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冠動脈側副血行路の発達度と病歴の関係および機能的意義 : 左前下行枝1枝病変例の検討

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(1)

原 著

〔三熱薦、二瀬6鋼言〕

冠動脈側副血行路の発達度と病歴の関係および機能的意義

一左前下行枝1枝病変例の検討一

東京女子医科大学 循環器内科三教室(主任 コ バヤシ ヒデ キ

小 林 秀 樹

広沢弘七郎教授) (受付 昭和62年9月7日)

Clinical Ilistory and the Functio烈al Significance of the Coronary Collateral Circulation

Hideki KOBAYASHI

Department of Cardiology(Director:Prof. K:oshichiro HIROSAWA) Tokyo Women’s Medical College

To evaluate the factors which stimulate coronary collateral development in clinical history and the functional significance of the coronary collatefal circulation, seventy−seven patients with total obstruction of the left anterior descending artery were reviewed.

These patients were divided into three groups on collateral findings. Duration of history was not related to collateral development but total ischemic time and total ischemic duration were greater in Good and Fair than Poor collateral group. Left ventricular ejection fraction and wall motion score were better in Good and Fair than Poor collateral group.

Thirty−five patients with total or subtotal obstruction of the left anterior descending artery ヤwithout myocardial infarction were studied by treadmill stress test and thallium・201 scintigra− phy. Exercise capacity was greater in Good than Fair collateral group. But myocardial ischemia was not protected in both Good and Fair groups in submaximal exercise test. The degree of ischemia detected by thallium−201 scintigraphy was same in both groups.

These data suggest that total ischemic time and total ischemic duration may stimulate collateral development, Coronary collaterals can preserve left ventricular function and may decrease the incidence of myocardial infarction. In patient with angina pectoris, coronary collaterals can’t prevent myocardial ischelnia in submaximal exercise test.

緒 言 冠動脈側副血行路(CV)は,虚血性心疾患にお ける心筋梗塞症(MI)の発症阻止, MI発症時の 壊死巣縮小効果,および狭心症例における心筋虚 血の防止効果について有効に機能しているのか論 議が多い1).またCVの臨床的発達因子について

検討した報告はわずかに認められるのみであ

る2).筆者は臨床例におけるCVの発達因子およ びCVの機能的意義を明らかにする目的で,冠動 脈造影上から診断された左前下行枝1枝病変例を 対象としてCVの発達度と狭心症病歴の関係, CV の発達度と左室機能との関係および狭心症例にお けるCVの有効性と限界について検討した. 対象および方法 1.CVの発達度と狭心症病歴の関係 1979年9月から1984年9月の期間中に国立循環 器病センターで冠動脈造影を施行した症例のう ち,左前下行枝近位部(AHA分類segment 6およ

(2)

Good

Fair

Poor

RAO300

竃 熟 写真1 冠動脈側副血行路(CV)の発達度 冠動脈造影上,左前下行枝本幹がCVを介して充分に造影されるものをGood,造影さ れないかまたはわずかに造影されるものをPoor,その中間に分類されるものをFair に分類した. び7)に完全閉塞を認め,右冠動脈枝および廻旋 枝に75%以上の狭窄のない1枝病変例を対象とし た.詳細な病歴の検討が可能であった77例につい て以下の検討を行った.MI発症急性期に冠動脈 造影を施行した症例は含まれていない.

冠動脈造影上のCVの発達の程度からgood群

(G群)25例,fair群(F群)22例, poor群(P群) 30例の3群に分類した.G群は左前下行枝本幹が CVを介して充分に造影されるもの, P群は左前 下行枝本幹が造影されないかまたはわずかに造影 されるものとし,F群はP群とG群の中間に分類 されるものと定義した(写真1). これらの症例三二にMIの有無,狭心症の有無, MI例における梗塞前狭心症の有無と梗塞後狭心 症の有無,病歴期間,総狭心発作回数,総狭心発 作時間を算出し,各群間で比較検討した,また冠 動脈硬化危険因子の有無について検討した.

MIの有無は病歴およびECG所見から判定し

た.病歴期間は,狭心症例では初発狭心発作から 冠動脈造影まで,MI難中で梗塞発症前狭心症を 有する例では初発狭心発作から冠動脈造影まで, 梗塞発症前狭心症を認めない例ではMI発症から 冠動脈造影までの期間とした. 総狭心発作回数は狭心発作を病歴から詳細に検 討し,安定狭心症の時期については狭心発作頻 度×期間の式で算出した.総狭心発作時間も同様 に病歴から検討し,安定狭心症の時期については 狭心発作頻度×期間×平均発作持続時間の式で算 出した. 冠動脈硬化危険因子は高血圧症(血圧160/90 mmHg以上),高脂血症(総コレステ.ロール250 mg/dl以上),糖尿病(暗面能異常は除く),喫煙 歴の有無について判定した. 統計はWilcoxson順位和検定を使用し,冠動脈 硬化危険因子の有無はκ2検定を使用した. 2.CVの発達度と左室機能 同期間に冠動脈造影を施行し左前下行枝近位部 に完全閉塞を認めた1枝病変例中で,RAO 30., LAO 60.の2方向の左室造影を施行した66例を対 象とした. 冠動脈造影上のCVの発達度からG群22例, F 群20例,P群24例の3群に分類し,左室造影から算 出した左室駆出率(LVEF),異常壁運動指数,左 室拡張末期容量指数(LVEDVI)および左室拡張 末期圧(LVEDP)について3群間で比較した.

LVEFはRAO 30.の左室造影からSimpson法

を用いて算出した.異常壁運動指数は,AHA分類 の左室の各segment毎にnorma1:0点, hypo・ kinesis:1点, akinesisおよびdyskinesis:2点, aneurysm:3点とし7 segmentの点数を合計し て算出した(図1). またMIの既往の頻度を3人間で比較した.

一56一

(3)

U 1, 5 RAO 4 2 3 6 LAO 7 Normal Contraction:O点 Hypokinesis :1点 Akinesis及び Dyskinesis :2点 Aneurysm :3点 異常壁運動指数=各Segment(1∼7)の合計点 図1 異常壁運動指数の算出法 統計はStudent t−testを使用した. 3.狭心症例におけるCVの有効性と限界 1979年9月からユ985年9月目期間中に冠動脈造 影を施行し,左前下行枝近位部に完全または亜完 全閉塞(造影遅延を伴う99%狭窄)を認めた症例 中で,MIの既往のない1枝病変狭心症33例(完全 閉塞17例,亜完全閉塞16例)を対象とした. 冠動脈造影上のCVの発達度からG群(17例), F群(16例),P群(0例)に分類し,以下G群を 良好群,F群を非良好群とした.修正Bruce法に よる多段階トレッドミル運動負荷試験を施行し, 運動耐容時間を求め,終了時double productを算 出した. さらに良好群10例と非良好群9例について自転 車エルゴメーターによるタリウム(Tl)一201負荷心 筋シンチグラム(Ex−Tl)を施行した. Ex−Tlで撮: 像した正面,左前斜位45.,左前斜位60.または700の 3方向のプランナー法による心筋イメージをcir− cumferential pro且le法を用いて20.毎に18分画 し,運動負荷時と4時間後の安静時(再分布像) のカウント数を求めた. 以上から運動時虚」血部欠損度,再分布度,およ びTl−scoreを算出し(図2),良好群と非良好群間 で比較した. また本検討には完全閉塞と亜完全閉塞例が含ま れているため,その影響を明らかにする目的で, 完全閉塞群と亜完全閉塞群に分類してトレッドミ ル運動負荷テストの結果を検討した. (%) 王00 80 60 40 20 +:Ex, 虚1血暗「1再分布度 賢宰[部欠損度 0 90 ユ80 270 360 (Deg・・ee) 図2 虚血部欠損度,虚血一再分布度,Tl−score算出 法 Tl−201負荷心筋シンチグラムの負荷時および再分布 像からcircumferential pr面1e法により各分画のカ ウント値を求める.18分心中で負荷時の最小カウソ ト部のカウント値(%)を虚血部欠損度,同門の再 分布像と負荷時像のカウントの差を虚血部再分布 度,18分画中で(再分布像カウソトー負荷時カウン ト)が0以上の部位における同値の総和をT1−score と定義した. 統計は,Student t−testを使用した. 結 果 1.CVの発達度と狭心症病歴の関係 G群25例中15例(60%),F群22例中17例(77%), P群30例の全例(100%)がMI例であった(図3).

そのうちG群3例,F群2例, P群1例はECG上

Q波を認めないMIであった.狭心症(梗塞例の梗 塞前または梗塞後狭心症)を有した症例は,G群 21例(84%),F群18例(82%), P群21例(70%) であり3品品に差はなかった(図3). MI 62例について梗塞前狭心症の合併率は, G 群10例(67%),F群9f列(53%), P群21例(70%) と3群間で差を認めなかった.梗塞後狭心症の合 併率は,G群7例(46%), F群2例(17%), P群

2例(7%)とG群で有意に梗塞後狭心症が多

かった(図4). 病歴期間は,G群19±25ヵ月, F群13±16カ,月, P群11±15ヵ月で各群に差を認めなかった(図 5). しかし総狭心発作回数はG群246±142回,F群 153±480回,P群14±36回でG群はP群に比べ有

(4)

% 100 50 0 心筋梗塞症の合併頻度 60% 77% 100% Good n=25 % 100 50 0 梗塞前狭心症の頻度 67% 53% 70% % 100 50 Fair n=22 狭心症の合併頻度 Poor n=30 84% 82% 7Q% % 100 50 0 Good n二15 Fair n=17 梗塞後狭心症の頻度 46% 17% Poor n;30 7% O Good Fair n=25 n=22 図3 併頻度および狭心症合併頻度 POQr n=30 左前下行枝完全閉塞1枝病変例の心筋梗塞症合 意(p<0.01)に多かった(図6).総狭心発作回 数を15回以上と15回未満の症例に分けて各群の頻 度を比較すると前者でG群が多く後者でP群が 多かった(図7). また総狭心発作時間は,G群246±142分, F群 341±640分,P群70±133分で, G群およびF群は P群に比べ有意(p<0.05)に長かった(図8). 総狭心発作時間が60分以上と60分未満の症例に分’ けて各群の頻度を比較すると60分以上でG群が 大であった(図9). 狭心症例を除いたMI 62例についてみると,病

Good Fair Poor

n=ユ5 nニユ7 n;30 図4 心筋梗塞症を有した左前下行枝完全閉塞1枝病 変62例の梗塞前狭心症および梗塞後狭心症頻度 歴期間はG群15.9±24.9ヵ月,F群9.8±9.3カ 月,P群11±15ヵ月で各説間に差を認めなかった.

しかし総狭心発作回数はG群216±488回,F群

48±111回,P群14±36回でG群がP群に比べ有

意(p<0.05)に多かった.また総狭心発作時間も G群1,378±2,726分,F群260±49分, P群71±133 分でG群とF群がP群に比べ有意(p<0.05)に 大であった. さらに梗塞前狭心症を有したMI例に限定した 場合,病歴期間はG群29.7±33.1ヵ月,F群7.6± 7.2ヵ月,P群13.8±16.1ヵ月と各群で差はなかっ た.しかし総:狭心発作回数はG群118±238回,F

群88±140回,P群14±21回でG群がP群に比べ

有意に多く,総狭心発作時間もG群1,175±2,464 分,F群482±584分, P群90±133分でG群はP群

(5)

Month 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 図5 N.S. N.S. N.S. 「一一一一一一一「「一一一一一一一一一一「 ●

Good Fair Poor

15回以上 n=32 15回未満 n=45 図7 47% 38% 16% 1 ! ! ノ ノ ’ ! 1 ノ ノ ノ ! ノ ノ ! 〆 、 、 \ \ \ 、 \ 、 、 、 \ 22% 22% 56% ●oo ●● ;

1・

壼 O 0 3 3

杢1

Good Fair n=25 n二22 病歴期間と冠動脈側副血行路の発達度 OAP例 ●MI例 回数 P<0・01

2,500 N.S. N.S. 「}一一一一一一「「一一一一㎜一「 0 2,000 ● 1,500 1,000 ● 9 500 の

王滋ム臨一

Good Fair Poor n二25 n=22 n=30 図6 総狭心発作回数と冠動脈側副血行路の発達度 OAP例 ●MI例 に比べ有意(p<0.05)に大であった. 高血圧症の合併頻度はG群9例(36%),F群8 : ● : 8 ● Poor n=30 P<0,0ユ 総狭心発作回数15回以上と15回未満に分類した 時の各群の頻度 p〈0.05 分 7,000 6,000 5,000 2,000 1,000 500 0 図8 N.S. p<0.05 「}一一「「一一一一一一一「 ● ● 総狭心発作時間と冠動脈側副血行路の発達度 ● :

』3

0 む コ 1 奎 ●

轟_論』一.網』

GOQd Fair Poor n;25 n=22 n=30

0AP例 ●MI例

Good Fair Poor

60分以上 n=32 60分未満 n=45 図9 47% 31% 22% 〆 ! 〆 ! 〆 ノ ! ! ノ ノ ノ ’ ’ ! ’ ノ 22% 27% 5ユ% P<0.OI 総狭心発作時間60分以上と60分未満に分類した 時の各群の頻度 例(36%),P群13例(43%),糖尿病の合併頻度は G群9例(36%),F群9例(41%), P群11例

(6)

(37%),高脂血症の合併頻度はG群4例(16%), F群4例(17%),P群1例(3%)でありいずれ も3群間で差がなかった. (%) 80 70 60 」50 国. > 40 30 2Q 「一一「「一一「 8 0 翌 妻

7

● 8 Q 3 蕊 : : o ● ●

Good Fair Poor *pく0.05 図10 左室駆出率(LVEF)と冠動脈側副血行路の発達 度 oAP例 ●MI例 2.CVの発達度と左室機能 LVEFは,、G群62.4±12%, F群50.6±12%, P群39.4±11%とG群が良好でF群,P群順に有 意(p<0.05)に低下していた(図10).異常壁運 動指数はG群2.8±2.3点,F群4.7±2.5点, P群 6.3±1.7点でG群,F群, P群の順に良好であり 各月間に有意差(p〈0.05)が認められた(図11).

LVEDVIおよびLVEDPはいずれも3群間で差

がなかった(図12), MIの既往はG群の55%, F群の80%, P群の (点) 10 9

8

異 常7 壁 6 運 動 5 指4 数 3 2 1 0 「一一一『一一}一一「「一一一『 一一一一「 ●●

1iil

OQOOQOO : i…::」 o o oO ● ●●● ●●● *p<0.05 ●●●●●●●●●●●●● ●● ●● ● ●

Good Fair POOr

図11異常壁運動指数と冠動脈側副血行路の発達度 OAP例 ●MI例 側副血行路と左室拡張末期庄(LVEDP) へ

(mmHg) 「「蕊一

左 拡 張 末 期 圧 15 10 側苗1腫行路と左畜拡張末期容量係数(LVEDV) (ml/m2) 150 左100 室 拡 張 末 期 蒼 探5・ 数 0 NS NS NS 「一一一一一「「一「 (mean土SE)

Good群 Fair群 QoQr群 Goαd群 Falr群 Poor群

(n=22) (rl幕20) (r1隔23) (n=22) (n=20) (n幕23)

(7)

100%に認められた. 狭心症例を除いたMI 52例について検討する と,LVEFはG群59,0±12%, F群47.1±12%, P群39.4±11%とG群,F群, P群の順に良好 (p〈0.05)であった.異常壁運動指数はG群3.8± 1.8,F群6.1±1.4, P群6.1±L9でG群はF群, P群に比べ有意(p<0.05)に良好であった. 14例の狭心症例(G群10例,F群4・例)に限って みるとLVEFはG群68±10%, F群64±3%,異 常壁運動指数はG群6.1±1.8,F群6。1±1.4でい ずれも両群で差がな:かった. 3.狭心症例におけるCVの有効性と限界 1)多段階トレッドミル負荷試験 多段階トレッドミル負荷試験の運動終点は,G

群の1例を除いてすべて胸痛またはST低下で

あった. 運動耐容時間はCV良好群8.7±2.7分, CV非 良好群5.1±1.5分と良好群が非良好群に比べて有 意(p<0。001)に大きく,double productも良好 群19,045±4,221が非良好群15,460±3,293に比べ 運動印書時間 (分) 15 10 p<0.OO1 double pr〔っduct 30,000 20,000 10,000 G群 P〈0.05 NG群 G群 NG群 図13 トレッドミル負荷時の運動耐容時間とdouble product 良好群(G群),非情語群(NG群) 運動耐容時間 (分) ユ0 5 *

十 double pr〔〕duct 20,000 !0,000 *

一一

十 壷 ユ00% n=工7 運動耐容時間 * (分) 10 5 99% nユ16 NS G NG G NG nこ12 rユ=5 n=5 n二11 100% 99% double product 20,000 10,000 100%

l1

99% NS 一「

十十

G NG G NG 100% 99% *p<0.05 図14 完全閉塞と亜完全閉塞に分類したトレッドミル運動認容時間とdouble prod− uct

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有意(p〈0.01)に大であった(図13). 本対象例中に完全閉塞例と亜完全閉塞例が含ま れており,その影響を明らかにする目的で完全閉 塞例と亜完全閉塞例の2群に分類して運動耐容時 間およびdouble productを比較したものを図14 に示した.その結果完全閉塞例が亜完全閉塞例に 比べ運動耐容時間,double productいずれも大で あった.完全閉塞例17例中でCV良好群は12例で あり,亜完全閉塞例では16例中5例で,有意に完 全閉塞例で良好群が多かった. 多段階トレッドミル負荷試験における運動終点 の:負荷段階、(stage)を図15に示した.日常生活に 充分な運動能力と思われるstage 5(10METS)を 終了した症例は良好群で6例(35%)認めたが, 非良好群ではわずかに2例(13%)であった. 2)TI−201負荷心筋シンチグラム(Ex−Tl) Ex−T1施行時の自転車エルゴメーターの運動終 点は全例が胸痛またはST低下であった.運動比 容時間は良好群7.4±1.4分,非良好群5.4±1.1分 と良好群が有意(p〈0.005)に長かった.到達ワッ ト数は良好群81.3±16W,非良好群66.7±11.8w と良好群が有意(p<0.05)に大であった. Ex−T1から算出した虚血部欠損度は良好群63± 6%,非良好群62±10%,再分布度は良好群7± 5%,非良好群9±5%,Tl−scoreは良好群54± 30,非良好群57±29でいずれの指標も両群間で差 がなかった(図16). stage 1 2 3 4 5 6 7 G 100% ■■暦 宦 OO ○00 O O 99% ■■ 怐。 ○ NG 100% ○○ 議 ○○ 99% ■●● O 薗圏蘭。●○ ●

Omedical corltrol ■operation ●PTCA

図15 多段階トレッドミル負荷試験における運動終点 の負荷段階(stage) 良好群(G群),非良好群(NG群) Tl−201運動負荷心筋 シンチグラム ユ1レscore 100 50 NS G NG 自転車エルゴメーター負荷 運動耐容時間 p<0.05 (分) 「一一『「 10 5 十 虚.llll.部欠損度 (%) 工oo 50 NS

一一

杢 十 虚血.部再分布度 (%) 20 十 10 G NG

NS

十 運動ワット数 100 (w) 50 { p<0.05

1王

d〔〕uble P[・oduct 20,QQOQ 10,0000 G

NS

王 NG 千 G NG G NG G NG 図16Tl・201負荷心筋シンチグラムにおける虚血部欠損度,虚血部再分布度, T1−score および同検査施行時の白転車エルゴメーター負荷の運動耐容時間(分),運動ワット 数,double product

(9)

考 察 1.CVの発達度と狭心症病歴の関係 本研究では対象を左前下行枝1枝病変で完全閉 塞の症例に限定した.その理由は,冠動脈の狭窄 度はCV発達の大きな因子であるとされており, 完全閉塞例のみとすることによって狭窄度の影響 を除くためである.そして冠動脈の病変部位によ る差異を除き,冠動脈側副血行路の母血管(donar artery)の状態を同一条件にするため,前下行枝完 全閉塞でその他の枝に有意狭窄のない1枝病変例 を対象とした. 本研究の結果CVの発達度から分類したG群, F群,P群の3群間で病歴期間に差は認められな かった.しかし,総狭心発作回数はG群がP群に 比べ有意に多く,総狭心発作時間はG群がF群に 比べ有意に長かった.これらは,病歴からみたCV の発達因子として病歴期間には関係しないこと, しかし総狭心発作回数や総狭心発作時間の大きさ がCVの発達促進因子になった可能性を示唆する ものである.

しかし対象例中にMIのない狭心症例のG群

10例,F群5例が含まれている.これらの症例では

CVの発達が良好でMIが発症しなかったために

虚血の出現し易い状態が存在し,その結果として 総狭心発作回数や総狭心発作時間が大となってい る可能性が考えられる.そのため対象例中から狭 心症例を除きMI例に限って病歴期間,総狭心発 作回数,総狭心発作時間を検討した.各群で病歴 期間に差は認めなかったが,CVの発達良好群で 総狭心発作回数,総狭心発作時間が大であった. さらに狭心症病歴のないMI例を除き,梗塞前狭 心症を有するMI例に限った検討においても同様 の結果であった.MI例のみ,または梗塞前狭心症 を有したMI例に限定した場合にも同様の結果で あったことから,MIを発症していない狭心症例 が含まれるためにG群,F群の総狭心発作回数お よび総狭心発作時間が大となっているのではない ことが示された. 現在まで,病歴期間とCVの発達の関係につい ては,病歴期間が長いほど発達が良好であるとす る報告と,病歴期間とは無関係であるとするいず れもが認められる3)∼6). Fultonら3)は,剖検例についてCVの発達度と 病歴期間の検討を行い,狭心症病歴の長い症例ほ どCVの発達は良好で,3ヵ月以内の短い病歴の 症例ではわずかのCVを認めるのみであったと報 告した.Aygenら4)は左前下行枝完全閉塞例(多枝 病変例を含む)で病歴とCVの発達度を検討し, CVの充分に発達した75例中の93%は平均56ヵ月 の狭心症病歴を有したが,CVが充分に発達して いない25例中の56%で狭心症病歴がなかったと報 告した. これに対してRichardら5)は1枝病変例を対象 としてCVの発二度と病歴期間の関係を検討し, qvの良好群は平均35.8カ日月で不良群の37.4ヵ月 と比較して両群で病歴期間に差がなかったと報告 した.西村ら6)も左前下行枝完全閉塞1枝病変例 で狭心症例,MI三共にCVの発達度と病歴期間 に差がなかったと報告している.以上のように病 歴期間とCVの発達度の関係については報告によ り異なるが,対象例を1枝病変例に限定した検討 では発二度と病歴期間には関係がないとする報告 が多く,本研究の結果と一致していた. CVの発達因子についてSchaper7)は,冠動脈狭 窄部の末梢と母血管の間に生じる圧較差によって interconnecting vesselsにラプラスの法則に従う tangential wall stressが1動き,これがCVを発達

させる最大の要因となると提唱している.しかし 虚1血に伴うh㎜oral factorの関与が大きいとす る報告8)9)も認められ,Cuttinoら9)は虚血部の chemical substanceがCVの細胞分裂を促進す ることを示している.本研究の結果,CVの発達は 病歴期間には関係がなかったが,狭心痛の出現す る虚血発作回数および虚血発作時間が大であるほ どCVの発達が良好であることが示された.虚血 発作回数が大きいほど,または虚血発作時間が大 きいほどCVの発達を促進した可能性があり,虚 血がCVの発達促進因子となっている可能性が示 唆された. 本研究で対象となった狭心症発作の大部分は, 狭心症の安定期に労作に伴って出現している狭心 症であり,狭心症の出現には個人個人の日常労作

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の運動量が関与している可能性が考えられる.運 動とCVの発達について実験的には運動がCVの 発達を促進させることが示されている10)が,臨床 的にはCVの発達度は運動群と非運動群で差が認 められず同一であったとする報告が多い11).本研 究の対象例における個々の日常労作の運動量につ いて,病歴上からの判定は困難であった, CVの発達と運動同門能の変化,日常生活の運 動量と狭心症病歴の関係およびこれらがCVの発 達におよぼす影響について明らかにするため今後 の検討が必要と考えられた. 総狭心発作回数,総狭心発作時間とCVの発達 についての報告は文献上認められず,本研究が初 めての報告と思われる.CVの発達は多くの因子 によって修飾されると考えられているが1n,病歴 上からみたCVの発達因子として病歴期間は関与 せず,総狭心発作回数および総狭心発作時間の大 きさがCVの発達促進因子となっている可能性が 示唆された. 2.CVの発二度と左室機能 左前下行枝近位部完全閉塞1枝病変例を対象に CV発達度と左室機能の関係を検討した, LVEF はG群で良好であり,F群, P群で有意に低下し ていた.異常壁運動指数はG群で良好で,F群, P群で低下していた. またMIの既往はG群で55%と少なく, P群で は全例に発症していた.

G群,F群ではMIを発症していない狭心症例

が含まれているために左室機能が良好である可能 性があり,MI例に限ってLVEFおよび異常壁運 動指数を検討した.その結果いずれもG群が良好 でありF群,P群で低下していた. MIの既往のない狭心症例では, LVEF,異常壁

運動指数ともG群とF群の2群山で差がなかっ

た. Ensslenら12)は,87例のLAD完全閉塞例につい てCVの発達度と心機能の関係について検討し

good (26イ列), detectable (40f列), none(21イ列)

についてLVEFが各々67.9%,41.9%,41.6%で ありCVが良好な症例で心機能が保持されていた と報告している.Schwarzら13)もLAD完全閉塞 例で同様の検討を行い良好群でLVEF 59.6%,非 良好群で41.4%と良好群で有意に大であったと報 告しており本研究の結果と一致していた.

近年MI発症早期に冠動脈内血栓溶解療法

(ICT)が施行されるようになり,その治療効果と CVの関係が注目されている. Rogersら14)は,63例のMIにICTを施行し,急 性期冠動脈造影上CVが確認され梗塞領域に血流 が保たれている例では慢性期にregional EFが軽 快したが,梗塞領域に血流を認めない例では改善 はなかったと報告した.斉藤ら15)も,MI急性期に 完全閉塞を認めた30例にICTを施行し,再疎通に

成功した症・例中でCV発達群はLVEFが急性期

50%から71%へ有意に改善したが,CV非発達群 ではLVEFは不変であったと報告している. 本研究の結果から良好に発達したCVは心筋梗 塞症の発症を阻止した可能性が有り,かつ発症し た場合にもその梗塞巣の大きさを制限している可 能性が示唆された. 3.狭心症例におけるCVの有効性と限界 狭心症例において,良好に発達したCVの有効 性と限界を明らかにする目的で本研究を施行し た.本研究で対象にした狭心症例では良好なCV を有する例は運動耐容量が大きいことが示され, CV良好群の36%では日常生活に充分な運動能力 (10METS)を有していた.しかし1例を除く全例 が胸痛またはST低下を運動終点としていた. 以上から,充分に発達したCVは一部の狭心症 例で日常生活範囲の運動量における虚血の出現を 予防するが,それ以上の運動量において心筋虚血 を防ぐことは不可能であると判断された. さらにEx−T1から求めた虚血部欠損度,虚三部 再分布度,Tl−scoreの各指標は2群間で差が認め

られず,良好なCVが存在しても胸痛またはST

低下出現時の心筋虚血の程度はCVの発達度に関 与しないことが示唆された. 虚血に対するCVの効果について,右冠動脈枝 や廻旋枝の1枝病変例でCVが運動時の心筋虚血 を防止できるとした報告が一部にある16>17).しか し安静時においてCVは充分な血流を供給可能で あっても運動時の虚血は防止し得ないとする報

(11)

告18)∼20)が多い.対象を完全閉塞または亜完全閉塞 の1枝病変に限定した報告は本研究が初めてであ り,本研究の結果は後者に一致する所見であった. 谷浦ら21)は運動負荷時のCVの血流の変化につ いて負荷中の冠動脈造影から検討し,運動負荷中 狭心痛発現時においてはCVの血流は安静時と比 較して減弱ないし消失したと報告している.本研 究においても,胸痛またはST低下出現時には虚

血の程度はCVの発二度と関係なかったことか

ら,虚血出現時のCVの血流状態は安静時と異 なっている可能性も考えられる. 以上より良好なCVは狭心症の運動二三能を向 上させるが,心筋虚血を阻止するうえで一定の限 界があると考えられた. 結 語 虚血性心疾患におけるCVの発達因子および機 能的意義を明らかにする目的で,左前下行枝!枝 話変音を対象としてCVの発達度と狭心症病歴の 関係,CVの発達度と左室機能,狭心症例における CVの有効性と限界について検討した. 1.病歴上からみたCVの発達因子として,病歴 期間は関与しないが,総狭心発作回数および総狭 心発作時間の大きさがCVの発達に関与している 可能性が示唆された.

2.良好に発達したCVはMIの発症を阻止し

た可能性が有り,かつ発症した場合にもその梗塞 巣の大きさを制限していた. 3.充分に発達したCVは運動耐容量を増加さ せるが,心筋虚血の出現を阻止するうえで一定の 限界が認められた.

4.良好なCVが存在しても胸痛またはST低

下出現時のEx−Tl上の心筋虚血の程度は, CVの 発達度に関与しないことが示唆された. 稿を終るにあたり,御指導,御校閲を賜りました広 沢弘七郎教授に深く感謝いたします.また,終始暖か い御指導をいただきました国立循環器病センター平 盛勝彦先生,土師一夫先生に心から感謝いたします. 文 献

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参照

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