三次元流れにおける溝付き正方形角柱周りの空力特性
(溝形状とアスペクト比変化による抗力低減効果)
井戸川 光貴
*1岡永 博夫
*2Flow Characteristics Around a Square Cylinder with Grooves in a Three
Dimensional Flow
(Effect of the drag reduction by grooves and aspect ratio)
by
Mitsutaka IDOGAWA
*1and Hiroo OKANAGA
*2(Received on Mar. 29, 2013 and accepted on May 5, 2013) Abstract
Recently, buildings have been becoming taller and taller. As for high rise buildings, the wind load becomes bigger as the buildings become higher. Therefore, these high rise buildings must avoid wind loading. Recently, many studies have discussed the characteristics of flow around a square cylinder such as a building, especially shape modification and drag coefficient. In this paper, the three-dimensional aerodynamic flow characteristics around a square cylinder are investigated. Square cylinders with various grooves and aspect ratios are used as test models. The drag coefficient is measured with a wind tunnel test. The flow visualization is carried out by using the suspension method. As a result, the drag coefficients of all square cylinders with grooves are lower compared to the square cylinders without grooves. As the groove width of the square cylinders become narrower, the drag coefficient decreases. Especially a maximum of 8.1% of drag coefficient reduction is achieved by the grooved cylinder. Furthermore, in the case of aspect ratio, we found that the reduction rate of a drag coefficient increases from aspect ratio 1 to aspect ratio 3, but the reduction rate decreases from aspect ratio 3 to aspect ratio 5.
Keywords: Square Cylinder with Grooves, Drag Coefficient, Three-dimensional Flow, Aspect Ratio
1. 緒言
昨今,数多くの超高層建築物が建造されており,今後 も更なる超高層化が予想される.超高層建築物は風によ る影響が大きい.その為,抗力低減技術は建築物の高層 化やコスト問題,環境問題などの観点から設計する上で 重要な要因になると考えられる.建築物の基本断面形状 の一つである正方形断面形状を有する物体周りの空力特 性は以前から多くの人によって研究が進められている. その中で,抗力低減あるいは後流領域の制御を目的とし て田村らは,正方形角柱のコーナー部分に1/6 の隅切や 隅丸を施すことによる抗力低減効果について示している. この研究によって正方形角柱のCD値が2.0 であるのに対 し隅切り角柱では1.4,隅丸角柱では 1.3 まで CD値が低 減することを明らかにしている 1).倉田らも同様に,正 方形角柱のコーナー部の形状を変化させることにより抗 力低減をはかっている.彼らは正方形角柱のコーナー部 分を切り落とし形状にすることで,円柱の CD 値である 1.2 よりも低減することを明らかにしている.このよう に柱状物体に対する抗力低減およびその流動特性は種々 の観点から研究が行われており,その組み合わせ方でさ らなる効果が期待されている 2).また小出らは実際の建 築物に窓やベランダがあることに着目し,正方形角柱に ベランダに見立てた溝を施すことによって CD 値が低減 することを明らかにした.また,溝をより深くすること によってCD値がさらに低減することも示している3).ま た,青山らは二次元流れでの正方形角柱に施された溝の 変化が空力特性にどのような影響を及ぼすかについて調 べている.その結果として,溝間隔を変化させることに よってより大きな抗力低減効果を得られることが確認さ れた4) 5).
しかし,
三次元流れでの溝間隔や溝幅を系統 的に変化させて流れの影響を調べた例は少ない.前報で は,三次元流れでの高さ方向のアスペクト比を変えた正 方形角柱を使用し CD値を実験的に明らかにしたが,ア スペクト比が小さい場合のみの研究であり,溝幅や溝間 隔の影響や抗力低減メカニズムについては言及していな い 6).そこで本研究では,正方形角柱の抗力低減の基礎 研究として,三次元流れにおいて溝付き正方形角柱の溝 間隔と溝幅,高さ方向のアスペクト比を変化させたとき の空力特性ならびにそのメカニズムを実験的に明らかに することを目的としている. *1 工学研究科機械工学専攻修士課程 *2 工学部機械工学科教授2. 実験方法
2-1 供試角柱および模型寸法 供試角柱はABS 樹脂製の正方形角柱を用いた.溝間隔 w,溝幅 s,溝深さ b として,Fig.1 に供試角柱の概略図 を示す.溝形状を変化させた角柱についてまとめたもの をTable1 に示す.正方形角柱は高さ h=100mm,1 辺の長 さd=40mm としたもので,アスペクト比は h/d =2.5 とな る.溝付き正方形角柱の溝幅 s=0mm, 2mm, 3mm, 4mm (s/d=0%, 5.0%, 7.5%, 10.0%) と変化させたものを用意す る.一方,溝間隔は w=0mm, 2mm, 3mm, 4mm, 5mm, 6mm, 8mm, 10mm, 20mm (w/d=0%, 5.0%, 7.5%, 10.0%, 12.5%, 15.0%, 20.0%, 25.0%, 50.0%) と変化させたものを用意し 抗力を測定する.アスペクト比を変化させた角柱につい てまとめたものをTable2 に示す.基本となる正方形角柱 は一辺の長さがd=40mm,高さを h=40mm としたもので あり,アスペクト比は h/d =1 となる.アスペクト比変化 における溝付き角柱は溝間隔 w=2mm,溝幅 s=2mm,溝 深さ b=2mm の大きさで統一している.正方形角柱と溝 付き正方形角柱ともにアスペクト比をh/d = 1,2,2.5,3, 3.5,5 としたものを使用し抗力測定を行う.角柱の高さ はアスペクト比の順番に h = 40mm,80mm,100mm, 120mm,140mm,200mm となっている.A [m2]は測定物 体の溝部分を除いた投影断面積であり,A0[m2]は測定物 体がS0 のときの投影断面積を表している.Fig.1 Test Models
Table1 Specification of Test Models of Grooves Change Type w/d[%] s/d[%] Grooves A/A0
S0 0 0 1.000 S22 5.0 5.0 0.950 S23 5.0 7.5 0.940 S24 5.0 10.0 0.936 S32 7.5 5.0 0.960 S42 10.0 5.0 0.968 S52 12.5 5.0 0.972 S62 15.0 5.0 0.976 S82 20.0 5.0 0.980 S102 25.0 5.0 0.984 S202 50.0 5.0 0.992
Table2 Specification of Test Models of Aspect Change
Type w/d[%]Grooves s/d[%] h/d Aspect ratio A/A0
S01 0 0 1 0.40 S02 0 0 2 0.80 S02.5 0 0 2.5 1.00 S03 0 0 3 1.20 S03.5 0 0 3.5 1.40 S05 0 0 5 2.00 S21 5.0 5.0 1 0.38 S22 5.0 5.0 2 0.76 S22.5 5.0 5.0 2.5 0.95 S23 5.0 5.0 3 1.14 S23.5 5.0 5.0 3.5 1.33 S25 5.0 5.0 5 1.90 2-2 抗力係数測定 本 実 験 で は 流 速 範 囲 0~60[m/s] , 吹 き 出 し 口 寸 法 400×400[mm]の吹出し型風洞を用いる.測定範囲内での 乱れ度は0.3[%]以内であり,底板と角柱との隙間はそれ ぞれ約0.5[mm]である.実験方法としては,Fig.2 に示す ように3 分力検出器を用いて X 軸方向の空気力(抗力), Y 軸方向の空気力(横力)を測定する.風速は U=20~40 [m/s]であり,Re=5.0×104~1.0×105 の範囲で実験を行った.
Fig.2 Outlines of Experimental Apparatus
また,抗力係数CDとレイノルズ数Re を求めるには以下 に示した式 (1)(2) を用いる.ここで D[N]は 3 分力測定 検出器より測定されるX 方向のひずみ量から算出した抗 力であり,ρ[kg/m3]は空気密度,A [m2]は測定物体の溝部 分を除いた投影断面積,U [m/s] は平均流速,d[m]は角 柱の代表長さ,ν[m2/s]は動粘度である. 2
2
AU
D
C
D
… (1)
Ud
Re
… (2) w S hLaser Sheet High Speed Camera 2-3 回流水槽を用いた可視化実験 Fig.3 は回流水槽実験に用いる装置概略図である.可視 化実験 は, 回流水槽とレーザライトシート(Green Laser Sheet),高速度カメラ(HAS-500)を用いて実験を行った. トレーサ粒子には平均粒径50 [μm] の ORGASOL を用い て角柱周りの流れを可視化した.実験条件として撮影速 度は200fps,撮影枚数が 1000 枚と 2000 枚,Re 数は 7900 である.また,(a) XY 断面で表した図はレーザーの照射 位置を角柱の高さの中間の位置 (h/2) を表す.一方,(b) XZ 断面で表した図はレーザーの照射位置を角柱の横幅 の中間の位置 (d/2) を表している.
Fig.3 Apparatus for Flow Visualization Water Tunnel
3.実験結果および考察
3-1 抗力測定実験 (溝形状変化) 3 分力検出器による抗力測定は Re 数を 5.0×104~1.0×105 まで変えて行ったが CD 値の変化はほとんど無かったた め,Re 数ごとの CD値を平均した結果を示す.なお,使 用する角柱のアスペクト比は h/d =2.5 である.Fig.4 には 溝幅 (s/d) を変えたときの角柱の CD 値の関係を示して いる.この図からS0 (s/d=0%) に溝を施すことで,溝を 施さない場合と比べて CD値は减少することが分かる. さらに,S0 (s/d=0%) から S22 (s/d=5.0%) まで CD値が低 減していき,S22 (s/d=5.0%) から S24 (s/d=10.0%) まで 徐々に CD 値が増加する傾向が確認できた.このことか ら溝幅を大きくすることで CD 値は増加することが分か った.続いて Fig.5 は溝間隔を変化させたときの角柱の CD値の関係を示した.こちらもS0 (w/d=0%) に溝を施す ことで CD値が减少する.S22 (w/d=5.0%) から溝間隔を 徐 々 に 広 げ る こ と で CD 値 は 増 加 し て い き S202 (w/d=50.0%) のときには S0 (w/d=0%) とほぼ変わらない CD値を示した.このことから溝幅を大きくしたときと同 様に,溝間隔を大きくすることで CD 値が増加すること が明らかとなった. S0 (w/d=0%) を基準にした各角柱の 抗力係数の低減率を表すと,Fig.4 の S23 (s/d=7.5%) ~ S24 (s/d=10.0%) では平均 6.4% の抗力低減効果が確認され た.続いて,Fig.5 では S22 (w/d=5.0%) のときに CD値が 一番低い値となり 8.1%の抗力低減効果を得られた.S42 (w/d=10.0%) ~ S62 (w/d=15.0%) で は 平 均 5.2%, S102 (w/d=25.0%) では 2.5%,S202 (w/d=50.0%) では 0.9% の 抗力低減効果を得られた.Fig.4 Relationship Drag Coefficient and Grooves Wide(s/d) of Square Cylinders(h/d=2.5)
Fig.5 Relationship Drag Coefficient and Grooves Interval(w/d) of Square Cylinders(h/d=2.5) 3-2 抗力測定実験 (アスペクト比変化) Fig.6 はアスペクト比 h/d=1, 2, 2.5, 3, 3.5, 5 の CD値を 示す.Fig.6 から,正方形角柱と溝付き正方形角柱ともに アスペクト比が大きくなるほど,CD値も増加していく. また,アスペクト比が異なるすべての角柱は溝を施すこ とで CD 値が減少することが分かった.さらに,溝が無 い場合と溝がある場合ではアスペクト比の違いによって CD値の低減率に差が生じる.アスペクト比h/d=1~ 3 まで CD 値 の 低 減 率 は 増 加 す る の に 対 し て 、 ア ス ペ ク ト 比 h/d=3~5 では低減率が減少傾向となることが確認された.
Fig.6 Relationship CD and Aspect Ratio (b) XZ 断面 (a) XY 断面 Camera Laser Laser Camera
0
1
1.2
1.4
1.6
D
ra
g C
oe
ffic
ie
nt C
DAspect ratio
1
2
3
4
5
Without Grooves With Grooves (s/d=5%,w/d=5%) Square Cylinder3-3 回流水槽を用いた可視化実験 (溝形状変化) Fig.7 は回流水槽を用いた可視化実験の実験結果であ り,PIV 解析を用いて 10 秒間の可視化動画を平均して角 柱側面であるXY 断面の流線を表したものである.なお, 角柱は Re 数の違いによって抗力係数の変化にほぼ影響 がなく,Re 数が異なっていても風洞実験と可視化実験の 定性的な違いはほとんどないと考える.Fig.8 のように角 柱の隅部から剥離した流れの距離を剥離幅 M[mm]とし て剥離幅の平均値を算出した. (a) S0 (s/d=0%, w/d=0%, h/d=2.5) (b) S22 (s/d=5.0%, w/d=5.0%, h/d=2.5) Fig.7 Experimental Results from PIV Analysis
Fig.8 Measurement of Separation Width
Fig.9 の X 軸に角柱の溝幅 (s/d),Y 軸に剥離幅 M を表 している.正方形角柱である S0 に溝を施すことで剥離 幅M が小さくなることが分かった.また,溝幅(s/d)を変 化 さ せ た 角 柱 を 比 較 す る と ,S23 (s/d=7.5%) , S24 (s/d=10.0%)でそれぞれ M=13.8 [mm],M=14.6 [mm]とな り,前述の抗力測定実験のように溝幅 (s/d) を大きくす るとCD値とともに剥離幅M が大きくなる.また,Fig.10 に は 溝 間 隔 (w/d) を 変 化 さ せ た 場 合 の 値 を 示 す . S22(w/d=5.0%) , S32(w/d=7.5%) , S62(w/d=15.0%) , S202(w/d=50.0%)の剥離幅 M はそれぞれ M=13.5 [mm], M=12.8 [mm],M=14.3 [mm],M=15.7 [mm]となった.こ の結果から溝間隔を大きくさせることにより CD 値とと もに剥離幅M が大きくなることが明らかとなった.
Fig.9 Relationship Separation Width and Grooves Width (s/d) of Square Cylinders(h/d=2.5)
Fig.10 Relationship Separation Width and Grooves Interval(w/d) of Square Cylinders(h/d=2.5)
3-4 回流水槽を用いた可視化実験 (アスペクト比変化) 三次元流れではXZ 断面の Z 方向の位置において大き く流れが異なるので,今回は角柱上部の流れを比較する ことにした.そこで,回流水槽を用いて三次元流れでの 高さ方向のアスペクト比の違いによる流れの変化を比較 検討した.使用する角柱はアスペクト比 h/d=1, 2.5, 3, 3.5 を使用した. Fig.11 の XZ 断面の流線画像は,PIV 解析を用いて 5 秒間の可視化動画を平均した流線画像であり,角柱の上 部から剥離する流れを表したものである. これらの画像 から各角柱の剥離高さH を計測し,詳細な値を Fig.12 に 示した.X 軸に角柱のアスペクト比,Y 軸に剥離高さ H を表している.丸いプロットは溝無し角柱であり,三角 のプロットは溝有り角柱となっている.この結果からア スペクト比が異なる角柱でも溝を施すことで上部の剥離 幅が小さくなることが確認できた.さらに,溝を施すこ とで剥離高さH の減少率はアスペクト比 h/d= 1 は 13%, Without Grooves With Grooves 12 13 14 15 16 17 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 Sep ar at io n w id th [m m ] w/d[%]
h/d= 2.5 は 18%,h/d= 3 は 21%,h/d= 3.5 は 14%であった.
剥離高さH の減少率は抗力係数の低減率と同じ傾向にな
ることが分かった.
(a) S03 (s/d=0%, w/d=0%, h/d=3)
(b) S23 (s/d=5%, w/d=5%, h/d=3) Fig.11 Streamline by PIV (Side view)
Fig.12 The Separation Width (Side view) Fig.13 は Fig.11 に示した角柱上面部の可視化結果を平 均速度ベクトルに表示させたものである.この図より, 角柱上面の剥離領域内の流速が非常に遅くなっているこ とが確認できる.そこで,平均速度ベクトルから角柱上 面部の平均速度分布をX 方向にそれぞれ X/D=0,0.5,1.0 の3 点において Z 方向に Z/D=0~0.75 まで計測した. Fig.14 は角柱上面での中心部分 (X/D=0.5) の速度を 計測している.使用する角柱は抗力係数の低減率に変動 がみられたアスペクト比 h/d= 3 と h/d= 3.5 を使用した. 丸いプロットは溝無し角柱であり,三角のプロットは溝 有り角柱となっている.Fig.14 に示す 2 つのグラフから も,正方形角柱に溝を施すことで流速が速くなることが 確認できる.また,Z/D=0.2 ~ 0.4 付近において抗力係数 の低減率が大きいh/d=3 の角柱は流速の上昇率が h/d=3.5 よりも高いことが明らかとなった.このことから角柱に 溝を施す事で角柱上面部分の速度分布が速くなり,抗力 低減に影響を及ぼしていると考えられる.
Fig.13 Velocity Distribution by PIV (Side view)
(a) Aspect Ratio h/d=3
(b) Aspect Ratio h/d=3.5
Fig.14 Mean Velocity Profiles Around Square Cylinders Fig.15 には三次元流れにおけるアスペクト比を変化さ せた場合の角柱後方の XZ 断面の流線画像を示す.5 秒 間の可視化動画を平均画像にしたものである.S03 と S23 の流線を比較すると,溝を施すことで後流の渦領域が広 がる様子が確認できる.また,S03.5 では巻き込みの渦 が形成されていないのに対して,S23.5 では溝を施すこ とで渦が明確に形成されているのが確認できた. Without Grooves With Grooves H H
0.5
1
1.5
0.2
0.4
0.6
0
Z/D
U/U0
Without Grooves
With Grooves (s/d=5%,w/d=5%)
0.5
1
1.5
0.2
0.4
0.6
0
Z/D
U/U
0Without Grooves
With Grooves (s/d=5%,w/d=5%)
1
2
3
4
10
20
30
0
Aspect ratio
Th
e s
ep
ara
tio
n hi
ght
[m
m
]
Without Grooves
With Grooves (s/d=5%,w/d=5%)
(a) S03 (Aspect ratio h/d=3)
(b) S23 (Aspect ratio h/d=3)
(c) S03.5 (Aspect ratio h/d=3.5)
(d) S23.5 (Aspect ratio h/d=3.5)
Fig.15 Streamline Images via PIV Analysis (Back point)