて~。 www.ncgg.go.jp/hospital/overview/.../06077221_ppt.pdf 長野県泰阜(やすおか)村: 平成26年度老人保健事業推進費等補助金事業 「高齢者生活実態追跡調査」—地域包括ケア実現にむけての『社会診断』 手法の開発—報告書。平成27年3月。 【論文】【成書】 金沢大学保健管理センター(丸田ら) 丸田高広ら:認知症の脳ドック健診における時計描画試験の有用性。人間ドック 2014; 29: 571-576 長野県輝山会記念病院(佐藤ら) 佐藤弘子ら:リハビリ医療における認知機能スクリーニングについてー時計描画検査(CDT)を中心にー。認知リハビ リテーション 2010; 15(1):36-44. 刈谷総合病院作業療法学科(岩丸ら) 岩丸陽彦ら:時計描画テストと改訂長谷川式簡易知能評価スケールとの相関について。 www.netnfu.ne.jp/heart/educate/no4/iwamaru.pdf 平川 亘:明日から役立つ 認知症のかんたん診断と治療、日本医事新報社、2017. 以上は、新刊に詳細を記載してある(日本医事新報社「コウノメソッドでみる軽度認知 障害の世界(仮題)。2019.2 頃出版予定 コウノ式 CDT 自動採点装置:クロッキーは、ユメデイカ(大阪)が研究目的などに貸し出 ししている。

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コウノメソッドの神髄

コウノメソッドの神髄 1. 高い改善率、常に進化 一般薬だけでなく、サプリメントや点滴療法を使う。 一般の用法用量とは異なる独特の投与法 認知症以外のあらゆる中枢神経系難病、発達障害も治せる 病状の変化に合わせた的確な処方アレンジ 2007 年から毎年ネットで開示し更新。 新たな治療法はリアルタイムで公表中 更新頻度は約5日ごと (ドクターコウノの認知症ブログの中にある、意味性認知症、大人の発達障害、 ダイエットのバナーをクリックする) 約 370 人の実践医が、意見交換し新たな方策を考案しつづけている 2. 副作用予防、介護者保護主義 介護者、施設スタッフに薬剤調整法を教える(家庭天秤法) 介護者が楽になるように患者を変える 介護者が発達障害なら、そちらも治せる 3. 低い医療コスト、医師教育システム 高度医療機器なしで鑑別診断できるツール 古い薬を認知症用の用量設定でよみがえらせた 薬の選択順や用量を細かく指導し、不慣れな医師でもすぐに治せるようにした

基本用語

中核症状:記憶、判断力、見当識などの障害。認知症の本質的な症状(図 23) 周辺症状:中核症状から派生して環境などによって一時的に出現する症状 陽性症状:周辺症状のうち過剰なエネルギーによって介護者を困らせる症状。興奮、易怒、 介護抵抗、徘徊、暴力、独語、妄想、幻覚、不眠など 陽証:陽性症状が強い患者 陰性症状:周辺症状のうちエネルギー不足によって本人が苦しむ症状。無言、無為、無動、 うつ状態など。認知症のうつ状態は、精神科の大うつ病とは使う薬が異なる。 陰証:陰性症状の強い患者 中核薬:中核症状を一時的に改善させる薬。アリセプト、レミニール、リバスタッチ、メマ リーの4成分。前3者は併用できない規則。4成分とも副作用予防のため低用量から増減 する規定があるが、その規定を無視することが改善率を上げ、脱落をなくす。レミニール も1日2回飲ませる必要はまったくないし、3回に分けても良い(但し書き必要)。リバ スタッチははさみでカットしてよい(カットしてはいけないパッチ製剤もある)。 抑制系(薬剤):陽性症状を鎮めるために使う介護者を助ける薬。グラマリール、抑肝散、 ウインタミンなど。過剰だと過鎮静になる。 家庭天秤法 抑制系で過鎮静させないように家族が抑制系を加減すること

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興奮系(薬剤):陰性症状を解消するために使う患者を助ける薬。サアミオン、シンメトレ ル。 覚醒系(薬剤):嗜眠の患者を覚醒させて ADL、食欲、歩行を改善。シチコリン注射のこと。 アメリカサプリの CDP コリンは、内服でも覚醒効果がある。250mg カプセルを 1 日 1-3 回。(自分で輸入する。到着に 6 日かかる。医師の指導を受けて購入) フェルラ酸含有食品;米ぬか成分のフェルラ酸とガーデンアンゼリカないしバコパモニエラ が配合されたサプリメントで認知症、嚥下機能、歩行機能、脂質・血圧・HbA1c などの 改善作用があり多くの学会発表がされている。マウスの実験では老人斑の減少が証明され ている。神経伝達物質への驚くべき結果が出ており,いずれ発表される予定である。ガー デンアンゼリカ系とバコパモニエラ系の2系統がある。近年フェルラ酸単独のものもある。 →易怒の強い患者 ガーデンアンゼリカの少ないものを選ぶ プロルベイン DR:ルンブルクスルベルス(赤ミミズ)の消化酵素などを主成分とした動脈 硬化改善サプリメント。動脈内腔のプラークは3か月で有意に退縮、血圧低下、末梢循環 も改善する。血小板凝集抑制剤と併用した場合、その作用を増強する傾向は否定できない。 医師の許可で購入する。プレタールの後発品は、効果がない。(少なくとも平川亘医師が 行った後発品大手のもの)

テクニカルターム(河野造語)

ベルシェープ 用量依存性でなく、過量になるとかえって効果が薄れる釣鐘型の反応曲線 サーフィンアレンジ 患者の周辺症状の陽陰の波に合わせて薬を加減すること 興奮系併用薬引き抜き効果 中核薬を増量したときに患者が易怒になったら併用していた 興奮系(サアミオン、シンメトレル)をやめれば落ち着く。 バードシューテイング 中核薬の増量ないし開始の際に、興奮性を見越してあらかじめ抑制 系を併用しておくこと。飛ぶ鳥の先をねらって打つという意味。 9mgピーク リバスタッチを 4.5mg から 9mg に増量したときに効果と易怒が同時にお きること。対策は 4.5mg に落とすのではなく、9mg を 20%カットする。 大後悔パターン リバスタッチで効果が出たのに用量規定を守り増量すると傾眠などの副 作用が出て台無しになってしまうこと デビルメソッド 何の根拠もなくでたらめに多剤を処方し、増量しますます患者が悪化する 処方のこと。 レビー化 ATDの脳内老人斑がレビー小体に封入されてDLBの症状が加わってきた状 態 ピック化 SDの側頭葉病変が前方に広がり、ピック症状が加わった状態 LPC DLBとFTLDが合併したように観察される認知症。認知症の約 15%を占める。 多くは ADHD+DLB である。介護抵抗で家族を困らせる。ウインタミンを処方。 LPC 化 DLB のピック化、ないし FTLD のレビー化によってLPCとなった経過。 LPC 症候群 レビースコアもピックスコアもともに高いが DLB+FTLD ではない患者群で

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CBD,PSP,強直性筋ジストロフィー、FTD-MND type 、MSA、全身性ジスト ニアなどが含まれることが確認されている。 コウノメソッドの安心理論 完璧な鑑別診断ができなくても、ピックらしさのある患者には ピックセットを処方しておけば、おおかた改善する。対症処方なので自分が初めて遭遇す る疾患でも改善させられるという処方理論。 コウノミクス 診断に医療費をかけず、古い薬を多用し、入院の必要性をなくすため認知症 医療費に大幅な節約効果がもたらされること。岩田明実践医の造語。 コウノメソドロジー 西洋医学の診断先にありきを順守せず、病理学の奴隷にならず、複雑 怪奇な認知症の実態に対応するために、薬理学の常識を打破した認知症治療学を1から構 築しなおし、疾患をとりまく社会病理も考慮しつつ介護者保護などの確たる処方哲学を柱 としたコウノメソッドの治療体系。用量のテーラーメード設定を生命線とする。 用量感覚 患者の体格、陽性症状の強さなどなどから瞬時に的確な処方用量を決定できる職 人感覚。初診時からそれが適合した場合、一発改善が可能となる。患者が遠方から来て再 診がない場合は、一発改善が要求される。 アセチルコリン欠乏病 ATD のこと アセチルコリン・ドパミン欠乏病 DLB のこと ドパミン過剰病 統合失調症、ピック病のこと アセチルコリン欠乏・ドパミン動揺病 LPC、LPC 症候群のこと ノルアドレナリン・ドパミン低下病 ADHD のこと 海馬置き去りタイプ FTLD と気づく CT 読影の際の現象。海馬が萎縮せずに側頭葉外側な ど他の部位の萎縮が強い組み合わせ。これを ATD と誤診する医師はいない。 シンメトレルロケット アマンタジンを朝 100mg、ないし朝 100mg+昼 100mg を投 与すること。朝 75mg ないし朝 75mg+昼 75mg はシンメトレルサブロケットを称す る。開発した会社への敬意を示すために先発品名をロケットにつけた。シチコリン点滴よ り効く患者がかなりいる。失敗(ハイテンション、妄想、奇異反応)も多いので要注意。 サアミオンロケット ニセルゴリンを朝 8-10mg 投与する方法。 トリガー理論 一度の投与量を多くすることで、それが引き金(トリガー)となって発火し 患者に変化がみられること。1 日 3 回等価投与してもまったく効かない薬でも、効かせ たい時刻に2,3倍飲ませることで効果が出る。 コウノカクテル点滴 グルタチオン、シチコリン、ソルコセリル、ビタミン C の4種を患 者に合わせた配合でカクテルした点滴。患者がグルタ組、シチコ組、ソルコ組のいずれか であるのか早く発見すること。グルタチオンとシチコリンは同時増量すると調子がわるく なることがあり、どちらかというと天秤のように増減する。シチコ組ならグルタは少し (0-1000mg)のほうがよい。抗酸化点滴のマイヤーズカクテルを意識した命名。GCS 点滴という医師もいる。 多系統神経伝達物質欠乏状態 超高齢者の脳内環境のこと。アセチルコリンだけを賦活する ドネペジルの規程量単独投与が、いかにこのバランスを崩すかわかる。

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認知症の早期発見

老化か認知症かの鑑別

→ドネペジルチャレンジテスト ドネペジル 1.5mg を 28 日間服用させて、副作用が出たらアセチルコリンは不足してい ないと考えてMCIと診断し、100M2-3 本を推奨し 1 年後に再診させる。体調がよく なったらATDなどアセチルコリン欠乏系の疾患の発病と考えて 2.5mg に増量する。本 人には認知症と正常には境目がないのでいまから薬を飲んでおいたほうがよいと説明す る。もちろん病理的にはATDである。 どうしても白黒つけたいならアミロイド PET ドッグを受けるように勧める(30 万円より 安価な施設もあるようだ)。 ただし正常加齢、DLB でもアミロイドは陽性になりうる。非常に強い陽性のときだけ ATD だろうと予想できる。タウ PET や髄液検査でほぼ ATD と確定できる。ただ、いま表面 に出ている症状が ATD だけで説明できるかどうかは臨床医の総合的判断による。たとえ ば、AS で易怒、ATD でもの忘れというパターンもある(かなり頻度が多い)。その場合、 易怒にはチアプリドでなくウインタミンになる。

注意欠如多動性障害(ADHD)の除外

高知大学の報告では、55 歳以上の MCI の12%が ADHD である。著者の経験では MCI の約半数が認知症予備軍ではなく、ADHD かうつ病圏であった。ADHD やうつ病圏の知 識なく、MCI の方の予後を語ることは、危なっかしいことである。見極め方は、冠状断で 海馬萎縮がほとんどないことである(図 24) 図 25 に示すように、集団統計でみてしまうと、結局将来の進行度は海馬萎縮度が規定 していることがわかる。この際、SD を独立させて集計させることで、きれいな相関が出 る。SD の概念は FTLD の中で設定されたのだからマンチェスターグループは、後方型認 知症を想定していない。しかし広義の語義失語群には、ATD がたくさん入ってくる。それ も含めて失語グループにまとめるとグラフのように改訂長谷川式の急激悪化群として突出 する。 ADHD は容易に二次障害(精神病)をおこす。二次障害がない純粋な ADHD は、プラ イマリケア医で治せばよい。著者は初心者であるが、患者さんは集まってくれている(図 26)。つまりコウノメソッドの診断・用量感覚は他の疾患にも応用できる。 海馬に小さな石灰化がある方は、側頭葉てんかんかもしれない。脳波検査で陰性でも 家族の観察で口をもぐもぐする様子があればデパケンを開始する。眠気が出るなら減量す る。高齢者については抗てんかん薬の血中濃度モニタリングは不要である(十分な領域ま で上げてはいけない) 海馬萎縮の非常に軽い認知症はいるが、海馬萎縮の強い発達障害やうつ病圏はいない。 ADHD と認知症が合併することはよくある。その場合、当然海馬萎縮は強い。VD は海 馬萎縮はしない。近隣に大梗塞があれば二次性に片側だけ萎縮することはあるが。

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うつ病圏の除外

→1)バランス8 →2)ジェイゾロフトチャレンジテスト 食欲低下系にはスルピリド 50mg を優先。

よくある誤治

処方が不十分である例)混合型なのにサアミオン、プレタールの処方が欠けている。 意欲のない処方) ATD にドネペジルだけ処方し、不眠や易怒の対策がなされていない。 介護を無視した処方)ATD やピック病で易怒が強いのにドネペジルだけを処方している。 危険な処方) 歯車現象が強い DLB なのにアリセプトだけを処方している。 (しばらくの年数は、DLB と診断したら先発品しか使えない規則にされている) 誤診からくる処方)認知症なのに抗うつ薬を処方している。 病態診断からくる処方)薬剤過敏性 DLB の妄想にリスパダールを処方。 パニック処方)DLB に対し、ドネペジル常用量、PD 治療薬を処方している。 →ドネペジルをやめれば、PD 治療薬は必要量が減る。 PD 薬を多種類使いすぎる。高額で効かない薬を追加している。 ●家族に専門医の処方でどうなったかを聞きだし、悪化したのなら処方を変えなければなら ない。 ●聞き出し方 処方で怒りっぽくなっていないか、足が出にくくなっていないか、食欲がお ちていないか。 ●自分が勝手に処方を変えてもっと悪化したらどうしようと考えるのではなく、患者の歯車 現象を毎回調べ、家族に「どうしてほしいか」を尋ね、少しずつ処方を変えてゆけば問題は おきない。

応急措置

●プライマリケア医における初診時の鑑別診断は、認知症、ADHD、非定型うつ病、老人性うつ 病、側頭葉てんかんの5疾患のいずれかを鑑別すればよい。呼吸器、循環器疾患の既往があ れば胸部レントゲン写真をおこない、認知症をおこすような低肺機能が疑われないかを除外 しておく。 ●全員に甲状腺機能検査を行う(TSH, freeT3, freeT4)。飲酒が3合以上なら膝の腱反射 を調べ、脚気がなくても血漿ビタミン B1 を採血する(特殊スピッツ)。最近、強い頭部打 撲をして不全麻痺がある場合は、できるだけ早く画像診断を受けるように誘導する。発熱、 せん妄なら脳炎を疑い病院神経内科に依頼する(当日)。 ●3日単位で ADL が低下する場合は、クロイツフェルト・ヤコブ病を疑い、イギリス渡航 歴、脳外科手術の既往を聞きだし、なくても病院神経内科に依頼する。神経内科が不在の場 合は脳波だけを依頼し、自分で診断する。脳波依頼箋には電極を廃棄するように指示する。 ●明らかに認知症と思われるなら改訂長谷川式を行う。高得点でも家族の訴えが強ければ認 知症と仮に認識しておく。うつ状態が強いようならバランス8を行う。大うつ病や双極性障 害が疑われたら精神科に丸投げする。大うつ病に抗うつ薬を処方すると自殺を助長する可能 性がある。双極性障害に SSRI を処方すると躁期に反社会的行動(最悪は殺人)をおこすき

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っかけになる。認知症(とくに DLB)、ADHD、非定型うつ病、老人性うつ病なら自分で 治す。 うつ状態の対応 → ①認知症のうつ状態:まず興奮系、場合によっては覚醒系。無効ならドネペジル、無効 ならジェイゾロフト。 ② 非定型うつ病:ジェイゾロフト(25)1 錠(夕) ADHD でないかチェック。 ③ 老人性うつ病なら孤立させないように環境整備。不安ならワイパックス、リーゼ、 訴えが強ければウインタミン 1 回 4mg。 ●せん妄が疑われたら、その場でシチコリン「日医工」1000mg(4ml)を5%ブドウ糖(3ml 程度)に溶かして静脈注射する。不可能なら原液 2ml ずつ両肩に筋注。強いせん妄の場合は、 よけいハイテンションになる場合がある(そういう患者は LPC が疑われる)ので 500mg にとどめる。できれば当日画像診断を依頼する。アミロイドアンギオパチーによる脳出血、 脱水、急性期脳梗塞などを考慮。 ●歩行障害の合併した せん妄のときは、グルタチオン 1400mg+シチコリン250mg 程度の静注を行う。グルタチオンと併用するとシチコリンの必要量は減る。グルタチオン点 滴は老衰も治せる。どうしても1週間生きていてほしいなら毎日点滴すれば生きている。 ●歩行障害系:音叉を足関節の外踝にあて、(図 27)振動が感じられないなら脊柱管狭窄 症の可能性がある。マルチスライス CT で腰椎などを撮影。次に認知症圏(DLB,PDD,VD, NPH)、変性疾患(PSP、MSA,CBD)を考慮。あっけらかんと明るい患者は、PSP か CBD である。 ●家族に介護保険は申請してあるか、ケアマネジャーへの連絡がすぐにできるか聞いておく (緊急入院に備えて)。リスパダール液 1ml を処方し、興奮時一度に2本まで、1日4本ま で服用させて良いと説明する。液体が飲めない場合はリスパダール OD1mg 錠やジプレキ サザイデイス 5mg(糖尿病には禁止)とする。 ●開業医は初診時、画像診断できないことが多いので、家族が早く症状を改善させてほしい 場合は、キャラクター分類(陽証か陰証か)をして処方してもかまわない。応急措置で使用 するのは原則として抑制系薬剤のみである。グラマリール(25)3錠を処方し、落ち着かな ければ 6 錠まで増やしてよいと電話し、奇異反応(よけい興奮する)が出たら再来するよ うに助言する。ウインタミンなどに切り替える。 ●家族の要求通りに処方すればよい。コミュニケーションシート(図 28)を使って、そこ に書かれた処方をすれば自動的に患者を改善できる。

採血結果を受けて

●甲状腺機能低下が見つかったら、軽症(TSH20 以下)にはチラージン 25μg を開始。 重症なら狭心症の有無を聞いてなければチラージン 50μg を処方して、2か月後に再検 しチラージン用量を調整する。TSH が高く freeT3, freeT4 が正常域なら橋本甲状腺炎 が疑われるので毎年再検する。いずれ低下してくる。甲状腺機能亢進が稀にいて、そのせ

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いで陽性症状が強くなっている場合がある。 ●大球症なら貧血でなくても血清ビタミン B12 と葉酸を採血してからメチコバールを筋注 しておく。胃全摘の既往がないか聞き出す。ふつう全摘4年から 10 年後以降に貧血、認 知症をおこす。(残胃があっても欠乏をおこす場合がある)。B12欠乏が判明し胃切既往 がなくても悪性貧血として、最低年4回の注射を一生続ける。不思議と内服で改善する患 者もいる。

画像検査を受けて

●認知症を疑う場合、患者がおとなしくしておられない場合、200 を超す血圧(脳出血) は CT、一過性脳虚血発作などの虚血疾患を疑う場合は MRI をオーダーする。迷ったらす べて CT でよい。なるべくマルチスライス CT(3方向が見られる)の施設を指定する。 ●典型的な ATD、FTLD とわかっても NPH、CSH 除外のため画像診断しておいた方がよ い。混合型は画像がないと診断できない。虚血がある陰証にはサアミオンがぜひとも必要で ある。現在 NPH が悪さをしていなくても今後の画像比較のために初診時のデータは必要で ある。 ●画像を読影する前に、カルテに臨床症状から予想される疾患を書いておくこと。画像と症 状が乖離した場合は症状で診断するよう気持ちを固めておく。例えば DLB と思っていたが 海馬萎縮が3+以上だったら、海馬萎縮の強い DLB と理解すること。コウノメソッドは症 状に対して行うのを基本としているため、認知症病型は厳密に行われる必要はない。陽性症 状、陰性症状、意識障害の鑑別さえ間違えなければ患者は改善する。

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コウノメソッドを実行するための推奨検査、必須薬剤

必須診察

問診 ADHD ではないか確認

歯車現象

(リラックスさせて肘を他動的に屈伸させてドパミン欠乏を察知すること) 改訂長谷川式スケール 語義失語チェック(左手で右肩を叩いてください、海老を何と読みますか?) 血液検査(甲状腺機能を含む)

推奨診察

音叉検査(足関節の外踝に音叉振動を与えたとき、振動を感じない患者は過半数に脊柱管 狭窄症がある) 眼球運動チェック(PSP)初期は期待できない タンデムゲイト(CCA, MSA 検出) 指鼻試験、指指試験 陽性の場合は小脳失調はもはや中等度以上である。

推奨検査

レビースコア 3点以上で90%DLB ピックスコア(FTLD 検出セットを含む) 4点以上で90%FTLD バランス8(若い患者でうつ状態の場合) 発達障害スコア マルチスライス CT 多発梗塞、脳腫瘍を見落とすおそれはある

外注検査

認知症200名に1名くらいは、脳血流シンチ、MIBG 心筋シンチを行うのが望ましい。 診断精度は80%。陽性:PD, PDD, DLB 陰性:ATD, PSP, CBD 多発梗塞、脳腫瘍を疑ったら MRI を発注する。 DAT スキャンは著者の経験不足のため存在意義がわからない。

必須薬剤

1日使用範囲 1 抑制系 (図29) 先発3本柱 グラマリール 15-150mg (ATD, VD, SDNFT に) ウインタミン 4-75mg (FTD, AGD, 発達障害に) 抑肝散 1-2 包 (DLB に) 3包でも無効なら早期に中止(低 K 血症のリスクが上がる) セカンドライン セルシン 1-6mg セロクエル 12.5-150mg ニューレプチル 3mg-15mg 妄想専門:セレネース 0.3mg-1.5mg パーキンソニズムがある患者でも必要なら使用可能の用量

2 中核薬先発 3 本柱

(図 30) ①

レミニール 2-20mg

適応疾患が多い。長期戦に強い。(副)嘔吐してしまう

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ドネペジル 0.5mg-8mg

若い ATD に。最初の約 1.5 年はよい。(副)易怒、歩行障害

or リバスタッチ・イクセロンパッチ 2.25-13.5mg)

側頭葉てんかんを合併した認知症 への第一選択。歩行障害系に。低用量使用で覚醒作用あり。(副)35%にかぶれ

メマリー5-15mg

記憶改善より静穏作用に期待。軽症には使用しない。 (考え方)最高用量まで引きあがるなら、その一歩手前でとどめておいてサプリメントを併用した ほうが蓄積効果による副作用の出現リスクを回避できる。フェルラ酸含有食品は、4-5 年後に効い てくることがある。

3 興奮系 (シンメトレルロケット サアミオン)

アマンタジン 50mg 錠 を朝2錠、ないし朝 2 錠+昼 2 錠=シンメトレルロケット 朝 1.5 錠、ないし朝 1.5 錠+昼 1.5 錠=シンメトレルサブロケット ニセルゴリンを朝 8mg で開始し、易怒が起きなければ、朝 10mg にしてみる。昼、夕はなし。 副作用あったら減らすように家族に言っておくこと 副作用:ハイテンション、易怒、妄想、幻視、奇異反応(ぐったりする)

4 うつ系 (ジェイゾロフト 25、サインバルタ 20)

5 レビー系 (ドパコール 50、ペルマックス 50、ビ・シフロール 0.125)

6 食欲セット(ドグマチール 50、プロマック D75)

7 感冒系(コタロー麻黄附子細辛湯カプセル) 薬剤過敏者の感冒に

コウノメソッド実践医の必須注射剤

1 歩行系 (グルタチオン 200)1 日 600-3600mg

アンチエイジング目的で自由診療。

2 覚醒系 (シチコリン注射液 1000mg、500mg、250mg)

1000mg までは、頭部打撲後の意識障害などに保険診療可能。 1500-2000mg は、アンチエイジング目的で自由診療。

3 栄養系 (ビタミン B

12

製剤)

血液検査で欠乏を証明してから。打ったら、原則メチコバ ール錠は処方できない。

4 静穏系 アタラックス P

筋肉注射 不安、易怒が強い時に介護者のサポートのために打 つことがある(当院では年に 5-6 回程度) 保険薬と自由診療のアンプルを混合して使用してはならない。自由診療は同意書が必要(保健所 などから確認される)。便失禁の際あどの紙おむつの販売、文書料など自費のものは、料金を院内掲 示しておく。 同一日、同一疾患に混合してはならない。 500ml 以上でないと点滴手技の報酬とはならない。(静脈注射扱い)

推奨薬剤

抑制系第二選択以降 陽性症状に対して、最初にやることは、ドネペジル、レミニール、リバスタッチパッチをい ったん中止することである。それをやらずして、第二選択の使用はふつうしない。(図 31)

(24)

2)セルシン2mg 錠 原則 1mg で使用(半分に割る):眠気が強く出る薬 3)クエチアピン 12.5mg 錠「アメル」:糖尿病には禁忌 屯用)リスペリドン OD0.5, 1mg ジプレキサザイデイス 5mg(OD 錠よりさらに溶け やすく内服拒否状態では便利) 4)ニューレプチル細粒 3mg:ウインタミン、セルシン、セロクエルの3種に対して奇 異反応(かえって興奮する)を示す場合の最終手段。 5mg は強すぎて寝てしまうので必ず 3mg 細粒を調剤する。1 日3回まで。1 日最大 15mg とする。 5)あらゆる抑制系が副作用ばかり起きてしまうピック病などにメマリーが奏功することが ある。 中核症状薬 (LA、100M、B、CDP コリン、人参養栄湯 図 32) フェルラ酸は、アルツハイマー モデルラットの海馬神経幹細胞を用量依存性に増殖させる(摂南大学薬学部) レビー系 (マドパー、ドプス 100mg、ニュープロパッチ) 最初の一歩を出しやすくしたり、血圧をあげたりしたいときにドプスを用いる。気持ち悪 くなる場合は、50mg にする。 メネシットとマドパーは配合が違うので同じ薬ではない。第一選択はメネシット。 メネシットとマドパーの併用はありうる。 うつ・不安系(リーゼ 5・10mg、デパス 0.5・1.0mg、パキシル 10mg、ワイパックス) リーゼ、デパス、ワイパックスは 30 日の処方日数制限がある。ガンマリザノールが奏功 する患者が稀に見られるが、副作用(胃腸障害)をおこす患者も稀にいる。 皮膚系 リバスタッチのかぶれ対策:フルメタローション 10g, ヒルドイドクリーム 20g) ピュアバリアは漢方の軟膏でもっとも望ましいが、医家で卸して販売するもの。 おむつかぶれ:リンデロン VG 軟膏、ラミシール、ザーネを混合する。 注射剤 ソルコセリルアンプル(ソルコ組に必要)

認知症以外の第一選択薬

血圧 ミカルデイス 40 高コレステロール血症 リピトール 10 高中性脂肪血症 リピデイル 80 安全脂質総合薬 リバロ 4 虚血 プレタール OD 50×2-3(安静時心拍数 90 以上の者には処方しない) 嚥下 タナトリル 2.5mg 半錠×2(血圧 110 以上のものに限る)、 クラシエ半夏厚朴湯エキス錠 朝4錠+夕4錠 ないし4錠×3. 睡眠薬 レンドルミン 0.75(30 日処方制限) ロゼレムがもっとも生理的(即効はしない) 頻尿 ステーブラ 0.1 2 錠×1ないし2(1日4錠まで) 振戦 アルマール 5 末梢浮腫 タカベンス 25(本来は痔核治療薬)1日2-3錠 慢性心不全 アルダクトン 25 椎骨系めまい セロクラール 20

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耳鳴りセット 内耳系:カルナクリン 50 単位×3、五苓散×3、リンデロン 0.5mg 朝 中枢系:アタラックス P 筋注。リーゼ 2-3 回、 神経痛 リリカ 75(転倒する場合が懸念されれば 25mg)(劇症肝炎報告あり) 心因性腰痛 サインバルタ 20mg てんかん デパケン R100×3で開始。無効ならイーケプラを足す。 動脈硬化 プロルベイン DR 動脈硬化を治す健康補助食品。東京のクリニックで頸動脈ドップラーにてプラークのあった 19 名に服用させ、半年後に再検したところ全員が改善。

必要時のみ専門医が処方すべきもの

(現状で効果のある方に中止を進言するものではありません) 当帰湯(体調不良)、 三環系抗うつ薬(ADL低下)、ADHD に対するノリトレン 10mg は許可。 レメロン・リフレックス(稀に寝たきりをおこす)、 トレリーフ(稀に自殺が報告されている)、 ボルタレン座薬 50(老人は 25mg まで。急性腎不全)、 エフピー→PD 患者を薬剤性 DLB のようにすることが稀にある。 ミラペックス→CBDには合わない。 リポバス(稀に横紋筋融解症)、 カバサール(稀に衝動性)、 コデイオ(稀に中毒性表皮壊死融解症)、 デイオバン(稀に中毒性表皮壊死融解症)。

後発品の基剤アレルギー等

アリセプト後発品、リーゼ後発品、ベンザリン後発品でアレルギーを経験した(基剤が悪い)。 ドネペジル OD 錠の劣悪品 後発品の中で口内崩壊錠とは言えないものがあると指摘され ている。 プレタールの後発品の少なくとも 1 社は、21 例×2の比較試験で効果がないことが証明さ れた(平川亘:印刷中)。

参照

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