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アジア大陸東縁の新生代石炭の特徴とその形成環境

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

アジア大陸東縁の新生代石炭の特徴とその形成環境

鈴木, 祐一郎

https://doi.org/10.11501/3075543

出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(理学), 論文博士 バージョン:

(2)

5

考察

ここでは、 続成作用の進行によっておきる石炭化度の変化と、 炭 田の形成環境に密接に関係する石炭の起源物質の差が、 直行する方

向に表示できる発熱量一揮発分ダイアグラムを用い、 日本と中国の 同時代の炭田である古第三紀炭田について、 地質的状況も参照し な がら、 それら炭田の形成環境について考察する。

また、 石炭組織成分の一つで、 炭田の形成環境に密接に関係 して いるとみられるデグラディナイトについて、 その物理 ・ 化学的な性 質とその起源となった物質についての考察をおこなう。

今回行なったの分析の結果から、 一つの炭層内でのビトリナイト 反射率およびλmaxはかなりの幅で変化し、 それが発熱量、 揮発分お

よび石炭組織成分組成と相関関係を示している点が明らかにされた。

この原因について考察をおこなう。

5. 1

日本と中国の炭田形成環境の比較

比較検討に使用する発熱量一揮発分ダイアグラムは、 前述の通り、

石炭の指標、 この場合は発熱量と揮発分を用いて炭田の形成環境を 比較検討するのに たいへん有効な手法である。 発熱量一揮発分ダイ アグラムを最初に用いて、 常磐炭田度で炭質と石炭化度の両面から 論じ たのは佐々木(1967)である。 その後、 Fujii(1984)は、 日本、

米国、 カナダ、 豪州の石炭について発熱量一揮発分ダイアグラムを 用いて、 それら の石炭がいくつかの領域に区分されることを明らか に し、 その成因について論じている。 その結果を示しているのが第

5. 1図である。 この時点では、 日本炭は島弧型の典型であると考えら れていた。 中国に関してはデータをもってい なかったが、 大陸型で あろうと予測されていた。

今回は、 地質時代が古第三紀と日本の炭田と同じであるが、 その 地理的な位置および、 炭田の地質が大きく異なる中国の古第三紀の

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第5. 1図

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炭田を、 日本の炭田と比較検討を行なうことができた。 第5.2図は、

本研究での分析で得られたデータを、 発熱量一揮発分ダイアグラム 上にプロ ットしたものである。 石狩炭田に関しては地質調査所の未 公開データもあわせて表示する。 中国の中生代には、 オルドス高原 の石炭のデータも加えている。 これは、 現地で直接試料を採取して 得たデータである。 参考のため米国、 豪州およびインドネシアのい くつかの炭田のデータも合わせて表示する。 これらの値は、 石炭技 術研究所および新エネルギー総合開発機構が現地で試料採取し、 日 本で分析した値である(未公表資料)。 第5.2図はデータが多いため 図が見難い点もあり、 日本および中国のデータに絞った第5.3図を示 す。

結果は、 撫)1慎炭田の老虎台鉱および龍鳳鉱の値は、 すべて日本の 石狩炭田および九州の炭田と同じ領域に重なる。 西露天鉱の値はか なり右下の方へ延びているが、 梅河口炭田は揮発分の多い 方へよっ ており、 インドネシア炭と同様な領域に分布している。

撫)1慎炭田は、 地質の概要の説明でも述べたとおり古第三紀に形成 された大陸内部のリフト堆積盆で、 まったく海成層を挟んでいない 内陸の地溝に形成された非海成の炭田という点では、 地理的にも近 い阜新堆積盆と同じである。 しかし、 阜新炭田の値は、 明確に撫順 炭田とちがう領域すなわち、 より揮発分の少ない領域に表示される。

この原因の可能性のーっとして、 揮発分が少ない石炭組織成分であ るイナーチナイトの影響が考えられるが、 阜新炭田の石炭にはイ ナーチナイトはほとんど含まれていない。

撫)1慎炭田の石炭が、 日本の石炭と起源物質の性質が同じであるこ とは、 発熱量一揮発分ダイアグラム上で同じ位置に表示されること から明かである。 逆に、 同じ大陸内(アジア大陸内)の炭田であ っ ても、 阜新炭田とは発熱量一揮発分ダイアグラム上での関係から、

石炭の起源となった物質の性質が異なっていると考えられる。

この点を、 説明するには最も適切な答は、 地質時代の差による石 炭の起源物質の性質が変化したとするのが最も適切である。 ダイア

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第5. 2図 発熱量一揮発分ダイアグラムによる

石炭の比較

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第5. 3図 発熱量一揮発分ダイアグラムによる

日本および中国の石炭の比較

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グラム上での位置から、 ほぽ同ーの石炭化度であるとみなせる撫JI慎 炭田老虎台鉱の石炭と阜新炭田の石炭が、 ダイアグラム上でそれぞ れの領域がまったく重複しない。 阜新炭の中には揮発分には富むも のも存在する。 しかし、 撫JI慎炭全体がその石炭に比べはるかに揮発 分に富んでいる。 このことは、 中生代の前期白亜紀と第三紀では、

石炭の起源物質となった植物の生体を構成している物質の物理 ・ 化 学的性質が、 より揮発分の多い方へ変化した ことを意味している。

植物が死滅し、 地中に埋没した後に被る作用は、 場所によって強度 の差はあるが圧密作用と熟成作用で、 これらは地質時代を通して不 変である。 中生代でも新生代でも、 死滅後に受けた作用は同じであ る。 それゆえ、 石炭の原材料である植物の変化が原因とするのが最 も受け入れやすい考えである。 勿論、 植物の群集組成が変化したの か、 あるいはある種類の植物それ自身が大きく変化したのかは不明 である。 中生代の後半白亜紀から第三紀にかけ地球上の植物相が大 きく変化したのはよく知られていることである。

日本と中国の古第三紀炭田では、 地理的な位置が大きく異なって おり、 海からの距離も大きく異なっている 当然、 沿岸地域と大陸 の内陸部では古気候にも差があったと考えられる しかし、 起源物 質の性質が近似していることは、 地理的な古環境の違いよりも、 前 記したように起源物質すなわち古植物群を構成する植物の化学的な 性質が時代により変化した影響が大きかったと考えられる。

ビトリナイトが大部分を占める試料でも揮発分の割合が、 中生代 の石炭に比べ多いことから、 ビトリナイトそのものの性質も変化し たと考えられる 世界中でタイプ皿型つまりピトリナイト型ケロ

ジェン起源とされている油田が、 第三紀に集中しているのは、 その ような理由による可能性がある。

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5. 2 デグラディナイトの物理 ・ 化学的性質とその起源について 今回の研究で第三紀の石炭の特徴の一つに、 デグラディナイトの 存在が上げられた。 次にデグラディナイトの起源とその物理 ・ 化学 的性質ついて考察する。

池島炭鉱の試料の元素分析の結果を、 van Krevelenダイアグラム 上にプロ ットしたものが第5.4図である。 数字はデグラディナイト含 有量を示す。 なお、 I、 H、 Eは、 Tissot&Welte(1984)によるケ ロジェンの化学組成変化の経路である。 この図から、 デグラディナ イトが増加するにつれ、 H/C原子数比が少しずつ増加し、 O/C 原子数比は減少するという傾向が読みとれる。 デグラディナイトは 微細な粒子の集合体で、 通常、 テロコリナイト、 テリナイト、 デス モコリナイト、 エクジナイト及びイナーチナイトと共存し、 デグラ ディナイトのみを単離することは難しい そこで この傾向を利用 してデグラディナイトが100%になるとした場合のH/C, O/C原 子数比を推定し、 プロ ットしたのが100 estimated と書いた黒丸 印である。 したがって、 デグラディナイトは化学的にエクジナイ ト ・ グループに属すると予想される。 このことは、 藤井他(1979)に より太平洋炭鉱において同様の結果が得られている。

池島炭鉱の試料については、 13C-NMRスベクトル分析により、

芳香族の全炭素量に対する割合である芳香族炭素指数(fa) が既に Fujii et al. (1984)により求められている。 faとデグラディナイ トとの関係を示したのが第5.5図である。 図からデグラディナイト含 有量 が増加するにつれ、 faは減少することがわかる。 こ のことは、

芳香族の減少と脂肪族の増加を意味しており、 前述のデグラディナ イト含有量の増加にともなうH/Cの増加の傾向と整合する。

デグラディナイトの顕微鏡的性質は、 2次蛍光を発する微細な粒 子からなり、 Stach et al. のマセラルの記載で当てはまるのはエク ジナイトグループのリプチ デトリナイト(liptodetrinite)である。

しかし、 100%デグラディナイトから成り立っていると思われる ものは認められない。 相原(1992)も指摘するように、 単体のマセラ

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第5. 4図

van Krevelen夕、イアグラム上にデグラディナイ ト含有量を示した図(池島炭鉱データ)

デグラディナイト100犯の場合を推定した値をESTIMETED で表す。

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第5. 5図

デグラディナイト含有量と13CNMRの関係

池島炭鉱1 8尺層

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ル卜して取り扱うには問題も残っている。

NMR分析によりデグラディナイトは脂肪族炭化水素に富むこと が明らかである。 第4. 41図および第4.42図からわかるように、 デグ ラディナイト含有量が増すにつれ、 発熱量、 揮発分、 増えることは。

このことと調和的である。 このように、 デグラディナイトの性質は、

エグジナイトに近い性質であり、 少なくともビトリナイト ・ グルー プのなかのある種のマセラルの混合物という従来の考え方には賛成 できない。

デグラディナイトの起源ははっきりしないが、 藤井他(1979)は太 平洋炭鉱での炭層の水平方向での石炭組織組成分布の解析により、

デグラディナイトが堆積盆の中心で増加するのを明らかにしている。

これは、 デグラディナイトが堆積盆の中央付近により多く存在して いる植物に由来することを暗示している。 石炭の堆積する場として は、 普通湿原が考えられているが、 湿原の中央はより水位が高く、

水草等の草本類が繁茂していて、 樹木の生育が難しい環境である。

また水位が高いため、 酸化され難く、 より分解されやすい物質も保 存される可能性が大きいところである。 デグラディナイトの起源と

しては、 水草等の草本類の可能性が大きい。 より水素に富み分解さ れやすい物質が、 水位が高いため酸化分解反応を免れたのであろう。

今回の研究で、 デグラディナイトが日本特有のマセラノレではなく、

中国の撫順炭田等の第三紀炭田にも存在していることが明らかに なった 。 Moore&Fern(1992)は、 インドネシアのカリマンタンの第 三紀炭田についてその石炭組織等を報告しているが、 その中にはデ グラディナイトのようなマセラル が存在している。 その論文では、

蛍光を発する分類不能のデグラディナイト様の組織を報告しており、

便宜上リプチデトリナイトとしている。 この他の第三紀炭田におい てもデグラディナイトがみられる可能性は高いと考えられる。

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5. 3 ピトリナイト反射率およびλmaxの炭層内での

変化について

ビトリナイト反射率およびλmaxがについて考察すると、 泥炭形成 時に おけるヒューミナイトの物理 ・ 化学的差異は酸化 ・ 還元条件、

Ph条件、 バクテリアの作用など生化学的泥炭化作用の差異で決まる。

その後、 埋没深度が増加することによって、 石炭化作用が進行し、

ヒューミナイトがビトリナイトに変化し、 芳香族環の縮合や環化反 応の 進行 に伴 っ て 、 芳 香 族 化 が 進行 し さら に van

Krevelen(1961)の chemical evolution path (第5.4図) にし たがって、 ピトリナイトの物理 ・ 化学的性質が変化していく。

すなわち、 生化学的泥炭化作用の段階でヒュ-ミナイトの物理 ・ 化学的性質の差異が生じない場合、 次の地化学的石炭化作用の段階 でビトリナイトの物理 ・ 化学的性質の差異が生じるとは考え難い。

坂輪(1991)で紹介された大内による太平洋炭の立体構造モデノレ

(第5.6図) で、 水素を変化させるには、 芳香族の聞を結んでいる架 橋部分の長さを変えるかまたは、 芳香族環についている脂肪族の側 鎖の長さや数を変える必要がある。 その様にした 場合、 ある単位あ た りの芳香族の割合が変化するであろう。 つまりデグラディナイト が生成し易い場所つまり水素に富む場所では、 ビトリナイトの芳香 族化の程度が弱く、 脂肪族炭化水素に富み、 ビトリナイトの反射率 が低くなる。 これに対しデグラディナイトの生成され難い環境下に あっては逆にビトリナイト反射率が高くなるといえる。

したがって、 同一石炭化度にある試料開において、 デグラディナ イト含有量の少ない試料は、 その含有量の多い試料に比べ、 芳香族 化が進んでいるため高Ro、 低発熱量、 低揮発分、 低い最高流動度を

示す。

つぎに、 スポリナイト蛍光 性について 考察する。 蛍光の原理は、

花粉 ・ 胞子の第3膜を構成するスポロポレニンの化学的性質に由来 する。 スポロポレニンはカロチノイド及びカロチノイドエステルか らなり、 共役ジェンをなしている(Brooks. 1971) 励起された蛍

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OH

第5. 6図

大内よる太平洋炭の石炭化学構造モデル

(坂輸, 1991より)

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光がカロチノイドに当ると、 エネルギーを吸収し、 電子は高いエネ ノレギーをもち蛍光を発する。 そして、 共役系が長いほど、 長波長の エネルギーを吸収する。 したがって、 同一石炭化度にある試料開に おいて、 デグラディナイト含有量の 多い試料は、 その含有量の少な い試料に比べて、 脂肪族炭化水素が多く、 スポリナイトの共役二重 結合はより長いものからなると推定され、 λmaxは長波長側にシフト し、 高発熱量、 高揮発分、 高い最高流動度を示す。

石炭岩石学的手法による石炭化度のパラメーターとして、 近年ビ

トリナイト反射率が最も信頼性があり、 スポリナイト蛍光性は補助 的なパラメーターといわれている。 そこで、 両パラメーターと炭質 特性との関係を調べた。 結果として、 ビトリナイト反射率とスポリ ナイト蛍光性と炭質特性との相関性は一般に良く、 とくに発熱量に 対してはスポリナイト蛍光性が、 揮発分に対してはビトリナイト反 射率が、 最高流動度に対してはスポリナイト蛍光性がそれぞれ よく 相関することが明らかになった。 これらの関係はビトリナイト反射 率及びスポリナイト蛍光性を決定する物理 ・ 化学的特質が炭質特性 と密接に関係していることを示している。

(15)

6

結語と今後の課題

東アジア東縁にある日本および中国の古第三紀炭田を対象とし、

炭田の地層中に挟在されている石炭がもっ物理 ・ 化学的な性質を基 に、 炭田の形成された環境を明らかにすることを目的として、 日本 および中国の炭田で一つの炭層から連続的に複数個の石炭試料を採

取し、 分析検討をおこなった。

炭田の形成環境を反映している石炭の起源物質の差を、 石炭の性 質から明らかにするために、 続成過程で生じる石炭化度の違いによ る差を除かなければならない。 そのために、 石炭化度の指標とされ ている発熱量、 揮発分、 ビトリナイト反射率、 スポリナイト蛍光性 について石炭化度の指標として適切であるかを検討した。 結果は、

これらすべての指標が、 同一石炭化度であるべき同一炭層内でかな りの値の変化を示した。 また、 それらの聞には明かな相互関係が認 められて。 しかし、 化学的にみて分子内の一つの反応で示されるバ イオマーカにおいては 炭層内で値の差がなく、 石炭化度の指標と して有効であることが明かとなった。

起源物質の差を反映していると考えられている石炭組織成分につ いて分析をおこなった。 一部の試料でイナーチナイトが多かった以 外は、 ほとんどの試料でビトリナイトグループが90%以上を占め て、 著しい差は存在しない。 しかし、 わが国独自のマセラルで、 ビ トリナイトグループに属するが、 顕微鏡下ではエクジナイト的な性 質を示すデグラディナイトの含有量を分析し、 発熱量、 揮発分との 相互関係、を調べるとよい相関が得られた。 デグラディナイトの含有 量の違いは、 同一石炭化度での起源物質の差を反映しているとみら れる。

発熱量一揮発分ダイアグラム上で、 日本炭および中国の古第三紀 の撫}I慎炭の起源物質を比較したところ、 互いの起源物質の性質が類 似することが明らかになった。 撫}I慎炭田と類似する地質環境で形成 された中生代前期白亜紀の阜新炭田の石炭は、 撫)1慎炭田の起源物質

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と性質が異なっていた。 これは、 中生代と新生代という時代のちが いにより、 起源物質である植物それ自体の差があったためであると

推論した。

また、 植物のちがし、を反映しており、 第三紀の石炭に特徴的なデ グラディナイトの化学的な性質について解析した。 デグラディナイ トは、 エクジナイトに近い性質であることが明らかにできた。

本研究では、 沿岸部に発達した日本の炭田、 大陸内部に発達した 中国の炭田を比較検討したが、 このような地理的なちがいよりも、

凡世界的な気候と地質時代での植物の変遷が、 炭田堆積盆形成時に おける石炭の起源物質のちがいに大きな影響を与え ていることが明

確になった。

今後の問題点として次のような点や課題があげられる。

今回の研究で、 日本および中国の古第三紀の炭田を対象として調 査分析をおこない、 これまで述べたような結論を得たが、 世界中の 他の炭田で同様の結論が得られるかどうかを今後明らかにしなけれ ばならない。 残念ながら、 第三紀に形成された炭田は、 世界中にそ んなに多くは存在していない。 その中で、 第三紀の炭田が多く存在 するインドネシアについては、 現在調査中である 今後、 北米や中 南米等についても検討が必要である。

次に、 今回の研究で石炭化度の指標として最もよいとされたバイ オマーカであるが、 その有効範囲は石炭化度でかなり狭い範囲に限 られている。 特に石炭化度の高い領域ではステランやホパンは使用 できない。 今後、 より石炭化度の高い領域で有効なバイオマーカの 開発が必要となる。 石油有機地化学で、 高熟成度領域でも使えると された多環芳香族を用いたバイオマーカは、 一つの可能性である。

今後の課題として、 石炭化度の進行の問題がある 石炭化度は、

地層のより深部に埋没するにつれ上昇するわけであるが、 古地温勾 配の各堆積盆ごとの差や内部での差より埋没深度との関係が異なっ ている。 一般、 第三紀の石炭にもかかわらず日本の石炭の石炭化度 が高いのは 地温勾配が高いからであるとされている しかし日本

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園内でも地域差がおおきいことは、 Aihara (1980)で明らかにされて いる。 大陸地域は、 一般い地温勾配は低いが、 今回の研究の対象で あった撫}I慎炭田では、 地層の厚さがせいぜい1000m程度であるにもか かわらず、 石炭化度が龍鳳鉱ではかなり高い。 また、 側方への石炭 化度の変化も激しい。 この原因として、 撫}I頂炭田 形成時のリフト運 動に関係し、 地殻の薄化と一時的な高地殻熱流量の時代があったた めであると考えられている。 わが国の場合、 このようなリフトの形 成による一時的な高熱流量により、 石炭化度が急上昇するという考 え方はとられていない。 わが国の古第三紀炭田の中で、 直接の火成 作用の影響を受けたものを除いて、 最も石炭化度が高い佐世保炭田 で、 石炭化度が佐々) 11断層と密接に関係することが明らかにされて いる(岩橋, 1962、 相原他,1987)。 今後、 炭田におけるリフト形成 という観点も考慮して、 炭田の形成環境を考えなければならない。

また、 一時的な高熱流量という観点から、 現在の定常的な熱流量に 基づく堆積盆解析についても今後検討が必要にである。

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7 謝 辞

本研究をおこなう上で、 常日頃からご指導、 ご助言をいただき、

また熱心なご討論をしていただきました九州大学相原安津夫教授、

静岡大学藤井敬三教授に対しましては、 心から感謝申し上げます。

また、 常日頃から叱時激励をしていただいている地質調査所燃料資 源部徳橋秀一博士には厚く御礼申し上げます。

中国での試料採取に当たっては、 中園地質大学煤回教室の李思田 教授、 呉沖龍助教授、 庄新国講師、 王生維助手には多大の援助を 賜った。 ここに衷心より感謝をささげます。 また現地にて十分な便 宜をはかっていただき、 親切丁寧なお世話を賜わった撫JI慎鉱務局、

阜新鉱務局、 遼源鉱務局梅河口鉱務所の各位にたいしては厚くお礼 申し上げます。 中国滞在中種々の便宜を図っていただいた中園地質 鉱産部当局にたいしては深く感謝申し上げます。 謝謝。

石炭の研究をはじめるにあたり種々お教え頂いた元地質調査所佐々 木実博士、 バイオマーカ分析にあたり多くのご指導を頂いた地質調 査所の坂田 将博士、 金子信行博士、 元地質調査所米谷 宏氏、 石 炭の顕微鏡分析用試料を作成して頂いた元地質調査所後藤 進氏に 対してお礼申し上げる。

また、 研究を進めるにあたり激励頂いた歴代燃料部長の佐藤良昭博 士、 井上英二博士、 星野一男博士、 平山次郎博士、 本座栄一博士、

また、 元燃料部の鈴木尉元博士、 小玉喜三郎博士にはここに謝意を 表します。

国内の試料採取にあたっては、 三井鉱山(株)、 三菱鉱業セメント (株) (現三菱マテリアノレ) 、 住友石炭鉱業(株)、 太平洋炭鉱(株)、

松島興産(株)、 北炭幌内炭鉱(株)の方々に便宜を図っていただいた。

ここにお礼申し上げます。

(19)

参考文献

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(25)

9 付 表

石炭分析値一覧

三池炭鉱 高島炭鉱 池島炭鉱 幌内炭鉱 赤平炭鉱 南大夕張炭鉱 芦別炭鉱 奔別炭鉱

太平洋炭鉱

雄別炭鉱

}無111真炭田西露天鉱 撫)11貢炭田老虎台鉱 }無111貢炭田龍鳳鉱 海j司口炭田第一坑 阜新炭田太平層 阜新炭田中間層

3579022235692689 ジ4444555555556666一1414141414ITAl--41414141414lペ

(26)

池炭田 池炭鉱

( 1/2 )

2 3 4 5 6 7

試料番号 M-1 M-2 M-3 M-4 M-5 M-6 M-7

工業分析(恒湿ヘ.ース)

水分 Cwt覧) 1.9 1.4 2.3 2.5 2.4 2.0 1.9

灰分 (wt弘) 18.7 23.9 3.8 15.9 17.3 7.2 14.0

揮発分 Cwt覧) 40.6 39.4 41.8 39.8 40.2 42.3 41.1

国定炭素Cwt弘) 38.8 35.3 52.1 41.8 40.1 48.5 43.0

発熱量 Ckca I/kg) 6730 6440 7880 6710 6700 7690 7000

無7K無灰ベース(daf)

揮発分 (wt%) 8639 8848 8419 8353 8490 8523 8436

発熱量 (kca I/kg) 51 .1 52.7 44.5 48.8 50.1 46.6 48.9

元素分析(無水ベース, wt%)

む3 灰分 19.1 24.2 3.9 16.3 17.7 7.3 14.3

炭素 66.3 62.1 78.8 65.1 63.1 78.1 69.1

5.2 4.8 5.4 4.7 4.8 5.4 4.9 酸素 7.9 7.2 8.8 7.2 9.0 9.3 8.9

窒素 1 .1 0.9 1.4 1 .1 1.0 1.4 1 .1

硫黄

H / C 原子数比 0.930 0.917 0.809 0.855 0.907 0.827 0.837

o / C 原子数比 0.089 0.088 0.083 0.083 0.107 0.090 0.097

デグラディナイト含有量(覧) 28 32 15 10 21 15 16

ビトリナイト反射率(弘) 0.68 0.68 0.76 0.72 0.71 0.75 0.72

λmax Cnm) 633 652 629 623 630

(27)

池炭田 池炭鉱

( 2/2 )

8 9 10

試料番号 M-8 M-9 MイO

工業分析(恒湿ヘ.ース)

水分 (wt見) 1.4 1.7 1.9

灰分 (wt弘) 17.5 12.0 12.5

揮発分 (wt弘) 42.2 41.4 40.8

固定炭素(w凶) 38.9 44.9 44.8

発熱量 Ckca I/kg) 6920 7200 7220

無水無灰ベースCdaf)

揮発分 Cwt弘) 8683 8437 8534

発熱量 (kca I/kg) 52 48 47.7

ーー‘

元素分析(無水ベース, wt%)

灰分 17.7 12.2 12.7

炭素 66.1 70.8 73.4

水素 5.1 4.9 5.3

酸素 7.6 9.7 8.9

窒素 1 .1 1.2 1 .1

硫黄

H / C 原子数比 0.925 0.828 0.853 o / C 原子数比 0.086 0.102 0.091 デグラディナイト含有量(弘) 27 10 20

ピトリナイト反射率(弘) 0.70 0.76 0.77

λmax (nm) 639 629

(28)

高島炭田 高島炭鉱

( 1/2 )

2 3 4 5 6 7

試料番号 TS-1 TS-2 TS司3 TS-4 TS-5 TS-6 TS-7

試料採取位置 30-35 35-40 60-65 70-75 85-90 95-100 120-125

工業分析 (恒湿ヘ.ース)

水分 Cwt弘) 1.7 1.2 2.5 2.9 2.0 2.0 2.6

灰分 Cwt弘) 4.6 5.4 2.9 3.3 8.5 11.2 4.2

揮発分 Cwt弘) 46.1 50.3 41.8 39.6 43.6 43.6 41.0

固定炭素 Cw凶) 47.6 43.1 52.8 54.2 45.9 43.2 52.2

発熱量 Ckca I/kg) 8030 8120 7920 7720 7540 7360 7700

無水無灰ベース Cdaf)

揮発分 Cwt出) 8604 8734 8393 8254 8489 8568 8292

.. 発熱量 (kca I/kg) 49.2 53.9 44.2 42.2 48.7 50.2 44

ul 元素分析 (無水ヘ.ース, wt弘)

灰分 4.7 5.5 2.9 3.4 8.7 11 .4 4.3

炭素 80.6 80.0 81.6 80.6 76.2 73.9 78.8

水素 6.3 6.6 6.1 5.7 6.0 6.0 6.1 酸素 6.7 6.3 7.4 8.4 7.4 7.3 9.0 窒素 1.4 1.4 1.7 1.6 1.5 1.3 1.6 硫黄 0.3 0.2 0.3 0.3 0.2 0.1 0.2

H / C 原子数比 0.931 0.983 0.891 0.843 0.938 0.967 0.922

o / C 原子数比 0.062 0.059 0.068 0.078 0.073 0.074 0.086

デグラディナイト含有量(弘) 250/0 240/0 130/0 50/0 180/0 220/0 70/0 ビトリナイト反射率(覧) 0.693 0.692 0.768 0.786 0.786 0.691 0.764

Àmax Cnm) 635 634 623 616 627 640 627

(29)

高島炭田 高島炭鉱

( 2/2 )

8 9 10 11

試料番号 TS-8 TS-9 TS-10 TS-11

試料採取位置 135-140 160-165 175-180 185-190

工業分析(恒湿ヘ.ース)

水分 (wt見) 2.9 1.8 2.1 2.0

灰分 (wt目) 3.4 3.3 3.2 8.1

揮発分 (wt弘) 41.5 44.5 43.2 41.0

固定炭素(w凶) 52.2 50.4 51.5 48.9

発熱量 (kca I/kg) 7820 8000 8030 7500

無7K無灰ベース(daf)

揮発 分 (wt弘) 8370 8453 8502 8403

発熱量 Ckca I/kg) 44.3 46.9 45.6 45.6

--1.

4注 元素分析(無水ヘ.ースI wt弘)

0') 灰分 3.5 3.3 3.3 8.3

炭素 79.5 80.9 80.9 76.7

水素 6.5 6.1 6.2 5.7 酸素 8.7 7.8 7.7 7.2 窒素 1.6 1.6 1.5 1.5 硫黄 0.2 0.3 0.4 0.6

H / C 原子数比 0.974 0.898 0.913 0.886 o / C 原子数比 0.082 0.072 0.071 0.070 デグラディナイト含有量(見) 100/0 80/0 130/0 190/0 ビトリナイト反射率(弘) 0.792 0.758 0.764 0.725

λmax (nm) 627 635 618

(30)

崎戸・松島炭田 池島炭鉱 ( 1/2 )

2 3 4 5 6 7

試料番号 IKS-10 IKS-9 IKS-8 IKS-7 IKS-6 IKS-5 IKS-4

試料採取位置 135-140 95四100 60-65 35-40 30-35 25-30 20-25

工業分析(恒湿ヘ.ース)

水分 Cwt見) 2.2 2.4 2.0 2.2 2.2 2.2 2.2

灰分 (wt弘) 4.7 8.3 5.4 12.7 5.5 6.0 8.1

揮発分 Cwt覧) 39.9 38.8 41.7 37.4 39.7 40.9 40.9

固定炭素Cw日) 53.2 50.5 50.9 47.7 52.6 50.9 48.8

発熱量 Ckca I/kg) 7747 7390 7797 6609 7626 7636 7529

無水無灰ベースCdaf)

揮発分 Cwt九) 8358 8333 8462 7863 8303 8361 8451

発熱量 Ckca I/kg) 42.8 43.4 45.0 44.0 43.0 44.6 45.6

ー...

元素分析(無水ベース, wt%)

、J 灰分 4.8 8.5 5.5 13.0 5.6 6.1 8.3

炭素 79.0 75.9 79.1 70.1 78.2 77.6 76.5

水素 5.7 5.6 5.8 5.1 5.5 5.8 5.6

酸素 9.0 8.7 8.1 10.6 9.0 8.9 8.0

窒素 1.3 1.3 1.4 1 .1 1.4 1.3 1.4 硫黄 0.2 0.1 0.2 0.1 0.3 0.3 0.3

H / C 原子数比 0.858 0.876 0.868 0.871 0.842 0.887 0.874

o / C 原子数比 0.085 0.086 0.077 0.114 0.086 0.086 0.078

Deg 140/0 12%) 200/0 70/0 110/0 50/0 150/0

Ro 0.83 0.83 0.79 0.83 0.82 0.81 0.78

λmax 615 625 636 601 615 622 630

fa1直C13C-NMR) 0.669 0.660 0.648 0.673 0.658 0.647 0.642

(31)

崎戸 ・松島炭田 池島炭鉱 ( 2/2 )

8 9 10 11

試料番号 IKS-3 IKS-2 IKS-1 IKS-11

試料採取位置 15-20 10-15 5-10 deQ 30-40 vit

工業分析(恒湿ヘ. -^)

水分 Cwt見) 2.2 1.8 2.0 2.4

灰分 (wt弘) 9.2 9.3 8.9 13.0

揮発分 Cwt弘) 41.0 45.0 45.0 36.1

固定炭素Cw凶) 47.6 44.0 44.1 48.5

発熱量 Ckca I/kg) 7469 7583 7590 6352

無水無灰ベースCdaf)

揮発分 (wt目) 8501 8592 8588 7604

発熱量 Ckca I/kg) 46.3 50.5 50.5 42.7

ーー&

冗素分析(無水ベース, wt出)

灰分 9.4 9.4 9.1 13.3

炭 素 75.6 75.7 76.0 68.3

水素 5.7 5.8 5.9 5.0

酸素 7.7 7.7 7.6 12.3

窒素 1.4 1.3 1.3 0.9

硫黄 0.2 0.2 0.2 0.1

H / C 原子数比 0.896 0.908 0.920 0.871

o / C 原子数比 0.077 0.076 0.075 0.136

Deg 200/0 210/0 270/0 30/0

Ro 0.76 0.70 0.72 0.85

えmax 630 633 620 626

faf直C13C-NMR) 0.632 0.591 0.592 0.727

(32)

石狩炭田 幌内炭鉱

2 3 4 5 6 7

試料番号 PO-1 PO-2 PO-3 PO-4 PO-5 PO-6 PO-7

試料採取位置(cm) 0-5 10-15 55-60 75-80 100-105 113-118 デゲうヂィナイト

工業分析(恒湿ヘ.ース)

水分 (wt見) 2.7 2.6 3.4 2.6 3.0 2.4 2.3

灰分 (wt覧) 4.7 3.6 2.8 3.9 5.4 15.9 7.2

揮発分 (wt弘) 46.3 46.3 43.2 46.2 44.1 42.8 48.4

固定炭素(w凶) 46.3 47.5 50.6 47.3 47.5 38.9 42.1

発熱量 (kca I/kg) 7540 7620 7460 7450 7260 6630 7440

無水無灰ベースCdaf)

揮発分 (wt弘) 8176 8149 7972 7995 7963 8243 8274

... 発熱量 (kca I/kg) 50 49.4 46.1 49.4 48.1 52.4 53.5

<.0 元素分析(無水ベース. wt弘)

灰分 3.1 7.3

炭素 77.4 74.9

水素 5.4 6.1

酸素 12.7 10.4

窒素 1.3 1 .1

硫黄 0.1 0.2

H / C 原子数比 0.828 0.970

o / C 原子数比 0.123 0.104

デグラディナイト含有量(見) 35 33 15 30 20 49 59 ビトリナイト反射率(弘) 0.645 0.629 0.645 0.646 0.627 0.616 0.593

λmax (nm) 623 621 606 620 616 622 631

参照

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(2011)