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一九六五年ドイツ株式法の改正と展開

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(1)

一九六五年ドイツ株式法の改正と展開

著者 早川 勝

雑誌名 同志社法學

巻 63

号 6

ページ 2817‑3003

発行年 2012‑01‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014060

(2)

(    同志社法学 六三巻六号一六五

早    川         

目次Ⅰ はしがきⅡ 前史―一九六五年株式法までの展開Ⅲ 一九六五年株式法の制定とその後の展開 1 序 2 経済状況の変化に対応するための諸改正 3 EC加盟国としてのドイツ法のヨーロッパ化―EU指令の国内法化 4 経済のグローバル化前後におけるアメリカ法の浸透Ⅳ 結語に代えて︿資料﹀一九六五年ドイツ株式法(邦訳) 

二八一七

(3)

(    同志社法学 六三巻六号一六六

Ⅰ  は し が き

 会社制度は、現在では国の経済の母体の一部を担っており、その意味において、国の経済の根幹を支える主役である。このことは、長い経済の停滞からの脱却策として託された我が国における二〇〇五(平成五)年の会社法の制定に正に当てはまる。会社法が国の経済の動向に影響を与え、また逆にその強い影響の下にあるという緊密な関係は、比較法的な観点からもさらに明瞭となる。第二次世界大戦においてほぼ同時期に完敗し崩壊した国を奇跡的に復興させた日本とドイツには、共通するあるいは異質の特有の経済体制や経済構造をもちそれぞれ独自の歩みをしながら、それぞれ経済の動きに合わせるため会社法制の手直しをこまめに実施してきたという共通の特徴がある 1

。この点についてその具体的な変遷過程の軌跡を経済の流れに沿いながら比較検討することは、関心のあるテーマであるが、本稿では、その前段階の作業として、EUという巨大市場の中枢の一つで、経済面で優等生であり続けてきたドイツにおける会社法制の推移について、株式会社と株式合資会社について規制する一九六五年株式法を対象に整理することにする。その場合にドイツの伝統的な会社法制度の骨格 4

がどのように維持されながらも変容してきたかという観点からではなく、まず、時系列的に改正の過程 5

をたどり、つぎにEU加盟国としてヨーロッパ化する状況、最後に英米法系の会社法と対峙しながら、とくにアメリカ法をどのような分野で取り入れてきたのかという点に絞って整理する。

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3 二八一八

(4)

(    同志社法学 六三巻六号一六七 201. S11nl.Rin Ecksaerab, H08, d.. KMün, Bchomm AktG9 2)  Asmann in GrossKomm.AktG Einl Rdn295)、

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Kapitalgesellschaftsrecht, 6.Aufl.2009, S, 35f.

6teehmen, rn., A.S.20.uf at, Die privtlirechchensrecmaftchelsesGn, anrdssr/AleübK Ohtnublen- Und uenndbaer Vone vmrospngelueg Rndn uretuuktrssng 調 4) 

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二八一九

(5)

(    同志社法学 六三巻六号一六八

Ⅱ  前 史 ― 一 九 六 五 年 株 式 法 ま で の 展 開

( 1 )  一 九 三 七 年 株 式 法 ま で の 展 開

 今日の株式会社と類似した最初の形式は、一般に、一七世紀及び一八世紀における商事会社であるといわれているが、ドイツにおける最初の法律規制は、一八四三年一一月九日の株式会社に関するプロイセン法にその要綱を見いだすことができる。それ以前の、ドイツの若干の州で適用された一八〇七年のフランス商事法典やプロシア一八三八年の鉄道事業法は、認可手続に関する規定をばらばらに定めているにすぎなかった。一八六一年のドイツ普通商法典以前には、会社の内部構造は定款で定めるに過ぎず、法律上の規制は存在せず、同法典が初めて包括的な規制を設けたのである。同法は株式会社の設立に認可義務を定めており(免許主義・同法二〇八条)、この制度は、一八七〇年六月一一日の﹁株式法改正法(第一次改正法)﹂まで続き、同法によって準則主義に代わり、それ以来、国には会社の設立に関して認可する権限がなくなり、法律で定めた要件が具備されているかどうかについて検査するにとどまり、要件を満たしていれば、商業登記簿への登記により法人格を取得できることになった。 免許主義の廃止後に増加した濫用的な会社設立に対して、一八八四年七月一八日の﹁株式合資会社及び株式会社に関する法律(第二次改正法)﹂は、設立規定を厳格化し、種々の少数株主の権利を導入した。しかし、同法は、株式合資会社に関する規制を原則とし、株式会社に関しては特別規定によって補充するものであった。一八九七年五月五日の商法典が、株式会社を規制対象の原則的法形式としたが、その他の規制の内容は実質的には変更がなかった。一九三〇年から一九三二年の世界経済恐慌により、株式法の弊害が明かとなり 6

、これに対応することが緊急の課題となったが、それについては、まず一九三一年九月一九日及び同年一〇月六日の﹁緊急命令﹂によって部分的に、年度決算書の義務的 二八二〇

(6)

(    同志社法学 六三巻六号一六九 検査の導入、自己株式取得の制限及び資本減少を容易にする改正が実現した 7

。国民社会主義思想の高まりと共に、株式会社の匿名性の完全な排除が要求され、大規模企業には資本会社の形式は不可欠であると認識され、これにより、一九三四年﹁組織変更法﹂は、小規模会社を人的会社又は個人企業に転換することを容易にした。

( 2 )  一 九 三 七 年 株 式 法 か ら 一 九 六 五 年 株 式 法 ま で の 展 開

 経済恐慌の後に包括的な改正を行った一九三七年一月三〇日の﹁株式法﹂は、条文数の倍増に対処するという法技術的理由のために商法典から独立した単独法となった。一方で株主総会の権限が広範に狭められ、他方で取締役会の地位が強化されたことについて、我が国では、当時のヒトラー政権の下で、内容上も国民社会主義(ナチス)の思想に影響された規制、特に﹁指導者原理﹂を反映したものであると紹介されていた 8

。しかしながら、ドイツにおける現在の評価はそれと異なり、詳細な分析により、包括的な内容の改正は、実質的にはワイマール共和国時代に行われた準備作業に基づいていることが指摘されている。具体的には、五〇万ライヒス・マルクの最低資本金によって小規模株式会社を排除し、計算規制を厳格化し、複数議決権株式、管理株式と銀行議決権及び株主総会の権限を制限し、議決権のない優先株式、条件付資本増加や認可資本の制度を新設した。このように取締役会の企業経営機関としての株主総会からの独立は、第三帝国のイデオロギー的な色彩は否定できないものの 、経済的にみれば実質的に根拠のある大企業の業務執行のあり方を組織法に採り入れたものであって、さらに、国民および国家の共同の利益の要求に従う企業指揮の義務は、企業の社会的義務の思想を取締役会の義務に反映したものであるとして、今日の構造理論に関する議論とかみ合わせることが指向されている ₁₀

。 第二次世界大戦後すぐには、イデオロギー的理由に基づいて要求された大改正は行われず、わが国とは異なり、小改

二八二一

(7)

(    同志社法学 六三巻六号一七〇

正と補充にとどまった。一九四九年八月二一日の﹁ドイツマルク貸借対照表法 ₁₁

﹂は、通貨改革により、最低資本金を五〇万ライヒス・マルクから一〇万ドイツ・マルクにし、最低券面額を一〇〇〇ライヒ・マルクから一〇〇ドイツ・マルクに引き下げた。さらに、一九五一年の﹁モンタン共同決定法﹂、一九五二年一〇月一一日の﹁事業所組織法 ₁₂

﹂及び一九五六年の﹁共同決定補充法﹂によって、労働者代表が監査役会に参加し、石炭鉄鋼企業では労働者代表が取締役会にも参加することになった。一九七六年五月四日の﹁共同決定法 ₁₃

﹂は、準均等原則をさらに広く導入し、共同決定法の適用を受ける有限会社の監査役の権限を拡大した。 その後、一九五六年一一月一二日の﹁組織変更法 ₁₄

﹂は、従来の組織変更を維持した。同法は、一九六九年に改正され、一九九四年の現行法は、ほとんどの組織変更を包括的に規制し、その他の権利の担い手の組織変更を統合した。一九五九年一二月二三日の﹁会社財産による資本増加及び損益計算に関する法律 ₁₅

﹂(いわゆる小株式法改正法)により、国民レベルで株式取得を容易にすることによって資本市場の状況を改善することを目指して、会社財産による資本増加、損益計算書の分類項目による開示規定の強化及び労働者に交付するための自己株式の取得に関する改正が行われた。

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7

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10Rsc.5., S1020.ufl.A5n, ftehaellaislgitaap Ker dhtec, Reil/Veres) 

11WiGBl.S.279, 287.)  二八二二

(8)

(    同志社法学 六三巻六号一七一

12Ber.469, 168., Sl.IBG, B5219obetgsriebverfassungesetz vom11.Okt) 

沿)、 )﹁)﹄)、 13BBl, I, S.1153.G) )、﹄(

14BGBl. I, S.S.844.)  .Findbichler, n.vg3 S.301l. W 15ess G1959, BGBl. I, S.789, 792. aubeg unöhrhleitaapr Kzuz etesG r emellinschaftsmitteln und über die Gewn-ezund Verlustchnung vom23. Dre

Ⅲ  一 九 六 五 年 株 式 法 の 制 定 と そ の 後 の 展 開

 

1  序

 大改正は、一九六五年九月六日の﹁株式法 ₁₆

﹂で実現された。これは、長期にわたる審議の末に制定された包括的な規制で現行法である。主要な改正として、利益処分に対する株主の影響力と株主総会の権限のさらなる強化、開示規定の厳格化と解説請求権の改善などによる個々の株主の法的保護、訴訟費用の軽減、企業結合に関する全く新たな編を新設してコンツェルンにおける濫用の規制及び少数株主の保護規制と行為者の責任に関する規制 ₁₇

を挙げることができる。他方で株式法は、一般的な経済的、社会的、政策的目的を追求している ₁₈

。とくに、国民の広い層ができるだけ生産財に関与し、一部の大株主に資本が集中しないようにするために、株式所有の分散化の促進につとめる。労働者株式の創設も同様の方向にある。株式を分散化し、労働者株式を発行するには、小株主の強力な保護と少数者保護の強化が必要とな

二八二三

(9)

(    同志社法学 六三巻六号一七二

る。利益処分に対する株主総会の影響力の強化(準備金の積み立て及び利益配当)、開示義務の厳格化、株主の解説請求権の改善、監査役会を介した取締役会の監督の強化も同様の目的をもつ。銀行の代理権に関する要件が厳格化され、本人である小株主の利益を代弁する一方で、その議決権行使を不必要に困難にさせない。さらに、既に触れたように、企業結合が一般的に普及した経済状況に合わせるために、包括的な企業結合法を初めて制定し、結合企業の開示及び従属企業、その株主と債権者に対する保護規定によって、公然又は潜在的な力の保有者の濫用に対処している ₁₉

。一九六五年法に対する期待の一部は、その後実現されてきたが、企業の自己株式比率や株式の分散については現在でもまだそれほど進んでいないのが現状である。 これ以後は、EU指令(第一指令、第二指令、第三指令、第四指令、第七指令及び第八指令)の国内法化や株式法以外の法律の改正に合わせた改正が引き続いた ₂₀

。特に、前掲一九七六年の共同決定法は、二〇〇〇人以上の労働者を有する資本会社において、監査役会における労働者代表の監査役の均等の共同決定を採り入れた ₂₁

。これによって、取締役の選出に対する労働者側の影響力が増大することになった。

  2  経 済 状 況 の 変 化 に 対 応 す る た め の 諸 改 正

① その後の改正を時系列的に整理すると ₂₂

、一九九〇年代の半ば以降、ヨーロッパ化とグループ化の進展に伴い、株式法改正の波が急に押し寄せた。まず、一九九四年八月二日の﹁小規模株式会社及び株式法の規制緩和法 ₂₃

﹂は、中小会社が株式会社の法形式を利用できるように規制を緩和し、個々の規定においてのみであるが上場会社と非上場会社との区別を設けて株式法が対象とする会社形式について従来の単一体的構想を廃棄した。本法により、一人株主の株式会社の設立が可能になった。一九九四年一〇月二八日に﹁組織変更法 ₂₄

﹂が、会社形式に関係なく、企業合併、企業分割および 二八二四

(10)

(    同志社法学 六三巻六号一七三 企業の組織変更に関して規制する単独法として制定された。さらに、同年一〇月五日の﹁倒産法(

In sO

)﹂の改正 ₂₅

により、株式法および有限会社法の多数の規定が改正倒産法の規定に対応させるために改正された。 一九九八年には、複数の改正が行われ、一九九八年三月二四日の﹁第三次金融市場振興法 ₂₆

﹂は、株式法と有価証券取引法による通知義務の齟齬を解消し、同年三月二五日の﹁無額面株式法(

St üc kA G

₂₇

)﹂は、無額面株式を導入し、それによって金額の換算と清算が不要になることから、同年の﹁ユーロ導入法(

E ur oE G

₂₈

)﹂とあわせて、ドイツマルクからユーロへの転換を容易にした。さらに、同年六月二二日の商法改正法 ₂₉

により、株式会社が、その商号に事業目的を掲げることを不要とした。 一九九四年に生じた大企業の経営危機をきっかけとする監査役会の改革を主たる目的とする一九九八年四月二七日の﹁企業分野における支配と透明化のための法律(

K on T ra G

₃₀

)﹂は、一九六五年株式法に対する重要な改正であり、企業内部の管理と支配の仕組みを改善することによって、監査役会と株主のために、企業活動の透明性を高めた。個別的には、監督システムの構築義務(九一条二項)、監査役員数の上限規制、監査役会の開催回数に関する規制(一〇〇条、一一〇条)、監査役の利益相反の開示(一二四条三項三文、一二五条一項三文、一二七条三文)、取締役の報告義務の具体化(九〇条一項一号)、金融機関による代理権限行使における権限の制限(一二五条一項二文、一二八条、一三五条)、少数株主による損害賠償責任追及のための訴え提起権の強化(一四七条)、上場会社の定義規定の導入(三条二項)、複数議決権の廃止(一二条二項)と上場会社における最高議決権株の廃止(一三四条一項)及び自己株式取得の可能性の拡大(七一条一項八号)、企業の存続を危うくする将来的な危険についての会計監査人による評価義務(三二一条一項、三二二条二項)が主要な改正点である。② 新世紀になって最初の改正は、二〇〇一年一月一八日の﹁記名株式及び議決権行使の緩和のための法律(

N aS tr aG

₃₁

)﹂

二八二五

(11)

(    同志社法学 六三巻六号一七四

で、記名株式を現代化し、アメリカ法との調整が図られ、事後設立の規制(五二条)が新しくなり、監査役会の国際化に伴って書面や電話による決議方法を認めた(一〇八条四項)。二〇〇一年一二月二〇日の﹁有価証券取得及び買付法 ₃₂

﹂は、対象会社の株式に対する公開買付に関する最低の要件を定め、買付手続に関して規制し、一定の要件の下で義務的公開買付も採り入れた。さらに、少数株主の締出しを株式法においても定めた(三二七a条

三二七f条)。二〇〇二年二月には、コーポレート・ガバナンス政府委員会の報告書の勧告に基づいて、法律ではなく自主規制の形で、ドイツ・コーポレート・ガバナンス規準 ₃₃

が公表され、上場会社の機関と決算検査役に対して模範的な行為基準が定められた。二〇〇二年九月一九日の﹁透明化および開示法 ₃₄

﹂は、これらの勧告を受け入れるのかどうかについて企業が毎年表明するように規制したので(一六一条)、その規準に従う方向に圧力がかかることになった。さらに、業務執行と支配及びコンツェルン貸借対照表を国際基準に適合化させ、電磁式官報による公告(二五条)が定められ、取締役会の報告義務が詳細に規制され(九〇条一項、五項)、監査役会の招集について改訂した(一一〇条)。監査役会と取締役会は、承認が必要な取引の目録について決議しなければならず(一一一条四項)、株主の解説請求権はコンツェルン関連事項にまで拡大された(一三一条四項)。二〇〇三年六月一二日の﹁会社法上の事後的審査手続のための法律(

Sp ru ch G

₃₅

)﹂は、株式交換、コンツェルン契約の代償、編入、締出し又は組織変更における株式価格の評価に関する争いは、決議の取り消し訴訟と切り離して別個の裁判手続により迅速に解決する手続を定めた。さらに、二〇〇四年五月一八日の﹁第三者参加法 ₃₆

﹂は、同年七月一日以後、一九五二年の事業所組織法を引き継ぐことになった。③ その後の比較的大きな改正は、二〇〇五年九月二二日の﹁企業の健全性及び総会決議取消権の現代化のための法律(

U M A G

₃₇

)﹂である。重要な改正として、経営判断原則の法定(九三条一項二文)、特別検査実施基準値の引き下げ(一四二条)、取締役と監査役の会社に対する注意義務違反に基づく責任を訴えによって追求する手続(株主代表訴訟)の 二八二六

(12)

(    同志社法学 六三巻六号一七五 緩和(一四八条)、決議取消権の現代化(二四三条、二四五条)、株主総会における株主の質問権及び発言権に関する規制(一三一条)、株式法上の非訟手続の導入(二四六a条)、大株主の責任に関する特典の廃止(一一七条七項)及び株式供託制度の廃止(一二三条の改正)がある。 その後、二〇〇六年一一月一〇日の﹁電磁式商業登記簿及び協同組合登記簿に関する法律(

E H U G

₃₈

)﹂は、二〇〇三年七月一五日の

20 03 / 58 /E G

指令 ₃₉

による開示指令の現代化を国内法化したもので、株式法においてこれに合わせた多数の改正が個別に施された。さらに、﹁異なる加盟国の資本会社の合併の場合における労働者の共同決定に関する規制の国内法化のための法律 ₄₀

﹂は、監査役会に関して(九六条以下)並びに﹁透明化指令国内法化法 ₄₁

﹂は、通知義務に関する規定(二〇条、二一条、一六〇条)を改正した。組織変更法に関する第二次改正法 ₄₂

は、二〇〇五年一〇月二六日の異なる加盟国の資本会社の合併に関する

20 05 / 56 /E G

指令を、﹁国境を越える合併における労働者の共同決定に関する法律﹂(

M gV G

)とともに国内法化したものであり、

20 05 / 39 /E G

指令および

20 06 / 73 /E G

指令を国内法化した﹁金融市場指令国内法化法﹂によっても株式法の文言の改正を伴った。さらに、同二〇〇五年八月一〇日に﹁取締役会の報酬開示に関する法律(

V or st O G

₄₃

)﹂が制定され、個々の取締役の報酬を計算書類・コンツェルン決算報告書の注記に記載して開示することを要求し、その後、二〇〇九年七月三一日の﹁取締役会報酬の相当性に関する法律(

V or st A G

₄₄

)﹂によって、監査役会の取締役会報酬決定権限を改め、株主総会が報酬について勧告決議を行うことを認めた ₄₅

。 その後、二〇〇九年五月二五日に、﹁会計法の現代化のための法律(

B ilM oG

₄₆

)﹂、二〇〇九年七月三〇日に﹁株主権に関するEG指令の国内法化法(

A R U G

)﹂(

B G B l.I S. 24 79

)が制定された。さらに、二〇一一年一二月九日に﹁再構築法﹂(

B G B l.I S. 19 00

)が制定され、組織変更法を改正し、合併における少数株主の締出しに関する規制を新設した ₄₇

。④ 有限会社法の改正およびそれに伴う株式法の改正

二八二七

(13)

(    同志社法学 六三巻六号一七六

 わが国では、二〇〇五年会社法によって、有限会社の法形式は、株式会社の法形式に吸収されたため、特例有限会社を除いて、消失することになった。有限会社は、中小規模の会社に適する会社としてドイツで初めて構想され、一八九二年五月二日に有限会社法が単独法 ₄₈

として初めて登場し、瞬く間に多くの国で普及した。 その後は、他の法律の改正の影響を受けて部分的な改正が続いただけで大きな変更はなく、一九七一年の包括的な大改正を指向した政府草案も受け入れられることなく挫折してしまった。ようやく、一九八〇年に有限会社法改正法 ₄₉

が成立し、最低資本金が二万マルクから五万マルクに引き上げられ、設立規定が厳格化され、資本を補充する社員貸付に関する規定および社員の説明請求権が拡大された ₅₀

。一九九八年四月二三日の﹁ドイツコンツェルンの国際資本市場における競争力の改善及び社員貸付の許可を緩和するための法律(

K ap A E G

₅₁

)﹂による改正があった後は、裁判官法が制定法の空隙を埋める役割を担ってきた。その後、二〇〇八年一〇月一二日の﹁有限会社法の現代化と濫用を根絶するための法律(

M oM iG

₅₂

)﹂が制定され、部分的には従来の有限会社法の規制が基本的に変更され、欧州における会社法の競争に対応するために事業者有限責任会社という有限会社の亜種を新設した ₅₃

(五a条)。⑤ 資本市場法の発展と拡大 資本市場の機能を確保し、その危険から投資家を保護する法律(資本市場法)が、実質的には会社法の改正を側面から援護する形でますます増加している。一九九四年以後からの流れを概観すると、一九九四年の﹁第二次資本市場振興法 ₅₄

﹂により、﹁有価証券取引法(

W pH G

₅₅

)﹂が制定され、証券取引所法と株式法 ₅₆

が改正された。一九九八年には、既述した第三次資本市場促進法 ₅₇

による証券取引法、投資会社法 ₅₈

、企業出資法 ₅₉

などが改正され、さらに同年の投資法(

In vG

)は、投資基金への投資に関する法的基礎を作りだし、投資会社の創設を認めた。同法は、二〇〇三年﹁投資現代化法 ₆₀

﹂により不備が改善され、二〇〇四年一〇月﹁投資家保護改善法(

A nS V G

)﹂(

B G B l. IS . 26 30

)は、有価証券の貸借報告義務 二八二八

(14)

(    同志社法学 六三巻六号一七七 を定め、その後、二〇〇七年﹁投資改正法 ₆₁

﹂によって国際競争力の強化策を打ち出した。 ﹁企業出資会社法(

U B N G G

₆₂

)﹂は、他の会社にリスク資本で参加する目的を有する株式会社、有限会社又は株式合資会社の法形式の会社に関する特別規定を定める。﹁有価証券の保管および購入に関する法律(

D ep ot G

)﹂は、取引できる有価証券を金融機関に保管を委託する者を保護する規定を定める。二〇〇二年に現代化された﹁取引所法 ₆₃

﹂は、有価証券取引所の組織および取引所における有価証券取引を規制する。﹁有価証券販売目論見書法 ₆₄

﹂は、有価証券の公開申出において規定された最低限の内容を記載した販売目論見書を開示する一般的義務を導入する。既述した有価証券取引法 ₆₅

は、資本市場法の中心的な法律であり、内部者取引の禁止と監視、上場会社に対する議決権割合の変更及び相場に関連した情報が発生した場合における通知及び開示義務を定める。﹁連邦金融サービス監督庁の創設に関する法律(

F in D A G

)﹂並びに﹁有価証券買収法 ₆₆

﹂は、有価証券の申出と取得に関する規定を定める。二〇〇二年六月二一日の﹁第四次資本市場振興法 ₆₇

﹂は、証券取引所法や証券取引法を大幅に改正した。二〇〇五年には﹁資本投資者の模範手続導入法(

K ap M uG

₆₈

)﹂が制定された。これらの法律は、企業の資金調達実務の変化と国際的資本市場の相互の結合によるもので、共同体法を背景にしている ₆₉

。 二〇〇七年以降二〇〇九年までに制定された法律として、二〇〇七年七月一六日の﹁金融商品市場に関するEU指令の国内法化のための法律﹂、﹁金融投資と結びついた危険の制限のための法律 ₇₀

﹂並びに二〇〇八年一〇月一七日の﹁金融市場安定化法(

F M St G

₇₁

)﹂がある。

  3  E U 加 盟 国 と し て の ド イ ツ 法 の ヨ ー ロ ッ パ 化

法お方の整調法社会るけにUE⑴ 

-E U 化 法 内 国 の 令 指

二八二九

(15)

(    同志社法学 六三巻六号一七八

 EU内部における国内の会社法の調整が進展し、現在でも重要となっている。そのことは、会社法は、EUと各加盟国の二つのレベルで規制されることを意味する ₇₂

。EUにおける会社法の調整について、EU条約は、指令(

R ic ht lin ie

₇₃

)、規則(

V er or dn un g

)および条約による協定(

vö lk er re ch tli ch e Ü be re in ko m m en

)の三種類の法的方法を定めている ₇₄

。EU加盟国の会社法の調整に最も効果的なのは指令であり、指令の法的基礎は、EU条約四四条二項g号である。これによれば、議会と委員会は、居住の自由を実現するために、保護規定を調整する必要がある限り、これらの規定を同等に形成する権限を有する ₇₅

。 一九六〇年代以降、株式法の改正は、当然のことながらEU指令の展開と緊密に結びついており、直接にはEU指令の国内法化に由来している。指令の基礎は、会社法及び企業法に関する共同体に対する権限の付与である。貸借対照表、抵触法及び労働者共同決定を含む会社法全体の調整に関する包括的な権限を有する。﹁必要性﹂の要件は、EU条約四四条二項g号が居住の自由の保障だけでなく、同じ枠組み条件の創設を指向しているので、いかなる制限も設けてはならないと解釈されている ₇₆

。さらに、共同市場および域内市場の機能化を指向する一〇〇条、一〇〇a条(旧EEC条約九四条、九五条)も権限の根拠となる。⑵ 加盟国法に対するEU法の優先とEU指令に合致した加盟国法の解釈 EU条約二四九条は、欧州議会、理事会および委員会は、規則を制定し、命令を発し、決定を行い、勧告しまたは意見を表明する旨規定し、規則については、一般的適用性を有する。規則は、その全体において拘束力をもち、すべての加盟国に直接に適用される。したがって、規則は、国内法化しないでも加盟国においても適用されることになる ₇₇

。EUの会社法上の立法の目標としては、会社法の調整の外に、特に開示及び取引のためという目的が際立っている。 さらに、欧州裁判所の判例によれば、指令が公布される前に規定された加盟国の国内法も指令に合致して解釈しなけ 二八三〇

(16)

(    同志社法学 六三巻六号一七九 ればならない ₇₈

。⑶ 会社法に関連するEU指令 ① 一九六八年三月九日の﹁第一指令(開示指令 ₇₉

)﹂と一九八九年一二月二一日の﹁支店開設指令 ₈₀

﹂ 開示指令は、すべての資本会社の一定の事項を会社債権者及び潜在的投資家のために開示することを要求し、特に登記簿における一定の書類の公示と取引に関する会社文書に一定の義務的記載事項の記載、会社指揮者の代理権の不可制限性および会社の無効について定める。この規制は、支店開設指令によって補充された。ドイツ法の影響を受けている開示規制は、一九六九年八月一五日の法律 ₈₁

によって国内法化され ₈₂

、支店開設指令は、一九九三年七月二二日の法律で国内法化された ₈₃

。その後、開示指令は、二〇〇三年七月一五日の

20 03 / 58 /E G

指令 ₈₄

によって現代化された。これは、ドイツでは、前掲の二〇〇六年の﹁電磁式商業登記簿および協同組合登記簿ならびに事業者登記簿に関する法律﹂によって国内法化された。 ② 一九七六年一二月一三日の﹁第二指令(資本指令 ₈₅

)﹂ 確定した最低資本額に関する大陸法系の観念が採り入れられ、資本の原則について規制し、会社の設立の要件、資本の維持、増加および減少に関する規定が定められた。本資本指令は、ドイツでは、一九七八年一二月一三日の法律 ₈₆

によって国内法化された ₈₇

。 本指令は、一九九二年一一月二三日の

92 / 10 1 E W G

(第一次改正指令 ₈₈

)によって、従属企業による支配会社の株式取得を制限したが、これについてはドイツではすでに規定されている(株式法七一d条)。さらに、第二指令は、﹁株式会社の設立およびその資本の維持と変更に関する

20 06 / 68 /E G

指令(第二次改正指令 ₈₉

)﹂によって改正された。この改正指令は、設立並びに資本増加の場合に一定の事例において現物出資について専門家による検査を不要とし(株式法三三a

二八三一

参照

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