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乳幼児期から始まる宿主と腸内フローラのクロス トークについての研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

乳幼児期から始まる宿主と腸内フローラのクロス トークについての研究

田中, 優

http://hdl.handle.net/2324/4060232

出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 : 田中 優

論文題名 : Study on the cross-talk between gut microbiota and host from early life (乳幼児期から始まる宿主と腸内フローラのクロストークについての研究)

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

ヒトの腸管には 38 兆個の細菌から成る腸内フローラが存在し、宿主と共生関係を築いている。

その共生関係は生後すぐに始まり大きく変動しながら2~3年かけて安定した成人型の腸内フローラ が形成される。乳幼児期の腸内フローラは宿主の免疫系や代謝系の成熟化に影響し、後の健康にも 影響を与えると予測されるが、この時期の腸内フローラは変動が激しく、個人差も大きいことから、

統一された見解はまだ得られるに至っていない。一方、胆汁酸を始め、宿主由来の様々な因子が腸 内フローラの構造と機能に影響を与える可能性も指摘されている。本研究では、このように乳幼児 期から始まる腸内フローラと宿主のクロストークを解明することを目的に、①腸内フローラと小児 アレルギー発症の関連性解析、②乳幼児腸内フローラの発達と胆汁酸代謝の関連性解析、③胆汁酸 による芽胞形成腸内細菌の発芽誘導解析を実施した。

食物アレルギーはほとんどが生後3年までに罹患することから乳幼児期の腸内フローラの異常と の関連性が疑われている。そこで、福岡県出生の新生児56名を対象に前向き研究を実施し、生後1 年間の細菌叢構成と食物アレルギー発症の関連性を調査した。その結果、健常群の乳児期腸内フロ ーラでは乳酸菌(Leuconostoc属、Weissella属)と乳酸資化性短鎖脂肪酸生産菌(Veillonella属)

による細菌コミュニティが形成されているのに対し、食物アレルギー群ではこの共生関係が欠如し ていた。離乳後では、食物アレルギー群にディスバイオシスの特徴である大腸菌群の増加、細菌叢 多様性の減少、そしてClostridium paraputrificumClostridium tertiumの定着が確認された。

以上より、食物アレルギー発症は授乳期から離乳期にかけての腸内フローラの異常が起因する可能 性が示唆された。

乳幼児期の腸内フローラの細菌叢構成については多くの研究例があるが、代謝物についての報告 例は少ない。胆汁酸は肝臓にて生合成され、脂質吸収のために腸管に分泌された後、腸内細菌にて 代謝される物質であるが、加えてシグナル分子として宿主の脂質・糖、エネルギー代謝を制御する ことも知られている。腸内細菌による胆汁酸代謝は、主にグリシン及びタウリン基の脱抱合に続く 7 位の水酸基の異性化・脱水酸化であるが、各代謝を行う腸内細菌は異なることが知られている。

しかし、ダイナミックに変化する乳幼児期の腸内フローラにおける胆汁酸代謝について報告した例 はない。そこで、新生児 10名の生後 3年間の糞便サンプルを経時的に回収し、16S rRNA アンプ リコン配列分析による細菌叢解析およびLC-MSMSによる胆汁酸分析を行った。得られた胆汁酸組 成データをもとに、胆汁酸変換率を算出した結果、生後1ヶ月時点で既に多くの被験者で脱抱合が

行われ、12~24 ヶ月にかけて異性化、24〜36 ヶ月にかけて脱水酸化が行われていた。それらの胆

汁酸変換に相関する細菌を抽出した結果、脱抱合にはBifidobacterium、異性化にはRuminococcus

gnavus、脱水酸化には多様な Firmicutes 門細菌が関連することが示された。以上より、腸内フロ

ーラの重要な機能の1つである胆汁酸代謝は、腸内フローラの変動と伴に生後3年間かけて成熟化 することが示された。

ヒトにおいて胆汁酸は、コール酸とケノデオキシコール酸を基本骨格し、それぞれグリシンとタ ウリンの抱合型が存在する。近年、胆汁酸の一種であるタウロコール酸(TCA)が腸内の芽胞形成

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菌の発芽を誘導することが報告された。そこで、他の胆汁酸分子種の発芽誘導能にも興味を持ち、

一連のヒト胆汁酸分子種の芽胞形成腸内細菌の発芽誘導活性を調査した。糞便をエタノール処理に より栄養細胞を死滅させた芽胞懸濁液に各種胆汁酸を添加した培地を用いて平板培養した。その結 果、グリシン抱合型胆汁酸のいくつかの分子種で TCA と同等あるいはそれ以上の誘導活性が観察 された。生育した細菌群についてメタ 16S rRNA 解析を行った結果、TCA によって発芽誘導され る細菌と異なり、その中には多くの未培養の細菌が検出された。そこで、続いて胆汁酸添加プレー ト上のコロニーを単離培養し、系統解析を行った。その結果、505 株 97 種の細菌種が単離され、

そのうち 11 種は未分類未同定の細菌だった。以上より、芽胞形成細菌種毎に発芽誘導される胆汁 酸に選択性があることが明らかされ、またこの特性を利用して新規芽胞形成菌の単離培養が効率よ く行われることが明らかになった。

以上、乳幼児期の腸内フローラを解析することにより、宿主の健康への影響や腸内フローラの機 能の変化の一端を解明した。さらに、発芽誘導活性を有する胆汁酸が宿主と腸内フローラ間のクロ ストーク因子の1つであることを見出した。

参照

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