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冠動脈内膜内新生血管の病的意義:

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冠動脈内膜内新生血管の病的意義:

マルチモダリティ血管内イメージングを用いた 臨床的検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系循環器内科学専攻

西田俊彦

修了年 2016年

指導教員 廣 高史

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冠動脈内膜内新生血管の病的意義:

マルチモダリティ血管内イメージングを用いた 臨床的検討

日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系循環器内科学専攻

西田俊彦

修了年 2016年

指導教員 廣 高史

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目次

概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

諸言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41

図説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61

研究業績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67

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1

概要 概要

目的:虚血性心疾患患者において認められる冠動脈プラーク内の新 生血管の臨床的意義を血管内超音波法、光干渉断層図法、ならびに 血管内視鏡を用いて検討する。

方法:2012年 4月から 2014年 12月までに日本大学医学部附属板橋 病院にて安定狭心症の診断のもと冠動脈インターベンションを受け、

冠動脈造影、ならびに上記の血管内イメージングを施行した患者で 光干渉断層図法において冠動脈プラーク内を走行する直径 50から 300μmの微小新生血管を有する患者を対象とした。この血管プラー ク内新生血管を認めた症例について新生血管の総容積を算出し、

種々の血管内モダリティを用いて求めた動脈硬化の状態を表す各種 パラメータとの比較検討を行った。各種パラメータとして血管内超 音波法では、プラーク体積、血管体積、%プラーク体積、内腔体積、

またカラー血管内超音波法では、線維性組織、壊死性組織、脂質性 組織等の含有量や含有比率、光干渉断層図法では、最大脂質コア仰 角ならびに線維性被膜厚、血管内視鏡ではプラークの黄色度をそれ ぞれ測定した。検討対象プラークは、新生血管を認めた冠動脈枝内 の全プラークを対象とした。

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2

結果:光干渉断層図法において血管プラーク内新生血管を認めた症 例は 44症例であった。血管内超音波検査における grey scale評価に おいて血管プラーク内新生血管の総容積と冠動脈プラーク総容積と の間(r=0.348, p=0.02)、ならびに冠動脈血管総容積との間(r=0.310, p=0.04)にそれぞれ有意な相関を認めたが冠動脈内腔総容積とは有 意な相関を認めなかった。(r=0.245, p=0.11)また、カラー血管内超音 波法において、血管プラーク内新生血管の総容積は、線維性組織含 有量(r=0301, p=0.047)、壊死性組織含有量(r=0.487, p=0.005)、脂質 性組織含有量(r=0.387, p=0.010) 及び石灰化組織含有量(r=0.336, p=0.03)とそれぞれ有意な正の相関関係を示した。一方、それぞれの 組織のプラーク総容積に対する含有率を比較したところ、血管プラ ーク内新生血管の総容積と%線維性組織含有率の間には負の相関 (r=-0.432, p=0.003)を、%壊死性組織含有率(r=0.485, p=0.0009) び%脂質性組織含有率(r=0.401, p=0.007)との間には正の相関を認め た。また%石灰化組織含有率(r=-0.016, p=0.919)との間には有意な相 関関係を認めなかった。さらに光干渉断層図法において血管プラー ク内新生血管の総容積と最大脂質コア仰角との間に正の相関関係を 認めた (r=0.509, p=0.0005)が線維性被膜厚との間に有意な相関は

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なかった(r=-0.269、p=0.156)。また、血管プラーク内新生血管の総 容積と血管内視鏡における対象冠動脈枝内の grade2以上の黄色プ ラークの数との間に有意な正の相関関係を認めた。(r=0.461, p=0.002)。多変量解析の結果、血管内新生血管の総容積の有意な規 定因子として、%壊死性組織含有率(p=0.0001)と黄色プラーク総個 数(p=0.0001)、ならびに尿酸値(p=0.0233)があげられることが示され た。

結論:冠動脈内プラークに認められる新生血管はプラークの不安定 性に関連していることがマルチモダリティ血管内イメージングを用 いて示された。

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緒言 緒言

研究の基礎的背景

急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)は急性心筋梗塞や不 安定狭心症、虚血性心臓突然死の総称であり、生命予後を大きく決 定する重要な疾患群である。ACSの発症は、動脈硬化を基盤として 冠動脈に形成されたプラークがある日突然血管内腔に向かって破綻 し、そこに閉塞性血栓が形成されることによって起こることが主因 とされている。プラークの易破綻性の規定因子として、病理学的に はプラークの線維性被膜の菲薄化、脂質コアの増大、プラーク内出 血、マクロファージなどの炎症細胞浸潤、結節性石灰化などがあげ られている。(1)

このような因子をたくさん持ち合わせているプラークを不安定プラ ーク、そうではない破綻しにくいプラークを安定プラークと呼んで いる。プラーク内では種々の病理学的変化が動脈硬化進展につれて 時々刻々進んでいるが、近年注目されているのが、プラーク内血管 新生である。様々な病理学的検討から、プラーク内の血管新生が、

プラークの増生、プラーク内の出血、炎症、そして不安定化に至る まで、プラーク形成のあらゆる段階に関与している可能性が報告さ

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れている(2-15)。いずれの報告においても、動脈硬化病変の進展に 関与している可能性が高いことが推察されている。しかしながら、

新生血管の病的意義について、あるいはその臨床的意義については いまだ不明な点が多い。

新生血管を描出するため現在までに様々な試みがなされてきた(6)。

以前より、コントラストエコー(16-18)、MRI(19-20)などが行われて きたが、主として頸動脈を対象にしており、冠動脈プラーク内の新 生血管を正確に描出することはできなかった。そのような中、冠動 脈プラークの新生血管をヒト生体で観察するのに適していると期待 されるものとして、心臓カテーテル検査の一環として行われる血管 内イメージングが登場してきた。その中には後で詳述する血管内エ コー法(IVUS:intravascular ultrasound),光干渉断層像法(OCT : optical coherence tomography)、冠動脈血管内視鏡(CAS:coronary angioscopy)などがある。IVUSは超音波を用いて、OCTは近赤外線 を用いて血管壁の断層図を得ることができる方法である。血管内視 鏡は、血管内腔表面の色調を観察して、壁内脂肪沈着や血栓の有無 などを定性的に診断できる検査法である。まず、IVUSで外膜の vaso vasorumの描出が試みられた(21)が、血管内膜内の新生血管まで

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は描出は困難であった。一方、IVUSの 10倍の解像度をもつ OCT では一定の大きさのプラーク内新生血管を正確に描出できることが 報告された(22)

本研究の方法論に関する基礎的背景

虚血性心疾患の診断や程度、病態把握には旧来より、実に様々な 方法が非観血的・観血的に用いられてきた。

まず非観血的な方法として虚血性心疾患の診断には心電図検査は 必須である。しかし非発作時には心電図検査では変化を認めないこ とも多いため運動負荷で発作を誘発させて記録することがある。た だ、運動負荷心電図における冠動脈疾患検出に関する感度、特異度 はそれほど高くなく、それぞれ 50-70%程度である。

次に心臓超音波検査があげられる。非発作時には異常所見に乏し いことが多いが、発作時や心筋虚血誘発時にはその冠動脈の支配領 域での収縮能が低下し局所壁運動異常を呈することがある。限定的 ではあるが発作時の局所壁運動異常を誘発するために、エルゴメー ターによる運動負荷やドブタミン負荷を行いながらの心臓超音波検 査法が施行されている。

最近急速に用いられつつある非観血的方法として心臓 CT検査が

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ある。冠動脈疾患の検出率は感度・特異度はそれぞれ 90-95%である が、特に、陰性的中率はほぼ 100%とされている。しかしながら解 像度の問題で、冠動脈プラークの組織性状や新生血管の詳細な観察 は不可能である。

もうひとつ、非観血的な方法としてしばしば用いられるのが心臓 核医学検査がある。運動負荷ないし薬剤負荷によって心筋虚血と梗 塞領域を診断できる。冠動脈疾患の検出率は感度・特異度はそれぞ れ 80-90%である。しかしながら、CTと同様血管壁局局所の情報は わからない。

虚血性心疾患における冠動脈の局所診断には観血的診断法が必須 である。その中で冠動脈造影検査(coronary angiography; CAG)は古 くから用いられてきた。しかし、あくまでも内腔の鋳型を描出して いるだけであり、冠動脈壁内の情報はほとんどこの方法からは得る ことができない。図2にその例を示す。この限界を克服すべく、冠 動脈壁の局所の情報を抽出できる診断法として、血管内イメージン グが提唱され、発展してきた。血管内イメージングとは、血管内に 直接カテーテルを挿入し、そのカテーテルの先端から光や超音波を 送受信して、冠動脈壁の局所の病態に関する情報を描出する方法の

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総称である。その中で、本研究では、血管内超音波法、光干渉断層 図法、ならびに血管内視鏡を用いた。

(1)血管内超音波検査(IVUS)

IVUSは高周波超音波触端子を先端に擁したカテーテルを血管内腔 に挿入し血管壁の構造を生体で観察する方法である。1988年に世界 で初めて臨床応用された(23)。通常の IVUSにより得られる情報は 白黒で得られ grey-scaleと呼ばれる画像で構成される。IVUSにお ける超音波の深部到達度は 4~8mmで、それによりプラークの全貌 を描出することができる。図 3にその 1例を示す。冠動脈壁は内膜・

中膜・外膜の三層構造をなしていて、外膜は粗な結合組織、中膜は 輪状の平滑筋層、内膜は動脈硬化に進展に伴って肥厚した細胞層を 指し、局所の内膜肥厚をプラークと呼んでいる。プラークは動脈硬 化が進展すると粥腫が形成する。粥腫は膠原線維に富んだ線維性被 膜に覆われた脂質コアをもつ二層構造のプラークである。

IVUSでは、プラーク断面積、内腔断面積、血管総断面積(血管総 断面積-内腔断面積=プラーク断面積の関係にある)の計測や冠動 脈プラークの形態学的評価が可能であり手技も容易で安全性が高く 現在最も広く普及している血管内イメージング法である。基本画像

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は血管の短軸断面断層像であるが、一定速度で引き抜くことができ るので、一定時間間隔で撮像した画像から、一定区間内のプラーク、

内腔、血管の総体積をそれぞれ計算することもできる。また、IVUS で得られた解剖学的情報は、治療方針の決定や治療デバイスの選択、

治療エンドポイントの決定を行い、治療後のフォローアップにも用 いられる。

grey-scale IVUSでは脂質を多く含むソフトプラークは一般に低 輝度エコーとして描出され線維性プラークは高輝度エコーを呈する。

石灰化病変はさらに強い高輝度エコーとして描出され後方に音響陰 影を伴う。ただ、輝度での分類には大きな限界があるとされ、組織 から返ってくる超音波の波形から各組織に特異的な音響物理学的特 性を抽出して、プラーク内の組織を鑑別診断してカラー表示するカ ラー血管内超音波法がその後次々と開発された。現在三種類の方法 が市販されている。いずれも、組織から帰ってくる時系列超音波信 号をフーリエ変換し周波数エネルギースペクトルを求めて、それを 数学的に解析する方法である。三つの方法とは、スペクトル下の面 積から超音波の総エネルギーを求めて鑑別する方法(IB-IVUSTM (24)、スペクトルの平均値や回帰直線の傾きなど8つのパラメータを

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求めて、その大小の組み合わせで組織を鑑別する方法(VH-IVUSTM (25)、あらかじめ既知の組織から得られたスペクトルを組織ごとにラ イブラリー化して、そのライブラリーをニューロ学習理論を用いて 参照しながら組織を鑑別する方法(iMapTM)(26)の 3つである。

急性心筋梗塞症例において grey-scale IVUSを用いた研究では心 筋梗塞の病変部位は大きな血管面積、プラーク面積を有し、高頻度 に血栓が存在し偏心性病変を認めると報告されている(27)。 また、

プラーク体積を経時的に評価することも可能であり,スタチンによる 積極的脂質低下療法が冠動脈プラークの容積を縮小させ、それが予 後改善に繋がることが、IVUSを用いた多施設共同研究で示された (28,29)。またカラーIVUSを用いた研究によれば、脂質コアに富み、

線維性被膜が菲薄化したプラークが予後を悪化させることが示され

(30)、前述した病理学の知見を改めて証明した。このカラーIVUS により、方法によって異なるが、たとえば後述する iMap法によれ ば、プラーク内の線維性組織、脂質性組織、壊死性組織、石灰化組 織に鑑別することができ、それぞれのプラーク内の含有量(面積な いし体積)、ならびにプラーク内全体に対する割合(含有率)を測定 することができる。

(14)

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線維性組織とは、高密度の膠原線維の集束からなり、線維間に脂 質やマクロファージが検出されないもの、脂質性組織とは、壊死の ないプロテオグリカンに富んだ細胞外脂質の領域からなる比較的境 界明瞭な脂質プールをさし、壊死性組織とはアポトーシスを起こし た平滑筋細胞やコレステリン結晶を有した粥腫のコアにあたる部分 で有り、しばしば辺縁にマクロファージの集合を認める領域、石灰 化領域は高密度の石灰化組織が局所に巣状に沈着している領域と定 義されている。iMap法では、これらの組織の同定に対して高い精度 で同定できることが報告されている(31)。

(2)光干渉断層法(OCT)

超音波法は組織から反射してきた超音波から画像を構成する方法 であるが、この方法は組織から反射してきた近赤外線の情報から画 像を構成する方法である。用いられる近赤外線の波長は 1.300μmの 波長の光である。その画像は空間分解能が 10μmであり IVUSと比 較し 10倍の空間分解能を有する(31)。また、線維、脂質、石灰化成 分などのプラーク構成成分、血栓の同定を可能にする。 また血栓の 検出に関しては血管内視鏡には劣るものの IVUSよりも正確に血栓

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を同定することが出来るとされる(32)。また前述したように、プラー ク内新生血管が描出できる。図 4(a~f)にその一例を示す。

(3)冠動脈血管内視鏡(CAS)

CASは上記血管内イメージングモダリティと違い、直接血管内を可 視光を用いて直視できる血管内イメージングモダリティである。正 常な冠動脈内壁は白色平滑であるが、動脈硬化性病変は黄色のプラ ークとして認められる。黄色プラークはその色調から grade0; 白色 プラーク、grade1; 淡黄色プラーク、grade2; 黄色プラーク、

grade3; 濃黄色プラークに分類される(33) (図 5)。黄色度が高いプ ラークほど線維性被膜が薄く、脂質コアが発達していることを示し、

黄色 gradeの高いプラークほど、破綻し血栓形成を伴う頻度が高い ことからより vulnerableなプラークといえる(34)。また、一個体の 冠動脈の中に多くの黄色プラークを有する症例では将来的に急性冠 症候群を発症する頻度が高くなることが報告されており、そのよう な患者のことを vulnerabe patientと呼ばれている(35)。このほか、

血管内視鏡では、血栓も直視下で同定することが可能である。

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目的 目的

本研究の目的は、虚血性心疾患患者において光干渉断層図法(OCT)

で描出される冠動脈プラーク内の新生血管の臨床的意義を、OCTだ けでなく、血管内超音波検査(IVUS)、血管内視鏡検査(CAS)などの 血管内イメージング、すなわち、マルチモダリティ血管内イメージ ングから得られる動脈硬化の進展度やプラークの不安定性を示す諸 指標を用いて検討することにある。

方法と対象 方法と対象

対象患者

2012年 4月から 2014年 12月までに日本大学医学部附属板橋病院に おいて安定狭心症の診断にて経皮的冠動脈インターベンションを目 的として心臓カテーテル検査が施行され、冠動脈造影、ならびに血 管内超音波検査(IVUS)、光干渉断層図法(OCT)、血管内視鏡検査 (CAS)を施行した患者で、かつ後述するように OCTにおいて新生血 管の存在を認めた症例を対象とした。安定狭心症に限定した理由に ついては、急性心筋梗塞などの急性冠症候群においては血行動態が

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不安定であることも多く、可能な限り短時間で完遂することが求め られており倫理的な意味で本研究は安定狭心症を対象とした。

血液生化学的検査

血液生化学検査は経皮的冠動脈インターベンション前、1か月以内に 採血した。種々の指標は日本大学医学部附属板橋病院検査部にて測 定した。なお LDLコレステロール値は間接法(Friedewald式;LDL コレステロール値=総コレステロール-HDLコレステロール-中性脂 肪/5)で算出したが中性脂肪が 400mg/dlを超えた際は直接法を用い 算出した。

心臓カテーテル検査と血管内イメージング

心臓カテーテル検査は空腹安静時に行い、冠動脈造影検査の際、

硝酸イソソルビド 1.5mgを全例に冠動脈注入した。冠動脈造影を施 行したのち、冠動脈枝の末梢までガイドワイヤーを挿入し、そのガ イドワイヤーを経て以下の血管内イメージングを行った。観察範囲 は各モダリティを可能な限り末梢まで挿入し同部位を開始点とし、

入口部を終了点にし、引き抜きながら観察した。

IVUSは OptiCross™Imaging Catheter(iLab™ System、Boston

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Sc ient if ic社製) を用いた。引き抜き速度は 0 .5mm /秒であり、撮像レ ートは 30フレーム/ 秒である。また、画質が悪いもの、高度石灰化、

血管が曲がりすぎていて奥まで挿入できず解析に不適当である症例 は除外した。

OCTは Dragonf ly™ JP Imag ing Catheter(ILUMIEN™、

OPTIS™、St . Jude Medica l Japa n製) を用いた。引き抜き速度は 40mm/ 秒、撮像レートは 180フレーム/ 秒である。また、十分な血流 の除去が出来ず画像の質が悪いものや解析に不適当である症例は除 外した。

血管内視鏡はビジブル血管内視鏡カテーテル( ファイバーテック株 式会社製) を用いた。図 6にその原理を示す。

IVUS、OCT、CASに関しては通常の保険診療の範囲内で施行し ており、これらの検査の施行は患者に動脈硬化の診断や病態把握を 正確に行うことを目的として血管内の観察を密にするためのもので あることを術前に説明し、同意をいただいたうえで行った。また、3 検査を同時に施行した理由に関しては、臨床的に必要と認められる 範囲で冠動脈内プラークのより詳細な観察を目的として施行した。

IVUSによる計測

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Grey sca le IVUSでは血管総断面積、血管内腔断面積を測定しプラ ーク面積を血管総断面積と血管内腔断面積の差から算出した。一定 速度で引き抜いて、1秒ごと、すなわち 0 .5mmごとに撮像した各断 面積の総和に 0 .5mm(各フレーム間の距離に相当する)を乗じ、当 該枝全体の血管総容積、内腔総容積、プラーク総容積を算出した。

カラーIVUSでは内膜ー外膜境界と内腔―内膜境界をトレースし その間のプラークについて、観察血管枝全ての 0 .5mmごとの血管断 面の組織性状を解析した。ガイドワイヤーの後方アーティファクト 部分は解析を行った。安定プラーク、不安定プラークの解析例を示 す( 図 7)。また、高度石灰化の後方は音響陰影の為、組織性状が壊死 性組織と判断されることが多く 90°以上の石灰化病変がある部位に 関しては解析不適当部位とした。

OCTによる計測

本研究では新生血管の存在は OCTで判定したが、その定義は血管

内に開口するか血管壁内を走行する直径が 50から 300μmの微小血

管で、アーチファクトの混入を防ぐため、OCT上連続 3フレーム以

上に認められる血管とした。OCTでは、1秒間に 180フレームの血

管断層像が撮像されるが、新生血管については、各フレームの新生

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血管の面積を測定し、すべてのフレームの新生血管の面積の総和を 求めたのちに、その値にフレーム間の距離(0.1mm)をかけ算し、

その値をプラーク内新生血管総体積とした。また、図 4cに示すよう に観察冠動脈枝での最小線維性被膜厚を測定した。さらに図4fに 示すように、脂質コアが認められたときに、観察冠動脈枝の中で最 も大きな脂質コアの仰角、すなわち最大脂質コア仰角も求めた。

血管内視鏡による計測

血管内視鏡では観察血管枝の中で黄色度が grade2以上の黄色プラ ークの個数を測定した。また、血栓の有無についても評価した。

統計方法について

2変量の相関関係については回帰分析を行ったが、変数が正規分布 を来していない場合や著しい外れ値がある場合、ノンパラメトリッ ク回帰分析を行い、相関係数にはスピアマン順位相関係数を用いた。

また一つの目的変数に対して複数の説明変数が考えられたとき、変 数増減法による重回帰分析を行った。その際に各説明変数との個別 の回帰分析を行った後に、危険率 p<0.10で相関を認める変数を当該 解析に組み込み、有意な説明変数を抽出した。統計解析は統計ソフ

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ト JMP 9(Version 9. 0. 0、SAS Intitute Inc社製)を用いて検定し、

p < 0.05を有意とした。数値は平均値±標準誤差で示した。

臨床研究倫理審査に関して

本研究は日本大学附属板橋病院臨床研究倫理審査委員会に認可され た。

結果 結果 患者背景

対象症例は平均年齢 66.9±10.7歳、男性 39症例(88%)で、対象血 管は左前下行枝(LAD)が 22症例(50%)、左回旋枝(LCX)が 8症例 (18%)、右冠動脈(RCA)が 14症例(32%)であった。冠動脈危険因子罹 患数は高血圧症が 34症例(77%)、脂質異常症が 29症例(66%)、糖尿 病が 22症例(50%)、喫煙歴が 30症例(68%)高尿酸血症が 13症例 (30%)、肥満が 16症例(36%)、であった。内服歴として全例でアスピ リンを内服していた。カルシウム拮抗薬が 23症例(52%)、アンジオ テンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシン II受容体拮抗薬が 24 症例(55%)、交感神経β受容体遮断薬が 16症例(36%)、HMG-CoA 還元酵素阻害薬(statin)が 16症例(36%)、尿酸降下薬が 9症例(20%)

(22)

19

血糖降下薬が 16症例(36%)、そのうち DPP-4阻害薬は 7症例(16%) であった(表 1)。

血液生化学所見

ヘモグロビン値 13.5±1.64 (g/dl)、HbA1c 6.31±0.93(%)、eGFR 64.8±22.6 (ml/min/1.73m2)、クレアチニン値 1.20±1.46 (mg/dl)、

高感度 C reactive protein 0.28±0.41 (mg/dl)、総コレステロール値 176±32.7 (mg/dl)、中性脂肪 142±82.5 (mg/dl)、HDLコレステロ ール 45.2±10.4(mg/dl)、LDLコレステロール値 104±25.1 (mg/dl) 尿酸値 5.65±1.25 (mg/dl)であった(表 2)。

IVUS解析結果(表 3)

grey scaleによる解析では血管内腔容積が 279±168(mm3)、血管 容積が 635±408(mm3)、プラーク容積が(355±268mm3)、 %プラー ク容積は 53.4±10.4(%)であった。iMapによる組織性状解析では冠 動脈内プラークの線維性組織、壊死性組織、脂質性組織、石灰化組 織の含有量はそれぞれ 216±150(mm3)、88.1±89.6(mm3)、34.6±

29.2(mm3)、4.90±4.34(mm3)であり含有率はそれぞれ 64.0±

10.2(%)、21.0±8.09(%)、9.20±2.67(%)、1.46±0.76(%)であった。

(23)

20

OCT解析結果(表 4)

血管プラーク内新生血管の総容積は 0.042±0.036 mm3であった。

また、観察血管枝の最大脂質コア仰角は 70.7±86.8(°)、最小線維性 被膜厚は 236±143(μm)であった。

CAS解析結果(表 5)

Grade2以上の黄色プラークの平均個数は 1.41±1.25(個)であった 。 また観察血管枝の中で血栓を認めた例は、10例(23%)であった。

血管プラーク内新生血管の総容積との相関について

血管プラーク内新生結果の総容積と、血液生化学検査、IVUS、OCT, CASの諸指標との間には以下のような相関を認めた。いずれも yは 各種パラメータを表し、xは新生血管の総容積を表す。

血液生化学的検査結果に関してはヘモグロビン値、総コレステロ ール値、HDLコレステロール値、尿酸値と有意な負の相関を示した。

(ヘモグロビン値 : y=-19.8x+14.3、R=-0.556、p<0.0001、総コレス テロール値;y =-421x+194、R = -0.321、p=0.03、HDLコレステロ ール値;y =-93.3x+49.1、R = -0.320、p=0.03、尿酸値;y =-11.2x+6.12、

R = -0.310、p=0.04) (図 8)。しかし HbA1c、LDLコレステロール、

(24)

21

中性脂肪、高感度 C reactive protein、クレアチニン値、eGFRとは 有意な相関を認めなかった (HbA1c ;y =-1.70x+6.38、R =-0.0512、

p=0.741、LDLコレステロール ;y =-197x+113、R =-0.127、p=0.412、

中性脂肪 ;y =-203x+151、R =-0.072、p=0.641、高感度 C reactive protein ;y =2.22x+0.183、R =0.296、p=0.0510、クレアチニン値 ; y =1.52x+1.13、R =0.0915、p=0.558、eGFR ;y =-49.3x+66.9、R

=-0.179、p=0.244)(図 9)。

OCTで認められた脂質コアの最大仰角と有意な相関を認めた。( 大仰角 ;y =997x+28.4、R =0.509、p=0.0005)。線維性被膜の厚み とは有意な相関を認めなかったが、逆相関の傾向を認めた。(線維性 被膜の厚み ;y =-1005x+279、R =-0.269、p=0.156)(図 10)

IVUSで測定したプラーク容積や冠血管総容積とは有意な正の相 関を認めた。また、%プラーク容積とも有意な関係を認めた。(プラ ーク容積;y =3434x+210、R =0.348, p=0.02、%プラーク容積;y

=98.9x49.2+、R =0.331、p=0.03)しかし、血管内腔容積との間には 有意な相関は認めなかった(血管内腔容積 ;y =974x+239、R =0.245, p=0.11)(図 11)。

また、カラーIVUSとの比較では線維性組織、壊死性組織、脂質性

(25)

22

組織、石灰化組織の含有量といずれも有意な正の相関を認めた。( 維性組織 ;y =1410x+156、R =0.301, p=0.047、壊死性組織 ;y

=1502x+24.8、R =0.487, p=0.005、脂質性組織 ;y =440x+16.1、R

=0.387, p=0.010、石灰化組織;y =25.5x+3.82、R =0.336, p=0.03) また、含有率に関しては%線維性組織とは有意な負の相関を認め、%

壊死性組織及び%脂質性組織とは有意な相関関係を認めた。(%線維 性組織 ;y =-120x+69.1、R =-0.432, p=0.003、%壊死性組織 ;y

=122x+15.9、R =0.485, p=0.0009、%脂質性組織 ;y =18.2x+8.43、

R =0.401, p=0.007)。一方%石灰化組織とは有意な相関関係を認めな かった。(%石灰化組織 ;y =-1.68x+1.53、R -0.016, p=0.919)(図 12)

血管内視鏡にて認められた grade2以上の黄色プラークの個数と は有意な正の相関を認めた。(grade2以上の黄色プラークの個数;y

=20.4x+0.550、R =0.461, p=0.002)(図 13)

新生血管容積の決定因子に関する多変量解析

新生血管の総容積を目的変数として、多変量解析の説明変数の対 象を年齢、性別、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満の有無、

カルシウム拮抗薬、レニンアンジオテンシン系阻害薬、β遮断薬、

スタチンの服用の有無、ヘモグロビン、ヘマトクリット、HbA1c、

(26)

23

LDLコレステロール、中性脂肪、高感度 CRP、eGFR、尿酸、

NTProBNP、grey-scale IVUSで求めた、血管内腔容積、血管容積、

プラーク容積、 %プラーク容積、 color IVUSで求めた%線維性組 織含有率, %脂質性組織含有率, %壊死性組織含有率, %石灰化組含有 率、OCTで求めた最大脂質仰角、最小線維性被膜厚、血管内視鏡で 求めた枝あたりの Grade2以上の黄色プラーク数とした。

その結果、%Necrotic area(p=0.0001,t=4.3739, 偏相関係数 r=0.569)、黄色プラーク数(p=0.0001,t=0.4544, r=0.576)ならび に 尿酸値(p=0.0233,t=-2.3596, r=-0.319)の 3因子が新生血管総 容積の有意な決定因子であることが判明した。

(27)

24

考察 考察

本研究により血管内膜に OCTで認められる新生血管をより多く 有する冠動脈枝は、以下のような特徴があることが判明した。

1)ヘモグロビン値、HDLコレステロール値、総コレステロール値、

尿酸値が有意に低かった。

2)プラーク容積や%プラーク容積が有意に大きかった。

3)線維性組織の含有率が小さく、壊死性組織の含有率が有意に大 きかった。

4)血管内視鏡で認められる黄色プラークの数が有意に多かった。

5)多変量解析の結果、新生血管の総容積は%壊死性組織含有率、黄 色プラーク数、尿酸値の3因子に特に規定されていることが示され た。すなわち、新生血管の総容積は不安定な冠動脈枝ほど大きい事 が示唆された。

本研究はこれらの知見を、マルチモダリティを用いて臨床的に示 した初めての研究である。

新生血管の病理学的意義

プラーク内新生血管はプラークの形成や不安定化に関連している ことが過去に種々の病理学的報告がなされてきた(2-15)。新生血管に

(28)

25

は種々の phenotypeがあり、プラークの不安定性に寄与しているも のと、そうでないものがあるらしい(36)。その中で、特に比較的破れ ない stable vesselと、破れやすい unstableleaky vesselがあること が言われている(37)。また新生血管は血管壁局所の炎症と関連してい ることが示されている。 Turu MMらは CRPが血管新生に関与して いることを報告した(38)。以上のように、病理学的にも血管新生はプ ラーク形成過程の種々の段階に関与していることが考えられてきた

(3,8)わけであるが、本研究における複数の血管内イメージングを 用いてえられた結果は上記のいずれの病理学的知見とも矛盾しない。

基礎的な研究だけでなく、OCTを用いた新生血管に関する報告が 最近なされた。Kitabata Hらは、新生血管を OCTで同定し、その 存在がプラークの不安定性の程度や高感度CRPと相関していること を報告している(12)。また、Uemura Sらも OCTを用いて、プラー ク病変の進行と関連していることを報告した(11)。ただ、これらの報 告は、OCTのみを用いた報告であり、本研究のように OCTだけで なく grey-scale IVUSやカラー IVUS、血管内視鏡など複数の血管 内イメージングモダリティを用いた研究ではない。本研究ではプラ ーク内の組織成分と新生血管の総容積との間に定量的な相関がある

(29)

26

ことが示され、新生血管の生成メカニズムをより詳細に示している ものと思われる。

新生血管の生成は種々の生化学的なシグナリングのもとで行われ ている事が実験的研究により報告されている。まずレニンアンジオ テンシン系が関与していることが複数報告された(39-41)。さらに、

特異的な生化学マーカーと関連が示唆されている。たとえば

Vascular endothelial growth factor receptor 2 (VEGFR-2)(42), Tissue factor (43)、type 3 collagen(44)、Hepatocyte growth factor

(HGF)(45), Microparticle(46), Leptin receptor(47)、

hyaluronan(48)などが新生血管生成に関与しているらしい。いず れにせよ、動脈硬化進展の過程に新生血管が関連していることは間 違いが無く、いずれこれらのマーカーと種々の血管内イメージング の所見を比較検討していくことができれば、実験的ではなく臨床的 に新生血管やこれらのマーカーの意義が明らかになっていくことで あろう。

ただ病理学的研究で扱われている新生血管と、OCTなどのイメー ジングモダリティで同定される新生血管では、大きさや直径がかな り異なっており、同じレベルの血管について示されているわけでは

(30)

27

ない。ただ、血管内イメージングで認められるプラーク内新生血管 は新生血管システムの幹を、病理学で扱う新生血管はその末梢を見 ているだけの違いかもしれない。今後は新生血管枝の分岐における 各レベルでの臨床的意義をより明らかにしていく必要があると思わ れる。

新生血管の臨床的意義について

本研究では新生血管総容積と血液生化学的検査値とは種々の相関 を認めた。

まず脂質プロフィールであるが、プラーク内新生血管の容積は総 コレステロール値と HDLコレステロール値とは負の相関があり、

LDLコレステロールと中性脂肪との間には相関が認められなかった。

新生血管がプラークの不安定性と関係しているとすれば、LDLコレ ステロールと相関がなかったのは、一見矛盾がある。しかし、本研 究の対象患者では36%の症例ですでに脂質低下療法が行われてお り、また昨今の動脈硬化進展抑制のための optimal medical therapy が浸透していることもあって、相関がない結果となった可能性があ る。むしろ最近 residual riskとして注目されている HDLコレステ ロール低下と関連していたことの方が興味深い。総コレステロール

(31)

28

も負の相関を示していたのは、その内訳における HDLコレステロー ルの寄与度が高かったためであるかもしれない。

冠動脈疾患の重要なリスクファクターとしてあげられる糖尿病、

CKDに関しては、HbA1c, クレアチニン値、eGFRとはいずれも相 関を認めなかった。糖尿病患者が対象症例の 50%を占めていたもの の、すでに治療がなされている者も多く、相関がえられなかった可 能性がある。以上から、HDLコレステロールとそれを含む総コレス テロールが冠危険因子の中で新生血管の総容積と特に相関を示して いる事から、新生血管の発生のメカニズムにこれらの値が関係して いることが推測できる。とくに HDLコレステロールはプラーク内の 泡沫細胞内のコレステロールを引き抜き、肝臓に逆転送を行う媒体 として知られている。その結果、泡沫細胞化していたマクロファー ジはリンパ系を介してプラークから立ち去ることが報告されている

(49)。HDLコレステロールが不足するということで、泡沫細胞、

すなわち種々のサイトカインを分泌するマクロファージがプラーク に居座ることになるため、その結果として新生血管が生成されやす くなるのかもしれない。

新生血管が局所の炎症の程度を反映しているという報告がある

(32)

29

(12 ,38)。しかしながら、本研究では高感度 CRPとの間にはわずか なら正相関が疑われる結果であったものの統計的に有意な相関は認 められなかった。高感度 CRPは以前より血管壁内の炎症を反映し、

心血管イベント発生のしやすさと関連していることが報告されてい る(50)。しかし、イベント発生のない症例との間にかなりのオーバ ーラップがあることが指摘されており、本研究での症例数規模では 相関が出にくかった可能性がある。また、冠危険因子として認めら れている尿酸値であるが、プラーク内新生血管との間に有意な負の 相関がみられた。この所見も一見矛盾があるが、その理由として、

もともと尿酸値の高い患者ほど積極的に尿酸治療薬を投与されてい るがために、その結果として相関が関係が逆転していた可能性が考 えられる。いずれにしても、尿酸値と新生血管総容積との逆相関性 の機序については不明であるが、今後の検討が必要である。

新生血管の総容積と、ヘモグロビン値やヘマトクリット値との間

で負の相関を認めたことは興味深い。酸素供給の不具合により冠動

脈の相対的な虚血が進行しその代償として冠動脈内に新生血管を生

じたのかもしれないがその理由は不明である。新生血管の発生メカ

ニズムの一端を示している可能性があり、これもまた今後より詳細

(33)

30

な検討が必要である。

血管内イメージングからみた新生血管の病的意義

IVUSにおける解析では新生血管の総容積とプラーク容積や%プ ラーク容積とは有意に相関を認めた。合わせて血管容積とも有意に 相関した。プラーク容積はプラークの不安定性と関連していること が示唆されており(51)、また血管容積の増加、すなわちポジティブ リモデリングもまたプラークの不安定性が関係していること(52)

が示唆されてきた。この grey-scale IVUSにおける解析結果により、

新生血管の発生メカニズムにはプラーク増大の過程で、プラークが 不安定化してくるメカニズムに関連していることが十分考えられる。

なお、プラーク容積(y)と新生血管総容積(x)との間の回帰直 線のy切片が正であるという結果は、プラーク容積がある程度増大 した上で、新生血管生成が始まることを示唆している。

カラーIVUSではより直接的にプラークの不安定性と新生血管の容 積との関係を検討することができる。カラーIVUSでは、線維性組織 と脂質性組織、壊死性組織、石灰化組織が鑑別診断できるが、一般 にプラークは線維性被膜の菲薄化があり脂質や壊死性の組織が増大 しているほど不安定であることが示唆されている(1)。本研究にお

(34)

31

けるカラーIVUSの解析結果では、線維性組織については、新生血管 の総容積と線維性組織の絶対量とは正の相関を、含有率とは負の相 関を認めた。この結果は一見矛盾するが、相対的な含有率はプラー クの不安定性を示すが、線維組織は線維性被膜だけでなく、プラー ク全体を構成する支持組織であるため、むしろ絶対量はプラーク量 と関連していたからであろう。一方、壊死性組織については、絶対 量や含有率ともに正の相関を認めた。新生血管がプラークの不安定 性と関係していることを示唆するだけではなく、とくに壊死性組織 内にできやすいことを示しているのかもしれない。あるいは逆に新 生血管の形成がプラーク内の壊死領域を増やしやすい結果になって いる可能性もある。

なお脂質性組織は絶対量で正の相関を認め、含有率においても正 の相関を認めた。脂質性組織は iMapではその量が少ないが、にも 拘らず含有量ならびに含有率で正の相関を認めたことは、新生血管 が脂質性組織の進展に関与していることを示唆する所見ととらえる ことが出来る。

石灰化組織については、含有量に正の相関を認めたものの含有率 に関しては有意な相関はなかった。IVUSでは石灰化組織については

(35)

32

後方の音響陰影を伴うためその部分が見えなくなるがゆえに、定量 的測定がそもそも困難である。にもかかわらず、含有量の絶対値に 正相関を認めたことは興味深い。石灰化がプラークの不安定性とど う関わっているのかはまだはっきりとわかっていないが、少なくと も動脈硬化が進展していることを示している事は間違いなく、新生 血管総容積と相関したことは合理的な結果であると思われる

新生血管の総容積は OCTで測定した脂質コアの最大仰角とも相 関が認められた。このこともまた、新生血管とプラークの不安定化 との間には密接な関係があることを示唆している。ただ、新生血管 の総容積と最小線維性被膜厚とは逆相関の傾向はあったものの統計 的に有意な相関は認められなかった。線維性被膜厚は、薄いほどプ ラークは不安定であるとされるが、今回検討した症例規模では相関 がでにくいのか、新生血管の意義自体が、線維性被膜の菲薄化より も壊死性組織とより関連していることを示しているのかもしれない。

今回の研究では測定困難であるが、最小厚ではなく、菲薄化した線 維性被膜の広がりなどとむしろ関係しているかもしれず、より詳細 な検討が今後必要であると思われる。

血管内視鏡による解析でも新生血管が多い冠動脈枝には黄色度の

(36)

33

高いプラークがより多いという結果になった。プラークの黄色度は プラークの不安定性と関連していることは以前より報告がある

(53,54)。この結果は新生血管とプラークの不安定化との密接な関 連を示唆した IVUSや OCTとの結果とも矛盾しない。多変量解析の 結果から、新生血管の総容積は特に観察枝の壊死組織の含有率と黄 色プラークの個数、ならびに尿酸値の3因子によって規定されてい ることが示された。前 2者については、局所のプラークについての 指標ではなく、新生血管が観察された冠動脈枝の近位から遠位にわ たっての全体の不安定性を示している。従って、新生血管の存在は、

一つのプラークだけでなく、冠動脈枝全体にわたって影響を及ぼし ているのか、あるいは冠動脈枝全体の状態がその生成を規定してい ることが推察される。すなわち、vulnerable plaqueの生成、

vulnerable vesselの生成、ひいては vulnerable patientとなる素地 が新生血管の存在にあることを考える必要があるかもしれない。

本研究結果の臨床的意義について

プラークの不安定性は、これまでプラーク量、脂質コアの大きさ、

線維性被膜の菲薄化などで評価されてきたが、本研究の結果より、

プラーク内新生血管の総容積は、新たなプラークの不安定性の指標

(37)

34

になりうるかもしれない。また、多変量解析より、プラーク内新生 血管の総容積は、局所のプラークだけでなく、冠動脈 1枝の、ひい ては患者自身の vulnerabilty(心血管イベントの発症のしやすさ) も規定している可能性がある。不安定なプラークあるいは血管、あ るいは患者を早期発見することは心血管予後を改善する大きな決め 手の一つとなるものと思われ、本研究の臨床的意義は高いものと考 える。本研究では未検討であるがより大きな新生血管を有する症例 が急性冠症候群を発症するかを検討することが今後必要であり本研 究を経て心イベントの予測因子になり得るかの検討が必要である。

その予測に関し、医療費の問題や術時間の問題などもあり一つの modalityまたは各 modalityを統合することによって可能かどうか についても検討が必要であると考えた。

本研究の限界について

本研究の限界として、まず症例数が 44例と少数の症例であること があげられる。ただ IVUS、OCT、血管内視鏡の3種類のデバイス すべてを計測しえた症例が必要であったため、症例数蓄積自体に限 界がある。また、新生血管は 10μm未満の毛細血管も関与している 可能性があるが 10μmが OCTで観察できる限界でありそれ以上小

(38)

35

さな微小血管に関しては本研究では明らかになっていない。また、

フラッシュ溶液で血管内の赤血球を除去した状態でないと OCTで は新生血管が観察できないため(赤血球に満たされた血管は描出さ れない)、血管の外膜側に存在する新生血管はフラッシュ溶液が届か ず描出されていなかったかもしれない。また、治療対象となった血 管に関しては 1枝すべてを観察しているがその他の血管に関しては 観察しておらず、すべての血管で同様の結果になったかは不明であ る。

まととめ

冠動脈内プラークに認められる新生血管はプラークの不安定性に 関連していることがマルチモダリティー血管内イメージングを用い て示された。

謝辞 謝辞

稿を終えるに臨み、研究に際しご指導、ご校閲を受け賜りました平 山篤志教授に深く謝意を表すとともに、本研究遂行に際し直接ご指 導いただきました廣高史診療教授、高山忠輝准教授、その他教室の 諸兄に心からの感謝の意を表します。

(39)

36

表 1 患者背景

( )内は%をあらわす。

HMG-CoA=3-hydroxy-3-methylglutaryl-Coenzyme A DPP-4=Dipeptidyl Peptidase -4

年齢 66.9±10n=44.7

性別、男性(%) 39(89)

解析血管 LAD 22(50) LCX 8(18) RCA(32) 冠危険因子

冠危険因子

高血圧症, n (%) 34(77)

脂質異常症, n (%) 29(70)

糖尿病, n (%) 22(50)

喫煙歴, n (%) 30(68)

高尿酸血症, n (%) 13(29)

肥満,n (%) 16(36)

アスピリン,内服歴 n (%) 44(100) カルシウム拮抗薬, n (%) 23(52) アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬, n (%) 24(55) 交感神経β受容体遮断薬, n (%) 16(36) HMG-CoA還元酵素阻害薬, n (%) 16(36)

尿酸降下薬, n (%) 9(20)

血糖降下薬, n (%) 16(36) DPP-4阻害薬, n (%) 7(16)

(40)

37

表 2 血液生化学的所見

血液生化学所見

血液生化学所見 n=44

ヘモグロビン (g/dl) 13.5±1.64 ヘモグロビン A1c(NGSP) (%) 6.31±0.93 eGFR (ml/min/1.73m2) 64.8±22.6 クレアチニン (mg/dl) 1.20±1.47 高感度 CRP (mg/dl) 0.28±0.42 総コレステロール (mg/dl) 175±32.7 中性脂肪 (mg/dl) 142±82.5 HDL-コレステロール (mg/dl) 45.2±10.4 LDL-コレステロール (mg/dl) 104±25.1 尿酸 (mg/dl) 5.65±1.24

NGSP=National Glycohemoglobin Standardization Program eGFR=estimated Glomerular Filtration Rate

CRP=C-reactive Protein

HDL=High-density Lipoprotein LDL=Low-density Lipoprotein 数値は平均値±標準誤差で示す。

表 1 患者背景

参照

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