ドイ ツ新商法 引当金規定 とその解釈論理
佐 藤 誠 二
は じ め に
1.現代会計学説と引当金概念
Ⅱ。新商法における引当金の種類と計上論理
Ⅲ.新商法における引当金の評価論理
Ⅳ.引当金規定解釈論理の意義 はじめに
今回の ドイッ会計法改正にあたって、大幅な変更のなされたものに引当金 規定がある。すなわち、新商法第249条 1項で は「 引当金 は不確定債務 (ungewisse Verbindlichkeiten)及び未決取引か ら発生するおそれのある損失
(drohende verluste aus schwebeden Geschaften)、
にたいして設定されなけ ればならない。」とされ、不確定債務及び未決取引から発生するおそれのある 損失について従来の株式法規定とは異なり、法の文言によって引当金の貸方計 上義務の存することが明定されることになり、とりわけ、従来、商法上明示規定がなく
1961年
の連邦最高裁判所の判決に基づき貸方計上選択権の付与されていた年金債務に対する引当金についても計上が義務づけられることになった。
加えて、同項2文では、当営業年度には実施されなかったが次の営業年度にお いて 3ケ 月以内に追加計上される維持補修 (Instandhaltung)の ための費用、
当営業年度には実施されなかったが次の営業年度において事後的に追加計上さ れる廃石除去 (Abraumbeseitigung)の ための費用、法律上の義務をともなわ ないで提供される保証給付
(Gewahrleistung ohne rechtliche Verpflichtung)
に対する引当金の貸方計上義務が規定されることとなり、これをもって、従来、(256)%
法経研究38巻
3・
4号 (1989年)
貸方計上選択権のあった引当金に貸方計上が義務づけられることとなったので ある。さらに、第
249条
2項では「 引当金はさらに、その属性に従い正確に表 現され、当該営業年度 もしくは先行営業年度に帰属されるべき費用で決算日現 在でその発生の確実性が高いかもしくは確実であるが、その金額もしくは発生 の時点が不確定なものに対 して設定することが許される。」とされ、いゎゅる 費用性引当金 (Aufwands」ckstellung9n)に
対 して従来存 していた貸方計上 禁止が貸方計上選択権へと変更されることになった。かくして、今回の改正会 計法においては許容される引当金の目的・ 範囲は明文化・拡張することとなり、それによって、見積・ 予測・判断を必然的に内包する現代会計実務の典型をな す引当金会計実務が商法会計制度上、拡大された幅をもって明確な法的認証を 得ることになったのである。
そこで本稿は現代会計実務の典型たる引当金会計実務と新商法会計規定との 論理的関連の考察を介 して、西 ドイツ会計制度の特質を分析するという問題意 識にねざした作業の一環として位置づけるものである。もとより、会計法の改 正を促すのは実質的には税、配当等の経済現象を合理づける会計実務の展開要 請であり、それを認証する法体系の不安定性の存在である
6し
かし、上の会計 実務の展開要請が一般の承認を得るためには法がそれを認証 し、法が会計実務 を主導するという制度上の形式、法の安定性が不可欠であって、この形式的な 制度の建前を合理づける論理が要請される。本稿ではヽかかる会計法改正を合 理づける論理が如何なるものかという視点にたちて、コンメンタールを手がか りに考察する。以下、新商法249条
の引当金規定を中心にその解釈論理を整理 し、その上で、引当金規定の解釈論理の内容が現実の実務に対 して如何なる意 味を有するのかについて検討するものである。I。
現代会計学説と引当金概念「 新法の引当金概念 は不確定負債に対する引当金を実質的に越えており、引 当金が形成されなければならない目的を列挙する方法で、またかなり広域に確
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%(255)
ドイツ新商法引当金規定とその解釈論理
(『
個別表示 による年度決算書ハ ンドブック』)
上の立言から知れるように新商法において貸借対照表に計上される引当金の 幅は拡大された。問題はかかる引当金計上の拡大を合理づける論理が如何なる
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一種の「不確定法概念 (unbestimmte Rechtsbegriffe)」 であって、その解 釈は時代の学説に委ねられることになる。とすれば今日の会計学説において引 当金概念はいかに定義されるのか。ここに取 り上げるアイフラー
(GoEifler)
の論文「不確定債務及び未決取引から発生するおそれのある損失に対する引当 金 (Ruckstellungen fur ungewisse Verbindlichkeiten und fttr drohende Verluste aus schwebenden Geschaften)」(1987年 )は
、新商法下における 引当金規定解釈論を伺 う上で格好な素材 と言える。このアイフラー論文は先の レフソン (U.L6ffson)と その門下生によって刊行された『正規の簿記 の諸原 則』研究叢書の第5巻『 引当金に対する正規の貸借対照表作成の諸原則』.(19 76年
)の自著を新たに新商法に引き寄せながら書き改められたものであり、レフソン流の正規の簿記の諸原則論と新会計法とに基礎構想上の姻戚関係
(Affi―
nitat)あるとの指摘 (モクスタ早A.Moxter)を鑑みれば、 ここに取 り上 げ る意味も少なくない。そこで、アイフラー論文に現代会計学説の典型をみて引 当金概念からまず考察 していこう。
さて、アイフラーは引当金概念については、専門書・ 法判決・ 法規定は多 く の異なる概念を有 しているが、例示すれば次のように定義されるという。
(1)将来の支出
(2)不確定債務
(3)将来の財貨及び給付の減少
(4)根拠は確実であるが金額については不確実な事物関係
(Sachverhalte)
(5)列挙によるもの
しか し、アイフラーはそれらは「現実に引当金として貸借対照表に計上され
る多くの事物関係を顧みれば、全ての引当金を網羅するものでないし、あるい
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書に収容される企業財産か らの「財産対象物の一定の将来の減少 (bestimmte kunftige Abgange vOn verm6gensgegenstanden)」 にたいする項目として記
(254) 77
法経研究38巻304号 (1989年
)
述す るな らば、 こうした不十分 さは広範に回避 され うるという。 しか し、かれ はもし引当金を「 財産対象物の一定の将来の減少」 とするにしてもその種のす べての減少が引当金 となるのではな く、将来の減少の一部のみがそもそも貸借 翼里籠垢警:尋奨督織ふ腫 警亀
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経済財 の貸借対照表
(1)実現原則 に従 い収益が実現 されるな らば、事象的期間限定の原則 (Grundsatz der sachlichen Abgrenzung)に よって同 じ期間 にこの利益の全 てに現実に帰属する財産対象物の減少が、それが将来にはじめて発生するとし ても費用 として把握される。これには保証給付が例示される。
(2)利益に現実に帰属せ しめられない将来の財産対象物の減少は、企業 がそ うした減少か らリスクをもはや防止 しえないときには期間的限定原則 (Grundsatz der zeitlichen Abgrenzung)に よって費用として把握される。こ れには決算費用・ 年度決算書の作成費用が例示される。
(3)不可避的に貸借対照表決算日以降に開始される取引に基づき企業に対 し損失が予想されるときは財産対象物の将来の減少を不均等原則によって貸借 対照表に計上することになる。ただし、その減少が貸借対照表作成者たる企業
にとっての対称 となる債権によって相殺されない場合に限ってである。
(4)決算日に存在する全ての負債
(債
務)が
完全性原則により貸借対照表 に表示されなければならない。この場合の負債には貸借対照表作成者たる企業 に対する等価の対称請求権のまったく存在 しないような裁判上の通過可能なす べての要求権が属する。この負債は経済財の将来の減少をもたらすもしかし、それは前記の二つのような常に成果作用的な限定取引だけでなく加え
.て
信用に よる購入 も属する。アイプラーは以上を総括 して「上に述べた貸借対照表計上能力ある財産対象 の将来の減少の四つのケースは企業が貸借対照表決算日に当該財産減少を自ら の措置によってはもはや回避 しえないということをもって例外なく示される」
という。彼によればそこでの減少概念は他の人格への流出による減少でもあり、
当該経済財の消費ないし消耗による減少でもある。
ところでアイフラーは上の要件に加えて次の二点に言及 している。まず、か れは正確性 と没恣意性原則との関連では財産対象物の将来の減少のきわめて僅 少のリスクであっても引当金によって償われてはならないとする。むしろ引当 金能力あるのは十分に計量化可能で十分蓋然的な減少 リスクのみという。ここ
(253)
ドイジ新商法引当金規定とその解釈論理 で計量化可台旨睦とは利用可能なデータから異なる減少代替案の価値が纂定され
る場合に存在すると言 う。また十分な蓋然性の規準は慎重性の原則のもとでは 90%の確率で満足される、つまり90%を上回らないような減少価値が見積 られ るというように解釈される。したがつて10%以上の発生の確率のあるリスクは 引当金によって補償されなければならなくなる。 しか し、年度決算書は債権者 保護
(責
任資本の強化)の観点からだけでなく社員(配
当測定)、
労働者(俸
給額)、
国庫(税
額測定)等
のその他の集団の利害にも役立たなければならないので、この種の悲観的考察方法は十分でないと言 う。そこで矛盾 しあう利害 間の容認可能な妥協解は5o‑75%の確率で満たされる。しかし、結論としてこ の種の限界 はGoBによつて強制的に誘導 されるものではな く、一般毒論的 に はコンベ ンション(Konvention)によってのみ確定 され うるとしている。
次 に指摘す るのは引当金 として表示 される財産対象物の将来の減少 は借方側 に表示 される個々の経済財の価値修正を一般に示す ものでないということであ る。この種の修正はむ しろ減価償却や価値修正項目の問題だといわれる。ただ し例外 もあり、例えば、締結された引渡 し取引から損失が生ずる恐れがあり提 供されるべき製品の一部が貸借対照表に計上される場合、引当金として損失を 貸借対照表計上 し棚卸資産の価額修正することがあるという。しかし、貸借対 照表明瞭性の原則によって個々の積極の価値修正としての項目は引当金として 表示すべきでないことが指針であるという。 ⑫
かくしてアイフラーはつぎのように要件を纏めて引当金概念を定義している。
(1)消極項目
(2)企業外部者に対する財産対象物の回避不能な将来の消費 もしくは流出
(3)事象的ないし期間的限定原則、不均等原則 もしくは完全性原則に従い 貸借対照表中に考慮される
(4)一定の積極項目の価額を修正 しない
(5)確実ではないが十分蓋然性があり、十分正確に数量化される
さて以上みたごとくアイフラーにあっては引当金概念が基本的には「 財産対 象物の減少」と「不確実性」との用語結合によって規定される。かれは「不確 実性」用語に「回避不能」
(要
件 2)「蓋然性」「数量化可能J(要件5)という 意味を付与 し、それと「財産対象物の減少」を結びつけることによって引当金 の計上を理論づけている。それは第二者 に対す る負債性(Schuldcharakter)
を前提 とする引当金概念(静
的貸借対照表観)、
発生原因 (Verursachung)を(252)"
法経研究38巻304号 (1989年
)
規準 とし利益決定の比較可能性のための期間帰属を中心 にみる引当金概念
(動
的貸借対照表観)を
も包括 し、新たな論理枠 によって引当金の計上範囲を拡大 させ るものである。 しか も注意すべきは、上のような論理結合の中心的媒介を なす ものとしてかれは限定原則(要
件3)に関説 している点である。「 引当金具 者 緊 醤 響 層 昌 留 π 警 繰 響
OFT,お[冨
]F:[Tササ 撃 :サ 冒 習 争
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原則はかれの解釈における限定原則であり、新商法規定における限定原則その ものを意味 しない。 しかし、商法下における正規の簿記の諸原則の内容たる限 定原則を論ずることによってかれの引当金概念は制度的意味を有することにな る。かれの引当金概念 も、商法上の正規の簿記の諸原則の解釈論の起点として 示されることによって新商法下において列挙される種々の引当金に対する合理 化論理の基盤 として位置づけられることになる。
Ⅱ。新商法における引当金の種類と計上論理 1.249条における引当金の種類
新商法
249条
では旧株式法152条
7項と同様に引当金について一般的定義を下 さないけれども、引当金が形成されなければならない、もしくは形成されてよ い目的を 1項 と2項において列挙 しているという。アイフラーに依れば法用語 でも文献でも引当金種類│ま
不確定債務に対する引当金、未決取引から発生する おそれのある損失に対する引当金並びに基礎となる債務を伴わない引当金とに 大別されるが、商法249条
もこの区分によっており、「引当金の事物関係に基 づき法的資金を持つ企業外部の人間が貸借対照表作成者たる企業に対 し一定の 警槽「 雷違鷹:亀
菖せ電曇裏房雀漿]黒二51i警『 [1::[警 」肩F轟蕎 法における引当金の区分 と関連規定を示せば表1のようになる。以下、各区分 に従い引当金の性格 と適用例をみておこう。∂θ (251)
引
当
金
考慮の種類 規 定 場 所 不確定債務未決取引から発生するおそれ のある損失
未実施の維持補修 (3ケ月
)
未実施の維持補修
(12ケ
月) 廃石除去(12ケ
月)
法的債務を伴わない保証給付 具体的な将来の費用
消極計上義務 消極計上義務 消極計上義務 消極計上選択権 消極計上義務 消極計上義務 消極計上選択権
§
249 Abs.l Satzl
§
249 Abs.l Satzl
§249 Abs.l Satz2.Nr
§
249 Abs.l Satz3
§249 Abs.l Satz2。 Nr
§249 Abs。l Satz2.Nr
§
249 Abs.2
1
2 ドイツ新商法引当金規定 とその解釈論理
表
1引当金種類 と規定
出所
) KoKtiting/CPoWeber(Hrsg。 ),Handbuch der Rechnungslogung:Kommentar zur Bilanzierung und Prtilfung, 1989, S.513.
1.1)不確定債務に対する引当金
引当金は
249条
1項 によって不確定債務に対 し設定されねばな らないが、 こ こでいう不確定債務に対する前提は負債性を有すること、発生および債務金額 の不確定なこと、蓋然性の高いことがあげられる。まず、第一には第二者に対 する債務を問題 とする負債性である。ここに言 う債務 とは法律上既に存在する 負債、つまり貸借対照表決算日に存在 し履行未済債務たる負債だけに留まらな 在す讐言讐│:倉
Σ冤│:箇
寧音響】:こ
ξttЯ
馨すが貸借対照表決算日以前に存 第二の不確実性の前提はつぎのように区分される。ひとつは債務がそもそも 存在するかどうか、いま発生 しているかどうかが不確実という根拠の存否の場 合である。この場合、商人は「慎重性の原則」に従い、自身の貸借対照表にお いて追加計上する可能性が準備されているが、その際、理性ある商人の判断に おいて債務が存在するかもしくは今後生ずる可能性があると認められる具体的 (250)尉
法経研究38巻304号 (1989年
)
手がか りが存在 しなければな らないとされている。二つには債務の金額に対す る不確実性であ り、それは商人に対 して生ずる負担が正確 に確定 されるのでは な
(1)、
貸借対照表作澪の時点にまさに見積 ることがで きることを意味す るとさ れる。
第三の前提 は商法上、法典化 はされていないが、商人が貸借対照表決算 日に 存在す る事物関係に したが つて本気に債務 が発生す るものとみなす場合にのみ 引当金が命令されるということである。この発生するおそれのある債務の発生 は税法上の承認の前提濡もあり、債務発生に否定する以上の根拠が述べられな ければならないとされる。 ′
か くして、上の前提が満たされれば、商法■とめ次のような場合の不確定債務 に対 して引当金が設定されるべきといわれている。
(1)取壊債務、 (2)公法上の債務に基づ く岩床除去、 (3)職業訓練費、
(4)代理商の補償請求、 (5)鉱山災害、 (6)ボーナス、 (7)例えばカ
ルテル協定 もしくは環境保障協定に違反する場合の罰金、(8)放射能汚染除 去費用、 (9)放射能除去費用、 (10)エ ネルギー供給企業の遠隔債務、(11) 法規定に基づ く保証給付、 (12)賞与、 (13)鉱山及び坑内の充填、 (14)責 任債務、 (15)責任関係、 (16)年度決算及び監査費用、 (17)祝祭供給、
(18)サービス給付、 (19)未 払いで金額のまだ決定 されない免許料、 (20) 特許権、 (21)年金及び類似債務、 (22)年金保障協会への将来掛金、
(23)
製品保証、 (24)手数料債務、 (25)訴訟 リスク、 (26)値引き、│(27)公 法 上 もしくは契約上の債務が存する再教育、 (28)商人に提起される損害賠償、(29)保険企業の場合の損害引当金、(30)社会計画、 (31)被傭者に対す る 社会債務、 (32)税その他の支出および潜在的税金、 (33)利益配当、
(34)
ウアラウプ債務、 (35)契約罰金、 (36)保険技術上の引当金、 (37)早期退 職、 (38)手形引受義務、(39)ク リスマス報酬、 (40)例 えば賃貸借建物の 場合の修復債務、 (41)一回目の更新の債権の追加、 (42)金額の不確定な場 合の年金扶助金庫及び年金金庫への割当額。
1.2)未決取引から発生するおそれのある損失に対する引当金
未決取引から発生するおそれのある損失は不確定債務に特殊の属すると解釈 されている。不確定債務の場合、債務の全額が計上されねばならないが、この 種の損失については未回収の収益 と相殺されるべき差額のみが貸方計上される
″
(249)
ドイツ新商法引当金規定とその解釈論理 ため、商法上分離 して規定されているのだといわれる。
ここで未決取引とは商人が契約を締結 しその契約が双方によって未だ履行さ れないときに生ずる取引をいう。こうした未決取引からの損失は同 じ取引から の収益 と費用が一致 しないで債務超過
(Verpflichtung…liibergang)が
生ず る 場合に予測 しなければならない。ここで引当金計上額は例外的に許容される相 殺計算のために評価により決定されるが、その場合の要点は次の通 りである。まず損失は個々の営業年度に計算上帰属する金額でなく、未決取引から生ずる 不足額の総計であることである。その際、損失を予見的に回避することであろ うという、予想されるがまだ生起 していない状況を考慮 しなければならない。
これは慎重性の原則から要請されるという。さらに損失が発生するおそれがな ければならないことである。それは純粋に理論的な可能
1睦
ではなく、損失が本 気に生 じそうであるという兆候が存在 しなければならないことを意味する。こ の場合の判断は過去の経験が引き寄せ られる。契約者双方の評価が規準となる ために損失が具体的に発生するおそれがあるのかどうか、その範囲はどの程度 かの問題が生ずるが、それは標準的な状態で (unter nOrmalen UmStanden) 予想すべきであり、最大限に計上すべきでないといわれる。 こ話 は253条 1項2文の規定
(理
性ある商人の判断による評価)か
ら生ずるという。こうした未決取引から生ずるおそれのある損失に対応る引当金に属するもの としてうぎの取引からのものが考えられるとされている。
(1)個々の購買取引、 (2)個々の引渡取引、 (3)価格が固定的で市場状態 が変動する場合の長期購買取引及び引渡取引、 (4)大規模設備・ 建物・ 船舶 等の定価での建造および引渡 し契約、 (5)先物取引、 (6)賃貸借契約、
(7)リ
ース会社におけるリース契約、 (8)消費貸借契約、(9)特許契約、(10)用 役給付契約、 (11)雇用関係
(労
務訓練費・ 自由共働者の給与継続支 払い 。被傭者に対するその他社会保証債務)
1。
3)未実施の維持補修および岩床除去に対する引当金このふたつの引当金は費用性引当金のグループに属すると解されている。こ れら引当金を設定するにあたっての要点はつぎの通 りである。
まず、「維持補修Jとは経営財産対象物の機能を保持する全ての措置を意味 するとtヽうことである。ここでは監督、検査、修繕か ら一般点検にいたるすべ ての措置が属する。経営経済的観点からは維持補修の実施が必要 となり、商人
(248)
法経研究38巻
3・
4号 (1989年)
が標準的状況のもとで作業を行おうとする場合、費用は未実施である。ここで は既に開始 しているがまだ終了 していない維持補修 も貸借対照表決算日にまだ 着手 していない維持補修 も問題にされる。「 未実施 (UnteFlaSSung)」 とい う事実は蔵人の慣行、製造の指令、利用の
1範
囲等の客響的起点に基づくものと されている。第二に維持補修が貸借対照表決算日以降三ケ月以内に実施されるときには貸 方計上が義務づけられる点である。これは緊急の措置にとっての指標であると いう。引当金は貸借対照表作成にあたり三ケ月以内の追加計上が可能 となると きに許容される。この期間は短期であり貸借対照表作成年ついて脱若干の期間 を要するため、実際の判断には現実の動向が依 り所となるとされる。
第二に上のように維持補修の費用が貸借対照表決算日以後三ケ月以内に追加 計上されない場合であっても引当金は許容されるが、それには 1項3文によっ て選択権が付与されるということである。 1項 でこの引当金を区分 して規定 し たのは法の継続性か らだといわれる。さらに、理性ある商人の判断に従って貸 借対照表作成の際にこの期間が保証されなくとも2項に従い引当金は許容され るという。尚、追加計上については次営業年度申に行わなければならない。C24)
第四に岩床除去 という場合、廃石残留の除去すなわち既に構築 した実体のま わりもしくはその接続点に見られる実体の構築との関連で除去されない被覆岩 石の除去が理解される。この岩床除去については、公法上 もしくは契約上の債 務が存する場合、 1項 1文 の意味での不確定負債に属する。公法上の債務が存 在 しない場合、2文の 2は 直接消極計上義務を規定 しているが、こうして立法 者が選択権でなく強制を規定 したのは引当金が税務上の効果を持つからだとい う。公法上の債務を伴わないこの岩床除去の前提は貸借対照表決算日の翌営業 年度内
瑾具握架乃士百勇:L[1lSTTダ れなければ
2項に従 う費用性引
1.4)法的債務を伴わない保証給付に対する引当金
249条
1項2文の 2の 法的義務を伴わない保証給付とは商人がその企業の利 害において顧客がそれにたいする請求権を持つこともなくもたらすサービス給 付 (Kulanzleistung)である。この法的義務を伴わない保証給付に対する引当 金は顧客が欠陥があるとみなし商人がそれに保証するだろう場合には個別に設 定されなければならない。同 じことは可能な保証ケースが前兆 となっているか解 (247)
ドイツ新商法引当金規定 とその解釈論理
別の方法で所与となるかする場合に妥当する。しか し、商人は過去の経験に従 い法的債務を伴わないこの給付を見なさなければならない。従 って、引当金を 設定すべきか否かの問題に対する基準は前営業年度の実質的諸関係(tatsach―
lichen Verhaltnisse der letzten Geschaftsiahre)で
あるという。249条 1項 2文の 2に よる貸方計上義務は完全性の命令によってむしろ、過去の経験に基 づき扇括額が設定されない限りには全てのサービスを把握することを要請する という。16 5)具体的将来の費用に対する引当金
249条
2項による引当金において問題となっているのは将来の費用が区画さ れるという意味で典型的な費用性引当金である。この引当金に対 して立法者が 限定 した可能性は、企業が「具体的将来 の費用 に対す る準備 (Vorsorge hr Konkrete kunftige Aufwendungen)」 をおこなうという目標設定だといわれ ている。この引当金に対 して立法者は選択準を付与 したが、ふれは将来生ずる 特定の費用に対する貸借対照表補助項目の性格を有するという。コンメンタールによれば、この種の引当金には正確に表現される費用、当該 営業年度への帰属性、蓋然性 もしくは確実性、発生の金額 もしくは時点に関 し て不確定といった前提が与えられている。第一の前提は積立金形成を介 して実 施されうる一般的な リスク保証と具体的将来の費用に対する引当金とを区別す る前提 といわれる。
249条
2項からはその属性から正確に表現 される費用Iの
み が許容されるが、その理解は引当金にとっての日'的
と内容が正確に確定されな ければならない、つ嵩り引当金を具体的に特徴づける事物関係が根拠になけれ ばならないことにある。 .第二の前提は具体的将来の費用は前 もしくは先行営業年度に帰属 しなければ ならないことである。したがって将来の営業年度との帰属関際では十分でない。
ここで規準 となるのは過去の収益 との関連すなわち因果関係である。というの は費用性引当金を許容することによって収益状態がより明瞭に記述されなけれ ばならないからである。さらにここでの解釈にとっては「 市立(Zuordnung)」
は経済的帰属性
(wirtschaftliche Zugeh6rigkeit)と
して、つまりその原因が ある営業年度の経済活動にあるところの修正として理解されなければならない と言 う。第二に債務発生の蓋然性があげられるが、これは 1項1文における不確定債 (246)朽
法経研究38巻304号 (1989年
)
務一般に対する前提 とは異なるとされている。不確定債務の場合は負債が商人 の処分に供されていないため債権者のような第二者を前提とするが、2文の意 味での蓋然性は費用性引当金の際の原価発生に対 し自己の決定により影響を与 える商人そのものが指向されるという。ここで費用は債務の発生があたかも内 か ら生ずる場合に蓋然的であり、それが理性ある商人の判断において通常生 じ 泉撃窯
[旦
獣房羹肥百鼻鷺ti鷹:bil崚テ用が確実であるというのは商人 第四は金額 と発生時点の不確実性である。この場合、金額の不確実性は将来 の費用の金額が確かに見積 られはするが正確な金額は未知であるときに存在す る。発生の
臆点は費用は確かに予期されるが時期が確定されない場合、不確定 であるという。
考慮
:お
:L警ま8雨等[警
「とすれば少なくとも次のような場合に引当金が
(1)建物及び機械設備に対する取壊
(設
計)原
価、 (2)がれき除去原価、(3)過去の指標によって算定されるだけでなく将来の状況によってその支払 いが左右されるところの成果プレミアム、 (4)建物の改装、 (5)飛行機・
船舶・ 熔鉱炉等の一般検査、(6)機械設備 。発電所等の大規模修繕、
(7)
次営業年度の経過後初めて追加計上される岩床除去、 (3)次営業年度経過後 初めて追加計上される不履行の維持補修、 (9)建設業VOB/B 条に基づ く 計算書作成、 (10)保険会社の場合の損害取扱費、 (11)例えば飛行機の場合 の安全監督、 (12)年々増加する利子率を伴 う抵当証券の場合の利子2.引当金の計上論理
れ冒管昔鰊 理二
[弔
層轟3聰 『『渥l;よ
百墨童Z県絶理亀£t整旦 とする多様な引当金の計上が義務づけられ許容されることとなった。この点、
先にアイフラーにみた引当金概念 も「不確定性」を合理化づけることによって 上述の多様な引当金項目を網羅的に論理づけており、そこに解釈学 としての現 代会計学説の商法規定への論理化機能を見て取ることが出来る。 しかし、より‐ 問題はかかる引当金計上を承認する商法規定構造 とその解釈論理が如何なるも のかであろう。新商法は
238条
1項 におけるすべての商人の諸帳簿の作成原則、243条
1項・264条
2項・297条
2項における全ての商人、資本会社、コンツェ (245)ドイツ新商法引当金規定 とその解釈論理
ルン会社の年度決算書作成原則として正規の簿記の諸原則に従うことを指示 し、さらには明瞭性
(243条
2項)・ 完全性(246条
1項)・ 期間限定 (252条 1項 の5)。慎重性(252条
・1項 の4)・実現
(252条
1項 の4)・不均等 (252条 1項 の4)、 評価継続性(252条
1項 の6)・個別評価(25鯵
亀1項の3)という たいわば下位の正規の簿記の諸原則を年度決算書の作成0評価 。計上原則とし て法典化するに至ったが、このことは引当金の計上・ 評価・ 表示について正規 の簿記の諸原則を規準とすべきことを意味 している。その点、アイフラーは「貸借対照表計上時点の問題つまリー定の年度決算書において一定の引当金を 形成すべきか否か、あるいは形成されうるか否かの
Fn5題
│ま、限定原則(蒜
現界 則、事象的限定 もしくは期1間
的限定原則、不均等原則)に
方向づけ.ら
れる。」として、上述の引当金概念を基礎に、商法上め正規の簿記の諸原則としての限 定原則論をさらに展開させている。そこで次に正規の簿記の諸原則との関わり で引当金計上の論理が如何に形成されるか、かれによつて考察していこう
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2.1)引当金の計上時点
引当金の設定時点についてアイフラァは財産減少の形態に応 じて給付関連的 な場合、期間関連的な場合、そのどちらにも属さない場合に区分してつぎのよ
うに
i輪
じている。(1)まず給付関連的財産減少の場合には、一定の企業給付の販売との関連 で引当金設定を理由づける事物関係は、事象的限定原則に基づき実現原貝1によつ て帰属収益が実現 したとされる期間に成果作用的に帰属されべきという9この 場合、ひとつの取引からすべての債務の実現するは必要ないのであつて、すべ ての条件ぶ実現する、すなわち供給者が協定どおりに取引をおこなえば十分で あるという。
他方、給付に制約的な リスクを引当金の形式で貸借対照表計上することにつ いては、貸借対照表作成者たる企業の手元に当該製品が存在 している場合、生 産プロセスを通 して リスクが生ずることでは十分でない。例えば生産欠陥にそ の原因を持つ保証給付に対する引当金│ま顧客に製品が引き渡された後に貸借対 照表に計上される。それは製品保証債務に基づ く財産減少が事象的限定原則に よって引渡取引からの利益 と対置するからだという。生産がおこなわれた後、
引渡 と関係なく相応の保証引当金が貸借対照表に計上されるとすれば、生産に よって生 じたリスクを当該製品の売却によつて利益の実現する以前の一ないし
(244) 87
法経研究
38巻304号 (1989年)
多期間に表示される危険が生ずるという。
ところでアイフラーはこうした方法は事象的限定原則に離反するものである が、同様のことは代理商の請求権に対する引当金の場合も見られるという。こ の引当金は実現原則の観点からは締結された取引からの収益が実現原則に従い 把握された後はじめて形成されてもよくなるが、その場合、企業が問題となっ てぃる注文を履行するここを意図し取引からの収益を予測する限り、引渡契約 が履行されなくとも請求権は偶発的にみなされるということは実現原則にとっ て重要ではない。別の考え方は引渡契約全体から損失が発生する、もしくは企 業が正当な理由なく引渡しを拒絶するときにのみ即時の貸借対照表計上が命令 されることである。こうした場合、貸借対照表への計上は通例、実現原則と事 言響野F5]Jではなく不均等原員Jないし期間的限定原則によっておこなわれる 不均等原則の介入は発生するおそれのある損失についても行われる。不均等 原則は調達ないし販売契約の締結によって貸借対照表決算日以前に開始する取 引について、予想収入が給付に消費されるべき財産減少を上回るかどうか審査 することを要請する。貸借対照表決算日までのリスクを棚卸しした枠内でこの 条件を満たさず、それ故発生するおそれのある損失を基礎づける回避不能な開 始された取引
(eingeleitete Geschafte)が
生ずるならば、そのことは、償却 可能:な
経済財が存在 しない限りには、不均等原則に従って実現原則と事象的限 定原則を意識的に離反して引当金による損失の即時的計上を導く。従って、不]鰐響魯看等譜曇重ふ鼻旦彙:爆奮泉賃庭島撃】管管『 番Fで
なく損失の認識
(2)次に厳密に期間関連的な財産減少は期間的限定原則に従い、期間区分 的に当該期間の費用 として帰属される。この例示と,して年金確約、年度決算費
用があるという。彼によればその種の財産減少はまずは一定の期間に、次いで
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(3)最後に,定の給付にも,定の期間にも帰属 しなぃ財産減少については [『
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(243)
ドイツ新商法引当金規定とその解釈論理
2.2)貸借対照表決算日以降の認識による設定
貸借対照表決算日以降で貸借対照表作成日までに獲得 した新 しい情報に基づ いて引当金を設定すべきかどうかについて、アイフラーは貸借対照表決算日ま でに発生 した事象や状況についての新 しい認識はその区別が個別には困難であ るにせよ貸借対照表決算日以後はじめて発生する事象と混同してはならなぃと する。かれは問題となるのは後になって初めて認識されるが貸借対照表決算日 以前に既に発生している事象であり、貸借対照表作成までに十分確実さをもっ て予測される事象は引当金により計上されなければならないとする。このこと はその種の展開が貸借対照表決算日に蓋然的もしくは予見可能であるかは関わ りなく妥当するのであ品て、ここでは限定原則に従い貸借対照表における計上 が通常命令されるという。
さらに貸借対照表決算日と貸借対照表作成までの期間は実行可能な取扱とい う観点からは最終時点の正確な確定を必要とするとアイフラ=は いう。支配的 慣行に従えば年度決算書は貸借対照表作成者たる商人ないしその代理となる機 関の構成員がデータ記載のもとで署名しなければならないので、このデータは 原則的には貸借対照表作成期間未に基礎づけられる。年度決算書が監査される 限りには、テストされるデータは貸借対照表作成期間末のものとして計上され るのが合目的である。というのは年度決算書の監査中に経験上の変化がきっと 生ずるからである6し たがって、こうした限定は実行可能性の理由から年ずる のであり、年度決算書が作成されている限りには極度に重要な事情ぶおこらな ければ、新しい認識に基づく修正が加えられるべき、というのであぅ。
2。
3)貸借対照表計上義務と選択権アイフラーは新商法において引当金の計上選択権は大幅に削減されたが、
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表表示の操作の可能性を開 くことによって貸借対照表読者の完全なる情報脅侵 害するという。その場合ヽかれはこう述べている。われわれがGoBの経験的 導出に意義を置 く限 りに1249条 の規定 はGoBの法典化 とみな しうる。GoB
の経験的導出はしか し賢明な商人が個々の期間成果の修正表示よりも大 きな変 動のなtヽ継続的成果動向に関心があるために正当に拒絶された。それ故、貸借 対照表選択権は正規の商人にとって常に意図とされるが、しかし外部の貸借対 (242)"
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)
照表読者の情報要求 とは対立す る、と。かれによれば選択権が開かれる限 りに はこの引当金に関 して引当金を形成すべき金額 の0%の価値計上 も100%額の 価値計上 も許容 され、論理的にはその中間値 も許容 される。必要額の0%の計
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讃:なよ 電it晃 2.4)引当金の追加計上引当金は常に見積に基づ くものであり、以前の見積を新 しい情報によって修 正する必要が しばしば生ずる。この場合、どの計算期間に引当金価額の必要修 正額を収容するかが問題 となるが、アイフラーはすでに作成された年度決算書 の修正は一般に費用を要するが、引当金を根拠づける財産対象物の消費ないし 減少の発生まで修正を待たねばならなくなると貸借対照表読者の完全で正確な 情報命令に違反することになる。期間的限定の原則によれば修正は新情報が所 与のものとなった後に完成されたはじめの年度決算書においてむしろ考慮 しな ければならない。したがって、貸借対照表作成者たる商人にとっては、貸借対 照表霧煮への完全なる情報が命令されるため、選択権はそれ限りで存在しない、
という。
さらにアイフラーは追加計上命令は期間的限定原則に基づけば貸借対照表作 成者が引当金を算定する際に、以前の貸借対照表に間違いを生 じたかもしくは 意識的に引当金を正確に貸借対照表計上 しないときに存在するが、 しかし、税 判決は意識的に不履行の引当金は追加計上されてはならないため、狭い観点を 擁護 していると言 う。それによれば、ひと度行使された選択権は選択権を決定 する根拠
(例
えば経営監査)に重大な変更が生 じた場合のみ、あとで修正でき、引当金に制約的な費用の計上はこうした場合、財産対象物の現実の減少が生 じ た後はじめて生ずるとされるが、しかし、アイフラーは税領域に存するこの追 加計上禁止は商法上の貸借対照表計上規定からは導かれえないとしている。
2.5)引当金の段階的蓄積
通常く弓
1当
金の形成は引当金を根拠づける財消費の不可避性にとって重要で ある全ての事象が短期間のうちに生ずるという事物関係の観点から実施される。この例示 として、引渡契約の場合に発生する損失、責任義務請求権に対する引 当金が挙げられる。しか し、それ以外の引当金を根拠付ける事物関係はそのよ
θθ (241)
ドイツ新商法引当金規定とその解釈論理 うな短期間に実現するのではなく予想される財減少額が期間を追 うごとに増加 するという状況のもと数年間継続する。地下資源の採鉱の際の再開墾債務、年 金確約、パテント侵害に対する引当金あるいは大規模修繕、自己保険に対する 費用性の引当金がその例である。アイフラアはこれらの場合、後に予想 される 財減少の全額が引当金を根拠づける事物関係が始動 したときにすでに見越 しす
ることが考えられるが、 しかし、こうした貸借対照表作成実務は事象的‐限定 も しくは期間的限定の原則とは矛盾するという。かれによれば、限定原則は長期 間にわたり事象により制約される引当金について分割的蓄積計上を要請するの であり、引当金はそれが貸借対照表決算日以前に生 じた事象にそれが帰属する 限りにのみ見越 ししてもよいという。したがって、再開墾引当金については貸 借対照表決算白まで実施された採鉱に帰属する額が消極計上され、年金引当金 にっいては貸借対照表体算日までに消費した労働給付に基づき算定がなさⅢる ことになる。
アイフラーの引当金についての正規の簿記の諸原則による計上論理は以上の 通 りである。かれは期間的限定原則、事象的限定原則、不均等原則 といった原 則を関連づけた広義の限定原則によって各種の引当金
(将
来の財産対象物の減 少)の
期間帰属を各様に論理づけている。しかもかれの場合、年度決算書の報 告責任目的から演繹的に誘導される正規の簿記の諸原則とりわけ完全性原則を 大枠にすえることによって、引当1金
の計上しかも追加的、蓄積的計上をも利用 者の情報要請に沿うものとして論理づけるのである。それは正規の簿記の諸原 則を介したディスクロージャー拡大の論理に他ならない。今回の新商法の特徴 は正規の簿記の諸原則が規定上は法典化、重層化され形式的にはより堅□なも のとなる反面、不確定法概念としての正規の簿記の諸原則の性格には変わりは ない。むしろ不確定法概念としての性格を継続しながら内案機能面でのより弾 力化が計られたことにあるとみられるが、アイフラーの引当金計上論理はまさ にこうした正規の簿記の諸原則体系の弾力化に符合してディスクロージャー拡 大という名目のもと将来費用、損失の早期計上を合法のものとして位置づけたものである。
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IE。 新商法における引当金の評価論理「『債務の不確定性』な らびに『損失の発生』 という概念 メルクマールはこ の貸借対照表項 目の将来関連性 もまた合意 している。そのことか ら引当金の貸
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の評価には絶えず不確定性が関与 し、そこに貸借対照表政策上の問題 も生 じて 来る。
ところで、既にみたように新商法では許容される引当金の計上範囲は拡大さ れるに至 ったが、引当金の計上と一体をなす評価について、新商法 は253条
1
項2文で理性ある商人の判断に従って計上することを規定 している。そこでは 次のように規定 している。「債務はその償還金額で、年金債務でその反対給付 の期待できないものはその現金価値で、また引当金は理性ある商人の判断に従 い必要 となる金額で評価されなければならない。」この規定 は旧株式法156条 4項における規定 と変わりはないが、アイフラーは立法者は評価方法の望まし い明文化を簡単に無視 したとみている。 しか し、かれはこの規定か らは引当金 の恣意的な割引を禁止 したことが認識されるのであり、引当金の本来予測され るべき金額を上回るもしくは下回る計上 も理性ある商人の判断には合致 しない という。支配的見解によれば当該 リスクにとっての蓋然的数値の計上をこの文 書化は要請 しているとされるが、アイフラーも同様に引当金の評価に際 して将 来のリスふも蓋然的なものであればその計上が理性ある商人の判断に合致する
としている。
それではアイフラーは引当金の評価についてどのような評価方法を理性ある 商人の判断に合致 していると言 うのだろうか。
かれは引当金の評価方法は多様であるがそれを企業外部の利害関係者の信頼 性 と検証可能性の観点か ら統計データに基づ く算定 と主観的データに基づ く算 定の二つに区分されるという。
まず統計データについてはかれは頻繁に生ずる一定種の事象に関する統計上 のデータによって当該 リスクに対する平均予測数値つまり期待値が算定 されう るがくこの数値によって引当金を見積 らなければならないという。ここで期待 値の額にとって決定的なのは当該 リスクに対 して考えられる択一的特徴に対す る発生確率の将来動向を確定する予測関数である。実務ではリニアーな予測関
"(239)
ドイツ新商法引当金規定 とその解釈論理
t数の仮定が準備されていぅが、その場合、引当金を根拠づける事物関係 に対し て将来の費用をそれが過去平均において発生したような金額で予想する ことが
前提となるという。尚、かれは経済展開が変動する場合、 リスク発生原因数値 にリスク費用を再帰することによって考慮するという。したがつて過去の平均 値はリスク費用の絶対値でな、、 リスク費用とそれに応 じたリスク発生原因数 値の価値 との毎年確定可能な平均値として算定される。そうして リスク発生原 因数値を報告期間に表示する価偏に適用、して見いだされる平均関係は求められる引当金額を明らかにするという。
これに対 して、主観的データは統計的データと比較 して引当金価値の見積に とって広範囲にわたる方法装置でなく、間主観的検証可能性
(intersubiektiVe
Nachprufbarkeit)も ここでは強 く制限されるという。しかし、アイフラーは 多 くの場合、申立的専門家の鑑定に基づき、もしくは設定される請求権 と企業 の提供する給付との比較によつて引当金についての基礎のしっかりした判断が 形成されうるとする。かれによれば、主観的データによる方法はおそらく発生 するであろう代替案を決定 し、この見積空間からひとつの数値を選択する場合 に存在 しうるが、年度決算書の報告責任の機能からはその場合、類似した事例 もしくは算定に中立の専門家の指摘することが少なければそれだけ詳細に見積 空間の決定が説明されなければならないという。そのため、慎重性の原則の観 点か らは、可能な代替案の見積空間から最 も成果減少的数値が選択されるべき であって、この方法は確実な成果のみ表示する商人のll■行と合致 しているといC51)
つ 。
みられるようにアイフラーは引当金の評価に対 して統計的方法と主観的方法 の双方を容認 し、その利用はケースバイケニスであるとしている。かれのいう 統計的方法 も主観的方法 もともどもリニア‐な予測関数、間主観的検証という 不確実で恣意的な前提を有していることに変わりはない。それはかかる論理を 通 じて見積と判
1断
を介入させた引当金金額の計上を論理化するものといえよう。ところで、かかるアイフラーの主張は正規の簿記の諸原則に基礎づけられて いることに目を向けなければならない。その点、かれはかって旧著で次のよう に述べている。「引当金は一義的でないが十分正確に数量化されうる財産減少 である。……決算書作成の場合、企業の意志に引当金額を委ねること