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「説唱芸能 <唱南港 >の語 り」

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「 説唱芸能 <唱南港 >の語 り」 続編 Ⅱ

訳 ・鹿 田 律 子

×9号・10号に引き続いて訳を試み る。

この 「夫人伝」に二人の青田の人の話を しよう。城門のほとりで 白羊を売 る。

青田人は温州まで白羊をつれて、朔門のほとりの春生米屋の門 口に置いた。そ の地方の人たちは白羊をぎっしり囲んで、 きれいな白羊だと言 う。 自羊は妖気が 断たず、はめ られると、尾を振 った り、毛を震わせた り、爪先で地をつかんだ り す る。 こう話 しているうちに、張員外がや って来た。張員外は朔門の店か ら来た。

今皆羅浮林のことを話す。唐代年間、張員外の家は豪富で、銀がた くさんあ り、

人品もよか った。「皆さん、今 日は !」彼は言 うと、 「員外、今 日は !」 と答える。

「皆さんは何を囲んで見ているか。

「羊を買うのだ !

「密造塩を売 るのね。」

「おお !員外は何を言 ってお られ るか。そんなことを言 うなら、員外 には話 さ ないよ !羊を買うことだ。その羊はとてもいい !お買いなさい !

「俺 の家には、

もう二、三匹飼 っている

。 」

「お宅 なら四匹飼 っても多 くないだろう

。 」

「そうね、それを買おう。 い くらの銀か

。 」

「虞山の神娘が舟代 と してわた したち に くれた.一両二銭の銀だ。」 と青田人は言うと、 「端数の小銭を言わないで、一 両に しよう。」 と員外は答える。

「神娘か らもらった舟代だか ら、一両二銭で一銭 もひけない !」

ある人は 「二両四銭にも価す る !」 と言い、ある人は 「四両八銭にも価す るの だ。」 と言 う。

員外はその羊を買 った。青田人は銀を受取 り、員外は羊をつれて帰 る。

そこに立 っているある人は 「その羊がここで売 られたか ら、 この地名を売羊巷 に しよう !

「いけない !この地名はよ くない !後に人に聞き間違え られて売娘巷 と言われた ら耳ざわ りよ くないか ら、後坪巷 と言うように しよう。」

やは り后坪巷 と言う地名がいい、 この地名は万古 まで伝わ って行 く。

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売羊巷は后坪巷 と改名 し、青 田の女の船頭は二人いる。二人は銀を分ける。

下河灘で一両二銭の銀を神娘か らもらった。羊も一両二銭で売 ったか ら、それ を分けて使お う。彼女たちはその銀を敵いて分けようとす る。

二人はち ょうど銀を蔽いて分けようとしている処で、下河灘でもらった一両二 銭の銀はもとか ら紙銭の灰の化 けたものなので、ち ょっと蔽かれ るなり、全部塵 攻 となった。

忠直無私で不平を言わず に、青田に帰 ってこの事を放 ってお く。

張員外は羅浮の自宅 に、 白羊をつれて帰 った。

員外は白羊を外につ ないで、部屋 にいる婦人の客が近寄 って白羊をよ く見る。

その羊は妖気が断たず、見 られ ると大喜びす る。

爪先が地面 をつかんだ り、毛を震わせた り、 口を開いた り、尾を振 った りして、

いきいき している。面 白そうだが、黄麻の縄でつないでいるのは残念だ。金の鍵 か、銀の鎚でつ なげば、 もっときれいだろう。金の鍵、銀の鍵が手 もとにないか ら、先ず色彩の縄に取替えよう。一人は赤い糸を取 出 し、他の人は緑の糸を取 出 して、五本の色彩の糸で縄をなった。黄麻の縄を色彩の縄 に取替えた。黄麻の縄 は神娘に呪文をつ けられたもので、色彩の縄は凡人のなった縄だ。

黄麻の縄が解 けると、 白羊はフーと一声を出 して逃 げた。

張宅の婦人たちはび っくりして、おや !羊が見えな くな った。

もともとその泰の地名があ ったが、改名 して化羊香 という。

羊が化 けてな くなったので化羊呑 といい、今 まで長 く伝わ って来た。

白羊は石門洞へ逃 げて帰 ったが、洞門が石碑で塞がれていて入れない。

神娘は俺の命を許 して くれたが、俺の身を寄せ る所がな くなった。

石碑で洞門が塞がれて洞 に入れず、 白羊は考えなが ら涙をほろほろ流す。

世の中に不運の者は多 くあるが、 どう して 白羊の運命がこんなに苦 しいのか。

俗世の鉢の花 になるよりは、む しろ、冥土の一本の草になった方がいい。

水中に身投げすれば、三尺の水だけで充分で、首を括るなら、手拭い一枚で結

(3)

樺だ。

白羊は石碑 に向か ってぶっか って、体はこなごなに砕 けて しまう。

白羊の命は砕 けたが、その妖気が風 に吹き上げられた。

忠義 な白羊は不幸に逢 って、その生気が陳太陰の処 につきあた った。

神娘は鷹山の法でそれを知 り、慮山の神娘はそのことをよ く考える。

ああ !その一陣の風が怪 しい !神娘は竜鳳の占いを行 って、おや !白羊が石門 洞へ逃げ帰 った。

白羊は石門洞へ逃げ帰 ったが、石碑が洞門を塞いで入れない。

白羊は 自分の不運を考えなが ら、忠義 な気持ちで石碑 にぶつか って命を落 した。

二人の将軍を遣わ して、その白羊を洞祖神 と命 じる。

白羊は青田の石門洞で祭 りを受けて、男女の衆人や村の平安を保つ0 外壇財喜馬‑駕、 白羊洞祖に命 じて地方の安寧を保つ。

「夫人伝」にこのことはさておき、話を変えて、後 にまた続 けて語 ろう。

次に温州永嘉県についた。八仙楼の辺に鄭宅がある。

金持ちの員外鄭文責は、応氏を奥 さんに要 った。

娘の鄭英は十九歳で、生れつき三分の神骨がある。

女の仕事を好 まず、修行、読経を して道心をもつ。

鄭英は不運で、肺病の患者 となった。

食を少 し取 るが、何のことも出来ず、嘱いだ り、疾を吐いた りして人を驚かす。

薬を飲んでも効かず、鄭英の病気はひどくな った。

占いを してもらうと、不吉だと言われ、仏にみ くじを求めても霊験がない。

ある日、鄭英は思いめ ぐらして悲 しく涙を流す。

不運な人は多 くあるが、 どう して鄭英の運命はこんなに苦 しいのか。

ひどい病気をなおす薬 もなく、薬を飲んでも効かない。

第‑は天に頼 り、第二は地に頼 り、第三は 日、月、星に頼 る。

逢 った凶事が吉事に変わ り、平安 になる時に、万本のよい線香で神 さまにお礼 をす る。

悲みに沈んだ鄭英の怨んでいる気拝は風に吹き上げ られた。

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(4)

神娘は産山の法でそのことを思い知 り、慮山の神娘はそのことがよ く分か っ た。

神娘は竜鳳の占いを行 って、温州府八仙楼の辺にある鄭宅のことが当 った。伯 父鄭文責、伯母応氏、鄭英お姉 さんは十九歳で、生 まれつき三分の神骨がある。

不運で肺病 にかか っている。す ぐ助 けに行かなければならない。 「二人の将軍 !」

「はい !」「八仙楼の辺に行 って、す ぐ鄭英お姉 さんを助けてやろう。」

江、楊の二将が道案 内 して、陳太陰は後 について行 く。

八仙楼の辺の鄭宅につ くと、門番の知 らせで鄭員外 に迎え られ る。

員外は迎えに出て、慮山の陳太陰を迎える。

どちらか らのお嬢 さんか、 どういう事でわた しの家に来 られたか。

家には大変な心配事があるか ら、皆さんを留める気にならない。

わた しはお宅の心配事が分 って、言わなくてもよ く分る、 と神娘は言 う。

鄭英お姉 さんは、肺病 にかか って苦 しんでいる。

食事は少 し取 るが、何 もできず、嘱いだ り、疾を吐いた りして人をなやまして いる。

薬を飲んでも病気がなお らない。い ったいこの様子は本当か、 どうか。

どこか らの少年が来 られたか。一部始終をよく知 っている。

わた しは少年でな く、慮山の神娘はわた しの法名だ。

途中妖気退治を して人を助 け、わざわざお姉 さんを助けるためにお宅に来た。

「おや !神娘 !失礼 した。す いませ ん、すみ ません !神娘 !家の娘を助 けるた めに何が入用か。」

「別に入用のものもないが、ただ五色の紙を買 って来て、部屋の中に貼 っておけ ば、肺病の魔を退治 して、助 けられ るのだ !」

歌う

員外は下男を遣わ して、五色の紙を買いに町に行かせ る。

(5)

・ Y 台詞

鄭宅 の下男が八仙楼 の横町 を出ると、 当地 の人 に会 った。 「鄭宅 のお嬢 さんの 病気はどうな ったか。お医者 さんに見て も らった方がいいだ ろう。」 と言 う。 「沢

山のお医者 さんに見て もらった !」「どんな医者 さんか。」

「有名 な女医者 だ った よ !始めの人は真丹仙、二 回めの人は短命仙、三 回めの人 は送終仙 というのだ。真丹仙 は栄養 の薬が必要だ と言 い、短命仙 は熱性 の薬が必 要だ と言い、送終仙 は寒性 の薬が必要だ と言 う。 栄養 の薬、熱性 の薬、寒性 の薬、

いずれ を飲 んで も病気が よ くな らず、頭が痛 く、 目が肱み、昼夜苦 しんでいる。」

「おお !君たちはどこへ行 くのか

」「紙 を買いに行 く

」「紙 を買 って どうす るの か。」「部屋 に貼 ってお くのか。」「妖怪退治 のため にそれ を貼 ってお く。神娘が妖 怪退治をす ると言 った。」

その地方 の人はお しゃべ りで、「肩 に黄 い風 呂敷包み を背負 い、手 に竜角 を持 ち、

産 山の法 を話す あの女法師は世間を渡 り歩 いて ご飯 を編 して食べ る者 だ。彼女 の 言 うことを聞いてはいけない。」 と言 った。 「彼女 は家の病気 の ことが よ く分 って いるか ら、治療 をため してみ る。」

「彼女 は何 の病気だ と言 ったか。」「肺病 !」「肺病か !」

「肺病か !それ は大変だ !」「彼女 の話 は病気 に合 って るか ら、治療 してみ て も らお う

」下男は紙を買 って来て、部屋 の中に貼 ってお く。

その人たちは八仙倭 の辺 に来て、鄭宅 の前で にぎわ いを見 る。 しき りに員外、

員外 と呼ぶ。 「神娘 はお宅で妖怪退治す るのね。妖怪 を しっか り捉 えた ら、 皆 に 見せて くれ。 皆見たいのだ、 と神娘 に伝 えて くれ。」

鄭宅 の門前 に大勢 の人が集 ま って、 こみあ っている。

ある人が前 にわ りこんだ時 に、神娘 はち ょうどその部屋 の中で妖怪 を捉えてい る。雄 の妖怪 はすで に しっか り捉 え られ、雌 の妖怪が まだ捉 え られ ない うちに、

その人は顎 を宙の敷居 に置 き、 口を開 け、舌を吐 出 していたか ら、飛 出 した雌 の 妖怪を呑込 んで しま った。

神娘は もとか らその雌 の妖怪 を捉えようと したが、その人が妖怪 を見たが った か ら、つ い呑込んで しまった。

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(6)

神娘は、彼女を尊敬す る人を加護す るが、彼女を尊敬 しないなら、加護 されが たい !彼女は肺病の妖怪を呑込めば病気になることを知 っていなが ら、それを退 治 しなか った。 なぜ なら、その人はどう しても見たか ったか ら、呑込んだままに なった。

肺病の妖怪を呑んだ人は、太平橋の両対沖巷の奥に住む 自明という者だ。 自明 は肺病で死んだ、 自明は肺病で死んだ !

. 歌う、

その人は肺病の妖怪に害 されて、俗世の小 さな妖怪 となって流浪す る。

聖母は南を巡遊す る途中で、その妖怪 に逢 って、法を行 って退治 した。

肺病の妖怪を遠方へ追立てて、いっ までもここを侵す ことができない。

凶の星は三千里の外の遠 くへ退 けられ、吉の星は村里を明るく照す。

神娘は産山の丹薬一服を取出 して、鄭英に飲 ませた。

桶一つを用意 させて、鄭英をその桶の上に坐 らせた。

腹の中の肺病の妖怪が下 され、桶の中に落ちた。

その桶を野原で傾 けて、火で肺病の妖怪を焼払 う。

鄭英の病気が直 り、鄭宅は太平 になる。

内壇娘娘馬‑駕、鄭太陰の病気がなお った。

鄭員外はこの様子を見て嬉 しくな って、慮山の大恩人にお礼を申す0

妖怪を退治 して、娘を助けた功労は大き く、何処か らの方で、お名前は何 と言 うか。

わた しは福州侯官県の者で、父は上元、母は葛氏だ。

長兄は法通、次兄は法青、十四は三番 目の者だ。

長兄は南江で妖怪退治のため蛇に害 され、次兄はこの消息を家に知 らせた。

長兄を助 けるために慮山に登 って、師に神娘 と名付 けられた。

慮山の洞で法を身につ けた時に、師はわた しに言つ けた。

洞を出てか ら、途中で先に庶民を助 け、後 に兄を助 けて くれ。

男の人を助 けてやれば、兄弟 と称 し、女の人を助けてやれば、姉妹 と称 して く れ。

≡ ‑ 台詞 き

「おお !神娘 !家の娘を助けて下 さったが、法を伝授 してもらえないか。」「お嬢

(7)

さんに法を伝授 して上げよう。彼女は肺病者だ ったか ら、誰かがその病気になっ て、彼女の前で祈願す るなら、元気を取戻す ように庇護 してやればいい。」「神娘 にお礼を申す !

内壇娘娘馬一駕、鄭太陰は肺病のことを司る。

鄭宅は広間で祝宴を催 して、慮山の陳太陰をもてなす。

鄭員外は銀千両を取出 して、陳神娘 にお礼を申す。

家の娘を助 けた功労は大 きい。 どうしても何かでお礼を申 したい。

神娘は謝礼を受取 らない、お姉 さんを助 けるのはあた りまえのことだ。

後に南江で蛇退治の時に、お姉 さんにお伝いを願 う。

神娘はわた しの大恩人で、心よ り恩人を手伝 ってさし上げたい。

内壇娘娘馬‑駕、鄭宅の広間で法の本を写す.

写 した本を鄭英に読 ませ、神娘は別れを告げて旅立っ。

鄭宅の老若に見送 られて、神娘は風 呂敷包みを肩 にかけて別れて行 く。

内壇で紙銀三枚を捧げて、神娘 と江、楊の二将はそれを分 ける。

次に温州の倉橋 につき、倉橋の地方は幸運に恵 まれている。

九匹の竜が集まって珠を争 う地方だか ら、三回竜角を鳴 らして官の敷地に しる Lをつける。

今後、神娘は悟 りを開 く時に、温州の倉橋の宮 に降臨す る。

内壇娘娘‑駕、雲一片、温州倉橋の宮に降臨す る。

神娘は朔門の外を遊覧 し、海の辺に船頭たちがいる。

彼 らの話 しによれば、楠渓江には妖怪がいて、石階段の下 に蟹の妖怪が現れ る。

昼に川辺に伏 して岩 となり、夜 に川の中に入 って人を害す る。

毎 日夕方か ら夜 まで、その妖怪川に入 って人を害す る。

小舟にぶつか って人を落 して、お菓子 と して食 って しまう。

神娘が民衆のためにその妖怪を退治す るように皆は願 う。

、台詞 .

神娘は、 もとか ら妖怪に逢えばそれを退治 し、困 った人に逢えば助 けてや るの だか ら、船頭たちの言うことを聞 くと、す ぐ海の沙洲の辺か ら一握 りの泥をつか

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み、一枚の花模様の手拭いに変 じて出 した。その手拭いで泥を包んだ。産山の法 の妖怪退治の呪文を唱えてか ら、その包みを船頭に渡 して、「君はこの包みを持 っ て、蟹の岩の上に置いて、『妖怪を斬 って くれ !』と一度叫んで くれ。外の言葉を 言わな くても、妖怪退治ができる

。 」

「本当か !」船頭はその手拭いの包みを受取 っ た。

神娘は一つの泥の包みを渡 して、船頭が産山の法を受取 った。

夕方 に舟を石の階段の下 まで漕いで、泥の包みを蟹の岩に置いた。

「妖怪を斬 って くれ !」 と大声で叫ぶ と、産山の法は蟹の妖怪を退治 した。

千年 の妖怪を滅ぼすべ きで、万年 の妖怪の種を絶つべきだ。

神娘は蟹の妖怪を退治 して、石階段の辺が太平になる。

神娘は妖怪退治の功労が大 きく、楠湊江のあた りは無事 になる。

甑北の地に多 くの太陰官を建て、陳十四大聖を仰慕す る。

この 「夫人伝」 に慮山の法のことはさておき、上文に述べたところを続 けて語 ろう。

「夫人伝」には、さらに箔旦那のことを述べて行 く。彼の魂は狸の奥 さんに吸い 取 られた。

本を読む ことも、執務 も出来ず、近頃病気が非常にひどくなった。

薬を飲んでも効かず、病気がなお らない。

狸の妖怪は考えをめぐらず。

1 . 台詞 さ

おや !蒋宅の役所で、役人の奥さんとはなんと身分が高いのだろう。心配す る ことがないはずだが、ただ、心配なのは妖怪退治の大家である神娘のことだ。 も し神娘がここを通 るなら、妖怪は準備 しなければならない。妖怪は指を折 って占 いをす ると、おや !す ぐ来 るのだ !早 く逃げよう !

早 く逃げれば命を保つ ことができるが、でないと、命を落す恐れがある。

別 に生きて行 く道を開いた方がよいか ら、身をひるがえて この危い処か らぬけ 出そうとす る。

役所の戸を開けて、色彩の鳳風のように飛 出 し、金の鍵を断 って門を出て行 く。

(9)

狸が金の鈎か らぬけ出す ように、何よりもさっさと逃 げるのが大切だ。

妖怪は前門か ら逃げようとしたが、前門には産山の兵が鎮守 している。

妖怪は裏門か ら逃げようとしたが、裏門には子牛兵が鎮守 している。

妖怪は天上へ飛上がろうと したが、上には天の篭が重た く覆 っている。

妖怪は地下へ入 り込 もうとしたが、下 には地の網が しっか り張 っている。

「おや !占いが遅か った。大変だ !無事でいるために、箔旦那 さんに しっか り すが って行 くより仕方がない。」 と妖怪は言 った。

考えをめ ぐらしている狸の妖怪は十八歳の娘 に化 ける。

非常にきれいな美人に化 けて、ゆ っくりと部屋 に入 って行 く。

苑旦那がベ ッドに横 になっているのを見なが ら、気をつけて近 よって行 く。

青い綾の帳が銀の鈎 にかか って、や さしい声で ご機嫌を伺 う。

渇をいやすためにお茶を上げようか。お腹が空いた ら、 どんなお菓子が欲 しい か。

旦那さまは早 くお元気になるはず なのに、 どうしてご病気がなかなかなお らな いだろう。

お腹が痛むなら、わた しが蔽いてあげ、お背中が痛むなら、わた しがよ く蔽い て上げよう。

木の枝がまっ直に伸びた くても、 まっす ぐに伸びがた く、山が高 くても四方か らの風を遮 りがたい。

風や雲は不運を払いに くく、凧 も上げに くい。

月が破れれば、金で繕 うことが難 しく、花を移す場合 に糸でひ っぼ ってはいけ ない。

この病気を直すために、仙人の薬 こそ必要で、凡人なら仕方がない0 この地方 に来た人物は運命で災難 に逢 うか ら、小官は病気になった。

天が くずれ落ちるなら、それを支える高い人がいる し、凶事 に遭 ってかえ って 吉事に変えることもある。

善人は神 さまに助 けられ、幸運が向いて来 るだろう。

つまり、わた しは不運な者で、運命で旦那 さまにつ り合わないだろう。

(35)∂♂

(10)

運命で釣合わないか ら、 タブーにふれた。

つ まり、わた しは薄命 な者で、旦那 さまとはよい縁組 とはなりにくい。

お前はやさ しい人で、そんなに自責を しな くてもよい。

旦那 さまに答め られ ないか ら嬉 しい、お腰や背を敵いてあげる。

花旦那は不都合千万だ、やさ しく妖怪を伴 とす る。

下役はこの事情が分ると、考えをめぐらした。

おや !大変 な過ちだ、俺は大変な過ちを した。

そんな者の媒酌人になるべきでない。

家の旦那 さんはいっ も元気な顔つ きだ ったが、今は骨の皮ばか りになった。陳 医者 さんに脈を見てもらったが、処方 もくれない。 「先生は、温州では第一人者だ か ら、是非家の旦那 さんを助 けて下 さい。」と俺が言 うと、お医者 さんは一枚の処 方を書いて くれた。数十両の銀を払 っても、効 くか どうかわか らない。何 しろ飲 ませてみよう。下役は処方を手 に持 って、役所を出て薬を買いに出かけた。道 々 彼は歩 きなが ら考えた。ち ょうど慮山の神娘が来た。おや !この人は心配そうな 顔つ きで、涙を流 している。何事だろう。神娘は占いを行 った。おお !箔旦那の 下役は主人の病気を直す薬を買いに薬屋へ行 くのだ。 「下役 さん !下役 さん !」

「どこか らの少年か、 どうしてわた しのことを知 っているか。」

下役さんと呼んで、聞いて くれ。お話を聞かな くても、わた しには事情が分 っ ている。

お宅の旦那 さんは南京上元県の人で、お名前は蒋公卿だ。

二十三才で通判 に任 じられて、温州の役所で執務す る。

上級の役所の任務 によって、役所の舟は川の砂洲あた りまで来た。

当地に、天台嶺 という山があ り、そこの園岩洞 に妖怪が宿 っている0 それは九尾狸の妖怪で、洞の中で八百年の修行を積んで来た。

妖怪は神娘が処州に来 ることを知 ると、一つ もんどりを打 って逃げて行 く。

九尾狸は苑旦那が必ず 災難 に逢 うことが 占いで分 ると、女の人に化 けて俗世 に 下 る。

川の砂洲で悲 しく泣いているのが、お宅の旦那 さんにはは っきり聞こえた。

(11)

下役のあなたを遣わ して、妖怪に近寄 って、いろいろ聞いた。

あなたは、お姉 さんは何事で、 こんなに悲 しく泣いているか と聞いた。

母の側にいる娘か、それ とも夫のあるお嫁か。

実家に争いがあ って夫の家に帰 りのか、それ とも美 の家にごた ごたが起 こった か ら、実家に行 くのか。

道に迷 ったのか、来歴を訊ねてか ら家に送 ってやろう。

妖怪は詰問され ると、顔を赤 らめて、 まともな人のようにいっわ る0

伯父さんは通 りすが りの方で、お通 りなさい。わた しのことを心配 しな くても よい。

あなたはこの妖怪の真面 目な顔を見 ると、神 さまに祈 って誓 う。

天の霊、地の霊、諸 々の神 さまは証人となる。

妖怪はあなたのまじめな誓いを聞 くと、や さ しく話 し出す。

役所の伯父さんは貴い方だ。災難に逢 ったわた しのことを申 し上げよう。

わた しの家は楽清の塩盤 にあ り、李姓で李戴金 と言う。

七歳 に父が亡 くなり、八歳に母が亡 くなった。異父はわた しを家につれていき、

育てた。

年寄の男父と男母が亡 くなって、一人だけの従兄弟がある。

従兄は無理や りに、わた しを彼の嫁に しようとした。

夜更けにわた しは逃げだ したが、川 に隔たて られて身をよせ る処がない。

あなたは妖怪の話を聞いてか ら、舟 まで彼女をっれて行 った。

あなたは前に立ち道案内 して、狸の妖怪は後をついて行 く。

埠頭を離れて舟に乗 ると、その妖気が花旦那 につ きまとった。

旦那の心は惑わされて しまった。 この仙人のようにきれいな娘は稀である。

顔が春の柳のようにきれいで、皮膚が玉のようにつやつや している0 苑旦那は彼女を絶えず称え、あなたは妖怪を船室に送 った。

あなたは旦那が非常に喜んでいるのを見て、彼の媒酌人 となる。

ゆっくり船室に入るなり、妖怪は立上が って迎える。

伯父さんは何事で、夜更けにこの船室に入 って来 られたか。

他のことでな く、お姉 さんの縁組のために来たのだとあなたは言う0 今年おい くつか、媒酌があ ったか。

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(12)

李氏は今年十八歳で、 まだ婚約 もしない。

旦那さまは未婚で、お姉 さんも婚約 していないか ら、旦那さまと縁組すれば好 かろう。

旦那さまは立派な役人で、災難 に逢 ったわた しは身分の卑 しい者だ。

粗末な糠は精米と釣合わず、野草は牡丹の美 しさにとても及ばない0

縁組には情義を重ん じるもので、高いとか、低 いとかを比べ るべきではない、

とあなたは言 った。

旦那さまは卑 しいわた しを嫌わ ないなら、わた しは甘ん じてお腰や背中を敵い てあげよう。

あたなは彼女 の言 うことを聞 くと、嬉 しくなり、旦那さんに知 らせ る。

あなたは買物 のために遣わ されて、岸 に上が って商膏人たちと値段を掛合う。

舟の中で祝宴を催 して、妖怪 との縁組を手配す る。

夜が静 まって三更になると、狸の妖怪は正体を現わす。

妖怪は旦那 さんの旨い旬を喚ぎなが ら、彼の胸 に一 口で噛みついた。

三回旨い血を吸うなり、苑旦那 さんはび っくりして大声で叫んだ。

妖怪はこの様子を見て、 どうなさったかとやさ しく聞 く。

旦那 さまは何事で、夜更けに大声で叫ぶのか。

小官はわけが分 らな く、 この夜 にこんなに苦 しんでいる。

小官は以前 に病気がなか ったのに、今晩病気にな ったのは変だと思 う。

つ まり、卑 しいわた しは薄命 な者で、旦那 さまと縁組になりに くいだろう。

お前はや さ しい人で、そんなに自責 しな くてもいい。

旦那さまに替め られないか ら嬉 しい、お腰や背中を蔽いてあげよう.

翌 日に、舟が温州に着 き、当地 の役人たちは出迎える。

苑旦那 さんの病気が非常にひどく、読書 も、執務 も出来ない。

あなたはどこか らの少年か、 どう して一部始終を知 っているのか。

慮山の玄妙な法を身につけた陳神娘だ。道中妖怪退治を して人を助 けて来た。

「神娘 !失礼 した !ご免下 さい !ご免下 さい !家の旦那 さんを助 けるのは大切 なことだ。

「わた しはち ょうど皆さんの役所 に行 って、妖怪退治 して旦那 さんを 助 けてやろうと考えている処だ。」 と神娘は言 う。

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下役は旦那の部屋に行 くと、旦那 さまがベ ッドで寝ているのを見つ けた。あの 女 もベ ッドに横 になって、旦那の体を融いた り、触れた りしている。 どう しよう かと下役は考えてか ら、書斎へ行 って、一枚の紙切れに字を書 いた.それか ら、

旦那の部屋に戻 って、ベ ッドの側で旦那の体を揺振 って彼を起 こした。持 って来 た紙切れを旦那の手に入れて見せた。

「他人の言うことを聞 くなかれ。銀をむだに使わないで くれ。それは世間を渡 り歩いて生活す る女法師の編す仕業だ。」 と苑旦那は言う。

「家の旦那 さんは信 じない。 どうしようか。」と下役は言いなが ら客間に入 った。

「お宅の旦那 さんは何 と言 ったか。」 と神娘は聞 く。 「家の旦那 さんは信 じない。」

「旦那さんはどう言 ったか。」「あなたは産山の法がない。本当に慮山の法がある なら、か ごか馬に乗 るのだ。あなたが世間の女法師で編 して ご飯を食べ るのだと 言 った。」「お宅の旦那 さんはそんなに言うなら、死ぬ 日を待つだけだ。彼が死 に たいなら、わた しの産山の法 とは関係がない !わた しは慮山を出てか ら、無数の 妖怪を退治 して人を助けて来た。 とるにた らない妖怪を残 して も大 した ことはな い。」

神娘はこう言いなが ら、外へ出ようとす ると、産山の師の奥 さんの話 しを思出 した。産山を出てか ら、妖怪を見つ ければ退治 し、困 った人に逢えば助 けてやれ、

と言つけられた。それで神娘は我慢 して客間に坐 る。

家の中では妖怪が聞き出 した。

下役の持 って来た紙切れに何が書いているか、 と妖怪はま じめに聞いた。

その字をよ く見て、本当のことを話 して下 さい。わた しに隠さないように。

「お前 !何事 もない。俺は病気で煩わ しいか ら、下役を遣わ して城陸廟 までお み くじを引いてきてもらった。おみ くじは吉だ った。それによ って俺の運命はよ

くなるのだ。」

下役の持 って来た紙切れのことは分 っているのに、おみ くじとか言 ってわた し を編 している。

わた したち主婦は一心で、何 も話せ ないことはないで しょう。

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お茶などのお世話をい くらしてもむだなこと。 もとか らわた しを他人 と見てい るのね。

薄命 なわた しはお役に立たないなら、 この命を捨ててもいい。

川 に身投げすれば、三尺の水で充分、額を括 るなら、手拭一枚でけっこうだ。

世間でつ まらない人間とされ るよ りも、む しろ冥土のさっぱ りした鬼になった 方がいい。

お前は心配 しないで くれ、俺は本当のことを話 してやろう。

実は下役の紙 きれには、聞きにくい言葉が書 いてある。

お前が妖怪で、園岩洞の中の狸の妖怪だと言 った。

産山の法を身につ けた神娘が、凡人を助けるために、 この役所 に来た。

お前が神娘に刺殺 されれば、小官の病気はなおる。

お前が神娘に斬殺 されないなら、仏に祈 っても小官の病気はなお らない。

旦那 さま、おめで とう、神 さまが降 りて旦那 さまを助 けるのは本当におめでた いことだ。

実に、産山の法を身につ けた神娘はこの役所 に来て、凡人を助 けるのだ。

わた しは本当の妖怪で、園岩洞の中の狸の妖怪だ。

わた しを留めてはお役に立たない、神 さまに祈 っても旦那 さまの病気はなお り に くい。

わた しが殺された ら、奥 さんになる人はあるが、旦那 さまがな くなった ら、世 の中で償 うことができない。

わた しが殺 され ることによって、旦那さまを助 けることができないなら、わた しは冥土へ行 っても残念に思 う。

お前はや さしい人で、そんなに自責を しな くてもいい。

旦那 さまに杏め られないので嬉 しい。お腰や背中を轟いてあげる。

苑旦那は妖怪に惑わ されて、や さ しく妖怪を慰める。

慮山の神娘は彼 らの話 しを聞 くと、ぷんぷん怒 った。

… ‡ 二 普請ヨ

「この妖怪は唇か ら口の息子を生み出 し、口の息子が 口の孫を生み出 し、巧みな うまい話ばか り流 し出すのだ。他人はうまい言葉が聞きた く、おだてに乗 りたい だろうが、わた し神娘はうまい言葉を聞きた くない。その妖怪に惑わ されている

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蒋旦那はわた しが妖怪 を殺す ことは忍びないと思 っている。わた しは花旦那 と直 に話そ う。」と神娘 は言 うと、す ぐ部屋 に入 って苑旦那 のベ ッ ドの前 に立 って、大 声で言 った。

苑旦那 さん、苑旦那 さん、苑旦那 さん、苑旦那 さん! お宅 の奥 さんは人間でな く、園岩洞 の中の狸 の妖怪だ。

わた し神娘 に彼女 を殺 させれば、旦那 さんの病気はなお る。

そ うで ないと、旦那 さんの病気 はなお りに くい。

苑旦那 は この話を聞 くや、怒 り出 した。神娘 は、 今殺す よ、 と言 った0

どこか らの世間を渡 り歩 く女か。 こんなでた らめ な話 をす るとは。

明 らか によい奥 さんなのに、園岩洞 の中の妖怪 とか、全 くとんで もないことだ。

人間を害 して も俺花旦那を害す るだ けで陳姓 の者 を害す ることはない。

俺 の親類で もないのに、 なぜ俺 の ことによけいな世話 をや くのか。

さ っそ く外へ 出て くれば、お互 いに邪魔 にな らない。

また何 とか言 って出ないな ら、俺 の恐 ろ しさを思 い知 らせ てや るぞ !

「お前 の命 は十 よ りの縄 の九 よ りが断 って しま った ように危 い処 だ。 またそん なに強情 を張 っているのだね。お前が死 にたいな ら、わた し神娘 とは関係が ない。

わた しは産 山を出てか ら、無数 の妖怪 を退治 して、多 くの人 を助 けてや った。 こ のつ ま らない妖怪 は大 した こともで きないだ ろう !」 と神娘 は言 った。

神娘 はす ぐ立上が って外へ 出ようと したが、産 山の師の言つ けを思 出す と、我 慢 して客間に坐 った。妖怪 は またや さ しく花旦那 に聞いた。

他人 の言 うことを聞入れ るか、 どうかは、あ なたのお考 えによるもので、外来 の人の機嫌 を損ねてはいけない。

た しか に神娘は慮 山の法 の持主で、凡人を助 けるため に役所 に来 た。

わた しは本当の狸 の妖怪で、園岩洞 の中の狸 の妖怪だ。

わた しを留めて恋恋 と しては、お役 に立たない。旦那 さまの ご病気が なお りに

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くい。

わた しが殺 された ら、葱や韮のようなもので、旦那 さまは瓦の上の霜のようだ。

葱や並が切 られても、 また伸び られ るが、霜や雪が溶 ければ、 もう見えない。

三つの 目の女 を要 ることはできないが、二つの 目の女はどこでも見つけられ る。

緑の木に咲いた、 きれいな花に、恋 してはいけない。実 った金色の枇杷をどっ さりお摘みなさい。

旦那は答えて、夫婦は同 じ枝に止 まっている鳥のようで、 どの鳥が驚かされ たか らといって、 自分だけ逃げるだろうか。

お前はや さ しい人で、そんなに自責 しなくてもいい。

た とえ、お前が妖怪であ って、俺は惑わ されて死んでもいい。

幸いに旦那 さまに杏め られ ないので、腰や背中を蔽いてあげる。

箔旦那は本当に惑わされて、やさ しく妖怪を伴 にす る。

慮山の神娘は彼 らの話をは っきり聞 くと、心中か ら煙や火が吹出す0

、 台詞'

'

「この妖怪は本当に口先が 旨い。薄∴旦那は妖怪 を殺す ことを許 さない。他の人 はこれを許 して も、わた し神娘は絶対許 さない !先ず法を行 って見せてやろう

。 」

と神娘は言 う。

「下役さん !一膳の水を持 って くれ !」 と神娘は言 う。 「神娘 !お喉が渇いたな ら、お茶がある

。 」

「わた しは宿命で水だけを飲むのだか ら、お茶を飲 まない !

「怒 らないで下 さい。家の旦那 さんは ご機嫌 を損 な ったが、わた しは失礼 しな か った。」 と下役は言 う。 「おお !わた しは本当に水 しか飲 まない。早 く水を持 っ て来て くれ !

「水を持 って来て上げよう、す ぐ来 るよ。」

下役は一杯の水を持 って来て、神娘に渡 した。神娘はその水を受取 ってか ら、

呪文を唱えて一 口飲んだ。そ して、苑旦那のベ ッドの前 に来た。

監遥義

呪文をかけた水を一 口吹き出す と、妖怪はび っくりした。

百本の弓の矢が妖怪の体 に刺 さって、妖怪はず きず き痛んだ。

妖怪は驚かされて慌てて、急いで逃 げ出す。

神娘は法を施 して、役所か ら外へ逃げ出 した妖怪を追 いかけて行 く0 妖怪が上へ逃 げようと したが、上には天の篭があるか ら逃げられ ない。

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妖怪が下へ潜 ろうと したが、下に地の網が妖怪を遮 っている。

妖怪が東方へ逃げようとしたが、東方には産山の兵が妖怪を遮 りとめている。

妖怪が振返 って南方へ逃げようとしたが神娘は丙丁 の訣で妖怪を打っ。

妖怪は体をひるがえ し、西方へ逃げようとしたが、神娘は庚 申金で妖怪を焼 く。

妖怪が北方へ逃げようと したが、神娘は訣を打 って、深い大海が現われ る。

妖怪は懸命に水にもぐろうとしたが、地の網が地下を しっか り覆 っている。

四方 とも遮 られて逃げられない。妖怪は逃げれば逃 げるほどあわてふため く。

つい、一つの計略が浮かんで来て、慮山の玄妙な法 と戦おうとす る.

強いて元気を出 して妖の法を施 し、その妖の法 も人をび っくりさせ る。

妖怪が土の中へ遁げる八卦の陣を しくと、神娘は岩や洞をこわ して妖怪を捉え ようとす る。

妖怪が急いで後へ退いて行 くと、神娘は法を施 して前へ進んで行 く。

妖怪が巽乾坤を使 うと、神娘は未坤 中の法を施す。

妖怪が五行の陣を しくと、神娘は六甲で妖怪をび っくりさせ る。

妖怪があせ り出 して戦いなが ら抜いた、一握 りの毛が千百万の狸の子に化 けて、

神娘を迷わせ ようとす る。

神娘は雷火の訣を打 って、狸の妖怪の子孫を焼払 う。

妖怪は妖の法を全部使い尽 しても、慮山の玄妙な法 にかなうことができない。

神娘は千斤の呪文を唱えて、金の鈎を放 り出 して妖怪を吊った。

金の鈎が しっか り妖怪を吊って、狸の妖怪は正体を現わす。

神娘は意識をとりもどす訣を打 って、蒋旦那を覚醒 させた。

神娘は娩曲に言 って、苑旦那に慰めて聞かせ る。

花公卿、箔公卿、 もとか ら一人の役人だ。

好色で妖怪につきまとわれた。読書人 として何 と愚かだろう。

温州に来て、役人と して執務す るはず なのに、下河灘で妖怪 につ きまとわれた。

妖怪を美人だと思 って、 自分の夫人に した。

毎 日気持ちよくっついて、妖気を受 けて病気になった。

わた しは何度 もはっきり話 して上げても、旦那 さんは妖怪 に惑われて、わた し の言 うことを信 じなか った。

今、 もう狸を しっか り捉えたか ら、 目を醒 ま して、 よ く見て ごらん0

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(18)

箔旦那が身を起 して見 ると、おや !この妖怪か !口は尖 り、尾は長 く、足の爪 先は釘のつ けた熊手のようだ。体中い っぱいの黒 っぽい毛は恐 ろ しい!

箔旦那は身を起 して、は っきり見 ると、元気を出 しなが ら、可伯が った。

神娘は狸を前へ動か して、狸の足の爪先が花旦那の額に突あた った。

慮山の神娘は笑いなが ら言 った。 「花旦那 さん、これを殺 してもよいか、どうか。

殺 した くないなら、 ここに残 しておいてもいい。」

花旦那はび っくりして頭がさえた。ぷんぷん怒 って、 この妖怪を殺 して くれ と 叫んだ。

慮山の神娘は金の鈎で、八百斤の狸を吊った。

一本の神剣を振回す と、狸の首を断 って血 まみれになる。

「下役 さん !茶碗三つを持 って来て くれ、狸の血を三杯盛 り入れ るか ら

」 と神 娘は言う。神娘が剣で妖気を払 った狸の血を苑旦那に飲 ませ ると、彼の病気がな る。妖怪の戸を役所前 の橋の端 までひ っぼ って、杉の木で組立てた棚 にかけて、

衆人に示す。七昼夜衆人に示 した。

下役は三杯 の血を苑旦那 に飲 ませ る

「旦那 さんは下河灘で、妖怪 に三回血を 吸い取 られたか ら、三杯の血を飲めば病気がなおる。」と神娘は言う。箔旦那は始 めの一杯の血を飲み、第二杯の血 も飲み、第三杯を飲みなが ら、彼は明らかに妖 怪の血なのだと思 って、吐き出 した。

一 口の血が地面に落ちると、役所の広間の地面が真赤になった。

「君、俺の体はまだ痛い !」 と箔旦那が言 うと、下役は神娘に聞 く。 「そこにあ る一本の棒を持 って旦那さんの体を軽 く推蔽いて上げれば、よ くなるだろう。」と 神娘は言う。

「あの棒が役に立っかどうか、君は神娘 にち ょっと聞いて くれ。」 と箔旦那は言

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つ。

下役が聞き出す と、神娘が 口を開かないうちに、二人の将は先に言 った。 「用意 のためにそこに置いた らいい。」

二人の将の言 う通 りに した。

旦那は今の出来 ごとを考える。

狸の戸を役所前の橋の端に置いて衆人に示す。七昼夜が過 ぎると、綿で狸の戸 を包んでか ら、油をつけて、一本の大きなろうそ くに した。

役所前の橋の端で狸の戸で作 ったろうそ くを燃や して、温州の役所あた りは太 平になる。

凶の星は三千里をこえる遠方へ退 き、吉の星は役所を明る く照 らす0

苑旦那は絶えず神娘を称えて、 「神娘 !わた しに法を伝授 して頂 けないか。」 と 聞 く。 「旦那 さんに法を伝授 して上げよう !願か けの帳面や役人のことを司 って

くれ。」「神娘にお礼を申す。」

内壇小衆神一駕、役人のことを司る苑旦那。

花宅は広間で祝宴を催 し、慮山の陳太陰をもてなす。

小官を助 けた功労は大きいか ら、 どうしても何かで神娘にお礼を申 し上げたい。

お気特はよ く分 った。木を買 って官を作 って くれればいい。

神娘は悟 りを開いた時に、温州のこの官に来 る。

内壇娘娘‑駕雲一片、温州に多 くの太陰宮が建て られた。

何のお土産 も受取 らないなら、小官はこのことをいっ も心 にか けてお く。

神娘は謝礼を受取 らず、旦那さんを助けたのは当 り前のことだ。

後に南江で蛇退治の時に、旦那 さんに助 けてもらいたい。

神娘はわた しの大恩人のお姉 さんで、大恩のお姉 さんを助 けるのは当 り前のこ とだ。

内壇小衆神一駕、苑宅の広間で法の本を写す。

神娘は慮山の法を伝授 して、

旦那 に法の本を伝授す る。

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(20)

神娘は貴い風 呂敷包みを肩 にか けて、箔宅の老若 に見送 られ る。

内壇で紙銭三枚を捧げて、神娘 と江、楊の二将はそれを分けてもらう。

次に南門の外 についた。巽山には白鶴の妖怪が現われた。

神娘は竜鳳の占いを して、つ まらない妖怪が崇 っていることが分 った0 神娘は金の鉄を放 り出 して、 白鶴の妖怪を斬殺す。

大きな妖怪は神剣で殺すべ きで、小 さな妖怪は神鞭で塵攻 にす る。

火で妖怪を焼払 って跡 もな く、巽山の地方は太平になる。

通 った梧誕頭板橋では、子魚の崇 りが百姓の生活を乱 している。

梧誕頭板橋では、重 さ二、三斤ほどの‑尾の子魚が崇 っている。曇 る日の午の 時刻の前 に、その水魚が淵の岸で寝ついているふ りをす る。不運 な人がそれを見 つ けると、捉えようと手探 りしなが ら、水の深い処 まで進んで溺死 して しまう。

こうして多くの人が害 された。

神娘は竜鳳の占いを行 って、神鞭で子魚を殴 りつ ける。

千年の妖怪を滅ぼすべ きで、万年の妖怪の種を絶つべきだ。

神鞭で一度だけ殴 りつ けると、小魚がこなごなになって しまう。

雷火で妖怪の戸を焼払 って跡 もな く、梧誕頭板橋の地は太平 になる0 次に自象橋頭の地についた。 白象橋頭は幸運に恵 まれている。

九匹の竜が集 まって珠を抱えている地方で、三回竜角を吹鳴 して官の敷地のた めに しる Lをつ ける。

その後、神娘は悟 りを開 く時に、 白象橋頭の宮に来て太平を保つ。

内壇娘娘‑駕雲一片、 自象橋頭に太陰宮がある。

次に端安の魚帯の地方 につ いた。 この地方 にも妖怪が現われた。

この地に現われたのは他の妖怪でなく、金魚が崇 って百姓を害 している。

端安の魚荷では金魚が崇 っている。ある家には、かめで金魚を飼 っている。そ のかめを娘に部屋の宙の下に置いた。その娘は毎 日食物や唾 などを金魚に食べ さ せた。いっ もこうしているうちに、金魚が陽気を持つようになったが、その娘は 陽気を吐き尽 して しまった。

(21)

ー 歌う・

唾を吐き尽 して陽気がなくなって、死んで閣魔の官に行 った。

彼女は死んでか ら魂が散 らず、昼に太陽に照 され、夜 に玉皇の露を受 け、丹薬 を棟 り、崇 って人を害する。彼女は普通の人を害 さず、 もっぱ らぶ らぶ ら遊んで いる人を害す る。 この妖怪は常に一人の娘 に化 けて、橋の枚 に立つ。温州へ行 く 人を見つければ、「お兄さんは温州に行 くのか。わた しは温州に行きたいが、道が 分 らないか ら、温州までわた しをつれていってもらえれば、本当に有 りがたい !」

う 。

道を通 る人たちはまちまちだ。心の正 しい人なら、 「お妹 さん !口で聞けば道 が分る。聞きなが ら行けばいいだろう !」 と言 う。ぶ らぶ ら遊んでいる人なら、

この娘を見て、心 も煙 くなる。 こんなきれいな娘が この寂 しい処で俺を待 ってい る。俺は彼女を家へつれていって嫁に しよう ! 「お姉 さん !俺は温州 までお姉 さ んをつれて行 こう。」 と彼はや さ しく言 う。本当に彼女をつれて行 く人で、 亡く なって しまった者は少 くない。間抜 けになったのもあれば、病気で死んだのもあ る。

ある日、神娘がそこを通 ると、彼女 に呼びかけられた。

神娘は、 こんな妖怪は珍 しくない、金華の橋の枚 にあ った馬の妖怪みたいだ、

と思 った。

神娘は竜鳳の占いを行 って、 これが金魚の妖怪だと分 った。

摘んだ一枚の荷の葉が魚を入れ るかごに化 けて、神鞭で金魚の妖怪を捉えた。

千年の妖怪を滅ぼすべきで、万年の妖魔の種を絶つべ きだ。

呪文を唱えて金魚の妖怪を降服 させ、いっ まで も人を害す ることは許 されない。

金魚の妖気を払 って、魚帯の地方はいっまでも太平になる。

次に瑞安県についた。瑞安県は太平の地方だ。

神娘は県内の景色を賞でて、 ここの百姓がどんな人たちか と試 してみ る。

東門を通 ると、お茶が出され、南門を通 ると、お菓子が出され る。

西門を通 ると、夜食にひき留め られ、北門を通 ると、ひきとめて泊 まらされ る。

神娘は瑞安県の城 内に入 った。瑞安 には太陰官が多 くある。

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神娘は一軒の家で遊ぶ と、その家は、「神娘はこの瑞安に留 まって、一年か半年 遊んで見ないか。」 と言う。 「留 まれない、道中妖怪退治 して人を助 けなければな らない。師に言つ けられた。」「そうか、一 ケ月か半月でもいいだろう。 この瑞安 には、お金はた くさんないが、人間が元気だ。食物 もある !家の孫たちは頭が禿 げているか ら、水薬でもあれば、少 しもらいたい

。 」

神娘は、 自分が産山の法で妖怪退治はす るが、水薬は持 っていないと思うと、

小包みの中か ら一枚の紙を取 出 して、疫病払いの呪文を唱えなが ら、子供たちの 頭の上 に擦付 けてや った。直ちに、その頭 の上 に黒 くて、つやのある髪 の毛が いっぱい生えた。皆は神娘が立派な方だと絶えず称えた。

「瑞安の人たちは 目上の人が 目上の人 らしく、後輩 も後輩 らしく、兄が兄らしく、

弟が弟 らしい。瑞安の人たちはこんなに 目上の人に孝行す るのだ。わた しはこれ 以上外で妖怪退治 してはいけない。わた しは家に帰 って親孝行 したい。」と神娘は

‑ヽ■ 昌つ.

神娘は江、楊の二将を産山へ帰す。 「お二人の将 !」「はい !」「お二人は産山の 洞に帰 りなさい。わた しは家に帰 って親孝行 したい。」

内壇小衆神両駕、江、楊の二将は産山に帰 った。

師の門前で守衛 し、その地の人たちを庇護 して、太平を保つ。

神娘は瑞安県を離れ、瑞安の百姓はお見送 りす る。

神娘は飛雲渡 に来た。飛雲渡には妖怪が現われた。

この地 に現われた妖怪は他のものでな く、煽塙の妖怪だ。

黒宿嶺で陳神娘は占いを誤 ったので、煽幅は飛雲江まで逃げて来た。

聖母がす ぐ来 ることを知 って、煽幅の妖怪は一腹の渡 し舟に化 けて埠頭で待つ。

「わた しの帰郷を知 って、渡 し舟がそこで待 っているのね !」 と神娘は言 う。

∈ 集うニ 】

神娘は埠頭で渡 し舟に乗 って、渡 し舟は速 く進んで行 く。

舟が川の中でひ っくり返 って、聖母は飛雲で災に逢 った。

災に逢 った しるLとして一本の線香を口でかむ と、そのかお りが産山の後の洞

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門までとどいた。

産山の師の奥 さんは占いを行 って、神娘が飛雲 にいることが分 った0

遣わされた江、楊の二将は、二羽の水鶏に化 けて、 口で竜のひげの席 を衡えて、

神娘を埠頭 まで載せた。神娘は埠頭か ら上が って行 くと、宿屋 の雄鶏が コケ コッ コ‑、コケ コッコ‑と鳴き出 した. 「わた しは災に逢 っても、お前は助 けて くれ な いのに、かえ ってわた しを笑 うのか。」 と神娘は言う。

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