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新しい偏光の測定の強さ可変測定実現 に向けた基礎研究

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令和元年度 卒業論文

新しい偏光の測定の強さ可変測定実現 に向けた基礎研究

広島大学理学部物理科学科 高エネルギー物理学研究室

B166060 佐田 和陽

指導教員 高橋 徹 主査 飯沼 昌隆 副査 志垣 賢太

2020 2 7

(2)

2

目次

1 序論 ... 4

1-1 研究背景 ... 4

1-2 研究目的 ... 5

2 偏光状態とその測定 ... 6

2-1 偏光状態の記述 ... 6

2-2 密度行列 ... 9

2-3 ブロッホ球 ... 10

2-4 量子状態推定 ... 12

2-5 射影測定とPOVM測定 ... 13

2-6 測定の不確定性 ... 15

3 測定の強さ可変測定 ... 16

3-1 光学素子 ... 16

3-2 消光比 ... 21

3-3 本実験の概要と考案したセットアップ ... 21

4 光学系の調整 ... 26

(3)

3

4-1 ガウシアンビームの伝搬モードの調整 ... 26

4-2 初期偏光準備 ... 34

4-3 Cal1,Cal2のアライメント及び消光比... 38

4-4 HWP2のアライメント ... 43

4-5 QWP2のアライメント ... 44

5 実験 ... 46

5-1 セットアップ透過後の偏光測定 ... 46

5-2 実験結果 ... 48

6 考察 ... 50

6-1 光路差によるビームのデコヒーレンス ... 50

6-2 ビームをプリズムで再帰反射させたときの偏光状態の変化 ... 51

6-3 偏光の測定の強さ可変測定の他のセットアップ案 ... 54

まとめと展望 ... 57

参考文献 ... 58

謝辞 ... 59

(4)

4

第1章 序論 1-1 研究背景

量子論に特有の性質、つまり重ね合わせや量子相関を応用する研究は近年の量子情報技 術の進展とともに活発に行われている。現在では、量子力学はツールとして十分に活用され ているが、その根底にある基本的な考え方は古典論とは相いれないものである。自然は量子 論と古典論の区別はないにも関わらず、なぜ両者は大きく異なるのか?両者を整合的に説 明しようとする試みはいくつもあるが、いまだに不十分である。また古典論と量子論との整 合性の問題は、量子論と相対論との融合などの物理学の根本的な課題に寄与するだけでな く、例えば量子状態を精密に制御する技術の向上や量子揺らぎを克服するような精密測定 技術の確立など、量子系と古典系が混在する系での技術向上に貢献する可能性がある。しか しながらこのような観点からの量子系そのものに焦点を当てた基礎研究は十分に行われて いない。

量子論と古典論との違いの 1 つとして、例えば位置と運動量のような非可換な関係の物 理量のペアの存在があげられる。これらの物理量は不確定性関係より、同時に正確な値を決 定することができないため、物理的な関係については全く不明なままである。しかし一方の 測定について、量子状態を完全に破壊しないような誤差を許容する測定を行えば、そのあと にもう一方の物理量の測定を行っても情報を得ることができる。このような連続した 2 の量子測定を行えば、非可換な物理量の相関を実験的に調べられる。さらに両者の測定から 両方の物理量の時間発展を負うことも可能になるかもしれない。これまでの量子力学の主 要な実験的研究は、非可換な物理量の一方だけの時間発展を扱ってきた。したがってこのよ うな実験ができれば、量子論のより深い理解につながるとともに、古典論と同じ枠組みで議 論できる可能性も出てくる。

このような観点から、我々の研究室では非可換物理量の両方の同時測定をキーワードに 量子測定の研究を行っている。連続した 2 つの量子測定を実現するためには、量子状態の 破壊の程度を制御できるような量子測定、つまり測定強度の制御可能な量子測定を実現で きればよい。もっとも簡単な量子系は 2 準位系であり、そのもっとも扱いやすい系は光子 の偏光である。そこで本研究では、光子の偏光について測定の強さを制御できる量子測定の 実現に向けた課題を取り上げた。なお、測定の強さを制御できる量子測定は近年活発に議論 されている誤差と擾乱の相補的な関係を実験的に調べるツールといても有用である。誤差 と擾乱の関係は測定の不確定性関係と呼ばれており、量子系と古典系を繋ぐ中心的な課題

(5)

5 1つと認識されている。

1-2 研究目的

光子の偏光物理量の連続測定は当研究室で過去にも行われていたが、そのセットアップ に使用していた偏光ビームスプリッタ(PBS)やビームスプリッタ(BS)といった光学素子 の系統的な影響(位相差や消光比など)によって、精度の高い実験を行うことができなかっ た。その系統的な誤差の問題を解消するために、それらよりも消光比の高い方解石を使用す るセットアップを模索した。今回考案したセットアップの特徴は、

(1) 系統的な位相差の発生や低い消光比の原因は、人口薄膜にあることがわかっている。そ こで人口薄膜を利用して作られたPBSBSといった光学素子を使うことなく、消光 比が105のオーダーの高い方解石を使用する。

(2) 可能な限り波長板などを使わない、シンプルなセットアップにする。

といったものであった。しかしそのセットアップに必要になる方解石のサイズは入手困難 なものであるということがわかったので、本研究ではこれまでに考案されていた方解石を 用いた実験セットアップを再検討し、実現可能性を実験的に調べることを目的とした。

(6)

6

第2章 偏光状態とその測定 2-1 偏光状態の記述

光(=光波)は、電荷密度、電流密度0の空間中を伝播する電磁波のことであり、マク スウェル方程式の解で表現することができる。電磁波の解は横波であり、空間的に2つの 方向に分けることが可能であるため、2つの振動モードが存在することになる。この横波 2モードの振動が規則正しい光のことを偏光という。偏光光波の電場を表す式は以下の ようになる。

𝐸𝐸(𝑟𝑟,𝑡𝑡) =𝐸𝐸𝑥𝑥𝑒𝑒𝑖𝑖(𝑘𝑘𝑘𝑘−𝜔𝜔𝜔𝜔+𝛼𝛼)𝑒𝑒𝑥𝑥+𝐸𝐸𝑦𝑦𝑒𝑒𝑖𝑖(𝑘𝑘𝑘𝑘−𝜔𝜔𝜔𝜔+𝛽𝛽)𝑒𝑒𝑦𝑦

= 𝐸𝐸𝑥𝑥

𝐸𝐸𝑦𝑦𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖� 𝑒𝑒𝑖𝑖(𝑘𝑘𝑘𝑘−𝜔𝜔𝜔𝜔)

ただし、x軸方向とy軸方向の電場のそれぞれの初期位相をα、βとし、その位相差をφ とした。また、x軸方向の偏光を水平偏光、y軸方向の偏光を垂直偏光と定義する。ここ で、電場の振動面とx軸のなす角をθとすると以下のように表せる。

𝐸𝐸(𝑟𝑟,𝑡𝑡) = |𝐸𝐸|�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑒𝑒𝑥𝑥+𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖sin𝑐𝑐 𝑒𝑒𝑦𝑦�𝑒𝑒𝑖𝑖(𝑘𝑘𝑘𝑘−𝜔𝜔𝜔𝜔)

= |𝑬𝑬|� 𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒆𝒆𝒊𝒊𝒊𝒊𝐬𝐬𝐬𝐬𝐬𝐬 𝒄𝒄� 𝒆𝒆𝒊𝒊(𝒌𝒌𝒌𝒌−𝝎𝝎𝝎𝝎)

古典的に考えたとき、光は、その電場振幅の2乗がエネルギーに対応している。水平偏光 板と垂直偏光板それぞれにこの光を入射させると、それぞれcos2𝑐𝑐, sin2𝑐𝑐の透過率で光が透 過し、それらの和は1となる。これを1光子に置き換えて量子描像で考えると、cos2𝑐𝑐, sin2𝑐𝑐 は、1光子を水平偏光板と垂直偏光板それぞれに入射させた際に透過する確率を表している とみなすことができる。実際、単一光子で実験を行うと、透過確率は上記のように測定され る。そこで1光子の偏光状態の基底を水平方向と垂直方向とすれば、𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐,𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝑐𝑐はそれぞれ の確率振幅を表していると考えられる。従って、2次元ヒルベルト空間において光子の偏光 状態は、

(7)

7

|𝜓𝜓⟩=𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐|𝐻𝐻⟩+𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖sinθ|V⟩

=� 𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒄𝒆𝒆𝒊𝒊𝒊𝒊𝐬𝐬𝐬𝐬𝐬𝐬 𝒄𝒄�

と表すことができる。ここで、|𝐻𝐻⟩, |𝑉𝑉⟩はそれぞれ水平偏光、垂直偏光に対応する基底ケット ベクトルである。位相差𝜙𝜙= 0のときの光子の偏光状態を直線偏光という。さらに、𝜙𝜙= 0,𝑐𝑐= 45°, 135°の時の光子の偏光状態を、45°偏光(P)、135°偏光(M)と定義する。

|𝑷𝑷⟩ ≡ 𝟏𝟏

√𝟐𝟐|𝑯𝑯⟩+ 𝟏𝟏

√𝟐𝟐|𝑽𝑽⟩

|𝑴𝑴⟩ ≡ − 𝟏𝟏

√𝟐𝟐|𝑯𝑯⟩+ 𝟏𝟏

√𝟐𝟐|𝑽𝑽⟩

位相差𝜙𝜙 ≠0のとき、楕円偏光となり、特に,�𝑐𝑐= 45°,𝜙𝜙=𝜋𝜋2, {𝑐𝑐= 45°,𝜙𝜙=𝜋𝜋2}であるとき の偏光をそれぞれ右回り円偏光(R)、左回り円偏光(L)と呼び、偏光状態は

|𝑹𝑹⟩ ≡ 𝟏𝟏

√𝟐𝟐|𝑯𝑯⟩+ 𝒊𝒊

√𝟐𝟐|𝑽𝑽⟩

|𝑳𝑳⟩ ≡ 𝟏𝟏

√𝟐𝟐|𝑯𝑯⟩ − 𝒊𝒊

√𝟐𝟐|𝑽𝑽⟩

と表すことができる。

次に、偏光物理量を定義する。量子力学において、物理量は演算子の形式によって表現す る。光子は横波の2モードを持つので、偏光状態は2準位系で記述できる。このとき、その 二つを測定基底とすればそれぞれの固有値は+1,-1となる。そこで、H偏光とV偏光、P 光と M 偏光、R 偏光と L 偏光をそれぞれ固有ベクトルとし、それらに対応する固有値を

+1,-1として、以下の3つの偏光物理量を定義する。

𝑺𝑺�𝑯𝑯𝑽𝑽|𝑯𝑯⟩⟨𝑯𝑯||𝑽𝑽⟩⟨𝑽𝑽|

𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃|𝑃𝑃⟩⟨𝑃𝑃||𝑀𝑀⟩⟨𝑀𝑀|

𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅|𝑅𝑅⟩⟨𝑅𝑅||𝐿𝐿⟩⟨𝐿𝐿|

(8)

8

また、2準位系の物理量はパウリ行列を使って表現することができる。それを確かめるため に、H偏光基底とV偏光基底を下記のように具体的な成分、

|𝐻𝐻⟩=1 0

|𝑉𝑉⟩=0 1

で表現すると、上記の偏光物理量は以下のようにパウリ行列で表現できることがわかる。

𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻=1 0

0 −1= 𝜎𝜎�𝑘𝑘 𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃 =0 1

1 0= 𝜎𝜎�𝑥𝑥 𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅=0 −𝑠𝑠

𝑠𝑠 0= 𝜎𝜎�𝑦𝑦

従って3つの偏光物理量は非可換な物理量の関係にある。

続いて、偏光物理量の期待値について説明する。|𝜓𝜓⟩=𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐|𝐻𝐻⟩+𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖sinθ|V⟩の量子状態に ある光子の偏光物理量の量子力学的期待値は以下のように表される。

�𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻=�𝜓𝜓�𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�𝜓𝜓�=𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐

�𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃=�𝜓𝜓�𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃�𝜓𝜓�=𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐cos𝜙𝜙

�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅=�𝜓𝜓�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅�𝜓𝜓�=𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝜙𝜙 ここで、|𝜓𝜓⟩⟨𝜓𝜓|を計算すると、

|𝜓𝜓⟩⟨𝜓𝜓| =� 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖sin𝑐𝑐�(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 𝑒𝑒−𝑖𝑖𝑖𝑖𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝑐𝑐) = cos2𝑐𝑐 𝑒𝑒−𝑖𝑖𝑖𝑖𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 sin2𝑐𝑐

=1

2 1 + cos2θ (𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝜙𝜙 − 𝑠𝑠𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝜙𝜙)𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 (𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝜙𝜙+𝑠𝑠𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝜙𝜙)𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 1− 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐

=1

2 1 +�𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻 �𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃� − 𝑠𝑠�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅

�𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃+𝑠𝑠�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅 1− �𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻

=1 2𝐼𝐼̂+1

2�𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�𝜎𝜎�𝑘𝑘+1

2�𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃�𝜎𝜎�𝑥𝑥+1

2�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅�𝜎𝜎�𝑦𝑦

(9)

9

|𝜓𝜓⟩⟨𝜓𝜓|を恒等演算子と 3 つの偏光物理量の期待値とそれぞれのパウリ行列によって表すこ

とができる。この表現方法を密度行列と呼び、一般的に密度行列は𝜌𝜌�と書き表される。

2-2 密度行列

今までは量子状態の表現として状態ベクトルのみを考えてきた。しかし一般的には状態 ベクトルでは表現できない場合がある。そこで、光子の一般的な偏光状態を密度行列で表す ことにする。

密度行列とは、対象とする系の完全性を満たす基底{|𝑠𝑠⟩}と、その系においてある状態|𝑠𝑠⟩が 見いだされる古典統計的な確率𝑃𝑃𝑖𝑖を用いて以下のように表現される。

𝜌𝜌�=� 𝑃𝑃𝑖𝑖|𝑠𝑠⟩⟨𝑠𝑠|

𝑖𝑖

密度行列はその定義から、𝑇𝑇𝑟𝑟[𝜌𝜌�] = 1を満たす非負演算子である。系で見いだされる状態|𝑠𝑠⟩

1 つだけの場合の密度行列は純粋状態と呼ばれ、これは今まで考えていた状態ベクトル と等価な表現である。一方で、その系で見いだされる状態|𝑠𝑠⟩が 2 つ以上の場合の密度行列 は混合状態と呼ばれる。混合状態は量子状態の重ね合わせを指すものではない。例として完 全系{|𝑠𝑠⟩}で張られた2つの系について考える(図2-1)。系1の光子について、H偏光が見 いだされる確率が100%であるとすると、系1の光子の偏光状態は密度行列を用いて

𝜌𝜌�= |𝐻𝐻⟩⟨𝐻𝐻|

と表され、これは純粋状態を表す。対して系2の光子について、P偏光、M偏光がそれぞ

50%の古典統計的な確率で見いだされるとする。このときの系2の光子の偏光状態は密

度行列を用いて

𝜌𝜌�=1

2|𝑃𝑃⟩⟨𝑃𝑃| +1

2|𝑀𝑀⟩⟨𝑀𝑀|

と表され、これは混合状態を表す。

(10)

10

2-1 1,2の光子の偏光状態とそれが見いだされる統計的確率

比較のために|𝑃𝑃⟩状態と|𝑀𝑀⟩状態の50%のプラスの重ね合わせ状態を考えると、

1

√2|𝑃𝑃⟩+ 1

√2|𝑀𝑀⟩= |𝐻𝐻⟩

となり、これは100%の|𝐻𝐻⟩状態と等しくなる。つまり系1と同じ純粋状態であり、系2 は異なる状態であるということがわかる。

2-3 ブロッホ球

偏光状態の密度行列で示したように、任意の 2 準位系の状態を密度行列で表すと、その 行列は単位行列とパウリ行列を用いて以下のように表現できる。

𝜌𝜌�=1 2𝐼𝐼̂+1

2𝑐𝑐1𝜎𝜎�𝑘𝑘+1

2𝑐𝑐2𝜎𝜎�𝑥𝑥+1 2𝑐𝑐3𝜎𝜎�𝑦𝑦

この式のパウリ行列の係数を3次元実空間において3軸の基底にとったときの単位球をブ ロッホ球といい、状態をベクトルで表現することができる。このベクトルをブロッホベクト ルという。ブロッホベクトルの大きさ𝑐𝑐0は、

𝑐𝑐02=𝑐𝑐12+𝑐𝑐22+𝑐𝑐32 (0≤ 𝑐𝑐01)

(11)

11

である。ブロッホ球を用いることで 2 準位系の状態を空間上で視覚的に認識することが可 能になり、状態の変化をブロッホベクトルの変化として考えることができるようになる。偏 光状態も2準位系とみなすことができるので、偏光状態を、⟨𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻⟩,⟨𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃⟩,⟨𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅⟩を軸にとった 3次元空間上のベクトルで表すことができる。純粋状態|𝜓𝜓⟩= cos𝑐𝑐|𝐻𝐻⟩+𝑒𝑒𝑖𝑖𝑖𝑖sinθ|V⟩にある光 子の偏光物理量の期待値は、測定基底をHV基底にとったとき、

�𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻=�𝜓𝜓�𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�𝜓𝜓�=𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝐵𝐵

�𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃=�𝜓𝜓�𝑆𝑆̂𝑃𝑃𝑃𝑃�𝜓𝜓�=𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝑐𝑐𝐵𝐵cos𝜙𝜙

�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅=�𝜓𝜓�𝑆𝑆̂𝑅𝑅𝑅𝑅�𝜓𝜓�=𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝑐𝑐𝐵𝐵𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝜙𝜙

であるから、ブロッホ球に対応させると図2-2のように表現することができる。ただ し、ブロッホ球における角度𝑐𝑐𝐵𝐵と、直線偏光の振動面と水平面のなす角𝑐𝑐は𝑐𝑐𝐵𝐵= 2𝑐𝑐の関係 にある。

2-2 ブロッホ球とブロッホベクトル

純粋状態のとき、ブロッホベクトルの大きさは1に等しくなっていることがわかる。

(12)

12

2-4 量子状態推定

ある偏光状態の光子について、偏光物理量を測定するとは偏光物理量に対する測定基底 での確率分布を得ることである。測定によって、それぞれの測定基底での確率が求まる。

3つの偏光物理量の統計的期待値を測定から得ることができれば、偏光状態の密度行列を 再構成することができる。3つの偏光物理量の期待値は、それぞれの測定基底で観測した確 率𝑃𝑃𝑖𝑖と固有値±1を用いて

𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻=𝑃𝑃𝐻𝐻− 𝑃𝑃𝐻𝐻 𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃 =𝑃𝑃𝑃𝑃− 𝑃𝑃𝑃𝑃 𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅=𝑃𝑃𝑅𝑅− 𝑃𝑃𝑅𝑅 で求まる。これを、

𝜌𝜌�=1 2𝐼𝐼̂+1

2𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻𝜎𝜎�𝑘𝑘+1

2𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃𝜎𝜎�𝑥𝑥+1 2𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅𝜎𝜎�𝑦𝑦

に代入することで密度行列を再構成でき、その光子の量子状態を推定することができる。こ れを量子状態推定(トモグラフィー)と言う。光子の量子状態を表すブロッホベクトルの大 きさは𝑟𝑟2=𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻2 +𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃2 +𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅2 で表され、0≤ 𝑟𝑟 ≤1である。純粋状態のブロッホベクトルは𝑟𝑟=

1となり、ブロッホ球面上のある点を指定する。それに対して0≤ 𝑟𝑟< 1となるとき、光子の

偏光状態は混合状態にある。その指標として純粋度(purity)というものがあり、次の式で定 義される。

1

𝑑𝑑 ≤ 𝑟𝑟𝑝𝑝1 (𝑟𝑟𝑝𝑝≡ 𝑇𝑇𝑟𝑟[𝜌𝜌�2]) (𝑑𝑑:対象とする系の次元)

これにより、状態がどれだけ純粋状態に近いか、定量的に評価することができる。純粋状態 の純粋度が1, 最大混合状態の純粋度が𝑑𝑑1となる。

(13)

13

2-5 射影測定と POVM測定

量子力学において測定といえば、ある状態の系について物理量を測定し、その固有値に対 応する測定確率を得る行為であると一般的に考えられている。系の状態|𝜓𝜓⟩は、その系を張 る完全性条件を満たす状態|𝑠𝑠⟩の集合{|𝑠𝑠⟩}と、その確率振幅𝛼𝛼𝑖𝑖を用いて

|𝜓𝜓⟩=� 𝛼𝛼𝑖𝑖|𝑠𝑠⟩

𝑖𝑖

と表すことができ、任意の基底の密度演算子|𝑠𝑠⟩⟨𝑠𝑠|を作用させることでその基底の確率振幅 𝛼𝛼𝑖𝑖を得る。この操作を射影測定といい、この演算子を射影演算子と呼ぶ。射影演算子の定義

𝜋𝜋�𝑖𝑖 |𝑠𝑠⟩⟨𝑠𝑠|

である。射影測定後の状態を|𝜓𝜓⟩とすると、

|𝜓𝜓= 1

��𝜓𝜓�𝜋𝜋�𝑖𝑖𝜋𝜋�𝑖𝑖�𝜓𝜓�

𝜋𝜋�𝑖𝑖|𝜓𝜓⟩= |𝑠𝑠⟩

となる。このように量子統計的確率𝑃𝑃𝑖𝑖

𝑃𝑃𝑖𝑖 =�𝜓𝜓�𝜋𝜋�𝑖𝑖𝜋𝜋�𝑖𝑖�𝜓𝜓�=⟨𝜓𝜓|𝜋𝜋�𝑖𝑖|𝜓𝜓⟩= |⟨𝑠𝑠|𝜓𝜓⟩|2

で求められる。

これに対し、一般の量子測定とは、クラウス演算子と呼ばれる演算子を用いて記述するこ とができる。今ここに、系Sと系P2つの部分系からなる系を用意する。部分系は被測定 系(システム系)Sと、Sと相互作用する測定器系(プローブ系)Pとし、それぞれの状態 を𝜌𝜌�𝑆𝑆, |𝑐𝑐⟩𝑃𝑃𝑃𝑃⟨𝑐𝑐|とする。このときこの全系の状態はテンソル積を用いて、以下のように表現で きる。

(14)

14

𝜌𝜌�𝜔𝜔𝑡𝑡𝜔𝜔 =𝜌𝜌�𝑆𝑆|𝑐𝑐⟩𝑃𝑃𝑃𝑃⟨𝑐𝑐|

次に、ある時間だけ測定を行う。測定過程における相互作用は、全系をユニタリ行列で時 間発展させることを意味するため、相互作用後の全系の状態は、

𝜌𝜌′𝜔𝜔𝑡𝑡𝜔𝜔=𝑈𝑈� 𝜌𝜌�𝑆𝑆|𝑐𝑐⟩𝑃𝑃𝑃𝑃⟨𝑐𝑐|𝑈𝑈�

と表すことができる。測定による相互作用の影響を見るために、𝜌𝜌′𝜔𝜔𝑡𝑡𝜔𝜔を系 P に関してトレ ースアウトすると

𝜌𝜌′𝑆𝑆=𝑇𝑇𝑟𝑟[𝑈𝑈� 𝜌𝜌�𝑆𝑆|𝑐𝑐⟩𝑃𝑃𝑃𝑃�𝑐𝑐�𝑈𝑈�

=� ⟨𝑠𝑠𝑃𝑃 |𝑈𝑈�|𝑐𝑐⟩𝑃𝑃𝜌𝜌�𝑆𝑆𝑃𝑃�𝑐𝑐�𝑈𝑈��𝑠𝑠�𝑃𝑃

𝑖𝑖

=� 𝑀𝑀�𝑖𝑖𝜌𝜌�𝑆𝑆

𝑖𝑖

𝑀𝑀�𝑖𝑖

となり、測定後の系Sの状態𝜌𝜌′𝑆𝑆を得ることができる。ここで、以下のように演算子を定義 した。

𝑀𝑀�𝑖𝑖≡ ⟨𝑠𝑠𝑃𝑃 �𝑈𝑈��𝑐𝑐⟩𝐵𝐵

これをクラウス演算子という。また、𝜌𝜌′𝑆𝑆を系Sに関する部分でトレースアウトすると、確 率の和を表すために1が得られなければならない。計算で示すと以下のようになる。

𝑇𝑇𝑟𝑟 �� 𝑀𝑀�𝑖𝑖𝜌𝜌�𝑆𝑆 𝑖𝑖

𝑀𝑀�𝑖𝑖

=𝑇𝑇𝑟𝑟[� 𝜌𝜌�𝑆𝑆 𝑖𝑖

𝑀𝑀�𝑖𝑖𝑀𝑀�𝑖𝑖]

=𝑇𝑇𝑟𝑟[� 𝜌𝜌�𝑆𝑆𝐸𝐸�𝑖𝑖]

𝑖𝑖

� 𝑇𝑇𝑟𝑟[𝜌𝜌�𝑆𝑆𝐸𝐸�𝑖𝑖]

𝑖𝑖

= 1

(15)

15

ここで定義した𝐸𝐸�𝑖𝑖≡ 𝑀𝑀�𝑖𝑖𝑀𝑀�𝑖𝑖POVM要素といい、完全性の要求から、∑ 𝐸𝐸�𝑖𝑖 𝑖𝑖=𝐼𝐼̂を満たす。こ の要素の集合{𝐸𝐸�𝑖𝑖}をPOVMと呼ぶ。物理的には、𝑇𝑇𝑟𝑟[𝜌𝜌�𝑆𝑆𝐸𝐸�𝑖𝑖]がプローブ系Pの出力結果𝑠𝑠にお ける系Sの出力確率を表す。POVM測定は基底となるPOVM要素を必ずしも直交するよう にとる必要はないため、より一般的な測定方法であると言える。射影測定と異なり、直交し ないようなPOVM要素で測定を行った場合、物理的意味を持つ測定値を得ることはできな い。しかしこの場合でも測定結果𝑠𝑠の確率分布を得ることはできる。また射影測定とは異な り、測定によって量子状態を完全に破壊することはない。これは測定の強さを弱くした測定 とみなすことができ、POVM 要素のとり方が測定の強さを変えることに対応する。このよ うに考えると、測定の強さ可変測定はPOVMで表すことができると考えられる。

2-6 測定の不確定性

非可換な2つの物理量を、初期状態の破壊の程度を制御するために1つの物理量をPOVM で測定(中間測定)し、もう一方の物理量をPOVM測定の後に射影測定で測定(終状態測 定)することを考える。ある初期量子状態|𝑠𝑠⟩についての中間測定の物理量を𝐴𝐴̂𝑚𝑚、終状態測 定の物理量を𝐴𝐴̂𝑓𝑓とすれば、実際に得られる期待値は測定誤差と測定の反作用の影響を含ん だものとなるため、それぞれ初期状態から期待される期待値�𝐴𝐴̂𝑚𝑚0=⟨𝑠𝑠�𝐴𝐴̂𝑚𝑚�𝑠𝑠⟩、�𝐴𝐴̂𝑓𝑓0=

⟨𝑠𝑠�𝐴𝐴̂𝑓𝑓�𝑠𝑠⟩とは異なるはずである。実際には、誤差と反作用は測定確率に影響するため、直接得

られる測定確率は初期状態が示す統計的性質とは異なる。中間測定の測定確率から求まる 期待値を⟨𝐴𝐴𝑚𝑚𝑒𝑒𝑥𝑥𝑝𝑝、終状態測定から求まる期待値を�𝐴𝐴𝑓𝑓𝑒𝑒𝑥𝑥𝑝𝑝とすると、これらと測定の影響が ない期待値とを比較することで、中間測定の誤差εとその測定による反作用ηを評価する ことができる。これらを用いて、測定誤差と測定の反作用を以下のように定義できる。

𝜖𝜖=⟨𝐴𝐴𝑚𝑚𝑒𝑒𝑥𝑥𝑝𝑝

�𝐴𝐴̂𝑚𝑚0 1− 𝜂𝜂=�𝐴𝐴𝑓𝑓𝑒𝑒𝑥𝑥𝑝𝑝

�𝐴𝐴̂𝑓𝑓0

𝐴𝐴𝑚𝑚と𝐴𝐴𝑓𝑓は相補的な関係にあり、この関係を測定の不確定関係と呼ぶ。これは期待値が異な ることを意味するものであり、揺らぎの関係を表す状態の不確定性関係(ロバートソンの不

(16)

16

等式)とは全く異なるものである。特に2準位系では、

𝜖𝜖2+ (1− 𝜂𝜂)21

という関係が成り立つ[5]。不等号がつくのは、測定セットアップの不完全性が関係するか らである。

中間測定の動作がどれだけ理想に近いかを実験的に確認するためには、測定の不確定性 関係を調べる必要がある。さらに将来的には測定の不確定性関係の情報を用いることによ って、測定の影響を排除した測定前の確率分布を推定することが可能となる。測定の不確定 性関係には測定前の量子統計と測定後の古典統計との間をつなぐ重要な役割があるが、本 論では議論しない。

(17)

17

第3章 測定の強さ可変測定 3-1 光学素子

本節では、測定の強さ可変測定の実験セットアップに使用する光学素子についての説明 をする。

(1) GRIN(屈折率分布型)レンズ[6]

GRINレンズは一般的にファイバーからの光をコリメートまたは集光するために用いら れる。空気とレンズの屈折率の違いを利用せず、半径方向に屈折率が変化するレンズの みでビーム伝播を調整できる。

本実験ではビームをコリメートするために使用した。

(2) 方解石(Calcite; Cal)[7]

方解石は複屈折性を持つ結晶である。方解石は直交する2つの軸によって屈折率が異な り、図3-1のような光学軸に対して垂直なモードのビームは直進し、同じ平面内のモ ードのビームは屈折する。一般的にそれぞれのビームを常光線、異常光線という。この 光学軸は方解石の対角線に一致しているので、ビームを入射する方向によらず常に同じ 方向に異常光線は屈折する。消光比は1: 105である。消光比については3-2で説明する。

本実験で用いた2つのCalはともに、ソーラボジャパン製の開口10mm×10mm、ビー ム分離幅4mmのものである。なお、Cal表面には反射防止膜の処理は施されていない。

波長が810nmの入射光に対する常光、異常光の、

・屈折率

・光路長

・入射時の位相を0°としたときのCal終端での位相 を以下の表にまとめた

𝜆𝜆= 810𝑠𝑠𝑛𝑛 常光(ordinary light) 異常光(extraordinary light)

屈折率 1.6485 1.4818

光路長(mm) 65.4 59.1

Cal終端位相(deg) 287 358

(18)

18

3-1 方解石のビーム分離の様子(斜めと真上から見た図)

本実験ではGT(後述)を自動回転ステージに取り付けて実験を行った。しかし、自 動回転ステージは動作を繰り返すうちに設定角度がずれることがわかっている[8]。特 に、10分の1桁程度で角度を前後に回転させたとき、誤差が生じることがわかった。よ って、自動回転ステージを動かすリモコンの表示とは別で、自動回転ステージ本体の角 度の目盛りを10分の1の桁まで見て確認し、その桁でズレがない状態で実験を進めた。

また、なるべく自動回転ステージの回転方向を一方向にすることに注意して実験を行っ た。自動回転ステージを使うときはすべてこの方法に従って実験を行った。

(3) 偏光板(Polarizing Plate; PP)

偏光板とは、入射光のある特定の直線偏光のみを透過させる偏光子である。

本実験では、GRINレンズから出射されたビームから実験で使う初期偏光を準備する手 順を簡潔に行うためと、6-1の実験で6つの測定基底を作るために使用した。

(4) グラントムソンプリズム(Glan-Thompson Prism; GT)[9]

2つの複屈折結晶を貼り合わせた接合プリズムで、接合面において2つの偏光に分離 し、一方は全反射し吸収され、もう一方が透過するように作られた偏光子である。消光

(19)

19 比は1: 105である。

本実験では初期直線偏光の準備に使用した。この光学素子も自動回転ステージに取り 付けている。

(5) 波長板(Wave Plate)

結晶の直交する2つの軸によって屈折率の異なる複屈折結晶であり、入射した光波の 直交する偏光状態に位相差をつけ、入射偏光の状態を変化させる光学素子である。位相 が遅れる方の光学軸をSlow軸、進める方をFast軸という。

3-2 波長板の光学軸

波長板による位相差が入射したビームの12波長分(𝜋𝜋)となるものは12波長板(HWP)、14 波長分(𝜋𝜋2)となるものは14波長板(QWP)と呼ばれる。本研究では、H偏光軸とSlow が一致するときを 0°とし、図 3-1 のように、ビームが向かってくる方向から見て反 時計まわりにθの角度が増えるようにしている。これらの光学素子による偏光状態の変 化の作用は、数学的にはユニタリ変換で記述される。Slow軸とFast軸のビームの位相 差をεとすると、

𝑈𝑈�𝜃𝜃,𝜖𝜖=𝑒𝑒−𝑖𝑖𝜖𝜖2cos2𝑐𝑐+𝑒𝑒𝑖𝑖𝜖𝜖2sin2𝑐𝑐 −𝑠𝑠𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐sin𝜖𝜖 2

−𝑠𝑠𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐sin𝜖𝜖

2 𝑒𝑒𝑖𝑖𝜖𝜖2cos2𝑐𝑐+𝑒𝑒−𝑖𝑖𝜖𝜖2sin2𝑐𝑐 と表現され、HWP、QWPについて具体的に計算すると以下のようになる。

(20)

20

𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃(𝑐𝑐):𝑈𝑈�𝜃𝜃,𝜋𝜋 =−𝑠𝑠 �𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 −𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐�

𝑄𝑄𝐻𝐻𝑃𝑃(𝑐𝑐):𝑈𝑈�𝜃𝜃,𝜋𝜋

2= 1

√21− 𝑠𝑠𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 −𝑠𝑠𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐

−𝑠𝑠𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 1 +𝑠𝑠𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐�

3-3,4はそれぞれの波長板にP偏光を入射した場合の偏光の状態の変化を表してい

る。

3-3 P偏光をHWPに入射した時の偏光の状態変化[10]

3-4 P偏光をQWPに入射した時の偏光の状態変化[10]

(6) 補償板(Compensator)

補償板は直交する 2つの直線偏光の位相差を調節することができる光学素子である。

バビネ=ソレイユ補償板、ベレック補償板などがある。

今回考案したセットアップでは、2つに分離した光路の光路差によって生じる位相差を

(21)

21 相殺するために使用する。

(7) リトロリフレクタプリズム(再帰反射プリズム)

リトロリフレクタプリズムとは、入射ビームを平行でかつ反対方向に反射させる光学素 子であり、本実験ではその用途で使用した。プリズムの反射面を鉛直方向にしてビーム を入射させたときの反射の様子は図3-5に示した。

3-5 リトロリフレクタプリズムでの反射の様子

3-2 消光比

消光比とは、偏光子とそれに入射する直線偏光の軸が平行であるときの透過率𝑇𝑇𝑃𝑃𝑀𝑀𝑥𝑥と、垂 直であるときの透過率𝑇𝑇𝑃𝑃𝑖𝑖𝑀𝑀の比である。透過率𝑇𝑇は、偏光子に入射する前後のビームの強度 をそれぞれ𝐼𝐼𝑖𝑖𝑀𝑀,𝐼𝐼𝑡𝑡𝑜𝑜𝜔𝜔とすると、𝑇𝑇=𝐼𝐼𝐼𝐼𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜

𝑖𝑖𝑖𝑖である。

3-3 本実験の概要と考案したセットアップ

本節では、偏光物理量𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻を測定対象とした、測定の強さ可変測定の新規セットアップに ついて説明する。当研究室で過去に考案された偏光の強さ可変測定のセットアップは、光学 素子の系統的な誤差の問題[11]や、使用する方解石が入手困難であるといった問題を抱えて いた[12]。そこで、新たなセットアップとして図3-6で示すものを考案した。

これらのセットアップでは、2-3で述べた被測定系は偏光状態、測定器系は𝑛𝑛= ±1の二つ

(22)

22

の光路に対応している。そして、測定の強さとは、被測定系と測定器系の2つの相互作用の 強さを指し、その強さはHWP2の回転角度θによって制御することができる。

3-6 本実験セットアップの全体の概観

(ビームは CalHWPの上段部と下段部の2か所で伝播する。実線はセットアップ上 段側をビームが伝播する経路を示しており、破線はリトロリフレクタプリズムで反射した 後セットアップの下段部を伝播するビームの光路を表す。)

3-6について、特に偏光の測定の強さ可変測定に関係する部分を抜き出し図3-7,8,9 に示した。図3―7,8については、真上から見たセットアップを、リトロリフレクタプリズ ム反射前をセットアップ上段、反射後をセットアップ下段として分けて示した。

3-7 偏光の強さ可変測定の実験セットアップ概観(上段)

上段のビームは、地面から60mmの高さを水平に伝搬している。

(23)

23

3-8 偏光の強さ可変測定の実験セットアップ概観(下段)

下段のビームは地面から54mmの高さを水平に伝播している。

3-9 偏光の強さ可変測定の実験セットアップ概観(横)

HWP1,HWP2は半円状になっており、下段側を伝播する光子がそれらを透過しないように

設計されている。

次に、このセットアップで光子が各光学素子を透過して偏光状態が変化する様子を数式で 説明する。クラウス演算子とPOVM要素の導出方法は、

(ア) 偏光状態の変化前後を比べることで求める。

(イ) クラウス演算子の定義式から求める。

2通りある。以下それぞれについて説明する。

(ア) まず初期直線偏光状態を HV 基底で以下のように表す。(𝐶𝐶𝐻𝐻,𝐶𝐶𝐻𝐻は𝐶𝐶𝐻𝐻2+𝐶𝐶𝐻𝐻2= 1を満 たす任意の実数とする。)

|𝜙𝜙𝑖𝑖=�𝐶𝐶𝐶𝐶𝐻𝐻𝐻𝐻

Cal1,HWP1,HWP2,Cal2 の順に光子が透過した時、光子の経路 a,b,cそれぞれの光子

(24)

24

の偏光状態は以下のように表せる。(Calで分離するビームの異常光に対する常光の位 相差を𝛿𝛿とおいた。)

|𝜙𝜙𝑀𝑀=𝐶𝐶𝐻𝐻

√2 0

𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐� 𝑒𝑒𝑖𝑖2𝛿𝛿

|𝜙𝜙𝑏𝑏= 1

√2�𝐶𝐶𝑣𝑣(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐) 𝐶𝐶𝐻𝐻(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐)� 𝑒𝑒𝑖𝑖𝛿𝛿

|𝜙𝜙𝑐𝑐=𝐶𝐶𝐻𝐻

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐

0

と表せる。(HWP のグローバル位相は除いた)そしてリトロリフレクタプリズムで反 射されたのち、|𝜙𝜙𝑏𝑏⟩は直角プリズムで反射され、HWP3 を透過し、Det1 で検出され る。この時の光子の偏光状態は、

|𝜙𝜙𝑚𝑚=+1= 1

√2�𝐶𝐶𝐻𝐻(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐) 𝐶𝐶𝑣𝑣(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐)

= 1

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 0

0 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐� �𝐶𝐶𝐻𝐻 𝐶𝐶𝐻𝐻

= 1

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐𝐼𝐼̂+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�|𝜙𝜙𝑖𝑖

と表される(グローバル位相𝑒𝑒𝑖𝑖𝛿𝛿は除いた)。

また、|𝜙𝜙𝑀𝑀⟩と|𝜙𝜙𝑐𝑐⟩はCal2,Cal1の順に透過することで合流し、直角プリズムで反射され

る。

そのときの偏光状態は 1

√2�𝐶𝐶𝐻𝐻(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐)𝑒𝑒𝑖𝑖4𝛿𝛿 𝐶𝐶𝑣𝑣(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐)

その後補償板によって位相差が相殺され、Det2で検出される。この時の光子の偏光状 態は以下のように表される。

|𝜙𝜙𝑚𝑚=−1= 1

√2�𝐶𝐶𝐻𝐻(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐) 𝐶𝐶𝑣𝑣(𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐)

= 1

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐 − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐 0

0 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐� �𝐶𝐶𝐻𝐻

𝐶𝐶𝐻𝐻

= 1

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐𝐼𝐼̂ − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�|𝜙𝜙𝑖𝑖

(25)

25 この2つの式について、クラウス演算子は

𝑀𝑀�𝑚𝑚=+1= 1

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐𝐼𝐼̂+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻 𝑀𝑀�𝑚𝑚=−1= 1

√2�𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐2𝑐𝑐𝐼𝐼̂ − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠2𝑐𝑐𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻 であり、POVM要素は以下のようになる。

𝐸𝐸�𝑚𝑚=+1=1

2 (𝐼𝐼̂+𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠4𝑐𝑐𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻) 𝐸𝐸�𝑚𝑚=−1=1

2 (𝐼𝐼̂ − 𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠4𝑐𝑐𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻)

𝑐𝑐= 0のとき、クラウス演算子は𝑀𝑀�𝑚𝑚=±1=√21 𝐼𝐼̂となる。これは被測定系である偏光状態 と測定器系である𝑛𝑛= ±1の光路が、全く相関がない状態であり、𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻の測定の強さが 0である。つまり何も測定をしていない。このとき、2つの検出器で同数の光子が検出 される。

反対に、𝑐𝑐=𝜋𝜋8のとき、クラウス演算子は

𝑀𝑀�𝑚𝑚=+1=1

2�𝐼𝐼̂+𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�|𝜙𝜙𝑖𝑖= |𝐻𝐻⟩⟨𝐻𝐻|𝜙𝜙𝑖𝑖 𝑀𝑀�𝑚𝑚=−1=1

2�𝐼𝐼̂ − 𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻�|𝜙𝜙𝑖𝑖= |𝑉𝑉⟩⟨𝑉𝑉|𝜙𝜙𝑖𝑖

となる。これは、それぞれの光路でH基底、V基底に射影された光子を検出すること に対応する。これは𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻の測定をすることを意味しており、このときの測定の強さが最 大になる。したがって HWP2の回転角𝑐𝑐を 0≦θ≦𝜋𝜋8とすれば、この範囲内でθを変 化させることで𝑆𝑆̂𝐻𝐻𝐻𝐻の測定の強さを制御して実験をすることができる。

(イ) プローブ系の初期状態は、経路a,bを基底として以下のように表すことができる。

|𝑐𝑐⟩𝑃𝑃=1

0= |𝑎𝑎⟩𝑃𝑃

参照

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