5-1 セットアップ透過後の偏光測定
3-3のセットアップは、𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻,𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃の連続測定をするために必要となる𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻の測定の強さ可 変測定のセットアップであり、初期偏光は直線偏光としている。現状では3-3のセット アップの構築に必要な光学素子はそろっていないが、現段階のセットアップの性能評価を することは必要であるため、𝑛𝑛= ±1のそれぞれの光路について偏光測定を行った。この測 定では3つの偏光物理量をコヒーレント光で測定を行い、トモグラフィーをする。しかし ここでは光子1個1個の量子測定を行うのではなく、コヒーレント光での古典的な強度測 定を行うため、厳密には密度行列の再構成はできない。しかし強度による測定結果は光子 1個1個の独立した測定からの統計的平均値と等しくなるため、数値的には一致する。し たがってこの数値的に一致する行列を𝜌𝜌𝑐𝑐とし、この𝜌𝜌𝑐𝑐はコヒーレント光の強度から求めた 偏光物理量(𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻,𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃,𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅)から再構成される行列とする。このように𝜌𝜌𝑐𝑐を定義すれば、実質 的に光子1個1個の量子測定を行わなくても動作についての議論が可能になる。この実験 のねらいは、2つのパスを伝播した後のビームの偏光状態を測定して密度行列と数値的に 一致する行列𝜌𝜌𝑐𝑐を求め、偏光状態を確認することである。そして測定により得た行列𝜌𝜌𝑐𝑐を 理論値と比較することでセットアップの運用の可否も調べることができる。
初期偏光として、GTを45°回転させてP偏光を準備した。𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻,𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃,𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅の各基底の測定 をするときのPP2とQWP2の角度の対応は図5-1に示した。
図5-1 偏光物理量の各基底の射影測定をするときのPP2とQWP2の角度の対応
(1) 𝑛𝑛= +1
𝑛𝑛= +1の光路は、図5-2のセットアップでは、理想的には𝑐𝑐= 0のときビーム強度
は0で、𝑐𝑐=𝜋𝜋8のときセットアップ透過後にP偏光が伝播する。そこで、HWP2を取 測定する
偏光状態
PP2[deg] QWP2[deg]
H 0 0
V 90 0
P 45 45
M -45 -45
R 45 0
L -45 0
49
り除いた時とHWP2(𝑐𝑐= 0)、𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)の3通りで、初期入射偏光の強度を
8.14mWとして3回測定し、統計的な標準誤差も評価して結果を5-2にまとめた。。
図5-2 m=+1の光路を透過する偏光の偏光物理量の測定セットアップ
(2) 𝑛𝑛=−1
3-3のセットアップは、Cal1,Cal2を往復することで𝑛𝑛=−1の光路は位相差が生じて しまう。その位相差を補償板で相殺することにしているが、まずは𝑛𝑛=−1の光路につ いて、実際の位相差を調べる必要がある。それに加えて、図5-3に示すセットアップ の透過後の状態が予想通りの偏光状態になっているかを実験により確かめた。
入射レーザー強度を14.59𝑛𝑛𝐻𝐻として、𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0)と𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋8)の二通りで 5 回 測定をし、統計的な標準誤差も評価して結果を5-2にまとめた。
50
図5-3 m=-1の光路を透過する偏光の偏光物理量の測定セットアップ
51
5-2 実験結果
(1) 𝑛𝑛= +1
ビーム強度(μ W)
HWP2無し 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
𝐼𝐼𝐻𝐻 0.029 ± 0 0.4113 ± 0.0003 734 ± 1 𝐼𝐼𝐻𝐻 0.02733 ± 0.0003 0.3863 ± 0.0005 707.1 ± 0.6 𝐼𝐼𝑃𝑃 0.03 ± 0 0.3580 ± 0.0007 819 ±7 𝐼𝐼𝑃𝑃 0.027 ± 0 0.3523 ± 0.0003 453 ± 2 𝐼𝐼𝑅𝑅 0.024 ± 0 0.6927 ±0.0003 1336.7 ±0.3 𝐼𝐼𝑅𝑅 0.03233 ± 0.0003 0.746 ± 0.001 93.0 ± 0.4
図5-4 各測定基底でのビーム強度の測定結果
HWP2無し 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻 0.030 ± 0.005 0.03134 ± 0.0006 0.018 ± 0.001 𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃 0.053 ± 0 0.010 ± 0.008 0.288 ± 0.006
𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅 −0.148 ± 0.004 0.748 ± 0.001 0.8699 ± 0.0005
図5-5 偏光物理量の測定結果
これらのデータから行列𝜌𝜌𝑐𝑐が求まる。𝜌𝜌𝑐𝑐 を以下のように定義する。
𝜌𝜌𝑐𝑐≡1 2�1 0
0 1�+1
2𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻�1 0 0 −1�+1
2𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃�0 1 1 0�+1
2𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅�0 −𝑠𝑠
𝑠𝑠 0�=�𝜌𝜌𝑐𝑐11 𝜌𝜌𝑐𝑐12 𝜌𝜌𝑐𝑐21 𝜌𝜌𝑐𝑐22� また、コヒーレンスが保たれているとしたときのビームの行列𝜌𝜌𝑐𝑐の各成分の理論値を算出 し、実際の測定結果から求めたデータとともに図5-6,7にまとめた。
52
理論値 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2無し 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0)
𝜌𝜌𝑐𝑐11 0.5 0.5148±0.004 0.5157 ± 0.0003
𝑅𝑅𝑒𝑒[𝜌𝜌𝑐𝑐12] 0 0.026316 ± 0 0.019 ± 0.002
𝐼𝐼𝑛𝑛[𝜌𝜌𝑐𝑐12] 0 0.074 ±0.004 −0.373 ± 0.001
𝑅𝑅𝑒𝑒[𝜌𝜌𝑐𝑐21] 0 0.026316 ± 0 0.019 ± 0.002
𝐼𝐼𝑛𝑛[𝜌𝜌𝑐𝑐21] 0 −0.074 ±0.004 0.373 ± 0.001
𝜌𝜌𝑐𝑐22 0.5 0.485 ± 0.004 0.4843 ± 0.0003
図5-6 𝜌𝜌𝑐𝑐の行列要素(𝑐𝑐= 0)
理論値 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
𝜌𝜌𝑐𝑐11 0.5 0.5092 ± 0.0006
𝑅𝑅𝑒𝑒[𝜌𝜌𝑐𝑐12] 0.5 0.144 ± 0.003
𝐼𝐼𝑛𝑛[𝜌𝜌𝑐𝑐12] 0 −0.4350 ± 0.0003
𝑅𝑅𝑒𝑒[𝜌𝜌𝑐𝑐21] 0.5 0.144 ± 0.003
𝐼𝐼𝑛𝑛[𝜌𝜌𝑐𝑐21] 0 0.4350 ± 0.0003
𝜌𝜌𝑐𝑐22 0.5 0.4908 ± 0.0006
図5-7 𝜌𝜌𝑐𝑐の行列要素(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
この結果をグラフで図示すると以下のようになった。
図5-8 𝜌𝜌𝑐𝑐の実部の行列(𝑐𝑐= 0)
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ11ρ22
ρ12 理論値
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ11ρ22
ρ12 HWP2(0)
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ11ρ22
ρ12 HWP2無し
53
図5-9 𝜌𝜌𝑐𝑐の虚部の行列(𝑐𝑐= 0)
図5-10 𝜌𝜌𝑐𝑐の実部の行列(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8) -0.5
-0.3 -0.1 0.1 0.3 0.5
ρ21ρ11ρ22ρ12 理論値
-0.5 -0.3 -0.1 0.1 0.3
0.5 ρ21
ρ11ρ22
ρ12 HWP2(0)
-0.5 -0.3 -0.1 0.1 0.3 0.5
ρ21
ρ11ρ22ρ12 HWP2無し
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ22ρ11 ρ12 HWP2(π/8)理論値
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ11ρ22
ρ12 HWP2(π/8)
54
図5-11 𝜌𝜌𝑐𝑐の虚部の行列(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
理論値 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2無し 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0)
r 0.5 0.160 ± 0.006 0.747 ± 0.002
𝑐𝑐𝐵𝐵(deg) 0 88.3 ± 0.3 88.2 ± 0.03
φ(deg) 0 −70.4 ± 0.5 89.25 ± 0.08
図5-12 トモグラフィー結果をブロッホ球のパラメータでまとめた表(𝑐𝑐= 0)
理論値 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
r 1 0.917 ± 0.002
𝑐𝑐𝐵𝐵(deg) 90 88.95 ± 0.06
φ(deg) 0 71.7 ± 0.4
図5-13 トモグラフィー結果をブロッホ球のパラメータでまとめた表(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
この結果から偏光状態は予想とは異なり、円偏光成分がみられる。HWP2を取り除いた
場合とHWP2(𝑐𝑐= 0)とした場合を比較すると、どちらも円偏光成分は測定されているの
で、方解石1と方解石2で位相差が発生してしまっていることが考えられる。そのため -0.5
-0.3 -0.1 0.1 0.3 0.5
ρ21ρ11ρ22ρ12 HWP2(π/8)理論値
-0.5 -0.3 -0.1 0.1 0.3
0.5 ρ21
ρ11ρ22
ρ12 HWP2(π/8)
55
HWP2(𝑐𝑐=𝜋𝜋8)の場合、セットアップを透過した偏光がP偏光にならなかったということが
言える。
(2) 𝑛𝑛=−1
ビーム強度(μW) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
𝐼𝐼𝐻𝐻 2407 ± 3 1571 ± 2
𝐼𝐼𝐻𝐻 2257 ± 2 995 ± 1
𝐼𝐼𝑃𝑃 1970 ± 10 1060 ± 2
𝐼𝐼𝑃𝑃 2310 ± 20 1245 ± 2
𝐼𝐼𝑅𝑅 2590 ± 5 1430 ± 2
𝐼𝐼𝑅𝑅 1940 ± 10 1142.6 ± 0.9
図5-14 各測定基底でのビーム強度の測定結果
𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8) 𝑆𝑆𝐻𝐻𝐻𝐻 0.0322 ± 0.0009 0.2247 ± 0.0003
𝑆𝑆𝑃𝑃𝑃𝑃 −0.0773 ± 0.007 −0.08 ± 0.002
𝑆𝑆𝑅𝑅𝑅𝑅 0.143 ± 0.003 0.1118 ± 0.0007
図5-15 偏光物理量の測定結果
𝑛𝑛= +1と同様にして図5-16にまとめた。
理論値 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
𝜌𝜌𝑐𝑐11 0.5 0.5161 ± 0.0005 0.6123 ± 0.0002
𝑅𝑅𝑒𝑒[𝜌𝜌𝑐𝑐12] 0.107 −0.039 ± 0.003 −0.004 ± 0.0008
𝐼𝐼𝑛𝑛[𝜌𝜌𝑐𝑐12] −0.489 −0.072 ± 0.001 −0.0559 ± 0.0003
𝑅𝑅𝑒𝑒[𝜌𝜌𝑐𝑐21] 0.107 −0.039 ± 0.003 −0.0401 ± 0.0008
𝐼𝐼𝑛𝑛[𝜌𝜌𝑐𝑐21] 0.489 0.072 ± 0.002 0.0559 ± 0.0003
𝜌𝜌𝑐𝑐22 0.5 0.4839 ± 0.0005 0.3877 ± 0.0002 図5-16 𝜌𝜌𝑐𝑐の行列要素
56
この結果をグラフで図示すると以下のようになった。
図5-17 𝜌𝜌𝑐𝑐の実部の行列
図5-18 𝜌𝜌𝑐𝑐の虚部の行列
さらに、偏光状態をブロッホベクトルで表現した場合の、理論値と測定結果から求めたデ ータをまとめて図5-18に示した。
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ11ρ22
ρ12
理論値
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21 ρ11ρ22
ρ12
HWP2(0)
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
ρ21
ρ22 ρ11
ρ12
HWP2(π/8)
-0.5 0
0.5 ρ21
ρ11ρ22
ρ12
理論値
-0.08 -0.06 -0.04
-0.020.020.040.060.080 ρ21 ρ11ρ22
ρ12
HWP2(0)
-0.08 -0.06 -0.04
-0.020.020.040.060.080 ρ21 ρ11ρ22
ρ12
HWP2(π/8)
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理論値 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐= 0) 𝐻𝐻𝐻𝐻𝑃𝑃2(𝑐𝑐=𝜋𝜋/8)
r 1 0.166 ± 0.008 0.2635 ± 0.006
𝑐𝑐𝐵𝐵(deg) 90 88.2 ± 0.05 77.0 ± 0.02 φ(deg) −77.7 −62 ± 2 −54.3 ± 0.5
図5-18 トモグラフィー結果をブロッホ球のパラメータでまとめた表
この結果から、位相差はもとより、偏光状態は予想通りになっていないことがわかっ た。これについては、次の考察で議論する。
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