1
論文の内容の要旨
氏名:山 本 崇 申
博士の専攻分野の名称:博士 (歯学)
論文題名:Effect of barrier permeability on rat calvarial guided bone augmentation model (ラット GBA モデルにおけるキャップ天蓋の透過性が骨増生に及ぼす影響)
歯科用インプラント治療は欠損補綴の選択肢の一つとして, 近年臨床で広く普及している。しかし,
重度歯周病によって歯を喪失すると, インプラント埋入を行うための十分な骨量が不足するために, 骨増生を必要とする症例が数多く認められる。とくに, 垂直方向に増生させることは臨床的に非常に 困難とされている。その原因の一つに, 垂直方向では骨再生に必要な血液や幹細胞などの再生に必要 な因子が供給されにくくなるためではないかと考えられる。そこで, 本研究ではラット頭頂骨 guided bone augmentation (GBA) モデルを用いて, キャップ天蓋の透過性を変化させ, 天蓋部からの再生因 子が供給される条件下での垂直方向 (骨外側方向) の骨増生について放射線学的および組織学的に検 討した。
実験には, 9 週齢の雄性 Fisher 系ラットである F344/jcl を 20 頭用いた。 吸入麻酔 (イソフ ルラン 2%) を併用して三種混合麻酔 (塩酸メデトミジン 0.15 mg/kg + ミタゾラム 2 mg/kg + 酒石 酸ブトルファノール 2.5 mg/kg) を腹腔内投与 (0.1 mg/10 g)後, 塩酸リドカイン (1/80,000 エピ ネフリン含有 2% キシロカイン) 約 0.5 ml を局所に投与した。その後, 頭頂部に矢状方向の切開を 加え, 頭頂骨を露出させた。生理食塩水注水下で頭頂骨矢状縫合部左右側にトレファインバー (φ 5.0 mm) を用いて, 硬膜に達しない深さの円形溝を形成した。溝の内側にラウンドバー (No.2) で骨 髄穿通孔を 5 箇所形成し, 実験母地を作製した。キャップ天蓋の透過性を変化させるために以下の 方法でキャップを改良した。(1) 天蓋をすべて除去し, キャップを円柱状にした開放 (OP) 群 (透過 性:100%), (2) 天蓋にラウンドバー (No.4) を用いて 3 つ孔を形成した (TH) 群 (透過性:30%), (3)天蓋をそのまま保存した閉鎖 (OC) 群 (透過性:0%) の 3 群に分けた。それぞれのキャップを接 着性レジンで溝に固定し, 骨膜でキャップが完全に覆われるように骨膜を慎重に縫合した後, 皮膚を 縫合した。キャップ内の骨増生の観察は, 術直後を 0 週とし, 2 週ごとに実験動物用 3D マイクロ CT による画像解析を 12 週間行った。なお, 撮影はラットに吸入麻酔し, マイクロ CT 撮影台上に 固定し, 条件下 90 kV および 100 A で撮影した。関心領域を画像化し, i-View ソフトウェアを用 いて画像を再構成した。関心領域内における増生骨量 (BV) は, 骨体積計測ソフトを用いて定量的に 評価した。
組織学的解析は, 術後 12 週目のマイクロ CT 撮影後, ラットを安楽死させ, 頭頂骨をキャップご と摘出した。10% 中性緩衝ホルマリン中で 48 時間固定し, 10% ギ酸水溶液で 18 日間脱灰し, エタ ノールにより脱水し, パラフィンに包埋した。標本はミクロトームを用いて矢状断面 (厚さ 4 m) に切断し, ヘマトキシリン-エオジン (HE) 染色, または, 層板骨および軟組織の観察のためにマッ ソントリクローム (MT) 染色し増生骨を評価した。定量分析は, 光学顕微鏡下で各群の HE 染色およ び MT 染色切片中のキャップ内組織をデジタル画像化し, 画像解析ソフト ImageJ を使用し, キャッ プ内における増生骨と層状骨の面積をそれぞれ算出した。さらに, 増生骨の組織切片を光学顕微鏡下 で観察し, 骨芽細胞数を計測した。3 群間の比較は, one-way analysis of variance (ANOVA) に続 いて, Bonferroni post hoc test を用い, 危険率は 5% とした。
マイクロ CT 観察の結果, 3 群すべてにおいて増生した骨様組織の不透過性の経時的な亢進が認め られた。しかし, キャップ天蓋の透過性が増大するほど BV は減少した。また, 定量分析では OP 群 の BV は他の 2 群に比較して有意に減少していた。
組織学的解析結果から, HE 染色および MT 染色切片の組織像からキャップ天蓋の内面に沿って増 生骨が OP 群以外の群で観察された。また, キャップ内への軟組織の侵入が OC 群を除く群で確認さ
2
れた。OP 群ではキャップ内への軟組織侵入が最も多く観察され, 増生骨はほとんど認められなかっ た。MT 染色における濃赤色部の面積は TH 群で有意に増加することが認められた。骨芽細胞は, OC 群および TH 群において OP 群と比較して有意に多く観察された。
本実験の結果において, OP 群は, キャップ内に軟組織の侵入が増加し, BV が減少していた。また, TH 群では, OC 群と比較し BV に有意差は認められなかったが, 増生骨中の石灰化骨の面積が増加し ていた。すなわち, 垂直方向の骨増生では遮蔽膜の透過性が高すぎると, 周囲軟組織の侵入が増加し 骨増生量が減少するが, 遮蔽膜に適度な透過性があると増生骨が増加し, 石灰化が早期に亢進するこ とが明らかとなった。つまり, 垂直方向の骨増生を促進させるためには, 骨増生に使用する遮蔽膜に 適度な透過性が必要なことが示唆された。