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引当金の再検討

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Academic year: 2021

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引当金の再検討

瓶 子 長 幸 Ⅰ.はじめに 『企業会計原則』注解【注18】によれば,引当金は以下の要件を満たし ている場合に,貸借対照表の負債の部または資産の部に計上される。 (∋ それが将来の特定の費用または損失であること, ② その発生が当期以前の事象に起因していること, @ その発生の可能性が高いこと, ④ その金額を合理的に見積ることができること。 そしてこの引当金は,一・椴に,負債性引当金と評価性引当金に大別され る。このうち負債性引当金は,上記の4つの要件を満たしている負債的性 質を有するものであり,貸借対照表の負債の部に計上される。ほとんどの 引当金がこれに属している。他方,評価性引当金は,売掛金のような特定 の債権の将来の回収不能見積額を示す,いわば評価勘定に属するものであ り,貸借対照表の資産の部に計上される。貸倒引当金がこれに属している0 ところで,国際会計基準第37号『引当金,偶発債務および偶発資産1)』 はそのパラグラフ10 「定義」において,引当金(provision)を「時期また

は金額の不確実な負債」 (1iabilityofuncertain timing or amount)と定義し ている。そしてパラグラフ14 「認識・引当金」が,引当金は以下の要件を

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(a)企業が過去の事象の結果として(法的または推定的な)現在の債務 (Obligation)を負っていること, (b)経済的便益を示している資源の流出が当該債務を弁済するために必 要とされる可能性が高いこと, (C)当該債務の金魚について信頼できる見積りが可能であること。 このように,国際会計基準は引当金を債務性引当金に限定しており,い わゆる評価性引当金は「引当金」とは考えられていない。加えて,企業会 計原則上負債性引当金とされている修繕引当金は,国際会計基準において は「引当金」としては認識されていない(「例11修繕および維持」

(Exam-ple ll Repairs and maintenance)参照) 。

それでは,引当金に関する以上の2つの考え方のうち,今日の会計実務 を考慮した場合,どちらの「引当金観」が適しているのであろうか。ある いは,より適切な「引当金観」が他に考えられるであろうか。この問題を 検討するにあたって,格好の材料がある。それは,ドイツ商法の引当金規 定である。次節以降において,この引当金規定の検討を通して,今日の会 計実務に適した「引当金観」を考えてみようと思う。 Ⅱ. 85年ドイツ商法の特徴 ドイツにおいて「会社法の調整に関するヨーロッパ共同体理事会第4, 第7および第8号指令の施行に関する法律」 (Gesetz zur Durc旭ihnlng der Vierten, Siebenten und Achten Richtlinie des Rates der Europaischen

Ge-meinscha氏en zur Koordinierung des Gesellschaftsrechts) ,すなわち「貸

借対照表指令法」 (Bilanzrichtlinien-Gesetz)が, 1985年12月19日に可決・

成立し,翌1986年1月1日をもって施行された。この貸借対照表指令法は 13の項目から構成されており,その中心をなしているものが, 「項目1

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金そのものを再検討する。

Ⅲ.引当金規定の概要

-とくに65年ドイツ株式法と比較して 費用性引当金の検討にはいる前に,まず,第249条の引当金規定につい て, 65年ドイツ株式法と比較しながら,その概要をみていくことにする。 比較検討を容易にするために両法の引当金規定を対照表示すると,次頁の 表1のとおりである。 表1から明らかなように, 85年ドイツ商法第249条第1項においては, 以下の引当金の計上が義務づけられている。すなわち, ① 不確実債務(ungewisse Verbindlichkeiten)に対する引当金9) 桓)未決取引(schwebende Gesch皇統e)から生じるおそれのある損失に 対する引当金1O-③ 次営業年度の(最初の) 3ケ月以内に行われる維持修繕(Instand-haltung)に対する引当金 ④ 次営業年度に行われる廃石処理(Abraumbeseitigung)に対する引 当金‖) ⑤ 法的義務なく行われる保証に対する引当金12) そして,第2項において,次節の検討対象である費用性引当金一般につ いてその計上が許容され,第3項が,これらの引当金以外の引当金の計上 を,原則的に禁止している川。 この第249条の引当金規定は,限定列挙方式を採用している。なお,第 1項の各引当金のうち,最初の2つの引当金およびC5)の保証引当金は,第 三者に対する債務を意味する,もしくは債務の性質を有する,いわゆる債

務性引当金(Rtickstellungen nit Verbindlichkeitscharakter)と考えられて

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引当金の再検討  55 れるように,負債の定義を再検討すべきではなかろうか。会計基準が,覗 実の企業活動とそれに対応する会計実務をより適切なものにするという役 割を有していることをなんら否定するつもりはない。むしろ,筆者は会計 基準のこのような役割を積極的に肯定するものである。しかし,本稿のテ ーマに関しては,逆に,会計基準は,現実の企業活動と今日の会計実務を 十分に考慮すべきなのである。 注

1 ) InternationalAccounting Standards Board(mSB), Provisions, ContiPlgent

Liabili-ties and Contingent Assets(L4S37).企業会計基準委員会訳『国際財務報告基準書

2004』雄松堂,平成17年, IAS第37号「引当金,偶発債務及び偶発資産」参照。

2 ) Herbert Biener & Wilhelm Bemeke, Bilaヵgrichtlim.en-Gesetz, Dtisseldorf, 1986

年, ⅩⅤ頁。 3)たとえば,一般商人の会計に関しては商法典「第1編 商人 第4章 商業帳 簿」が,株式会社については株式法「第1編 株式会社 第5章 会計報告・刺 益処分」が,それぞれ適用されていた。 4) H.Biener&W.Bemeke,前掲書, ⅩⅤ頁。 5)第4号指令は資本会社の個別の年次決算書の作成等に関する諸規定を,第7号 指令は資本会社の連結決算書に関わる諸原則を,そして第8号指令は決算書監査 人の資格等についての諸規定を,それぞれ定めている。 6)第4号指令第1条第1項は次のように規定していた。 「本指令により定められて いる調整のための措置は,以下の法形式の会社に関する加盟国の法律規定および 行政規則(VeIWaltungsvorschriften)に対して適用される:ドイツ連邦共和国: 株式会社,株式合資会社,有限会社; - (以下省略)-」

7 ) Frank Oberbrinkmann, Statische und dynamische I91terPretation der HandeLsbilanz, Dtisseldorf, 1990年, 259および260頁。

8 ) Eugen Herrmann & Gerd Knischewski, Das Bilanzrichtlim.en-Gesetz im

tJberb-lick, 38頁, Kar1heinz Ktiting 良 Claus-Peter Weber編, Handbuch der

Rechnungs-legung,第3版, Stu噸art, 1990年,所収。

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Mayer-Wegelin, Riickstellungen, 636-644頁参照, K. Ktiting & C. -P. Weber編,前掲書,

所収)0

10)この引当金の例として,リース契約に対する引当金,ライセンス契約に対する 引当金等が挙げられる(R. H6fer & E. MayerWegelin,前掲論文, 647-648頁参 照)o

ll)この引当金は,鉱山における採掘後に残っている廃イ]等の残留物を除去するた

めの費用に対して設けられる(R H6fer & E. Mayer-Wegelin,前掲論文, 651-652頁参照)0 12)この引当金は,たとえば,保証期間の経過したあとでも,営業上の理由から商 人が顧客の希望に応じる場合に生じる費用に対して設けられる(R. HGfer & E. MayerWebelin,前掲論文, 652頁参照)0 13)これらの引当金のほかに,資本会社は, 85年ドイツ商法第274条第1項に従って, いわゆる税金引当金を計上することができる。すなわち,税効果会計において繰 延税金負債が生じる場合に,その税金引当金を計上することができるのであるo ]4) F. Oberbrinkmann,前掲喜, 291頁。

15) Meinhard Sielaff, Auswi戊ungen aufdas Bilanzsteuerrecht, 66頁, K Kuting & C.

-P.Weber編,前掲書,所収。

16) 17) R. H6fer&E. MayerWegelin,前掲論文, 632頁0

18) H. Biener&W. Berneke,前掲書, 79頁。

19) R. H6fer & E. MayerWegelin,前掲論文, 630頁参照0

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る価額修正(Wertberichtigungen)を示すことはできない。」なお,第3項にいう 「価額修正」とは,たとえば日本における「貸倒引当金」と同義である。

25) H.Biener&W,Bemeke,前掲書, BO頁(括弧内,瓶子)。

26) H. Biener &W. Bemeke,前掲書, 80頁, F. Oberbrinkmann,前掲書, 292-295

頁。

27) R. H6・fer & E. Mayer.Wegelin,前掲論文, 659頁参照。 28) 1983年政府草案, 83-84頁(傍点,瓶子)。

29) R Heifer & E. Mayer-Wegelin,前掲論文, 627頁および653頁。

30) F, Oberbrinkmann,前掲書, 292頁参照。

31) 32)法務委員会報告書, 99頁(括弧内および傍点,瓶子)0 33) H.Biener&W.Bemeke,前掲番, 77頁。

34) R HGfer & E. MayerWegelin,前掲論文, 653頁。

35)たとえば,新田忠誓「わかりやすい勘定科目の必要性」 『企業会計』第56巻第6 号, 2004年6月号を参照されたい。

36)たとえば,斎藤真哉「財務諸表の構成要素」 60頁,斎藤静樹編著『詳解「討議 資料・財務会計の概念フレームワーク」』中央経済社,平成17年,所収,を参照さ れたい。

37) lASB, FylameWOrk for the Preparation and Preseniaiion of Financial Statements,

パラグラフ49。企業会計基準委員会訳『国際財務報告基準書2004年』雄桧堂,平 成17年, 「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」参照。

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