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グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン に か ん す る 若 干 の 考 察 増 田 壽 男

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グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン に か ん す る 若 干 の 考 察

増 田 壽 男

は じめ に

1990年 代 に 入 っ て か ら,経 済 の グ ロ ー バ ル 化 や グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と い う こ とが い わ れ は じめ,い ま で は こ のr‑i葉 を 聞 か な い 日が な い ほ ど に な っ て い る 。 本 稿 で は,こ の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンの 持 つ 今 日的 意 味 に つ い て 考 察 す る こ と を 課 題 とす る。

グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン に つ い て は 通 商 自 書 の 次 の よ う な 定 義 が 般 的 で あ る 。 「経 済 の グ ロ ー バ ル 化 と は,情 報 化 の 進 展 を 背 景 に し て 各 経 済 監体 に よ っ て 地 球 規 模 で の 経 済 性 が 追 求 さ れ,地 球1の 経 済 活 動 が 情 報,金 融 人材,技 術,貿 易 や 投 資 な ど あ ら ゆ る 面 で い っ そ う 緊 密 に 関 連 し あ う よ う に な る こ

と」1。 しか しな が ら,こ の よ う な 一般 的 な 国 際 取 引 の,財 の 貿 易,サ ー ビ ス 貿 易,直 接 投 資,資 本 取 引 の 急 拡 大 を 持 っ て グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン を定 義 した の で は,今 日の 持 つ グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンの 意 義 が 明 確 に な ら な い と 考 え る

。 私 は,今 日 の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンの 特 質 は,第 一一に1970年 代 以 後 の 資 本 主 義 の 危 機 へ の 対 応 で あ る とい う視 点 が 重 要 で あ る と 考 え る。1971年 のIMF=

GATT体 制 の 崩 壊 と73年 の 石 油 危 機,?4〜75年 の 世 界 的 ス タ グ フ レ ー シ ョ ン は 資 本 ヒ義 世 界 を 大 激 変 に 突 入 させ た 。 こ れ へ の 対 応 と して

,レ ー ガ ン, サ ッチ ャー に よ っ て と られ た 新 保 守 主 義 ・新 自 由 主 義 路 線 に よ っ て

,第 二 次 世 界 大 戦 後 資 本 主 義 諸 国 で 定 着 した 福 祉 国 家 へ の 道 は,大 き く後 退 す る こ と に な っ た 。 そ れ と同 時 に 新 自 由 主 義 に よ る 市 場 万 能 主義 が ,民 営 化,規 制 緩 和 路 線 に よ っ て促 進 さ れ る こ と に な っ た。 今 日の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン は ま さに ご

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52商 経 論 叢 第36巻 第3号

の 市 場 万 能 主 義 の グ ロ.̲.̲バル 企 業 に よ る 貫 徹 で あ る と,ま ず は把 握 す る必 要 が あ る 。 第 二 に,し か し な が ら,レ ー ガ ン,サ ッチ ャ ー路 線 の 成 功 の 上 に グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンが あ る の で は な く,そ の 政 策 の 失 敗 が,情 報 通 信 革 命 の 進 展 と

い う新 た な土 俵 の 上 に 展 開 す る こ とで 初 め て 可 能 に な っ た とい う こ とで あ る 。 パ ソ コ ンの 普 及 と イ ン ター ネ ッ トに よ っ て,資 本 主 義 は 従 来 の 経 済 的 な 土 台 が 大 き く変 革 され た 。 多 国 籍 企 業 は 文 字 ど お りグ ロ ー バ ル 企 業 と な っ て,新 た な メ ガ コ ンペ テ ィ シ ョ ンに 突 入 す る こ と に な っ た 。 そ の 主 役 に な っ た の が 金 融 で あ る。 実 体 経 済 で の 行 き詰 ま りを経 済 の 金 融 化 に よ っ て 克 服 し よ う とす る 資 本 主 義 の 衝 動 と情 報 通 信 革 命 に も っ と も適 合 す る 金 融 業 が そ の 主 役 に躍 り出 た の で あ る。 第 三 に,社 会 主 義 の 崩 壊 に よ る 資 本 主 義 世 界 の 地 理 的 な 拡 大 と,ア メ

リ カ の 再 覇 権 が これ に重 な っ て く る。 ア メ リ カ は 情 報 通 信 革 命 の 主 役 と な り, 金 融 の 自 由 化 の 推 進 者 と して 再 度 世 界 に 君 臨 す る に 至 っ た 。 ア メ リ カ ン ・ス タ

ン ダー ドが い ま や 世 界 基 準 とな り,こ の メ ガ コ ンペ テ ィ シ ョ ンの な か で 否 応 な く グ ロー バ リ ゼ ー シ ョ ンに 巻 き込 まれ て い る。 第 四 に,こ の 現 段 階 の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンは き わ め て 危 険 な投 機 の 世 界 に な っ て し ま っ て い る とい う こ と で あ る 。 膨 大 な ドル の 垂 れ 流 し を も と に,投 機 資 金 が 世 界 を駆 け め ぐ っ て い る 。 大 量 の 投 機 資 金 の 流 れ は ア ジ ア を 襲 い,"ア ジ ア の 奇 蹟"は 一 瞬 に し て"ア ジ

ア に 危 機"に 転 化 して し ま っ た 。

か か る現 段 階 的 特 徴 を持 つ グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン に 対 す る 対 抗 力 は 弱 い な が ら も徐 々 に 作 られ つ つ あ る 。 本 論 文 は 以 上 の よ う な 今 日の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンの 持 つ 本 質 的 な 特 徴 点 を解 明 す る こ と を 課 題 とす る。

1.1970年 代 以 後 の 資 本 主 義 の 危 機2)

第2次 世 界 大 戦 後 の世 界経 済 は,IMF=GATT体 制 の も とで 先 進 資 本 主 義 諸 国 が過 去 にみ な い高 成 長 を達 成 した。 冷 戦対 抗 の 下 で,ア メ リカ帝 国主 義 を 主 軸 とす る各 国 は,「 高 成長 」 政 策 を展 開 した。 す な わ ち,大 規 模 な 財 政 支 出 に よる ケ イ ンズ政 策 で あ る。 各 国家 は,軍 事 支 出,産 業 基 盤投 資,社 会 的消 費

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手段 へ の 建 設投 資 な どに よる市場 創 出 を行 うこ とに よ ってa独 占資 本 の需 要 を 作 り出 し,投 資 を促 進 させ た。 「高 成 長 」 政 策 はか か る ケ イ ンズ政 策 に と ど ま らず,よ り体 系 的 ・全 社 会的 で あ る。技 術 ・産 業 政 策 に よっ て独 占資 本 の新 技 術 や新 産業 の 開発 ・発 展 を促 進す る こ とに よって,独 占資 本 間競 争 を活 発化 さ せ,急 速 な拡 大 再 生 産 を促 進 し,「 高 成 長 」 を達 成 した 。 しか も こ の 「高 成 長 」 政 策 は,同 時 に独 占の投 資促 進 に よっ て 「完全 雇 用 」 を も 一定 程 度達 成 さ せ,高 賃金 を保証 し,社 会保 障 を も促 進 させ る 「福祉 国 家」 政 策 に よっ て,労 働 者 階級 の 失 業 を緩 和 し,階 級 対抗 を も緩和 させ る効 果 を持 った。 また 「高 成

長」 過 程 で の矛 盾 が 激化 す る 中小 企 業 や 農業 に た い して も,一 一方 で は構 造転 換 を促 進 す る こ とに よ る 「育 成 政 策」 を行 い,他 方で は 下 層部 分 に対 す る保護 政 策 に よって 中小 企 業 者や 農 民 の不 満 に も対 応 す る とい う全 経 済 ・社 会 過 程 で の 政 策 と して展 開 され た。

しか し,こ の 「高 成 長」 も1970年 代 に はい る とそ の 矛 盾 が 露 呈 して くる。

1971年 には,戦 後 の世 界経 済 を根 底 的 に規 定 して い たIMF=GATT体 制 が 崩 壊 し,戦 後 国独 資体 制 を支 え て いた 第三 世 界 か らの安価 な 一次 産 品供 給 体 制 も 73年 の オ イ ル シ ョックで 崩 壊 した。 これ を契 機 に先 進 資 本 霊義 各 国 は イ ン フ レと経 済 停 滞 の併 存 とい うい わゆ るス タグ フ レ..̲̲ションに突 入 す る ので あ る。

AIMFL=GATT体 制 の崩 壊

戦 後 の 国独 資 の発 展 を支 え たIMF=GATT体 制 は,ア メ リ カの圧 倒 的 な経 済 力 と金保 有 に よっ て 支 え られ た体 制 で あ り,こ の体 制 は ア メ リカの イ ンフ レ 的 国独 資 の展 開 に よる ア メ リ カの 経 済力 の低 下 と,西 欧 ・日本 の急 成 長 とい う

二つ の要 因 に よっ て崩壊 した とい え る。

ア メ リカの 戦 後の 経 済 発展 は,冷 戦 軍 需 イ ンフ レ的 国独 資 と呼 ぶ にふ さわ し く,冷 戦 体 制 に 規 定 され た膨 大 な恒 常 的 な 軍 需 支 出 に 支 え られ た発 展 で あ っ た。 この 発展 は軍 需 そ の もの が持 つ不 生 産 的 ・浪 費的性 格 の 限 界 に よって 大 き く制 約 され,低 成 長 とイ ンフ レとい う体 質 を保 有 せ ざる を得 なか っ た。 とい う の は,朝 鮮 戦 争 後 本格 化 す る核 戦 略 体 系 の航 空 ・宇宙 ・原 子 力 ・エ レク トロニ

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54商 経 論 叢 第36巻 第3C7fj

ク ス 等 の 超 新 鋭 重 化 学[業 は,ア メ リ カ 的 生 産 力 とい え る 自動 車 な ど の 耐 久 消 費 財 と違 い 再 生 産 関 連 が 弱 くi国 家 の 軍 需 支 出 に よっ て の み 支 え られ る傾 向 が 強 い か らで あ る。 ま た ア メ リ カのr業 の 中 軸 を な す 耐 久 消 費 財 は,1920年 代 か ら発 展 した 産 業 で あ り,ア メ リ カ で は 成 熟 産 業で あ っ た 。 こ れ ら の 産 業 に お い て は,巨 大 独 占 企 業 は 寡 占 間 協 調 の 安 定 し た 状 態 の 下 で 独 占 価 格 の 引 き上 げ に よ る独 占 利 潤 の 取 得 と い う行 動 を と り,投 資 競 争 は 抑 制 さ れ て い た た め,成 長 率 は他 の 先 進 国 よ り も低 くな ら ざ る を 得 な か っ た。 さ ら に ア メ リ カ の 国 際 競 争 力 が 次 第 に 低 ド して い く ドに お い て も,ア メ リ カ の 独 占 企 業 は 国 内 的 に は投 機 的 な コ ン グ ロマ リ ッ ト企 業 と し て,対 外 的 に は 資 本 輸 出 に よ る 多 国 籍 企 業 と

して,多 角 化 ・世 界 化 す る こ と に よ っ て 市 場 拡 大 を は か っ た た め,国 際 競 争 力 は よ り0層 低 ドし た 。

こ れ に 反 して,IMF=GATT体 制 の 下 で,ア メ リ カ か らの 膨 大 な ドル 散 布 に 支 え られ て 復 活 した 西 欧 や 日本 の 国 独 資 は,ア メ リ カ と は 対 照 的 に 耐 久 消 費 財 重 化 学 工 業 創 出 型 の 国 独 資 と して 位 置 づ け られ,高 成 長 と低 イ ンフ レに よ っ て 特 徴 づ け られ る 。 と い うの は 第 一・に 西 欧 や 日本 に と っ て 耐 久 消 費 財 は 新 産 業 的 な性 格 を 有 し,こ れ が ア メ リ カ か らの 技 術 導 人 に よ っ て 挙 に 導 入 され た た め,独 占 資 本 間 の 激 しい 設 備 投 資 競 争 を 生 み 出 し,高 成 長 を 達 成 す る こ と に な っ た 。 第 二 に,国 家 の 経 済 政 策 が この 高 度 成 長 を 促 進 す る た め に 全 力 を挙 げ て 支 援 した と い う こ と で あ る。 重 化 学T;業 を 育 成 す る た め に 大 量 の 資 金 供 給 と,こ の た め の 産 業基 盤 投 資,新 産 業 育 成 の た め の 産 業 ・技 術 政 策 が 重 点 的 に 行 わ れ た 。 第 三 に,耐 久 消 費 財 創 出 型 の 国独 資 と して の 西 ドイ ツ ・日本 の 急 成 長 は,大 量 の 生 産 物 を 発 生 させ,こ れ が1960年 代 以 降 世 界 市 場 に 大 量 に 輸 出

され る こ と に な っ た 。

か か る ア メ リ カ の 経 済 力 の 低 下 と,西 欧 ・日本 の 急 成 長 が,ア メ リ カ の 国 際 収 支 を圧 迫 し,71年 に 金 と ドル の 交 換 停 止 に 追 い 込 ま れ た の で あ る。 こ れ 以 後 世 界 は 変 動 相 場 制 に 移 行 し,ド ル は 管 理 通 貨 の ま ま基 軸 通 貨 を維 持 す る とい

う事 態 に な っ て し ま っ た の で あ る 。 Bス タ グ フ レー シ ョ ン

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第二 次 世界 大戦 後 の 国家 独 占資 本 主義 は イ ン フ レー シ ョン体 質 を 内蔵 して い る。 そ れ は戦 後 の 国独 資が 管 理通 貨 制 度 のhに 構 築 され て い るか らで あ る。 管 理 通 貨 制 度 のrで は 中 央 銀 行 の 発 行 す る 銀 行 券 は不 換 通 貨 篇不 換 銀 行 券 で あ りs銀 行券 発 行 額 は金 準備 に よる制約 を受 けな い ので ,流 通 必 量 金 量を超 えて 過 剰 に発 行 され る傾 向 に あ る。 こ の こ とが 代 表 金 量 の低 ドで あ る イ ンフ レー シ ョ ンを引 き起 こす こ とに な る。 そ して この イ ンフ レー シ ョン体 質 は,赤 字 財 政 ドでの 大 量の国 債 発行 や 中 央銀 行 に よ る信 用 供 与 の過 剰 拡 大 に よって現 実 化 す る こ とに な る。

イ ンフ レー シ ョンは戦 後 の経 済 発 展 の なか で次 第 に加速 化す る傾 向が あ る。

この 最 大 の 要因 は独 占的 資本 蓄 積 の結 果 と しての 過剰 蓄積=過 剰 生 産能 力 の深 化 にあ る といえ る。 とい うの は,国 家 の 市場 創 出 に よ る投 資拡 大は 第1部 門 の 自 立的発 展 を促 し,部 門 関連,生 産 と消 費 の 関連 を無 視 して発展 して ゆ くが , この過 程 は必 然 的 に独 占分 野 で の過剰 蓄積e過 剰 生産 能 力 を もた らす。 この段 階 で恐慌 を回避 し成 長 を維持 して い くた め に は 当初の 市場 創 出 よ りも遙 か に巨 大 な追 加 需 要が 必 要 に な る。 この こ とが 政 府 支 出 の よ り 層 の 拡 大 を必 要 と し,国 債 の 発 行 を も不 可避 とす るの で あ り,不 換 通 貨 の増 発 も必 然 化 す るの で あ る。

ス タグフ レー シ ョ ンは イ ンフ レー シ ョンが 加 速 化 しそ れが 限 界 に達 した こ と に よっ て発 生す る。 イ ンフ レー シ ョンの 限 界 は管 理 通 貨 制 度 の 下にお い て は原 理 的 に は存 在 しない ので,そ れ は政 治過 程 で の 階級 対抗 の あ り方 に よっ て決 着 す る しか な い。 そ れ ゆ え,ス タグ フ レー シ ョ ンは,国 家 が イ ンフ レの加 速化 に 耐 え きれず,物 価 安 定 の た め に総 需要抑 制 政 策 に踏 み切 るこ とに よって 直接 的 には発 生 す る とい え よ う。1974‑75年 の ス タグ フ レー シ ョンは73年 の石 油 危 機 の発 生 に よって よ り加 速 した イ ンフ レが これ に加 わ っ た とい え よ う。 か か る 事 態 に なれ ば,国 家 は有 効 需 要政 策 を採 るこ と もで きず,独 占 資本 的 資 本蓄 積 の 矛盾 と しての 停滞 化 傾 向 が全 面 的 に発 現 す る こ とに な る。 ここ にお い て 国家 は有 効需 要 の創 出政 策 も十分 に行 い えずfさ りとて イ ンフ レも ト分 に抑 制 で き ず,経 済 政 策 は手 詰 り状 態 に陥 らざる を え ない。

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56商 経 論 叢 第36巻 第3号

C新 自 由 主 義 ・新 保 守 主 義 の 登 場3)

か か る1970年 代 の 資 本 主 義 の 危 機 に 対 して,70年 代 の 中 頃 か ら ア メ リ カ, イギ リ ス とい う世 界 資 本 主 義 の 中 軸 を担 っ て き た 両 国 にお い て,新 自由 主 義 ・ 新 保 守 主 義 と い う新 しい 思 想 潮 流 が 台 頭 して きた 。 そ して こ の 潮 流 は1979年 に サ ッチ ャ.̲....政権,80年 に レ ー ガ ン政 権 を 生 み 出 す に 至 っ た 。 新 保 守 政 権 は

ス タ グ フ レー シ ョ ンの 克 服 と経 済 の 再 生 と い う課 題 に 次 の よ う な 政 策 を掲 げ 大 胆 に 実 行 した 。

① イ ン フ レの 抑 制,マ ネ タ リ ズ ム に 依 拠 して 通 貨 供 給 量の 直 接 管 理 に よ っ て イ ン フ レ を抑 制 す る 。

② 小 さ な政 府 の 実 現,公 共 支 出 の 削 減,社 会 保 障 費 の 削 減 に よ っ て 均 衡 財 政 を 達 成 す る 。

③ 大 幅 減 税 を含 む税 制 改 革,サ プ ラ イサ イ ドの経 済 学 に 依 拠 し,企 業 減 税 に よ っ て 経 済 を活 性 化 させ る 。 他 方 所 得 税 減 税 に よ っ て 個 人 の 勤 労 意 欲 を 高 め る。

④ 民 営 化 ・規 制 緩 和,政 府 企 業,公 企 業 を 民 営 化 し,効 率 化 を 達 成 す る 。 ま た,政 府 の 規 制 を大 幅 に緩 和 し,経 済 の 自 由競 争 を 促 進 させ る 。

⑤ 労 使 関 係 政 策,労 働 組 合 を 規 制 し,企 業 が 効 率 性 を 達 成 で き る よ う に す る。

⑥ 軍 事 力 強 化,公 共 の 秩 序 の た め の 警 察 力 強 化 。 軍 事 力 拡 大 に よ る 強 い 国 家 を 実 現 す る とい う ナ シ ョナ リ ズ ム の 強 化 。 ま た 法 と秩 序 に よ っ て 市 場 自 由 主 義 を保 証 し,モ ラ ル を 高 め コ ミュ ニ テ ィの 安 全 を 維 持 す る 。

以 上 の よ うな 諸 政 策 の 結 果,世 界 経 済 は ど の よ う に 変 化 した の か 。 第 一に ス タ グ フ レ ー シ ョ ンの う ち の イ ン フ レー シ ョ ンに つ い て は,強 力 な 金 融 引 き締 め 政 策 と国 際 石 油 価 格 の 低 落,国 際 競 争 の 激 化 に よ っ て 沈 静 化 した 。 しか し,経 済 停 滞 は よ り深 刻 化 す る こ と に な っ た 。 第 二 に,ア メ リ カ の 双 子 の 赤 字 と い わ れ る 財 政 赤 字 と 国 際 収 支 の 赤 字 は,レ ー ガ ノ ミ ッ ク ス に よ り よ り一一 層 進 行 し,1985年 に は70年 ぶ り に ア メ リ カ は 債 務 国 に 転 落 す る に 至 っ た 。 第 三 に,1985年 のG5に よ る プ ラ ザ 合 意 は ア メ リ カ が 独 力 で 自 国 の 経 済 を 支 え る

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こ とが で きない こ とをT先 進 資 本 主義 諸 国が 認 識 し,各 国 の協 調 介 入 に よっ て ア メ リカ体 制 を 支 え る こ と を意 味 した。 しか しこれ以 降 ドル の低 落 と金融 の 自 由化 の なか で,各 国 資 本 は為 替 差益,金 利 差益,証 券 売 買差 益 を 目指 して投 機 的性 格 を強 め,い わ ゆ る 「カ ジ ノ資 本 主義 」 「バ ブ ル経 済」 に突 入 す る こ と に な るの で あ る。

90年 代 の グ ローバ リゼ ー シ ョ ンと呼 ばれ る事 態 は まさ にか か る70年 代 か ら 続 く世 界資 本 主 義 の危 機 に対 す る資 本 の対 応 で あ る とい え る。

2.グ ロ ー バ リゼ ー シ …ヨン を も た ら し た も の

A情 報 通信 革 命

以 上 の よ うに1990年 代 に展 開 す る グ ロー バ リゼ ー シ ョンは,80年 代 の 資 本 主 義 の危 機 に対 す る新 自由主 義 路線 に よる規 制緩 和 を土 台 と して,そ の上 に情 報 通信 革 命 とい う新技 術 ・新 産 業 の急 発展 を促 進 剤 と して初 め て展 開 で きた も

の とい え る。

1970年 代 半 ば以 降,IC(集 積 回路)の 集積 度 の 上 昇 に よ るLSIや 超LSIの 登 場 とMPU(コ ン ピュー タの 中 央演 算 装 置(CPU)を 半導 体 基 板 に組 み 込 ん

だ もの)に よって,ME革 命 と呼 ば れ る新 しい技 術 革 新 が起 きた。 マ イ クロ エ レク トロニ クス は20世 紀 物 理 科 学 革 命 に よ る 「極 微 の 世 界」 の 法 則 の 科 学 的 認 識 に よる諸 物 質 ・物 性 の 利 用 で あ り,古 典 力学 が切 り開 い た 人 間の 五感 に よ る 「日常 的 経験 の 世 界」 の科 学 的認 識 に基 づ い た機械 体 系 とは根 本 的 に原理 が 異 な る。

ME革 命 とはME技 術 革 新 が コ ン ピ ュ ー タ と結 合 し,個 々の 機 械 にME部 品 を使 用 す る こ とに よって機 械 の性 能 を飛 躍 的 に高 め るだ け で な く,高 度の 機 能 を持 つ 新 しい機 械 の 開発 を促 進 し,ま た単 な る個 別 機械 だ けで な く,工 場 や 企 業 そ して 社 会全 体 に大 きな変 革 を もた らす こ とか ら名づ け られ た 。

ME革 命 は80年 代 の 半 ば以 降PC(パ ー一ソナ ル コ ン ピュー タ)の 演算 速 度 の 高 速化 ・大 容 量 化 と通 信 技 術 の 急 発 展 に よ っ てICT(情 報 通 信)革 命 に発 展

して きた。

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58商 経 論 叢i第36巻 第3号

PCの 高 性 能 化 に よ っ て,コ ン ピ ュ ー タ に よ る 情 報 処 理 方 式 は,メ イ ン フ レー ム に よ る 集 中 処 理 方 式 か ら}ネ ッ トワ ー ク に接 続 した ワ ー ク ス テ ー シ ョ ン や パ ソ コ ン に よ る分 散 処 理 に 移 行 した 。 い わ ゆ る ダ ウ ンサ イ ジ ン グ で あ る。 そ して こ れ ら の 分 散 処 理 の 進 展 が,従 来 の メ イ ン フ レー ム や オ フ コ ンに よ る 企 業 固 有 の ク ロ ー ズ ドシ ス テ ム に よ る 処 理 をUNIXや ウ ィ ン ドウ ズ 等 の オ ー プ ン

シ ス テ ム に 置 き換 え る こ と を 可 能 に した 。 そ し て1990年 代 に は パ ソ コ ンか ら ネ ッ トワー クへ と進 展 した 。 そ れ は イ ン ター ネ ッ トの 爆 発 的 普 及 で あ る。 イ ン タ ー ネ ッ トの 始 ま り は,1969年 に 始 ま っ た ア メ リ カ 国 防 総 省 の 異 種 コ ン ピ ュ ー タ接 続 ネ ッ トワ ・一 クARPANETで あ る。ARPANETは 核 攻 撃 か ら 軍 事 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク を 保 護 す る と い う こ と か ら 始 ま っ た が,83年 に 軍 事 用 ネ ッ トワ ー ク のMILNETと 非 軍 事 用 のARPANETに 分 離 さ れ,86年 にAR‑

PANETに 全 米 科 学 財 団NSFNETが 接 続 さ れ 大 学 や 研 究 機 関 に解 放 さ れ た と い う歴 史 を 持 つ 。 イ ン タ ー ネ ッ トが 一一般 に 開 放 さ れ た の は91年 で あ る 。 そ し て93年 の イ ン ター ネ ッ トの 商 用 化 以 降,イ ン ター ネ ッ ト利 用 が 急 増 し,Web 上 で の サ ー ビ ス や 商 取 引 が 急 速 に 進 ん だ 。 イ ン タ..̲̲ネッ トの 共 通 の プ ロ トコ ル

(通 信 規 約)で あ るTCP/IPを 利 用 し た 組 織 内 の ネ ッ トワ ー ク で あ る イ ン トラ ネ ッ ト,ま た 関 連 企 業 を 連 結 す る エ ク ス トラ ネ ッ トが 構築 され た 。 こ う して 個 人 と個 人,個 人 と企 業,企 業 と 企 業 が 情 報 の や り と りを 自由 に お こ な え る よ う に な り,ネ ッ トワ ー ク 関 連 の 機 器 や ソ フ ト,電 子 商 取 引 に 対 す る 需 要 が 高 ま り,コ ン ピ ュ ー タの 中 心 が ハ ー ドか ら ネ ッ トワ ー ク 関 連 の ソ フ トに 転 換 す る こ と に な っ た 。

こ の イ ン ター ネ ッ トの 普 及 は,情 報 ・通 信 手段 に も大 き な 変 革 を もた らす こ と に な っ た 。 コ ン ピ ュ ー タに よ る情 報 処 理 は デ ジ タ ル と い う 「0」 と 「1」の 信 号 に 変 換 さ れ て 行 わ れ る の で,蓄 積,保 存 が 容 易 で 劣 化 しな い とい う特 性 を持 つ 。 そ して デ ジ タル 化 に よ っ て 情 報 処 理 は 容 易 に な り,情 報 コ ス トは 飛 躍 的 に 低 下 す る こ と に な っ た 。 通 信 手 段 も音 声 通 信 が デ ジ タ ル 化 す る こ とに よ っ て 固 定 電 話 か ら移 動 電 話 へ と変 化 し,音 声 通 信 か ら デ.̲̲.タ通 信 へ の 変 化 が 起 き た の で あ る。 イ ン ター ネ ッ トの 利 用 は電 子 メー ル利 用 か ら,WWW(WorldWide

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Web),FTP(FileTransferProtocol)サ ー ビ ス,イ ン タ ー ネ ッ ト放 送 ・電 話 と広 が り,扱 わ れ る デ ー タ も文 字 だ け で な く,音 楽 や 映 像 の 送 受 信 ま で拡 大 す る こ とに な っ た 。 こ の よ う な情 報 ・通 信 の デ ジ タ ル化 は }通 信 産 業 の 競 争 の 主 戦 場 を デ ー タ通 信 に 移 行 させ た 。 企 業 間 の 電 子 商 取 引 の 拡 大 に 伴 い,企 業 間 の 情 報 通 信 を 地 域,長 距 離 国 際 を シ ー ム レ ス接 続(継 ぎ 目無 し)で 行 う こ と に よ り,情 報 コ ス トは 飛 躍 的 に低 下 し,グ ロ ー バ ル な 通 信 が 可能 に な っ た の で あ る 。

Bソ 連 ・東 欧 社 会主 義 の 崩壊 とア メ リカの覇 権 国 家 の進 展

1980年 代 末 の ベ ル リ ンの壁 崩 壊 に 始 ま る ソ連 ・東 欧 の 「社 会 主義 」 の 崩 壊 は,冷 戦体 制 の崩壊 を意味 し,世 界 は新 しい事 態 に直 面 す る こ とに な った。 旧

「社 会 主義 諸 国 」 が 市場 経 済 に向 か っ て…凸斉 に動 き出す こ とで,世 界 は 文字 通 り単 一の資 本 主 義市 場 経 済 に よっ て覆 わ れ る とい う事 態 に な り,資 本 主義 の グ ロー バ ル化 が 本格 化 す る こ とに な った。

他 方冷 戦 体制 の も う一 方 の局 ア メ リ カ も経 済力 の衰 退が 顕 著 で あ る。 ア メ リ カの貿 易収 支は1971年 か ら赤 字 を計上 し,投 資収 益 も82年 か ら減 少 しだ し, 経 常 収 支 も82年 か ら赤 字 に転 じた。 そ して81年 に は 戦 後 最 高 の1409億 ドル の 対外 純 資産 を記録 してか らわず か4年 で,ア メ リカは純 債 務 国 に転 落 して し ま うの で あ る。 さ ら に レー ガ ン政 権 の 下 で 財 政 赤 字 は 急 拡 大 し}83年 に は 2000億 ドル を超 え る事 態 に な っ て し まっ た の で あ る。 こ の よ うな ア メ リ カ経 済 の破 綻 ともい え る 事態 は,基 本 的 に は冷戦 体 制 の ため の コス ト負 担 に耐 え き れ な くな った 結 果 とい え よ う。1985年 の プ ラザ 合 意 は,ア メ リカが 独 力 で 自 国 の経 済 を 支え る こ とが 出 来 な くな っ て い る こ と を先 進 資 本 主義 各 国 が 認 識

し,協 調介 入 に よっ て ア メ リカ体 制 を支 え る とい う こ とを意味 し,こ れ に よっ て ア メ リカ に よ る資本 主義世 界の 統合 体 制 は基 本 的 に破綻 したの で あ る。 これ 以 降,ア メ リカは資 本 主義 の統 合 体制 の ため で な く,自 国 の利 益 の た め にそ の 軍事 力,基 軸 通 貨 国 の特 権 を行 使 す る こ とに なっ たの で あ る。

① 通信 の 自由化4)

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60商 経 論 叢 第36巻 第3号

前 述 し た レー ガ ン政 権 の 下 で 推 進 され た レー ガ ノ ミ ッ ク ス の な か の 中 心 的 な 政 策 の 一 つ で あ る規 制 緩 和 ・民 営 化 に よ る 通 信 の 分 割 ・規 制 緩 和 と金 融 の 自 由 化 は,情 報 通 信 革 命 と相 ま っ て 今 日の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン を も た ら した 大 き な 原 因 の 一つ と い え る。1984年AT&Tが 分 割 さ れ,長 距 離 通 信 会 社 一 社

(AT&T)と ヒつ の 地 域 通 信 会 社(七 地 域 の ベ ル電 話 会 社)に な っ た 。 通 信 産 業 は 長 い 間 通 信 ネ ッ トワ ー ク の 公 共 性 と 通 信 主 権 の 維 持 とい う観 点 か ら,国 家 規 制 下 に お か れ て き た 。 レー ガ ンの 経 済 再 生 計 画 は 通 信 産 業 の 国 家 規 制 を緩 和 す る こ と に よ っ て ア メ リ カ を再 活 性 化 し よ う と した の で あ る。 こ れ に よ り長 距 離 通 信 会 社 はAT&T,MCI,ス プ リ ン トの 三 者 体 制 に な っ た 。90年 代 に は い る と,イ ン ター ネ ッ トの 爆 発 的 普 及 を背 景 に ク リ ン ト ン政 権 の 下 で ゴ ア 副 大 統 領 の ス ー パ ー ハ イ ウ ェ イ構 想 が 打 ち 出 さ れ る 。93年2月 ゴ ア はNII(National InformationInfrastructure国 家 情 報 基 盤)「 情 報 ハ イ ウ ェ イ」 政 策 を 提 案

し,9月 に 「NII行 動 ア ジ ェ ン ダ」,12月 に 「NII五 原 則 」 を発 表 した 。 こ の 構 想 はB‑ISDN(広 域 総 合 サ ー ビ ス 用 デ ジ タ ル ネ ッ ト ワ ー ク)技 術 を 利 用 し

て,全 米 の 家 庭 や 企 業,教 育 ・研 究 機 関,図 書 館,医 療 機 関 な ど を 双 方 向 の マ ル チ メ デ ィア 通 信 で 結 ぶ とい う も の で あ る。 こ のNII構 想 を 実 現 す る た め の 基 本 原 則 と して ① 民 間 投 資 の 奨 励 ② 競 争 原 理 の 確 立 と維 持 ③ 開 か れ た ア ク セ ス ④ 情 報 格 差 の 防 止 ⑤ 政 府 対 応 の 柔 軟 性 と即 応 性,の 五 原 則 を提 示 し た。 こ の 五 原 則 は94年 のITU(国 際 電 気 通 信 連 合)でGII(GlobalInformationInfrastruc‑

ture世 界 情 報 基 盤)の 五 原 則 と し て 提 示 さ れ た 。 こ の 構 想 は ク リ ン ト ン政 権 が 情 報 こ そ 製 造 業 だ け で な く,サ ー ビ ス 産 業 に お い て も,安 全 保 障 だ け で な く 経 済 の 面 か ら も最 も重 要 な 資 源 で あ る こ と を 認識 して い た か らで あ る。 この 情

報 ス ー一パ ー ハ イ ウ ェ イ構 想 は イ ン タ ー ネ ッ トの 普 及 に よ っ て グ ロ ー バ ル ・不 ッ トワ ー ク と して 実 現 しつ つ あ る 。

さ ら に96年 の ア メ リ カ の 通 信 法 改 正 と97年 のWTOに よ る 「WTO基 本 電 気 通 信 合 意 」 に よ っ て,通 信 産 業 は 国境 を越 え た メ ガ ・キ ャ リア(通 信 独 占 資 本)問 の 大 競 争 時 代 に 突 入 す る こ と に な っ た 。96年 の 電 気 通 信 法 の 改 正 は, 長 距 離 通 信 事 業,地 域 通 信 事 業,放 送,CATV事 業 間 の 業 態 間 の 垣 根 を な く

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し,通 信 と放 送 の 融合 を可 能 にす る 巨大独 占 メデ ィア資 本 の成 立 を可 能 にす る もの で あ る。97年 の 「WTO基 本 電 気 通 信 合 意」 は,ど の 国 の 事 業 者 も平 等 に扱 う最 恵 国待 遇,市 場 を 自由化 し,外 資 を制 限 しな い市 場 ア ク セ スの確 保, 外 国 事業 者 を内 国事 業 よ り不 利 に な らない 内 国民 待 遇 か らな っ てい る。 そ して

この 内外 無 差別 義務 を実 行 あ る もの とす るた め に,有 力 キ ャ リアに よる反競 争 行 為 を政府 が 規 制 す る義 務,有 力 キ ャ リア に よ る非差 別 か つ技 術 的 に可 能 なす べ て の ポ イ ン トで の接 続提 供 ,接 続 条件 の 透 明性 確 保 義務,キ ャ リアか らの 規 制 機 関の独 立性 と中立性 義 務,参 入 を免 許 制 にす る場 合 の免 許条件 と取 得 に要 す る機 関 の 公 開義務 な どが 定 め られ た。 これ に よって外 国の 通信 企 業 の 自国へ の参 入 が可 能 とな り,そ の 国 の キ ャ リアは外 資 企 業 に もネ ッ トワー クへ の接 続 義 務 が 発生 す る こ とに な った。

② 金 融 の 自由 化51

1971年 の 金 ドル交 換 停 止 と変動 相 場 制へ の 移 行 は,ド ル を 減価 させ,ド ル 流 失 を激化 させ た。 ア メ リカ多 国籍 企 業 に よる ア メ リカか らの 直接 投 資 ,間 接 投 資 は 巨額 に達 し,こ の 流 失 した巨 額 の ドルは 各地 の 金 融市 場 に豊富 な資 金 を 供 給 した。特 に その 中心 に な った のが ユ ー ロ市 場 で あ る。 ユ ー ロ市 場 は国 内 金 融 市場 の規 制 や 制 約 を逃 れ て 自由 な資 金 の 調 達n運 用 の 場 を与 え た か らで あ る。 こ のユ ー ロ 市場 の 規 模 拡 大 は,そ の 自由 な 市場 機 能 ,効 率 性,柔 軟 性 に よ って ます ます 主要 各 国 金融 市 場 の 国際 化 の動 きを加 速化 し,主 要 国通 貨 間で の 振 替 を活 発 化 し,国 際 間 で の 資 金 移 動 の 重 要 性 を増 大 させ た。73年 の 石 油 危 機 以 後 で は原 油価 格 の大 幅 値 上 げ に よっ て産 油 国 に流 入 した オ イル ダ ラー を 巡 って,オ イル ダ ラー市 場 が 国際 金 融 で注 目 され る に至 った。

金 融 の 自 由化 の 出発 は1975年 の ア メ リ カの い わ ゆ る 「メ.̲̲.デー」 と呼 ばれ るニ ュ ー ヨー ク証券 取 引所 の 会 員 資格 の 開放 と証 ・券手 数料 の 自由化 で あ る。 さ らに カー ター政 権 末 期 の 異常 高 金利 と,レ ー ガ ン政権 に よるデ レギ ュ レー シ ョ ン政 策,さ らにセ キ ュ リ タイゼ ー シ ョ ンの進 行 とエ レク トロバ ンキ ングの 隆盛 は ア メ リカの 金 融 制 度 改 革 を促 進 す る こ とに な っ た。 そ れ は1988年 の 金 利 規 制撤 廃(い わ ゆ る レギ ュ レー シ ョ ンQ項 の事 実 上 の廃 止),州 際 業 務 禁 止 の 緩

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62商 経 論 叢 第36巻 第3号

和,そ して こ れ ら の 自 由 化 の 動 き は1999年 の 銀 行 と 証 券 の 壁 の 廃1ヒ ま で 続 く。

こ の ア メ リ カ の 金 融 革 命 は,米 国 政 府 の 圧 力 に よ っ て 欧 州 ・日本 を も巻 き込 む こ とに な っ た 。 日本 で は83年 の レ ー ガ ン訪 日,84年 の 日米 円 ドル 委 員 会 報 告 と な っ て,米 国 金 融 機 関 の 日本 に お け る 自由 な 活 動 の 保 障,ユ ー ロ 円 市 場 の 開 放,市 場 原 理 の 金 融 市 場 へ の 自 由 な 適 用 を 許 容 す る こ と に な っ た。 ま た 欧 州 に お い て は86年 の イギ リ ス の ビ ッ グ バ ン,CP・CD導 入 の フ ラ ン ス,外 債 市 場 開 放 化 の 西 ドイ ツ,イ タ リ ア の 金 融 開 放 化 が 行 わ れ,カ ナ ダ,オ ー ス トラ リ

ア へ と波 及 し た。 さ ら に オ フ シ ョア市 場 へ の 参 入 傾 向 が 金 融 先 進 国 まで 及 ぶ こ と と な っ た 。 これ らの 金 融 革 命 は,厳 格 な 免 許 主義 と保 護 行 政 と管 理 諸 規 則 と 各 国 別 々 の 金 融 慣 行 に 支 え られ て い たlj本 や 欧 州 の 金 融 制 度 と金 融 シ ス テ ム に 衝 撃 を 与 え た 。 しか も こ れ らの 金 融 の 自 由 化 は ア メ リ カ 金 融 シ ス テ ム を 基 準

に,ア メ リ カ の 市 場 原 理 と慣 行 を 自 由 化 ・開 放 化 ・イ ノベ ー シ ョ ンの 名 の 下 に 強 要 す る もの で あ っ た 。 ア メ リ カ の 金 融 機 関 が 相 互 主 義 の ドに,各 国 の 金 融 市 場 の 自 由化 を 要 求 しsそ れ が 入 れ られ な け れ ば,各 国 の 金 融 市場 は 市 場 全 体 か ら脱 落 す る とい う こ と は 自 由 化 を拒 否 す る こ とが 不 可 能 で あ る こ と を 意 味 し た 。 そ れ ゆ え,金 融 の 自 由 化 は,ア メ リ カ の ドル と金 融 機 関 に よ る 世 界 の 金 融 市 場 ・資 本 市場 支 配 に 他 な ら な い 。

金 融 の 証 券 化(セ キ ュ リ タ イゼ ー シ ョ ン)は ア メ リ カ で は 銀 行 資 産 の 流 動 化 と投 資 家 へ の 販 売 ・移 転 とい う形 で 始 ま っ た 。 銀 行 担 保 貸 出 の 流 動 化 は,貸 出 自体 の 移 転,他 債 権 の 証 券 化,さ ら に は 一・般 法 人 ま で が 自社 の 保 有 す る 売 り上 げ 債 権 等 を プ ー ル 化 し てCPや 社 債 を 発 行 し,CP利 用 ブ ー ム が 発 生 し て い る 。 ヨ ー ロ ッパ で も金 利 リ ス ク の 増 大 と途 上 国 の 累 積 債 務 に よ る シ ン ジ ケ ー ト ロ ー ン の 退 潮 を 契 機 に,ユ ー ロ 債 市 場 が 勃 興 し,や が て ア メ リ カ と 同 じ の ECP(ユ ー ロ コ マ ー シ ャ ル ペ ー パ ー)が 発 達 す る 。 こ れ ら は 市 場 性 の な い 融 資 債 権 を リス ク を 考 慮 した 市 場 価 値 で 再 評 価 し債 券 や 投 資 信 託 と同 様 な 証 券 と し て 売 り出 す も の で あ る 。 さ ら に金 融 工学 の 発 達 に よ っ て,デ リバ テ ィ ブ 取 引 が 急 拡 大 して い る 。 先 物 や オ プ シ ョ ン,ス ワ ップ な どが 急 拡 大 し た 。 こ れ らは い

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ず れ も従 来 は 取 引 の 難 しい ハ イ リス ク 商 品 で あ っ た が,リ ス ク を分 散 化 し加 工 す る とい う 金 融 幽1二学 の 発 展 に よ っ て 商 品 化 され た も の で あ る。

以Lの よ う な 金 融 の 自 由 化 の 進 展 は,70年 代 か ら注 目 さ れ て き た 金 融 の 国 際 化 と は 異 な り,金 融 の グ ロー バ リゼ ー シ ョ ン と呼 ば れ る 現 象 を発 現 させ た と い え よ う。70年 代 の 後 半 に 国 内 金 融 市 場 の 開 放 や 国 内 金 融 制 度 の 改 革 に よ

っ て,ク ロ ス ボ ー ダ ー 金 融 取 引 の 増 大 ,多 国 籍 銀 行 の 海 外 進 出 が 拡 大 し,金 融 の 国 際 化 が 注 目 され た が,80年 代 に は い る と ,先 進 国 国 内 金 融 ・資 本 市 場 に お け る 自 由 化 ・証 券 化 ・対 外 開 放 に よ っ て,金 融 取 引 は 全 地 球 的 規 模 で 行 わ れ る よ う に な り,先 進 諸 国 金 融 市場 相 互 あ る い は オ フ シ ョ ア 市場 を 含 め た 世 界 的 な 金 融 ・資 本 市場 の …体 化 ・統 合 化 が 進 展 した の で あ る。 コ ン ピ ュ ー タ技 術 と 国 際 的 な 通 信 網 に よ る エ レ ク トロ ニ ク ス に よ る 国 際 決 済 シス テ ム の 形 成 は

,各 国 の 国 内 市場 の 開 放 や オ フ シ ョア 市 場 の 開 設 に よ っ て

,外 国 為 替 取 引 や 国 際 的 な 取 引 に お け る 地 理 的 ・時 間 的 制 約 を 解 消 し た 。80年 代 半 ば 以 降 ニ ュ ー ヨ ー ク ・ロ ン ドン ・東 京 の 汰 金 融 セ ン タ...を中 心 に,先 進 諸 国 間 で 通 貨 の 相 違 を 超 え,国 境 を越 え,実 物 取 引 を 遙 か に 超 え た 金 融 取 引 が 活 発 に 行 わ れ る よ う に

な っ た の で あ る 。90年 代 に はEU統 合 に よ る フ ラ ン ク フ ル ト市 場 の 発 展 や , ア ジ ア や ラ テ ン ア メ リ カの エ マ ー ジ ン グ 市 場 の 興 隆 が み られ

,世 界 金 融 市 場 の 多 極 的 統 合 は よ り…‑1進 展 した 。

か か る 金 融 の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンの 進 展 は ま た 世 界 の 金 融 市場 を投 機 的 な 経 済 に 転 化 させ た 。 と い うの は,各 国 金 融 市 場 を通 じる 巨 大 な 短 期 資 金 の 急 激 な 移 動 が 多 発 す る こ と に な っ た か らで あ る 。 ま た デ リバ テ ィブ 取 引 が 利 ざや 獲 得 を 目的 に した 投 機 的 傾 向 を 強 め た か らで あ る 。 ア メ リ カの 巨 大 ヘ ッ ジ フ ァ ン ドや 各 国 の 機 関投 資 家 は 巨 額 の 資 金 を デ リバ テ ィ ブ 取 引 に 充 用 して い る。 巨 大 ヘ ッ ジ フ ァ ン ドは 金 融 機 関 か ら の 借 り入 れ に よ っ て 自 己 資 本 以 上 の 投 資 を 行 い,ま た 借 入 金 を 担 保 に 新 た な 資 金 を 借 り入 れ る とい う手 法 に よ っ て

,自 己 資 金 の 何 十尋倍 と い う投 資 を 行 う こ とが 可 能 な の で あ る。 ユ ー ロ 市場 を は じめ … 国 の 金 融 ・為 替 政 策 に 規 制 さ れ な い 巨 大 市 場 の存 在 は

,こ れ ら 巨 額 の 資 本 移 動 を コ ン トロ ー ル す る こ と を 不 可 能 に す る。90年 代 の 世 界 経 済 は こ の よ う な 金 融

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64商 経 論 叢 第36巻 第3号

の グ ロー バ ル化 に よ る投 機 に よ っ て きわ め て 不 安 定 な 状 態 に立 ち 至 っ て し ま っ て い る の で あ る。

3.グ ロ ーバ ル企 業 の 世 界 的 展 開

Aグ ロ ー バ ル 企 業 の 成 立

グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン を担 っ て きた の は な に よ り も多 国 籍 企 業 で あ っ た 。 そ して 国 際 取 引 の 環 境 の 変 化 と と も に 多 国 籍 企 業 の 国 際 事 業 活 動 も大 き く変 化 し て きて お り,現 在 で は グ ロ ー バ ル 企 業6と 呼 べ る よ う な 存 在 に な りつ つ あ る と い え る 。 初 期 の 多 国 籍 企 業 は 様 々 な 障 壁 や 制 限,非 貿 易 的 な サ ー ビ ス部 門 の 存 在 す る な か で 親 会社 か ら相 対 的 に 独 立 し他 の 子 会 社 と リ ン ク を持 た な い 自立 的 な 在 外 子 会 社 の 集 合 体 に 基 づ い た も の で あ っ た 。 多 くの 国 に プ ラ ン トを持 つ

「水 平 的 に 組 織 さ れ た 企 業 」 で あ り,企 業 内 取 引 は 主 と して 親 会 社 か ら 子 会 社 へ の 輸 出 で あ り,そ の 量 も大 き くは な か っ た 。 そ の 後 多 国 籍 企 業 は 発 展 し新 し

い 条 件 下 で 垂 直 的 に 統 合 さ れ た構 造 に 変 化 した 。

そ して 現 在 で は 「統 合 ネ ッ トワ ー ク」 に よ る 「複 合 的 な統 合 戦 略 」 を 追 求 す る 形 に な っ て きて い る 。 そ こ で は 企 業 活 動 を 金 融,R&D,会 計,訓 練,部 品 生 産,流 通 な どの 諸 活 動 あ る い は セ グ メ ン トに 分 解 し,世 界 中 で も っ と も適 合

的 な 場 所 に 子 会 社 を 設 立 して,こ れ ら を 有 機 的 に 結 合 し,企 業 内 で 資 源,情 報,技 術,商 品,サ ー ビ ス な どを 必 要 に応 じて 自 由 に 移 動 して も っ と も効 率 的 に 運 営 して い る。 ま た他 方 で は 非 関 連 企 業 と の 多 方 面 に わ た る連 携 が 模 索 さ れ て い る 。 こ の よ う に し て,「 グ ロ ー バ ル な イ ン プ ッ トを グ ロ ー バ ル な ア ウ ト

プ ッ トに 転 換 す る統 合 さ れ た 国 際 的 生 産 」17が 追 求 され て い る 。 そ の シ ス テ ム の 新 しい 点 は,シ ス テ ム全 体 を 効 率 化 す る 様 々 な 戦 略 が 複 合 化 し,諸 活 動 の 分 解 と分 散 の 程 度 が 増 大 して い る こ とで あ る 。 企 業 の 生 産 工 程 分 割 の 割 合 が 増 大 し,生 産 ・流 通 ・マ ー ケ テ ィ ン グ 等 が よ り分 業 化 さ れ,地 理 的 に よ り広 範 囲 に 子 会 社 が 配 置 さ れ る よ う に な っ て い る 。

こ の よ う な グ ロ ー バ ル 企 業 の 世 界 的 な 展 開 に よ っ て,ビ ジ ネ ス の グ ロ ー バ ル な 展 開 は 劇 的 に 加 速 化 され て い る。 市 場 的 な 取 引 と して の 貿 易 の ほ か,対 外 直

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接 投 資,国 境 を 超 え た 企 業 内 取 引,非 所 有 形 態 の 提 携(ラ イ セ ン シ ン グ

,タ ー ン ・キ イ協 定,フ ラ ン チ ャ イ ジ ン グ,経 営 契 約 等)}国 際 的F請 け 生 産 な ど の 多 様 な 形 態 が 発 展 して き て い る 。 こ の よ う な 様 々 な 諸 様 式 を 利 用 す る こ と に よ っ て ・ 全 体 と して 最 大 限 の 効 率 性 と収 益 性 を確 保 す る こ とが 追 求 され て い る の で あ る 。

Bメ ガ コ ン ペ テ ィ シ ョ ン

か か る グ ロ ー バ ル 企 業 の 競 争 激 化 に よ っ て ,地 球 大 で の 産 業 ・金 融 の 再 編 成 が す さ ま じい 勢 い で 激 化 して きて い る 。 そ れ は 従 来 とは 異 な る 生 き 残 りを か け た 企 業 の リ ス トラ ク チ ャ リ ン グ で あ り,国 境 を越 え たM&Aや 連 携 の 進 展 で あ る。

① 企 業 の リ ス トラ ク チ ャ リ ン グの 進 展Kl

グ ロ ー バ ル 企 業 の 地 球 大 の 競 争 は ,各 企 業 に 厳 し い コ ス ト削 減 を 迫 っ て お り・ こ の た め 経 営 の 合 理 化=リ ス トラ クチ ャ リ ン グが 行 わ れ て き た。 第 … に, 各 企 業 は コ ス ト削 減 の た め 生 産 シ ス テ ム の 変 革 を進 め ,商 品 を 企 画 化 し,国 際 的 な 広 が り を持 っ た ア ウ トソ ー シ ン グ 政 策 を取 り入 れ て い る 、,コ ン ピ ュ ー タ関 連 産 業 で は ダ ウ ンサ イ ジ ン グ傾 向 が 顕 著 に な っ て い る 。 第 二 に

,不 採 算 分 野 を 切 り捨 て る リス トラ ク チ ャ リ ン グ も急 速 に 進 行 して い る。 規 制 緩 和,自 由 化 に よ る 激 烈 な 国 際 競 争 の 展 開 は,個 々の 商 品 だ け で な く,事 業 全 体 の 急 速 な 陳 腐 化 を招 い て い る 。 各 企 業 は不 採 算 部 門 を切 り捨 て ,大 幅 な 人 員 削 減 を 行 っ て い る。 こ れ らの 大 規 模 な 国 際 的 な リ ス トラ クチ ャ リ ン グの 進 行 は 大 量 の 失 業 者 を 生 み 出 して い る 。 第 窪 に,国 際 的 な 産 業 再 編 の 過 程 で,後 述 す る 企 業 のM&A が 行 わ れ,こ れ が 企 業 の リ ス トラ を よ り 層 促 進 して い る。

具 体 的 な 事例 を あ げ れ ば911BMは87年 以 降17万5千 人 の 雇 用 削 減 を 行 っ た し,ITTは92年 ま で の10年 間 で28万 人 か ら10万6千 人 に,GMは 最 近4 年 間 で9万9400人 を 削 減 して い る 。 石 油 大 手 の エ ク ソ ン と モ ー ビ ル の 合 併 で は9干 人 が,ド イ ツ銀 行 に よ る 米 バ ン カ ー ズ トラ ス トの 買 収 で は 欧 米 合 わ せ て 5500人 が 削 減 さ れ て い る 。 ア メ リ カ の 人 材 サ ー ビ ス 会 社 チ ャ レ ン ジ ャ ー ・グ

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6b商 経 論 叢 第36巻 第3号

レー ・ア ン ド ・ク リ ス マ ス に よ れ ば,1998年 の ア メ リ カ のM&A関 連 の 人 員 削 減 数 は 前 年 比99.6%増 の7万3903人 と な り,95年 の7万2083人 を抜 い て 過 去 最 高 を記 録 した 。 我 が 国 の ル ノ ー に よ る 日産 の 買 収 で の リ ス トラ計 画 で は 2万1千 人 の 人 員 削 減 が 計 画 され て い る 。

②M&A(企 業 の 合 併 ・買 収BSI

グ ロー バ ル 企 業 の 競 争 はr先 進 諸 国 内 で の 巨 大 企 業 のM&A,国 境 を 超 え た 巨 大 企 業 のM&Aを も た ら し,L要 産 業 は こ れ に よ っ て 再 編 の 嵐 に 巻 き込 ま

れ て い る。

90年 代 のM&Aの 第 一の 特 徴 は,ク ロ ス ボ ー ダ ー(国 境 を 超 え た)M&A の 急 拡 大 で あ る。 トム ソ ン ・フ ァ イ ナ ン シ ャ ル ・セ キ ュ リテ ィー ズ ■デ ー タに

よ れ ば,98年 の 世 界 の ク ロ ス ボ ー ダ ーM&Aは5,868億 ドル で 前 年 比75・5%

増 と97年 の 過 去 最 高 額 を 更 新 した 。99年 も1〜9月 で す で に4,982億 ドル で 年 間 で98年 を 上 回 る の は 確 実 で あ る 。 世 界 の 直 接 投 資 に 占 め る 割 合 も急 拡 大

し て い る 。 世 界 の 対 外 直 接 投 資 に 占 め る ク ロ ス ボ ー ダ ーM&Aは,95年

55.5%,96年64.0%,97年70.4%と 年 々比 率 を.Lげ,98年 は90・4%に 達iし て い る。

第 二 に こ の 増 加 は メ ガ コ ンペ テ ィ シ ョ ン に 対 応 し た メ ガ デ ィ ー ル(10億 ド ル 以 上 の 国 境 を 超 え たM&A)の 急 拡 大 に あ る 。 メ ガ デ ィー ル の 件 数 は97年

は51件 で あ っ た が,98年 は92件 に 増 加 し,そ の 合 計 額 も97年 の1,098億 ド ル か ら98年 に は3,595億 ドル と な り総 額 の61.3%を 占 め る に 至 っ た 。 特 に 98年 は 過 去 の メ ガM&Aの 最 高 額 で あ る 英ICIに よ る ユ ニ リ ー バ の 特 殊 化 学

部 門 で あ る オ ラ ン ダ,ク エ ス ト ・イ ン タ ー ナ シ ョナ ル の 買 収80億 ドル(97 年)を ヒ回 る100億 ドル 以 上 の 超 メ ガ デ ィ ー ル が6件 あ り・ ク ロ ス ボ ー ダ ー M&Aも100億 ドル台 に 突 入 した 。

第 三 に,ク ロ ス ボ ー ダ ーM&Aは 主 と し て 欧 米 を 中 心 に 進 ん で い る と い う こ と で あ る。 な か で も ア メ リ カ と イ ギ リ ス が 群 を抜 い て い る。 買 収 で は98年 ア メ リ カ が 前 年 比63.0%増 の1,459億 ドル で 最 大 で あ り,EUは 前 年2倍 増 の3,170億 ドル で あ る が,な か で も イ ギ リ ス が73.2%増 の1,086億 ドル,ド

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イ ツ が5倍 増 の700億 ド ル と な っ て い る 。 こ れ ら3国 の 突 出 は 超 メ ガ デ ィ ー ル の 代 表 で あ る 英BPの 米 ア モ コ 買 収(482億 ド ル) ,独 ダ イ ム ラ,.̲̲..ベン ツ の 米 ク ラ イ ス ラ ー 買 収(405億 ド ル)の 二 大 案 件 の 影 響 で あ る 。 売 却 で は ア メ リ カ が2,175億 ド ル(2.6倍 増),EUも73.6%増 加 し て2 ,224億 ド ル と な っ て お

り ・ イ ギ リ ス は1,010億 ド ル(2倍 増)とEUの な か で は 突 出 し て い る

。 日 本 は 買 収 ・ 売 却 ベ ー ス で98年 そ れ ぞ れ36億 ド ル,44億 ド ル で あ り 遙 か に 少 な

い 。

第 四 に,ク ロ ス ボ ー ダ ーM&Aの 業 種 で み る と,非 製 造 業 が1三 流 で あ る と い う こ と で あ る。 総 額 に 占 め る 割 合 は … 次 産 業 が15 .2%,=次 産 業 が 34・9%・ こ次 産 業 が49.9%で あ る 。 そ の 中 で は 金 融 が 前 年 比26 .1%増 の546 億 ドル と も っ と も 金 額 が 大 き く,次 い で 保 険(446億 ドル 〉,電 気 通 信(434億

ドル),電 気 ・ガ ス ・水 道(336億 ドル)と な っ て い る。 こ れ ら の 業 種 は 各 国 に よ る 規 制 が 厳 しか っ た 産 業 で あ り,各 国 の 規 制 緩 和 ・民 営 化 に よ っ てM&A が 促 進 さ れ た と い え る。

第 充 に,ク ロ ス ボ ー ダ ーM&Aを 行 う た め に は 標 準 化 さ れ た 会 計 制 度 ,株 式 交 換 制 度 な ど の 制 度 変 更 が 必 要 に な る と い う こ と で あ るiltiCi国際 的 な 会 計 制 度 と して は 米 国 基 準(SEC)と 欧 州 が 中 心 に 提 唱 す る 国 際 会 計 基 準(IAS)が あ る が,両 基 準 と も連 結 会 計 と 時 価 決 算 を ベ ー ス に して い る 点 は 共 通 し て い る 。 ア メ リ カ は 古 くか ら こ れ を 基 準 と して い た 。 欧 州 で は 時 価 会 計 は 古 くか ら 基 準 と し て い た が,連 結 会 計 はEUが1983年 に 連 結 決 算 の 指 令 を 出 し て お

り,各 国 は こ れ を 遵 守 す る 形 に な っ て い る 。 日本 も2000年3月 期 よ り新 会 計 基 準 を 導 入 す る こ と に よ り,日 ・米 ・欧 の 先進 三 地 域 が 時 価 ・連 結 会 計 ベ ー ス で あ る 程 度 ま で 横 並 び で 比 較 で き る こ と に な っ た 。 ま た 米 国 の 株 式 市場 に 上 場 す る 企 業 も増 加 して い る。 米 国 株 式 市 場 へ .ヒ場 す る に はSEC基 準 に よ る 会 計 報 告 が 義 務 づ け ら れ て い る の で3米 国 上場 企 業 に つ い て は 米 国 企 業 と横 並 び の 比 較 が 可能 で あ る 。 こ れ ら の 会 計 基 準 の 統 一化 に よ っ て 日本 企 業の 評 価 も容 易

に な り,日 本 に もM&Aを 促 進 す る こ と に つ な が る こ とに な る 。

ま た 欧 米 で はM&Aに 当 た っ て 株 式 交 換 制 度 を 用 い る こ と が 多 く な っ て い

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68商 経 論 叢 第36巻 第3号

る が,日 本 に お い て は こ れ ま で 株 式 交 換 制 度 は 認 め て な か っ た 。99年10月 の 商 法 改 正 に よ っ て 日本 で も株 式 交 換 制 度 が 認 め られ る よ う に な っ た 。 株 式 交 換 制 度 は 買 収 に 当 た り,買 収 企 業 と被 買 収 企 業 が 株 式 交 換 比 率 を 決 定 し,存 続 企 業 の 株 式 と交 換 す る の で,買 収 に 当 た り多 額 の 現 金 を必 要 と しな い の で,買 収 企 業 の 負 担 が 軽 減 さ れ る。 そ れ ゆ え こ の 制 度 もM&Aを 促 進 さ せ る と い え よ

う。 た だ し,株 式 交 換 制 度 は 同 … 市場 に ヒ場 して い る こ とが 条 件 な の で,ク ロ ス ボ ー ダ ー 取 引 で は 般 的 で な い が,ニ ュ ー ヨー ク 証 券 取 引 所 に 上 場 す る 企 業 も増 加 して い る の で,こ れ に よ るM&Aも 増 加 し て い る。 最 近 の メ ガ デ ィ ー ル で は,BPの ア モ コ 買 収,ダ イ ム ラ ー ベ ン ツ の ク ラ イ ス ラ ー 買 収,ボ ー ダ フ ォ ンの エ ア タ ッチ 買 収 は い ず れ も株 式 交 換 が 利 用 さ れ て い る。

③ 戦 略 的 提 携'Z)

グ ロ ー バ ル 企 業 の 国 境 を超 え る提 携 ・協 定 は,そ の 範 囲 が 広 が る につ れ て対 外 投 資 活 動 を補 完 し,企 業 の フ レ キ シ ビ リ テ ィ を 増 大 す る う え で 重 要 性 を増 して き て い る。 そ れ は,ジ ョ イ ン トベ ンチ ャ ー,ラ イセ ン シ ン グ,下 請 け,フ ラ ン チ ャ イ ジ ン グ,マ ー ケ テ ィ ン グ,製 造,技 術,R&Dな どの 協 定 な どが あ る。

こ れ らの 締 結 さ れ た 協 定 に は株 式 所 有 を含 む もの と含 ま な い もの が あ るが,90 年 代 に な っ て 急 速 に増 加 して い る 。 企 業 間 の 協 調 や 提 携 の な か で は と りわ け 戦 略 的 提 携 が 重 要 で あ る。 こ れ は技 術 変 化 が 激 し い 部 門,情 報 通 信 産 業 や サ ー ビ ス 産 業 に お い て 集 中 的 に 行 わ れ て い る 。 戦 略 的 提 携 は 長 期 的 な 観 点 か ら競 争 力 を 強 化 し よ う とす る も の で あ る。 そ れ は新 技 術,生 産 プ ロ セ ス,流 通 技 術 な ど の 開 発 を 共 同 で 行 う こ と に よ り巨 額 の 資 本 リス ク を 分 散 化 させ,製 品 開 発 費 用

を 削 減 し}開 発 時 間 を 節 約 し よ う とす る もの で あ る 。

半 導 体 産 業 で は,日 堂,テ キ サ ス イ ン ス ツ ル メ ン ト,三 菱 電 機 の 三 者 は共 同 して 大 容 量 半 導 体 メモ リ ー,1ギ ガ ビ ッ トのDRAMを 開 発 し,1000億 円 を ヒ 回 る 開 発 費 を 均 等 分 担 す る 。1988年 以 降 の 日 立 とTIの16,64,256Mビ ッ ト DRAMの 共 同 開 発 は 三 菱 を 加 え て 開 発 効 率 を 追 求 す る こ と に な る。 こ れ は 日 本 の 超LSI技 術 研 究 組 合,超 先 端 電 子 技 術 開 発 機 構(ASET)に み ら れ る よ う に 各 企 業 が 膨 大 な研 究 開 発 費 の 負 担 に 耐 え られ な くな っ て きて お り,国 家 政 策

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的 な支 援 ・援 助 が 不 可 欠 に な っ て きて い る こ とを も示 して い る〔瑚。 前 述 した ア メ リカのNII/GII構 想 もこの 一環 とい え よ う。

自動 車 産 業 に お け る排 ガス規 制 の 強化 と次 世代 型 の 低 公害 車 の 開発競 争 も巨 額 の 資金 を必要 と して いる ため他 の企 業 との 複雑 な連携 の動 きが み られ る。98 年6月 トヨ タはGMと 次 世 代 低 公 害 車 な ど環 境 技 術 全 般 で 相 互協 力 に合 意 し,99年4月 に は環 境 先 進技 術 車 の 共 同 開 発 ・研 究 に着 手 した。 トヨ タは そ の 間 にエ クソ ン と次 世 代 の低 燃 料 費 ・低 公 害 車 用 のエ ンジ ンや燃 料 のR&Dで 提携 してい る。 さ らに99年 に 人 って ダ イ ム ラー ・ク ラ イ ス ラー やVWに 対 し て排 ガス を浄化 す る環境 関連技 術 の供 与 を発表 した。 これ は 自社 で保 有 す る技 術 の 世界 的標 準 化 を図 る こ とで,今 後 の 開発 競 争 で優 位 に 立つ こ とを 目指 し,

また ラ イセ ンス収 入 に よ り開発 コス ト負担 を軽 減 しよ うと した もの で あ るll・}。

4.グ ロ0バ リ ゼ ー シ ョ ン の 問 題 点

A通 貨 危 機 ・金 融 危 機 ・経 済 危 機 の 発 生

70年 代 に始 ま る 資 本 主 義 世 界 経 済 の 危 機 に 対 応 して80年 代 に登 場 した 新 保 守 主 義 ・新 自 由 主義 路 線 に よ る 民 営 化 ・規 制 緩 和 は,市 場 原 理 主 義 を促 進 させ た 。90年 代 の グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン は,こ の 市 場 原 理 主 義 が 情 報 通 信 革 命 と 結 合 す る こ と に よ っ て 初 め て 可能 に な っ た と い え よ う。 グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン の 進 展 は ・方 で は ア メ リ カ 経 済 の 回 復 を も た ら した 。 ア メ リ カ 経 済 は92年 以 後GDP成 長 率2〜4%と い う成 長 を続 け て い る。 こ れ は 情 報 処 理 関 連 の 設 備 投 資 の 拡 大 に よ る もの で あ り,こ の 情 報 関 連 投 資 が ビ ジ ネ ス サ ー ビ ス 等 の 非 製 造 業 の 発 展 を も た ら した こ と に よ っ て い る。 ま た 情 報 化 関 連 投 資 に よ る サ ー ビ ス の 輸 出 拡 大 が こ れ を 支 え て い る 。 こ の 持 続 的 成 長 は財 政 収 支 を好 転 させ

,98 年 度 か ら財 政 は 黒 字 に な っ た 。 こ の ア メ リ カの 成 長 は 「ニ ュ ー エ コ ノ ミー 」 と 呼 ば れ,ア メ リ カ は80年 代 の 不 況 を 脱 し持 続 的 成 長 を 謳 歌 し て い る。 しか

し,ア メ リ カ の 貿 易 収 支 ・経 常 収 支 赤 字 は こ の 間m貫 して 増 え 続 け ,98年 に は そ れ ぞ れ2470億 ドル,2200億 ドル に達 して い る。 こ れ ら の 膨 大 な 赤 字 は 外 国 か らの 資 金 の 流 入 に よ っ て フ ァ イ ナ ン ス さ れ て い る 。 さ ら に90年 代 は ア メ

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70商 経 論 叢 第36巻 第3号

リ カ の ア ジ ア を 中 心 に 対 外 直接 投 資 も拡 大 し た 。 ア メ リ カ は 外 国 資 金 に よ っ て 国 際 収 支 の 赤 字 を賄 うだ け で な く,直 接 投 資 資 金 を も賄 っ て い る の で あ る 。 ア メ リ カ の 対 外 投 資 収 益 も98年 に は 赤 字 に 転 落 して し ま っ て い る。 こ の 結 果 ア メ リ カの 対 外 純 債 務 も拡 大 を続 け て い る。

こ れ らの こ と は 金 融 の 自 由 化 ・証 券 化 と相 ま っ て 国 際 的 な 投 機 資 本 の 活 動 を 活 発 化 させ,国 際 資 本 市 場 を 不 安 定 化 させ て い る 。 と い うの は ア メ リ カの 年 々 の 膨 大 な ドル 流 出 は 国 際 的 な 投 機 資 本 に 資 金 を供 給 し続 け る か らで あ り,ま た 対 外 債 務 の 膨 大 化 は 外 国 資 金 の 供 給 が ス トッ プす れ ば,直 ち に 証 券 や ドル の 暴

落 を も た らす こ と に な る か らで あ る 。

国 際 金 融 の 不 安 定 性 は,97年 タ イ の バ ー ツ の 暴 落 を 契 機 に ア ジ ア の 通 貨 ・ 金 融 危 機 と して 現 実 化 しだ'」。 こ の 危 機 の 特 徴 は,第 ・に,広 域 な 地 域 に 波 及

した と い う こ と で あ る 。97年 夏 の タ イ に 発 し た 通 貨 危 機 は,瞬 く 間 に マ レ ー シ ア な ど ア セ ア ンに 広 が り,そ れ は 香 港1韓 国 な ど ア ジ アNIES諸 国 に 波 及 し,さ ら に 日 本 の 金 融 危 機 と連 動 す る と い う よ う に き わ め て 広 範 囲 に 波 及 し た 。 第 一二に,現 在 の 金 融 危 機 は 通 貨 危 機,資 産 デ フ レ,銀 行 危1FSC,経 済 危 機 と い う種 々 の 危 機 が 複 合 的 に 重 な っ た 危 機 で あ る と い う こ とで あ る 。 危 機 は 通 貨 危 機 に 始 ま り,不 動 産,株 式 な どの 資 産 価 格 を 暴 落 させ,銀 行 の 不 良 債 権 を 増 大 させ,銀 行 の 破 綻 を増 大 させ る 。 銀 行 の 脆 弱 化 と破 綻 は 信 用 を ・挙 に 収 縮 さ せ,実 物 経 済 に 打 撃 を与 え る。 第 一{の特 徴 は 国 際 流 動 性 危 機 で あ る。 今 回 の 危 機 は ア ジ ア 経 済 に 対 す る信 認 を根 底 か ら崩 し,内 外 の 投 資 家 は ア ジ ア通 貨 資 産 の 回 収 に 走 りパ ニ ッ ク を 引 き起 こ した 。 国 内 の 預 金 取 付 け が 預 金 か ら現 金 へ の 転 換 で あ るの に対 して,外 国 の 場 合 は 国 内 資 産 か ら外 貨 資 産 へ の 転 換 で あ る 。 投 資 家 に よ る 外 貨 資 産 へ の 転 換 は 個 経 済 に と っ て 外 貨 準 備 に 対 す る攻 撃 で あ り,流 動 性 の 危 機 で あ る 。 第 四 に,金 融 危 機 が 民 間 資 本}噂 で 引 き起 こ さ れ た と い う こ と で あ る 。80年 代 の 累 積 債 務 危 機 が 各 国 の 公 的 セ ク タ ー に お け る 債 務 不 履 行 問 題 で あ っ た の に 対 し,今 回 の 危 機 に お い て は 国境 を越 え て 流 出 人 す る 内 外 の(投 機)資 本 も,ま た そ の 受 け 手 で あ る そ の 国 の 企 業 も銀 行 もそ の ほ と ん どが 民 間 資 本 で あ っ た 。 公 的 セ ク ター の 問 題 と 異 な り民 間 セ ク ター の 場 合

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は,無 数 の 交渉 当事者 が か か わ り,組 織 的 な対 応 は 困難 で あ る。

以 止の よ うな特 徴 を持 つ 今 回 の ア ジア の 金 融 危機 は80年 代 に展 開 す る ア ジ アの 金 融 の 自'由化 ・グロー バ リゼ ー シ ョンに よっ て大 量 に流 人す る海外 の ポー

トフ ォ リオ投 資 に よって 引 き起 こ され た もの で あ る。 ア ジ ア各国 の 金融 ・資 本 市場 は 規模 も小 さ く海外 か らの大 量の 短期 資 金 の流 人 に よっ てTバ ブ ルが 発 生 しやす く,ま た その 流 出 に よって 資産 価 格 の 暴 落が 起 きやす い 。 これ を防 ぐた め の危 機 管 理体 制 も ト分 に 整 って ない ア ジ ア諸 国で は,国 際 短期 資 本の投 機 的 行動 に翻 弄 され ざる をえ な い。

かか る金 融危 機 に対 して 日本,マ レー シア}香 港,台 湾,中 国 は 自力 で対 応 した が,韓 国,タ イ,イ ン ドネ シ アはIMF}三 導 で危 機 対 策 が な され た。IMF の処 方 箋は 高金 利 ・引 き締 め 政策,銀 行 市場 改 革,経 済構 造改 革の3つ か らな る。 しか しIMFの 対 策 は危 機 の個 々の 側 面 を 重視 し総 合 的 な把 握 とい う点 で 不 卜分 で あ り,結 果 と して か え っ て 危 機 を 深 化 させ て し ま っ た とい え る・1ド。 IMFの 借款 に は厳 しい 融 資 条 件(コ ンデ ィ シ ョナ リテ ィ)が 付 い て い る。

IMFの 融 資 条件 に イ ンフ レの 抑 制 が あ る。 今 回 の ア ジ ア 金 融 危 機 は イ ン フ レ で 引 き起 こ され た もの で は な く,銀 行 危 機 と通 貨 危 機 の相 乗 効 果の結 果 と して 為 替 レー トが急 落 し,そ の結 果 輸 人物価 が急 騰 した 。 イ ンフ レを抑 え るた め に は 国 内価 格 を ドげ る程 度 の金 融 引 き締 め を しな けれ ば な らない。 す で に景気 後 退 期 にあ り,債 務 超 過 で 企業 や 銀 行が破 綻 しつ つ あ る と きに,金 融 引 き締 め を す れ ば 景気 は 層 悪 化 し,金 融 危 機 が 激 化 す る こ と は 明 らか で あ る。 ま た IMFは 高金 利 が 資本 の流 幽 を防 ぎ通 貨 ド落 を最 小 限 にす る た め の 対 策 だ とす るが,金 融 シス テム と通 貨価 値の 信 頼 が揺 らいで い る と きには,禁 止的 な高 金 利 で なけ れ ば外 貨流 出 は防 げ ない。 また財 政 の健 全性 を保 つ とい う政 策 も不 況 を 一層 深 化 させ る。 外 国 銀 行 の融 資 の 大量 引 き揚 げ に よる金融 危 機 の 発 生 は, 国 内銀 行信 用 の収 縮 が 不 況 を生 んで い るの で あ り,国 内投 資 の急 減 に よっ て貯 蓄 ・投 資 バ ラ ンスを改 善 させ るの で あ る。 そ れ ゆ え財 政 引 き締 め は効果 が ない の であ る。 また 銀 行 危 機 に対 す る構 造 対 策 と して のBIS規 制 と して の 自己 資 本比 率8%と い う融 資 条件 も,金 融 機 関 が 資 本 が 不 足 して い る と ころへ 自 己

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72商 経 論 叢 第36巻 第3号

資 本 比 率 の 上昇 を 強 要 さ れ た の で,一 斉 に 信 用 収 縮 に な り,健 全 な 企 業 ま で 流 動 性 不 足 に 陥 っ て し ま っ た 。 多 くの 金 融 機 関 の 不 良 債 権 問 題 は マ ク ロ レベ ル の 問 題 で あ り,ミ ク ロ レベ ル の 自 己 資 本 比 率 の 規 制 で は 解 決 で き な い 。 こ の よ う な 行 き過 ぎたIMFの 融 資 条 件 は98年 に は ゆ る め られ た が,政 策 と して は 失 敗 で あ っ た 。 ま たIMFは 流 動 性 危 機 に 対 し,韓 国 で は 財 閥 改 革,イ ン ドネ シ ア で は ク ロ ー ニ ー(仲 間 内)ビ ジ ネ ス改 革 が 強 要 され た。 これ らの 問 題 は 今 回 の 金 融 危 機 と 直 結 し た 問 題 と は い え な い で あ ろ う。 こ の よ う なIMFの 処 方 箋 は,ア メ リ カ ン ・ス タ ン ダー ドを ア ジ ア に 直 接 適 用 させ よ う と した 点 に 最 大 の 問 題 が あ る と い え よ う。80年 代 以 降 急 速 に 発 展 した ア ジ ア 地 域 に,金 融 市 場 も資 本 市 場 も未 成 熟 な段 階 の 国 に 金 融 の 自 由 化 を 強 制 し,大 量 の投 機 資 金 を つ ぎ込 ん だ つ け を,IMFに よ る ス タ ン ダ ー ドで 解 決 し よ う とす る こ とが 無 理 で あ る の で あ る 。

B国 際 的 な労 使 対 立 の 激 化

グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ンの 世 界 的 展 開 は,大 規 模 な 雇 用 削 減 と賃 金 低 下 を も た ら して い る。 グ ロ ー バ ル 企 業 の 大 規 模 な リス トラ ク チ ャ リ ン グの 展 開 は,コ ー ポ レー ト ・ガバ ナ ン ス の 変 化 に よ っ て 大 き く変 容 して い る(17?。米 国 の 株 式 市 場 で は80年 代 以 降,個 人 部 門 の 株 式 投 資 が 市 場 で の 直 接 購 入 か ら ミ ュ ー チ ュ ア

ル ・フ ァ ン ド(株 式 投 資 信 託)や 年 金 を 通 じた 間 接 投 資 に 大 き く変 化 した 。 こ れ ら機 関 投 資 家 に よ る株 式 売 買 の 比 率 が 急 激 に増 加 して き て い る。 そ して これ ら機 関投 資 家 が 株 主 と して 社 外 重 役 を 送 り込 み 経 営 者 を 監 視 す る よ う に な っ た の で あ る 。 しか も経 営 者 の 所 得 の 多 くが ス トッ ク オ プ シ ョ ン とい う 自社 株 で 支 払 わ れ る よ う に な っ た 。 機 関 投 資 家 の 送 り込 む社 外 重 役 の 目 的 は 企 業 業 績 の 向 r̲で あ り,そ れ に よ る株 価 の 上 昇 で あ り,CEOも 株 価 が 上 昇 しな け れ ば 自分 の 所 得 が 増 え な い 。 こ の よ う な プ ロ セ ス で 経 営 者 が 実 行 した の が ダ ウ ンサ イ ジ

ン グ と ア ウ トソー シ ン グで あ る。 経 営 者 は 中 間 管 理 職 の ダ ウ ン サ イ ジ ン グ に よ っ て 組 織 を フ ラ ッ ト化 し,活 動 分 野 を 集 約 し競 争 力 の あ る 部 分 に 集 中 し,そ の ほ か を外 注 に 出 す こ と に な っ た 。 こ の こ とは 労 働 者 に と っ て は正 規 従 業 者 か

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らパ ー ト労 働 者 へ の 労働 力 の フ レキ シブ ル化 を もた らす こ とに な った。 そ して 景 気 に左 右 され る こ とな く労働 者 の雇 用 削 減が 行 われ る こ とに もな る。 この こ

とは賃 金 に跳 ね返 り賃金L昇 圧 力 が 減 少 し賃金 が圧 追 され る。

さ らに,グ ロー バ ル企 業 の世 界的 展 開 は,海 外 か らの逆 輸 入 を増 大 させ,新 興1二業 国 の輸 入 と競 合す る低技 術 ・低 賃 金労 働 者 の 雇用 と賃 金 を圧 迫 す る。 グ

ロー バ ル企業 の 海外 生産 に よる産 業 空 洞化 に よ る雇用 減 少 の うえ に,逆 輸 入 に よって雇 用 機 会が よ り減 少 す るの で あ る。 これ らの こ とは労 働 者 間 競 争 を激 化 させ,失 業 の 上昇,所 得 の 不安 定 化,所 得 分 配 の不 平 等化 を生 み 出 して い る。

また ア ジアの 開発 途 上国 にお い て は,金 融 危機,通 貨危 機 が 大 量 の 失業 者 を 生 み 出 し雇 用危 機 が 発 生 して い るUKI。特 にIMFの 管 理 下にあ る韓 国,タ イ,イ

ン ドネ シ アで 社 会 的混 乱 が 顕 著 に現 れ て い る。70年 代 以 降 の 高 度 成 長 に よっ て 労 働 力 不 足 にあ っ た韓 国 に お い て は,98年 に入 っ て 破 産 した 企業 は2万 社 以 上 に達 し,そ の う えほ とん どの 企 業 で リス トラ が 始 まっ て い る。98年 春 の 段 階 で150万 人 と推 定 され た失 業 者 は,そ の 後 も増 え続 け て い る。98年 始 め の 調 査 で は韓 国 の トップ30社 中の12社 は20〜30%の 人 員 削減 を望 ん で い る し,政 府 も公 務 員の10%削 減 を約 束 して い る。 こ う した 状 況 の なか で,特 に 女性 の 失 業 者,離 職者 を増 大 させ,若 年 層,と りわ け新 卒 者 の雇 用 機 会 を狭 い もの に して い る。韓 国で は雇 用保 障 と引 き替 え に賃 金 引 き ドげ を受 け入 れ る動 きが広 が っ てい る。

タ イで は98年 春 には 失業 者 が96年 の3倍 で あ る200万 人 に達 して い る。 タ イの場 合,他 の 国 よ りも農村 の過 剰 人 口吸 収 力 が 大 きいが,東 北 部 の 農村 の病 弊 が激 し く借 金棒 引 きの 農民 デモ も伝 え られ て い る。 最 悪 の ケー ス は イ ン ドネ シアで あ る。好 況期 に も都 市にお け る富 裕 層 の 消 費 ブ ーム や高 層 ビ ルの林 立 と コ ン トラ ス トをなす,街 頭 にた む ろす る多 数 の 若 者 の姿 が あ っ た。 イ ン ドネ シ ア の 公 式 統 計 で は97年 の 失 業 率 は4〜5%で あ る が,91=万 人 の 労 働 力 の 38%は 不 完 全就 労 でfそ の週 労 働 時 間 は35時 間 未満 とみ られ て い た。 また15 歳 か ら24歳 の 若 年労 働 者 は 全体 の20%に 相 当す るが,こ の年 齢 層 の失 業 者 は 全失 業 者 の70%に の ぼ って い る。 イ ン ドネ シア経 済 の 落 ち込 み は最 悪 で,ル

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