C F C 税 制 ︵ タ ッ ク ス ヘ イ ヴ ン 対 策 税 制
︶ が 租 税 条 約 に 違 反 し な い と し た 東 京 地 判 平 成 一 九 年 三 月 二 九 日 の 評 釈 補
浅 足
妻 章 如
一 序 二 事案 につ いて 及び 前評 釈に おけ る書 き濁 し部 分 三 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶と 租税 条約 との 関係 につ いて 再論 四 海外 子会 社配 当非 課税 提案 を含 む今 後の あり うる 立法 との 関係 につ いて
一 序
ઃ 本稿 の目 的 私は
、租 税特 別措 置法 六六 条の 六の いわ ゆる CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 が︶ 日本 シン ガポ ール 租税 条 約に 違反 しな いと した 東京 地判 平成 一九 年三 月二 九日
・平 成一 六年
︵行 ウ︶ 第一 七〇 号︵ 判例 集未 登載
・裁 判所 ホー ムペ ージ 掲載
︶に つい て評 釈︵ 以下
、﹁ 前評 釈﹂ とい う︶ を書 く機 会を 頂
( )
いた
。し かし
、字 数の 制約 のた め詳 しく 書く こと がで きな かっ た事 柄が ある
。そ れに つい てこ こで 記し たい とい うの が第 一義 的な 本稿 の目 的で ある
。こ の裁 判
につ いて は、 東京 高判 平成 一九 年一 一月 一日
・平 成一 九年
︵行 コ︶ 第一 四八 号︵ 判例 集未 登載
、L EX /D B文 献番 号 28 14 04 76 が︶ 控訴 を棄 却し
、現 在原 告・ 納税 者側 が最 高裁 に上 告を 申し 立て てい ると ころ であ る。 本稿 が公 刊さ れ る前 に最 高裁 の判 断が 出る かも しれ ず、 本稿 は無 意味 なも のと なる 可能 性が ある が、 仮に 最高 裁が 単に 上告 不受 理 と判 断す ると して も︵ それ なら ばそ の結 論に つい ては 特に 異論 はな いけ れど も︶
、東 京地 裁判 決・ 東京 高裁 判決 の判 断 がそ のま ま残 るこ とに つい て将 来に 向け て若 干の 懸念 が生 じる
。こ の若 干の 懸念 につ いて も本 稿で 論じ たい
。 第二 義的 では ある が、 前評 釈執 筆後 の状 況変 化と して
、海 外子 会社 から 日本 親会 社が 受け 取る 配当 につ いて の税 制の 変更 が議 論さ れて いる
。も しこ れが 実現 する と、 東京 地裁 判決
・東 京高 裁判 決の 論理 構成 のま まで は若 干の 不 都合 が生 じる 恐れ があ る。 これ につ いて も本 稿で 論じ たい
。
注 意 点 現在 公表 され てい る本 件判 決文 には 墨塗 り部 分が 多く
、事 案の 詳細 は不 明で ある
。本 稿で
︻結 論︼ と述 べる 際に 念頭 に置 いて いる のは
、事 案に つい ての 結論 では なく
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ が租 税条 約に 違 反し ない とい う結 論で ある
。本 件で は、 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶の 趣旨 目的 に照 らし てそ の適 用を 控え るべ き事 案で ある かと いっ た争 点も あっ たが
、本 稿で は︵ 租税 条約 違反 かと いう 争点 と絡 み本 稿三
ઃで 触れ る以 外 では
︶租 税条 約適 合性 以外 の論 点に つい て扱 わな い。 以前 私は
、第 一に
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ が一 般に 租税 条約 七条 のい わゆ る︻ PE なけ れば 課 税な し︼ ルー ルに 違反 する かに 関し て、 租税 条約 全体 の作 りに 照ら して 七条 の﹁ 利得
﹂の 解釈 につ きフ ラン ス国 務 院判 決の 論理 構成 は採 りが たい こと
、第 二に
、七 条に 拘ら なけ れば CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶が 租税 条約 の何 らか の条 文に 違反 する かど うか につ いて 議論 の余 地が ある こと を論
( )
じた
。こ の第 二の 点に 関し
、議 論の 余
地が ある とし つつ
、ど ちら かと いえ ばそ れで も租 税条 約違 反に は当 たら ない と思 われ る旨 を当 時述 べて いた が、 本 稿は この 第二 の点 に関 する 補論 とも 位置 付け うる
。 前評 釈で も触 れた よう に、 自身 では 中立 的に 本稿 を書 いて いる つも りで ある が、 私は 被告
・国 税側 に付 いて いた ため 客観 的に は中 立的 でな い。 本稿 では
﹁
﹂を 引用 のた めに 用い
、︻
︼を 区切 りの 明確 化の ため に用 いる
。本 稿で は職 名・ 敬称 を付 さな い。 અ
本稿 の流 れ 次章 で、 事実 及び 判旨 につ いて
、以 前書 いた もの を再 掲し た上 で、 前評 釈で 書き 濁し てい る部 分を 挙げ る。 第三 章で
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ と租 税条 約と の関 係に つい て論 ずる
。そ の前 提作 業と して
、 第一 に、 争点 と 争点 に 関す る判 示の 整合 的な 理解 につ いて
、述 べる
。そ の後
、第 二に
、想 定し うる 納税 者側 の 反論 につ いて
、第 三に
、そ れへ の再 反論 につ いて
、第 四に
、最 高裁 が上 告不 受理 とし た場 合で も残 る若 干の 懸念 に つい て、 述べ る。 第四 章で
、海 外子 会社 配当 非課 税提 案を 含む 今後 のあ りう る立 法と の関 係に つい て論 ずる
。
( ) 二〇
〇八 年七 月四 日第 六四 三回 租税 判例 研究 会に て報 告。 浅妻 章如
﹁租 税特 別措 置法 六六 条の 六と 日星 租税 条約 との 関係
﹂ジ ュリ スト 一三 六三 号一 四〇
︱一 四三 頁︵ 二〇
〇八
・九
・一 五︶
。 ( ) 浅妻 章如
﹁タ ック ス・ ヘイ ヴン 対策 税制
︵C FC 税制
︶の 租税 条約 適合 性︱
︱技 術的 な勘 違い と議 論の 余地 のあ る領 域と の整 理︱
︱﹂ 立教 法学 七三 号三 二九
︱三 九六 頁︵ 二〇
〇七
︶。
二 事 案 に つ い て 及 び 前 評 釈 に お け る 書 き 濁 し 部 分
ઃ 事実 関係 及び 判旨 につ いて
︹事 実︺ 訴外
グル
( )
ープ は、 英国 に拠 点を 置く 製薬 メー カー であ る。 原
( )
告X は内 国法 人で あり
、X の子 会社 であ る P2 訴外
(
社)
はシ ンガ ポー ルに 所在 して いた
。 社は 租税 特別 措置 法︵ 以下
、﹁ 措置 法﹂ とい う︶ 六六 条の 六︵﹁ タッ クス P1
P1 ヘイ
( )
ブン 対策 税制
﹂と も呼 ばれ る︶ の要 件を 満た して いた
。 被告 Y税 務
( )
署長 は、 Xに 対し 平成 一五 年二 月二 八日 付で 平成 一一 年一 月一 日か ら同 年一 二月 三一 日ま での 事業 年 度の 法人 税の 更正 処分 をし た。 争点 と して
、本 件は 国際 的租 税回 避が 行な われ てい ない 事案 であ るの か、 そし て措 置法 六六 条の 六の 目的 的解 釈に より 同条 が適 用さ れな いと いえ るか どう か、 争点 と して
、措 置法 六六 条の 六に よる 課税 は、 恒久 的施 設な け れば 課税 なし を規 定す る日 星︵ 日本 シン ガポ ール 租︶ 税条 約七 条一 項に 違反 する かど うか
、争 点 とし て、 訴外 P1 社が 措置 法六 六条 の六 第三 項の 適用 除外 要件 を全 て満 たし てい るか どう か、 争点 と して
、訴 外 社の 未処 分所 得 P1
の算 定方 法に 誤り があ るか どう かが 争わ れた
。
︹判 旨︺ 請求 棄却
。 争点 に つい て、
﹁措 置法 六六 条の 六の 規定 は、 一定 の条 件を 満た した 海外 子会 社の 所得 の一 部を
、そ の親 会社 であ る﹃ 内国 法人 の収 益の 額と みな して
﹄課 税を する とい うも ので あり
、形 式的 にみ れば
、内 国法 人の 所得 に対 して 課税 を する とい う建 前を 採っ てい るの で、 この 形式 論に 基づ く限 り、 被告 の主 張も 成り 立た ない もの では ない
。 しか しな がら
、こ のよ うな 形式 論理 を徹 底さ せる と、 我が 国の 租税 法規 にお いて
、親 会社 であ る内 国法 人と
、シ ンガ
ポー ルの 海外 子会 社と の関 係や
、そ れぞ れの 活動 内容 の実 体等 にか かわ りな く、
﹃内 国法 人に 対し
、シ ンガ ポー ルの 海 外子 会社 の所 得額 に相 当す る収 益が あっ たも のと みな して 課税 をす る﹄ とい う趣 旨の 規定 を設 けた とし ても
、そ れが 内 国法 人の 所得 に対 する 課税 とい う建 前を 採っ てい る以 上、 少な くと も日 星租 税条 約に 違反 する こと はな いと いう こと に なる が…
…、 この よう な結 論は
、日 星租 税条 約七 条一 項の 規定 を実 質的 に無 視す るの に等 しい もの であ ると いわ ざる を 得な い。 要す るに
、上 記の よう な誰 に対 して 課税 をす るの かと いう 観点 を形 式的 に適 用す る論 理は
、日 星租 税条 約の 潜 脱を 容易 に許 して しま うお それ があ るも ので あっ て…
…、 その まま 採用 する こと は困 難で ある
。 他方
、シ ンガ ポー ルの 海外 子会 社が
、親 会社 であ る内 国法 人に 対し
、配 当そ の他 の方 法に よっ て任 意に 利益 移転 を行 った 場合
、内 国法 人に 移転 され た利 益に 対し ては
、我 が国 にお いて 課税 がさ れる こと にな るが
、こ れが 日星 租税 条約 に 違反 する もの では ない こと は明 らか であ る。 そう だと する と、 親会 社で ある 内国 法人 とシ ンガ ポー ルの 海外 子会 社と の 関係
、シ ンガ ポー ルに おい て海 外子 会社 が置 かれ た地 位や 実際 の活 動状 況そ の他 の事 情に 照ら し、 海外 子会 社か ら内 国 法人 に対 して 利益 移転 が行 われ るの が当 然で ある にも かか わら ず、 その よう な利 益移 転が 行わ れて いな いと みら れる 場 合に
、内 国法 人に 対し
、本 来あ るべ き利 益移 転が 実際 にあ った もの とみ なし
、そ の移 転利 益相 当額 に対 して 課税 をす る こと は、 経済 的合 理性 のな い不 自然 な状 態を
、本 来あ るべ き自 然な 状態 に戻 し、 ある べき 状態 に基 づく 課税 をし てい る のに とど まる ので ある から
、こ のよ うな 事態 は、 日星 租税 条約 に違 反す るこ とは ない もの と解 され る。 そし て、 上記 の よう な場 合と は、 要す るに 租税 回避 行為 が行 われ た場 合と いう こと にほ かな らな いの であ るか ら、 租税 回避 行為 に対 応 する ため のタ ック スヘ イブ ン税 制と して
、海 外子 会社 の所 得の 一部 又は 全部 を内 国法 人の 利益 とみ なし て課 税を する こ とは
、そ の内 容が 合理 的な もの であ る限 り、 日星 租税 条約 に違 反す るも ので はな いと いう べき であ る。
﹂
﹁そ こで
、措 置法 六六 条の 六の 規定 を検 討し てみ ると
、同 条の 規定
﹂が 適用 され る﹁ よう な場 合は
、一 般的 には 租税 回避 行為 が行 われ たと 評価 でき るよ うな 場合 であ ると いう こと がで きる から
、同 条の 規定 が、 日星 租税 条約 七条 一項 に 違反 する と断 定す るこ とは 困難 であ ると いう べき であ る。
﹂
前評 釈で 書き 濁し た部 分に つい て 私は 前評 釈一 四一 頁に て﹁ 措置 法六 六条 の六 によ る課 税対 象は 名目 的に 内国 法人 であ ると いう だけ でな く実 質的 にも 内国 法人 であ る、 とい う説 明が 本判 決に よっ て一 応で きて いる もの と思 われ る﹂ と述 べた
。こ こで
﹁一 応﹂ と 言葉 を濁 した こと につ いて 違和 感を 抱い た方 がい るか もし れな い。 そこ で﹁ 一応
﹂と 書い たの は、 東京 地裁 判決 の論 理に 対し
、納 税者 側に 反論 の余 地が ある かも しれ ない
、と も考 えた ため であ る。 しか し、 元々 私は CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶が 租税 条約 に違 反し てい ない と考 えて いた し、 更に
、想 定し うる 納税 者側 の反 論に つい て再 反論 が可 能で ある とも 前評 釈執 筆時 に考 えて いた
。こ の思 考 過程 を書 くべ きか につ いて も当 然考 えた が、 前評 釈一 四二 頁に て﹁ 争点 と 争点 に 関す る判 示を 整合 的に 理解 し よう とす れば
︵詳 述す る紙 幅は ない が︶
、本 判決 は租 税回 避行 為対 策と して の合 理性 が認 めら れる 範囲 をか なり 広く 想定 して いる
、と 読め る﹂ と述 べた こと とも 絡み
、字 数を 食う こと が予 想さ れた ため
、前 評釈 では 想定 しう る納 税 者側 の反 論と それ に対 する 再反 論に つい て論 述す るこ とを 諦め
、別 のこ とを 書く こと を優 先さ せた
。別 のこ とと は、 実質 的に も海 外子 会社 が課 税さ れて いる わけ では ない と補 強す るた めの 論拠 や、 租税 回避 行為 対策 とし て合 理 的で ある こと だけ では 租税 条約 違反 でな いと いう 結論 を導 くに は充 分で はな いか もし れな いこ とや
、租 税回 避行 為 対策 とし て合 理的 であ るこ とが 租税 条約 違反 とな らな いた めに 必要 であ ると まで はい えな いか もし れな いこ と、 等 であ る。
( ) 公表 され た高 裁判 決文 によ れば
、グ ラク ソグ ルー プ。 ( ) 高裁 判決 文に よれ ば、 グラ クソ 株式 会社
。 ( ) 高裁 判決 文に よれ ば、 Gl ax oc he mP te Lt d︵ グラ クソ ケム 社︶
。﹁ GC S社
﹂と も略 称さ れて いる
。 ( ) 本稿 では 原則 とし てt ax ha ve nを
﹁タ ック スヘ イヴ ン﹂ と表 記し てい るが
、判 決文 に倣 う時 は﹁ タッ クス ヘイ ブン
﹂と 表記 する
。
( ) 高裁 判決 文に よれ ば、 麹町 税務 署長
。
三 C F C 税 制 ︵ タ ッ ク ス ヘ イ ヴ ン 対 策 税 制
︶ と 租 税 条 約 と の 関 係 に つ い て 再 論
ઃ 争点
と争 点 に関 する 判示 を整 合的 に理 解し よう とす る場 合 2 1 租税 判例 研究 会に て報 告し た際
、吉 村典 久か ら、 争点 と 争点 に つい ての 東京 地裁 の判 旨を どの よう に理 解す べき か、 とい う趣 旨の 質問 を受 けた
。こ の質 問は
、東 京地 裁判 決の 論理 が抱 えて いる 若干 の危 うさ をあ ぶり だす 鋭 いも ので ある
。 東京 地裁 判決 は、 第 の で争 点 につ いて 論じ
、第 の で 争点 に つい て論 ずる とい う順 番を とっ てい る。 争点 に つい て本 稿二
ઃで 前掲 した よう に論 じた 後、 次の よう に論 じて いる
。
﹁も っと も、 既に 指摘 した 点に 照ら して みれ ば、 形式 的に は同 条の 要件 に当 ては まる 場合 であ って も、 海外 にお いて 子会 社が 独立 した 活動 を行 うこ とに 合理 性が 認め られ
、租 税回 避行 為と は評 価し 難い よう な事 情が 存す る場 合に まで タ ック スヘ イブ ン税 制を 適用 する こと は許 され ない もの とい うべ きで ある
。そ して
、そ の根 拠を
、日 星租 税条 約の 違反 に 求め るの か、 同条 約に 照ら し、 措置 法六 六条 の六 その もの が、 その よう な場 合に おけ る課 税を 予定 して いる とは 解す る こと がで きな いと いう 点に 求め るか は説 明の 違い にす ぎな いも のと 考え られ る。
﹂ これ は第 の で 述べ られ てい るの で形 式的 には 争点 に つい ての 判示 部分 であ るが
、内 容的 に争 点 につ いて の応 答と いう 要素 も含 んで
(&
)
いる もの と読 むこ とが でき る。 次に
、第 の で
、争 点 につ いて 次の よう に論 じて いる
。
﹁原 告の 主張 を全 体と して 見る と、
■■ そこ には 租税 回避 目的 を何 ら見 いだ すこ とは でき ない し、 その よう な活 動に よっ て生 じた 利得 を原 告に 帰属 させ るべ き理 由も 認め られ ない
﹄と いう 趣旨 のも ので ある と理 解す るこ とが 可能 であ る。 そし て、 この よう な主 張が その とお り認 めら れる ので あれ ば、 一、
⑴に おい て説 示し た点
﹇浅 妻註
:本 稿二
ઃで 前 掲し た部 分﹈ に照 らし
、 社の 所得 を原 告の 収益 と見 なし て課 税す るこ とま で措 置法 六六 条の 六が 予定 して いる もの で P1
はな いか
、あ るい は、 その よう な課 税は 日星 租税 条約 に違 反す ると 解す る余 地が ある もの と考 えら れる ので
、以 下、 こ の点 につ いて 判断 する
。
■■ なお
、原 告は
、シ ンガ ポー ルの 法人 税率 は二 五% を超 えて おり
、■
■旨 主張 する が、
社の 一九 九九 年度 賦課 決定 通 P1 知書
︵乙 一一
︶に よれ ば、
社は 一〇
%の ta xr eb at e︵ 戻し 減税
︶を 受け てお り、 実質 的な 税率 は二 三・ 四% であ るこ P1
とに 加え
、株 式等 の有 価証 券の 譲渡 益が 非課 税と され てい るこ とが うか がえ るこ とか らす ると
、我 が国 の法 人税 率︵ 法 人税 法六 六条 一項 で三 四・ 五%
︶や 課税 所得 の範 囲と の比 較で いえ ば税 負担 軽減 の効 果が ある こと は否 定し 難い ので あ るか ら、 およ そ税 負担 軽減 の目 的が なか った 旨の 原告 の主 張は 採用 でき ない
。﹂
︵浅 妻註
:■
■表 記は 墨塗 り部 分︶ 争点
に 関し
、東 京地 裁が
﹁以 下、 この 点に つい て判 断す る。
﹂と 述べ た後
、約 四頁 に渡 り墨 塗り され てお り、 どの よう なこ とを 述べ てい るの か明 らか でな い。 だが
、原 告の 主張 につ いて
﹁﹇ 事案 の経 緯に 照ら しシ ンガ ポー ル 子会 社の
﹈利 得を 原告 に帰 属さ せる べき 理由 も認 めら れな い﹂ とい う趣 旨の もの と善 解す る可 能性 を東 京地 裁が 認 めつ つ、 単に シン ガポ ール の税 制上 の有 利さ を指 摘す るだ けで
﹁お よそ 税負 担軽 減の 目的 がな かっ た旨 の原 告の 主 張は 採用 でき ない
﹂と 述べ てい るこ とに
、違 和感 が残 って も不 思議 では ない
。 第 の にお いて
﹁租 税回 避行 為と は評 価し 難い よう な事 情が 存す る場 合に まで タッ クス ヘイ ブン 税制 を適 用す るこ とは 許さ れな い﹂ と論 じ、 しか もそ の根 拠を
﹁措 置法 六六 条の 六そ のも の﹂ に求 める 可能 性ま でも 認め てい
る。 その 上で
、第 の に おい て﹁
﹇シ ンガ ポー ル子 会社 の﹈ 利得 を原 告に 帰属 させ るべ き理 由﹂ につ いて 言及 し てい る。 これ らを 合わ せて 読む と、
︻本 来原 告に 帰属 すべ き利 得が シン ガポ ール 子会 社に 帰属 する よう な法 律関 係 が作 出さ れて いる とい った 状態 が﹁ 租税 回避 行為 と﹂ 評価 され る事 情で あろ う、 単に 税制 上有 利な 扱い が受 けら れ るシ ンガ ポー ル子 会社 を利 用す るだ けな らば
﹁租 税回 避行 為と は評 価し 難い よう な事 情﹂ に当 たる であ ろう
︼な ど とい う考 えが 浮か んで も不 思議 では ない
。こ のよ うに 考え なが ら読 み進 めて いく と、 争点 の 最後 の部 分に おけ る
﹁税 負担 軽減 の効 果が ある こと は否 定し 難い
﹂﹁ 税負 担軽 減の 目的 がな かっ た旨 の原 告の 主張 は採 用で きな い﹂ など の判 示が 唐突 であ ると いう 印象 を抱 いて しま うで あろ う。 吉村 典久 が争 点 と争 点 との 関係 につ いて 質問 した の は、 この 唐突 感に よる もの と思 わ
(+ )
れる
。 金子 宏﹃ 租税 法﹄ 一〇 九頁
︵第 一三 版、 弘文 堂、 二〇
〇八 に︶ おけ る﹁ 租税 回避
﹂の
( )
定義 を念 頭に 置い てい ると
、
10
争点 と 争点 に 関す る判 示を 整合 的に 理解 する こと は難 しい
。無 論、 金子 宏の 定義 が唯 一絶 対と いう 訳で はな い が、 東京 地裁 判決 は﹁ 租税 回避
︵行 為︶
﹂と いう 語を
、単 にシ ンガ ポー ルで 税制 上有 利な 扱い を受 ける こと をも 含 める 趣旨 で用 いて いる かの よう でも ある
。そ のた め、 前評 釈一 四二 頁で
﹁争 点 と争 点 に関 する 判示 を整 合的 に 理解 しよ うと すれ ば…
、本 判決 は租 税回 避行 為対 策と して の合 理性 が認 めら れる 範囲 をか なり 広く 想定 して いる
、 と読 める
﹂と 私は 述べ たの であ る。 或い は、
﹁タ ック スヘ イブ ン税 制を 適用 する こと は許 され な﹂ くな るよ うな
﹁租 税回 避行 為と は評 価し 難い よう な事 情﹂ を、 租税 法学 者が
﹁租 税回 避︵ 行為
︶﹂ とい う語 に触 れた 時に 想定 する より もか なり 狭く 東京 地裁 判決 は想 定し てい る、 とも 言え よう
。 争点 と 争点 と の関 係に つい て前 述の よう に整 理し た後
、本 題で ある 争点 の 検討 に移 る。 かよ うに 租税 回避 行為 対策 とし ての 合理 性を 広く 想定 した 場合
︵或 いは
、租 税回 避行 為と は評 価し がた いよ うな 事情 を狭 く想 定し た場 合︶
、次 節で 論ず るよ うに
、租 税回 避行 為対 策と して 合理 的で ある 故に CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 は︶
租税 条約 に違 反し ない とい う論 理が
、若 干危 うさ を抱 える よう にな る。
想定 しう る納 税者 側の 反論
⑴ 条 約 優 先 日本 では 条約 法が 国内 法よ り優 先す る︵ 憲法 九八 条二 項︶
。こ れは
、対 外的 に日 本が 条約 等を 遵守 する 義務 を負 う とい うに とど まら ず、 国内 的効 力と して も条 約遵 守義 務が ある こと を意 味す ると 解さ れて
( )
いる
。つ まり 条約 に反 す
11
る課 税は 国際 的に 許さ れな いの みな らず 国内 にお いて も許 され ない
。 そう する と、 国内 租税 法の 政策 的理 由で ある 租税 回避 行為 対策 とし ての 合理 性だ けで は、 国内 法に 優位 する 条約 に違 反し ない こと の理 由と して 不充 分で はな
( )
いか
、と の疑 問が 湧き うる
。ま た、
︻ご く例 外的 な場 面と して
、条 約
12
違反 に見 える よう な課 税で あっ ても これ を認 めな いと する と著 しい 不正 義が 生ず ると いう 場合 には
、条 約の 解釈 と して その よう な課 税が 許さ れる 余地 があ る︼ とい った よう な議 論を
︵そ れを 支持 する か否 かは とり あえ ず措 いて おい て︶ 仮に 考え たと して も、 その よう な議 論が 当て はま るの はあ ると して も︻ ごく 例外 的な 場面
︼に 限ら れる であ ろ うか ら、 前節 で論 じた よう に東 京地 裁判 決が 租税 回避 行為 対策 とし ての 合理 性が 広く 認め られ ると 想定 して いる な らば
、か よう な広 く薄 い合 理性 でも って 条約 違反 の課 税が 許容 され るよ うに なる とは 考え 難い
。 では
、東 京地 裁判 決は 国内 法が 条約 に優 位す ると でも いう ので あろ うか
。し かし
、当 然な がら まさ か東 京地 裁判 決が その よう に考 えて いる はず はな かろ う。 また
、東 京高 裁判 決は
、東 京地 裁判 決と 同様 に、
﹁租 税回 避の 防止 の観 点か ら、 本来 ある べき 利益 移転 が実 際に あっ たも のと みな して
、我 が国 が親 会社 に対 して 課税 する こと は、 日星 租税 条約 七条 一項 の趣 旨を 潜脱 する こと に はな らな い﹂ と論 じた 後、
﹁措 置法 六六 条の 六に よっ てシ ンガ ポー ル法 人で ある GC S社 の利 得を 内国 法人 であ る
控訴 人の 収益 とみ なし て課 税す るこ とは
、そ れ自 体が 国内 法と して 優位 に執 行さ れる とこ ろの 日星 租税 条約 七条 一 項に 抵触 する
﹂と いう 原告
・控 訴人 の主 張に 対し ても
、﹁ この 主張 は、 措置 法六 六条 の六 が日 星租 税条 約七 条一 項 の例 外規 定で ある こと を前 提と する もの であ るが
、上 記⑴ にお いて 検討 した とお り、 措置 法六 六条 の六 が日 星租 税 条約 七条 一項 の例 外規 定で ある と解 する こと は困 難で ある
﹂と 述べ て斥 けて いる
。 東京 地裁 も東 京高 裁も
、形 式的 に内 国法 人が 課税 対象 とさ れて いる こと のみ を以 って 条約 違反 でな いと 結論 付け るよ うな 軽挙 はし てい ない
。し かし
、﹁ 本来 ある べき 利益 移転 が実 際に あっ たも のと みな
﹂︵ この 表現 は東 京地 裁判 決・ 東京 高裁 判決 に共 通し てい る︶ すこ とは
、﹁ 日星 租税 条約 に違 反す るも ので はな い﹂︵ 東京 地裁 判決 の表 現︶
・﹁ 日星 租税 条約 七条 一項 の趣 旨を 潜脱 する こと には なら ない
﹂︵ 東京 高裁 判決 の表 現︶ とし てい る。 両判 決は
、条 約の 趣旨 を潜 脱す るよ うな 課税 だけ が条 約違 反と なり うる とい う具 合に
、内 国法 人を 名宛 人と する 課税 が条 約違 反と なる 余 地を 狭く 解し てい るも のと 読
( )
める
。こ の点 で、 形式 的な 課税 の名 宛人 はと もか く実 質的 には シン ガポ ール 子会 社の
13
利得 が課 税さ れて いる とい う理 解を 前提 とす る原 告側 と、 議論 の出 発点 がズ レて いる
。
⑵ 想定 しう る納 税者 側の 反論 しか し、 もし も私 が納 税者 側の 人間 であ れば
、東 京地 裁・ 東京 高裁 の判 決文 を見 ても まだ 諦め きれ ない であ ろ う。 東京 地裁 判決 は﹁ 内国 法人 に対 し、 本来 ある べき 利益 移転 が実 際に あっ たも のと みな し、 その 移転 利益 相当 額に 対し て課 税す るこ と﹂ と論 じて いる
。こ こに おけ る﹁ 利益 移転
﹂の
﹁み なし
﹂は
、国 内租 税法 の適 用に よる
﹁み な し﹂ であ り、 いわ ゆる
﹁租 税回 避行 為の
( )
否認
﹂で ある と考 えら れる
。だ が、 その よう なみ なし 規定 が必 要と され て
14
いる とい うこ とか ら逆 に考 える と、 租税 回避 否認 が適 用さ れる 前の 状態 を観 察す るに
、課 税対 象と なっ てい るの は 私法 上も 法人 税法 一一 条に 関し ても そし て租 税条 約に 関し ても 海外 子会 社に 帰属 する 利得 であ る。 海外 子会 社に 利
得が 帰属 して いる 状態 とい うの は、 私法 上の 法形 式の 自由 さを 駆使 した 単な る作 出さ れた 状態 であ ると いう にと ど まら ない ので あり
、条 約上 も問 題の 利得 は海 外子 会社 に帰 属し てい る筈 であ る。 それ なの に、 海外 子会 社か ら内 国 法人 に利 益を 移転 した と擬 制す るよ うな 帰属 の変 更を する こと は、 条約 に劣 後す る国 内租 税法 で﹁ 合理 的﹂ とい う だけ では 正当 化さ れな いの では ない か。 もし も私 がひ たす ら納 税者 側の 勝利 を追 及す る立 場の 人間 であ れば
、前 段落 のよ うな 議論 を組 み立 てる であ ろ う。 そし て、 恐ら く原 告側 は東 京高 裁で 類似 の主 張を した ので はな いか
︵東 京高 裁判 決文 にお ける
﹁控 訴人 の補 充主 張﹂ のみ から は詳 らか でな いが
、︶ 或い は最 高裁 に向 けて 類似 の主 張を する ので はな いか
、と 考え られ る。 海外 子会 社と 内国 株主 との 間の 利得 帰属 状態 に関 し、 東京 地裁 判決
・東 京高 裁判 決が
︻本 来あ るべ き利 得帰 属状 態︼ を想 定し てい ると ころ
、納 税者 側は
︻租 税回 避に よる 利得 帰属 状態
︼を 作出 して いる
。こ の事 態に 対し
、C F C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶が
︻み なし 規定 によ る利 得帰 属状 態︼ を作 り出 すの であ る。 両判 決は
、︻ 本来 ある べき 利得 帰属 状態
︼=
︻み なし 規定 によ る利 得帰 属状 態︼ とい う認 識に 基づ き、 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴ ン対 策税 制︶ の適 用に よる
︻租 税回 避に よる 利得 帰属 状態
︼↓
︻み なし 規定 によ る利 得帰 属状 態︼ とい う帰 属変 更 は、
︻租 税回 避に よる 利得 帰属 状態
︼か ら︻ 本来 ある べき 利得 帰属 状態
︼に 戻す だけ のこ とで ある から
、条 約の 趣 旨の 潜脱 とな らな い、 と考 えて いる もの と読 める
。 しか し、 前述 の通 り、
︻租 税回 避に よる 利得 帰属 状態
︼は
、︻ 租税 回避 によ る私 法上
・条 約法 上の 利得 帰属 状態
︼ であ ると 考え られ る一 方、
︻み なし 規定 によ る利 得帰 属状 態︼ は︻ みな し規 定に よる 国内 租税 法上 の利 得帰 属状 態︼ であ ると 考え られ る。
︻租 税回 避に よる 私法 上・ 条約 法上 の利 得帰 属状 態︼
↓︻ みな し規 定に よる 国内 租税 法上 の 利得 帰属 状態
︼と する こと は、
︻本 来あ るべ き利 得帰 属状 態︼ に戻 すだ けの こと であ ると は評 価し 難く
、国 内租 税 法上 の合 理性 のみ なら ず条 約法 自体 にお ける 正当 化理 由も 要求 され るの であ り、 条約 法に おけ る正 当化 理由 がな い
以上 条約 違反 であ る︱
︱か よう な主 張を 納税 者側 の人 間な らば 考え るの では なか ろう か。 東京 地裁 判決
・東 京高 裁判 決は
、租 税回 避行 為対 策と して 合理 的で ある から 租税 条約 に違 反し ない ある いは 租税 条約 の趣 旨を 潜脱 する もの では ない
、と して いる
。こ れに 対し
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イブ ン対 策税 制︶ は租 税回 避行 為を 否認 して いる 規定 であ って 課税 して いる のは 条約 法上 海外 子会 社に 帰属 する 利得 であ り、 条約 法上 の正 当 化理 由も なし に国 内租 税法 上の
﹁合 理﹂ 性だ けで 帰属 の変 更を する こと は許 され ない
、と 納税 者側 は反 論す るも の と思 われ る。 こう した 納税 者側 の想 定し うる 反論 に共 感す る者 がい ても おか しい とま では 言い 切れ ない
。 しか しな がら
、繰 返し にな るが
、東 京地 裁判 決・ 東京 高裁 判決 が、 まさ か国 内租 税法 が条 約法 に優 位す ると 考え てい る筈 はな い。 とす ると
、両 判決 がそ の結 論を 導く にあ たっ て、 両判 決文 から 明示 的に 読み 取る こと は難 しい か もし れな いが 両判 決の 結論 を支 える よう な理 屈が
、ど こか に潜 んで いる ので はな かろ うか
、充 分に は語 られ てい な いか もし れな いが そう した 潜め られ てい る理 由付 けを 考察 する 必要 があ るの では なか ろう か。 અ
条約 に違 反し ない とす る再 反論
⑴ 組織 と構 成員 との 関係 につ いて 両判 決の 論理 に若 干の 危う さが ある かも しれ ない こと は前 節で 論じ たと おり であ るが
、原 告・ 被告 の対 立は
、要 する に、 課税 して いる のが 海外 子会 社の 利得 であ るの か、 名目 通り 内国 株主 の所 得に 課税 して いる のか
、と いう 対 立で ある と考 えら れる
。 この 点に 関し
、﹁ 天か ら日 本法 人に 対し てい きな り課 税所 得の 数字 がど こか から 落ち て
( )
くる
﹂な どと いう 批判 が
15
ある
。し かし
、被 告側 にし ても
、課 税対 象の 所得 が天 から 落ち てく るな どと 主張 して いる 筈は ない
。C FC 税制
︵タ ック スヘ イブ ン対 策税 制︶ の課 税対 象が 海外 子会 社の 利益 に由 来し てい るこ とは 否定 しな いで あろ う。 問題 は、
︻海 外子 会社 の利 益に 由来 する 何か
︼に 課税 する こと は、 必然 的に 海外 子会 社の 利得 に課 税し てい るこ とを 意味 す るの か、 それ とも 被告 側の 主張 のよ うに
、海 外子 会社 の利 益に 由来 して いて も内 国株 主の 所得 とし て扱 うこ とが 認 めら れる のか
、と いう こと であ る。 前掲 論文 の同 頁は
、移 転価 格問 題と 並べ て租 税回 避行 為の 否認 の問 題と して タッ クス ヘイ ブン 対策 税制 の性 質を 論じ てい る。
﹁否 認﹂ とい う語 は原 告側 のみ が使 って いる ので はな く、 東京 地裁 判決 文が まと めた 被告 側主 張に も
﹁否 認﹂ とい う語 が用 いら れて いる
。し かし
、も しも 金子 宏に よる
﹁否 認﹂ の
( )
定義 を参 照す るな らば
、C FC 税制
16
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ は、 租税 回避 行為 対策 規定 では あっ ても 租税 回避 行為 否認 規定 では ない
、と 私は 考え る。 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶は
、海 外子 会社 に利 益が 帰属 して いる こと につ いて 何ら 否定 する 規定 では ない から
( )( )
であ る。 もっ とも
、﹁ 否認
﹂に つい ても 金子 宏の 定義 が唯 一絶 対と いう 訳で はな いし
、C FC 税制
17 18
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ が﹁ 否認
﹂規 定で ある か否 かが 問題 の核 心で はな いの で、 ここ に固 執す るつ もり はな い。
﹁否 認﹂ の定 義は とも かく
、問 題の 核心 は、 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 に︶ よる 合算 課税 にお ける
﹁み なし
﹂が
、海 外子 会社 から 内国 株主 への 課税 対象 の利 益の 移転 を意 味し てい るの かで ある
。こ の点 に関 し、 少 なく とも
、移 転価 格課 税な どと は後 述の よう に﹁ みな し﹂ のや り方 が質 的に 異な ると 私は 考え る。 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 の︶ 肝は
、海 外子 会社 に利 益が 帰属 して いる こと を否 定し
( )
ない まま
、︻ 同
19
時に
︼内 国株 主に も課 税所 得あ りと する こと であ る。 同時 にと いう 点が 租税 法学 に馴 染ん でい ない 者に はや や分 か りに くい かも しれ ない が、 これ は組 織︵ en ti ty と︶ 構成 員︵ me mb er と︶ の関 係に 関す る租 税法 学の 基礎 に関 わる
。 組織
・構 成員 の関 係の 典型 例と して 組合
・組 合員 や会 社・ 株主 とい う関 係が ある が、 組合
・会 社な どの 組織 が利 益を 得た と同 時に
、組 合員
・株 主な どの 構成 員に も︵ 少な くと も潜 在的 には
︶利 益が 発生 して いる
。そ して
、組 合・ 会社 など の組 織の 段階 で課 税す るの では なく 組合 員・ 株主 など の構 成員 の段 階で 課税 する のが 所得 課税 にお ける 理
想で ある
、と いう のが シャ ウプ 勧告 以来 の従 来の 説明 であ る。 これ は理 想で あっ て、 現実 の会 社・ 株主 につ いて は、 株主 が株 式を 売っ て譲 渡益 を得 た段 階あ るい は株 主が 会社 から 配当 を受 けた 段階 にな って 初め て株 主に 対し て も所 得課 税が なさ れる のが 通例 であ る。 だが
、こ れは 前述 の理 想を 実現 する こと が執 行面 で難 しい から であ るに す ぎず
、例 えば 組織 の法 人格 の存 在が 当然 に理 想︵ 即ち 構成 員の 所得 とし て直 接構 成員 に課 税す るこ と︶ を斥 ける もの では
( )
ない
。執 行上 可能 であ るな らば
、株 式譲 渡前 や配 当受 領前 であ って も、 株主 の所 得と して 課税 する 立法 をし て
20
構わ ない ので ある
。 株式 譲渡 前や 配当 受領 前に 株主 の所 得と して 課税 する 趣旨 の説 明と して は、
︻会 社を 組合 と同 様に パス スル ーの 組織 とし て扱 う︼
︻会 社か ら株 主に 配当 がな され たも のと 擬制 する
︼︻ 株式 の含 み益 を譲 渡前 であ って も時 価主 義に より 課税 する
︼な ど幾 つか の筋 がこ れま でに 開発 され てい る。 いず れに せよ
、少 なく とも 潜在 的に は発 生し てい る 株主 の利 益に 対し 実現 を待 たず に︻ 課税 を早 めて いる だけ
︼で ある
。そ うし た課 税方 法を 採る 場合 の課 税対 象が
︻会 社の 利益 に由 来す る何 か︼ であ るこ とは 否定 され ない が、 しか し︻ 少な くと も潜 在的 には 発生 して いる 株主 の 利益
︼で もあ るた め、 株主 課税 とい う名 目だ けを 借り て実 質的 には 会社 の利 益に 対し 課税 して いる もの であ る、 と いう 評価 は当 たら ない ので ある
。 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 の︶ 制度 趣旨 につ いて は、 組合 課税
・擬 制配 当課 税・ 株式 時価 主義 課税 の どれ によ って も一 貫し た説 明が 可能 なわ けで はな く、 どの 国で もC FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ の制 度趣 旨は ハイ ブリ ッド であ ると 説明 され るが
、ハ イブ リッ ドで ある とい う評 価が 株主 に対 する 課税 を早 めて いる とい う 説明 を毀 損せ しめ るも ので はな い。 そし て、 株主 に対 する 課税 を早 める こと が、 会社 の利 得に 対す る課 税で ある と 評価 する ため の条 約法 上の 根拠 はな い。 租税 条約 は部 分的 に国 家の 課税 権を 制約 して いる にす ぎず
、条 約で 制約 さ れて いな い規 律外 の課 税方 法の 採否 につ いて 国家 は原 則と して 自由 であ る︵ 問題 とな る課 税方 法が 一般 国際 法に 違反
する 可能 性な どは 別論
︶。 この 点に つき
、課 税を 早め るこ とが 許さ れな いと 租税 条約 に明 記さ れて いな いか もし れな いが
、許 され ると も明 記さ れて いな いで はな いか
、と いっ た議 論が あり うる
。確 かに
、租 税条 約に 明記 され てな い理 由に より 国家 の課 税 権が 制約 され る場 面が 絶対 にな いと まで はい いが たい かも しれ ない
︵註
︵
︶論 文で 議論 の余 地が ある と表 現し た所 以で もあ る︶
。し かし
、か よう な緩 々の 条約 解釈 によ って 国家 の課 税権 を制 約す るこ とが 認め られ る場 面と いう の は、 仮に ある とし ても 極め て例 外的 な場 面に 限ら れる もの と思 われ る。
⑵ 移転 価格 税制 など との 違い 先ほ ど、
﹁否 認﹂ の定 義は とも かく とし て、 少な くと も移 転価 格税 制な どと は異 なる 旨を 予告 した
。こ れに 関し て、 以前 私は
︻水 平的 な所 得の 帰属 問題
︼︻ 垂直 的な 所得 の帰 属問 題︼ とい う表 現を 用い たこ とが あっ たが
、人 口 に膾 炙し た表 現で はな いの で再 度説 明を 要す
。と 同時 に、 移転 価格 税制 とC FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ との 関係 につ いて
、以 前本 件と 別の 文脈 で質 問を 受け たこ とが ある のだ が、 それ につ いて の解 説も 合わ せて した い。 次の よう な仮 想設 例を 考え る。 A国 のP 社が B国 のS 社の 五一
%を 保有 して いる
。そ して S社 の四 九% は第 三者
︵と りあ えず 第三 国の T社 とす る︶ が保 有し てい ると する
。P 社が S社 に商 品を 売る 際、 三〇
〇円 が独 立当 事者 間価 格で ある のに 二〇
〇円 で売 った とし たら
、A 国は 移転 価格 税制 によ り、 一〇
〇円 の利 益を S社 から P社 に付 け替 え る。 しか し、 S社 の四 九% はT が保 有し てい ると ころ
、S 社の 利益 一〇
〇円 分の 一〇
〇% をA 国の P社 に付 け替 えて しま って 良い のか
、四 九% はT のも のな のだ から
、︵ 規定 の解 釈と して は一
〇〇
%移 転さ せる こと が許 され るこ とに つ いて 争い はな いも のの 政︶ 策論 とし て、 Sか らP に付 け替 える 利益 も五 一% にと どめ るべ きで はな いか
?
かよ うな 質問 を受 けた
。現 行規 定の 解釈 とし ての みな らず 政策 論と して もS から Pに 一〇
〇円 の価 格差 の一
〇〇
%を 付け 替え て良 いと する 説を 便宜 的に 一〇
〇% 説と 呼び
、一
〇〇 円の 価格 差の 五一
%の みを 付け 替え る︵ すな わ ちS から Pに 五一 円だ け付 け替 える
︶方 が政 策論 とし ては 望ま しい とす る説 を五 一% 説と 呼ぶ こと にし よう
。 この 質問 に対 し、 私は 一〇
〇% 説だ と答 えた
。な ぜな らば
、P とS が親 子会 社の 関係 でな く、 例え ば兄 弟会 社で あっ てP がS を〇
%保 有し てい る場 合で あっ ても
、S から Pに 一〇
〇% 利益 を付 け替 えて 問題 がな いか らで ある
。 だか ら、 Pが Sの 五一
%し か保 有し てい なく とも その 保有 割合 は付 け替 える べき 利益 の割 合と は無 関係 であ る。 他方
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ に関 して はS 社の 利益 の一
〇〇
%相 当分 がP 社の 利益 とし て発 生 して いる とみ なす こと が許 され ない
。持 分割 合が 五一
%な ら五 一% 相当 分に 限定 され る。 前述 のよ うに CF C税 制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ は、 課税 を早 める だけ のも のと して 設計 され てお り、 いか に租 税 回避 行為 対策 規定 であ るこ とを 強調 しよ うと も、 持分 割合 を超 えて 合算 課税 をす るこ とは CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 の︶ 役割 では ない と考 えら れる ので ある
。 実際 上、 移転 価格 税制 もC FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ も類 似の 租税 回避 行為 に対 する 対策 規定 とし て機 能す るこ とは あり え
( )
よう
。し かし 課税 の仕 組み は根 本的 に異 なる ので あ
21
る。 移転 価格 税制 は損 益取 引に つい ての 問題
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ は資 本 等取 引に つい ての 問題 と理 解し てい るの か、 とい う質 問を 受け たこ とが あっ たが
、正 にそ の通 りで ある
。親 子会 社間 では 損益 取引 関係 も資 本等 取引 関係 も両 方あ りう るの で、 移転 価格 税制 もC FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ も両 方適 用さ れう るが
、兄 弟会 社間 では 基本 的に 損 益取 引関 係に 関す る移 転価 格税 制の 問題 とな るの であ る。 図の 構成 員① と組 織② の関 係を 便宜 的に
︻垂 直的 な所 得の 帰属 問題
︼と 呼び
、組 織② と取 引
相手
③と の関 係を 便宜 的に
︻水 平的 な所 得の 帰属 問題
︼と 呼ん でい る。 組織
②と 取引 相手
③と の関 係に おい ては
、 取引 の価 格付 けを めぐ る移 転価 格問 題が 典型 的に は想 起さ れる が、 その 他に
、例 えば 組織
②と 取引 相手
③が 合同 事 業関 係を 形成 した 場合 の所 得の 配分 問題 も、
︻水 平的 な所 得の 帰属 問題
︼に 含ま れる と考 えて いる
。 典型 的に は、 構成 員① が内 国親 会社 であ り、 組織
②が 海外 子会 社で あり
、取 引相 手③ が組 織② の関 連会 社で ある とい う関 係を 想起 して
、租 税回 避行 為と その 対策 につ いて 議論 され る。 取引 相手
③が 組織
②の 兄弟 会社 であ る場 合、
︻垂 直的 な所 得の 帰属 問題
︼と
︻水 平的 な所 得の 帰属 問題
︼と の原 理的 な違 いを 意識 しや すい が、 構成 員① が 組織
②の 親会 社で ある 場合
、親 会社 が構 成員
①の 立場 と取 引相 手③ の立 場を 同時 にと るこ とが ある ので
、︻ 垂直 的 な所 得の 帰属 問題
︼と
︻水 平的 な所 得の 帰属 問題
︼と の関 係に つき 混乱 が生 じて きた のか もし れな い。 しか し、 前 述の 通り 課税 の仕 組み は根 本的 に異 なっ てい るの であ る。 組織
②と 取引 相手
③と の間 の所 得の 帰属 問題 につ いて は、 移転 価格 問題 など とし て租 税条 約で も規 律の 対象 とな って いる
。課 税を 早め るだ けな どと いう 問題 では なく
、い かに 課税 対象 が名 目的 に内 国法 人で あっ ても 条約 の制 限 につ いて の考 慮は 欠か せな い。 他方
、組 織② の利 益は 少な くと も潜 在的 には 構成 員① の利 益で ある とも 言え る、 と いう 垂直 的な 所得 の帰 属問 題は 租税 条約 の規 律の 対象 外で ある
。C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ は、 海外 子会 社の 利得 に由 来す るも のを 課税 対象 とし てい るが
、真 に内 国株 主の 所得 でも ある もの を見 出し て課 税対 象と し てい るの で、 これ も租 税条 約の 規律 の対 象外 であ ると 考え る。 東京 地裁 判決
・東 京高 裁判 決で は、 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 に︶ つい て﹁ 利益 移転
﹂を 擬制 する も ので ある と説 明し てい るが
、こ の説 明が 若干 の混 乱を 招い たの かも しれ ない
。﹁ 利益 移転
﹂と いう 表現 が誤 りで あ ると 言う つも りは ない ので ある が、 この 表現 はど うし ても 移転 価格 税制 など を想 起さ せて しま い、 移転 価格 税制 と CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 と︶ の間 の根 本的 な仕 組み の違 いを 意識 させ にく いも ので ある ため
、C FC
税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ が移 転価 格税 制と 同様 に租 税条 約の 規律 の範 囲内 であ ると の印 象を 納税 者側 に惹 起さ せて しま った のか もし れな い。 その ため
、租 税条 約違 反の 課税 を国 内法 上の 租税 回避 対策 とし ての 合理 性に よ って 正当 化し よう とす るこ とは 許さ れな い、 とい った 議論 を生 み出 して しま うか もし れな い。 しか し、 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 が︶ 租税 条約 違反 でな いと いう 議論 は、 条約 が国 内法 より 優位 に 立つ とい うこ とを 決し て無 視す るこ とな くな すこ とが 可能 であ る。 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制 に︶ よっ て課 税を 早め ると いう 手法 は︻ 租税 条約 の規 律の 対象 外︼ であ る、 とい う条 約の 解釈 を誠 実に 行な って いる だけ で あり
、条 約無 視で はな い。 આ
最高 裁が 上告 不受 理と した なら ば 最高 裁で どの よう な結 論を 出す か現 段階 では 分か らな い。 逆転 の結 論が 出さ れた ら困 るの であ るが
、も しも 上告 不受 理と した 場合 でも 若干 の懸 念が 残る
。も ちろ ん、 上告 不受 理な らば 被告
・国 税側 に付 いた 人間 とし ては その 結 論に は満 足す べき かも しれ ない
。し かし
、こ れま で論 じた こと に照 らし
、一 学徒 とし ては
、東 京地 裁判 決・ 東京 高 裁判 決の 論理 構成 が要 らぬ 誤解 を引 き起 こし てし まう ので はな いか
、と いう 懸念 を持 つの であ る。 両判 決は
、C FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ につ いて
﹁本 来あ るべ き利 益移 転が 実際 にあ った もの とみ な﹂ すも ので ある と理 解し た上 で、 租税 条約 に違 反し ない とし たが
、そ のま まで は、 これ まで 見て きた よう に、
︻国 内法 上の 租税 回避 対策 とい う理 由で 条約 の制 限を 乗り 越え ると する のは おか しい
︼︻ 利益 移転 のみ なし は条 約違 反で ある
︼な ど要 らぬ 議論 が残 る恐 れが ある
。 CF C税 制︵ タッ クス ヘイ ヴン 対策 税制
︶は 株主 に対 する 課税 を早 めて いる だけ なの で実 質的 にも 海外 子会 社の 利 得に 対す る課 税で はな く、 租税 条約 の規 律を 乗り 越え るか の問 題で はそ もそ もな くて 租税 条約 の規 律の 対象 外で あ
る、 とい う認 識が 広ま るこ とを 祈る もの であ る。 ઇ
ま と め 箇条 書き で述 べる
。
・東 京地 裁判 決・ 東京 高裁 判決 は租 税回 避行 為対 策と して の合 理性 が認 めら れる 範囲 をか なり 広く 想定 して いる と 読め る。
・こ れに 対し
、租 税回 避行 為対 策と して の合 理性 は国 内租 税法 上の 政策 課題 の評 価で ある にす ぎず
、条 約に 劣後 す る国 内租 税法 上の 政策 課題 で以 って 租税 条約 の制 限を 乗り 越え るこ とは 許さ れな い、 とい った 趣旨 の納 税者 側の 反論 が考 えら れな いで はな い。
・し かし
、会 社が 利得 を得 た時 点で 潜在 的に 発生 して いる 株主 の所 得に 対し 実現 主義 の例 外と して 株主 を名 宛人 と して 課税 し課 税を 早め るこ とは
、会 社の 利得 に対 する 課税 では なく 真正 に株 主の 所得 に対 する 課税 であ ると 評価 でき
、こ れを 妨げ る租 税条 約上 の根 拠は ない
。
・判 決文 にお ける
﹁利 益移 転﹂ など の表 現か ら、 本件 の問 題の 性質 を移 転価 格問 題と 類似 のも のと して 理解 する こ とは 相当 でな い。 移転 価格 税制 とC FC 税制
︵タ ック スヘ イヴ ン対 策税 制︶ とで は課 税の 仕組 みが 根本 的に 異な っ てお り、 後者 の仕 組み によ り課 税を 早め るこ とは 租税 条約 の規 律の 対象 外で ある と解 され る。
(&
) その ため 前評 釈一 四二 頁で は争 点 の一 般論 とし て紹 介し た。 (+ ) 約四 頁に わた る墨 塗り 部分 にお いて
﹁租 税回 避行 為と は評 価し 難い よう な事 情﹂ がな いと いう 認定 がな され てい るの では ない か、 と推 測す る向 きも ある かも しれ ない が、 墨塗 りで ある 故に 論じ よう がな い。 ( ) 抜粋 する
。﹁ 私法 上の 選択 可能 性を 利用 し、 私的 経済 取引 プロ パー の見 地か らは 合理 的理 由が ない のに
、通 常用 いら れな い法 形式 を選 択す 10