移動性を高める社会構造と マーケティング行動
梶 原 禎 夫
<目 次>
1.移動性を高める社会構造とマーケティング行動 1.進展する情報化社会と社会構造変化
2.情報通信の発達と社会構造変化 3.崩壊する日本型社会構造 ll.マーケティング基幹戦略の革新 1.企業一市場相互作用機構の新展開 2.マーケティング基幹戦略
3.改革を迫られる日本型コミュニケーション 皿.基礎調査/研究概要
IV.関連調査/研究概要
1.日本経済の国際化と企業行動 2.国際的産業構造の形成と企業経営
3.世界的経済構造調整と日本企業の行動に関する研究
4.日本企業を中核とする情報系による国際的企業連結とその経済的成果
5.情報処理・通信システム、特にその国際的展開と日本企業の調達・マーケティン グ行動
6.情報処理・通信システムと国際企業連結
7.情報化社会の進展、国際化する国内市場での畜産品の需要分析とマーケティング 8.情報化の進展と旅行需要構造変化
9.進展する情報化・国際化の下での社会構造の流動化と貯蓄行動の変化 10.進展する情報化社会における住宅関連消費者行動の変容と21世紀住宅構想 11.持続可能な経済システムの実現と企業・消費者関係の革新
12.九州地区主要河川地域住民の、河川の自然の価値についての意識調査と河川管理 政策展望
13.小売商業集積構造分析 V.研究報告会概要
1.移動性を高める社会構造とマーケ ティング行動
欧米に比べ日本社会は移動の少ない安定し た構造にあったが、近年における情報化の進 展は、この日本社会を変革に導きっっある。
事業所間での労動力移動が高まるなど長期継
続的な社会関係が崩れ、社会構造が流動化に 向かいっっある。さらに、情報通信の発達は 人と人との直接の交流=交通に代替するだけ に止まらず、より広範囲の人々との情報通信 システムを介しての間接的な交流を通じて、
人と人との直接の交流/移動を推進する方向 が顕在化しつつあり、社会の移動性を促進し
ている。さらに、人と人との直接交流への要 求は、個人間、集団間の緊密な相互作用とそ れを基盤とする革新への流れから生まれてい るものであり、今後これが社会の発展と関係 する人の移動の一っの中核部分となる可能性 が大きい。このような社会にあって、経営の
システムと行動は変容を迫られている。
1.進展する情報化社会と社会構造変化 情報化・自由化の進展は、国際化と相侯っ て日本社会の基本構造を変革しっっある。既 存の権威は失遂し、階層構成が崩れ始め、人々 の思考と活動の空間は拡大している。また、
対人関係は流動化し、階層構成と長期継続関 係で安定していたこれまでの日本型システム は崩壊の過程にある。代って、個々人の自由 度と問題解決能力が高まりっつあることを背 景に、革新と創造を核として凝集する、行動 的な組織化が目立ち始めている。流動する社 会は人々に新しいコンタクトの機会を与え、
高い成果をもたらす競争を生み、革新への動 力をもっが、この流動化する社会への過程は、
これまで日本社会の安定性を支えてきた集団 主義の変革を意味している。欧米社会でも、
集団は広範囲においてみられるが、日本の集 団とは構造や挙動が異なるところが多い。日 本人の集団は、大きな変化やリスクを避ける 防衛的な色彩が強く、また集団の規範にそっ ての牽制も強く、大型の革新に向けては組織 力を発揮しえなかった。国際化・情報化・自 由化の進展は、このような日本型集団を崩壊 に導き、革新性に富む社会に変えっっある。
流動する社会では、構成員間にコンフリクト が多発し、個人間の距離は拡大する。欧米に 比べ個人間で近寄り過ぎるといわれてきた日 本社会が変わりっつある。経営システムはこ のように移動性/革新性を高める社会構造の 中で変容を迫られている。
日本では対米比較でみて組織の中の小集団 が小型であり、集団内部のコミュニケーショ
ンも不充分で、情報の共有化の程度が低い。
人は他人からどのような影響を受けるかなど、
社会集団における人と人との間のコミュニケー ションを流行やパニック現象においてみると、
日本では個々人が集団からの影響を受け易く、
しばしば大型の流行やパニヅク現象がみられ るのに対し、米国では、集団自体は大型で再 編成を繰り返しているにもかかわらず、流行 やパニック現象は、各個人の自立性が高いた め日本のように大型のものはあまりみられな
い。
米国社会は、日本社会と比較して、多様な 個性をもっ、自立性の高い人々から構成され、
各個人間には広範囲の人々との強い相互作用 の展開がみられる。個々人間の関係は、日本 のように複雑でなく、単純で、しかも新しい 関係の展開がみられる。当然米国社会では強 い相互作用、特に新しい関係展開の周辺でよ り多くの情報創造が行われ、より創造性/革 新性に富む社会となっている。
社会は、各構成員が自主的に環境変化を感 知し、行動する自律分散型へと変化しっっあ るが、この流れを支える人と人との関係に人 の利他行動がある。近代社会は互恵関係を基 礎として発展してきているが、この基礎には 自己犠牲をいとわぬ利他行動がある。米国社 会では利他行動は一般にみられ、これが社会 の発展や革新の基礎となっているのに、日本 では特に社会貢献の大きい利他行動に対して は、「隠された目的がある」として、しばし ば攻撃の対象とされる。社会的相互作用は社 会全体としての成果を生み、この成果は社会 構成員にフィードバックされ構成員の行動や 構成員間相互作用に影響する。このフィード バック経路は基本的には利他性によって維持
される部分が大きい。
2.情報通信の発達と社会構造変化
企業間情報通信ネットワークの整備は、電 子データ交換、電子会議システム、インター ネットアクセス等により、情報の伝達や会議 のための出張を少なくする傾向は情報化社会 が進んでいる欧米ほどではないにせよ、この ところ日本でも鮮明にみられるようにもなっ たが、高水準での共同分析が必要な場合や、
高度の交渉等に関しては、face to faceのコ ミュニケーションに多くは依存せざるをえな い状態にある。特に日本では、情報通信ネッ
トワーク上での協議は信頼性の高い水準での.
交流を行わない傾向があり、むしろ、情報通 信システムの整備の進んだ企業でも、事業所 間、企業間関係において、革新的行動に対応 して、出張の機会は拡大の傾向がみられるも のがある。
この傾向は、欧米でも同様である。情報通 信の発達が、face to faceのコミュニケー ションに代替する局面はあるが、社会は基本 的には、人の情報処理能力の高まりと共に人 と人と強い相互作用を発展させる方向に向かっ ている。
これまで、情報化の進展は情報通信システ ムの発達を通じて、一般に人の地理的移動、
直接接触の機会を少なくする効果が強調され てきているが、実際には、情報化が、個々人 や組織における広範囲情報利用、分析力強化 など行動様式の変革を伴って実質的進展をみ せる段階にまで至ると、行動主体間の相互作 用がこれまで以上の緊密度で発展し、人々の 移動機会は自然に拡大する。現在、高度情報 化を支える情報通信システムの発達は、企業 間のグローバルなレベルを含め、直接対面の コミュニケーションに代替するだけに止まら ず、より広範囲の人々との情報通信システム を介しての間接的な交流を通じて、人と人と の直接の交流/移動を推進する方向が顕在化
しつつあり、社会の移動性を促進している。
情報社会は、意思決定における信頼性の高 い広範囲・新鮮情報利用が推進されると同時 に、意思決定のための分析力と危険負担力の 高まりを基礎に、社会が創造性を高め、革新 的になり、さらに人と人とのより強力な相互 作用の機会を求めて、移動性を高めることを 意味している。
3.崩壊する日本型社会構造
欧米に比べ日本社会は移動の少ない安定し た構造にあったが近年における国際化、自由 化を基調とする、社会の情報化の進展は、こ の日本社会を変革に導きっっある。長期継続 的な社会関係が崩れ、社会構造が流動化に向 かいっっある。このような流れの中で、日本 社会の安定性を支えてきた集団主義も変化す る。日本人は問題解決を他に依存する傾向が 強く、日本人集団は支配・従属の関係が強い 階層構成をもち、その構造は長期継続の関係 で、集団の規範にそっての牽制が強く、集団 構成員の自由度は小さい。しかし、近年、日 本社会が、国際化、情報化、自由化が進展す る中にあってこの日本型社会の特徴は、徐々 に変容に向かいつっある。既存の権威は失遂 し、階層構成が崩れ始め、人々の思考と活動 の空間は拡大しっっある。集団構成要員個々 人の問題解決能力の高まりは、集団の開放性 を向上させると共に、集団により程度の差は あっても基本的には革新を核として凝集し、
構成員の最大限の創造的貢献を可能にする柔 軟な組織に変わりっっある。組織には組織を あげての最適化のために自由な情報の流れが 確保され、問題解決にはその能力をもっ単位 で対応し、環境変化へは迅速な適応が可能に なる。ビジネスシステムもこのような社会構 造変革の大きな流れの中にあり、企業組織で の階層構造はより柔軟な関係に変容しつつあ
る。対外的には自由な流通・取引関係の進展 により、企業は市場との広範な接触を実現す ることと併せて、聡明さを高める消費者の自 由な評価に耐える製品とサービスの供給を通 じて、市場へ対応し、社会的価値の高い革新 に向けて努力を傾けざるをえなくなりっっあ る。このような革新的企業努力の中で日本の 企業、市場・流通システムは透明性と開放性 を高め、国際社会の評価に耐えるビジネスシ ステムが形成されることになり、これは21世 紀に向けて社会的に要請されている変革の方 向にそうことにもなる。産業社会の高度情報 化は、このような日本社会変容の過程で並行 して進展するものであり、対欧米、特に対米 比較でみる日本における情報処理と通信シス テム整備の遅れは、その投資効果が欧米のよ うには出にくい社会構造にあったということ で、この状態は緩和の方向に向かいっっもな お現在に至っても変わっていない。日本の産 業社会における高度情報化の遅れを単に「経 営のオープン性の欠如」からみるだけでは、
21世紀に向けての高度情報化への有効な政策 は展望できない。一方、近年における情報処 理・情報通信システムの発達は、社会の情報 化を推進し、日本型集団の変容を加速しっっ ある。しかし、欧/米,特に米国と比較し、
日本社会の情報化の程度はなお低レベルにあ り、今後もこの状態はっつくと思われる。こ のため、現状では日本の産業社会でのネット ワークコンピューティングの普及水準が低い ということが目立っという程度であるが、電 子ネットワーク上での問題解決の領域が欧米 と比べ狭いということが今後鮮明になり、社 会発展が、従ってまた産業の発展が遅れると いうこともありえる。
ll.マーケティング基幹戦略の革新
国際化・自由化の進展は、情報化と相侯っ て、階層構成と長期継続関係で安定していた これまでの日本型システムを崩壊に導きっっ ある。代って、革新と創造を核として凝集す る、行動的な組織化が目立ち始めている。し かし、大多数の人々は、このような機会に恵 まれない、または適応力が充分でないなどの ため、システム革新に参加できず、崩れゆく 日本型システムの中で将来の見通しもないま ま苦悩の中に陥っている。日本は、欧米に比 べ単一民族国家で、階層構成が安定し、統括 が容易であったが、社会構造の流動化はこれ を根底から覆し、社会は一種カオスの状態に ある。社会構造の流動化は、一方ではシステ ム再構成の機会を拡大しているが、まだ日本 社会における新しいシステムの形成力は、欧 米のように広範囲にみられる状態にはない。
ビジネスの領域においても同様である。市場 での経済力の集中に対抗するシステム形成も 日本は欧米に比べ活発にはあまりみられない。
社会全般における新システム形成力の弱さは、
反社会勢力に対する対応・制御の面でも、ま た災害時の救難組織形成の面でも露呈されて
いる。
日本で、民主主義制度はほぼ完全な形式で 確立されているが、政府や地方自治体の行政 には、国民・市民の意思が充分反映される機 構とはなっていないことが暴露され始めてい る。革新を犠牲にしながらも、安定した日本 型社会システムが維持されていた時代では問 題にならなかったものが、今政治・行政への 市民一般の反発として噴き出しっっあり、社 会基幹システムさえ揺いでいる。新しい社会 システムへの移行と社会の基本構造の維持な ど、その持続的発展に向けて基本的対応策が 究明されなければならない。基本的には自発
的探求意欲をかりたてる視野の広い教育環境 整備などから始めて、社会における、また職 域関連での政策形成や創造的活動への参加の 強化、市民としての文化創造のための交流の 絆を深めるなどの特別の対応が、日本社会に おいて重要になっている。流動する社会にお ける人間関係の絆は、政策形成・革新・活動 を共にし、その成果を共有することから生ま れるものであり、これまでの日本で一般的で あった、階層構成での上下関係や防衛的色彩 が強かった日本型集団での、単純な人と人と の関係を意味する絆とは異なるものである。
創造的に行動する単位をネットワークする基 幹システムの形成と、システムの環境への応 答、そしてその過程でのシステム自体の革新 をも含めた分析が社会的に必要になってきて
いる。
1.企業一市場相互作用機構の新展開 日本の消費者は欧米の消費者に比べ価格や 情報に敏感ではなく、小売商に対してより、
供給源であるメーカーに高い信頼を寄せ、メー カー中心の安定した流通関係が成立していた。
しかし、1973年秋の石油危機を契機とするイ ンフレ下で消費者は急激に価格への反応を強 め、小売商の政策に強い関心を寄せ、自由な ブランド選択・店舗選択への傾向が顕著にみ られるようになり、流動的な流通関係形成へ の動きが生まれた。
しかし、この消費者行動変化の影響は、流 通過程におけるメーカーを中核とする支配構 造を基本的に変更するまでには至らなかった。
自主的消費者行動の発展は、流通企業の創造 的市場行動の機会を拡大するものでもあった が、流通業のこの新しい市場機会への適応は 遅れた。石油危機に続いたインフレの収束、
景気回復、所得上昇による消費者支出拡大の 下で消費者行動は自由な行動の延長線上で個
性化、多様化し、かっ高級志向を示すように なるが、主要メーカーは、これに継続的な新 製品導入で迅速に対応することによって消費 者と流通企業への影響力を再び強めた。1985 年以降の円高基調の下でも解消しない日本の 経常収支不均衡の下での、市場開放への世界 的要求が高まる中で日本市場は国際的レビュー を受けると共に、公的規制や、供給源と最終 市場に対し反応的でない日本の流通システム などにより価格競争の機会が制限されてきた ことで発生した内外価格差が明らかにされ、
その情報が広範囲に流された。さらに、高頻 度で反復される新製品導入が深く関わる資源 浪費や環境破壊が批判されるようになった。
消費者のインテリジェンスの高まりと共に、
これまでの消費者の行動に反省を迫るものを 含め、意思決定において広範な情報を利用す
る消費者層が拡大した。消費者は市場におい て自立性を高め、製品を高度に差別化し、消 費者行動をブランド選択に収敏させるための 消費者支配型マーケティング政策の効果を減 退させており、メーカーと消費者の関係ばか りでなくメーカーと流通企業の間にも流動的 な関係形成への変化が進行している。
消費者による情報利用の拡大は、購買や消 費・使用の経験によりえられた情報によって 選択対象をしだいに限定する、従来、一般に みられた消費者行動の慣習化を後退させた。
消費者は市場において常に広範な情報を利用 する問題解決者として行動する傾向を強めて おり、製品を高度に差別し、消費者行動をブ ランド選択に収敏させるためのマーケティン グ政策の効果を減退させた。また、企業の高 頻度、高密度の新製品導入による市場操縦を 可能にしてきたが、消費者の情報処理能力の 向上は、このような操縦フレームからの消費 者の脱出を意味しており、企業にマーヶティ
ング行動の修正を迫った。
情報化社会における消費者行動の特徴の一 っは、よく制御された行動となっており、永 続性と企業への対応性をもっているというこ とである。石油危機につづくインフレ下での 消費者行動も、ブランドやストア選択で、反 復購買される製品については、経験情報を軸 に選択行動の制御傾向がみられたが、消費行 動で制御機構が鮮明にみられる水準にはなかっ
た。しかし、現在の消費者行動は、個人の情 報処理力の強化と共に、海外からの情報を含 めた広範囲の情報をえて、よく制御されてい る状況にある。一般に消費者は、経験情報に よって購買行動を慣習化させるが、現在の消 費者行動ではこの傾向は少なく、消費者は常 に新しい問題として対応している。さらに行 動の制御は、その永続性の維持や対企業戦略 性をももっ水準に高められっつあり、石油ショッ
ク後の消費者のように企業側の新しい対応に よって、消費者がその戦略下に導かれるとい う状況にはない。
今、情報化社会の進展と共に日本の経済社 会システムが聡明な消費者行動展開への期待 を伴って変化を遂げようとしている。資源・
エネルギーを浪費して産業を非競争的にし、
真の市場要求に応えない企業行動は、世界的 批判の中に置かれるばかりでなく、やがて国 内においても社会との調和を欠くことになろ
う。
日本の市場における過剰な差別化競争は、
一方では価格競争の水準が低いことにも起因 している。政府規制緩和と市場開放推進、さ らに競争維持政策の強化などで、価格競争条 件の整備が進めば、消費者の意識改革も進み、
差別化競争がコントロールされ、生命・健康・
人間活力の維持に貢献する製品とサービスの 開発に向けて企業努力が推進される市場機構 の確立に至ることが期待できる。日本と比較 して、欧米ではメニカーと流通企業の関係が
自由で、価格競争維持の条件が整っており、
価格競争の過程で過剰な製品差別化が進むこ となく、新技術に基づく製品開発が進展する のに対し、日本では、企業は新しい製品差別 化を継続的に導入し、この差別化競争が牽引 する技術競争が展開され、製品開発がより強 力に推進される。消費者は価格よりも、差別 化に反応し、製品と流通経路における高度差 別化が進行する。高度に差別化されたマーケ ティングの展開は市場を不透明にし、製品差 別化の開発により創出された技術差と共にエ ントリーを困難にする。また、ロ本市場と欧 米市場の間での価格差を生む市場・流通機構 を形成することにもなった。
創生期の産業では、新製品の継続的市場導 入は顕著な技術進歩をもたらし、同様に生産 規模の拡大を求めての価格競争の進行がしば しばみられる。一方、日本では自動車や家庭 電気製品など、成熟産業においてもアセンブ ルメーカーは、欧・米でみられる以上に、頻 繁にモデルチェンジを繰り返しており、効率 的な製造・販売システムをもっだけでなく、
モデルチェンジのための新製品開発システム を維持しなければメーカーはその市場地位を 失う。一方、モデルチェンジは、部品供給企 業や流通企業との関係強化を必然的なものと し、アセンブルメーカー中心の生産/流通系 列が形成され、この企業連結がモデルチェン
ジと共に市場支配の基盤となっている。一般 に、製品のモデルチェンジは、変化を求める 消費者に応え、技術開発を導く。特に未開拓 の技術フロンティアの大きい新生期の産業で はこの技術開発牽引の効果は顕著に現れる。
しかし、短縮されるプロダクトサイクルは資 源を浪費し、より多くの廃棄物を生む。また、
新製品の継続的市場導入はそれ自体で価格競 争の機会を少なくするし、また必然化する流 通系列化も価格競争の機会を少なくする。
日本の企業は競争企業との間に製品差を設 け、市場部分ごとに製品を特殊化する製品差 別化の強化に走り過ぎ、その結果過大な開発 負担費、過大な製品バラエティによる在庫・
物流諸経費負担の問題のため最近では、多く の産業で過度の製品差別化を抑制し、製品ア イテム削減とプロダクトサイクル長期化への 傾向がみえ始めている。しかし、製品差別化 やモデルチェンジは製品差に敏感な市場層を 基盤として展開されるのであり、高度差別化 を中核戦略とする日本型市場メカニズムがっ つく限り、企業の新製品行動に基本的修正は 期待できない。
今、情報化社会の進展と共に日本の経済社 会システムが聡明な消費者行動展開への期待 を伴って変化を遂げようとしている。資源・
エネルギーを浪費して産業を非競争的にし、
消費者利益を犠牲にする企業行動は、世界的 批判の中に置かれるばかりでなく、やがて国 内においても社会との調和を欠くことになろ
う。
高級化、快適化、便宜性への消費者要求は、
モデルチェンジの基盤となってきたが、これ らの要求は企業主導の市場メカニズムの中で 創り出されたものであり、頻繁にモデルチェ
ンジを反復する構造をもつ、成熟度の高い寡 占産業ではモデルチェンジにっいての社会的 制御の必要性が生じる。もはや寡占産業でみ られる頻繁なモデルチェンジは競争のフレー ムでとらえることはできなくなっている。
2.マーケティング基幹戦略
自動車ではメーカーによる流通系列化が最 終市場まで維持されているが、家庭電気製品 においては、スーパーや量販専門店の割り込 みのため、流通系列化は年々後退している。
このため、家電メーカーは、自動車以上に頻 繁にモデルチェンジ・スタイルチェンジを繰
り返しながら、流通過程・最終市場を通じて の、市場の開発・維持に努めてきた。このよ
うに継続的新製品導入と流通系列化は、相互 補完的にメーカーの基幹マーケティング戦略
となってきたが、ここ数年間における情報化 社会の進展の下で、分析力・判断力・行動力 を強化している消費者は、この戦略に抵抗し、
代って、企業と消費者が相互交流する機会を 与える、企業と消費者の間のシステムの形成 に期待をかけるようになっている。今後は、
企業一消費者間システムの構造化が、マーケ ティングの基幹戦略となる。大規模な消費者 訪問は、このシステムをイメージさせるが、
消費者は、自発的に企業に接近し、企業と相 互交流する消費者・企業間システムの開発に 期待をかけている。この壮大なシステムを通 じて開発される、製品と販売力が21世紀の消 費者要求に応えるものとなる。ここでは、企 業と消費者の間の取引関係を革新してゆく販 売システムの開発が、新製品開発に匹敵する 重要性をもっことになる。
またこれは、新製品の継続的導入を中核戦 略とするメーカー・プログラムの下で、欧米 に比べ零細過多で、卸取引が多段であるにも かかわらず比較的高い効率を維持してきたと いわれる日本の流通構造とその行動が、マー ケティング問題解決に関する負荷の増大で、
革新力をもっ流通システムへの変革が迫られ ていることを意味している。さらに、広範、
かっ自由な市場接触と、インターネットのよ うに市場と企業の間での双方向型の情報交換 を低コストで可能にする、オープンな情報通 信ネットワークの形成に期待が寄せられるが、
企業一消費者間交流の基本システムの形成に は企業による消費者への情報開示、消費者の 問題解決能力にっいての正当な評価、企業一 消費者間相互作用による創造的成果への期待 等別個の問題があり、情報処理・通信システ
ムはこのような企業一消費者間のシステム形 成を支援するという関係である。現状では、
苦情処理など対立を伴う場合を除いて、消費 者と企業の日頃の対話は皆無に近い。小売レ ベルにおける消費者のコンタクトは専ら販売 推進の機会としてしか活用されず、広範な消 費者との対話は実現できない。直接、または 流通を介して、企業と消費者の対話を可能に する条件の整備が企業側に求められている。
3.改革を迫られる日本型コミュニケーショ ン
社会における各種メッセージのあり方も改 革を迫られている。欧米、中東に比較し、移 動の少ない日本社会では、言語機能がそれら 諸国の言語、特に英語/米語に比較し、弱体 である。また、場によって慣用化している腕 曲表現、あいまいな表現、過剰な敬語等々は、
日本語に熟達していないNON JAPANESE の日本語理解を困難にしているが、これは21 世紀における情報社会で変容を迫られる日本 語の姿を示唆している側面をもっ。今後は、
信頼性の高い情報の効果的な交流が社会発展 の基盤となるからである。既に日本語の表現 で緊急に改革を迫られている場として、バス、
列車等における各種アナウンスを指摘できる。
加えて、殆ど意味をなさない大量反復メッセー ジの乱発である。これらのメッセージの殆ど は雑音化している。交通機関における日本語 メッセージは、まず敬語を可能な限り削除し、
かっ直接的表現方法をとることにより冗長性 を排除すれば、そこには力強く、分かわり易 い日本語が現われてくるはずである。コンパ クトなメッセージはアピールカをもっばかり でなく、優美でさえある。われわれ日本人は、
しばしば日本の文化と称し、日本語を聴き取 りにくく、分かりにくくして使っている。人 は意味のない挨拶の言葉を交わすが、これは
人間社会の交流の基本を成している。しかし、
市場経済にあって、この関係は供給者から需 要者に向け一方的に流されるセールスメッセー ジの一環として反復される必要は必ずしもな い。むしろ、マーケティング空間では、需要 者との好ましい関係を維持する目的での、市 場へ向けての実質意味のないメッセージの反 復は需要者の思考空間に干渉するばかりで、
その空間価値を劣化させる場合が多い。
日本の市場では差別化を中核とする競争が 進行し、しばしば消費者の真の要求から離れ て販売促進のための過剰な差別化競争の展開 になっている。当座、消費者を楽しませ、喜 ばせるだけのための過剰な差別化競争が一般 化し、資源の浪費、環境破壊を生み出してい る。今後、コミュニケーションにっいても21 世紀に向け、消費者の基本的ニーズに応える 方向に向けての、市場メカニズムを通じての、
コミュニケーションのコントロールが緊急の 課題となっている。ビジネス空間における日 本語メッセージは、まず敬語を可能な限り削 除し、かっ直接的表現方法をとることにより 冗長性を排除すれば、そこには、情報社会で 高い評価を受ける力強く、美しい日本語が現 われてくるはずである。日本人間のコミュニ ケーションは、寡黙の中での相互作用を基本 とすることが多かったのになぜビジネス空間 では喧喋を極めるセールスメッセージに溢れ るようになったのか、ここにマーケティング の中核的パワーとコミュニケーションコント ロール機構の欠如が露呈している。
皿.基礎調査/研究概要
1.米国において、1930年代のスーパーマー ケット、1950年代のディスカウントハウス 等の革新的流通企業の発達が、流通過程で
メーカーの計画しない価格競争を生み、ブ
ランドやストア選択にっいて自由な消費者 行動を発展させ、メーカーの流通支配を後 退させた過程を分析した。一方、この間の メーカーの製品計画システムの強化と統合 的マーケティングの展開による市場への適 応システムを分析し、自由な流通関係にお けるマーケティングの展開システムを展望 した。また、価格競争下で、消費者は価格 に敏感になると同時に、製品差=技術差に も反応的になることを示し、価格競争と同 時に進行する製品技術開発競争について分 析した。この研究との関連で、インフレ下 においても消費者が価格に敏感になること から類似の競争過程の展開がみられるとい
う仮説を出したが、これは昭和48年秋の石 油危機にっつくインフレ下の調査でこの仮 説を検証することになった。
研究報告:需要流動化と企業行動、ミネ ルヴァ書房,京都,昭和49年4月
度・反復導入する企業行動を中心に国際比 較を含めて解明し、産業における価格競争 と革新過程の維持、取引にっいてのパワー バランスの確保、消費者利益を重視する企 業行動へのシフトに関する政策について研 究してきた。併せて、新製品の継続的導入 が市場を不透明にし、国際的に高いエント
リー障壁を生み、資源の浪費をもたらし、
内外価格差を生んでいるメカニズムを対欧 米比較により鮮明にした。さらに、現在の 日本の企業に特徴的にみられる、市場と流 通への影響力拡大を目指す新製品行動が、
資源制的、環境保全、消費者行動の自立化 等の条件下で限界に到達しっっあることを 明らかにしてきた。本研究の成果の一部に っいては、
研究報告:Changing Pattern of Consumer Behavior and Marketing in Japan、特定研究報告,1988
2.昭和48年秋の石油危機以降における消費 者行動の変化と企業の適応行動について、
昭和49年、50年、51年、54年、56年に首都 圏を中心とする調査を行い、また昭和51年 からは流通企業行動調査も並行して行い、
自由な消費者行動への傾向と企業の対応に ついての分析結果をえた。
研究報告:消費者行動と企業(の)適応 (行動)、新評論,東京,昭和59年4月同
英文版:The Characteristics of
Consumer Behavior and Marketing in Japan,Prin七ing Bureau, Ministry of Finance, 1986
3.昭和60年代に入ってからは、全国的規模 での消費者行動調査や企業行動調査を行い ながら、日本における企業のマーケティン グ行動や流通機構の特質を、新製品を高頻
4.「消費者行動とマーケティングシステム に関する国際比較調査」を平成4年から5 年に日本で、平成4年から6年に米国で実
施した。
①欧米に比べ日本社会は移動の少ない安 定した構造にあったが近年における情報 化の進展は、この日本社会を変革に導き っっある。長期継続的な社会関係が崩れ、
社会構造が流動化に向かいっっある。マー ケティング・流通システムの変化もこの ような社会構造変革の大きな流れの中に あり、自由な流通・取引関係の進展の中 で、企業は市場との広範な接触を実現し つつある。
②米国の消費者は、日本人と比べ、個人 の情報処理能力が高く、より行動的でこ れが購買行動の相違となって現れてくる。
また米国では、消費者は価格競争の維持
に関心が強く、価格競争の過程で行われ る製品や店舗の差別化に対して一定の評 価を与えるという水準にあるが、日本で は、企業の製品/店舗の高度差別化行動 への消費者の反発が顕著にみられる。
③日本の社会構造も流動化に向かいっっ あり、系列も崩壊しっっある。このよう な社会基盤の変化のうえに、情報化社会 が進展しっっあるが、欧/米、特に米国 に比較し、社会の情報化の程度は低い。
日本の消費者行動も自立化に向かいっっ あるが、企業のマーケティング戦略への 対抗力は欧/米の消費者の水準には至っ ていない。日本での低い価格競争の水準 は社会の情報化の程度に対応している側 面をもっ。今後、少なくとも欧/米並み の情報化が進み、価格競争もそれだけ進 行する。価格競争の過程で環境/資源問 題に敏感な消費者層も実現する。
調査対象:日本:東京、千葉、横浜、
京都、大阪、福岡、長崎他に居住する家 事担当者
米国:New York, California, Nor七h Carolina, Minnesotaの家事担当者 回収数:日本1,441 米国495 研究報告:The Globalization of Economy, Internationalization of Market and Changing Distribu七ion in Japan、 Policy Research Project on Internationalization of Japanese Economy,1994
研究報告:消費者行動・競争メカニズム とマーケティング、大蔵省印刷局,平成 5年
注)①(1)の研究は、米国における1950年代 の不況下で展開された、価格競争の過程に おける、消費者行動の変化、対応する企業
行動、流通システムの変容に関する膨大な 調査資料をAsian Foundation,U.S.Aよ り提供を受け、その分析成果であり、2.
の研究は、この分析フレームで日本におけ る、石油危機を契機とするインフレ下での 消費者行動と、対応する企業行動に関し、
全国調査に基づいて分析したものである。
この分析成果にっいては昭和50年度「経済 白書」で紹介がみられる。なお、1,2,3 の研究成果を基礎として、富士総合研究所 は1994年「消費者の価格志向の高まり」の 調査レポートを公表している。
また、2は、ifo studien zur
japanforschung Deutsche Unternehmen in Japangeschaf七 Markterschlle
Bungsstrateglen und Distributionswege von Eirch Ba七zer Helmut Laumer, Ifo Institu七ftir Wir七schaftsforschung e. V.
Mthnchen 1986, in English:Marketing Stra七egies and Dis七ribu七ion Channels for Foreign Companies in Japan, Wes七view Press, Boulder, San Francisco&London 1989の基礎資料となっている
関連調査(1984年特定研究他)
課 題 期 間 対象 ・回収集数 ・概要等
インフレ下にお 1974年8月 対象:東京、名古屋、大阪、仙台、福岡、北九州、長崎の主婦 ける消費者行動 /9月 回収数:1,093品目:加工食品、衣料、家庭電気製品
の変化 事項:価格、製品差別化、広告に対する消費者の反応、消費者の店舗選択行動
概要:石油危機を契機としたインフレの加速は、消費者の市場行動の自立化を一挙に進め、需 要の無差別創造に無抵抗であった消費者行動の構造が基本的に変わったことを明らかにした.
消費者は、製品の実質的内容と価格への反応を強めながら、製品差別化への反応を低下させ、
また選択対象とする店舗の範囲を拡大したことを示した.
変化する消費者 1975年8月 対象:千葉、東京、横浜、川崎、名古屋、神戸、北九州、長崎の主婦 行動とマーケティ /9月 回収数:1,330品目:加工食品、衣料、家庭電気製品、合成洗剤
ングの対応
1976年8月 対象:東京、船橋、所沢、大阪、豊中、福岡、長崎の主婦 回収数:1,322
/9月 品目:加工食品、衣料、家庭電気製品、合成洗剤 1978年3月 対象1加工食品、衣料、家庭電気製品のメーカー36社
/6月 回収数:チェーンストア20社(本社)、消費者センター10 品目:加工食品、衣料、家庭電気製品
事項:流通企業からメーカーへの情報の流れ
概要:製品差別化、店舗差別化、大量広告、価格などの企業行動に抵抗する自主的消費者行動 の基本型が定着しっっあることを、1974年調査に続き1975、1976年の調査で明らかにした.価 格・品質関係、情報の量と信頼性に敏感になるなど消費者行動の計画化が進んだことも明らか にした.競争価格、開放的流通経路、高信頼性情報の伝達等、自主的消費者行動に対応すべき 政策面からみると、企業の適応が十分でないことも明らかにした.
メーカーとの流 1984年7月 対象:化粧品、家庭電気製品、自動車の各販売店(首都圏を含む全国)
通企業の関係に /8月、 回収数:化粧品店81、衣料品店70、家電製品販売店140自動車販売店82
関する全国調査 1985年1月 概要:メーカーのマーケティングに対する、販売店の評価、販売店の市場行動にっいて調査し
/3月 た.メーカーによる販売店の拘束はなお存続しているが、化粧品以外では、全般的に販売店の 自由行動の余地が拡大しっっあることが分かった.
マーケティング・ 1978年3月 対象:加工食品、衣料、家電製品のメーカー36社、チェーンストア20社、消費・センター(東 流通コミュニケー /1979年5 京都、大宮、京都他)10
ション調査 月
概要:メーカーと流通企業間の情報交流にっいて調査した.メーカーは、流通業を通じて情報 を収集するシステムを整備していないことが分かった.販売店に持ち込まれた苦情で、メーカー の責任とみられるものも、メーカーに伝えられていないことも多くみられた.
日本経済の国際 1985年7月 対象:一部上場製造企業本社(食品、衣料、家電、自動車)回収数:125
化に伴う企業行 /8月 概要:海外企業からのOEM供給、海外からの系列企業からの製品輸入、海外からの生産財輸 動調査 入、海外企業との共同開発製品の輸入状況を調査し、主要メーカーによる製品輸入が拡大傾向
にあるこどを示した.
1992年1993 対象:上場企業 年 回収数:221
概要:同上継続調査.主要メーカーによる製品輸入拡大傾向を再確認.
メーカーとの流 1988年7月 対象:化粧品、衣料、家庭電気製品、自動車販売店 回収数:化粧品販売店37、衣料品販売店 通企業の関係に /8月 73、家庭電気製品販売店176、自動車販売店101
関する全国調査 概要:1984年調査と類似の結果をえたが、メーカーの継続的な新製品導入か系列組織を維持す る根幹となっていることを明らかにできた,
消費者行動とマー 日本:1992 対象:日本:東京、千葉、横浜、京都、大阪、福岡、長崎の他家事担当者 ケティング・シ 年/1993年 米国:New York, Californ城Noth Carolina, Minnesotaの家事担当者 ステムに関する 米国:1992 回収数:日本1,441米国495
国際比較調査 年/1994年 品目:加工食品、衣料、家庭電気製品、木製家具、自動車
概要:情報化社会の進展に伴う消費者行動の変化を対象として調査した.米国の消費者は、日 本人と比べ、個人の情報処理能力が高く、より行動的でこれが購買行動の相違となって現れて くる.また米国では、消費者は価格競争の維持に関心が強く、価格競争の過程で行われる製品 や店舗の差別化に対して一定の評価を与えるという水準にあるが、日本では、企業の製品/店 舗の高度差別化行動への消費者の反発が顕著にみられる.
1996年/ 日本人は、これまで安定した社会構造の中にあって、欧米人に比べ情報評価能力が低く、問題 1998年 解決型行動をとる程度が低かった.しかし、近年国際化、情報化の下で日本人の行動にも変化 のきざしがみられ、変容する社会構造との関連で、消費財の中の有形財、サービス、金融商品 の各選択を対比するフレームで、日、米、シンガポールの家計行動の国際比較を行った.選択 行動で、高度の情報処理能力が必要な金融商品選択で、日米差を鮮明に示すことができた.
IV.関連調査/研究概要
1.日本経済の国際化と企業行動
研究期間:1986年度/1987年度
研究助成:特定研究(国立学校特別会計)
成果概要
高度技術に基づく新製品を継続的に導入し ている産業では、メーカーによる流通系列化 が進んでおり、スーパーや専門店等のチェー ンストアがシェアを高めている場合でも、流 通過程での制作形成では、マーカーに有効に 対抗するまでには至っていなく、メーカー・
プログラム中心のマーケティングが、最近の 自由な消費者行動による抵抗を受けながらも、
流通末端まで展開されている。しかし、メー カー・プログラムで行動している流通過程は 排他性をもち、メーカーの製品技術が国際的 に優位にあることもあって外国製品の国内流 通を困難にしている。一方、新製品開発の機 会の少ない産業では、円高により価格競争力 をもっに至った外国製品が、チェーンストア の経路を経て、さらに小規模小売商を末端と する多段的流通機構を通じても広範に市場に 浸透しっっあり、市場の急速な国際化が進み、
産業は関連部門も含めて構造改善を迫られて
いる。
2.国際的産業構造の形成と企業経営 研究期間:1989年度
研究助成:特定研究(国立学校特別会計)
成果概要
国際分業、海外直接投資、海外技術移転が 進む過程での国際流通の拡大と、日本での並 行逆輸入、流通企業の開発輸入や海外展開等
日本の流通機構の国際化の評価を行った。
3.世界的経済構造調整と日本企業の行動に 関する研究
研究期間:1991年度
研究助成:特定研究(国立学校特別会計)
成果概要
メーカーの製品輸入行動原理を独自の全国 調査を行って明らかにし、寡占メーカーの支 配下にある日本市場の主要部分が海外企業に 開放される条件を明らかにした。ここで、海 外製品の日本市場での浸透のためには小売集 中に至る流通機構の変革よりも、主要メーカー の全国的流通ネットワークの海外製品への開 放の効果がより期待できることを示した。
4.日本企業を中核とする情報系による国際 的企業連結とその経済的成果
研究期間:1992年度/1993年度
研究助成:特定研究(国立学校特別会計)
成果概要
長期継続的な日本企業の取引関係、つまり
「系列」が排他性を持っことについての世界 的な非難が根強く存続している。完成品流通 については「系列」を越える取引が拡大に向 かいっっあるが、日本では部品取引について は、アセンブルメーカーと部品の供給企業と の緊密な関係のうえで製品の開発・設計が行 われる効率的な製品開発・製造システムが維 持されており、取引関係の自由化・流動化が 進行し難い側面をもっ。そのため、部品市場 への海外企業の参入問題の解決が、完成品流 通以上に困難な面がある。
5.情報処理・通信システム、特にその国際 的展開と日本企業の調達・マーケティング 行動
研究期間:1992〜3年度
助成機関:電気通信普及財団(NTT出指)
成果概要
本研究は、研究開発・調達・生産・マーケ ティングにおける情報処理・通信システムが、
グローバルなレベルで外国企業を含む新しい 連結を作り出してゆく過程とその成果を検証 するものである。具体的には、
1.高品質、高信頼性の下での高速・大容量・
多重での情報伝送を可能にする通信ネット ワークとこれに融合する情報処理機構は、
グローバルな空間での経営展開を容易にし、
広範な選択機会の下での国際的企業連結を 生み出す。戦略形成支援を基軸として情報 処理・通信ネットワークにより連結される 国際的企業集団は、グローバルなスケール での最適な経営資源の利用と市場対応を推 進する過程で、経済システム間の不均衡な どのマクロレベルの経済問題に対しても有 効な、より構造的な対応能力をもっことを 示した。また、日本の大手組立産業メーカー では、国際的供給ネットワークの構成によ り、完製品、補修部品について日・米・欧・
アジア間での相互補完システム構築の方向 に向かっており、これに対応する情報シス テムが整備されっっある。当面は、円高と 生産の海外移転は、海外調達を拡大し、日 本向け輸出の増加にっながり、海外との貿 易不均衡緩和の効果が期待される。一方、
海外企業との広範囲の連結が、情報システ ムによって支援される方向がみえっっある。
2.最近、1992年9月以降、特に1993年2月 以降の急激な円高の下で、海外向け製品は もちろん、日本国内市場向けの製品でも低 価格帯の製品に限らず、高度技術製品もま た、生産拠点の海外移転の進行が加速され っっある。電気・電子機器では生産拠点ば かりでなく、設計や開発の海外移転計画も
増加しっっあり、これらの経営拠点をネッ トワークするグローバルな情報通信システ ムの果たす役割が拡大している。1993年度
調査でも、国際的企業連結は、OEM供給 など生産関係が多かったが、共同開発シス
テムの構築も増加しっっある。先端技術製 品についての日本と海外企業間の共同開発 システムが形成され、新製品の日・米・欧 市場での同時導入なども進んでおり、これ らのシステムを支える情報システムも構築 されっっある。このような国際的企業連結 では、異機種混在のネットワーク化や、デー タ連携など国際的オープンシステムの対応
が進みつっある。
3.日本の主要製造企業は、国内、米国、欧 州、東南アジアをカバーし、為替変動に敏 感に対応する調達・生産・流通システムの 制御機構、グローバルな情報システムの構 築を迫られていることを鮮明にした。今後 は為替変動に対してばかりでなく、開発、
設計、調達、生産、マーケティング、物流 を統合する経営システム中枢に関し、戦略 性の高い高度情報システムの構築が、グロー バル化を迫られる企業にとり存続のための 必須の条件となりっっある。
6.情報処理・通信システムと国際企業連結 研究期間:1994年度
助成機関:国際コミュニケーション基金 (KDD出指)
成果概要
1.日本は欧米、特に米国に比べ、情報ネッ トワーク化、情報システム関係アウトソー シングサービス等の遅れが著しかったが、
海外企業、特に欧米企業との関連が拡大・
緊密化するのに伴い、欧米並みの企業間ネッ トワーク化とそれに伴うデータベースの整 備が急速に進みっつある。企業内での国内 情報と海外情報の一体的利用にっいては、
自動車、電気機械、事務機械を中心に顕著 な展開がみられるようになっており、90年 代に入り米国に比べ低調であった情報化投 資が、このところ経営のグローバル化と並
行してのネットワーク化との関連で増加し つっある。
2.最近では、共同開発システムの構築も先 端技術領域で増加しつつある。先端技術製 品についての日本と海外企業間の共同開発 システムが形成され、新製品の日・米・欧 市場での同時導入なども進んでおり、これ らのシステムを支える情報システムも構築 されっっある。
3.経営のグローバル化の流れの中で、開発・
設計・生産・マーケティングの各部門間の 連携強化、効率化を推進し、さらに企業内 情報系システムと企業間情報通信ネットワー クを接続し、情報交換するためのEDIへ
のシステム化が進みっっある。その機能も、
商取引データに加え、CADデータ、技術 データの交換も可能にし、さらに海外への 展開も進みつつある。輸送機器や電気機器 では、製品設計、資材・部品調達、製造、
流通等のデータを標準化し、日本企業と海 外企業間でデータ交換するCALSの構築 が進みっっある。
4.日本企業は、系列を越える取引を始めて いるとはいえまだ取引先を、米国企業より
遥かに狭く限定する傾向がなお強く、情報 通信にっいてネットワークは、調達の領域 でも米国企業ほどにはその活用の効果は上 らない。しかし、近年、自由化、国際化が 進展する中で日本型産業社会の特徴は、徐々
に変容に向かいつつある。階層構成と長期 継続関係で安定していた、これまでの日本 型システムは崩壊の過程に向かいつつある。
日本の産業社会の高度情報化は、このよう な日本型社会の変容に並行して進展するこ とが期待される。一方では、電子ネットワー ク上での問題解決の領域が欧米と比べ狭い という状態が今後鮮明になり、日本におけ
る社会産業の発展が遅れるということもあ
りうる。
7.情報化社会の進展、国際化する国内市場 での畜産品の需要分析とマーケティング
研究期間:1994年度/1998年度
助成機関:畜産振興事業団(1994年)
:農畜産業振興事業団(1998年)
報告書:畜産物需要開発調査研究事業報 告書(畜産事業団、1995年)
同(農畜産業振興事業団、1998年)
成果概要
消費者の購買行動/マーケティングは、同 じ畜産品でも、食肉と牛乳/乳製品の間で異 なっている。食肉では、消費者のブランド指 向は多くはみられず、特定ブランドとは関係 なく、味、新鮮さ、安全性、信頼性などを基 準に、信頼できる店で現物を見極めて買って いる。また、消費者は自分で質を重視し、価 格にはあまり反応しない。特に牛肉にこの傾 向が強い。一方、牛乳や乳製品ではブランド を基準に、食肉の場合よりも簡単に選択を行 い、価格にもよく反応してブランド選択を変 えている傾向がみられる。食肉での購買では、
まず信頼できる販売店を選び、他の食品と共 に、購買バスケットの中の1アイテムとして 買っており、多くの場合一般食肉購買が店の 選択に影響することはないが、一方、大型店 の選択に食肉品揃えが影響するとする者もか なりいる。また、情報に関して、消費者は、
店舗での表示で得られるものに依存している が、それだけに満足せず、過半数の者が生産 過程(飼料、飼育環境)についての情報を求 めている。
現在のところ、食肉マーケティングは小売 店のプログラムによって推進されており、生 産者/産地のプログラムは消費者まで到達し ていない。食肉の主要なマTケティングは小 売商によって遂行されており、消費者はまず