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主任教授和田野郎 ワ ダ ジユ ロウ

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(東女医大誌 第49巻 第2号頁 111〜116 昭和54年2月)

〔シンポジウム〕

救急疾患の初期治療

緊急外科治療を必要とする胸部疾患

東京女子医科大学第1外科・心研外科

主任教授和田野郎

     ワ    ダ     ジユ    ロウ

(受付 昭和53年9月30日)

CardiorTboracic Cond五t且ons Requ董ring Ungent Surgical Treatment       Jur5 WADA, M.D.

Department of Surgery&, Heart Institute Japan, Tokyo Women s Medical College

  In thorax, there are heart, lung, trachea and great vessels, which are vital organs protected with bolly cage composed of costae, vertebrae and sternum.

  Accord量ngly, diseases of these organs could results in respiratory and circuratory failure lead三ng to fat翫l conditions. Thoracic conditions requering urgent or lifesaving treatment are classi丘ed into traumatic and nontraumatic in origin and are discussed.

Key words:

1) Emergency surgical condition in thoracic diseases r

2) Lifbsaving therapy f〜)r thoracic diseases.

        1・はじめに

 胸腔内には肋骨,脊椎,胸骨からなる骨性胸廓 に保護され,生体に最重要の臓器である心臓,

肺,気管および大血管があり,病態および治療の 面で特殊性を有している.

 緊急外科治療を必要とする胸部疾患は大別して 非外傷性と外傷性に分類される.今回はそれらの

うち心臓大血管を中心にその診断と外科治療の要 点について述べる.

 1L 緊急外科治療を必要とする心臓大血管疾患  A・心疾患

 a)先天性心疾患=先天性心疾患の診断は病

歴,心雑音,心不全,低酸素血症(チアノーゼ),

呼吸不全の有無,心電図所見,胸部X線写真,超 音波検査,心血管造影所見などを総合することに よってなされるが,緊急手術を必要とする先天性 心疾患は主に,12ヵ月未満,とくに3ヵ月未満の 乳児期にみられる.

 乳児期の心疾患の3大死因は,心不全,低酸素 血症,呼吸不全である.これらの原因が単独か,

複合して乳児期の臨床症状を形成している.した がって,これらの症状が内科的にコントロールし 得ない場合はすべて緊急手術の適応となる.緊急 度は患児の年齢によって異なり,最重症例は最初

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の3ヵ月に集積する.

 自然歴が極端に悪いため緊急手術の対象となる 疾患として,総肺静脈還流異常症,大動脈縮窄症 に心室中隔欠損および動脈管開存の合併例,純型 肺動脈閉鎖症,大動脈離断症,総動脈管症などが あり,これらはいずれも乳児期早期に発症した例 は緊急手術の対象である.完全大血管転位症1こ心 室中隔欠損と肺高血圧症を合併する横型ば,高度 の心不全,呼吸不全を伴なったときに緊急手術の 対象となる.高度の低酸素血症,すなわち動脈血 酸素分圧が30mmHg以下の場合は緊急手術,30

〜40mmHgのときは準緊急手術の対象となる.

内科的に管理できない頻回の低酸素発作を伴なう ファロー四徴症,重症の心不全,呼吸不全を呈す る大動脈弁狭窄症および純型肺動脈弁狭窄症など も緊急手術が必要であり,また高肺血流量疾患と して心室中隔欠損症,両大血管野冊起始症なども 心不全に合併する呼吸不全でPaCo2が持続的に 60mlnHg以下となるものは緊急手術の対象とな る.また特殊な心奇形として肺血流が主として動 脈管からのみ供給されている疾患には,偽総動脈 管症,動脈管を伴なった凸型肺動脈弁狭窄の重症 例,三尖弁閉鎖に肺動脈閉鎖を合併した型などが あり,いずれも動脈管が閉鎖しかかると高度の低 酸素血症,および代謝性アシドーシスとなり,急 激に状態が悪化するので緊急手術を要する.

 短絡手術は,低肺血流量疾患で高度の低酸素血 症を示す場合に適応となる.Blalock・Taussig手 術などの体循環系と肺動脈問の短絡手術は,フ

ァロー四徴症,完全大血管転位症皿型,無断症候 群などに施行される。心房問の短絡手術である Blalock−Hanlon手術は,完全説血管転位症1型 で肺静脈血を体循環系に導くために施行される.

肺動脈絞掘術は,高肺血流量疾患で心不全,呼吸 不全を伴なうときに適応となる,一期的根治手術 が積極的に行われる傾向にあるが肺動脈絞施術 は,完全大血管転位症∬型と根治手術不能な複雑 心奇形に施行される.動脈管開存症,大動脈遮断 症などには,非開心根治手術が行なわれる.心室 中隔欠損症,総肺静脈還流異常症,大動脈縮窄複

合には,一期的に心内修復術が行なわれる.いず れにしても3ヵ月未満の先天性心疾患の病院死亡 率は高い.

 b)徐脈性・心室性不整脈:アダムス・ストー クス発作をおこす心停止,高度徐脈,発作性心室 細動ないしは発作性心室性頻拍などの不整脈が緊 急ペーシングの適応となる.後二者は発作そのも のに対してはカウンターショックが最も有効であ るが,カウンターショックのあとに発作を予防す るためにペースメーカー植込みが行なわれる.

 アダムス・ストークス発作の患者に対して最初 に行うべきことは心臓マッサージである.一刻も 早く心拍出量を増加させる必要があるためであ る.直ちに酸素吸入を行ない,同時に心電図の monitoringを開始する.この際,気道の確保に特 に留意する.

 不整脈の診断をつけ,静脈輸液路を確保し,必 要に応じて薬物の投与を始めるが,この間心臓マ

ッサージを有効に続けることが最も大切である.

心停止の場合は胸骨上を力強く叩打するのみで心 拍動を保持できることが多い,薬物でのコントロ ールが困難と判断したら,ただちに緊急ペーシン グを行なう.緊急ペーシングは経静脈性心内膜電 極法が一般的に施行される.

 C)心筋梗塞:心筋梗塞に対する緊急手術は,

切迫心筋梗塞症,急性心筋梗塞症に対する大動 脈一冠動脈バイパス術と心筋梗塞の合併症である 左室瘤,僧帽弁逆流,心室中隔穿孔および心臓破 裂に対する手術に大別される.以下項目別に簡単 に解説する.

 1)切迫心筋梗塞症:切迫心筋梗塞症の定義 は,① 激しい胸痛発作で15〜20分間持続する.

②安静時にも起こる,③冠拡張剤(ニトログ リセリン)に寛解せず一般にはモルヒネ剤が必要 となる.④心電図上虚血性変化を示す.⑤血 清酵素学的に心筋壊死の明らかな徴候を認めな い.⑥選択的冠動脈造影で明らかな狭窄像が認

められる.

 切迫心筋梗塞症の症状を呈した場合,心筋梗塞 への移行は2ヵ月以内に22%,3ヵ月以内に41

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%,6ヵ月以内に29%に起こると言われている.

5年で33〜75%が死亡する.切迫心筋梗塞と診断 されたら緊急冠動脈造影を施行し,狭窄部位を確 認した上で大動脈一冠動脈バイパス術を施行す る.心筋は未だ壊死に陥っていないので心機能は 著明に改善する.

 2) 急性心筋梗塞症:急性心筋梗塞症の定義 は,①15分間以上の激しい胸痛発作,②安静 時にも起こる.③モルヒネ剤に効果がある.④ ショック,心不全に移行することがあり,四肢冷 感,末梢チアノーゼの出現,⑤心電図上Q波の 出現,ST・Tの上昇,冠性Tが認められる.⑥ 血清酵素活性値の上昇,⑦選択的冠動脈造影に て狭窄像あるいは閉塞像を認める.

 緊急外科治療としては,梗塞に陥りつつある心 筋の壊死進行を防止し,虚血心筋を積極的に回復

させるために,梗塞発生後6時間以内に緊急大動 脈一冠動脈バイパス術を施行する,

 急性心筋梗塞の死因は,心原性ショック,不整 脈,心不全が主なものであり,最:近不整脈に対し ては抗不整脈剤,ペースメーカー,除細動器など の抗不整脈療法の進歩とともに不整脈死は激減 しているが,心原性ショックによる死亡率は80〜

100%と依然高率であり,これに対し機械的補助 循環法である大動脈内バルーンパンピング法を行 ない,冠血流の増加,心仕事量および心筋酸素消 費量の低下,僧帽弁逆流量あるいは中隔穿孔の短 絡量の減少により虚血心筋の改善,心機能の回復 を待ち,緊急大動脈一冠動脈バイパス術を行な

う.大動脈内バルーンパンピング法と大動脈一冠 動脈バイパス術の併用により,心原性ショック合 併例でもその死亡率を45%にまで減少させている 施設もある.

 3) 心臓破裂:心臓破裂は絶対的緊急手術の対 象であり,急性心筋梗塞症の10%に発し,一般的

に① 高年齢,女性に多く,② 広範囲梗塞に多 く,③ 冠動脈の完全閉塞例に多く,④ 比較的 血圧が保たれている症例に多い.

 本症は梗塞発生後比較的血圧が保たれている症 例が,突然呼吸停止,意識消失をきたし,モニ

ター心電図でNodal rhythmなどの電気的調律が みられても,脈は触知せず,いわゆる Electro−

Mechanical Dissodati・n の状態となる.心のう 穿刺により診断を確定した後,心マッサージはさ け,人工心肺下に破裂部修復術を施行する.現在 までに小数例の成功例しかみられておらず,手術 予後も不良である.

 4)左室瘤:左室瘤は急性心筋梗塞症の合併症 のうちの24〜35%を占めている.好発部位は前 壁,心尖部,下下,後壁の順に多い.門内には 2/3の症例で血栓を有する.

 本症のうちで,内科的にコントロールしがたい 不整脈,心不全,あるいは血栓,塞栓が進行的増 悪を示す場合に緊急手術の適応となる.確定診断 は,左室造影と選択的冠動脈造影でなされ,瘤除 去術が行なわれる.また大動脈一冠動脈バイパス 術が併用されることもある.

 5)心室中隔穿孔:急性心筋梗塞症の0.5〜1

%に発生し,梗塞発症後1週間以内に起こすこと が多い.多くは1週間以内に死亡し,2ヵ月まで 生存する症例は13%と,予後不良である.この原 因として,左一右短絡のため急性うつ血性左心不 全,ついで右心不全が合併し,更に心拍出量の著 しい低下にて死亡する.粗い全収縮期性心雑音を 第3〜4下間,胸骨左縁にて聴取し,心尖部に伝 播することが多い.乳頭筋断裂による僧帽弁逆流

との鑑別が困難なことが多いが,心臓カテーテル 法,左室造影所見にて鑑別される.

 大動脈内バルーンパンピング法を行ない,多少 とも循環状態の改善をみながら,緊急で穿孔部の 閉鎖術を行うべきであるが,穿孔部は脆弱でしか も進行性両心不全のため手術成績はきわめて悪 い.このため強力な内科的治療,大動脈内バルー

ンパンピング法による補助循環を行ない,少なく とも2週以上たってから手術をすることが望まし

い.

 6) 僧帽弁逆流:成因的に僧帽弁に属する乳頭 筋の虚血性変化,および左室瘤のために腱索,乳 頭筋の過伸展,萎縮また乳頭筋基部の移動,僧帽 弁輪の拡大,更に乳頭筋の断裂などのために逆流

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が発生する.

 乳頭筋断裂による僧帽弁逆流は,急性心筋梗塞 症の約1%にみられる.本症は前壁の虚血(梗 塞)に比し後壁の虚血(梗塞)に多い.

 本症の診断は急性心筋梗塞で収縮期雑音を聴取 したら,中隔穿孔とともに本症を考慮せねばなら ない.この鑑別は,右心カテーテル法で診断しう る.予後は悪く,特に前尖に属する乳頭筋断裂例 は急激に悪化し,心不全が進行して24時間以内に 50%以上が死亡し,2週間以上生存するものは 20%以下である.従って緊急僧帽弁置換術と大動 脈一冠動脈バイパス術が必要となる.

 B・大動脈疾患

 a)解離性胸部大動脈瘤および胸部大動脈胃破 裂

 解離芸大動脈瘤はきわめて高頻度(80%)に破 裂をきたして死の転帰をとる.したがって解離性 大動脈瘤は大動脈破裂の前駆症状として考えられ るものであり,そのため救急的治療が必要とされ

る.

 解離性大動脈瘤の発生型式は,DeBakeyによ る3型の分類が広く用いられており,1,H,皿 型の順に予後が悪く,手術も難かしくなる.解離 性大動脈瘤は発症後6時間以内に20%強,48時間 以内に約半数,1ヵ月以内に約80%,1年以内に 約90%が死亡するといわれ,予後は極めて不良で ある.解離の型,進行速度,巻き込まれる動脈な どによって呈する症状は様々であるが,胸痛ある いは胸背痛にはじまり,解離の進行に伴い腹痛,

下肢動脈閉塞症状,ショック症状を呈することが

多い.

 診断は,症状,心電図所見によりそれほど困 難ではない.胸部X線写真で縦隔陰影の拡大,

特に弓部,下行大動脈陰影の拡大がみられたり,

Double A・rt量。 Shadow(大動脈の真腔と解離腔と が明らかにされる)もみられることもある.最終 的な診断は,大動脈造影にて解離の範囲,内膜亀 裂部位を知ることである.

 破裂した場合は激甚な痛みがみられ,ショック 状態に陥る.破裂が気管・気管支に破裂すると喀

血,食道に破裂すると吐血をきだす.胸腔に破裂 した場合は胸腔穿刺が補助診断になる.症状から 診断は困難ではないが,胸部X線写真で縦隔の拡 大,血胸所見を呈する.

 解離性大動脈瘤で大動脈弁閉鎖不全,大動脈主 要分枝の閉塞,大動脈瘤の増大がみられるときに は緊急的に手術を施行し,解離腔閉鎖,代用血管 移植術,大動脈弁置換術,場合によってはRe−

entryを置く方法がとられる.

 手術死亡率は1型で60%,皿型で53%,皿型で 45%となお手術成績は不良である.一度破裂した 場合は緊急手術にても成績は不良であるが,破裂 口が被覆されて自然に止血されている場合には救 命されることがある.手術は破裂口閉鎖術,代用

」血管移植術が施行される.

 C・心臓損傷

 a)穿通性心臓損傷:刺入口のわからないほど の針,ピンなどによる小さなものから,ナイフ,

銃丸による大きな,あるいは挫滅の加わったもの までその差は大きい.心臓壁損傷が多いが同時に 冠動脈,中隔,弁尖,乳頭筋,刺激伝導系の損傷 を合併することもある.

 症状は一般に多様で,ショック症状が前景に立 ち,心膜創が大きければ,血胸型となり,胸腔へ の失血というコースをとる.その他,冠動脈の主 要枝の損傷は冠不全,中隔の損傷は中隔欠損症 状,弁・乳頭筋・二三の損傷は弁閉鎖不全症状,

刺激伝導系の損傷は不整脈を呈して,さらに血行 動態を悪化せしめ,症状をより複雑にして,予後 を不良にする.

 手術は開胸し,穿孔部止血を行なう.冠動脈が 損傷されているときは大動脈一冠動脈バイパス術 を併用する,もし心臓刺創が房室弁,半月弁,

中隔を損傷していることが疑われるときには,救 命手術が終り,感染も治ってから,カテーテル検 査,心血管造影法を用いて診断し,二期的に心内 修復術を行なうことを考える.

 b)非穿通性心臓外傷:交通事故,重量:物によ る前胸部の打撲などによって生ずるが,近年,

最も注目されるのはSteering wheel injuryであ

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る.衝突において心臓が受ける力学的因子は,1)

心臓の固定部に加わる勇断力,2) 直接圧迫によ る機械的因子,3)身体の急激な減速に対する血 液の慣性,に大別され,3)の因子が重要視されて

いる.

 心臓破裂の場合は,穿通性損傷の場合と異なっ て,心膜の創はないが,あっても小さいことが多 いので,急激に心タンポナーデをきたし,高度の ショック症状を呈し,創が大きければ,即死,ま たはこれに近い経過をとる.頚静脈怒張,中心静 脈圧上昇,胸部X線写真にて心陰影の拡大,血胸 像が認められ,心のう穿刺により血液が証明され る.穿通性損傷と同様に中隔,弁,乳頭筋,腱索 などの損傷を生じ,症状はより複雑となる.

 心挫傷の場合は衝撃の部位と強さにより様々 で,単に心臓のEpicardやEndocardに出血が みられるものから,心臓破裂を起こすものまであ る.軽い挫傷はそのまま治癒することが多いが,

重い挫傷になると損傷部位が変性,あるいは壊死 を起こし,1)長い時間ののちに心臓破裂を起こ す場合と,2)その損傷部位がFibrosisになる場 合がある.

 旧弊はただちに起こる場合と,24時間から数日 たって起こる場合とがある.痛みは狭心症様痙痛 で,冠動脈血栓症の症状によく似ている.

 心電図ではST・Tの変化が大部分で, QRSの 異常,または異常Q波の出現,刺激伝導障害を認

めることもある.重症の場合は,うつ血性心不 全,心馳ンポナーデを起こすこともある。

 治療は,心破裂の場合は致死的であるが,緊急 手術にて破裂部縫合止血を施行することにより救 命しうる可能性がある.心損傷が軽度の場合は 放置,経過観察でよいが,Delayed Ruptureが疑 われるときには,心血管造影により,症状を確か め,場合によっては外科治療を要する.

 D・大血管損傷

 a)穿通性凝血簡損傷:大血管(大動脈,肺動

・静脈,上・下大静脈)の穿通性外傷のほとんど は,受傷直後にほとんど死亡するが,大静脈,肺 動・静脈では数時間の生存例があり,外科治療の 可能性がある.

 出血性ショック症状を呈し,胸部x線写真で,

血胸像および縦隔陰影の拡大を認める.胸腔穿 刺,心膜腔穿刺も診断の一助となる.診断がつき しだい,ただちに開胸し,部分Bypass,あるいは 人工心肺下に,損傷部の直接縫合を行なう.

 b)非穿通性肉血管損像:大動脈の非穿通性損 傷は交通事故によるものが最も多い.Jacksonに

よると,大動脈破裂は,全部の交通事故死の15%

を占めるという.交通事故による大動脈破裂の25

%は,ただちに死亡し,残りの大部分は数時間後 に死亡する.

 外傷性大動脈瘤破裂は大動脈峡部に発生するこ とが多く,即死する場合を除くと大動脈外壁と胸 表1 非外傷性胸部疾患

疾患名 診   断         外科治療

a.気管内異物 病歴,頚胸部X線写真,気管支鏡検査 気管支鏡下異物摘出

b.自然気胸 既往歴,胸痛,呼吸困難呼吸音減弱

、鳴過度,胸部X線写真 脱気法,開胸術

肺・気管疾患

c,肺塞栓症

呼吸困難,呼吸促迫,肺動脈2音成分 [進,胸部X線写真,LDH・ビリルビ 唐フ増加,GOT正常,肺シンチグラム,

x動脈撮影,深部静脈血栓の証明

下大静脈遮断 x塞栓摘除術 a.食道内異物

病歴,異物停滞感,嚥下困難,嚥下痛 z胸部X線写真,食道撮影,食道鏡検

食道鏡下異物摘出

食道疾患

b.食道静脈瘤破裂

病歴,胃管挿入,貧血,食道・胃・

¥二指腸ファイバースコープ 纒拍チ化管X線撮影

バルーンタンポナーデ H道静脈瘤への直接手術 蝟ャ・下大静脈系吻合術

_腔道穿孔         、

モオい悪心・嘔吐,胸骨後部激痛,皮 コ気腫,食道撮影,胸腔穿刺

縦隔・胸腔内ドレナージ j裂部閉鎖術,胃痩造設

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表2 外傷性胸部疾患

疾患名 診   断 外科治療

a.Flail Chest

呼吸困難 チアノーゼ,奇異呼吸を伴

ネう重症多発肋骨骨折,肋骨撮影,胸 狽w線写真

レスピレーターによるIPPB ケ腔ドレナージ,肋骨固定術

胸壁損傷

b。外傷性血・気胸 非対称性呼吸運動,呼吸音左右不同,

]骨骨折,皮下気腫,胸部X線写真,

ケ腔穿刺

胸腔ドレナージ

a.気管・気管支損傷 全身皮下気腫,縦隔気腫,気胸,気管

x鏡検査,胸腔ドレナージからのair leak

気管切開術,胸腔ドレン [々吻合術(開胸)

b.緊張性気胸 呼吸困難胸痛,呼吸音減弱,胸腔穿

h,胸部X線写真 脱 気

c.肺破裂・肺性傷 呼吸困難,多呼吸,血疾,水腫液喀出 ル張性気胸,湿性ラ音,胸部X線写真

気管切開術,レスピレーターによるI

oPB,胸腔ドレナージ,肺葉切除術

d.ショック肺 ショックからの蘇生回復,進行性呼吸

「難呼吸促迫,努力性呼吸,低血圧,チアノーゼ,胸部X線写真

レスピレーターによるPEEP

膜でわずかに支えられているものが多い.このた め大動脈瘤,あるいは仮性大動脈瘤へと発展する ものが多い.

 大動脈破裂の診断は,ショック症状を呈し,胸 部の左上部に心雑音がきかれ,胸部のX線写真で 上部の縦隔の陰影が左右に拡大し,血胸を伴な

う.受傷後時間がたってから,縦隔陰影がさらに 拡大し,胸痛が遅くなって現われ,あるいは胸痛

を繰り返す場合や,震声が起こる場合は,大動脈 破裂部から再出血があることを考慮せねぽならな

い.

 大動脈破裂の診断が確実になったらできるだけ 早く手術に踏みきる.手術:方法は胸部大動脈瘤に

準じ,左心バイパスを用い,代用血管移植術が一 般的に行なわれる.

 大静脈,肺動・静脈の損傷で破裂すれぽ,ショ ック状態となるが,むしろ血腫や塞栓形成が多 い.この場合には心膜腔穿刺も診断の助けとな る.いずれにせよ極めて希である.

 皿L 緊急外科治療を必要とする胸部疾患  外傷性と非外傷性に分けて第一第,二表に診断 および外科治療の要点を示す.

共著者:心研外科 猪股昭夫助手 注:文献略.

参照

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