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崔弘

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Academic year: 2021

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金沢大学十全医学会雑誌第121巻第3号106-118(2012)

106

スフィンゴシン-1-リン酸2型受容体は

リポ多糖により誘発きれる急性肺損傷を抑制する

金沢大学大学院医学系研究科循環医科学専攻血管分子生理学

(旧講座名:生理学第一)

(主任:多久和陽教授)

崔弘

急'性肺損傷(acutelunginjury)は,急性呼吸捉迫症候群(acuterespiratorydistresssyndrome,ARDS)とも 呼ばれ,敗血症などを基礎疾患として発症し,肺実質への白血球の浸潤,肺毛細血管透過性冗進,肺水腫とそ れこよる肺機能障害を特徴とする重篤な急性びまん性炎症性疾患である.急性肺損傷に対しては,未だ十分な 治療法はない.急性肺損傷では,血管透過性を抑制することにより,白血球浸潤と肺浮腫を抑制できる可能性 がある.血管内皮に存在する脂質メデイエータースフインゴシンー1-リン酸(sphingosine-1-phosphate,S1P)特異 的2型受容体(S1P2)に着目し,SIB遺伝子ノックアウトマウスを用いて急性肺損傷におけるS1P2の役割を検討 した.リポ多糖(lipopolysaccharide,LPS)の気道内投与による炎症性細胞の浸潤,肺胞浮腫を特徴とした血管透 過'|生冗進型急性肺損傷は,野生型マウスに比較してノックアウトマウスでより高度であった.肺胞洗浄液中の タンパク濃度と好中球の増加及び肺におけるサイトカイン発現もノックアウトマウスでより高度であった.LPS 投与は静脈内に投与したエバンスブルー色素あるいは蛍光イソチオシアネート(Huoresceinisothiocyanate,

FnC)標識デキストランの血管外漏出を引き起こしたが,これはノックアウトマウスでより高度であった.LPS 投与後の肺湿重量の増加もノックアウトマウスで有意に高値であった.-酸化窒素(nitricoxide,NO)は内皮細 胞間透過性を冗進させる.NO合成酵素阻害薬の投与は,ノックアウトマウスで見られるLPSによる急性肺損傷 の増悪を改善した.以上の結果は,S1P2がNO合成抑制を介して血管バリア維持を含む機構により急'性肺損傷 を軽減する可能性を示唆する.S1P2は急性肺損傷の新しい治療標的となりうる.

Keywordsスフインゴシン-1-リン酸,スフインゴシン-1-リン酸2型受容体,急性肺損傷,血管 透過性,-酸化窒素

スフインゴシン-1_リン酸(SphingOSine-1-PhOSphate,

ⅡP)は血管内皮細胞やリンパ球をはじめ様々な細胞種 こ対して,細胞増殖,細胞運動,細胞間接着’細胞分化 など多彩な作用を及ぼす脂質メデイエーターであるU2).

,う,Pは血中やリンパ液中に約10-6Mオーダーの濃度で 字在し,血中S1pの大部分は,アルブミンや高密度リポ クンパク質に結合して存在する3)・S1Pは赤血球’血管 勾皮細抱やその他の細胞において,スフインゴシンがス フィンゴシンキナーゼ(sphingosinekinasOSphIO1/2 ,こよりリン酸化を受けて生成され,細胞膜輸送体により 細胞外に輸送される3)-7).S1pはまた,細胞内でS1Pリ

アーゼ(S1Plyase,SPL)やS1Pホスファターゼ(S1P phosphatase,SPP)により分解される8)9).ほとんどの SlPの生物活性は5種類のGタンパク質共役型受容体 S1pL5を介する'0).これらの受容体の中で,S1P11S1P21 S1P3は全身のほとんどの臓器・組織に広範に発現して いる主要な受容体であるl)2).これらのS1p受容体の作 用の中で,特に細胞遊走については受容体サブタイプ別 に作用が異なり,S1P1は三量体Gタンパク質Giを介し て低分子量Gタンパク質Racを活性化することにより S1pに対する化学遊走を促進し,一方,S1P2は三量体G

タンパク質G12/13を介して低分子量Gタンパク質Rhoを 平成24年10月1日受付,平成24年10月15日受理

へbbreviations:BALEbronchoalveolarlavagefluid;eNOS,endothelialNOS;FITC,fluoresceinisothiocyanate;IL6, nterleukin-6;iNOS,inducibleNOS;LNAMEN〔u-nitro-Largininemethylester;LPS,lipopolysaccharide;MCP-1, nonocytechemotacticprotein-1;、NOS,neuronalNOS;NO,nitricoxide;NOS,NOsynthase;PAF,platelebactivating actor;S1P,sphingosine-1-phosphate;SphK,sphingosinekinase;SPLS1Plyase;SPP,S1Pphosphatase;TNF-α, umornecrosisfactor-α;VEGEvascularendothelialgrowthfactor-A

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