感染と防御・第5回
免疫による感染防御と、
免疫に基づく疾患
正常な免疫系が関与する疾患と、免疫系 の過剰反応や異常によって起こる疾患の 特徴について解説する。
免疫系のバランスと関係が強い病気 自己免疫疾患
アレルギー
要因 自己抗原(物質)に対する誤反応
例 インシュリン依存性糖尿病・リュウマチな ど
要因 外来抗原(病原体など)に対する過剰反応 例 花粉症・アトピー性皮膚炎・食物アレル
ギーなど
免疫系のバランスと関係が強い病気 免疫系のバランスが乱れると、アレルギー 症状や自己免疫疾患を発症しやすくなる。
免疫細胞
? ?
CONFUSION
あれ、なん だっけ?
えーと...!
免疫系が正常だから起こる現象
その臓器(細胞)は非自己
排除する
拒絶反応臓器移植により、他人の細胞が体内に入っ た場合、異物として排除する(拒絶反応)。
白血球の型(HLA)には多様性があり、HLAが一致しな いと拒絶反応がおこります。
免疫系が正常だから起こる現象 臓器移植の際、白血球の型(HLA)が一致す る確率は数万分の一。
一致確率
1 数万 白血球の型は、赤血球の
型(ABO)よりも、はるか に種類が多い。
免疫系が正常だから起こる現象
移植された臓器のHLAが一致しない場合 免疫抑制剤を使用する
HLAが一致しない臓器移植の場合、拒絶反 応を抑えるために免疫抑制剤を使用する。
アレルギー
免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こ ることをアレルギーという。
環境因子や遺伝的要素が関係すると考えられています。
アレルギーの原因物質
アレルギーを引き起こす環境由来の物質 (抗原)を、アレルゲンと呼ぶ
ヒスタミンとアレルギー
アレルゲンの 接種・吸入
ヒスタミンの放出
アレルギー反応
(炎症)
ヒスタミンは、病原体 が侵入した場合や、ア レルゲン・外傷・火傷 などの刺激により、ヒ スタミン産生細胞から 放出される。
好塩基球や肥満細胞などが ヒスタミンを産生する。
ヒスタミンとアレルギー
ヒスタミン
H1受容体
ヒスタミン受容体(H1~H4)を持つ細胞に 作用する
H2受容体 H3受容体 H4受容体
ヒスタミンとアレルギー
ヒスタミンがH1受容体を持つ細胞に作用する と、鼻水・発赤・かゆみ・浮腫・痛み・気管支 収縮など、炎症やアレルギー症状が起きる。
炎症 ヒスタミン
H1受容体
結合 アレルギー
ヒスタミンとアレルギー
H1ブロッカー H2ブロッカー 総合感冒剤、種々のアレル
ギー性疾患(じんま疹・ア レルギー性鼻炎・花粉症・
結膜炎)、痒みの緩和、酔 い止め。
主に胃の壁細胞に存在する H2受容体に作用し、胃酸分 泌を阻害する。胃潰瘍、胃 炎の治療薬として使用され ている。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンとヒスタミ ン受容体との結合を阻害する。
アナフィラキシー
強いアレルギー反応によって、アナフィラキシーが引 き起こされることがある
アナフィラキシーの症状として、じんましん・
呼吸困難・腹痛・嘔吐・下痢・血圧低下を伴う ショック等がある。
免疫系の臓器・器官
体内には、免疫系細胞が生み出され、成熟し、
機能するための臓器・組織・器官が存在する。
骨髄 脾臓 胸腺
扁桃 リンパ管
リンパ節
虫垂 パイエル板
免疫と関係が深い組織・器官・臓器 免疫系と関係する器官は、一次リンパ系器官と 二次リンパ系器官に分けられる。
一次リンパ系器官 二次リンパ系器官 骨髄、胸腺: 誕生、分化 リンパ節・脾臓: 集合・機能
細胞の分化とは?
分化とは、細胞分裂により異なる性質を 持った細胞がつくられること。
幹細胞 A
細胞 B
細胞 C
細胞 D
分化
幹細胞 A 幹細胞
A
増殖
幹細胞は自己増殖能と分化能 を持つ
親細胞と異なる性質を持つ娘細胞がつくられることを「細胞の 分化」とよびます。
幹細胞とは?
幹細胞は、細胞分裂後も同じ分化能を維持する 細胞のこと。種々の細胞を生み出す能力を持つ。
幹細胞の種類 神経幹細胞 皮膚幹細胞 肝幹細胞 造血幹細胞など
再生医療など、さまざま な分野で応用が期待され ています。
分化能を維持し、種々の細胞を生み出す
免疫系細胞の由来
造血 幹細胞
骨髄
造血幹細胞(血液細胞のもとになる細胞)は、
骨髄の中に存在する。
免疫系細胞の由来
白血球(免疫系細胞)と赤血球は、同じ造血幹細 胞から分化する。
造血 幹細胞
リンパ球系 幹細胞
マルチ 幹細胞
T細胞/NK細胞 B細胞
単球
好中球 好酸球 好塩基球
赤血球 巨核球(血小板)
白 血 球
一次リンパ器官
一次リンパ系器官(骨髄・胸腺)は、免疫細胞 が生み出されたり、分化する器官。
骨髄
骨髄は、骨の中に存在する柔組織で、造血幹細 胞を含んでいる。
造血幹細胞は、あらゆる血球系細胞(赤血球、白血球、リンパ球、
血小板のもとになる巨核球など)に分化できる。
胸腺
思春期 青年期 老年期 活発 退化
出生
活性
胸腺はT細胞を分化・成熟させる器官。思 春期以降、加齢にともない徐々に萎縮する。
胸骨の後ろに存在し、心臓の上部に存在する。
胸腺と老化
自己抗体産生 正常細胞の破壊
老化
老化による胸腺の萎縮 免疫力低下
感染症 ガン
胸腺と老化
加齢にともなう胸腺の萎縮は、免疫力の低下や 老化の要因と考えられている。
二次リンパ器官
二次リンパ器官は、免疫細胞が増殖(分化・成 熟)・集合し、免疫反応を行うところ。
脾臓
脾臓は、免疫系細胞を増殖(分化・成熟)・集 合させ、病原体を排除するための器官。
骨 髄
誕生
B B B B
B B
脾臓増殖・機能
B細胞の場合
リンパ管
組織液と栄養分の輸送を担う。
鎖骨下静脈(血管)とつながっている。
リンパ節
リンパ節は、免疫細胞が集合・増殖し、細菌・
異物・老廃物を処理したり、抗体を産生するた めの器官。
扁桃
扁桃は、口から侵入してくる病原体を防ぐ役割 を持つ。
咽頭口蓋弓の左右にある。
アーモンドの種子の形に似ているためアーモン ドの別称である「扁桃」と命名された。
腸管免疫と免疫寛容
正常な免疫系は、無害な抗原と反応しない(免疫 寛容)。
有害 無害
消化管内には、食物の他、病原性・非病原性の 微生物が入ってくる
食物アレルギー
食品に含まれる抗原に対して経口免疫寛容が起 こらなかった場合、食物アレルギーを発症する 可能性がある。
わずかな量で強い反応を起こすことがある 食物由来の抗原に過剰反応する状態を食物アレ ルギーと言う
腸管免疫系と経口免疫
腸管免疫系は病原体や異物を認識し、排除する 安全な食品・微生物に対して、腸管免疫系によ り経口免疫寛容が誘導される
経口免疫寛容が起こらないと、食物アレルギー や自己免疫疾患の原因になる
アレルギー 自己免疫疾患
健康
病原細菌 ウイルス 有用微生物
食品
腸管免疫系と経口免疫
安全
危険
腸管 免 疫 系( 小 腸)
免疫 寛容
正常
排除 受諾
破綻
腸管免疫系は、病原微生物の排除と、食物由来 の抗原や腸内細菌に対する免疫寛容に関与する。
腸内細菌の働き
ヒトの腸内には100兆個の細菌が生息している。
アレルギー 自己免疫疾患
健康
腸内細菌
病原細菌 ウイルス 有用微生物
食品 安全
危険
腸 管 免疫 系( 小 腸)
免疫 寛容
正常
排除 受諾
腸内細菌は、腸管免疫系の働きに影響する。
破綻
腸内細菌の働き
様々な要因により、常に腸内細菌叢は変化 している。
免疫疾患や感染症などと関連する。
消化器官の異常や、ある種の慢性疾患の要 因になる。
便秘、下痢 動脈硬化 肝障害 アレルギー 自己免疫疾患 感染症 ガン 腸内細菌叢の
バランス悪化 加齢
食品 ストレス 病原微生物 薬品
腸内細菌の働き
腸内細菌のバランスが崩れると、免疫系に異常 をきたし、免疫疾患などを引き起こす。
その他の疾患
免疫疾患
要因
パイエル板
パイエル板は、腸管免疫に関与する小腸の免疫 器官。
免疫細胞が集合している。
小腸に点在する免疫器官(リンパ小節の集まり)。
虫垂
虫垂は、小腸と大腸の接続部分に存在し、消化 管の免疫機能に関与すると考えられている。