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6-2 ビームをプリズムで再帰反射させたときの偏光状態の変化
測定強度の可変測定セットアップは、光路長を同じにするというのが条件であることが わかった。再帰反射後にHWPなどを挿入して偏光状態を変えて光路を入れ替えれば、光 路長を同じにすることができる。簡単のため、まずは単純に再帰反射させたときの偏光状 態を考えるために図6-2の状況を考える。ミラーでの反射では反射面に対して垂直な偏 光成分がπだけ位相が進むことが知られている。プリズムでの再帰反射は2回反射するの で位相差が2πとなり、結局入射前と偏光状態は変わらないはずである。また、常にビー ムが向かってくる方向からHWPを見たとき上段側と下段側でHWPの角度は正負が逆転 するので、それを利用すればH偏光とV偏光を入れ替えることが可能になると考えられ る。そこで実際に確かめてみたところ、HWPを二回通った後の偏光状態は変化がなかっ た。
図6-2 再帰反射前後のHWPによる偏光状態の変化の様子(H偏光がV偏光に変化す る場合。黒線が入射するビームの偏光状態、赤線がHWP透過後のビームの偏光状態を表
す。)
この現象について、反射プリズムによって偏光状態が変化した可能性を考えた。図6-3 のように、プリズムで再帰反射されたとき、P偏光とM偏光が入れ替わっているならばこ の話は辻褄が合う。
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図6-3 再帰反射前後のHWPによる偏光状態の変化の様子(プリズムによる状態変化の 予想図。黒線が入射するビームの偏光状態、赤線がHWP透過後のビームの偏光状態を表
す。)
そこで図6-4のような実験セットアップを組み、実際にプリズムで再帰反射したとき の偏光状態がどう変化するのかを確かめることにした。ビームは上段部と下段部の2か所 で伝播する。リトロリフレクタプリズムは、反射前後のビームが伝搬する光路が真上から 見て一致するように置いた。実線はセットアップ上段側をビームが伝播する光路を示して おり、破線はリトロリフレクタプリズムで反射する前のセットアップの下段部を伝播する ビームの光路を表す。
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図6-4 プリズムで再帰反射するときの偏光状態の変化を調べる実験セットアップ
初期偏光をH,P,V,Mの直線偏光として、PPを透過するビームの透過率に対するPPの 回転角度の依存性を調べた。結果は図6-5のようになった。
図6-5 PPを透過するビームの透過率に対するPPの回転角度依存性
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0 45 90 135 180
透過率
PPの回転角度(deg)
ビームの透過率-PPの回転角度依存性
H偏光 P偏光 V偏光 M偏光
62 PPの回転角度と透過する直線偏光は、
PPの回転角度 [deg]
PPを透過 する偏光
0° H
45° P
90° V
135° M
図6-6 PPの回転角度と透過する直線偏光の対応関係
という関係にあるので、図6-5の実験結果から、リトロリフレクタプリズムによって反 射された後の光子の偏光状態は図6-7のようにまとめることができる。
初期偏光 反射後の偏光状態
H H
P M
V V
M P
図6-7 初期偏光とリトロリフレクタプリズムで反射された後の偏光状態の関係
この結果から、偏光が反射される前と後では振動面は変わらないが、偏光の進行方向か ら観測した場合ではP(M)偏光がM(P)偏光に変化したように見えるということが確認でき た。
6-3 偏光の測定の強さ可変測定装置の他のセットアップ案
6-2より、リトロリフレクタプリズムの特性がわかった。この特性を利用して図6-8
~10に示すような測定の強さ可変測定のセットアップを考案した。図の形式についての説 明は3-3と同様である。
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図6-8 測定の強さ可変測定のセットアップ(上段と下段)
プリズムによって斜めに反射する部分は図6-10のようになっている。上段の経路aを 伝播してきたビームは図6-10のように反射され、下段の経路cを伝播する。そして、HWP3 によって偏光状態がH偏光からV偏光に変化する。同様に、上段の経路cを伝播するビー ムは反射後に下段の経路a を伝播し、HWP3 によって V 偏光からH 偏光に状態が変化す る。このようにセットアップを組むことで、6-1の問題点の根本的な原因であった2つの パスの位相差をゼロにすることができる。
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図6-10 ビームが斜めに反射される様子
3-3のセットアップと違い、上段の経路bを伝播するビームを、Cal2透過後にそのま
ま検出器で測定できるようにセットアップを組むことが可能になる。また反射させるプリ
ズムもCal2に近づけることができるので、全体的な光路長を3-3のセットアップに比べ
て短くすることができる。光路長が短ければビームのコヒーレントをより保てるので、よ り高い精度で測定を行うことが可能となる。さらに、補償板を使う必要がないので、それ による系統的な位相差も排除できる
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まとめと展望
今回新たに考案した測定の強さ可変測定のセットアップは、2つのパスの位相差によっ てビームが完全にコヒーレンスを失って混合状態になってしまうため、偏光測定を行うこ とができないということがわかった。また、方解石1,2のアライメントを正確に行い、位 相差をより高い精度で小さくする必要があることがわかった。
しかしながら、再帰反射させるときに図6-10のように光路を入れ替えることで𝑛𝑛=
−1に関する位相差は相殺できるということがわかったので、今後の展望としては、図6-
10で示すような機構の反射装置を用意し、5-1と同様の測定をしてセットアップの性能 を評価することが第一に挙げられる。そして、方解石1,2の正確なアライメント方法を 考案したのちに、反射防止膜付きの方解石とHWP1-a,b、HWP3を用意し、偏光の測定強 度の可変測定装置の開発を進める。
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参考文献
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[2]M.A.Nielsen, I.L.Chuang Quantum Computation and Quantum Information (2000)
[3]牟田泰三,山本一博 共著 量子力学 (2017)
[4]北野正雄 量子力学の基礎 (2010) 共立出版
[5]B.G.Englert, Phys. Rev. Lett. 77, 2154 (1996) [6]屈折率分布型(GRIN)レンズ
(https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_ID=1209) [7]方解石ビーム分離プリズム
(https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=745)
[8]石川研太朗 系統誤差を考慮した測定の強さ可変測定装置の開発(2017) 平成 29 年度
修士論文
[9]グラントムソン偏光子
(https://www.thorlabs.co.jp/NewGroupPage9.cfm?ObjectGroup_ID=116)
[10]波長板|光学技研 (https://www.kogakugiken.co.jp/products/retardation01.html)
[11]鈴木佑太郎 偏光状態における非可換物理量の連続測定 (2012) 平成23年度 修士
論文
[12]戸津井亜生 偏光の強さ可変測定の実験的研究 (2018) 平成30年度 卒業論文
[13]ヤリ―ヴ-イェー 光エレクトロニクス 基礎編 (2010)