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アジア大陸東縁の新生代石炭の特徴とその形成環境

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

アジア大陸東縁の新生代石炭の特徴とその形成環境

鈴木, 祐一郎

https://doi.org/10.11501/3075543

出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(理学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

アジア大陸東縁の新生代石炭の特徴とその形成環境

Coal Properties and Coal-foロning Environments of Japanese and Chinese Cenozoic Coals

鈴木祐一郎

Yuichiro Suzuki

1. -,・

(4)

Coal Properties and Coal-foロning Environments of ]apanese and Chinese Cenozoic Coals

Yuichiro Suzuki

A study of coal properties on ]apanese Cenozoic coals and Chinese Cenozoic coals presents several difference of their coal­

forming environment between island-arc and continental interior.

Calorific value and volatile matter content, p訂ameters of coal rank,

varied in one coal se訂n of the s紅ne coal rank, and are reflected in physico-chemical differences that ocαrrred during the earliest stage of diagenesis in coal basin. Also vi廿inite reflectance, most pop叫訂 maturity p紅紅neter, and sporinite fluorescence have some variation in each one coal seむn which are generated by the

differences in the process of peat sedimentation to e紅ly diagenesis.

百四degradinite, a singular maceral of ]apanese coal and is included in the varieties of vi仕inite grOUp intemationally, which is characterized by low reflectivity ,colorful fluorescence under the mαoscope and higher H/ C atomic ratio on van Krevelen

Diagrむns.百四degradinite content ratio in coal maceral

composition is closely related to other par紅neters of the coal.

百四biological maker of coal extracts, such as isomerization ratio of s廿anes and hop釦es, is not affected by physico-chemical change in one coal seam, is better parむneter for maturity degree in the

effective range to terminate of isomerization.

The difference between ]apanese and Chinese Cenozoic coal in not found from the results onσoss-plotted diagram in calori白c value and volatile matter content. Both coals 紅e higher specific value and higher in volatile ma口er contents than Mesozoic coals in China of s但ne rank. Differences in coal properties between Cenozoic and Mesozoic coal in China are caused by changes of plant materials and vegetation of two.

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(5)

目 次

1 緒論

1. 1 研究主旨 1.2 研究手法 1.3 論文構成

ページ 1 1 2 5

2 日本および中国の研究対象炭田の地質 2. 1九州の炭田

2. 1. 1 筑豊炭田

2. 1. 2 唐津・佐世保炭田 2. 1. 3 三池炭田

2. 1. 4 西彼杵炭田 2. 1. 5 天草炭田 2.2北海道の炭田

2.2.1 石狩炭田 2.2.2 剣1[路炭田 2.3中国の炭田

2. 3. 1 撫順炭田 2.3.2 梅河口炭田 2.3.3 阜新炭田

1 2 3 4 6 8 8 3 6 8 4 6 7 9 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 3 3

3 石炭特性の調査法 3. 1 分析方法

3. 1. 1 工業分析 3. 1. 2 元素分析 3. 1. 3 発熱量測定

3. 1. 4 ビトリナイト反射率測定 3. 1. 5 スポリナイト蛍光測定

3. l. 6 石炭組織分析

3. 1. 7 バイオマーカ分析 3.2 分析試料

3.2. l. 九州の石炭試料 3.2.2. 北海道の石炭試料 3.2.3. 中国の石炭試料

9 9 9 9 0 1 4 0 3 5 5 6

7

3 3 3 3 4 4 4

5

5 5 5 5 5

(6)

4 新生代石炭の特徴 6 0

4.1 石炭化度(熟成度)指標について 6 0

4. 1. 1 揮発分および発熱量 6 0

4.1.2 ビトリナイト反射率 74

4. 1. 3 スポリナイト蛍光スペクトル 8 6

4.1.4 バイオマーカ 94

4.2 石炭組織成分組成 103

5 考察 119

5. 1 日本と中国の炭田形成環境の比較 119

5.2 デグラディナイトの物理・化学的性質とその起源について 125

5.3 ビトリナイト反射率およびλrnaxの炭層内で、の変化について 129

6 結語と今後の課題 132

7 謝辞 135

8 文献 136

9 付表 142

- 山・...・:',;..-..)1.:.叫f.

(7)

1 .

緒論

1. 1

研究主旨

日本海が前期中新世以後に縁海として開いたとの考え方が

Otofuji&Matsuda(1983)による古地磁気の研究以後、 多くの研究 成果によって一般的に受け入れられている。 これらの研究成果に基 づいて日本海が開く以前の古地理が提唱されている。 古第三紀には 日本列島はユーラシア大陸と陸続きになっていたが、 太平洋プレー トが日本列島の東側で沈みこんでおり、 日本列島は陸弧となってい たとの考えられている。

古第三紀は、 日本の主要な炭田堆積盆が形成された時代であり、

九州および北海道を中心に多くの炭田が分布している。 古第三紀に は日本列島と陸続きになっていた中国大陸でも、 いくつかの炭田堆 積盆が形成されており両者の形成環境を比較することは、 当時の古 地理復元の上で欠かせないものの一つである。

炭田の形成環境やその堆積環境を復元する方法として、 炭田堆積 盆の中の地層の分布や、 含まれる化石から古環境を推定する方法が 一般的であり、 わが国では従来から多くの炭田堆積盆で研究が行わ れてきた。 また近年は、 石炭を含む地層の堆積相の解析や、 堆積盆 中の地層のシークエンス層序からの解析する方法が、 堆積学的手法 として注目されている。 しかし、 わが国の炭田においては、 このよ うな手法を用いた研究の例は少ない。 この原因としては、 わが国の 炭田においては地層の露出状況が良くないことや、 新規の炭鉱の開

発のための地質調査ボーリングが行われていないため、 連続的な ボーリングコアによる地質データが、 入手困難になっていることが

一因であろう。 質の良い野外データの入手が困難なことは、 地層や 堆積相の空間的な分布の追跡を困難としており、 堆積盆全体の堆積 相の時空的分布の把握を困難としている。

これに対し、 石炭その自体のもつ情報から炭田の形成環境を推測 する方法がある。 石炭のそれ自体のもつ情報は、 石炭の物理 ・ 化学

...・・.�.-・・6・.'・'.

(8)

的な性質という情報として石炭の中に保存されており、 その情報を 種々の分析法を用いて引き出すことにより、 石炭を含んでいる炭田 の形成環境を明らかにすることができる。 。 この方法では、 石炭の 起源物質である植物などに反映されている石炭の堆積時の気候など が、 あわせて推定できる可能性が高い。 更に、 石炭の起源物質が石 炭へ変化する過程、 つまり埋没の過程で被る熱エネルギーに関する 情報も熱履歴として石炭中へ保存される。 このような情報は、 地表 での物理的な営力によりコントロールされる砕屑性堆積物では保存 し難い情報である。

ヨーロッパや米国で古生代や中生代の石炭を対象にしている研究 者からは、 日本の石炭は特殊だと言われてきた。 日本の石炭は、 炭 田形成の時期が第三紀と新しいにもかかわらず発熱量が高く、 石炭 化度が同じ段階の欧米の石炭に比べ揮発分が多い。 また、 石炭を コークス炉等で高温乾留すると著しい流動性を示す。 これらの特徴 は、 日本炭の特徴とされており、 日本列島のおかれているテクト

ニックな分類の位置から島弧型石炭の特徴とされている。 一方、 中 国は新生代になる以前に現在とほぼ同じ地理的状況となっており、

中国の石炭は大陸型石炭で、 島弧型石炭と大きく石炭の物理 ・ 化学 的な性質が違うと予想、できる。 本研究では、 日本と中国の同時代で ある第三紀の石炭の物理 ・ 化学的性質つまり石炭特性を解析し、 石 炭の形成環境を比較検討する。

1. 2 研究手法

石炭の起源物質となった植物の生物的 ・ 化学的組成の差や, その 植物が死滅後に地中の浅所に埋没された埋積の初期段階において、

石炭の先駆的物質、 たとえばピートような物質が受ける化学的な環 境の差、 例えば酸化的か還元的かというような差が、 石炭の物理 ・ 化学的性質を決定する重要な要素の一つである。

もう一つの要素として、 石炭化度をあげることができる。 石炭は、

地中深部へ埋没するにしたがって、 続成作用の進行にともない石炭

(9)

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化度が上昇する。 続成作用の段階に応じて石炭は、 褐炭から亜れき 青炭、 れき青炭、 半無煙炭、 無煙炭へと連続的に変化する。 更に埋 没が進行すると、 変成作用の段階に達し、 石炭は無煙炭から、 最終 的には石墨へと変化する。 石炭化度は、 石炭の性質を決定するもう

ひとつの重要な要素である。

第1. l図は、 物理 ・ 化学的性質の違う石炭の起源物質が、 続成作用、

変成作用の段階をへてどのように変化してゆくかを描いた概念図で ある。 石炭の物理 ・ 化学的性質によって石炭の形成環境の推定のた めには、 同ーの石炭化度つまり同ーの熱履歴をもっ石炭を比較しな ければならない。 つまり第1. 1図の中のA2とC 2を比較しなければ 起源物質の差が明らかにできないわけである。 A2とB 3を比較し た場合に、 石炭の性質の差を生じさせた原因としては石炭の起源物 質の差と、 石炭化度の違いによって生じる差が複合している。 この ような場合に両者の石炭の起源物質の差について比較検討するため には、 A2とB 3の石炭化度をそれぞれ測定し、 どちらか片側を、

たとえばB 3をA2と同ーの石炭化度であるB 2に換算し、 比較し なければならない。 このように、 石炭の物理 ・ 化学的性質による形 成環境の推定において、 石炭化作用の進行の程度を決定することが 重要である。 真の石炭化度を示す指標は、 石炭の起源物質の差によ る影響を受けではならない。 影響を受ける指標の場合、 第1. 1図上に おいて、 真の等石炭化度線とその石炭化度指標による等石炭化度線 が斜交するわけである。 そのような指標を用いて二つの試料を比較 する場合に、 同じ石炭化度上での比較検討ができなくなるわけであ

石炭の形成環境の推定をおこなう上で、 もうひとつ重要な問題が 存在する。 それは、 石炭試料の採集の問題である。 たとえば一般に 赤平炭と呼ばれる商品炭は、 石炭中に含まれる泥岩等の不純物を取 り除く選炭過程で、 重液等を用いた物理的分離精製の過程を経てい る。 これは、 選炭の過程である特定の成分が取り除かれ、 本来その 石炭が持っている性質が変化してしまう可能性がある。 また、 実際

(10)

A3 C3 83

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2

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『百1

恒三世間

点線は等石炭

• 石炭起源物質の差

第1. 1図

石炭の形成における起源物質と石炭化度の 関係についての概念図

実線はある起源、物質の熟成進化を表す.

化度を表す.

(11)

の炭鉱は坑内の多くの採掘現場で出炭したおり、 時には複数の炭層 を、 同時に採掘している場合もある。 このような問題がある商品炭 を用いて分析した場合には、 ひとつの石炭試料でも複数の環境が合 成されている可能性が生じる。

本研究では、 このような問題を回避するため、 日本および中国の 炭鉱で石炭試料を、 原則的に1つの炭層から複数個直接採取し、 そ れらに対して諸分析をおこなった。 分析によって得られたデータに 基づき、 従来から石炭化度の指標のスタンダードとして用いられて いるピトリナイト反射率(R 0 )をはじめとする種々の指標につい て検討を行った。 また新しい石炭化度の指標であるバイオマーカー についても、 従来の石炭化度の指標と比較検討をおこった。 これら を通じて、 石炭の起源物質の差による影響を受けない真の石炭化度 の指標として、 どの指標が適切であるかを明確にする。

また、 石炭の性質を示す指標である石炭の発熱量と揮発分を軸に とったダイアグラムを用いて、 日本と中国の炭田の形成環境を比較 検討する。 発熱量一揮発分ダイアグラムは、 佐々木(1967)により 用いられ、 起源物質の差と石炭化度の変化を同時にプロットするこ とができる。 石炭の発熱量と揮発分は、 もっとも基本的な石炭の性 状を示す指標で、 分析手法も国際的に規定されているため、 今回の 研究対象地域以外の石炭に関して文献等によりデータが容易に入手 でき、 日本や中国以外の地域との比較検討も容易である。 また、 日 本炭や中国炭の物理 ・ 化学的性質がどのような原因に起因するかに ついても、 諸分析の結果をもとに考察する。

1. 3 論文概要

以上の成果を本論では次のようにまとめた。 まず最初に研究の対 象とした炭田の地質概要についてに述べる。 次に、 石炭特性の調査 法としての分析方法およびその対象となった研究試料について記載 する。 さらに日本および中国の新生代石炭の特徴を石炭の諸指標の 分析測定の結果として示す。 この結果と第2章で述べた炭田の地質

5

(12)

概要を基に日本と中国の炭田の形成環境について考察を行う。 最後 に結語と今後の課題を第6章に記す。

(13)

2.

日本および中国の研究対象炭田の地質

本研究を進める上で、 研究の対象とする日本および中国の炭田の 地質について明らかにしておくことは重要である。 本研究の目的は、

石炭の物理 ・ 化学的性質から石炭の形成環境を推定することである が、 各炭田の地質についてのデータは、 考察を進める上での重要な 背景となる。 石炭の性質から導かれた結果だけでは、 十分な考察を 進めることがむずかしい問題も多く存在するであろう。 地質的デー タと相互補完的に組み合わせることにより、 より合理的な結論を得 ることが可能となる。 また、 石炭の性質だけで考察を進めた場合に

起きるミスを防ぐことができる。

例えば、 現在ゴンドワナの石炭と呼ばれている二畳紀の石炭が、

オーストラリア、 インド、 南アフリカ、 南米等に広く分布している。

ゴンドワナの石炭は、 石炭組織成分分析等の結果から乾燥気候の堆 積環境下で堆積したと想定されている。 地質学的背景なしに考察を 進めた場合、 当時の乾燥した環境を示す地域を現在の地理に当ては め、 二畳紀は全世界的に乾燥したとの結論に達するであろう。 しか し、 地質の知識があれば、 当時の大陸の分布が現在と大きく異なり、

ゴンドワナの石炭は二畳紀に存在した超大陸内のある地域に、 集中 的に分布していることが明らかにでき、 前述の様な間違った結論を 導かずにすむ。

炭田堆積盆を形成に関する構造運動は、 石炭が堆積する以前に始 まっている。 炭田堆積盆中の堆積物の大部分は、 砕屑性堆積物であ る。 これらに関する情報は石炭には残されていない。 炭田形成の問 題を検討する時、 構造運動や砕屑性堆積物の堆積作用に関する情報 は、 非常に重要であり、 それらは炭田の地質として示される。 以下 に、 今後考察を進める上基礎的な背景となる炭田の地質概要につい て述べる。

日本の主要な炭田は、 主に九州、!と北海道に集中して分布している。

他には,九州の延長部に相当する山口県宇部周辺および福島 ・ 茨城両

7

(14)

県の太平洋岸に広がる常磐炭田が存在する。 これらの炭田はいずれ も古第三紀に形成された炭田で、 今回の研究の対象としたのは九州 および北海道の炭田である。

中国には数多く炭田が存在しているが、 今回研究の対象としたの は遼寧省にある撫}I頃炭田、 阜新炭田および吉林省にある梅河口炭田 である。

(15)

2. 1 九州の炭田

九州には、 筑豊炭田、 福岡炭田、 唐津炭田、 佐世保炭田、 三池炭 田、 崎戸 ・ 松島炭田、 高島炭田、 天草炭田の諸炭田が分布している (第2. 1図) 。 これらの中で、 唐津炭田と佐世保炭田は地理的にも連 続しており、 佐世保 ・ 唐津炭田と一括して取り扱われることが多い。

また崎戸 ・ 松島炭田と高島炭田は近年の西彼杵半島沖の調査により 連続的に堆積盆が発達していることが明 らかにされており、 一括し て西彼杵炭田とされ、 崎戸 ・ 松島地区と高島地区と表される場合も ある。

これらの炭田の地質に関しては、 長尾(1927)以来多くの調査、 研 究が行われており、 詳細な層序が長尾(1927)、 松下(1949)を中心と して確立されている。 それらの各炭田の地層の年代の決定は、 7 0 年代まではそれらの地層中に含まれている貝化石により時代が決定 がなされていた。 水野(1962,1963)は、 中 ・ 北九州全域の古第三系 に含まれる貝化石群集の研究に基づき、 下位より天草階、 高島階、

沖の島階、 船津階、 間瀬階、 西彼杵階、 佐世保階の生層序区分の設 定を行なった。

8 0年代以降は、 海成層中に含まれる微化石の研究が進み、 深海 掘削計画等により決定されたグローパルな生層序との対比が可能と なった。 また地層中に含まれている火成岩やテフラの放射年代の測 定が精度よく測定されるようになり、 絶対的な年代が求めることが 可能になった。 Okada, Hi. (1992)によるナンノプランクトンの研究 や、 尾崎 ・ 漬崎(1991)等によるフィッショントッラク法での年代測 定の研究などにより各炭田の地質時代が明確になってきている。

ここでは、 九州の炭田の中で今回研究の対象となったのは、 三池 炭田および西彼杵炭田だけであるが、 層序の対比の関係もあり、 筑 豊炭田、 唐津 ・ 佐世保炭田、 三池炭田 西彼杵炭田高島地区および 崎戸 ・ 松島地区、 天草炭田の各炭田の地質について述べる。

9

(16)

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第2. 1図

九州の炭田分布図

(Geological Survey of Japan, 1977)

(17)

2. 1. 1 筑豊炭田

古第三紀の地層から構成されている筑豊炭田は、 福岡県北部に分 布する(第2.1図) 。 本地域の古第三系は、 三郡変成岩類、 白亜系関

門層群、 白亜紀の花闘岩類を不整合に覆い、 不整合によって下位よ り直方層群、 大辻層群、 芦屋層群に三分される(長尾,1932) 。

直方層群は、 下位より大焼層、 三尺五尺層、 竹谷層、 上石層が整 合に重なる。 各層とも砂岩、 泥岩および磯岩から構成される。 筑豊 炭田にお いて最も主要な炭層は、 三尺五尺層中に挟在しており、 ま た他の地層中に も炭層が存在する。 本層群からは淡水生ないし汽水 生の貝化石を産することから、 直方層群の大部分は非海成の堆積環

境で堆積した地層から構成されているとされている。

直方層群の年代は、 尾崎 ・ 演崎(1991)によって行われた挟在する 凝灰岩中のジルコンのフイツショントラック年代測定結果によれば 上石層から得られた 年代値は44.2+3.4Maで、 これは中期始新世の 地質時代を示している。 この結果は、 ほぽ同じ年代が微化石生層序 年代により得られている天草の逆瀬川層群が、 直方層群と供に水野 (1962)の沖ノ島階に対比されていることと矛盾しない。

大辻層群は、 下位より出山層、 遠賀層に二分される。 本層群は砂 岩、 泥岩および磯岩から構成され、 上位の遠賀層中に炭層を多く挟 む。 本層群の大部分は非海成層から成るが、 本層群の最上部から海 生の貝化石を産出することから、 本層群の最上部が堆積する時に海

進が起きたと考えられている。

大辻層群のフイツショントラック年代は、 遠賀層の上部から31. 9 + 2. 2Maが得られており、 これは漸新世前期の時代にあたる。 本層群 の下限の年代について明確な値は得られてい ない。 しかし、 本層群 の下部は水野(1962)の船津階に対比され、 崎戸 ・ 松島炭田で船津階 に対比された松島層群からはOkada, Hi. (1992)が後期始新世のナン ノプランクトン化石の産出を報告しているので、 大辻層群の最下部 は、 後期始新世の堆積物である可能性が大きい。

1 1

(18)

芦屋層群は、 岩相により下位より山鹿層、 坂水層、 脇田層に区分

されている。 本層群は、 全体に砂岩および泥岩を主体とし 一部に磯 岩を伴っている。 ほぽ全層準から海生の貝化石を多産することから、

本層群の大部分は海成の堆積環境下で堆積したことが明らかになっ ている。 ただ、 坂水層の中部で局地的に石炭を挟むことから、 一部 で非海成の堆積環境が確認、されている。

芦屋層群の時代は、 尾崎 ・ 演崎(1991)によるフイツショントラッ ク分析の結果によれば、 その最下部にあたる山鹿層の下部から31. 7

+ 2. 3Maの年代値が得られている。 Okada, Hi. (1992)のナンノプラ ンクトンの調査結果から、 芦屋層群全体がOkada&Bukry(1980)の CP19a Zoneに対比され、 年代は28Maから30Maで後期漸新世にあた る。 年代のデータから検討した場合、 大辻層群と芦屋層群との時間 的なギャップはほとんどないと考えられる。

2. 1. 2 唐津 ・佐世保炭田

北部九州の西部にあたる佐賀県西部から長崎県北部にかけて唐津 炭田および佐世保炭田が分布 する。 唐津炭田と佐世保炭田は同ーの 堆積盆に形成された炭田で、 層序的にも連続しているため唐津 ・ 佐 世保炭田として一括されて取り扱われる場合が多い。

唐津 ・ 佐世保炭田は、 層序的には下位より相知層群 、 杵島層群、

佐世保層群、 野島層群の順に累重する各層群から構成されている。

これらの層群の中で、 相知層群と杵島層群が唐津炭田に、 佐世保層 群と野島層群が佐世保炭田に主に分布している。

相知層群は、 下位より巌木層、 芳ノ谷層からなり、 砂岩、 泥岩を 主体とし磯岩および凝灰岩を伴う。 芳ノ谷層は唐津炭田の主要爽炭 層となっている。 本層群の大部分は非海成層であるが、 巌木層上部 は船津階の貝化石を産し、 海成の堆積環境を示している。 本層群は 船津階の貝化石を産することから九州地域の炭田との対比に基づき

始新世後期の堆積物とされる。

杵島層群は、 下位より杵島層、 曲川層、 三河内層、 早岐層、 大塔

(19)

層に区分される。 本層群も砂岩、 泥岩を主体とし、 磯岩、 凝灰岩を 挟む。 ほぽ全層準から貝化石を産し、 杵島層群全体が海成層から構 成されている。 Okada, Hi. (1992)のナンノプランクトンの調査結果 から、 杵島層はOkada&Bukry(1980)のCP16a Zoneに、 また大塔層 はCP18-19a Zoneにそれぞれ対比された。 この結果は、 宮地 ・ 酒井 (1990)による曲川層のフイツション ・ トラック年代値33.9+3.3Ma の値とも矛盾しない。 これらの結果から、 杵島層群は前期漸新世に 対比される。

佐世保層群は、 下位より相浦層、 中里層、 柚木層、 世知原層、 福 井層、 加瀬層に区分されている。 加瀬層を除くすべての層中に炭層 を挟在している。 相浦層上部および加瀬層から海棲の貝化石を産す るが、 他の層準はすべて非海成層であると見られる。

佐世保層群の年代については、 宮地 ・ 酒井(1990)による相浦層の フィッショントラック年代値が30.7+3.7を示しており、 Sakai et al. (1990)により加瀬層中の最前期中新世の浮遊性有孔虫が報告さ れていることから、 その堆積した年代は、 後期漸新世から最前期中 新世にかけてであると判断される。

野島層群は、 長浜(1954)により下位から大屋層、 深月層、 南田平 層に区分されている。 砂岩および泥岩を主体とし、 凝灰岩を伴う。

大屋層および深月層中に淡水棲の貝化石が含まれている。 本層群は 非海成 の堆積環境で堆積した堆積物からなる。 深月 層から18.5+

2.3Maのフィッシ ョ ン トラ ック年代値が得ら れて おり(Sakai et

al.,1990)、 台島型植物化石を産することから、 野島層群は前期中 新世の時代に属すると推定される。

2. 1. 3 三池炭田

三池炭田は、 福岡県南西部の大牟田市周辺から有明海の北東部に かけて分布するが、 大部分は有明海の海底下に没している。 下位よ り赤崎層群、 大牟田層群、 万困層群からなるが、 互いの関係は整合

(20)

である。 赤崎層群は銀水層のみからなる。 銀7k層は、 九州の炭田堆 積盆の最下層によくみられる赤柴 色岩相の非海成層で、 砂岩、 磯岩、

泥岩から構成されている。

大牟困層群は、 下位より米の山層、 稲荷層、 七浦層からなり、 三 池炭田の主要な炭層が挟在するが、 海生の貝化石を含む泥岩も一部 に挟在している。 大牟田層群の堆積環境は、 非海成の環境で主であ るが、 海水が頻繁に進入する環境であったと推定されている。 場所 により非海成層と海成層が同時異相で存在するのが明らかにされて

し、る。

万困層群は、 下位より勝立層、 四ッ山層に区分され、 砂岩および 泥岩からなる。 陸域の万田層群はすべて員化石を含む海成層からな るが、 大牟困層群を含めて最下位の銀水層から四ツ山層までの一連 の地層は、 一回の大きな海進のサイクルを示している。

最近、 新エネルギー総合開発機構により有明海で海上ボーリング が実施されており、 その結果(新エネルギー総合開発機構, 1988な ど)によれば、 勝立層中の炭層第二上層が北西に向かい発達している のが明らかにされた。 しかしこの炭層は、 有明海の中央より南では 存在せず、 その層準は海成の砂岩となっている。 このことは三池炭 田では、 炭層の形成の時期に南から北に向かい海進が進行したこと

を示している。

Okada, Hi. (l992)による四ツ山層のナンノプランクトン化石の分 析結 果に よ れ ば 、 四 ツ 山 層 はOkada&BukrY(1980)のCP14bか ら CP15b Zoneに対比される。 これは中期始新世後期から後期始新世に あたる。 水野(1963)の貝化石による層序区分では、 大牟田層群が高 島階に、 万田層群は沖の島階にそれぞれ対比されており、 三池炭田 は中期始新世から後期始新世に堆積したと考えられる。

2. 1. 4 西彼杵炭田

西彼杵炭田は、 北部の崎戸 ・ 松島地区と南部の高島地区からなり、

陸域では西彼杵半島の西部の海岸沿いに部分的に分布しているにす

(21)

"IJ�..1、よ...

ぎないが、 その西方海域に海底炭田として広く分布していることが、

近年の調査で明かになっている。 層序的には高島地区が崎戸 ・ 松島 地区よりもより下位の地層が分布している。

高島地区の層序は、 下位より香焼層、 高島層群、 伊王島層群に区 分される。 香焼層は、 赤崎相と呼ばれる赤柴色の砂岩、 泥岩からな る非海成層である。 高島層群は、 下位より二子島層、 端島層に区分 されている。 いづれも砂岩、 泥岩からなり、 端島層中に炭層が挟在 している。 本層群中からは、 中期始新世に対比されている高島階に

属する員化石を産する。

伊王島層群は、 下位より沖の島層、 伊王島層に区分される。 伊王 島層の一部を除きすべて海成の砂岩、 泥岩および磯岩層からなる。

最近新エネノレギー総合開発機構によって実施された西彼杵沖の海上 ボーリングの結果(新エネルギー総合開発機構,1984)から伊王島層 群が高島層群を傾斜不整合に覆うのが明らかにされた。 高島地区北 部の伊王島の北沖のボーリングでは、 端島層を欠き伊王島層群が直

接二子島層を不整合に覆っているのが確認、された。

崎戸 ・ 松島地区の層序は、 下位より赤崎層、 寺島層、 松島層群、

西彼杵層群に区分される。 赤崎層は赤崎相の岩相を示す砂岩、 磯岩、

泥岩からなる地層である。 寺島層は、 砂岩、 泥岩および磯岩からな る。

松島層群は、 下位より中戸層、 崎戸層に 区分される。 中戸層は、

砂岩、 泥岩、 磯岩からなる海成層で、 Okada(1992)による結果では、

Okada&Bukry(1980)のCP15bから16a Zoneに対比される。 崎戸層 は、 崎戸 ・ 松島地区の主要な爽炭層で、 砂岩、 泥岩からなる。 崎戸 層は、 池島付近では多くの炭層を含む非海成層でるが、 炭田南部で 行われた海上ボーリングの結果(新エネルギー総合開発機構、 1985) から、 炭田南部では崎戸層中には1m以上の炭層は1枚のみで、 海 成層が挟在していることが明らかにされた。 Okada, Hi. (1992)によ ると崎戸層はCP16a Zoneに対比される。 松島層群は、 後期始新世か ら前期漸新世に堆積した地層である。

1 5

(22)

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西彼杵層群は、 下位より板ノ浦層、 蛎ノ浦層、 大島層に区分され る。 本 層群は、 砂 岩および泥 岩を 主と す る海成堆積物か らなり、

Okada, Hi. (1992)の ナ ン ノ プ ラ ン ク ト ン の 調 査 に よ る と、

Okada&Bukry(1980)のCP16aからCP17 Zone、 すなわち前期漸新世 に対比される。

高島地区 と崎戸 ・ 松島地区との層序関係は、 陸域では不明である が、 新エネルギー総合開発機構によって行われた西彼杵沖地域の総 合解析(1990)による対比では、 高島層群が寺崎層に、 沖の島層上部 が中土層に、 伊王島層下部が崎戸層に、 伊王島層上部が西彼杵層群 に対比されている。 すなわち西彼杵炭田では北部の方が炭層の形成 が遅かったと見られている。

2. 1. 5 天草炭田

天草炭田は、 天草上島、 下島を中心に分布している。 本炭田の層 序は、 下位より弥勅層群、 本渡層群、 逆瀬川層群に区分される。

弥勅層群は、 下位の赤崎層とその上位の白岳砂岩層に区分される。

赤崎層は、 九州各地の炭田の最下層に見られる赤崎相の模式地で あ る。 白岳砂岩層は、 地域により岩相や化石相が異なるが、 南西の方 がより海成の環境が卓越する。

本渡層群は、 下位より教良木層、 砥石層に区分される。 教良木層 は、 海成の泥岩を主としヌムライト化石や貝化石を産する。 砥石層 は天草炭田の主要爽炭層で、 砂岩を主体とする。

逆瀬川層群は、 下位より一町田砂岩層、 逆瀬川層に区分される。

本層群は、 海成の砂岩および泥岩よりなり、 貝化石や有孔虫化石を 産する。

田代他(1980)によるナンノプランクトンの調査結果では、 最下部 の弥勤層群はOkada&Bukry(1980)のCP13a Zoneに対比される。 こ れは、 中期始新世にあたる。 従来、 天草炭田の最下部の天草階(水野、

1963)は、 暁新世に対比されていたが、 この結果から天草階は始新世

に対比される。 また、 天草炭田の最上位にあたる逆瀬) 11層群最上部

(23)

は、 Okada, Hi. (1992)のナンノプランクトンの調査結果により Okada&Bukry(1980)のCP15bすなわち後期始新世に対比される。 天 草炭田の地層は、 中期始新世から後期始新世にかけて堆積したと考 えられる。

1 7

(24)

2. 2 北海道の炭田

北海道の炭田は、 北海道の中軸部の日高山地の西部と東部にあり、

西部では南から北へ断続的に炭田が分布している。 南から北へ向っ て石狩炭田、 留萌炭田、 雨竜炭田、 天北炭田と連続している。 これ らの炭田は、 天北炭田を除き同じ時代に形成されたと考えられてい る。 また東部には釧路炭田が分布している。 ここでは、 本研究の対

象となった石狩炭田および釧路炭田について地質の概要についての 述べる。

2. 2. 1 石狩炭田

石狩炭田の地質については、 わが国の重要な炭田ということもあ り多くの研究が行われており、 層序が古くから確立している(例え ば矢部 ・ 青木, 1924など)。 ここでは、 主に下河原(1963)および加 藤他(1990)に従い述べる。

石狩層群は、 その下位の白亜系蝦夷層群や白亜系函沸j層群を不整 合に覆い、 幌内層により不整合に覆われる。 下位よりの登川層、 幌 加内層、 夕張層、 若鍋層、 美唄層、 赤平層、 幾春別層、 平岸層、 芦 別層に層序的に区分されている(第2.2図)。 しかし、 炭田中央部で は幾春別層が直接下位の蝦夷層群を不整合に覆っており、 石狩層群 堆積時に基盤である蝦夷層群が地形的に高くなっていた地域(隆起 帯)を、 峰延パリヤーと呼んでいる。 この峰延パリヤーの北端にあ る奔別衝上断層を境に、 石狩炭田は、 北部の空知地域と南部の夕張 地域に二分される。 石狩層群の全層序が連続して確認できるのは空 知地域のみで、 夕張地域では幾春別層が直接若鍋層を整合に覆い、

さらに幾春別層を上位の幌内層が不整合に覆っている(第2.3図) 夕張地域の石狩層群では、 空知地域に発達する全層準が揃っておら ず、 かつ両地域の層厚を比較した場合、 夕張地域の方が著しく薄化 している。 各地層について以下に概略を述べる。

登川層は、 下位の白亜系蝦夷層群等を不整合に覆い 砂岩および 泥岩を主体とする。 本層は、 数層の炭層を中に挟在しており、 非海

(25)

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第2. 2図

石狩炭田北部(空知地域)にお ける地質柱状図

(地質調査所, 1992)

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(26)

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第2. 3図 石狩炭田の南北の層序関係(力11藤他「北海道の地質Jより)

(27)

成層と考えられている。 空知 ・ 夕張両地域に分布する。

本夕張層は、 砂岩および泥岩を主

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く の たそ層を含 む 非海成 層であるo 石狩炭田の空知

夕張両地域の主要

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夕張地域では主要な稼業対象の炭層が、 本層中γ存在しており最も、

厚い部分では炭層の厚さは7mを越える。 '-

若鍋層は、 砂岩および泥岩よりなり一部に炭層を挟在するo 本層 は炭回全域を覆い、 浅海生および汽水生の貝化石を産することから、

海成または汽水性の堆積環境が考えられる。

美唄層は、 砂岩および泥岩からなり、 数層の炭層を挟在している。

本層は夕張地域には発蓬しない。 挟在するの炭層は、 空知地域の主

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であるo 海成の貝化石を産しないことから 非海成層 赤平層は、 主に泥岩からなり砂岩の薄層や薄い炭層を挟在してい

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幾春別層は、 砂岩および泥岩からなり多数の炭層を挟在している。

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平岸層は、 おもに泥岩からなり上部に問、�を挟在するo 海生の戸 化石を多産することから、 本層は、 大部

海成の環境で堆積した

される。 空知地域にのみ分布する。

(28)

られていない。 これは、 石狩層群の大部分が非海成層であるために 浮遊性有孔虫などの時代対比 に有効な微化石が産しないためである。

また、 続成作用が進行していて石炭化度が比較的高いため、 化石の 保存状態が悪くなっていることもあると考えられる。 これまでに石 狩炭田等で得られている年代のデータに基づいて石狩層群の堆積し た時代に関して考察すると以下のようになると考えることができる。

石狩層群に不整合で覆われている地層の中で、 最上位の地層は函 沸j層群である。 函沸j層群は、 白亜紀カンパニアンのアンモナイトが 産す ることから、 上部白亜系とされていた。 最近、 安田(1986)は、

宗谷地方の函測層群から古第三紀暁新世の浮遊性有孔虫化石を報告 しており、 遥か北の宗谷地方の函梯l層群の上部は古第三紀におよん でいる可能性が高い。 また石狩層群を不整合に覆う幌内層の年代は、

Kaiho(1984)による浮遊性有孔虫化石の研究結果によれば、 大部分 が後期始新世の年代を示し、 幌内層下部が中期始新世に、 幌内層上 部が前期漸新世にかかる可能性が示されている。

石狩層群は、 層序的に函沸j 層群より上位で、 幌内層より下位に位 置しており、 前記の資料によって石狩層群の年代は、 暁新世より若 く、 中期始新世より古いとの結果が導かれる。 棚井(1986)が、 若鍋 層中の凝灰岩のフィッショントラック年代として報告している41. 6

+ 3. 5Maという年代値は、 中期始新世を示しており、 浮遊性有孔虫の

結果と矛盾しない。 Mizuno(1964)は、 平岸層および芦別層中の貝化 石動物群は、 上位の幌内層中 に見られる貝化石群集である幌内動物 群との共通種が多いことを述べている。 石狩層群と幌内層との間の 時間間隙は従来考えられたほど長いとは考え難い

上記の結果より、 石狩層群の年代は、 石狩層群は前期から中期始 新世に対比され、 その最下部が 暁新統におよぶ可能 性もあると推論 できる。

(29)

2.2.2 釧路炭田

剣11路炭田は、 北海道東部の太平洋側に広がっているが、 爽炭層が 分布する地域は大きく2地区に分かれる。 一つは釧路周辺で、 本研 究で使用した試料を採取し太平洋炭鉱がこの地域に存在する。 もう ひとつは炭田西部の白糠丘陵やその延長部を含む地域で、 雄別炭鉱 等がかつて操業した地域である。

針11路炭田の地質は、 佐々(1940)や馬淵(1961)、 Matsui (1962)等 の研究によって明らかにされた。 それらに基づいて層序では、 下位 より根室層群、 浦幌層群、 音別層群がそれぞれ不整合をもって累重 している。 この中で、 炭層を挟在しているのは、 浦幌層群である。

浦幌層群は、 下位より別保層、 春採層、 天寧層、 雄別層、 舌辛層、

尺別層に区分される(第2.4図) 。

別保層は、 黒色の磯岩で特徴づけられ、 他に砂岩等を含んでいる。

湖成層などを含む非海成層である。

春採層は、 磯岩を主とし、 砂岩および泥岩を伴う非海成層である。

本層は、 剣11路炭田の主要な爽炭層で、 太平洋炭鉱では本層中の炭層 を主な稼行対象炭層としている。

天寧層は、 磯岩を主とし砂岩、 泥岩を伴う。 磯岩は、 赤色チャー ト礁によって特徴づけられている。 本層の大部分は非海成層である が、 炭田の東部では一部海成層を含んでいる。

雄別層は、 主に砂岩および泥岩からなり、 炭層を挟在している。

本層は、 炭田西部の雄別炭鉱での主要な炭層を挟在しており、 非海 成層からなる。

舌辛層は、 砂岩から泥岩そしてまた砂岩へと変化する一連の海進、

海退サイクルのを示す 本層中からは貝化石を多産し、 浅海成の堆 積環境で堆積したとみられる。

尺別層は、 主に粗粒の砂岩からなり、 炭田西部で炭層を挟在して いる。 汽水性の非海成層である。

浦幌層群の堆積した時代は、 次のように考えることができる。 上 位の浦幌層群によって不整合に覆われる根室層群は、 海保(1984)に

23

(30)

層厚(m) JltHt f;;ì境

地質時代 火昨岩

的性准灰岩敵性従灰岩安山岩質角球投灰岩 おもな化石

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より)

第2. 4図

釧路炭田の層序

(加藤他「北海道の地質J

(31)

よる浮遊性有孔虫化石の研究結果では、 後期白亜紀から中期始新世 初期にまたがる年代が得られている。 また浦幌層群の上位に位置す る音別層群の年代は、 Okada&Kaiho(1992)のナンノプランクトン化 石の研究結果では、 音別層群の下部にあたる茶路層は最後期始新世 から前期漸新世の年代を示している。 浦幌層群中唯一の海成層であ る舌辛層は、 産出する底棲有孔虫の海保(1983)による研究解析によ り、 上部始新統の幌内層中~上部に対比されている。 舌辛層からは 浮遊性有孔虫化石を産しないが、 浮遊性有孔虫化石を産する幌内層 の中 ・ 上部が、 前述したようにKaiho(1984) より、 大部分が後期始 新世に対比されている。 しかし、 Okada&Kaiho(1992)は、 後期始新 世に特徴的な穫を欠いていることから 、 浦幌層群の堆積した時代を 中期始新世以前であると推定している。 舌辛層から中期始新世のナ ンノプランクトン化石を見いだしてはいない。 浦幌層群の年代は、

現時点では確定が困難であるが、 後期始新世で 、 その下部は中期始 新世に対比される可能性があるとしておく。

25

(32)

2. 3 中国の炭田

中国は、 現在世界ーの石炭生産量をほこり、 多くの炭田が中国国 内に存在する。 本研究では、 中国東北地方南部に分布する炭田を選 んで研究対象とした。 この地方は、 日本海が開く以前に日本列島が アジア大 陸の接続した陸弧として存在した古第三紀以前において古 地理的に日本列島に最も近い地域であった。 このことは両者の炭田 の比較検討する場合有利であると考えられる。

また、 中国に多くの炭田が存在するが、 その大部分は、 古生代お よび中生代に形成された炭田で、 日本の炭田と同時代の古第三紀の 炭田で、 比較的規模の大きく現在稼行されている、 遼寧省にある撫 )1慎炭田のみである。 第2.5図は、 Li et a1. (印刷中) による中国東 北地方南部の中生代以降の堆積盆の分布図である。 この図の中で第 三紀の堆積盆の中で最も大きい遼 河下流 堆 積 盆 (Lower Liaohe Basin)は、 その南に位置する遼東湾堆積盆(Liaodong Bay Basin) や、 更にその南への延長である湖海湾堆積盆(Bohaí Bay Basin)や

華北堆積盆(Huanghua Basín)に連続している。 これらの堆積盆は、

始新世に開始されたリフトシステムの活動によって形成された堆積 盆で、 Liu(1987)によれば、 これらの堆積盆の地下深部においては、

地殻が4km程度薄くなっている地球物理学的データが示されている。

また、 この地域では現在でも地殻熱流量が高い値を示している。 ま たこれらの堆積盆中には、 遼河油田やj勃海油田、 勝利油田など中国 の主要油田が分布している。 これらの油田の主要な根源岩もまた第 三紀層中にある。

本研究の対象とした撫)1慎炭田(Fushun Coa1fie1d)および梅河口

(Meihekou Coalfield)もこれらのリフト堆積盆の延長部に位置し ている。 これらのリフト堆積盆は、 長さ1000km以上におよぶ横ずれ 断層であるタンルウ断層に沿って形成されている。 タンルウ断層は、

遼河下流堆積盆の東縁を通り、 j審陽(Shenyang)付近で二校に分岐す る。 その分岐断層の東側の断層に沿って撫)1慎炭田や梅河口炭田が分 布している。

(33)

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第2. 5図

中国東北地方(旧満州)南部の堆積盆分布図

漢字で示レたのは研究苅象炭田

27

(34)

本研究の対象と した阜新炭田は、 前期白亜紀に形成された堆積盆 に発達した炭田である。 Li et a1 (1984)は、 阜新炭田と同篠の堆 積盆が中国の東北地方からロシアのハバロスク付近やモンゴル東部 にかけて多数存在しており、 それらの堆積盆は両側または片側が断 層によって境された地溝状の堆積盆であることを明らかにしている。

ここでは、 撫順炭田、 梅河口炭田、 阜新炭田の地質の概略につい て述べる。

2. 3.1 撫順炭田

撫JI頂炭田は、 j審陽から東約50km位置する中国最大の第三紀の炭田 である。 炭田は東西約18km、 南北約 3kmにわたって分布する東西に 細長い炭田である。 炭田内には、 西より西露天鉱、 老虎台鉱、 龍鳳 鉱の3炭鉱が存在している。 第2.6図の地質図に示されるように、 中

央部に東西にのびる向斜があり、 北方に向って傾斜が急になり、 次 第に逆転し、 逆断層によって北翼が切られている。 炭田の第三系は、

基盤となる先カンブリア系鞍山(Anshan)層群の変成岩および下部白 亜系龍鳳 層群砂岩および泥岩を不整合に覆う。 炭田の層序は下位よ り、 玄武岩溶岩からなる老虎台(Lauhutai)層、 凝灰岩からなる栗子 溝(Lizigou)層、 爽炭層である古城子(Guchengzi)層、 オイノレシエ

ーノレか らな る計軍屯(Jijuentun)層 、 緑色頁岩 か ら な る 西 露 天 (Xilutan)層、 褐色泥岩に細粒砂岩をはさむ秋家街(Gengjaje)層に

区分されている(第2.7図) 。

老虎台 層は、 リフト形成時に噴出した玄 武岩溶岩から主になり、

所によってB炭層と呼ばれる薄い石炭を挟む場合がある。 栗子 溝 層 は、 泥岩やドロマイト質の泥岩からなりA炭層と呼ばれる質の悪い 炭層が挟在している。

古城子 層は、 撫JI慎炭田の主要爽炭層で、 最も厚いところでは100m

を越える(第2.8図) 。 西露天鉱の西部、 老虎台鉱、 龍鳳鉱の柱状図 を対比した第2.8図でわかるように、 炭田のそれぞれの東西両端で炭 層に挟まれる砂岩および泥岩の割合が増えている。 西露天鉱ではこ

(35)

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第2. 6図 撫JI慎炭田の地質図

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地層名は本文参照

(36)

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第2. 7図

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撫順炭田の層序図

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(37)

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古誠子眉岩欄栓状図

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第2. 8図

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撫順炭田古城子層の岩相柱状図

3 1

能鳳砿

(38)

の様子が良く観察される。 西露天鉱西端では挟在している砂岩に よって、 下部炭層と上部炭層に区分できる。 しかし西露天鉱の東端 では炭層中に顕著な砂岩は挟在せず、 炭層は1つの厚層になってい

古城子層は、 オイルシエールからなる計軍屯層に覆われる。 両者 間の関係は整合であるが、 明確な境界を持ち漸移関係ではない。 さ らに計軍屯層は漸移関係で西露天層へ変化する。 西露天層は、 緑色 頁岩の聞に計軍屯層と岩相が類似する褐色の泥岩や石灰質団塊を挟 在する。 その上位に重なる歌家街層は、 砂岩および泥岩よりなり、

デルタや氾濫原の堆積環境の堆積物である。

堆積環境は、 次のように推定している。 リフト形成に伴い、 玄武 岩噴出とこれに続く断層運動によって、 半地溝堆積盆が形成された。

その初期は石炭を伴う河流相の栗子溝層が堆積した。 やがてやや水 深が増し、 沼沢相の古城子層が堆積し、 主爽炭層が形成された。 こ の環境は、 かなり長時間維持されていたがやがて水深が急激に増し、

湖沼の環境で計軍屯層が堆積した。 湖沼ではプランクトンが多く発 生し、 オイルシエールが形成されたと推定される。 つづい て緑色頁 岩が堆積した後に 、 水深は再び浅くなり歌家街層が堆積した(黄 他t 1983) 0 Li et a1. (印刷中)は、 計軍屯層までが水面上昇の サイクルを示し、 西露天層以降が水面の低下のサイクルを示してい るとの考えを示している。

撫順炭田の 形成した年代を示す明確なデータは得られていない。

今回、 最下部の老虎台層のカンラン石玄武岩の絶対年代をK-Ar 全岩分析法で求めた。 結果を第2. 1表に示す。 得られた年代値44.7

+ 2. 3 Maおよび50.9+2.5Maで、 この2個のサンプルは西露天鉱の 中央部から採取したものである。 顕微鏡下の観察結果では、 いずれ のサンプルも大部分のカンラン石は変質しているが、 斜長石は変質 していない。 年代値は、 誤差の範囲で重なり、 同一の年代を示して いるとみてよい。 この年代値は、 老虎台層の玄武岩が中期始新世に 噴出したことを示している。

(39)

サンプル番号 分析方法 K-Är年代値 備考

FUB-1 全岩分析 47. 0+2. 3 平均

48. 1+2.4 実測値

45. 9+2. 3 実測値

FUb-2 全岩分析 50. 9+2. 5 平均

51. 9+2.6 実測値

50.0+3.0 実測値

第2. 1表

撫}I頂炭田老虎台層中の玄武岩のK-Ar年代

(分析はテレゲイン'1イソトプ社による)

33

(40)

2. 3. 2. 梅河口炭田

梅河口炭田は、 中国吉林省に あり 、 撫)1慎 炭田からは北東に約 150kmの距離に位置している。 炭田は北東一南西に20kmの長さを持 つが、 幅はlkm程度の細長く伸びた形をしている(第2.9図)。

炭田の層序は、 次の通りである。 最下部の磯岩を主とする堆積物 が、 基盤の先カンブリア系の変成岩や白亜系砂岩を不整合に覆う。

その上位に、 砂岩泥岩互層を主とし5層の炭層を挟在する下部爽炭 層が連続する。 その上位に湖成層の泥岩が重なる。 この泥岩は3---

6%の油を含む油母頁岩である。 その上位には1 1層の薄い炭層を 挟在する砂岩泥岩互層からなる上部爽炭層が重なる。 最上位に砂岩、

泥岩および磯岩からなる粗粒堆積物からなる緑色岩層が重なってい る。 断層運動により堆積盆が形成された後、 堆積物が埋積する過程 で起きた、 一回の水面の上 下に対応する堆積サイクルが示している。

炭層を挟在するのは、 下部爽炭層と上部爽炭層であるが、 稼行の対 象となっているのは下部爽炭層中の石炭である。 炭層は厚いところ では20mを越えるが 炭層は安定せず膨縮が激しい。 また地層の 傾斜はかなり大きく、 炭鉱内で7 0度に達するところもある。 断層 運動に関係し形成された扇状地の末端での炭層が形成されたと考え られている。

炭田の形成された年代につ い ては、 第三紀である以外に決定的な 証拠は現在存在しない。 しかし、 撫)1慎炭田から続く断層に沿って炭 田が発達している こと、 この断層やその延長にあたるタンルウ断層 に沿った堆積盆がすべて古第三紀に形成されたことから、 梅河口炭 田の形成年代は、 古第三紀であろうと推論できる。

(41)

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第2. 9図

梅河口炭団地質概念図

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(42)

2.3.3 阜新炭田

阜新炭田は、 j審陽から 150kmほど西方に位置する前期白亜紀に形 成された炭田である(第2.5図) 。 本 炭田は、 Li et a1 (1984)によ

り詳細な 堆積学的考察が行われている。 阜新炭田の層序は、 下位の 砂海層(Shahai Fm.)と上位の 海州 層(Haizhou Fm)から なる (第 2. 10図) 。 砂海層は、 ジュラ紀 後期の安山岩火山岩を不整合に覆う。

基底部には、 日本の九州の炭田で、 その基底 に良くみられる赤崎相 と呼ばれる岩相 と似ている岩相が発達する。 最下部 層は磯岩を主と する粗粒堆積物からなる。 その上位に 炭層 を挟在 する砂岩層が発達

し、 さら に 上位の湖成の泥岩層へ連続的に 変化 する。 ここま でが、

水面の上昇に対応する岩本日である。 その上位に、 水面低下に対応す る岩相が連続する。 湖成層の上位には、 阜新炭田の主要爽炭層が重 なる。 主爽炭層には、 海州露天鉱では下位より太平炭層、 中間炭層、

孫家湾炭層が分布している(第2. 1 1図) 。 主夫炭層の上位に、 磯岩 を主とする粗粒堆積物が重なる。

阜新炭田 中最大の炭鉱である海州露天鉱で観察 される様に、 炭層 の膨縮の変化が激しい 。 ま た、 露天鉱南西部で 炭層の中に玄武岩が

シート状に貫入しており、 その周辺は天然コークス化している。

阜新炭田は、 その四方 を断層 に固まれた堆積盆で、 断層運動によ る堆積盆地形成後、 一回のサイクノレの堆積で埋積 されている。 Li

et a1. (1984)は、 阜新炭田と同様な形成過程を経ている堆積盆が、

中国東北部や内蒙古、 モンゴル東部等に多数存在していることを明 らか にした。 ま た、 阜新炭田でみられる粗粒堆積物から細粒堆積 物 へ 変化し、 ま た 粗粒堆積物が 堆積するという堆積サイクノレは、 前述 した第三紀の堆積盆である撫)1慎炭田や梅河口炭田 と同じである。 .

(43)

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第2.10図

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第2. 11図

一阜新炭田の海州露天鉱炭層分布図

矢印は試料採取地点を示す

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参照

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