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Vol. 50 No. 3 3, , , II , , ,738 1

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 研究資料

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都内私立大学病院本院の職員が患者・患者家族などから受ける

院内暴力の実態

(私大病院医療安全推進連絡会議共同研究)

岩 尾 亜希子

1)

   藤 原 喜美子

1)

   長谷川 志保子

2)

   上 野 京 子

3)

太 田 久 子

4)

   長谷川 幸 子

4)

   櫻 井 順 子

5)

   會 田 秀 子

5)

中 澤 惠 子

6)

   小 市 佳代子

7)

   古 畑 裕 枝

8)

   中 野 八重美

8)

金 子 恵美子

9)

   稲 垣 一 美

10)

   柳     努

11)

   北 原 るり子

11)

山 下 小百合

11)

   落 合 和 徳

1) 院内暴力の現状は,幾つか報告されているが,高度先進医療を担う大学病 院に特化した報告はない。私立大学病院医療安全推進連絡会議では,職員が 安全に働くための環境を整備する事を目的に 2011 年に都内私立大学附属病 院本院に勤務する全職員 29,065 名を対象に質問紙による調査を行った。そ の結果,回収率は 78.6% で過去 1 年以内に院内暴力を受けた人は 44.3% だっ た。更に暴力が原因で「退職したいと思った」が 3.7%(1,159 名),「死にた かった」が 0.2%(58 名)いるにもかかわらず個人の対応としては,我慢や 謝罪をしている現状が明らかになった。又,各施設で整備されているサポー ト体制の認知度は低く「サポート体制が無い」,「わからない」と回答した職 員が合わせて 71.7% だった。院内暴力に対する不安を 5 段階評価で 2 以上(何 らかの不安を感じている)の職員が 86.3% いた事は重く受け止められるべ きであり,院内暴力の現状認識と有効な対策の立案が急務であるとともに患 者・患者家族との信頼関係の構築が必須である。 キーワード : 院内暴力,大学病院,医療安全,リスクマネジメント,質問紙 調査,組織的対策 I. 緒   言 医療機関において職員が患者・患者家族などから 受ける暴言,暴力,セクシャルハラスメント(セク ハラ)などの院内暴力は,医療の職場環境を悪化さ せ,安全で質の高い医療を提供する妨げになってい る。また,職場環境だけでなく,受けた暴力が要因 となり,職員のモチベーションが低下し退職の要因 となるケースも報告されている。このように患者・ 医療者の双方に様々な悪影響を及ぼす院内暴力であ るが,その実態に関する解析は少なく,対策が後手 1)東京慈恵会医科大学附属病院 2)日本大学医学部附属板橋病院 3)帝京大学医学部附属病院 4)日本医科大学付属病院 5)順天堂大学医学部附属順天堂医院 6)東邦大学医療センター大森病院 7)昭和大学病院 8)東京医科大学病院 9)東京女子医科大学病院 10)慶應義塾大学病院 11)杏林大学医学部付属病院

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になっている感も否めない。東京都医師会勤務医委 員会では,調査対象勤務医(回答者数 3,532 人)の 55.8%が1),社団法人全日本病院協会院内暴力等に 関する実態調査ワーキンググループからは,回答病 院 1,106 施設の 52.1% が2,3)院内暴力を経験してい ると報告されている。このように職員の過半数以上 が院内暴力を受けていることは,驚くべき事実であ り,早急に有効な対策を講じる必要がある。しかし, 院内暴力の現状を解析する場合には,院内暴力の定 義,調査期間,調査対象施設の立地・規模・機能, 対象医療職種,患者特性などにより影響を受けるこ とが予想され,これらの結果がすべての施設にあて はめられるとは言えない。 我々が所属する都内私立大学附属病院本院は,多 数の異なる職種が連携しながら勤務している。また, 高度医療を担う施設であるがために,社会的期待が 高く,複雑な疾患背景を有する患者を対象に高度先 進医療を提供するという共通した特性を持ってい る。しかしそのような医療機関を対象にした院内暴 力の実態と対策に関する信頼のおける解析は皆無 で,現況の認識が不十分であるのが実情である。 そのため私立大学病院医療安全推進連絡会議で は,職員が安全に働くための職場環境を整備するこ とを目的に,医療機関の背景が類似している都内私 立大学附属病院本院に勤務する全職員を対象に,院 内暴力の実態,職員に与える影響,各施設で実施さ れている暴力対策の有用性などの調査を行い,現状 の確認を行った。幸いにも多くの職種から 78.6% という高い回収率が得られ実態を反映した回答を得 ることができた。このような貴重な結果を公表する ことは,状況を認知し,今後の対策につなげるため にも非常に意義があると考え調査結果を報告する。 II. 対象・方法 調査対象は,都内私立大学附属病院本院 11 施設 に勤務している全職員 29,065 名とし,2011 年 12 月 1日から 12 月 31 日に質問紙を配布・回収し,回答 のあった 22,859 名(回収率 78.6%)中,有効回答 22,738名を解析対象とした。質問紙は,過去一年間 図 1 質問用紙

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について,院内暴力(暴言 ・ 暴力・セクハラ)を受 けた経験の有無,受けた場面での状況や反応,感情 の変化,院内暴力の原因,院内のサポート体制,必 要な対策,現在の対策の有効性と限界,院内暴力に ついての総合的不安感など 31 項目からなるマーク シートと,2 項目の記述式となっている(図 1, 2)。 調査結果を基に各種の解析を行った。 本研究において,院内暴力とは,「患者あるいは 患者家族・見舞い客などの来訪者からの暴言(言葉 の暴力や精神的暴力)・暴力(身体的暴力)・セクハ ラなどを受けた,あるいは悪質(理不尽)なクレー ムや脅迫など,何らかの威力によって診療が停滞し たり,労働意欲が低下するような状態」と定義した。 なお,本研究は,各施設の状況に応じて倫理委員 会など各施設の承認を得て行った。 III. 結   果 A. 回収率 質問紙は全職員 29,065 名に配布し,回収率は 78.6%で,22,738 名からの回答を解析対象とした。 B. 対象者属性 回答者の性別は「女性」69.2%,「男性」28.3%,「回 答不備」2.5% であった。年齢は,「20 歳以下」0.4%, 「21∼25 歳」19.2%,「26∼30 歳」22.9%,「31∼35 歳」 15.6%,「36∼40 歳」11.8%,「41∼45 歳」9.1%,「51 歳以上」13.5%,であり(図 3),職種は,「看護師・ 准 看 護 師・ 保 健 師・ 助 産 師 」44.1%,「 医 師 」 15.2%,「事務員」11.4%,「臨床検査技師」4.3%,「看 護助手」4.1%,「薬剤師」・「放射線技師」がともに 2.5% であった(図 4)。 C. 暴言・暴力・セクハラを受けた経験・内容・ 相手・感情 暴言を受けた事がありますかの質問には,41.5% が「はい」と回答(図 5)し,その内容としては,「バ カ,アホ,ふざけるな,誠意を見せろ,土下座しろ, 等の医療者を罵倒する言葉を言われた」25.9%,「苛 立つ態度を取られた」25.6%,「鋭い目つきでにら 図 2 質問用紙

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まれた」18.2%,「威嚇された」16.8%,「脅迫された」 6.1%,「嫌がらせを受けた」3.4%,「金銭を要求さ れた」0.6% であった(図 6)。その暴言を発した者は, 「男性患者」49.6%,「女性患者」19.6%,「患者家族(男 性)」13.4%,「患者家族(女性)」8.7% で(図 7), 相手の年齢は,「50 代」23.5%,「60 代」20.6%,「40 代」18.1%,「30 代」13.2%,「70 代」11.3% の順であっ た(図 8)。 暴力を受けた事がありますかの質問には,14.8% が「はい」と答え(図 5),その内容としては,「叩 かれた」18.3%,「蹴られた」14.2%,「つねられた」 13.2%,「殴られた」11.8%,「物を投げつけられた」 9.0%であった(図 9)。暴力をふるった者は,「男 性患者」61.2%,「女性患者」32.4%,「患者家族(男 0 5 10 15 20 25 % 看護師 准看護師など 44.1% 医師 15.2% 事務員 11.4% 臨床検査技師 4.3% 看護補助員 4.1% その他 20.9% 14.1 14.8 41.5 85.9 85.2 58.5 0 20 40 60 80 100 セクハラ 暴力(身体的暴力) 暴言 はい いいえ % 0 5 10 15 20 25 30 金銭を要求された 嫌がらせ 脅迫された 威嚇された 鋭い目つきでにらまれた 苛立つ態度を取られた 「バカ」、「ふざけるな」等の言葉 % % 図 3 回答者の年齢 図 4 回答者の職種 図 5 院内暴力を受けた事がありますか 図 6 暴言の内容 図 7 院内暴力をふるった者 図 8 院内暴力をふるった者の年齢

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性)」2.6% で(図 7), 相 手 の 年 齢 は,「70 代」 24.2%,「60 代」22%,「50 代」15.4%,「80 代以上」 14%,「40 代」9.4% の順であった(図 8)。 セクハラを受けた事がありますかの質問には, 14.1%が「はい」と答え(図 5),その内容としては, 「体を触れるなど身体的行為」40.6%,「体型や顔の 指摘などの精神的行為」17.1%,「女性/男性のくせ になどの性的差別行為」12.3%,「陰部などを露出 したり触らせようとする行為」8.7%,「猥褻な写真 を見せたり猥褻な発言したりするなどの性的暴力」 8.0%であった(図 10)。セクハラをした者は,「男 性患者」77.9%,「女性患者」6.3%,「患者家族(男性)」 4.3%,「患者家族(女性)」1.7% で(図 7)あり, 相手の年齢は,「60 代」26.3%,「50 代」21.9%,「70 代」18.9%,「40 代」11.1% であった(図 8)。 同じ職員が,暴言・暴力・セクハラを同時に,あ るいは複数回受けたとの回答もあったため,過去 1 年以内に暴言,暴力,セクハラなど何らかの院内暴 力を受けたと回答した職員は 44.3% であった。 院内暴力を受けた際の思いや気持ちは,「腹が立っ た」16.3%,「怖かった」12.9%,「驚いた」11%,「仕 方ないと思った」7.3%,「悲しかった」7.2%,「ま たかと思った」7.2% といった感情の変化が生じ, さらに「退職したいと思った」が 3.7%(1,159 名), 「死にたかった」が 0.2%(58 名)いることも判明 した(図 11)。院内暴力についての不安感を 5 段階(1 不安がない∼5 不安が強い)に評価すると,1(不 安がない)が 8.4% のみで,2 が 18.6%,3 が 38.2%, 0 5 10 15 20 肩をつかまれた 胸元をつかまれた 突き飛ばされた その他 服を引っ張られた 噛まれた 押された 物を投げつけられた 殴られた つねられた 蹴られた 叩かれた % 0 10 20 30 40 電話・手紙・尾行などストーカー行為 わいせつな写真などをみせたり発言したりす るなどの性的暴力 陰部などを露出したり触らせようとする行為 (女性・男性)のくせになど性的差別行為 体型や顔の指摘などの精神的行為 身体を触られるなど身体的行為 % 1159名 58名 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 死にたかった 何も感じなかった 部署を変更したい 反省した 退職したいと思った 許せなかった 理解できなかった 空しかった 我慢しようと思った 強いショックを受けた またかと思った 悲しかった 仕方ないと思った 驚いた 怖かった 腹が立った % (不安がない) (不安が強い) 0 10 20 30 40 50 1 2 3 4 5 % % 図 9 暴力(身体的暴力)の内容 図 10 セクシャルハラスメントの内容 図 11 院内暴力を受けた際の思いや気持ち(複数回答) 図 12 院内暴力に対してどの程度不安を感じるか 図 13 院内暴力後の患者や家族への対応や気持ちの変化

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4が 22.1%,5 が 7.4% であり 86.3% の職員が何ら かの不安を感じていた(図 12)。院内暴力後の患者 や家族への対応や気持ちの変化としては,「警戒す るようになった」12.5%,「担当したくなくなった」 11.6%,「仕方ないと思った」11.1%,「対応が事務 的になった」6.8%,「必要以上の事を聞かなくなっ た」6.6%,「我慢しようと思った」6.6%,「顔を見 るのも嫌になった」5.9%,「怖くなった」5.4%,「訪 室する足が遠のいた」5.2% であった(図 13)。 D. 院内暴力の原因と個人・組織の対応 何らかの暴力を受けた人を対象にした「院内暴力 の要因は医療者側にもあったと思いますか」の質問 には,「あった」と答えたものが 45.6%,「なかった」 と答えたものが 41.8% であった。「あった」と回答 した医療者の要因としては,「説明や確認の不足」 19%,「 長 い 待 ち 時 間 」15.5%,「 医 療 者 の 態 度 」 11.8%,「患者の意に沿わない医療行為」10.6%,「私 が女性であること」9.0%,「未熟なコミュニケーショ ン」8.4% であった(図 14)。 院内暴力を受けた際の個人の対応(複数回答)と しては,「我慢した」24.8%,「謝罪した」15.3%,「病 院内のルールに従い人を呼んだ」11.8%,「助けを 呼んだ」10.9%,「言葉で直接抗議した」10% となっ ていた(図 15)。また,76% が院内暴力を受けた事 を誰かに話したが,12.3% は誰にも話さず,自分自 身で受け止めていた。相談した相手は,「同僚」 35%,「上司」26.4%,「施設内の先輩」19.2%,「家族」 6.2%,「施設内の後輩」5.9% であり,話した相手の 反応は,「気持ちを理解してもらえた」51.7%,「相 談にのってくれた」36.1% となっていた。逆に,相 談しなかった理由については,「話す必要がなかっ た」47.1%,「相談しにくかった」9.3%,「誰に相談 して良いかわからなかった」7.2% の順であった。 院内暴力について組織としてとった対策(複数回 答)は,「何もしなかった」16.3%,「対策を話し合 う場を設けた」14.3%,「複数で対応した」14.1%,「患 者本人と話した」11%,「精神科受診など医療上の 対策・工夫を検討した」10.3% であり(図 16),そ の対策は「有効だった」が 39.3%,「効果がなかった」 が 28.9%,「不明」が 31.8% であった。 % 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 不明 私が男性であったこと 診療費関係 院内の環境(臭気・騒音・温度など) 言葉遣い 私が新人や研修医など若年であったこと その他 コミュニケーションが未熟 私が女性であったこと 患者の意に沿わない医療行為 医療者の態度 待ち時間が長い 説明や確認の不足 % 0 5 10 15 20 25 30 やり返した 非常ブザーを鳴らした 泣いた 逃げた 警察を呼んだ 患者家族に協力を求めた 無視した その他 言葉で直接抗議した 助けを呼んだ 病院内のルールに従い人を呼んだ 謝罪した 我慢した % 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 勤務時間の検討をしてもらった 患者の病室の移動を検討した 警備の強化 患者の退院、転院の話をした その他 患者の家族を交えて話し合った 医療上の対策・工夫を検討した 患者本人と話した 複数での対応 対策を話し合う場を設けた 何もしなかった 図17 院内暴力を受けた職員に対しカウンセリングなどの サポート体制はありますか 図 14 患者や患者家族などが「院内暴力」に至った医療 者側の誘因としてどのようなことがかんがえられ ますか 図 15 院内暴力を受けた際の個人の対応(複数回答) 図 16 院内暴力を受けた際にどのように対応しましたか (複数回答)(組織としての対応) 図 17 院内暴力を受けた職員に対しカウンセリングなど のサポート体制はありますか

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E. 院内サポート体制 都内私立大学附属病院本院すべてにおいて,院内 暴力対策マニュアルの整備や対応部署の設置などの サポート体制が整備されているものの,そのような サポート体制の有無に関する質問に対しては,「無 い」が 6.3%,「わからない」が 65.4% であり,合計 71.7%の職員にその存在が理解されていなかった (図 17)。必要な対策についての質問に対しては,「対 策を話し合う場を設ける」21.7%,「複数での対応」 16.4%,「患者の家族を交えて話す」13%,「医療上 の 対 策・ 工 夫 を 検 討 す る( 精 神 科 受 診 な ど )」 12.6%,「警備の強化」11%,「患者の退院・転院の 検討」10%,「患者本人と話す」8% という回答が得 られた(図 18)。 IV. 考   察 2004年頃から院内暴力について関心が高まり, 様々な対策が進められてきたが,院内暴力の発生件 数は減少していない。また,院内暴力の定義,調査 期間,調査対象施設の立地・規模・機能,対象医療 職種,患者特性などが異なるため,施設間の単純な 比較は難しい1-13) 。今回の調査は,様々な背景が類 似している都内私立大学附属病院本院 11 施設の全 職員(全職種)29,065 名を対象に行った大規模な調 査で,質問紙回収率が 78.6% と高く実態を反映し た信頼性のある価値の高いものと考えられる。また, そのような高い回収率が得られたことは,如何に職 員が院内暴力に対して関心を持っているかという事 の裏返しともいえる。 今回の結果により,都内私立大学附属病院本院に 所属する職員は,過去一年間に 41.5% が暴言を, 14.8%が暴力を,14.1% がセクハラを受けているこ とが明らかになった。複数の種類の院内暴力を体験 した職員も存在するため,総合的には全体の 44.3% の職員が,暴言・暴力・セクハラのうち何らかの院 内暴力を受けていたことが判明した。 院内暴力を起こす相手の特徴に関しての一定した 解析結果は得られないが,その原因として 45.6% は 医 療 者 側 に 問 題 が あ っ た と 回 答 し て い る が, 41.8%は医療者側に問題がなかったと回答してい る。「説明不足」や「長い待ち時間」などが患者に 不快感を与えている事実を真摯に受け止め,改善す べき点は改善し,質の高い医療が提供できる,良好 な診療環境を構築する努力を続けていく必要がある 事を再認識した。しかし,一方で医療機関に対して 自己中心的で理不尽な要求をする,いわゆるモンス ター・ペイシェントの存在は,医療従事者に大きな 負担を与え,患者への不信感を増強し,医療の萎縮 を助長する原因の一つになっていることも事実であ る。更に院内暴力は,医療従事者のみならず他の患 者の治療環境にも悪影響を及ぼし安全で安心できる 医療提供の妨げになっている。なお,今回の調査は 暴力を受けたと感じた職員を対象としたアンケート 調査であり,患者の精神疾患の有無別に調査したも のではない。そのため,回答の一部に精神的疾患に よる暴力行為が含まれている可能性があることは事 実で,そのような場面での暴力行為は,それ以外の 場面とは性格が異なることには留意する必要があ る。 院内暴力を受けた時点での感情や対応に関する詳 細な解析は今後の課題とするが,本調査から,院内 暴力に対する不安について,「不安がない」と回答 している者が 8.4% にとどまり,「何らかの不安を 感じている」職員が 86.3% いたことは,非常に重 く受け止めるべき事実である。本研究対象である都 内私立大学附属病院本院では,「私大病院医療安全 推進連絡会議」が中心になり,勉強会の開催,院内 暴力対策マニュアルの作成やポスターの作成,非常 用ブザーの設置,私大病院相互ラウンドによる情報 交換など,様々な院内暴力対策の強化を図ってきた。 また,多くの病院で元警察官を採用し,院内暴力が 発生した場合に現場に急行するなどの対策を実施し ている。しかし,これらの対策を講じているにもか かわらず,各施設のサポート体制に関する職員の認 % 0 5 10 15 20 25 勤務時間の検討 その他 不明 患者の病室の移動を検討 患者本人と話す 患者の退院、転院の検討 警備の強化 医療上の対策・工夫を検討 患者の家族を交えて話す 複数での対応 対策を話し合う場を設ける 図 18 院内暴力についてどのような対策が必要だと思い ますか

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知度は低く,「サポート体制が無い」あるいは「わ からない」と回答した職員が合わせて 71.7% を占 めていた。患者に対する対策は当然であるが,院内 の体制強化と,その対策を周知徹底する事が,安心 して働くことのできる職場環境の形成には重要であ る。 V. 結   論 院内暴力は犯罪行為になる場合もあり,たとえ院 内での出来事であろうと社会的に許されるべき行為 ではない。しかし,相手が患者や患者家族であると いう特徴があるため,病院職員である以上は我慢し なければならないと考えている者も少なくない。医 療が益々高度になっていく中で安全で安心な医療を 行うためには,この様な院内暴力の解析を継続的に 行い,対策を講じると共に,その結果を院外に公表 することにより,実態と危機感の共有を図り,医療 者と患者・患者家族の良好な信頼関係の構築する必 要がある。 謝   辞  本研究への取り組み方,調査方法・内容ならびに統計解析に関 して多大なるご指導をいただいた,東京慈恵会医科大学准教授, 臨床疫学研究室室長 松島雅人博士に深謝いたします。 文   献 1) 上塚芳郎,東京都医師会勤務医委員会の「院内における 患者や患者家族などからの暴言・暴力などに関する実態 調査」,患者安全推進ジャーナル,26, 36-45, 2011 2) 瀬戸可奈子,藤田 茂,飯田修平,他,医療機関におけ る院内暴力の実態と院内体制整備に関する研究,日本医 療マネジメント学会雑誌,11(3), 171-178, 2010 3) (株) 関総研,「モンスターペイシェント」に屈しない組 織で取り組む院内暴力への対応策,医療経営情報レポー ト,12, 2008 4) 井部俊子,大塚さち,安井はるみ,他,座談会 管理者 の明確な意思表示が支える,これからの院内暴力対策, 看護管理,19(7), 488-495, 2009 5) 社団法人日本看護協会,保険医療施設における暴力対策 指針 ─ 看護者のために,2006 6) 吉川 徹,三木明子,和田耕治,労働安全衛生の視点か らみた暴言・暴力対策,看護管理,19(7), 497-502, 2009 7) 清水房枝,坂口桃子,作田裕美,看護師が受ける患者・ 家族からの暴力,暴言への危機管理,看護管理,16(12), 1014-1018, 2006 8) 安井はるみ,院内暴力とその対応の現状,看護管理,16(12), 1019-1022, 2006 9) 嶋森好子,菊地直美,横内昭光,他,医療を提供する場 における “暴力” から患者・医療職を守る,看護管理, 16(10), 796-804, 2006 10) 栗田かほる,看護の場における暴力 大学病院における 実態調査から,看護管理,16(10), 805-810, 2006 11) 院内暴力帽子への取り組み 岡山大学医学部・歯学部附 属病院のガイドライン,看護管理,16(10), 811-817, 2006 12) 菊地直美,院内暴力対策委員会の活動から,看護管理, 16(10), 818-823, 2006 13) 飯田英男,院内暴力と医療の在り方をめぐって,看護管 理,16(10), 824-828, 2006 (平成 25.3.18 受付,平成 25.6.12 採用) 連絡先 : 〒 125-8506 葛飾区青戸 6-41-2     東京慈恵会医科大学葛飾医療センター看護部     岩尾亜希子

(9)

The actual state of in

-

hospital violence from patients and their families against the staff of

the main hospitals of private universities in Tokyo

(Collaborative study by the Private University Hospital Liaison Council for Medical Safety

Promo-tion)

Akiko Iwao1), Kimiko Fujiwara1), Shihoko Hasegawa2), Kyoko Ueno3), Hisako Oota4), Sachiko Hasegawa4), Junko Sakurai5), Hideko Aida5), Keiko Nakazawa6), Kayoko Koichi7), Hiroe Furuhata8), Yaemi Nakano8), Emiko Kaneko9), Hitomi Inagaki10), Tsutomu Yanagi11), Ruriko Kitahara11), Sayuri Yamashita11) and Kazunori Ochiai1)

There have been several reports on the present state of in-hospital violence, but no reports on in-

hos-pital violence exclusively in university hoshos-pitals providing highly advanced medical treatment. The Pri-vate University Hospital Liaison Council for Medical Safety Promotion conducted a questionnaire survey with all 29065 staff members of main hospitals of private universities in Tokyo in 2011 to improve the envi-ronment, so that the staff can work safely. As a result, the response rate was 78.6%, and 44.3% had received in-hospital violence within the last one year. Furthermore, it was revealed that although 3.7%

(n=1,159) and 0.2% (n=58) thought “I want to retire” and “I want to die,” respectively, due to violence, their individual responses to in-hospital violence consisted mostly of restraining themselves or apologizing

to the assailants. In addition, the support system of each facility was poorly recognized, with 71.7% answering “There is no support system” or “I do not know.” Anxiety about in-hospital violence was rated

2 or higher (feeling some anxiety) on a 5-point scale in 86.3% of the respondents, and this should be taken

seriously. It is an urgent task to understand the present state of in-hospital violence and plan effective

countermeasures, and it is essential to establish a trust relationship with patients and their families.

Key words : in-hospital violence/university hospital/medical safety/risk management/questionnaire survey/systematic countermeasures

1)The Jikei University Hospital 2)Nihon University Itabashi Hospital 3)Teikyo University School Of Medicine 4)Nippon Medical School Hospital 5)Juntendo University Hospital 6)Toho University Omori Medical Center 7)Showa University Hospital

8)Tokyo Medical University Hospital 9)Tokyo Women’s Medical University Hospital 10)Keio University Hospital

参照

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*2 Kanazawa University, Institute of Science and Engineering, Faculty of Geosciences and civil Engineering, Associate Professor. *3 Kanazawa University, Graduate School of

Department of Central Radiology, Nagoya City University Hospital 1 Kawasumi, Mizuho, Mizuho, Nagoya, Aichi, 467-8602 Japan Received November 1, 2002, in final form November 28,

of Internal Medicine II, School dicine, University of Kanazawa.. Takaramachi 13-1,

, Kanazawa University Hospital 13-1 Takara-machi, Kanazawa 920-8641, Japan *2 Clinical Trial Control Center , Kanazawa University Hospital *3 Division of Pharmacy and Health Science

MANGA Kyoto University (English ver.)( 3. The Chimpanzee Story : the Kyoto University Primate Research Institute ). Kyoto University and Kyoto Seika University

* Department of Mathematical Science, School of Fundamental Science and Engineering, Waseda University, 3‐4‐1 Okubo, Shinjuku, Tokyo 169‐8555, Japan... \mathrm{e}

Department of Orthopedic Surgery Okayama University Medical School Okayama Japan.. in

Several other generalizations of compositions have appeared in the literature in the form of weighted compositions [6, 7], locally restricted compositions [3, 4] and compositions