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マグネシウム製品への有害化学物質フリー陽極酸化処理

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Academic year: 2021

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マグネシウム製品への有害化学物質フリー陽極酸化処理

1. はじめに

 近年,自動車を中心とした輸送機器 分野では,低炭素社会の実現に向け,

燃費向上を目的とした車両の軽量化が 重要な課題となっており,このような 背景のもと,マグネシウム合金が軽量 化材料として注目されている.

 しかし,マグネシウムは実用金属の 中では最も低い電位を有するため,他 の金属材料よりも耐食性が劣るという 欠点がある.そのため,製品の信頼性 に対して,表面処理が重要な役割を 担っている(1).現在,マグネシウムへ の表面処理は,塗装下地としての化成 処理が多用されているが,その性能は 十分とは言い難い.また,耐摩耗性や 耐食性が要求される部位に陽極酸化処 理が適用されているが,クロムやマン ガンなどの重金属ならびにフッ化物な どの有害物を使用するため,重金属や 有害物を用いない表面処理法が強く望 まれている.

 本報告では,既存法のような有害物 や重金属を使用せず,リン酸塩とアン モニウム塩からなる処理液を用いた環 境調和型陽極酸化処理について,得ら れる皮膜の特性および腐食挙動などを 紹介する.

2. リン酸塩溶液からの陽極酸化 処理とその特徴

 マグネシウム合金への陽極酸化処理 と し て は, 主 に MX11(HAE 法 ),

MX12(Dow17 法),MX5 等が適用さ れているが(1),処理液には六価クロム やフッ化物などの有害物が使用され,

さらに皮膜中にクロムやマンガンなど の重金属あるいはフッ化物が取り込ま れ,リサイクル性に悪影響を及ぼす.

一方,リン酸化合物をベースとした本 処理は,既存法のような有害物を使用 しない環境に調和した陽極酸化処理法 であり,皮膜中には重金属を含まない ため,マグネシウムの利点であるリサ イクル性も損なわない.

 図 1には,陽極電解の様子を示すが,

試料表面において無数のスパークが発 生する.このスパークを伴った電解が

本処理の大きな特徴であり,それに基

づく数

μm 径の孔が数多く存在する

ポーラスな皮膜(図 2)が形成される.

陽極電解の最中,図 1のスパークに よって皮膜の溶融・凝固が繰り返され る.その際,溶液への熱拡散に基づく 急速凝固が非平衡状態をもたらし,そ の結果,皮膜はアモルファス構造にな る.

 リン酸塩陽極酸化皮膜は,塩水噴霧 試験による裸耐食性の評価において,

既存の処理法よりも優れた防食性能を 示す.既存の陽極酸化処理では,皮膜 がマグネシウム部材を腐食環境から遮 断するバリアとして作用するため,皮 膜欠陥部から腐食が発生し,防食性能 の低下を招いている.

 一方,リン酸塩陽極酸化皮膜は,鉄 鋼材料への亜鉛めっきと同様,犠牲防 食能を有している.すなわち,腐食環 境下において,皮膜が優先的に溶解し,

マグネシウム部材の腐食を防いでい る.さらに溶解した皮膜の一部がイオ ン化し,皮膜欠陥部でマグネシウムと 反応し,化成皮膜を形成する.この欠 陥部での皮膜再生効果も耐食性の向上 に寄与している(2)

 さらに AZ91D マグネシウム合金な どの Mg-Al 系合金において,図 1に 示す表面で発生するスパークが,部材 の表面近傍を均一に加熱し,その結果,

Al の固溶(溶体化処理)と微細析出(時 効)という,いわゆる表面熱処理の効 果が得られ,機械的特性を向上させる ことができる(3)

 以上,リン酸塩浴からの陽極酸化皮 膜は,犠牲防食能や欠陥部位での皮膜 再生という,これまでにない防食機構 によって,既存の陽極酸化処理では実 現できない耐食性が得られる.また,

AZ91D 合金等では,表面加熱による 機械的特性の向上も可能である.現在,

本処理は,クロム酸やフッ化物などの 有害物を使用しない環境に優しい処理 として図 3に示したシリンダヘッド カバーやクラッチケース等の輸送機器 関連部品を中心に,その他,釣り具や

ラジコンなどのレジャー関連および福 祉機器関連部品などにも適用され,低 炭素社会の実現に向け貢献している.

(原稿受付 2010 年 11 月 17 日)

〔日野 実 岡山県工業技術センター,

金谷輝人 岡山理科大学〕

( 1 )日野 実・村上浩二・西條充司・金谷輝人,●文 献 表面技術,58-12(2007),767-773

( 2 )Murakami K., Hino M., Hiramatsu M., Saijo A., Kobayashi S., Nakai K. and Kanadani T., Mater.Trans., 48-12(2007)3101- 3108.

( 3 )日野 実・村上浩二・西條充司・引野修次・

金谷輝人・辻川正人,熱処理,50-5(2010).

505-515

図1 陽極電解中でのスパークの様子

10μm 図 2 リン酸塩陽極酸化皮膜の表面

図 3  リン酸塩陽極酸化処理の適用製 品例

日本機械学会誌 2011. 2 Vol. 114 No.1107 135

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