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〈論 説〉
トラ ッ ク輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩 和
齊 藤 実
目 次
は じめ に
序 成長 の軌跡 1章 競争 的体質 2章 新 たな事業展 開
3章 トラ ック輸 送産業 の特殊 な構造 4章 規制 緩和 と産業 の実態
は じ め に
最 近 わが 国 にお いて規 制緩 和 が極 めて 注 目 され て お り,規 制 緩 和 の推 進 が経 済 政策 の中心 的 な課題 とな って い る。 周 知 の よ うに,交 通 産業 は歴 史的 に政 府 に よ る規 制 が 行 わ れ て きた産 業 で あ り,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 もそ の例 外 で はな か った。 トラ ック輸 送産 業 は安 全 規制 を含 あ て さま ざま な政府 に よ る規 制 が課 せ られ て お り,参 入 や運 賃 に関 す る経 済 的 規制 も引 き続 き行 わ れ て い る。従 っ て トラ ック輸 送産 業 は,現 在 進 め られ て い る規 制 緩和 政 策 の典 型 的 な対 象産 業 とな って い るので あ る。
と ころで,こ の トラ ック輸 送 産 業 は戦 後 か ら現 在 に至 るまで の モ ー タ リゼ ー シ ョンの過 程 で急 激 な成 長 を遂 げて お り,産 業 そ れ 自体 わ が国経 済 の輸 送 シス テ ムを支 え る重 要 な役 割 を担 って い る。 そ の産 業 に対 す る従 来 の規 制 の仕 方 が 変更 され る こ とは,産 業 自体 を大 き く変 化 させ る 可能性 が考 え られ る し,さ ら にわ が国 全体 の輸 送 システ ムの あ り方 に も大 きな影 響 が 出 て くる もの と予 想 さ れ る。
16商 経 論 叢 第31巻 第4号 f301)
規 制緩 和 を さ らに推 進 すべ きで あ る との 主張 に よれ ば,ト ラ ック輸 送 産業 に 対 す る従 来 の規 制 を取 り外 して 自由化 す る こ とでr当 該 産業 内 の競 争 が 促進 さ れ て よ り効 率 的 にな り,そ れ が わが 国経 済 全体 に大 きな プ ラス にな る とい う。
逆 に規 制 緩 和 に反対 す る主張 によ れば,過 度 の規 制 緩 和 は健 全 な トラ ック輸 送 産 業 の発 展 を阻 害 す る とい う。 この よ うに,規 制 緩 和 を推 進 す べ きか,規 制 を 維 持 す べ きか の 議論 は盛 ん に行 われ て い る もの の,し か しなが ら,そ の 前提 と な るべ き トラ ック輸 送 産 業 それ 自体 の構 造 や実 態 につ いて の分 析 は さ ほ ど積 極 的 に行 われ て いな い。
こ う した なか で現 在求 め られ て い る こと は,ト ラ ック輸送 産 業 を0般 的 な産 業 論 の視 点で平 板 に把握 す る ことで は な く,ト ラ ック輸送 産 業 の特 殊 な構 造 を で き る だ け実 態 に即 して 客 観 的 に分 析 す る こ とで あ る。 トラ ック輸 送 産 業 と い って も,そ の構 造 は多 様 で 複雑 で あ り,相 反 す る対 照性 を も って錯綜 した構 造 を も って い る。 単な る市場 メ カニ ズ ムだ けで は把 握 しきれ な い側 面 も数 多 く
も って い る。
そ こで小 論 の 目的 は,現 在 行 われ て い る規制 緩 和 の議 論 を踏 まえ た うえ で, 改 めて現 状 にお け るわが 国 の トラ ック輸 送 産業 の構 造分 析 を行 う もので あ る。
す で に,ト ラ ック輸 送 産業 を 対象 と した先駆 的 な分 析 が行 われ て い(1)。 しか し なが ら,時 代 を象 徴 す る規 制 緩 和 の流 れ のな か で新 た に現 代 の トラ ック輸 送産 業 の構 造 を分 析す る必要 性 に迫 られ て い る。 小 論 は,こ の よ うな地平 に た って 現 代 に お け る トラ ック輸 送 産 業 の構 造 をめ ぐる分 析 を展 開 し,な お かっ 現 状 に お け る トラ ック輸 送 産業 の規 制緩 和 にっ いて も独 自の分 析 を加 え よ うとす る も の で あ る。
あ らか じめ,小 論 の構 成 につ い て 明 らか に して お きた い。 まず序 で は,分 析 の対 象 とな る トラ ック輸 送 産 業を概 観 す る。 その 際 の キ ー ワー ドは輸 送 機 関 と して さ らに産 業 と して の 「成 長 性 」 で あ る。 第1章 は,ト ラ ック輸 送 産 業 の競 争 的体 質 に っ いて 分析 す る。 規 制 緩 和 との関 係 で 言 え ば,規 制 が行 われ て い る 当該産 業 に お いて競 争 制 限 的 な状 態 にな って い るのか が課 題 とな る。 わ が国 の トラ ック輸送 産 業 で は,対 照 的 な二 っ の輸 送 市場 が存 在 してお り,し か も質 的
(300) トラ ック輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩和17
に異 な る競 争 状 態 が形 成 され て い る。 こ う した トラ ッ ク輸 送 産 業 の競 争 体 質 の 実 態 を 明 らか に す る。
第2章 は,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 に お け る新 た な 事 業 分 野 の 可能1一 に つ い て で あ る。 停 滞 的 な 産 業 か らは,新 た な事 業 展 開 は行 わ れ に く い も の と考 え られ る。
逆 に競 争 的 な 体 質 の 産 業 で は,創 意 工 夫 が な さ れ て 新 規 の 事 業 が 活 発 に 行 わ れ る。 そ こ で,こ う した方 面 で の トラ ッ ク輸 送 産 業 の 実 態 を 明 らか に し,新 規 事 業 の 方 向 性 と将 来 に お け る可 能 性 に つ い て 分 析 す る。
第3章 は,ト ラ ック輸 送 産 業 が もっ 特 殊 な 構 造 に つ い て で あ る。 わ が 国 の ト ラ ッ ク輸 送 産 業 は,一 般 の 市 場 メ カ ニ ズ ム だ け で は理 解 で き な い特 殊 な側 面 を 構 造 的 に持 っ て い る。 そ れ は 具 体 的 に は,傭 車 制 度 で あ り,過 積 載 ・過 労 運 転 で あ る。 こ う した特 殊 な仕 組 み の実 態 を 把 握 し,そ の発 生 メ カ ニ ズ ム を理 解 す
る。
第4章 は,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 に お け る規 制 緩 和 の 進 捗 状 況 を 把 握 す る。 規 制 緩 和 は あ くま で 「現 在 進 行 形 」 で あ り,現 時 点 で は そ の 方 向 性 に っ い て 明 確 な 結 論 は 出 て い な い。 そ こ でt現 時 点 ま で の 規 制 緩 和 を め ぐ る推 進 派 と維 持 派 の 論 点 を 整 理 す る。 さ らに これ ま で の 各 章 の 分 析 を踏 ま え て,現 時 点 で 考 え られ
る トラ ッ ク輸 送 産 業 に対 す る規 制 緩 和 の影 響 に つ い て 分 析 を行 う。
注
(1)ト ラ ック輸 送 産 業 を対 象 と して産 業組織 論 分 析 を行 った もの と して,村 尾 質
『貨 物輸送 の 自動 車化 一戦後 過程 の経済分 析 一一』(白 桃書房,1982年),同 『道 路貨 物輸送』(晃 洋 書房,1989年),宇 野 耕 二 「道路 貨物輸 送」中西 健一編 『現代 日本 の 交通 産業』(晃 洋書 房,1984年)が あ る。 また トラ ック輸送産 業 の実 態 を分 析 した もの と して,野 村宏 『輸送 産業』(東 洋経済 新報社,1980年)さ らにマー・ケテ ィ ン グの視点 か ら分析 した もの と して中 田信 哉 『運輪 業 の マー ケテ ィングー トラ ック 業 の 市場競争 をめ ぐって一」(白 桃書 房,1984年)が あ る。
序 成長 の軌跡
わ が 国 に お け る トラ ッ ク 輸 送 産 業 の 全 体 像 を 把 握 す る の に重 要 な 点 は,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 の 「成 長 性 」 を 認 識 す る こ と で あ る。 こ こで の トラ ッ ク輸 送 産
18商 経 論 叢 第31巻 第4号 0299)
業 の 「成 長 性 」 と は,二 つ の 意 味 を 含 ん で い る。 ま ず 一 っ に は,輸 送 手 段 と し て トラ ッ ク が 輸 送 機 関 相 互 の 競 合 関 係 の な か で 常 に 優 位 を 保 って 貨 物 輸 送 量 を 急 激 に拡 大 し,他 の 輸 送 機 関 を 大 幅 に 後 退 さ せ る ほ ど成 長 力 を持 っ て い る こ と で あ る。 さ ら に∴ つ に は,そ の 過 程 は 同 時 に産 業 と して トラ ッ ク輸 送 産 業 が 急 激 に成 長 す る こ と で あ って,わ が 国 の 交 通 産 業 に お い て 当 該 産 業 が 重 要 な 位 置 を 占 め る よ う に な っ た 。
第 二 次 世 界 大 戦 以 降 の わ が 国 に お け る交 通 の 大 き な 変 化 は,モ ー タ リゼ ー シ ョ ンの 大 幅 な 進 行 で あ った 。 道 路 交 通 の 急 激 な発 達 は,旅 客 輸 送 に お い て 自 家 用 車 が 急 速 に 普 及 し,貨 物 輸 送 に お い て トラ ッ ク輸 送 が 大幅 に躍 進 し た の で あ る。 か つ て 独 占 的 な大 量 輸 送 手 段 で あ った 鉄 道 は,こ れ に よ って 人 幅 な 後 退 を 余 儀 な く さ れ た の で あ る。 図1は わ が 国 に お け る貨 物 輸 送 の輸 送 機 関 分 担 率 の 推 移 が 示 さ れ て い る。 こ の 図 に は トラ ッ ク の 輸 送 機 関 と して の 優 位 性 が 明 ら か に さ れ て い る。 トラ ッ ク(営 業用 トラ ックお よび 自家用 トラ ック)は,第 二 次 大 戦 後 か ら現 在 に 及 ぶ わ が 国 の 経 済 成 長 の過 程 に お い て,貨 物 輸 送 全 体 に 占 め る ウ
エ イ トを 大 幅 に拡 大 して い る。 トラ ッ ク は輸 送 ト ン数 で は実 に90%を 越 え て お り,輸 送 ト ンキ ロで は50%に 達 して い る。 トラ ッ ク は 短 距 離 ・中 距 離 の 輸 送 を 得 意 と す る。 こ の た め,輸 送 距 離 を 加 え て輸 送 トンキ ロで は,長 距 離 輸 送 を 得 意 とす る内 航 海 運 が 大 き な ウ エ イ トを 占 あ て い る。 しか し,そ れ で も トラ ッ ク
は輸 送 トン キ ロ の 半 数 以 上 を 担 って い る の で あ る。
か つ て 輸 送 の 主 役 は鉄 道 で あ った 。 貨 物 輸 送 に お い て も鉄 道 に よ る独 占状 態 が 形 成 さ れ て い た。 図1で 示 され る よ う に,1955年 の 時 点 で は鉄 道 の輸 送 分 担 率 は50%を 越 え て お り,鉄 道 は か つ て の 輸 送 独 占 の 残 津 を 色 濃 く残 して い た。
しか し,そ の 後 鉄 道 輸 送 の 凋 落 ぶ り は 目 を 覆 わ ん ば か り の もの が あ る。 トラ ッ ク輸 送 の 躍 進 の 陰 に 鉄 道 輸 送 は 衰 退 を 余 儀 な く さ れ,わ が 国 の 貨 物 輸 送 は ト ラ ッ ク が 支 配 的 な 輸 送 機 関 と して 君 臨 す る よ う に な っ た の で あ る。
しか も注 目 す べ き点 は,ト ラ ック輸 送 で も 自家 用 トラ ッ ク(一 般 の企業 が保 有 す る トラック)の 割 合 が 減 少 して い る の に 対 して,営 業 用 トラ ッ ク(ト ラ ック輸送 産 、業を構成 す る トラ ック運 送業 者 が保有 す る トラ ック)の 輸 送 す る割 合 が 急 激 に拡 大
(298)
(1)
1955
1965
1975
195
1993
(注) L27
1955
19h5
1975
1985
輸 送 ト ン数
トラ ッ ク輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩 和!9
図1輸 送 機 関 分 担 率 の 推 移
(19.2%)
(25.4'%,,}
(24.9%)
(33.8"%)
(38.8%)
02040
国 内 航 空 は0.0で あ る。
輸 送 ト ン キ ロ
60 80
口 営 業 用 トラ ッ ク X8.4%)
i‑.【 ■コr隊 腓 ラ ッ ク 鉄 道
E]内 航 海 運
1(}0(%)
蜘
一 5.6%)tit
(F7.1r/o:圃(35・7%)
\
/(12.1%)
n‑
(14・噸(30・5%)(43・4り の 七
マ ー 一/
(192%)
・≒ 魏
轡1毒(13'%)・(50・9%)
、\ \ \
(31.6%)
響}L騰 茎'燗 露 (159%)(4.9%)(47.6%)
・幽 盈爵 ・畳
\ \ \
(38.3"x%
藻3遷:1:(43・7%)
FiIr,曜 匿1■
口 営業用 トラ ック 國 自家 用 トラ ック
■ 鉄道 [コ内航海 運
1993
020406080100(%)
(注)国 内 航 空 は1955,65年0.0で 以 降0.1で あ る。
(資料)『 陸 運 統計 要 覧』 よ り作 成
し て い る こ と で あ る 。 前 掲 の 図1に 示 さ れ て い る よ う に,輸 送 ト ン 数 輸 送 ト ン キ ロ と も に 同 じ く 拡 大 傾 向 を 示 し て お り,現 在 で は 営 業 用 ト ラ ッ ク が 両 者 に お い て ほ ぼ4割 弱 を 占 め て い る 。 輸 送 ト ン キ ロ で は 長 距 離 輸 送 が 多 い 営 業 用 ト
20商 経 論 叢 第31・ 巻 第4号 0297)
図2ト ラ ック輸送産 業 の売上 高の推 移
千 億 円 130 120 110 app 90 80 つ近 70
60 範50
40 30 20 10 0
19851986198719881989199(}19911992 (年 度) (資 料)『 陸 運 統 計 要 覧 」 よ り作 成
5%1 m売}=高
・圏■ 一 増 加 率 1a
5 n 5
ラ ッ クが 自家 用 トラ ッ クを 人 幅 に 上 回 っ て伸 び て い る。 この よ う に,一 一般 の 自 家 用 トラ ッ ク の 輸 送 に 対 して,ト ラ ッ ク運 送 業 者 に よ る営 業 用 トラ ッ ク の 輸 送
が 拡 大 して い る の で あ る。
トラ ッ ク が 支配 的 な輸 送 機 関 と な りrな お か つ 営 業 用 ト ラ ッ クが 伸 張 す る過 程 は,同 時 に ト ラ ッ ク輸 送 産 業 が 急 激 に成 長 す る過 程 で も あ っ た 。 図2は ト
ラ ッ ク輸 送 産 業 の 売 上 高 の 推 移 が 示 さ れ て い る。1980年 代 後 半 か ら現 在 に 至 る ま で 一 貫 して売 上 高 が増 加 して い る。 現 在 わ が 国 経 済 は深 刻 な 不 況 を 経 験 して い るが,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 の 全 体 の 売 上 高 は対 前 年 増 加 率 は落 込 ん で い る も の の 依 然 と して 増 加 して い る。 ち な み に1992年 度 の 売 上 高 現 在 は12兆1000億 円 に達 して お り,ま さ し く一一っ の 大 き な 産 業 と して 成 長 して い る。
さ ら に 表1は,ト ラ ッ ク 輸 送 産 業 と そ の 他 の 交 通 産 業 の 規 模 を 比 較 し た も の で あ る。 他 の産 業 に 関 して の統 計 デ ー タ は決 して1・分 で は な い が,あ る程 度 の 比 較 に耐 え う る もの で あ る。 この よ う に 比 較 して み る と,交 通 産 業 の 貨 物 輸 送 部 門 に お い て トラ ッ ク輸 送 産 業 が 突 出 して い る こ とが 明 らか に な る。そ れ は12
(296)
兆 円 を 越 え る売 上 高 だ け で な く,事 業 者 数 で も4 万 を 越 え て トッ プ で あ る
し,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 が 抱 え る雇 用 は100万 人 を 突 破 して い る。 この よ う に わ が 国 の トラ ッ ク輸 送 産 業 は,他 の 交 通 産 業 の 追 随 を 許 さ な い ほ ど の 大 き な 産 業 規 模 を 誇 る ま で に 成 長 し て い る の で あ る。 わ れ わ れ は トラ ッ ク
トラ ッ ク輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩 和21
表1運 輸 関連産業 の比較
業 種 営 業収入
(億 円) 事業者数 従業員数 (千人) ト ラ ッ ク 運 送 業 121,000 42,308 1,132*
内 航 海 運 業 11,454 6,295 43**
JR貨 物 2,046 1 12
H
港 湾 運 送 業 12,200 1,080 65
鉄道貨物運送取扱業
㎜
倉 庫 業
3,472 1 782 10
16,525 ,4,5851 107 (注)1.1993年 末 現 在 。 た だ し,*は92年 末 現 在,**は92
年10月 現 在 。
2.内 航 海 運 の 営 業 収 人 は,営 業 収 入 報 告 の あ っ た 事 業 者1649社 の 合 計 値 。
(資 料)『LOGISTICSNOW'95』
輸 送 産 業 の規模 と して の大 きさを改 あて認 識 す る必 要 が あ る。
しか し,こ う した輸 送 手 段 と して の トラ ックの拡 大,産 業 と して の トラ ック 輸送 産 業 の成 長 は,同 時 に重 大 な外 部 不経 済 を拡大 して い る こと も無視 で きな い事 実 で あ る。 過 度 の 自動 車 へ の依 存 と道 路 整 備 の相 対 的 な遅 れ によ って,深 刻 な交 通 渋 滞 が発 生 す る と と もに,交 通 事故 も深 刻 の度 合 い を増 して い る。 さ
らに 自動 車 の走行 に よ る排 気 ガ スの増 加,そ れ に よ る大 気汚 染,地 球環 境 問題 も深 刻化 して お り,ま さ に現 在地 球 的規 模 で の対 応 が必要 とな って い る。
こ う した なか で,1980年 代 末 か らわ が国貨 物 輸 送 の過 度 な トラ ック輸 送 へ の 依 存 を政 策 的 に是正 しよ うとす る動 きが み られ る。運 輸 省 が提 唱 す る 「モ ー ダ ル シ フ ト」 政 策 が そ れ で あ る。 これ は貨 物 輸送 にお いて トラ ックか ら鉄 道 や 内 航 海 運 に シフ トしよ うとす る もので あ るが,運 輸 省 の提 唱 に もかか わ らず5現
(2)
実 的 に は トラ ッ クか ら他 の輸 送 機 関 へ の 大 幅 な転 換 は進 ん で い な い。 外 部 不 経 済 の 拡 大 と い う 深 刻 な 問 題 を は ら み な が ら,わ が 国 の 貨 物 輸 送 に お け る ト ラ ッ
ク へ の 依 存 は基 本 的 に変 わ りが な い 。 そ して,ト ラ ック輸 送 産 業 が 今 後 と もわ が 国 の 輸 送 シ ス テ ム を 支 え る重 要 な 産 業 で あ る こ と に は依 然 と して 変 わ り な い
の で あ る。
22商 経 論 叢 第31巻 第4号 (295)
注
(2)モ ー ダ ル シ フ ト政 策 の 問 題 点 に っ い て は,藤 井 健 「貨 物 輸 送 と エ ネ ル ギ ー 問 題 」
『季 刊 輸 送 展 望 』No.223,1992年 夏 号,26‑一 一34ペ ー ジ 。
第1章 競争 的体質
交通 産 業 は歴 史 的 に規制 の対 象 とな って お り,ト ラ ック輸送 産 業 も この例 に 漏 れ ず に規 制 が な され て きた。 規 制 は多 か れ少 なか れ競争 制限 的 に作用 し,当 該 産 業 に お け る事 業 者 間 の競 争 を弛 緩 させ る働 きを す る と考 え られ て い る。
従 って,規 制 が行 わ れ るなか で 自由競争 が阻 害 され て,効 率 性 追求 が お ろそか にな る と考 え られて い る。 しか し,ト ラ ック輸 送 産 業 で は伝 統 的 に規制 が行 わ れ て きた産 業 に もか か わ らず,輸 送 市場 に お い て競 争 制 限 的 に な って は い な い。 む しろ,政 府 によ る規制 が行 われ て きた に もかか わ らず,輸 送 市場 自体 は 競 争 的 で あ る。 ここで は トラ ック輸 送 産 業 の全 体 的 な構 図 を明 らか にす るなか で,そ の競 争 的 な体 質 を 分析 す る。
第1節 新 規 参 入 の 動 向 1.市 場 区 分
トラ ッ ク輸 送 産 業 を 分 析 す る際 に注 意 しな け れ ば な ら な い点 は,ト ラ ッ クの 輸 送 市 場 が 単一 の市 場 で は な く}基 本 的 に性 格 の 異 な る2っ の 輸 送 市場 か ら構 成 され て い る こ とで あ る。 具 合 的 に は,一 般 ト ラ ッ ク運 送 業 者 に よ って 形 成 さ れ る輸 送 市 場 とa特 別 積 合 せ 業 者 に よ っ て 形 成 さ れ る輸 送 市 場 が 並 存 して い る。 一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 が 提 供 す る輸 送 サ ー ビ ス と は,原 則 的 に一 人 の 荷 主 に 対 して 一 台 の トラ ッ ク を 貸 切 の 形 態 で 行 う もの で あ る。 これ に対 して特 別 積 合 せ 業 者 が 供 給 す る輸 送 サ ー ビ ス は,輸 送 単 位 の 小 さ な 複 数 の 荷 主 の 貨 物 を 一 台 の トラ ッ ク に積 合 せ(混 載)し て 行 う もの で あ る。
トラ ッ ク輸 送 市 場 に お い て こ う した 区 分 が な され る の は,政 府 の 規 制 に よ る トラ ッ ク運 送 業 者 の 事 業 区 分 に よ る もの で あ る。 す な わ ち,わ が 国 の トラ ッ ク 運 送 業 に お け る 事 業 区 分 は,1951年 に施 行 さ れ た 「道 路 運 送 法 」 に よ って,ト
(294) トラ ッ ク輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩 和23
表2一 般 と特 別積合 せの事業 者の比較
事 業 者 数 営 業 収 入
一 般 トラ ッ ク運 送 業 39,627(100.0) 8兆5,017億 円(100.0) 特 別 積 合 せ運 送 業 278(0.7) 1兆9,197億 円(22.6)
(注)事 業 者 数 は1993年 度 の 数 値,営 業 収 入 は1990年 度 の 数 値 。 事 業 別 の 営 業 収 入 は90年 度 ま で しか 明 ら か に さ れ て い な い。 カ ッ コ は
般 を100と した 指 数 。 (資 料)『 陸 運 統 計 要 覧 』
ラ ック運送 業 は一 般 区域 貨 物 自動 車運 送 事 業(区 域 トラック事業)と 一般 路 線 貨 物 自動 車 運送 事 業(路 線 トラック事業)の 二 っ事 業 免 許 が与 え られ た。 この事業 区分 に基 づ いて それ ぞ れ輸送 サ ー ビスが提 供 され て,輸 送市 場 が形 成 され たの で あ る。 その後1990年 に いわ ゆ る物 流 二 法(「 貨物 自動 車運送事業法」および 「貨 物運送取扱 事業法」)が施 行 され,こ の うち 「貨物 自動 車運 送 事 業 法」 に よ って 従 来 の事業 区分 が変 更 され,一 般 区域 貨 物 自動車 運 送 事 業 が一 般貨 物 自動車 運 送 事 業(一 般 トラック運送 事業)に,一 般 路 線 貨 物 自動 車 運送 事 業 が特 別 積 合 せ運 送 に名 称 が変 更 され た。 事 業規 制 の名称 が変 更 され た が,基 本 的 に性 格 の異 な る 2っ の トラ ック運 送 事業 が認 め られ て よ り,そ れ に伴 って 引 き続 き2っ の輸 送 市場 が形 成 され て い る こ とに は変 わ りない。
2っ の 輪 送 市 場 の規 模 は表2に 示 され て い る。 業 者 数 で は圧 倒 的 に一 般 ト ラ ック運 送 業者 が多 い。 しか し,特 別 積 合 せ運 送 業 は事 業 者 が極 端 に少 な い も の の,営 業 収入 で は一 般 トラ ッ ク輸 送 業 の2割 以 上 に達 して い る。 以下 で は, 一 般 トラ ック運送 業 と特 別 積 合 せ の 市場 区分 に従 って分 析 を行 う。
2.一 般 トラ ック運 送業 の事 業 者増 加
市場 が 競争 的で あ るか否 か を判 断 す る基 準 の一 つ と して,産 業 にお け る事 業 者 の新 規 参 入 の状 態 が考 え られ て い る。 一 般 的 に は,新 規参 入 が積極 的 に行 わ れ る ほ ど市場 が競 争 的 で あ る と考 え られ て い る。 そ こで,事 業 者 数 で は トラ ッ ク輸送 産 業 の主 要 な部 分 を 占 め る一 般 トラ ック運送 業 か ら事 業 者 数 の動 向 をみ て み よ う。
24商 経 論 叢 第31巻 第4号
図3ト ラ ッ ク 運 送 業 者 数 の 動 向 4500{)
40000 35000 ,30000
棄25・ 嚥 … 灘 鉾慰}編 騰
姦2・ …i
1500 10000
5000 01
8081828384858687888990919293 (年 度)
(注)「 そ の 他 」 に は,特 別 積 合 せ,特 定,霊 枢 が 含 ま れ る (資 料)『 陸 運 統 計 要 覧 』 よ り作 成
(293)
口 ・般 目 その他
図3は わ が 国 に お け る トラ ッ ク運 送 業 者 数 の 全体 の 動 向 が 示 さ れ て い る。 こ れ に よ る と,ト ラ ッ ク運 送 業 者 数 は 現 在 に 至 る ま で0貫 して 増 加 して い る こ と が わ か る。 しか も,そ の 増 加 は も っぱ ら一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 に よ る もの で あ る。 一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 は こ こ2年 ほ ど は毎 年1000事 業 者 越 え る ペ ー ス で 増 え て い る。 ち な み に,1993年 度(1994年3月 末)の 時 点 で わ が 国 全 体 で トラ ッ ク運 送 業 者 数 は4万3,450業 者 に達 して お り,そ の うち 一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 が3万9,627業 者 で あ り,全 体 の91.2%を 占 め て い る。 この よ う に,わ が 国 の トラ ッ ク運 送 業 者 の 圧 倒 的 な部 分 を 占 め て い るの は一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 で あ
(3)
り,現 在 ま で 一 貫 して 増 加 を 続 けて い る。
一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 の 増 加 に 関 して
,次 の 点 を 注tす る 必 要 が あ る。 す な わ ち,一 般 トラ ッ ク運 送 業 は景 気 の 変 動 に 関 係 な く事 業 者 数 が 一 貫 して増 加 し て い る こ とで あ る。 一 般 的 に は,好 況 期 に お い て 利 益 の 拡 大 が 見 込 ま れ る こ と か ら新 規 参 入 が 盛 ん に な り,逆 に 不 況 期 に な る と新 規 参 入 が 減 少 した り,倒 産
(292)
者数)
トラ ッ ク輸 送 産 業 の 構 造 と規 制 緩 和25
図4規 模 別一般 トラ ック運送 業者数 の動 向 2000
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(年 度) (資料)『 陸 運 統 計 要 覧』 よ り作 成
が 増 加 した り して,市 場 か らの 撤 退 者 が 相 次 ぐ もの と考 え られ る。 しか し,一 般 トラ ッ ク運 送 業 に 関 して は,景 気 変 動 に 関 係 な く,1980年 代 末 か ら1990年
に至 るバ ブ ル 経 済 を 経 験 した好 況 期 に お い て も,90年 以 降 の ポ ス トバ ブ ル の不 況 期 に い て も,一 貫 して増 加 傾 向 を 続 け て い る。む しろ,一 般 の予 想 と は逆 に, 一 般 トラ ッ ク 運 送 業 に お い て は,不 況 期 の ほ う が 事 業 者 の 増 加 の テ ン ポ が 強
ま って い る の で あ る。 こ の 点 は後 の 展 開 に お い て 重 要 な ポ イ ン トと な る。
で は ど の よ う な 性 格 を も っ 一 般 ト ラ ッ ク運 送 業 者 が 増 え て い る の で あ ろ う か 。 改 め て 指 摘 す る ま で もな く,ト ラ ッ ク輸 送 産 業 は典 型 的 な 中 小 企 業 の 業 種 で あ る。わ が 国 に お け る 「中 小 企 業 基 本 法 」の定 義 に 従 え ば,中 小 企 業 と は 「資 本 金1億 円 以 下 な ら び に従 業 員300人 以 下 」 で あ り,こ れ に 該 当 す る一 般 ト
(4)
ラ ッ ク運 送 業 者 は じっ に 全 体 の99%に 達 して い る。 こ う し た 状 況 か ら一 般 ト ラ ッ ク運 送 業 で は 中 小 規 模 の 業 者 が 増 加 して い る こ と を 容 易 に 想 像 で き る 。
図4は 保 有 車 両 台 数 別 の 一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 数 の 動 向 が 示 さ れ て い る。 こ れ に よ って 経 営 規 模 別 の特 徴 が 把 握 で き る が,次 の2っ の 動 向 が 読 み と る こ と が で き る。 ま ず 第 一 に,保 有 車 両 数 が11両 〜20両 の 階 層 以 上 の 階 層 に お い て
26商 経 論 叢 第31巻 第4号 0291)
は,事 業 者 が一 貫 して増 加 して い る。 事 業 者数 の絶 対 的 な増 加 とい う点 で は, これ らの層 にいず れ も共 通 して い る。 このな か で,21両 〜50両 を保 有 す る ト ラ ック運送 業 者 の階層 は,一 般 トラ ック運 送 業 者 の全 体 的 な分 布 か らみ れ ば 中 規模 に あた る階層 で あ るが,顕 著 に増 加 傾 向 をみ せ て いる。 この増 加 の テ ンポ は,こ の階 層 の経 営 規模 が トラ ック運 送 業 を事 業展 開 す るの に最適 な規 模 で あ るか の よ うな印象 を与 え て い る。
第 二 に,経 営 規模 で み た最 下 層 の トラ ック運 送 業者 数 が,深 刻 な不 況 の もと で増 加 に転 じて い る。 保有 車 両台 数 が5両 以 下 の事 業 者 数 と,6両 〜10両 以 下 の事 業者 は,と もに ほぼ 同 じ傾 向 を示 して い る。5両 以下 の階 層 の トラ ック業 者 数 は,1991年 度 まで減 少 傾 向 に あ り,6両 〜10両 の階層 の トラ ・ソク運 送 業者 数 も90年 度 まで減 少 傾 向 にあ った。 しか し,両 階 層 の事 業 者数 は,そ の後 増 加 傾 向 に転 じて い るので あ る。と りわ け,不 況 が 深刻 化 した92年 度 ,93年 度 に お いて・ これ らの階層 の事 業者 数 の増加 が 目立 って い る。
この よ うに,保 有車 両 台数 が10両 以 下 の零細 規 模 の トラ ック運送 業 者 は,経 済 が好 景 気 を迎 え て い る時期 に は減 少 したが,逆 に不況 期 に突入 してか らは増 加 して い る。 不 況 が深 刻化 す るな かで,こ う した零細 規 模 の トラ ック運 送 業 者 が増 加 して い る事実 に注 目す る必 要 が あ る。 それ は当然 トラ ック輸送 市 場 にお
け る競 争 を激 化 させ る要因 と して作 用 す るか らで あ る。
3.特 別 積合 せ輸 送 の事 業 者減 少
さて次 に特 別 積 合 せ運 送 業 で あ るが,こ の事 業 者数 は先 に見 た一 般 トラ ック 運 送 業 者 と ま さに対 照 的 に一 貫 して 減少 し続 けて い る。 図5に は特 別積 合 せ 業 者 の事 業者 数 の推 移 が示 され て い る。 も と も と特 別 積 合 せ 業者 は,一 般 トラ ッ
ク運送 業 者 に比 べ て事業 者 数 が極 端 に少 な いが,最 近 の傾 向 は それ に さ らに拍 車 が か け られ て い る。1980年 度 に は356業 者 あ った ものが,90年 度 に327業 者,93年 度 に は287業 者 に減 少 して い る。詳 し く見 て み る と,こ う した一 貫 し た減 少 傾 向 の なか で,特 に90年 度 の減 り方 が一 段 と大 きい ことが 目に付 く。当 該 年 度 に は,折 し も規 制緩 和 を もた ら した物 流二 法 が施行 され た年 で もあ る。
(290) トラ ッ ク輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩 和27
皮 肉 に も規 制 緩 和 が 実 施 さ れ た そ の 年 にi一 段 と事 業 者 数 が 減 少 して い る の で あ る。 この よ う に特 別 積 合 せ 運 送 業 の 事 業 者 数 は減 少 して い る の で あ るが,む ろ ん そ れ は輸 送 市 場 が 縮 小 して い る た め で は な い 。 特 別 積 合 せ 運 送 業 の 売 上 高
は順 調 に拡 人 して い るの で あ って,そ の 中 で の事 業 者 の 減 少 が 継 続 的 に生 じて い る の で あ る。
さ らに,階 層 別 に特 別 積 合 せ 業 者 数 の 構 成 を 示 した の が 図6で あ る。 こ れ に よ る と,車 保 有 台 数 が50両 以 下 を 基 準 に して2っ の 傾 向 を 読 み と る こ と が で き る。す な わ ちy50両 以 下 の 階 層 に属 す る業 者 数 は減 少 して い るの に対 して, そ れ 以 上 の 階 層 の業 者 は 増 加 して い る。 下 位 の 階 層 な か で も,と りわ け5両 以 下 の 階 層 と6〜10両 以 下 の 階 層 で は最 近 に お い て 急 速 に減 少 して い る。 これ に 対 して,51両 以 上 の 階 層 は増 加 して い る。 特 に,こ の 階 層 区 分 の な か で101〜
200両 以 下 の 階 層 と201両 以 上 の 階 層 の事 業 者 数 の 増 加 が 目立 って い る。
以 上 の よ うに,特 別 積 合 せ 運 送 業 の場 合 に は業 者 数 が 一 貫 して減 少 して い る の で あ るが,そ れ は 保 有 車 両 台 数 の 少 な い 零 細 業 者 が も っ ぱ ら減 少 して い るた め で あ る。逆 に,101両 以 上 の 経 営 規 模 の比 較 的 大 きい 業 者 数 は増 加 して い る。
こ の こ とか ら,特 別 積 合 せ 運 送 業 に お い て は,一 方 で 零 細 業 者 が 市場 か ら相 次 い で 撤 退 して い て い る の が,他 方 に お い て 事 業 を 継 続 して い る事 業 者 は,保 有 車 両 台 数 を 増 加 して 経 営 の 拡 大 を 積 極 的 に押 し進 め て い る こ とが 明 らか に な っ て くる。
従 来,特 別 積 合 せ 業 者 は,路 線 ト ラ ック事 業 と よ ば れ た物 流 二 法 以 前 の 時 期 か ら,輸 送 の ネ ッ トワ ー ク の人 き さ に応 じて3つ に 分 類 され て き た。 ま ず 第 一 に 全 国 的 規 模 の 事 業 者 で あ り,こ れ は 単独 で ほ ぼ 全 国 的 な 輸 送 の ネ ッ トワ ー ク を 構 築 して い る大 規 模 な トラ ッ ク運 送 業 者 で あ る。 ヤ マ ト運 輸,日 本 通 運,西 濃 運 輸 福 山 通 運 と い っ た一 部 上 場 の 企 業 が これ に該 当 す る。 第 二 に 広 域 の 事
業 者 で あ り,前 者 の 事 業 者 の よ う に 全 国 的 な 輸 送 ネ ッ ト ワ ー ク は 持 た な い も の の,地 方 単 位 以 上 の 広 域 に わ た る輸 送 ネ ッ トワ ー ク を構 築 して い る もの で,準 大 手 も し く は中 堅 の トラ ッ ク運 送 業 者 で あ る。 さ らに 第 三 に 地 場 の 事 業 者 で あ
り,特 定 の 限 られ た ロ ー カ ル の輸 送 ネ ッ トワ ー一クを もっ 中 小 トラ ッ ク運 送 業 者
28商 経 論 叢 第31巻 第4号
図5特 別積 合 せ業者数 の推移
(業者数)
(289)
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(年 度) (資 料)『 陸 運 統 計 要 覧 』 よ り作 成
図6特 別 積 合 せ 業 者 の 規 模 別 構 成 比 の 推 移 196
1987 1988
1989 1990
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() (資 料)
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『陸 運 統 計 要 覧』 よ り作 成
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{288) トラ ック輸送 産 業 の構 造 と規 制緩 和29
で(5)。
先 に見 た階層 別 の特 別 積 合 せ業 者 の構成 変 化 は,こ の3っ の カ テ ゴ リーの事 業 者 の動 向 に対 応 させ ると次 の よ うにな る。 す な わ ち,輸 送 ネ ッ トワー クの狭 い中小 の地 場 の特別 積 合 せ業 者 は,徐 々 に輸 送 市場 か ら撤 退 して お り,こ れ と
は対 照 的 に準大 手 や 中 堅 の広域 特 別 積 合 せ業 者,さ らに全 国規 模 の特 別 積合 せ 業者 は,ト ラ ックの保 有車 両 台 数 を増 加 させ て積 極 的 な事 業 拡 大 を はか って い
るので あ る。
と ころ で,特 別積 合 せ業 者 が提 供 して い る輸 送 サ ー ビス に宅 配便 が あ る。 宅 配 便 は急 激 に成 長 した結果,特 別積 合 せ の輸 送 市 場 のな かで重 要 な一 角 を構成 す る よ うにな った。 宅 配 便 の場 合,一 ・社 単 独 で宅 配 便 を提 供 して い る事業 者 は 例 外 的 で あ りi多 か れ少 なか れ業 務 提携 を した り子 会 社 を設 立 して宅 配 便 の輸 送 網 を構 築 して い る。 この た あ,便 数 に対 して事 業者 数 が 多 くな って い る。宅 配 便 の取 扱 量 が急 増 した成 長 期 に は,宅 配 便 へ の新 規参 入 が増 加 し,一 時 は宅 配 便 は40便 で111社 の トラ ッ ク運 送 業 者 が これ に参 加 して い た。 しか し宅 配 便 市場 にお いて も成 熟段 階 を迎 えて事 業者 の減 少 が して お り,現 在 で は便 数 が 37便 に減 少 して い る。 宅 配 便 も特 別 積 合 せ 輸 送 と同 じ傾 向 が 見 られ るの で あ
る。
第2節 継 続 的 新 規 参 入 と寡 占 化 の メ カ ニ ズ ム 1.継 続 的 新 規 参 入 の メ カ ニ ズ ム
同 じ トラ ッ ク輸 送 市 場 に お い て も事 業 へ の 参 入 状 況 を み る と,一 般 トラ ッ ク 運 送 業 と特 別 積 合 せ 輸 送 で は著 し い コ ン ト ラ ス トを み せ て い る。 ま ず 一 般 ト
ラ ッ ク運 送 業 だ が,先 に確 認 した よ うに 事 業 者 が 増 加 傾 向 を 続 け て お り,輸 送 市場 に お け る継 続 的 な 新 規 参 入 が 起 って い る。 そ こ で この 継 続 的 新 規 参 入 の メ カ ニ ズ ム を 詳 し く分 析 し て み よ う。
も と も と一 般 トラ ッ ク運 送 業 は新 規 参 入 が 比 較 的 容 易 な 業 種 で あ る。 原 則 的 に一 台 の トラ ッ ク に よ って 輸 送 業 務 が 完 結 す る一 般 トラ ッ ク運 送 業 の 単純 の 輸 送 形 態 の も と で は,事 業 展 開 に あ た って ネ ッ トワ ー ク を 必 要 と しな い。 原 則 的
30商 経 論 叢 第31巻 第4号
(287)
に考 え れ ば,一 般 トラ ック運 送 業 者 の事 業 を開始 す るに は,輸 送手 段 で あ る ト ラ ック1台 を保 有 す る ことに よ って可 能 で あ る。 このた め に新 規参 入 者 が必 要 な投 資額 は少 な くて す む。
た だ し現 実 的 に は,ト ラ ック運 送 業 に新 規 参 入 す るた めに運 輸 省 が定 め た一 定 の許 可 基 準 を ク リアす る必 要 が あ る。 その な か で も特 に重要 な許 可基準 は最 低 車 両 台 数制 で あ る。 あ らか じめ運 輸 省 が定 め た最 低 車 両 台数 を保 有 して い な け れ ば,営 業 許 可を取 得 して新 規 参入 す る こ とはで きな い。 この最 低 車 両 台数 は運 輸 省 の地 方 運 輸 局 ご と に定 め られ て お り,そ の基 準 は地 域 経 済 に規 模 に よ って各 々設 定 され て い る。 表3に 示 され て い るよ うに,最 低 は離 島 の3両 か ら5両 ・7両 ・9両 ・10両,13両 ,そ して15両 まで設 定 され て い る。離 島 は別 に して もi地 方 に よ って は5台 の トラ ックを保 有 す れ ば 新 規 参 入 が 可能 で あ る。 そ の他 に営 業所 トラ ックの駐 車 場,ト ラ ック ドライバ ーの休 憩施 設 の設 置 が義 務 づ け られ て お り,こ れ らを装 備 して新規 参 入 とい うこ とにな る。 いず れ にせ よ資 金力 の な い事業 者 は,こ の最 低 車両 台 数 規制 ぎ り ぎ りの車 両保 有 で 事業 を ス ター トす る ことに な る。 こ う して最 低 保 有 台数 を ク リア した零 細 規 模 の事業 者 の新 規参 入 が相 次 ぐ ことに な る。
この なか に は・ 自家 用 トラ ックを保 有 す る一 般 の企 業 が,新 たに営 業 許 可を 申請 して トラ ック運送 業 を開 始 す る場 合 が含 まれ て い る。 こ う した動 き は,不 況 が 深 刻化 す るなか で,一 般 の企 業 にお いて物流 コ ス トを削 減 す るた め の イ ン セ ンテ ィブが 強 く働 い て いた結 果 で あ る。 自家用 トラ ックを保 有 して 自社 の貨 物 を運 送 す る一 般 の企業 は,自 社 の貨 物 を運 ぶ だ けで は運 行 す る トラ ックの積 載 効 率 が悪 い。 この た め,営 業許 可 を取 得 して,自 社 の貨物 を ベ ー ス に して他 人 の貨 物 を取 り込 む こ とに よ って,積 載 効 率 を上 げ る ことが で きる。 例 え ば, 営 業 許 可 を取 れ ば,従 来空 車 で帰 って きた帰 り便 も他 人 の貨 物 を輸 送 す る こ と が で きるか らで あ る。 自家 用 トラ ックで 輸送 して いた時 よ り,効 率 的 な輸 送 が 可 能 で あ る し・ 事 業 と して も採 算 を維 持 して い くこ と もで き る。 そ して,結 果 的 に メイ ンに運 ぶ 自社 の 貨物 の輸 送 コス トを削減 す る ことが で きるので あ る。
この よ うな イ ンセ ンテ ィブの もとで トラ ック運 送 業 を新 た に開始 す る一般 の企
(286) トラ ッ ク輸 送 産 業 の構 造 と規 制 緩和31
表3地 域別最低車両台数規制
鍵輪簡 簸 抵 車 隔 数
1,北 海 道 圏 区 域(北 海 道 一一円) 北 海 道2.人 口10万 入 以Eの 市
3.そ の 他
1.北 東 北 圏 区 域(青 森 県,岩 手 県 及 び秋 出 県 を 合 わ せ た 区 域) 2.南 東 北 圏 区 域(宮 城 県,福 島 県 及 び 山 形 県 を 合 わ せ た 区 域) 東 北3.人 口10万 人 以 ヒの 市
4.人 口5万 人 以 ヒ10万 人 未 満 の 市 5.そ の 他
謁 鴨1
1.北 東 北 圏 区 域(青 森県,岩 手県 及 び秋 田県 を合 わ せ た 区域)
潟1:幣 響 鷺 騨 鮮 島県及び山形贈 わせた区域)
隠
4.そ1.首 の 他都 圏 区 域(東 京 都,神 奈 川 県,千 葉 県 及 び 埼 長県 を 合 わ せ た 区 域) 東2,東 京 都 特 別 区,横 浜 市 及 び 川 崎 市3.そ の 他
15両l l5両i lO両
7両1
隔
5両i禽
1.中 京 圏 区 域(愛 知 県,岐 阜 県 及 び 三 重 県 を 合 わ せ た 区 域) 北 陸 圏 区 域(福 井 県,石 川 県 及 び 富 由 県 を 合 わ せ た 区 域)
3.名 占 屋 市,豊 橋 市,岡 崎 市,豊 田rl∫,静 岡 市,浜 松 市,岐 阜 市, 沢 市 及 び富 山 市
4.そ の 他
九 州
阪 神 圏 区 域(大 阪 府 及 び 兵 庫 県 を 合 わ せ た 区 域) 2.指 定 地 域(大 阪 市 ほ か54市9町)
3.そ の 他
1.山 陽 圏 区 域(広 島 県 及 び 岡 山 県 を 合 わ せ た 区 域) 2.人 口10万 人 以 トの 市
3,そ の 他
1.四 国 圏 区 域(香 川 県 、 徳 島 県,愛 緩 県 及 び 高 知 県 を 合 わ せ た 区 域) 2.人 口10万 人 以 トの 市
3.そ の 他
1.北 部 九 州 圏 区 域(福 岡 県 及 び 佐 賀 県 を 合 わ せ た 区 域)
① 福 岡 市,北 九 州 市
② 人 ロ10万 人 以Lの 市 及 び 指 定 地 域(春 日 市 ほ か6市11町)
③ 人 日10万 人 未 満 の 市 町 村 2.そ の 他(拡 大 区 域 以 外)
① 福 岡 市,北 九 州 市
② 人 口10万 人 以Lの 市 及 び 指 定 地 域(春 日 市 ほ か6市ll町)
③ 人 口10万 人 未 満 の 市 町 村
3.南 九 州 圏 区 域(熊 本 県,宮 崎 県 及 び 鹿 児 島 県 を 合 わ せ た 区 域)
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(注)1新 潟 運 輸 局 は,管 轄 が 東 北 と 重 な っ て い る と こ ろ が あ る。
2北 部 九 州 圏 は 拡 大 区 域 と そ う で な い も の を 選 択 で き る た め,同 じ 市 で2っ の 基 準 が あ る。
(資 料)運 輸 省
32商 経 論i叢 第31巻 第4号 (285)
表4 トラ ック運送業 者 の倒 産件 数 と負債額
(単位:件,億FJ)
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(注)負 債 額1千 万 円 以 ヒ (資 料)帝 国 デ ー タバ ン ク
業 が 出 て きて い る。 深 刻化 す る不 況 は,一 般 の企 業 の物 流 コ ス ト削 減 へ 向 か わ せ て い るの で あ る が,そ れが 極 端 な場 合 み ず か ら トラ ック運 送業 を 営 む ことに な るの で あ る。
さ らに注 目す べ き点 は,新 規 参 入 が 相次 ぐなか で市 場 か らの撤 退 者 が少 な く,し か も既 存 事 業 者 の零 細 化 が 進 行 して い る こ とで あ る。 この こ と は,不 況 が 深 刻 化 して い る に もか か わ らず,ト ラ ック運 送 業 にお け る倒 産数 が比 較 的 少 な い事 実 と密 接 に 関 連 して い る。 表4は 最 近 に お け る ト ラ ッ ク運 送 業 者 の 倒 産 件 数 の動 向 が 示 さ れ て い る。 これ に よ る と,1990年 代 に 入 って 不 況 の 深 刻 化 に応 じて,ト ラ ッ ク運 送 業 者 の 倒 産 件 数 は あ る程 度 増 加 し て い る。 しか しyそ の 数 は 多 くて もせ い ぜ い 年 聞300件 台 で あ って ,事 業 者 数 の1%に も満 た な い 状 態 で あ る。 不 況 が 深 刻 化 して い る割 に は,倒 産 数 が 少 な い と い え る で あ ろ う。
この よ う に トラ ッ ク運 送 業 者 の 倒 産 件 数 が 少 な い の は,ト ラ ッ ク運 送 業 者 が 不 況 に よ る貨 物 量 の減 少 に 対 応 して,み ず か らの 事 業 規 模 を 縮 小 して 生 き残 り を は か ろ う と して い る か らで あ る。 保 有 す る トラ ッ ク を減 ら し雇 用 して い た ド
ラ イ バ ー を減 ら して,い わ ば 「縮 小 再 生 産 」 を は か り,こ れ に よ って 事 業 そ の もの を維 持 して い こ う と して い る。 実 際 に こ う した 規 模 縮 小 に よ っ て 存 続 を は か り事 業 の 継 続 が 可能 と な っ て い る。 そ の結 果 と して 先 に み た よ う に 零 細 規 模 の事 業 者 の増加 がみ られ るので あ る。くの
新 規 参 入 を はか るの に は最低 保 有 台 数 を ク リア しな けれ ば な らな いが,事 業 開始 後 これ を維 持 しな けれ ば な らな い規 定 はな い。 必 要 に応 じて保 有 トラ ック を削 減 す る 「減車 」 が 可能 で あ る。 実 際 に一 般 トラ ック運 送 業 者 の あ いだで こ う した 「減 車 」 が広 く行 わ れ て い るの で あ る。 これ に よ って事 業者 の生 き残 り が はか られ て い る。 この た め,貨 物 需 要 の低迷 に もか か わ らず倒 産 に よ る市場 か らの撤 退 が容 易 にす す ま ず,不 況 が深 刻化 す るなか で既 存 の事 業 者 の さ らな
(284) トラ ック輸 送産 業 の構 造 と規 制緩 和33 図7宅 配 便 の市 場 占有率
1988年 度
1991年 度
1994年 度 02040
(資 料)『 数 字 で 見 る 物 流 』 よ り作 成
灘(7.7%)(10.4%〉 ■ 宅 急f更
(9.3%)(5.0%)形 ロ ペ リ カ ン 便
匿コ フ ッ ト ワ ー ク(
9.5%)(5.2%)多i
・〕琴(6 .8%)(7.8%)團 カ ン カ ノレ ー 便[コ フ ク ツ ー 宅 配 便 ξ隷(8 .6%)(6.2%1)彫 そ の 他
(5.9'/,)(8.8%}
6080100(%)
る零 細 規模 化 が進 行 して い るの で あ る。
2.寡 占化 の メ カ ニ ズム
と ころで特 別 積合 せ の参 入 状 況 は一 般 トラ ック運 送 業 とま った く異 な って い る。 特 別積 合 せ 業者 は もと もと業 者数 が少 な いが新 規参 入 はな く,一 般 トラ ッ ク運 送 業 と逆 に零細 規 模 の事 業 者 が年 々 市場 か ら撤 退 して い る。 結 果 的 に当該 輸送 市場 は ます ます寡 占化 の度 合 い を強 あ て い るの で あ る。 日本 通 運,ヤ マ ト 運輸 西 濃運 輸,福 山通 運 とい った わが 国 を代 表 す るよ うな大手 トラ ック業 者
は積極 的 な事 業拡 大 を はか ってお り,こ れ ら大 手 の トラ ック運送 業 者 の 市場 占 有 率 が高 ま って い る。 現 在 で は特別 積 合 せ事 業 者 の売 上 高 に関 す る統 計 資料 が 明 らか に され て いな いた め,過 去 の デ ー タで推 測す る しか な いが,1988年 度 の 特 別 積 合 せ(当 時の路線)輸 送 市場 に 占め る大手5社 の市場 占有 率 は53%に 達 し
てい紹。 その後 の特別積合せ輸送 市場 の拡大 と事業者数 の減少 をみれば 寡 占
化 が さ ら に進 行 して い る こ と は 明 らか で あ る。
さ らに 特 別 積 合 せ よ り も宅 配 便 で 寡 占化 が さ らに 一 段 と進 ん で い る。 図7に 示 さ れ る よ う に,宅 配 便 の トッ プ の ヤ マ ト運 輸(宅 急便)の 市 場 占有 率 だ け で 全 体 の44%を 占 め て お りt第2位 の 日 本 通 運(ペ リカ ン便)を あ わ せ る と 上 位2社
だ け で70%に も達 す る。 さ ら に上 位5社 で は な ん と90%以 上 を 占 め て い る の
く ラ
で あ る。 しか も寡 占化 傾 向 は年 々 強 ま って い る の で あ る。
そ こで,特 別 積 合 せ 輸 送 の 宅 配 便 を 対 象 と して,そ の 特 有 な 寡 占 化 メ カ ニ ズ
34商 経 論 叢 第31巻 第4号 0283)
ム を 明 らか に して み よ う。
特 別 積 合 せ に お け る 宅 配 便 の事 業 展 開 に は,「 ネ ッ トワ ー ク」の 大 き さが 極 め て重 要 な要 素 と な って く る。 これ は先 に 見 た 一 般 ト ラ ッ ク運 送 業 と決 定 的 に異 な る点 で あ る。 この ネ ッ トワ ー ク と は,特 別 積 合 せ 輸 送 の 集 荷 ,発 の トラ ッ ク ター ミナ ル で の 仕 分 け,幹 線 輸 送,着 の タ ー ミナ ル で の仕 分 け ,配 送 と い っ た 複 合 的 機 能 が 有 機 的 に 結 合 した 面 的 な 広 が りを も っ た もの で あ る。 特 別 積 合 せ 輸 送 に お い て は,こ う した 面 的 な広 が り を も っ た 一 定 程 度 の ネ ッ トワ ー ク を必 要 とす る が,競 争 条 件 と して この ネ ッ トワ ー ク の 広 さ が 大 き く影 響 す る。 輸 送 ネ ッ トワ ー クが 広 い ほ ど,他 の事 業 者 に対 して 競 争 力優 位 を確 保 で き る の で あ る。 事 業 展 開 が ロ ー カ ル よ り は広 域 に,さ らに 全 国 展 開rは た ま た は 海 外 展 開 を 含 め た グ ロ ー バ ル す る ほ ど,輸 送 サ ー ビス と して の 商 品 の 競 争 力 が 強 化 さ れ て く る。 顧 客 で あ る消 費 者 や 一 般 の企 業 に よ る 宅 配 便 サ ー ビ ス の選 択 は,全 国 ど こで も く ま な く輸 送 で き る輸 送 サ ー ビス を選 択 す る傾 向 を 強 く持 っ て い るか らで あ る。 こ う した 広 域 の ネ ッ トワ ー ク に応 じて,翌 日配 達 に 象 徴 さ れ る輸 送 サ ー ビ ス の 迅 速 性,誤 配 や 荷 傷 み を 回 避 す る輸 送 の安 全 性 ・確 実 性 が 付 加 さ れ る こ と に よ って,宅 配 便 の 競 争 力 が 強 化 さ れ る。 こ う した 条 件 を 具 備 す る こ と に よ って 宅 配 便 の 市場 を 急 速 に 拡 大 して き た の で あ る。
と こ ろ で,広 域 な ネ ッ トワ ー ク を 確 保 す る た め に は 大 規 模 な 設 備 投 資 を 必 要 と して い る。 宅 配 便 と い う輸 送 サ ー ビ ス を 生 産 す る た め に は,ト ラ ッ ク輸 送 の 結 節 点 と して タ ー ミナ ル を 必 要 と し,広 域 性 に対 応 して トラ ッ ク タ ー ミナ ル を 全 国 の 主要 な拠 点 に 配 置 して い か な け れ ば な ら な い。 しか も トラ ッ ク タ ー ミナ ル は大 量 の 貨 物 が 集 中 す る た め に施 設 そ の もの が 大 規 模 化 す る と と もに ,集 中 し た大 量 の 貨 物 を 短 時 間 の う ち に効 率 的 に仕 分 け す る た め に大 型 機 械 で あ る 自 動 仕 分 け機 の 導 入 が 必 要 不 可 欠 と な る。 この た め,宅 配 便 の 事 業 展 開 は 「装 置 産 業 」 化 し て く る の で あ っ て,そ れ を 確 保 す る た め に は 積 極 的 な 設 備 投 資 が 繰 り広 げ られ た 。 そ れ と と も に,ネ ッ トワ ー ク の拡 大 に 伴 い貨 物 輸 送 に よ っ て 必 然 的 に 発 生 す る内 部 的 事 務 処 理 の 効 率 化,さ らに 輸 送 途 上 の 貨 物 管 理 の 必 要 か ら貨 物 追 跡 シ ス テ ム を 構 築 す る た め に 全 国 的 な情 報 ネ ッ トワ ー ク シ ス テ ム が 必
C2$2) トラ ック輸 送 産業 の構 造 と規制 緩和35
要 不 可 欠 と な る。 この よ う に して 輸 送 の ネ ッ トワ ー クが 拡 大 さ れ る と と もに, そ れ に伴 って 取 扱 量 が 増 加 し営 業 収 益 が1順調 に拡 大 す る。 そ れ を 設 備 投 資 に 費 や す こ と に よ っ てsさ ら に ネ ッ トワ ー ク が 拡 大 で き る。 宅 配 便 は そ の 成 長 期 に お い て 事 業 拡 大 の た め の こ う した 「好 循 環 」 が 形 成 さ れ た の で あ る。 従 って,
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こ う した ネ ッ トワ ー ク拡 張 指 向 の特 別 積 合 せ 業 者 が 急 激 に 成 長 した の で あ る。
そ れ と と もに こ う して 形 成 さ れ た ネ ッ トワ ー ク は,特 有 の 参 入 障 壁 を 形 成 す る の で あ って,新 た に宅 配 便 サ ー ビス を 提 供 し よ う とす る新 規 参 入 者 を 断 念 させ る こ と に な る の で あ る。
こ れ と同 時 に,ネ ッ トワ ー クの 狭 い 中 小 の特 別 積 合 せ 業 者 は 競 争 上 不 利 な 立 場 に 追 い や ら れ,市 場 か ら撤 退 す る こ と に な る。 中 小 の 特 別 積 合 せ 業 者 は,
ネ ッ トワ ー クの 限 られ た 特 定 の 地 域 で輸 送 サ ー ビ ス を 提 供 して い る。 そ れ 自体 全 国 配 達 が 標 準 と な る 宅 配 便 で は 競 争 を 展 開 し て い く うえ で 不 利 に な る。 ま た,そ の 他 の全 国 各 地 へ の 輸 送 は,他 の特 別 積 合 せ 業 者 と の連 絡 輸 送 が 行 わ れ て い る。 しか し連 絡 輸 送 は事 業 者 が 異 な る こ と か ら,時 間 的 な 遅 れ が 生 じた り, サ ー ビ ス レベ ル の 低 下 が 避 け られ な い。 さ ら に連 絡 輸 送 で は他 の 事 業 者 へ の 貨 物 の 委 託 料 金 を 支 払 わ な け れ ば な らな い た め,自 社 で 輸 送 す る よ りは コ ス ト増 に な って し ま う。 結 局 み ず か らの 輸 送 ネ ッ トワ ー ク が 狭 い こ と に よ って,輸 送 サ ー ビ ス の 品 質 が 低 下 した り コ ス ト増 に な る の で あ っ て,競 争 上不 利 に な らざ るを え な い の で あ る。 こ の た め 中 小 の 特 別 積 合 せ 業 者 はr事 業 の 多 角 化 の 一環 と して 宅 配 便 を 提 供 して い る が,宅 配 便 事 業 で 赤 字 に な って お り宅 配 便 以 外 の 一 般 トラ ッ ク運 送 業 の 収 益 で 内 部 補 助 を 受 け て い る場 合 が 多 い。 そ こで 継 続 的 な 赤 字 の も と で 宅 配 便 を維 持 して い く必 要 性 が な くな った 時 点 で,特 別 積 合 せ 業 者 は 宅 配 便 市場 か らの 撤 退 を 決 定 す る こ と に な る。 こ う して ます ま す 市 場 の 寡 占化 に拍 車 が か け られ る こ と に な る。
第3節 価 格 競 争 と質 的競 争 の展 開
1.一 般 トラ ック運 送業 にお ける価 格競 争
一般 トラ ック運 送 業 の輸 送 市場 は,極 めて多 数 の中小 零細 規 模 の トラ ック運
36商 経 論 叢i第31巻 第4号 C2$1)
送 業 者 が 「叢 生」 して い る状 態 が形 成 さ れ て い る。 しか も,一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 は一 貫 して増 加 して お り,と りわ け不 況 期 に突 入 す る とよ り零 細規 模 の ト
ラ ック運送 業者 が顕 著 な増 加 をみせ て い る。 このた あ,深 刻 な不 況 の もとで荷
†企 業 の販売 量 が減少 し貨 物需 要 が 減退 す るなか で,た だ で さえ多 数 の事 業 者 が ひ しめ き合 って い る輸 送市 場 に,新 規 参 入 の増 加 に よ る競 争 的圧 力 が増 して
い る こと は明 らか で あ る。 さ らに重要 な点 は,深 刻 な不況 に もか か わ らず,倒 産 す る事 業 者 が少 な く,事 業 規 模 を縮 小 して経 営 を維 持 して い る事 業 者 が い る
こ とで あ る。 競争 力 の劣 る企 業 が 市場 か ら退 出 して い くので はな く,規 模 を縮 小 しなが ら留 ま って い る こ とが,さ らに市場 にお け る競 争 的 な圧 力 を一 層 強 め て い る。
この よ うに状 態 の もとで,一 般 トラ ック運送 業 に お け る競 争 は,価 格 競 争, す な わ ち運 賃 を め ぐる値 下 げ競 争 が 中心 とな る。 一 般 トラ ック運 送 業 者 が 提供 す る輸 送 サ ー ビス は,基 本 的 に トラ ックー 台 に一荷 主企 業 の貨物 を積 載 して, 発 地 か ら着 地 に輸 送 す る比 較 的 単純 な形 態 の輸 送 サ ー ビスで あ る。 この単 純 な 形 態 の輸 送 サ ー ビスで あ るた め に,輸 送 サ ー ビス の質 はお しな べ て画一 的 で あ り,「差 別化 」す るのが 困難 で あ る。換 言 す れ ば,輸 送 サ ー ビスを め ぐる質 的競 争 が生 じに くい性 格 を持 って い る。 これ は,後 に述 べ る特 別積 合 せ運 送 とま さ
し く対 照 的 に,輸 送 ネ ッ トワー クを必要 とせ ずhさ らに新 たな に付 加 価 値 をっ けて競 争優 位 に な る よ うな輸 送 サ ー ビスで は な いの で あ る。
この た め,輸 送 市 場 にお いて一般 トラ ッ ク運 送 業 者 は,運 賃 を下 げ る こと に よ って顧 客 か ら貨 物 を獲得 しよ うとす るイ ンセ ンテ ィブが強 く働 く。 しか も単 純 な輸 送 業 務 を依 頼 す る顧 客 の荷 主企 業 も,ト ラ ック運 送 業 者 を相 互 に競 争 さ せ る こ とに よ って,運 賃 の低 下 を期 待 して い るので あ る。 こ う して,単 純 な輸 送 形 態 を とる一 般 トラ ック運送 業 に お いて は,も っぱ ら運 賃 を あ ぐる競 争 が展 開 され る こ とに な る。 不 況 が深 刻 化 して貨 物 需要 が停 滞 す るな かで,事 業 者 数 は依 然 と して増 加 して い るの で あ って,こ の ため運 賃 をめ ぐる競 争 は0段 と激
しくな って い るので あ る。
とこ ろで,現 在 運 輸 省 の規 制 に よ って運賃 は事 前 届 出制 が採 用 され て お り,
(280)
(中〔両 規 模 別)
1‑20両
21‑50f両(7.6%〉
51両 以L
トラ ック輸送 産 業 の構 造 と規 制緩 和37
図8運 賃 の決 定方 法
■
(9.5%)(42.1/)
矯ξ 轡 爆
㌧ ∵(13.5%) 1
\
■
(7.6%)(46.6%)
■
総ll(38.2%)妻 き(7.6%)
蝋 曇1・ ・ 謡4
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(9.2°/)(44.6'%}■
認 羅1嬉11%)
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(8.9%)(43.9%)
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37・2多)・(1…%)
1}llI 1
O2040hO80100
■ 独 自の コ ス ト計算 口 届出運 賃 を参 考 匿劉実勢運 賃 を参 考 國 荷 セが提出 した運賃
100(%)
(資料)運 輸省新潟運輸局監修 『社会ニーズに対応 した物流 システムの構築に関する調査報告書』
(1994年)25ペ ージ。
一 般 的 に トラ ッ ク運 送 業 者 は原 価 に適 正 な利 潤 を 加 え た 運 賃 を 運 輸 省 に 届 出 し て い る。 現 行 の制 度 の も とで は,事 前 届 出 した 運 賃 に基 づ い て 荷 主 企 業 か ら運 賃 を 収 受 す る仕 組 み に な って い る。 しか し,こ れ は これ は あ く ま で 建 前 上 の 仕 組 み で あ っ て,実 際 の 運 賃 の 決 定 は荷 主 企 業 が イ ニ シ ア テ ィ ブ を と って 行 わ れ,届 出運 賃 を 下 回 る実 勢 運 賃 が形 成 さ れ て い る場 合 が ほ とん ど で あ る。通 常, 荷 主 企 業 は複 数 の トラ ッ ク運 送 業 者 を抱 え て お り,こ れ らを 相 互 に競 争 さ せ て 運 賃 を低 い 水 に押 さ え よ う と して い る。 これ に 対 して 中 小 零 細 の トラ ッ ク運 送 業 者 は,特 定 の 荷 主 企 業 に専 属 化 す る傾 向 を 持 って お り,容 易 に 荷 主 企 業 を 変 え る こ と が で き る立 場 に は な い 。
図8は トラ ッ ク運 送 業 者 が 荷 主 企 業 との あ い だ で ど の よ う に して 運 賃 を決 定 して い る の か を 調 査 した もの で あ る。 こ の調 査 は1993年8月 に 実 施 さ れ た も の で,新 潟 運 輸 局 管 内 の ト ラ ッ ク 運 送 業 者 を 対 象 と して427社 の 有 効 回 答 を 集 計 した も の で あ る。 こ れ に よ れ ば,運 賃 決 定 の 方 法 と して 「届 出 運 賃 を 参 考 に 双 方 で 協 議 して 決 め る」 が 全 体 で44%を 占 め て お り,次 い で 「実 勢 運 賃 の 水 準 を参 考 に して 双 方 で 協 議 す る」が37%と な っ て い る。最 初 か ら実 勢 運 賃 に基 づ
38商 経 論 叢 第31巻 第4号 (279)
いた交 渉 を行 って い る トラ ッ ク運 送 業者 が多 い ことが わか る。 また,前 者 の届 出運 賃 を参 考 にす る場 合 で も,実 質 的 に は届 出運 賃 か らどの程 度 値 引 きす るか が運 賃交 渉 の 主題 とな って い る と言 わ れ て い る。 いず れ にせ よ,届 出運 賃 か ら 乖 離 した水 準 で 実際 の運 賃 が決 定 され て い る ことは明 らか で あ る。
さ らに注 目す べ きは,「荷主 が 提 出 した運 賃 で 決 めて い る」と答 え た トラ ック 運送 業 者 が 全体 の10%弱 を 占めて い る こ とで あ る。荷 主企 業 の言 い な りに な っ て運 賃 を設 定 す る企 業 が,全 体 の1割 も存 在 して い る。 しか も経 営 規模 別 にみ る と,車 両 台数20両 以 下 の零 細規 模 の トラ ック運送 業 者 に お いて,こ の割 合 が 13%と 高 くな って い る。 経 営 規模 の小 さな零 細 トラ ック運送 業 者 ほ ど運 賃 交 渉 に お いて荷 主 の イ ニ シア テ ィブが強 く,不 利 な運 賃 水 準 を 強 い られ て い る こ と
(10)
が 予想 で き る。
この よ う な こ と か ら,荷 主 企 業 と の 運 賃 の 交 渉 に お い て 一 般 トラ ッ ク運 送 業 者 は決 して 優 位 な 立場 に な い こ とが 明 らか に な っ て く る。 常 に運 賃 競 争 を 強 い
られ て お り,結 果 的 に低 運 賃 を受 け ざ る え な い 立 場 に 置 か れ て い る の で(11}。
以 上 の よ う に,運 賃 を め ぐる競 争 が展 開 さ れ て お り,一 般 ト ラ ッ ク運 送 業 者 は常 に 価 格 競 争 を 強 い られ て い る の で あ る。 残 念 な が ら,実 勢 運 賃 の動 向 を 示 す 統 計 資 料 は存 在 して い な い。 実 際 の運 賃 は トラ ッ ク運 送 業 者 と荷:丁企 業 が 相 対 で 決 定 さ れ る た め で あ る。 しか しな が ら,運 賃 を め ぐ る競 争 が 激 化 して お り, 実 勢 運 賃 も低 い 水 準 に と ど ま っ て い る こ と は 容 易 に 想 像 で き る。
2,特 別 積合 せ輸 送 業 の質 的 競争
先 に見 た よ うにr特 別 積合 せ 業者 は も と もと少 なか った が,中 小 零 細 業者 が 市場 か ら撤退 す る こ とによ って さ らに事業 者 数 が 減少 し,市 場 は一 層 寡 占体 制 が進 ん で い った。 と りわ け,成 長部 門 で あ る宅 配 便 で はs著 しい寡 占状 況 が形 成 され て い る。 寡 占状 態 が形成 されて いて も,特 別積 合 せ 輸送 市 場 で は決 して 競 争 制 限 的 に はな って い な い。
特 別 積合 せ 輸 送 市場 に お け る競 争 に関 して は,二 っ の競争 要 因 を考 え る必 要 が あ る。 一 っ は価格 競 争,す な わ ち運 賃 を め ぐる競 争 で あ り,も う0つ は提供