研究機関研究所近況
基盤研究機関 次世代女性生命科学研究所
Micropapillary pattern 陽性肺腺癌のリンパ節転移機序における c-Met 活性化の役割
次世代女性生命科学研究所 医学部助教 古 賀 佳 織
はじめに
次世代女性生命科学研究所の疾患関連遺伝子解析 プロジェクトの1つである「Micropapillary
pattern陽性肺腺癌のリンパ節転移機序における
c-Met活性 化の役割」についての研究を紹介する。
【背景と目的】
Micropapillary pattern(MPP)は肺腺癌において認
められる特徴的な病理形態の一つで、リンパ節転移 と密接に相関し、統計学的に有意な予後因子である と、我々を含めた諸施設より報告されている。しか し
MPPからリンパ節転移に至る機序は未だに解明 されていない。我々は間質浸潤先端部で腫瘍細胞が 未分化な小集塊を形成する浸潤様式を
small clusterinvasion
(SCI)と定義して注目し、MPP 陽性肺癌が
高率に
SCIをきたし、リンパ管侵襲を経てリンパ 節転移に至ることを報告した(Mod Pathol 2 0:5 1 4,
2 0 0 7;Virchows Arch 4 5 4:6 1,2 0 0 9) 。この小集塊 型浸潤には
HGF(肝細胞増殖因子)-c-Met系の関与 が推定される。c-Met は
HGFの受容体として、細 胞の遊走、浸潤、増殖、生存や形態形成に重要な働 きをしており、肺腺癌を含むさまざまな癌において その過剰発現と予後不良との関係が報告されている。
また肺腺癌の
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤治療 における耐性獲得の機序として、c-Met 遺伝子増幅 が明らかとなり、c-Met 阻害剤の開発も行われてい る。今回、この小集塊型浸潤に
HGF-c-Met系が関 与している可能性を考え、pT 1肺腺癌1 2 5例につい て免疫組織学的検討を行った。
【結 果】
今までの報告と同様に、pT 1肺腺癌1 2 5例におい て、SCI は
MPP陰性群に比較して陽性群でより高 率に認められた(P <0. 0 0 0 1) 。また、MPP および
SCI陽 性 群 は、リ ン パ 管 侵 襲(P <0. 0 0 0 1,P < 0. 0 0 0 1)お よ び リ ン パ 節 転 移(
P=0. 0 1,P = 0. 0 2 1)に有意に関連していた。
免疫組織学的検討において、c-Met は全例で、リ ン酸化
c-Metは1 2 5例中1 1 9例(9 5%)で、腫瘍細胞 の細胞膜と細胞質に発現していた。陽性細胞の割合 と染色強度を評価した検討において、リン酸化
c-図1:微小乳頭構造(Micropapillary pattern: MPP)
線維血管性芯をもたない癌細胞の小乳頭構造。
図2:Small cluster invasion(SCI)
間質浸潤部で腫瘍細胞が小集塊を形成する浸潤様式。
―1 2―
図3:MPP および SCI 陽性症例におけるリン酸化 c-Met の発現。腫瘍細胞の細胞質および細胞膜に陽性であ る。
Met
高発現群(2 1/1 2 5例、2 2%)は、有意に
MPPおよび
SCI陽性群に多く認められた(P =0. 0 1,P
=0. 0 0 5 9) 。また、リン酸化
c-Met高発現は、リン パ管侵襲(P <0. 0 0 0 1)、リンパ節転移(P =0. 0 4 4)
とも有意に相関した。さらに
MPPおよび
SCI陽性 群に限った検討において、リン酸化
c-Met高発現は 有意にリンパ管侵襲に関連していた(P =0. 0 0 0 1,
P
=0. 0 0 1 4) 。
リン酸化
c-Met高発現群は低発現群に比較して生
存 率 が 低 い 傾 向 に あ り、リ ン パ 節 転 移 の な い
p-StageIA
に限ると統計学的に有意な予後因子となっ
た(P =0. 0 3 1 3) 。
【ま と め】
以上より、MPP 陽性肺腺癌が
SCIを経てリンパ 節転移を来す機序に
c-Met活性化が関与する可能性 が示唆された。
おわりに
筆者は昨年8月に出産、育児休暇後、今年4月に 復職し、本学の女性研究者研究活動支援事業と連携 して研究とライフイベントとの両立を試みている。
昨年度から始まった女性研究者研究活動支援事業に おける研究支援者による研究協力、また、所属研究 室の鍋島一樹教授をはじめ多くの先生方の理解と協 力により、今後、さらなる研究推進とライフイベン トとの両立のロールモデルとなるよう努めていきた いと考えている。
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図1。ヒト膵島
膵島の60−70%がインスリン産生細胞(茶色)。他にグル カゴン、ソマトスタチン、PP 産生細胞がある。
研究機関研究所近況
基盤研究機関 膵島研究所
膵島研究所紹介
膵島研究所所長 医学部再生移植医学教授 安 波 洋 一
はじめに
生命活動に必須な血糖降下ホルモン、インスリン の産生細胞は生体内では唯一膵臓に存在し、他のホ ルモン産生細胞と共に、膵島を形成している (図1) 。
膵島は大きさ約1 5 0−2 5 0
μM(平均径) 、 2 0 0 0−3 0 0 0 個の細胞より構成される細胞塊として膵臓内に点在、
ヒト膵臓では約1 0 0万個存在する。そして、この膵 島インスリン産生細胞の絶対的、相対的機能不全に より発症するのが糖尿病である。従って、インスリ ン産生細胞の障害、再生、起源、分化、更には創生 に関する研究は細胞生物学発展に寄与するのみなら ず、その成果は膵島機能不全すなわち疾患としての 糖尿病の根治的治療法への開発に直結する。筆者は 現在まで一貫して重症糖尿病の新しい治療法として の膵島(細胞)移植の臨床、研究に従事してきたが、
最近では移植医療に加え、究極的な糖尿病治療とな るインスリン産生細胞の再生に関する研究を推進し ている。本稿では膵島研究所での研究概要を紹介す る。
研究内容
膵島研究所の基盤的研究、すなわちインスリン産 生細胞の障害機序の解明と再生、起源、分化、なら びに
iPS細胞、間葉系幹細胞を用いた創生に関して、
独自の膵島移植の手法を用いて、マウスならびにヒ ト膵島について、以下のプロジェクトを推進してい る。
#1.インスリン産生細胞障害、特に低酸素、高血 糖に起因する細胞死の機序解明と制御法開発(伊東、
小玉、安波、谷口) 。
研究開始の端緒は臨床膵島移植で最も重要な課題 である移植膵島生着率向上を目的にした研究である。
すなわち、膵島移植では単離膵島をドナーとして経 門脈的肝内に移植するが、移植後新たな血管新生を 伴う生着までの間(移植後1週間以内)に6 0%以上 の移植膵島が喪失する事実が判明しており、この制
図2。マウス経門脈的肝内移植膵島(移植後6時間)
好中球(茶色)が移植膵島に浸潤し、70%以上の移植膵島 が破壊されている。
J Exp Med202巻7号2005年の表紙に採用された。
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御法開発が急務となっている。我々は先の研究で肝 内移植後早期の移植膵島喪失は従来の細胞性拒絶反 応とは異なり、NKT 細胞と好中球を主体にした自 然免疫拒絶反応に起因することを世界に先駆けて明 らかにした(1) (図2) 。
更にはその惹起因子は移植膵島自身が放出する
HMGB1であることを報告した(2)
。HMGB 1は当
初
DNA結合蛋白として発見されたが、近年では生 体に障害がある場合、細胞外へ放出され、炎症を惹 起することが知られ、DAMP (damage-associated mo-
lecular pattern)またはAlarminとして研究が進めら れている。本研究所の課題として移植膵島からの
HMGB1放出の機序解明、ならびに関連した移植膵 島細胞障害(死)の新たな制御法開発に取り組んで いる。今までの研究成果として移植膵島の虚血、高 血糖環境によって誘導される細胞内カルシウム上昇 が細胞死のトリガーになっている知見が得られ、そ の抑制により移植膵島細胞死が制御できることが判 明している(薬理学岩本教授との共同研究、manu-
script in preparation)。この知見の臨床的意義は、レシピエントではなくドナー膵島の移植前処置で移植 後膵島細胞死を防止できるということであり、副作 用のない、細胞移植でのみ可能となった世界最初の 画期的成果で、その臨床応用を視野にいれ、現在は 米国の共同研究者とヒト膵島での効果を検討してい る。
#2.受容体
X欠損膵島(伊 東、小 玉、安 波、谷 口、Faustman)
#1とは別に、ある種の受容体欠損マウス膵島を ドナーに用い糖尿病マウスに移植すると、野生型で は血糖が正常化しないごく少量のドナー膵島数で移 植後1−2カ月後に血糖が正常化することが判明し た。現在、その機序を解析中で、この膵島は移植後 障害に抵抗性で、かつその状況下で再生能が発現す ることが判明した。この知見は全くあらたな膵島障 害の制御法と再生機序を解明できる可能性を示唆し ており、現在、鋭意研究を進めている。
#3.間葉系幹細胞(脂肪幹細胞、ペリサイト)を 用いたインスリン産生細胞の再生、増殖に関する研 究 (田中、野見山、柳瀬、伊東、小玉、安波、道具) 。
近年発表された間葉系幹細胞の移植時投与による 移植臓器への保護作用に着目し、我々は膵島細胞移
植での効果を検討している。その成果として、間葉 系幹細胞(皮下脂肪由来)と膵島を混合し糖尿病マ ウスに移植すると移植膵島細胞死が制御され、少数 の膵島移植で移植後2カ月かかるものの、レシピエ ントの血糖が正常化し、結果的に移植膵島のインス リン含有量が移植時の約2倍となることが判明した。
現在はどのような分子が関与しているのかについて、
ヒト膵島を糖尿病免疫不全マウスに移植する実験系 を含め検討中であるが、この機序を解明できれば、
その臨床応用により根治的な糖尿病治療薬の発見に 直結する可能性がある。
#4.新たな移植部位の開発:膵島生着に関与する 血管内皮細胞、ペリサイトの解析(伊東、小玉、安 波、道具)
臨床膵島移植では種々の理由で経門脈的肝内移植 が一般的であるが、先に示したように移植膵島喪失 という不利益を考慮すると肝臓以外の他の移植部位 を検討する必要がある。我々は、現在膵島の皮下移 植の可能性を検討している。この際に問題になるの が血管の再構築であるが、ある工夫により肝臓内と 同等以上の効率性で皮下移植膵島が生着することを 見出し、解析中である。この方法が臨床応用可能と なれば画期的成果となる。
#5.iPS 細胞、組織幹細胞からのインスリン産生 細胞の創生(西中村、小玉、安波)
糖尿病の根治治療として新たに創生したインスリ ン産生細胞を移植に用いる治療法がある。実際の臨 床応用には問題が山積しているが、今後の方向性と して臨床的視点より課題を絞り、研究を進める必要 がある。現在までに膵島をニッチとして
iPS細胞と 共に糖尿病マウスに移植すると腺管構造を示すイン スリン産生細胞が出現する知見が得られている。他 にはインスリン産生組織幹細胞の同定、動態解析さ らには他の幹細胞からのインスリン産生細胞の創生 に関する研究を進めている。
おわりに
上記研究を推進する基盤は福岡大学病院で実施さ れている臨床膵島移植にある。膵島移植は重症1型 糖尿病を対象にした新しい細胞移植医療で、現在開 発途上にあり、我が国では6施設(福島県立医大、
東北大学病院、千葉東病院、京都大学病院、大阪大
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表1.福岡大学病院に於ける膵島移植実施体制
福岡大学
再生・移植医学 :伊東 威、米良利之(ハーバード大学留学中)
小島大望、松岡信秀、金城亜哉(コーディネーター)
小方貴子、永石美晴、大津由莉(研究支援)
西中村瞳(ポスドク)、小玉正太(准教授)
安波洋一
内分泌・糖尿病内科:柳瀬敏彦、野見山崇、田中智子 放射線科 :高良真一、東原秀行、吉満研吾 薬学部、薬剤部 :片岡泰文、二神幸次郎、道具伸也 臨床検査医学 :松永 彰、川島博信
感染症内科 :田村和夫、高田 徹 アニマルセンター:波部重久
薬理学 :岩本隆宏、喜多紗斗美 理研免疫アレルギー
総合研究センター :谷口 克(センター長)、渡会 浩 産業医科大学第一外科:永田直幹(北九州総合病院)、岡本好司 鹿児島大学 :丸山征郎
学病院、福岡大学病院)が認定され、高度(先進)
医療として厚生労働省、橋渡し研究として文部科学 省の支援の下で実施されている。福岡大学病院に於 ける膵島移植実施体制を下に示す(表1) 。
膵島移植は細胞移植の特色を生かした再生医療の 先端に位置し、今後発展が期待できる新規医療分野 である。しかも、膵島基盤研究所で開発された新規 知見は単に膵島移植の臨床成績向上に寄与するのみ ならず、再生医療、さらには糖尿病の根治的治療法 開発に直結する可能性があり、我々の研究推進の原 動力となっている。今後とも、学内外と広く独創性 のある共同研究を推進したいと考えており、皆様方 からのご提案、さらにはご支援をお願いしたい。
参考文献
1.Yasunami Y, Kojo S, Kitamura H, Toyofuku A, Sa-
toh M, Nakano M, Nabeyama K, Nakamura Y, Mat- suoka N, Ikeda S, Tanaka M, Ono J, Nagata N, Ohara O, Taniguchi M. Vα14 NKT cell-triggered IFN-γ production by Gr-1+CD11 b+ cells mediates early graft loss of syngeneic transplanted islets. J Exp Med 2005; 202: 913.2.Matsuoka N, Itoh T, Watarai H, Sekine-Kondo E,
Nagata N, Okamoto K, Mera T, Yamamoto H, Yamada S, Maruyama I, Taniguchi M, Yasunami Y.High-mobility group box 1 is involved in the initial events of early loss of transplanted islets in mice. J Clin Invest 2010; 120: 735.
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図1 自動車用エアバッグの動作原理
研究機関研究所近況
産学官連携研究機関 安全システム医工学研究所
噴霧乾燥法による硝酸アンモニウムの防湿化と相安定化
安全システム医工学研究所 加 藤 勝 美
1.はじめに
平成2 3年6月より、 (財)福岡県産業・科学技術 振興財団からの委託研究(IST 産学官事業)の下、
「次世代自動車用エアバッグシステムの開発」に関 する研究を実施している。本研究では、新規ガス発 生剤の開発および新規エアバッグ形状の開発の大き く2つの研究課題があり、後者に関しては、既に前 報にて概要を紹介した。本報では、ガス発生剤に係 る研究について概説する。
2.ガス発生剤の開発動向および研究経緯 自動車用エアバッグは、 衝突時にインフレータ (燃 焼室)内でペレット状のガス発生剤が燃焼、燃焼ガ スでエアバッグが膨らむ(図1) 。自動車の衝突か ら搭乗者がフロントガラスなどと二次的に衝突する までの時間は、0. 0 3秒程度であることから、ガス発 生剤として高速で燃焼する火薬類に類する化学物質 が用いられている。
ガス発生剤の組成物として、かつては専らアジ化 ナトリウムが用いられていたが、アジ化ナトリウム が持つ毒性等の問題が取沙汰されるようになり、現 在では、硝酸ストロンチウム等を酸化剤とするガス 発生剤が主流となっているようである。しかしなが ら、自動車産業におけるニーズや自動車の高性能化 の中で、こうした現行のガス発生剤についてもまた 幾つかの課題が生じてきている。
現行のガス発生剤は、硝酸ストロンチウムのよう に金属を含むものが多く、燃焼時に高温の金属残渣 が多量に発生する。仮にこの残渣がインフレータか ら直接バッグへ噴出されれば、バッグ自体が溶ける あるいは燃える等の問題が生じるため、インフレー タには厳重なフィルタが設置されている。一方、イ ンフレータは比較的重い自動車部品であるので、1
!でも軽量化したいという業界のニーズがあること
に加え、最近の自動車のハンドル周りには、多くの 電装機器(空調やオーディオのコントロールスイッ チ等)を配置する傾向があるため、インフレータの 小型化が喫緊の課題となっている。
このため、フィルタ部分の減容に繋がる金属残渣 が発生しない、あるいは発生量が少ない第三世代の ガス発生剤の開発が求められている。この候補物質 として、金属を含まず燃焼残渣が生成しない硝酸ア ンモニウム(AN)が注目を集めているが、AN は、
使用環境温度領域(1 0 0℃以下)において固相間相 転移(結晶構造の変化)による体積変化が起こるた め、ガス発生剤として用いた場合、ペレットのひび 割れなどの不具合が起きる場合がある。また、AN は、吸湿性が高く、条件によっては、潮解してしま う等の取扱上の問題があり、解決すべき課題となっ ている。
―1 7―
Phase 1
Phase 3 Phase 2
溶液を噴霧乾燥
溶媒が蒸発し試料が一体化 溶媒中にANと
相安定化剤、ポリマーを分散
一体化した粒子が生成される 試料回収
サイクロンへ 観察窓 噴霧ディスク 試料溶液 熱風
Time[hour]
Water content [g/g]
0.05 0.04
0.03 0.02 0.01
0
0 2 4 6 8 10
AN/KN(9:1) AN/KN/PVA400(9:1:0.3) AN/KN/PVA400(9:1:1) AN/KN/CMCA(9:1:1) AN/KN/CMCNa(9:1:1) AN/KN/PVA2000(9:1:1) AN/KN/PVA2000(9:1:0.3) AN/KN/CMCA(9:1:0.3) AN/KN/CMCNa(9:1:0.3) AN/KNLatex(9:1:0.3) AN/KN/Latex(9:1:1)
図3 調製したスプレードライ粒子の吸湿性
※AN/KN と表記されているプロットがポリマー無添加の試料
3.本研究のアプローチ
本研究では、AN の防湿化および相安定化を目的 として、AN、相安定化剤(硝酸カリウム、KN)お よび防湿化剤(ポリマー)からなる水溶液に対して スプレードライ処理を行い,それぞれの組成物が一 体化した粒子を造粒することを試みた。AN/KN/ポ リマーが一体化した粒子を調製することができれば、
ポリマーによる防湿化および
KNによる相安定化が 同時に達成できるものと考えられる。
4.研究結果の概要 4. 1 粒子調製
主剤として
ANおよび相安定化剤として
KN(何れも和光純薬社製、試薬特級)を用いた。防湿化剤 として、ポリビニルアルコール(重合度4 0 0、PVAL) 、 ポリビニルアルコール(重合度2 0 0 0、PVAH) 、カ ルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa) 、 カルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMCA) 、 ラテックス(Latex)の5種類を用いた。上記
AN、KN、各ポリマーを9:1:0.
3あるいは9:1:1
などの重量組成で
milliQ水に溶解させ、スプレー ドライヤ(中部熱工業(株)製、図2)を用いて噴 霧乾燥させた。
噴霧乾燥後、何れの試料も白色の粉体となり、造 粒可能であることが分かった。また、造粒直後の含 水率は、何れの試料も1wt. %以下であった。ブラ ンクとして調製したポリマー無添加の試料は、試料 作成後数時間経過すると、湿ったような状態となり、
その後、ダマを形成した。一方、ポリマーを添加し た試料では、調製後数ヶ月経過してもこのような現
象は見られず、ポリマー添加により防湿性が向上し ていることを示唆する結果が得られた。
4. 2 防湿性
調製した各種スプレードライ試料の吸湿性を確認 するため、湿度4 0
RH%に調製したデシケータ内に貯蔵し、貯蔵前後の重量変化から吸湿量を測定した。
各試料の吸湿量の時間変化を図3に示す。この図 から、ポリマーを添加したスプレードライ試料は、
ポリマー無添加の試料よりも防湿性が向上している ことが分かる。特に、Latex 系の試料では、吸湿量 がポリマー無添加の試料の約1/1 0程度であり効果 が高い。これは、Latex 以外のポリマーは、水溶性 であるためポリマー自体に吸湿性があるが、Latex は不溶性であるため、防湿性を向上させる効果が高 かったものと考えられる。
4. 3 相安定性
調製した各種スプレードライ試料の昇温(0. 2
K/min)加熱下における熱的挙動を示差走査熱量計
(DSC)により観察し、固相間相転移に伴う熱変化 の有無を確認した。
DSC
測定結果を図4A に示す。この図から、AN 単独では、3 5℃、8 0℃、1 2 5℃にそれぞれ固相間相 転移に由来する吸熱ピークが観察されるが、スプ レードライ試料では、何れも1 0 0℃以下に吸熱ピー クは観察されなかった。スプレードライ試料には、
相安定化剤である
KNが添加されているため、AN および
KNが共晶を形成し、AN 由来の相転移を抑 制しているものと考えられる。
図2 スプレードライヤの模式図
―1 8―
一方で、CMCA の場合では、KN 添加によって抑 制することができない1 2 5℃の相転移由来のピーク も観察されなかった。さらに、
KN無添加のスプレー ドライ試料(AN:CMCA=9:0. 3)を調製し、DSC 測定を行ったところ、AN 単独で観察される3 5℃お よび8 0℃の相転移が観察されなかった(図4B) 。 したがって、CMCA 自体に
ANの相転移を抑制す る効果がある可能性が示された。
5.おわりに
本研究では、AN、相安定化剤およびポリマーが 一体化したスプレードライ粒子を調製し、防湿性お よび相安定性を評価した。その結果、スプレードラ イ処理を施すことにより、AN に防湿性を付与する ことができ、使用温度領域における相転移も抑制で きる可能性が示唆された。
本研究は、 (財)福岡県産業・科学技術振興財団 の資金援助の下に行った。また、東京大学環境安全 研究センターの新井教授、JAXA の堀教授、羽生助 教、本学理学部の林教授、原助教、旭化成ケミカル ズ(株)の熊谷氏、 (独)産業技術総合研究所の和 田博士、住友化学(株)の和田博士など、実に数多 くの方々のご協力の下、研究を遂行することができ た。ここに謝意を表す。
図4 調製したスプレードライ試料の熱挙動
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研究機関研究所近況
産学官連携研究機関 材料技術研究所
ELID 研削を用いた人工関節摺動面加工プロセスの構築
工学部准教授 森 山 茂 章
工学部教授 遠 藤 正 浩
材料技術研究所は学際的な研究を行うプラット フォーム創設を目的としており、医学、工学の研究 者およびメーカーが協力する研究開発事業である経 済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業に平成2 1 年 度 か ら 平 成2 3年 度 に 参 加 し た。研 究 テ ー マ は
「ELID 研削を用いた高能率・高精度表面処理によ る人工関節摺動面加工プロセスの構築」であり、メ タルオンメタル人工股関節の摺動特性を評価した。
事業の概要と実際に行った研究内容を紹介する。
〔事業の概要〕
高齢化社会の状況下で、高齢者の生活の質の維 持・向上に期待されているもののひとつに人工関節 がある。関節リウマチや変形性関節症などの骨・関 節疾患の発症により関節に疼痛を覚えたり可動域や 歩行能力が低下したりすることがある。人工関節置 換術は、これらの疼痛除去や関節機能の再建をする 為の治療法のひとつとして一般的になりつつあり、
2 0 0 6年には国内で人工股関節が約9 8, 0 0 0症例に達し ている。一方で、人工関節置換術の症例数の増加と 共に合併症やそれに伴う再置換術も増加しており、
人工関節置換術総数の約1 5%において再置換術が行 われているとの報告もあり、再置換の低減・抑制対 策が急務となっている。人工関節に関連する合併症 としては感染症や脱臼、骨折といった患者の症状・
骨質や手術手技に起因するものの他に、緩みや摩耗、
破損などのインプラントにも関連するものが挙げら れる。
人工関節における摺動部材の開発は、様々な新材 料や表面改質技術を導入することにより、耐久性の 向上と高機能化を目指しているが、メリットと同時 にデメリットの要素も抱えており、決定的な問題解 決には至っていない。ELID(電解インプロセスド
レッシング)研削は電解現象の利用により研削加工 中に砥石のドレッシング(目立て)が可能であるた め、常に最適な状態で連続的に長時間研削加工でき るとともにナノレベルの表面加工が実現可能である。
ELID
研削を用いた高能率・高精度表面処理による 人工関節摺動面加工プロセスの構築が実現した場合、
形状精度・表面粗さの向上や表面硬度の増大に伴う 耐摩耗性の向上、耐食性の向上によるイオン溶出の 低下など、 現在、 人工関節を取り巻く諸問題をブレー クスルーする可能性がある。そこでナカシマメディ カル株式会社、理化学研究所、岡山理科大学、上智 大学、岡山大学、福岡大学が参加して研究・開発を 行った。
〔ELID 研削表面における摺動特性評価〕
人工関節の通常の作動条件である歩行条件におい て摺動面は直接接触を起こし、金属と比較して軟ら かい材料である超高分子量ポリエチレンの摩耗の発 生は避けられない。摩耗によって発生する摩耗粉は、
人工関節と骨の間に緩みを生じさせる原因となり、
大きな問題である。人工股関節におけるもう一つの 問題は脱臼であり、再置換の主要な要因となってお り、最も有効な対策は骨頭の大径化である。よって、
高性能の人工股関節を実現するための課題は、摩耗 の減少と大径骨頭化である。現状では超高分子量ポ リエチレンの耐摩耗性の向上において、ガンマ線照 射によるポリエチレンのクロスリンク化やビタミン
E添加による耐摩耗性の高い超高分子量ポリエチレ ンの開発および臨床応用が試みられており、良好な 結果が得られている。しかし、超高分子量ポリエチ レンをカップの摺動面に使用する場合、要求される 寿命を有するポリエチレンの厚みとアウターシェル の強度を考慮すると、大径骨頭化は困難である。こ
―2 0―
図1 Hip シミュレータ の問題を根本的に改善するために、ポリエチレンラ
イナーを使用しないメタルオンメタル人工股関節が 考えられる。
超高分子量ポリエチレンを摩擦面とした場合、歩 行条件下で理想の潤滑状態である流体潤滑を実現す ることは、ほぼ困難である。これは、ポリエチレン の弾性係数が小さいために、荷重時の変形が大きく、
クリアランスを小さくすることができないためであ る。これに対して、メタルオンメタル人工股関節の 場合は、高い寸法精度を確保することができ、歩行 時にある程度の流体潤滑を行うことができる可能性 がある。しかし、メタルオンメタル人工股関節の形 状設計においては、両摺動面の材料が金属と限定さ れているため、弾性係数などの材料物性は大きく変 化させることができない。流体潤滑の可否に影響を 与えるのは、カップ−骨頭間のクリアランスであり、
十分な形状精度で骨頭およびカップを製作すること が可能であれば、小さな半径すきまを採用すること が可能となり、流体潤滑膜厚の増加が期待される。
形状精度および摺動面の小さな表面粗さを得ること ができれば、流体潤滑を行う摩耗の極めて少ない人 工股関節設計が実現できる可能性がある。
〔方法〕
メタルオンメタル人工股関節は、両摺動面が金属 であるため、電気抵抗法により潤滑状態を把握する ことが可能である。摩耗試験を行う際に摺動面間の 電気抵抗は、摺動面が分離している状態では大きく、
接触した場合は抵抗が小さくなることを利用する方 法である。また、電気抵抗法による流体潤滑膜の形 成状態の計測は、摺動面同士が直接接触しているか 否かを実機において非定常状態で精度よく確認でき るという大きな利点を有する。潤滑膜形成状態は、
電気抵抗法による分離度を測定電圧を完全分離電圧 で除した値と定義し、この分離度によって評価する。
つまり、摺動面が完全に分離した状態が分離度1で あり、接触が生じると分離度が減少し、大きな直接 接触が生じると分離度は0となる。
流体潤滑膜の形成は荷重や屈曲進展など運動条件 に大きく左右される。そこで、図1に示す股関節の 歩行運動を再現することができる
AMTI社製
Hipシミュレータを用いて実験を行った。人工股関節摩
耗試験における
ISO1 4 2 4 2の運動に準拠させ、潤滑 液は、牛血清とした。5 0
!または1 5 0
!の半径すき まを有するメタルオンメタル人工股関節の摺動試験 を行った。
〔結果および考察〕
摩耗の発生時期を調べるために行った短期試験に おける電気抵抗法による分離度は常に0であり、直 接接触が生じており、摺動部において骨頭および カップに摩耗痕が確認され、極めて初期に摩耗が発 生していることが確認された。これは、摩擦面の形 状誤差や表面粗さが形成される潤滑膜よりも大きく、
摺動初期において潤滑不良の状態となっているため であると考えられる。
長期摩耗試験においては摺動開始後1 0 0周期にお いては、分離度はほぼ0であり、骨頭とカップの直 接接触が生じているが、摺動開始後2 0 0周期目にお いては、荷重の小さい遊脚期において若干分離度が 上昇しているのが確認された。さらに摺動を行い摺 動開始後1 0 0 0周期に至ると、かなり高い分離度を示 して、その後は分離度の若干の増減はあるが、 4 0 0 0 0 周期においては、全位相において分離度が上昇した。
これは、摺動を繰り返すことにより、厚い流体潤滑 膜の形成が促され、潤滑状態が改善していることが 示された。
―2 1―
研究機関研究所近況
産学官連携研究機関 心臓・血管研究所
Lifestyle changes through the use of delivered meals and dietary counseling in a single-blind study −the STYLIST Study−の紹介
(UMIN Registration No. 0 0 0 0 0 6 5 8 2) Circ J. 2 0 1 2 ;7 6 :1 3 3 5 ‐ 1 3 4 4
文献1)朔 啓二郎
1)2)3)、野田 慶太
1)3)4)、瀬川 波子
1)5)、柳瀬 敏彦
3)6)福岡大学産学官連携研究機関「心臓・血管研究所」
1)、福岡大学医学部心臓・血管内科学
2)、 福岡大学病院
3)、福岡大学病院臨床研究支援センター
4)、福岡大学医学部生化学
5)、 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学
6)Key words:
体重の変化、宅配食、栄養指導、管理栄養士、多施設共同単盲検並行群間比較試験
1.はじめに
肥満(症)は循環器・代謝疾患の上流に位置する 危険因子であり
2,3)、減量は適切な治療法である。肥 満に対しカロリー制限食や成分調整をしたフォー ミュラ食品の研究が数多く行われた
4−7)が、高血圧 や糖尿病患者を対象に宅配食による食事療法の検討 は数件の研究報告
8−10)があるのみで、臨床データ
8,9)や体重の変化
10)等は詳細に検討されてない。今回、
私たちは短期間での宅配食(提供食)と管理栄養士 による栄養指導が高血圧・糖尿病患者の減量に有効 であることを検証するため、下記の多施設共同単盲 検並行群間比較試験を実施した。本プロジェクトは 経済産業省の公募事業「平成2 3年度医療・介護等関 連分野における規制改革・産業創出調査研究事業
(医療・介護周辺サービス産業創出調査事業) 」と して採択された。 「在宅配食(治療食等)事業を基 軸とした関連(周辺)サービス事業創出」グループ としてコンソーシアムを形成し(図1) 、福岡大学 産学官連携研究機関「心臓・血管研究所」を中心に、
臨床研究を企画・実施した。本報告書は
Circulation J(20 1 2)
1)に掲載した論文の紹介である。
2.研究の目的・対象・デザイン・方法・患者 割り付け・結果
研究目的
食事療法が必要な生活習慣病 (糖尿病、 高血圧症)
の患者を対象に、カロリーおよび塩分を適正に調整 した提供食を宅配し、管理栄養士による栄養指導が 生活習慣病の改善に有用であるか、栄養指導のない 場合と比較検討する。
研究対象 1)選択基準
#次のいずれかの疾患を有している方、!2型糖
尿病または耐糖能異常(2 0 1 0年日本糖尿病学会の診 断基準) 、
"本態性高血圧症(正常高値を含む) (2 0 0 9 年、高血圧治療ガイドラインの診断基準) 、
$2 0歳 以上の通院可能な方、%一日3食、規則正しく摂取 している方、
&被験者本人から文書同意取得できる 症例。
介入方法 1)栄養指導
文書同意取得後、栄養指導の有無で下表の4群に
Lifestyle changes through the use of delivered meals and dietary counseling in a single-blind study −the STYLIST Study−(UMIN Registration No.000006582)
Keijiro Saku1)2)3),Keita Noda1)3)4),Bo Zhang1)5),Toshihiko Yanase3)6)
1)AIG Collaborative Research Institute of Cardiovascular Medicine, Fukuoka University 2)Department of Cardiology, Fukuoka University School of Medicine, Fukuoka 3)Fukuoka University Hospital
4)Clinical Research Assist Center, Fukuoka University Hospital
5)Department of Biochemistry, Fukuoka University School of Medicine, Fukuoka
6)Department of Endocrinology and Diabetes Mellitus, Fukuoka University School of Medicine, Fukuoka
―2 2―
無作為割り付けを行った(図2) 。各群5 0名、計2 0 0 名のエントリーを計画した。観察期(0−4週)は 通常の家庭での食事摂取(日常食)を、宅配による 提供食は試験開始後の4−8週の4週間である。管 理栄養士は、被験者が栄養指導群(B、D 群)の場 合、被験者との直接面談し、あらかじめ被験者が記 載した栄養調査票に基づき、
!適正カロリーを守る ための指導、
"被験者の対象疾患に沿った栄養指導 を行う。その後、原則、2週間後に管理栄養士の勤 務時間帯に電話にて1 0分程度の栄養指導を行う。提 供食開始時、管理栄養士は、栄養指導群(C、D 群)
と直接面談し、栄養指導を実施した。C 群に関して は栄養調査票に基づき!"を実施、D 群は!を実施 した。その後、原則、2週間後に管理栄養士の勤務 時間帯に電話にて1 0分程度の栄養指導を行い、提供 食の摂食を遵守するよう指導した。
2)提供食
標準体重(身長(m)
2×2 2)と生活強度より計算 された係数を掛けた一日標準摂取カロリー範囲を計 算し、提供食の一日1 2 0 0
kcal用、1 6 0 0
kcal用、1 8 0 0
kcal用の中から選択する。塩分は一食あたり3g 以 下とする。提供食は、当日(月曜日〜金曜日)に昼 食、夕食、それぞれ毎食を
#ファミリーマートから の宅配または
#ファミリーマートで入手する。
評価項目
1)主要評価項目
提供食摂取前後での栄養指導の有無による体重の 変化
2)主な副次的評価項目
$
提供食摂取前後での栄養指導の有無による随時血 圧の変化
%
提供食摂取前後での栄養指導の有無による空腹時 血糖、グリコアルブミン、HbA1c の変化
&提供食摂取前後での栄養指導の有無によるLDL-
C、HDL-C、トリグリセリドの変化
3.研究結果
登録被験者の背景特性:年齢、性別、動脈硬化性 疾患のリスク因子はグループ間に有意差はなかった。
図3に日常食および提供食の体重の変化を示す。全 症例をプールして解析すると、最初の4週間は体重 図1:経済産業省「平成23年度医療・介護等関連分野における規制改革・産業創出調査
研究事業(医療・介護周辺サービス産業創出調査事業)」に係る大規模調査事業
図2:スタディデザイン 変則2x2 無作為割付
―2 3―
減少は認められなかった。栄養指導の有無で群分け しても有意差はなかった。それに引き続き実施され た適正カロリー4週間の提供食では、体重が有意に 下がった(平均で約−0. 6
kg低下) 。これを各群間 で検討すると、A 群(栄養指導が全くない)を除く
B+C+D
群において有意な体重減少を認めた。この
ことは、8週の介入期間において、いずれかの期間 に4週以上の栄養指導を受けたことが有意な体重減 少に関連したことになる。副次的評価項目において は、8週間の栄養指導と提供食で血圧が有意に低下、
4週から8週の栄養指導と提供食の組み合わせでグ リコアルブミンが有意に低下した。これらの効果を 介入、非介入でまとめると図4の様になる。さらに、
Linear Mixed Model
解析[Intention-to-treat analysis
(ITT 解析) 、割り付け重視の分析]により、提供 食と栄養指導の組み合わせパターンの、体重・腹 囲・血圧値・糖代謝に及ぼす効果を検討した。表1 左に示すように、A 群(栄養指導を全く受けていな い)と、A 群を除く
B+C+D群の間にこれらのパラ メータ(体重、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧、グ リコアルブミン)の変化パターン(群と期間の間の 交互作用)が有意に異なっていた。表1右に示すが、
A
群では、研究期間中に各パラメータに有意な変化 が認めなかったが、B+C+D 群では、各パラメータ が有意に低下した。
4.結 論
今回の介入研究は、管理栄養士による栄養指導と 提供食による短期間(8週間)の介入である。高血 圧および高脂血症を対象に1年間、同様な食事と栄 養指導の介入を組み合わせた研究では、それぞれ単
独の介入に比べ、 併用の医療経済効果はないと報告
8)されている。本研究において、短期間の食事と栄養 指導の介入において、有意な体重減少を認めたこと は、今後の食事療法の実施方法に一石を投じるもの と考える。研究の対象疾患は、肥満やメタボリック 症候群ではなく、BMI が2 0以上の高血圧または糖 尿病であり、国内における約3 0 0 0〜4 0 0 0万人の頻度 の高い疾患を標的にした。しかも、過体重の減量試 験と異なり、カロリー制限は行っていない。それで も、4週間の提供食にて1kg 弱の体重減少と高血 圧または糖尿病の様々なパラメターを改善させたこ とは、高血圧または糖尿病にとって有効な非薬物療 法となりうる。
5.今後の展開
栄養指導を有効に実施するためには、管理栄養士 による適切な栄養調査と専門的指導が必須であるが、
糖尿病の教育入院を除き大学病院の外来でさえ、十 分な食事指導は実施されてない。そこには管理栄養 士の不在、雇用不足の問題がある。これらのことに 国(経済産業省)も関心を寄せ、今回の大規模調査 事業につながったと考えられる。治療食の提供には コストと食事の多様性の問題が存在する。
本研究では栄養指導と提供食の組み合わせであっ たため、4週+4週(計8週)の期間を設定したが、
栄養指導を4週間受けていれば、4週間の提供食で 有意な治療効果が得られる。その効果は、提供食だ けでは得られない。つまり、4週間の栄養指導+提 供食の組み合わせが有効な食事療法と考える。今回、
高血圧、糖尿病を対象にして管理栄養士による栄養 指導と4週間(週5日)昼・夕食の提供食により、
図3:一次評価項目:提供食による体重の変化 図4:最小(ミニマム)介入での有効性
―2 4―
有意な体重減少と対象疾患の改善を認めた。この結 果を踏まえ、管理栄養士による栄養指導の普及と治 療食の提供のシステム構築、ならびに両者を組み合 わせた新たな食事療法の様々な分野での開発に期待 したい。
文 献
1. )
Noda K, et al.: Lifestyle changes through the use of delivered meals and dietary counseling in a single- blind study. The stylist study. Circ J 76: 1335-1344, 2012.2. )
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5. )
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6. )
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7. )
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